波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置および波長可変干渉フィルターの製造方法
【課題】帯電の少ない波長可変干渉フィルターを提供する。
【解決手段】固定基板50と、固定基板50に対向し、固定基板50に対して変位可能な可動基板60と、固定基板50の可動基板60と対向する面に第1凹部72が形成され、第1凹部72に設けられた第1反射膜53と、可動基板60に設けられ、第1反射膜53とギャップを介して対向する第2反射膜63と、固定基板50の可動基板60に対向する面の第1凹部72に設けられた第1電極54と、可動基板60に設けられ、第1電極54と対向する第2電極64と、を備え、固定基板50における第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56が形成され、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されている。
【解決手段】固定基板50と、固定基板50に対向し、固定基板50に対して変位可能な可動基板60と、固定基板50の可動基板60と対向する面に第1凹部72が形成され、第1凹部72に設けられた第1反射膜53と、可動基板60に設けられ、第1反射膜53とギャップを介して対向する第2反射膜63と、固定基板50の可動基板60に対向する面の第1凹部72に設けられた第1電極54と、可動基板60に設けられ、第1電極54と対向する第2電極64と、を備え、固定基板50における第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56が形成され、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置および波長可変干渉フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光から特定の波長の光を選択して射出する、波長可変干渉フィルター(以下、エタロンと呼ぶことがある)が知られている。
特許文献1には、二つの反射膜を対向させてギャップを形成し、このギャップ寸法を変えることで、ギャップ寸法に対応した波長の光を分光するエタロンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−277758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このエタロンにおける反射膜は微小なギャップを介して対向している。特に、反射膜と反射膜の距離を変更できる可変ギャップ型のエタロンでは、対向する一対の反射膜が帯電した場合に両者の反射膜が引き合って貼り付き、その後、貼り付いた状態を保って、適正なギャップを維持できないことがある。また、反射膜以外の他の部分が帯電した場合も、電荷が反射膜に移動することがあり、帯電の少ないエタロンが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を備え、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1基板における第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、第2基板における第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon)膜が連続して形成されている。
第2基板は、第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されているため、第2電極を通して、第2反射膜の表面に溜まる電荷は移動して、帯電することはない。そして、第1基板の第1反射膜は、微少のギャップを介して第2基板の第2反射膜と対向しており、対向する基板からの電荷の移動などの影響を受けることがなく、第1反射膜の帯電は抑制されている。
このように、本適用例では、第1反射膜および第2反射膜が帯電するのを抑制でき、反射膜間の適正なギャップを維持する波長可変干渉フィルターを提供できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板の前記第2基板と対向する面と反対の面は、平面であり導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第1基板の第2基板と対向する面と反対の面は平面であり、この平面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
第1基板の第2基板と対向する面と反対の面は平面であるため、波長可変干渉フィルターを金属などの筐体などに配置するのが容易であり、かつ筐体などを通して帯電する電荷を逃がすことが可能である。
このように、波長可変干渉フィルターの外面の帯電を防止でき、波長可変干渉フィルターの外面から反射膜への電荷の移動を抑制できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第2基板は前記第2反射膜を有する可動部と、前記可動部の周りに前記可動部よりも厚みが薄く形成された薄肉部とを有し、前記第2基板の前記第1基板と対向する面は、平面であり導電性を有する前記ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、波長可変干渉フィルターは可動部と薄肉部を備えたダイヤフラム構造を有している。このため、薄肉部が撓んで可動部が移動し易く、反射膜間のギャップを調整することが容易である。また、第2基板の第1基板と対向する面は、平面に形成されており、第1基板と第2基板とを接合するのが容易である。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下である。
このことから、ダイヤモンドライクカーボン膜は良好な導電性を有し、反射膜などの表面上に溜まる電荷を逃がすことが容易であり、帯電防止の効果がある。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、反射膜における帯電の少ないフィルターを有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度の優れた光フィルターモジュールを提供できる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる光分析装置は、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、反射膜における帯電の少ないフィルターを有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度の優れた光分析装置を提供できる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターの製造方法は、第1基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、前記第1基板の第1凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第1凹部を形成する工程と、前記第1基板の前記第1凹部に第1電極を形成する工程と、前記第1基板の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に第1反射膜を形成する工程と、第2基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、前記第2基板の第2凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第2凹部を形成する工程と、前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1電極に対向する第2電極を形成する工程と、前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1反射膜に対向する第2反射膜を形成する工程と、前記第1電極および前記第1反射膜を形成した前記第1基板と、前記第2電極および前記第2反射膜を形成した前記第2基板とを接合する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
この波長可変干渉フィルターの製造方法によれば、第1基板の第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成でき、第2基板における第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を連続して形成できる。
このため、反射膜における帯電の少ない波長可変干渉フィルターを製造でき、適正な反射膜間のギャップを適正に維持できる波長可変干渉フィルターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のエタロンの構成を示す平面図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの断面図。
【図3】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図4】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図5】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図6】第1実施形態のエタロンに係る可動基板の製造工程を示す工程図。
【図7】第1実施形態のエタロンに係る可動基板の製造工程を示す工程図。
【図8】第1実施形態のエタロンに係る固定基板と可動基板の接合工程を示す工程図。
【図9】第2実施形態における光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図。
【図10】第3実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図11】第3実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図12】第4実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図13】第5実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更し、概略の構成を示している。
[第1実施形態]
【0022】
以下、第1実施形態のエタロンを図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のエタロンの構成を示す平面図である。図2は図1のA−A断線に沿う断面図である。
【0023】
(エタロンの構成)
図1に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2に示すように、固定基板(第1基板)50および可動基板(第2基板)60を備えている。
これらの固定基板50および可動基板60は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、固定基板50および可動基板60が接合されて一体に構成される。この接合には、固定基板50および可動基板60に設けられた接合膜57,67が結合することにより固定される。接合膜57,67としては、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用されている。
【0024】
固定基板50は、厚みが例えば500μmの基材をエッチング加工して形成される。この固定基板50には、エッチングにより固定基板50の中央を中心とする円形の第1凹部72が設けられ、中央部に反射膜形成部52、その周りに同心円状に電極形成部51が形成されている。電極形成部51は反射膜形成部52より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部52が突出した形状となっている。
また、電極形成部51の外縁には、可動基板60との接合において可動基板60を支持する支持部59が設けられている。
【0025】
反射膜形成部52の上には導電性のダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜とも呼ぶこともある)56が形成され、さらにその上に第1反射膜53が形成されている。この第1反射膜53は光の反射特性と透過特性とを有し、AgやAg合金などの金属膜により例えば50nmの厚みで形成されている。
【0026】
電極形成部51には、第1電極54が形成されている。第1電極54は平面視で第1反射膜53を取り巻くように円環状に形成されている。そして、第1電極54は引き出し電極55aを介して、固定基板50の四隅のうちの一つの隅部に形成された電極パッド55に接続されている。
第1電極54、引き出し電極55aおよび電極パッド55は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0027】
電極パッド55の下層にはDLC膜56が形成され、このDLC膜56は支持部59の上面まで延出して形成されている。
そして、支持部59のDLC膜56の上には接合膜57が形成されている。
また、固定基板50の可動基板60と対向する面とは反対の面は平面に形成され、全面に導電性のDLC膜56が形成されている。そして、このDLC膜56の上には、第1反射膜53と対向する位置に、SiO2膜などの反射防止膜58が形成されている。
【0028】
なお、DLC膜は膜に含有する水素含有量を制御することで導電性の膜を得ることができる。そして、本実施形態で利用されるDLC膜は抵抗率が1010Ω・cm以下の導電膜が利用されている。
また、DLC膜は透光性を有するため、光の経路にDLC膜を配置しても光を透過し、光学膜として機能する。
【0029】
可動基板60は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが200μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
この可動基板60には、基板中央を中心とする円柱状の可動部61と、その周りに可動部61を保持する薄肉部62と、が形成されている。
薄肉部62は、固定基板50と対向する面とは反対の面に円環状の第2凹部74が形成され、可動部61の厚みより薄くなるように形成されている。
【0030】
このように、可動基板60はダイヤフラム構造を持ち、可動部61が可動基板60の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
そして、可動基板60の固定基板50に対向する面は基材の平面を利用し、エッチング加工された面を有していない。
【0031】
可動基板60の固定基板50と対向する面の全面には、DLC膜66が形成されている。そして、DLC膜66の上に第2反射膜63、第2電極64、引き出し電極65aおよび電極パッド65が形成されている。
第2反射膜63は光の反射特性と透過特性とを有し、第1反射膜53と対向する可動部61に円形状に設けられている。第2反射膜63の材料として第1反射膜53と同様に、AgまたはAg合金が用いられる。なお、第2反射膜63は例えば50nmの厚みに形成されている。
【0032】
第2電極64は第1電極54と対向する薄肉部62に設けられている。この第2電極64は第2反射膜63を取りまくように、円環状に形成されている。
そして、第2電極64は引き出し電極65aを介して、可動基板60の四隅のうちの一つの隅部に形成された電極パッド65に接続されている。この電極パッド65は、前述した固定基板50の電極パッド55と対角となるように配置される。
第2電極64、引き出し電極65aおよび電極パッド65は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0033】
そして、可動基板60には、固定基板50に形成された接合膜57と対応する位置に接合膜67が形成されている。
また、可動基板60の固定基板50と対向する面とは反対の面に、薄肉部62を除いて導電性のDLC膜66が形成されている。
このDLC膜66の上には可動基板60の第2反射膜63と対向する位置に、SiO2膜などの反射防止膜68が形成されている。
【0034】
固定基板50と可動基板60とが接合された状態では、第1反射膜53と第2反射膜63、および第1電極54と第2電極64とがギャップを介して対向配置されている。そして、第1電極54と第2電極64とにより静電アクチュエーター70が構成され、第1反射膜53と第2反射膜63との間のギャップ寸法の調整が行われる。
【0035】
上記のエタロン5では、対向する第1反射膜53と第2反射膜63とのギャップ寸法を変えるために、静電アクチュエーター70を駆動させると、静電力により第1電極54と第2電極64とが引き合い、可動基板60の薄肉部62が撓んで、可動部61が固定基板50に近づくように変位する。可動部61には第2反射膜63が設けられ、第1反射膜53と第2反射膜63との間のギャップを調整することができる。
【0036】
なお、エタロン5は、第1電極54と第2電極64との距離が第1反射膜53と第2反射膜63との距離より大きく形成されている。例えば、第1電極54と第2電極64の間に電圧を印加しない初期状態において、第1電極54と第2電極64との距離が例えば1μm、第1反射膜53と第2反射膜63との距離(ギャップ寸法)が例えば0.5μmに設定されている。このため、第1電極54と第2電極64との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制する構成となっている。
また、本実施形態のエタロン5は、第2基板としての可動基板60の一部である可動部61が第1基板としての固定基板50に対して変位可能に構成したが、可動基板60の全体が固定基板50に対して変位可能な構成としても良い。
【0037】
(エタロンの製造方法)
以下、上記エタロンの製造方法の一例について説明する。
<固定基板の製造工程>
図3、図4、図5は、固定基板の製造工程を示す工程図であり、図2と同様な断面図にて表してある。
まず、図3(a)に示すように、石英ガラスなどの基板の両面を鏡面研磨し、厚み500μmの固定基板50を製作する。
次に、図3(b)に示すように、固定基板50の両面の全面に導電性を有するDLC膜56を成膜する。DLC膜56はCVD(Chemical Vapor Deposition)法により110nmの厚みに形成する。
そして、固定基板50の一方の面にレジストを塗布し、電極形成部、反射膜形成部を作りこむためのレジストパターニングを行う。次に、レジストが開口された部分にO2プラズマを照射してDLC膜56を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図3(c)に示すように、DLC膜56のパターニングが行われる。
【0038】
続いて、図3(d)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、固定基板50をエッチングする。DLC膜56はフッ酸水溶液に対して耐性を有し、DLC膜56を形成していない部分がエッチングされる。エッチングは0.5μmの深さまで行われ、固定基板50に第1凹部72を形成する。
そして、図3(e)に示すように、前工程でエッチング加工した面にDLC膜56をCVD法により成膜する。DLC膜56の膜厚は110nmに形成する。ここでは、前工程でパターニングしたDLC膜56の上からDLC膜56を成膜しても良いし、一旦、前工程でパターニングしたDLC膜56をO2プラズマの照射で除去してから、新たにDLC膜56を成膜しても良い。このようにして、固定基板50の一方の面もDLC膜56で覆われる。
【0039】
次に、固定基板50の第1凹部72を形成した面にレジストを塗布し、電極形成部を作りこむためのレジストのパターニングをする。そして、O2プラズマを照射してレジストが開口された部分のDLC膜56を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図4(a)に示すように、DLC膜56のパターニングが行われる。
続いて、図4(b)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、固定基板50を1μmの深さまでエッチングし、第1凹部72内の電極形成部51と反射膜形成部52とを分離する。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面の全面に電極形成膜54aを成膜する。電極形成膜54aはITO(Indium Tin Oxide)膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚250nmに成膜する。
そして、電極形成膜54a上にレジストを塗布し、第1電極のレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口からITO膜で形成された電極形成膜54aを酸性の溶液でエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図4(d)に示すように、電極形成部51に第1電極54が形成できる。
なお、図示しないが、この電極形成において、反射膜形成部52に形成したDLC膜56と第1電極54とを接続する配線を形成しても良い。この構成によれば、第1反射膜53と第1電極54とが電気的に接続され、第1反射膜53が帯電することがなくなる。
【0041】
続いて、図5(a)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面とは反対の面に、DLC膜56を介して反射防止膜58を形成する。反射防止膜58は分光する光の光路上に位置し、第1反射膜53と対向する位置に形成する。反射防止膜58はSiO2膜で構成され、蒸着法によりメタルマスクを使用して成膜する。なお、SiO2膜の厚みは90nmに設定する。
次に、図5(b)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面に反射膜形成膜53aを全面に成膜する。反射膜形成膜53aはAg合金膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚50nmに形成する。
【0042】
そして、反射膜形成膜53aの上にレジストを塗布し、第1反射膜を形成するためのレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口から例えば燐酸硝酢酸水溶液を用いて反射膜形成膜53aをエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図5(c)に示すように、反射膜形成部52に第1反射膜53が形成できる。なお、第1反射膜53はDLC膜56の上に形成する。
次に、図5(d)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面において、支持部59の上面に形成されたDLC膜56の上に接合膜57を成膜する。接合膜57はメタルマスクを使用してCVD法により形成し、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用される。なお、プラズマ重合膜の厚みは100nmに設定する。
【0043】
<可動基板の製造工程>
図6、図7は可動基板の製造工程を示す工程図である。
まず、図6(a)に示すように、石英ガラスなどの基板の両面を鏡面研磨し、厚み200μmの可動基板60を製作する。
次に、図6(b)に示すように、可動基板60の両面の全面に導電性を有するDLC膜66を成膜する。DLC膜66はCVD法により110nmの厚みに形成する。
そして、可動基板60の一方の面にレジストを塗布し、ダイヤフラム構造の薄肉部を作りこむためのレジストパターニングを行う。次に、レジストが開口された部分にO2プラズマを照射して、DLC膜66を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図6(c)に示すように、DLC膜66のパターニングが行われる。
【0044】
続いて、図6(d)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、可動基板60をエッチングする。DLC膜66はフッ酸水溶液に対して耐性を有し、DLC膜66を形成していない部分がエッチングされる。エッチングは170μmの深さまで行われ、可動基板60に第2凹部74を形成し、第2凹部74の底面である薄肉部62を形成する。
そして、図6(e)に示すように、第2凹部74を形成した面とは反対の面の全面に電極形成膜64aを成膜する。電極形成膜64aはITO膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚200nmに成膜する。
【0045】
次に、電極形成膜64a上にレジストを塗布し、第2電極のレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口からITO膜で形成された電極形成膜64aを酸性の溶液でエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図7(a)に示すように、可動基板60に第2電極64が形成できる。
続いて、図7(b)に示すように、可動基板60の第2凹部74を形成した面に、DLC膜66を介して反射防止膜68を形成する。反射防止膜68は分光する光の光路上に位置し、第2反射膜63と対向する位置に形成する。反射防止膜68はSiO2膜で構成され、蒸着法によりメタルマスクを使用して成膜する。なお、SiO2膜の厚みは90nmに設定する。
【0046】
次に、図7(c)に示すように、可動基板60の第2電極64を形成した面に反射膜形成膜63aを全面に成膜する。反射膜形成膜63aはAg合金膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚50nmに形成する。
そして、反射膜形成膜63aの上にレジストを塗布し、第2反射膜を形成するためのレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口から例えば燐酸硝酢酸水溶液を用いて反射膜形成膜63aをエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図7(d)に示すように、第2反射膜63が形成できる。なお、第2反射膜63はDLC膜66の上に形成する。
【0047】
次に、図7(e)に示すように、可動基板60の第2電極64および第2反射膜63を形成した面において、固定基板の支持部と対応する部分に接合膜67を成膜する。接合膜67はメタルマスクを使用してCVD法によりDLC膜66の上に形成する。また、この接合膜67はポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜であり、厚みは100nmに設定する。
【0048】
<固定基板と可動基板の接合工程>
図8は固定基板と可動基板の接合工程を示す工程図である。
上記の製造工程により得られた固定基板50と可動基板60とを接合する工程では、まず、それぞれの接合膜57,67に活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。なお、活性化処理を行う際に、反射膜を覆うメタルマスクを使用することで、反射膜を保護することができる。
図8に示すように、接合膜57,67に活性化処理を施した後、固定基板50と可動基板60のアライメントを行い、重ね合わせて荷重をかけることで固定基板50と可動基板60の接合が行われ、エタロン5が完成する。
なお、上記の製造工程では一つの固定基板と一つ可動基板をそれぞれ形成して、それぞれを接合することでエタロンを製造する工程として説明したが、複数の固定基板を一つの大きな基板に形成し、また複数の可動基板を一つの大きな基板に形成して、両者を接合した後に個片に切り分ける製造方法であってもよい。
【0049】
(第1実施形態の作用効果)
以上、本実施形態によれば以下の効果を有する。
本実施形態のエタロン5は、固定基板50における第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56が形成され、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されている。
可動基板60は、第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されているため、第2電極64を通して、第2反射膜63の表面に溜まる電荷は移動して、帯電することはない。そして、固定基板50の第1反射膜53は、微少のギャップを介して可動基板60の第2反射膜63と対向しており、対向する基板からの電荷の移動などの影響を受けることがなく、第1反射膜53の帯電は抑制されている。
このように、本実施形態では、第1反射膜53および第2反射膜63が帯電するのを抑制し、反射膜間の適正なギャップを維持するエタロン5を提供できる。
【0050】
また、本実施形態のエタロン5は、固定基板50の可動基板60と対向する面と反対の面は平面であり、導電性を有するDLC膜56が全面に形成されている。
固定基板50の可動基板60と対向する面と反対の面は平面であるため、エタロン5を金属などの筐体などに配置するのが容易であり、かつ筐体などを通して帯電する電荷を逃がすことが可能である。
このように、エタロン5の外面の帯電を防止でき、エタロン5の外面から反射膜への電荷の移動を抑制できる。
【0051】
本実施形態のエタロン5は、可動部61と薄肉部62を備えたダイヤフラム構造を有している。このため、薄肉部62が撓んで可動部61が移動し易く、反射膜間のギャップを調整することが容易である。また、可動基板60の固定基板50と対向する面は、平面に形成されており、固定基板50と可動基板60とを接合するのが容易である。
【0052】
本実施形態のエタロン5は、DLC膜56,66の抵抗率が1010Ω・cm以下であることから、DLC膜56,66は良好な導電性を有し、反射膜などの表面上に溜まる電荷を逃がすことが容易であり、帯電防止の効果がある。
また、DLC膜56,66は透光性を有するため、第1反射膜53、第2反射膜63の下にDLC膜56,66を配置しても光を透過し、フィルターとしての特性を劣化させることがなく、光学膜として利用できる。
【0053】
本実施形態のエタロン5の製造方法は、固定基板50の第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56を形成でき、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66を連続して形成できる。
このため、第1反射膜53、第2反射膜63において帯電の少ないエタロン5を製造でき、適正な反射膜間のギャップを適正に維持できるエタロン5を提供できる。
また、DLC膜56,66は化学的に安定しており、エッチング液に対して耐性を有するため、エッチング加工における保護膜として利用することができる。このため、製造工程を簡素化することができる。
さらに、エタロン5の製造工程中においてもDLC膜が帯電防止膜として機能して、ごみなどの異物が基板に吸着しにくくなり、歩留まりが向上してコストの低減を図ることができる。
[第2実施形態]
【0054】
次に、上記第1実施形態で説明したエタロンを使用した、光フィルターモジュールおよび光分析装置について説明する。第2実施形態では、測定物の色度を測定する測色装置を例にとって説明する。
図9は光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光フィルターモジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0055】
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図9には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0056】
光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーター70に印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0057】
電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター70の第1電極54および第2電極64に印加する電圧を制御する。
【0058】
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0059】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター70への印加電圧を設定する。
【0060】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0061】
このように、本実施形態の光分析装置としての測色装置1および光フィルターモジュールとしての測色センサーは、反射膜における帯電の少ないエタロン5を有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度に優れている。
以上、第2実施形態では、光分析装置として測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
[第3実施形態]
【0062】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0063】
図10は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図11は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図10に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0064】
また、図11に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0065】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0066】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0067】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0068】
なお、図10,11において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明のエタロンを用いてガスの成分を検出することができる。
【0069】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
[第4実施形態]
【0070】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0071】
図12は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0072】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0073】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0074】
また、図12において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0075】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
[第5実施形態]
【0076】
また、他の光分析装置として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図13は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図13に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0077】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0078】
さらには、光フィルターモジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0079】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0080】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5…エタロン、21…光源、22…レンズ、31…受光部、32…電圧制御部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、50…第1基板としての固定基板、51…電極形成部、52…反射膜形成部、53…第1反射膜、53a…反射膜形成膜、54…第1電極、54a…電極形成膜、55…接続パッド、56…ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、57…接合膜、58…反射防止膜、59…支持部、60…第2基板としての可動基板、61…可動部、62…薄肉部、63…第2反射膜、63a…反射膜形成膜、
64…第2電極、64a…電極形成膜、65…接続パッド、66…ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、67…接合膜、68…反射防止膜、70…静電アクチュエーター、72…第1凹部、74…第2凹部、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置および波長可変干渉フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光から特定の波長の光を選択して射出する、波長可変干渉フィルター(以下、エタロンと呼ぶことがある)が知られている。
特許文献1には、二つの反射膜を対向させてギャップを形成し、このギャップ寸法を変えることで、ギャップ寸法に対応した波長の光を分光するエタロンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−277758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このエタロンにおける反射膜は微小なギャップを介して対向している。特に、反射膜と反射膜の距離を変更できる可変ギャップ型のエタロンでは、対向する一対の反射膜が帯電した場合に両者の反射膜が引き合って貼り付き、その後、貼り付いた状態を保って、適正なギャップを維持できないことがある。また、反射膜以外の他の部分が帯電した場合も、電荷が反射膜に移動することがあり、帯電の少ないエタロンが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を備え、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1基板における第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、第2基板における第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon)膜が連続して形成されている。
第2基板は、第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されているため、第2電極を通して、第2反射膜の表面に溜まる電荷は移動して、帯電することはない。そして、第1基板の第1反射膜は、微少のギャップを介して第2基板の第2反射膜と対向しており、対向する基板からの電荷の移動などの影響を受けることがなく、第1反射膜の帯電は抑制されている。
このように、本適用例では、第1反射膜および第2反射膜が帯電するのを抑制でき、反射膜間の適正なギャップを維持する波長可変干渉フィルターを提供できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板の前記第2基板と対向する面と反対の面は、平面であり導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第1基板の第2基板と対向する面と反対の面は平面であり、この平面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
第1基板の第2基板と対向する面と反対の面は平面であるため、波長可変干渉フィルターを金属などの筐体などに配置するのが容易であり、かつ筐体などを通して帯電する電荷を逃がすことが可能である。
このように、波長可変干渉フィルターの外面の帯電を防止でき、波長可変干渉フィルターの外面から反射膜への電荷の移動を抑制できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第2基板は前記第2反射膜を有する可動部と、前記可動部の周りに前記可動部よりも厚みが薄く形成された薄肉部とを有し、前記第2基板の前記第1基板と対向する面は、平面であり導電性を有する前記ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、波長可変干渉フィルターは可動部と薄肉部を備えたダイヤフラム構造を有している。このため、薄肉部が撓んで可動部が移動し易く、反射膜間のギャップを調整することが容易である。また、第2基板の第1基板と対向する面は、平面に形成されており、第1基板と第2基板とを接合するのが容易である。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下であることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下である。
このことから、ダイヤモンドライクカーボン膜は良好な導電性を有し、反射膜などの表面上に溜まる電荷を逃がすことが容易であり、帯電防止の効果がある。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、反射膜における帯電の少ないフィルターを有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度の優れた光フィルターモジュールを提供できる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる光分析装置は、第1基板と、前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、反射膜における帯電の少ないフィルターを有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度の優れた光分析装置を提供できる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターの製造方法は、第1基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、前記第1基板の第1凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第1凹部を形成する工程と、前記第1基板の前記第1凹部に第1電極を形成する工程と、前記第1基板の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に第1反射膜を形成する工程と、第2基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、前記第2基板の第2凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第2凹部を形成する工程と、前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1電極に対向する第2電極を形成する工程と、前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1反射膜に対向する第2反射膜を形成する工程と、前記第1電極および前記第1反射膜を形成した前記第1基板と、前記第2電極および前記第2反射膜を形成した前記第2基板とを接合する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
この波長可変干渉フィルターの製造方法によれば、第1基板の第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成でき、第2基板における第2電極および第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を連続して形成できる。
このため、反射膜における帯電の少ない波長可変干渉フィルターを製造でき、適正な反射膜間のギャップを適正に維持できる波長可変干渉フィルターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のエタロンの構成を示す平面図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの断面図。
【図3】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図4】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図5】第1実施形態のエタロンに係る固定基板の製造工程を示す工程図。
【図6】第1実施形態のエタロンに係る可動基板の製造工程を示す工程図。
【図7】第1実施形態のエタロンに係る可動基板の製造工程を示す工程図。
【図8】第1実施形態のエタロンに係る固定基板と可動基板の接合工程を示す工程図。
【図9】第2実施形態における光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図。
【図10】第3実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図11】第3実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図12】第4実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図13】第5実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更し、概略の構成を示している。
[第1実施形態]
【0022】
以下、第1実施形態のエタロンを図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のエタロンの構成を示す平面図である。図2は図1のA−A断線に沿う断面図である。
【0023】
(エタロンの構成)
図1に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2に示すように、固定基板(第1基板)50および可動基板(第2基板)60を備えている。
これらの固定基板50および可動基板60は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、固定基板50および可動基板60が接合されて一体に構成される。この接合には、固定基板50および可動基板60に設けられた接合膜57,67が結合することにより固定される。接合膜57,67としては、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用されている。
【0024】
固定基板50は、厚みが例えば500μmの基材をエッチング加工して形成される。この固定基板50には、エッチングにより固定基板50の中央を中心とする円形の第1凹部72が設けられ、中央部に反射膜形成部52、その周りに同心円状に電極形成部51が形成されている。電極形成部51は反射膜形成部52より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部52が突出した形状となっている。
また、電極形成部51の外縁には、可動基板60との接合において可動基板60を支持する支持部59が設けられている。
【0025】
反射膜形成部52の上には導電性のダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜とも呼ぶこともある)56が形成され、さらにその上に第1反射膜53が形成されている。この第1反射膜53は光の反射特性と透過特性とを有し、AgやAg合金などの金属膜により例えば50nmの厚みで形成されている。
【0026】
電極形成部51には、第1電極54が形成されている。第1電極54は平面視で第1反射膜53を取り巻くように円環状に形成されている。そして、第1電極54は引き出し電極55aを介して、固定基板50の四隅のうちの一つの隅部に形成された電極パッド55に接続されている。
第1電極54、引き出し電極55aおよび電極パッド55は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0027】
電極パッド55の下層にはDLC膜56が形成され、このDLC膜56は支持部59の上面まで延出して形成されている。
そして、支持部59のDLC膜56の上には接合膜57が形成されている。
また、固定基板50の可動基板60と対向する面とは反対の面は平面に形成され、全面に導電性のDLC膜56が形成されている。そして、このDLC膜56の上には、第1反射膜53と対向する位置に、SiO2膜などの反射防止膜58が形成されている。
【0028】
なお、DLC膜は膜に含有する水素含有量を制御することで導電性の膜を得ることができる。そして、本実施形態で利用されるDLC膜は抵抗率が1010Ω・cm以下の導電膜が利用されている。
また、DLC膜は透光性を有するため、光の経路にDLC膜を配置しても光を透過し、光学膜として機能する。
【0029】
可動基板60は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが200μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
この可動基板60には、基板中央を中心とする円柱状の可動部61と、その周りに可動部61を保持する薄肉部62と、が形成されている。
薄肉部62は、固定基板50と対向する面とは反対の面に円環状の第2凹部74が形成され、可動部61の厚みより薄くなるように形成されている。
【0030】
このように、可動基板60はダイヤフラム構造を持ち、可動部61が可動基板60の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
そして、可動基板60の固定基板50に対向する面は基材の平面を利用し、エッチング加工された面を有していない。
【0031】
可動基板60の固定基板50と対向する面の全面には、DLC膜66が形成されている。そして、DLC膜66の上に第2反射膜63、第2電極64、引き出し電極65aおよび電極パッド65が形成されている。
第2反射膜63は光の反射特性と透過特性とを有し、第1反射膜53と対向する可動部61に円形状に設けられている。第2反射膜63の材料として第1反射膜53と同様に、AgまたはAg合金が用いられる。なお、第2反射膜63は例えば50nmの厚みに形成されている。
【0032】
第2電極64は第1電極54と対向する薄肉部62に設けられている。この第2電極64は第2反射膜63を取りまくように、円環状に形成されている。
そして、第2電極64は引き出し電極65aを介して、可動基板60の四隅のうちの一つの隅部に形成された電極パッド65に接続されている。この電極パッド65は、前述した固定基板50の電極パッド55と対角となるように配置される。
第2電極64、引き出し電極65aおよび電極パッド65は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0033】
そして、可動基板60には、固定基板50に形成された接合膜57と対応する位置に接合膜67が形成されている。
また、可動基板60の固定基板50と対向する面とは反対の面に、薄肉部62を除いて導電性のDLC膜66が形成されている。
このDLC膜66の上には可動基板60の第2反射膜63と対向する位置に、SiO2膜などの反射防止膜68が形成されている。
【0034】
固定基板50と可動基板60とが接合された状態では、第1反射膜53と第2反射膜63、および第1電極54と第2電極64とがギャップを介して対向配置されている。そして、第1電極54と第2電極64とにより静電アクチュエーター70が構成され、第1反射膜53と第2反射膜63との間のギャップ寸法の調整が行われる。
【0035】
上記のエタロン5では、対向する第1反射膜53と第2反射膜63とのギャップ寸法を変えるために、静電アクチュエーター70を駆動させると、静電力により第1電極54と第2電極64とが引き合い、可動基板60の薄肉部62が撓んで、可動部61が固定基板50に近づくように変位する。可動部61には第2反射膜63が設けられ、第1反射膜53と第2反射膜63との間のギャップを調整することができる。
【0036】
なお、エタロン5は、第1電極54と第2電極64との距離が第1反射膜53と第2反射膜63との距離より大きく形成されている。例えば、第1電極54と第2電極64の間に電圧を印加しない初期状態において、第1電極54と第2電極64との距離が例えば1μm、第1反射膜53と第2反射膜63との距離(ギャップ寸法)が例えば0.5μmに設定されている。このため、第1電極54と第2電極64との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制する構成となっている。
また、本実施形態のエタロン5は、第2基板としての可動基板60の一部である可動部61が第1基板としての固定基板50に対して変位可能に構成したが、可動基板60の全体が固定基板50に対して変位可能な構成としても良い。
【0037】
(エタロンの製造方法)
以下、上記エタロンの製造方法の一例について説明する。
<固定基板の製造工程>
図3、図4、図5は、固定基板の製造工程を示す工程図であり、図2と同様な断面図にて表してある。
まず、図3(a)に示すように、石英ガラスなどの基板の両面を鏡面研磨し、厚み500μmの固定基板50を製作する。
次に、図3(b)に示すように、固定基板50の両面の全面に導電性を有するDLC膜56を成膜する。DLC膜56はCVD(Chemical Vapor Deposition)法により110nmの厚みに形成する。
そして、固定基板50の一方の面にレジストを塗布し、電極形成部、反射膜形成部を作りこむためのレジストパターニングを行う。次に、レジストが開口された部分にO2プラズマを照射してDLC膜56を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図3(c)に示すように、DLC膜56のパターニングが行われる。
【0038】
続いて、図3(d)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、固定基板50をエッチングする。DLC膜56はフッ酸水溶液に対して耐性を有し、DLC膜56を形成していない部分がエッチングされる。エッチングは0.5μmの深さまで行われ、固定基板50に第1凹部72を形成する。
そして、図3(e)に示すように、前工程でエッチング加工した面にDLC膜56をCVD法により成膜する。DLC膜56の膜厚は110nmに形成する。ここでは、前工程でパターニングしたDLC膜56の上からDLC膜56を成膜しても良いし、一旦、前工程でパターニングしたDLC膜56をO2プラズマの照射で除去してから、新たにDLC膜56を成膜しても良い。このようにして、固定基板50の一方の面もDLC膜56で覆われる。
【0039】
次に、固定基板50の第1凹部72を形成した面にレジストを塗布し、電極形成部を作りこむためのレジストのパターニングをする。そして、O2プラズマを照射してレジストが開口された部分のDLC膜56を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図4(a)に示すように、DLC膜56のパターニングが行われる。
続いて、図4(b)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、固定基板50を1μmの深さまでエッチングし、第1凹部72内の電極形成部51と反射膜形成部52とを分離する。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面の全面に電極形成膜54aを成膜する。電極形成膜54aはITO(Indium Tin Oxide)膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚250nmに成膜する。
そして、電極形成膜54a上にレジストを塗布し、第1電極のレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口からITO膜で形成された電極形成膜54aを酸性の溶液でエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図4(d)に示すように、電極形成部51に第1電極54が形成できる。
なお、図示しないが、この電極形成において、反射膜形成部52に形成したDLC膜56と第1電極54とを接続する配線を形成しても良い。この構成によれば、第1反射膜53と第1電極54とが電気的に接続され、第1反射膜53が帯電することがなくなる。
【0041】
続いて、図5(a)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面とは反対の面に、DLC膜56を介して反射防止膜58を形成する。反射防止膜58は分光する光の光路上に位置し、第1反射膜53と対向する位置に形成する。反射防止膜58はSiO2膜で構成され、蒸着法によりメタルマスクを使用して成膜する。なお、SiO2膜の厚みは90nmに設定する。
次に、図5(b)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面に反射膜形成膜53aを全面に成膜する。反射膜形成膜53aはAg合金膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚50nmに形成する。
【0042】
そして、反射膜形成膜53aの上にレジストを塗布し、第1反射膜を形成するためのレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口から例えば燐酸硝酢酸水溶液を用いて反射膜形成膜53aをエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図5(c)に示すように、反射膜形成部52に第1反射膜53が形成できる。なお、第1反射膜53はDLC膜56の上に形成する。
次に、図5(d)に示すように、固定基板50の第1凹部72を形成した面において、支持部59の上面に形成されたDLC膜56の上に接合膜57を成膜する。接合膜57はメタルマスクを使用してCVD法により形成し、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用される。なお、プラズマ重合膜の厚みは100nmに設定する。
【0043】
<可動基板の製造工程>
図6、図7は可動基板の製造工程を示す工程図である。
まず、図6(a)に示すように、石英ガラスなどの基板の両面を鏡面研磨し、厚み200μmの可動基板60を製作する。
次に、図6(b)に示すように、可動基板60の両面の全面に導電性を有するDLC膜66を成膜する。DLC膜66はCVD法により110nmの厚みに形成する。
そして、可動基板60の一方の面にレジストを塗布し、ダイヤフラム構造の薄肉部を作りこむためのレジストパターニングを行う。次に、レジストが開口された部分にO2プラズマを照射して、DLC膜66を除去し、その後、レジストを剥離する。このようにして、図6(c)に示すように、DLC膜66のパターニングが行われる。
【0044】
続いて、図6(d)に示すように、フッ酸水溶液を用いて、可動基板60をエッチングする。DLC膜66はフッ酸水溶液に対して耐性を有し、DLC膜66を形成していない部分がエッチングされる。エッチングは170μmの深さまで行われ、可動基板60に第2凹部74を形成し、第2凹部74の底面である薄肉部62を形成する。
そして、図6(e)に示すように、第2凹部74を形成した面とは反対の面の全面に電極形成膜64aを成膜する。電極形成膜64aはITO膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚200nmに成膜する。
【0045】
次に、電極形成膜64a上にレジストを塗布し、第2電極のレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口からITO膜で形成された電極形成膜64aを酸性の溶液でエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図7(a)に示すように、可動基板60に第2電極64が形成できる。
続いて、図7(b)に示すように、可動基板60の第2凹部74を形成した面に、DLC膜66を介して反射防止膜68を形成する。反射防止膜68は分光する光の光路上に位置し、第2反射膜63と対向する位置に形成する。反射防止膜68はSiO2膜で構成され、蒸着法によりメタルマスクを使用して成膜する。なお、SiO2膜の厚みは90nmに設定する。
【0046】
次に、図7(c)に示すように、可動基板60の第2電極64を形成した面に反射膜形成膜63aを全面に成膜する。反射膜形成膜63aはAg合金膜にて構成され、スパッタリング法により膜厚50nmに形成する。
そして、反射膜形成膜63aの上にレジストを塗布し、第2反射膜を形成するためのレジストパターニングを行う。その後、レジストの開口から例えば燐酸硝酢酸水溶液を用いて反射膜形成膜63aをエッチングする。そして、レジストを剥離すると、図7(d)に示すように、第2反射膜63が形成できる。なお、第2反射膜63はDLC膜66の上に形成する。
【0047】
次に、図7(e)に示すように、可動基板60の第2電極64および第2反射膜63を形成した面において、固定基板の支持部と対応する部分に接合膜67を成膜する。接合膜67はメタルマスクを使用してCVD法によりDLC膜66の上に形成する。また、この接合膜67はポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜であり、厚みは100nmに設定する。
【0048】
<固定基板と可動基板の接合工程>
図8は固定基板と可動基板の接合工程を示す工程図である。
上記の製造工程により得られた固定基板50と可動基板60とを接合する工程では、まず、それぞれの接合膜57,67に活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。なお、活性化処理を行う際に、反射膜を覆うメタルマスクを使用することで、反射膜を保護することができる。
図8に示すように、接合膜57,67に活性化処理を施した後、固定基板50と可動基板60のアライメントを行い、重ね合わせて荷重をかけることで固定基板50と可動基板60の接合が行われ、エタロン5が完成する。
なお、上記の製造工程では一つの固定基板と一つ可動基板をそれぞれ形成して、それぞれを接合することでエタロンを製造する工程として説明したが、複数の固定基板を一つの大きな基板に形成し、また複数の可動基板を一つの大きな基板に形成して、両者を接合した後に個片に切り分ける製造方法であってもよい。
【0049】
(第1実施形態の作用効果)
以上、本実施形態によれば以下の効果を有する。
本実施形態のエタロン5は、固定基板50における第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56が形成され、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されている。
可動基板60は、第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66が連続して形成されているため、第2電極64を通して、第2反射膜63の表面に溜まる電荷は移動して、帯電することはない。そして、固定基板50の第1反射膜53は、微少のギャップを介して可動基板60の第2反射膜63と対向しており、対向する基板からの電荷の移動などの影響を受けることがなく、第1反射膜53の帯電は抑制されている。
このように、本実施形態では、第1反射膜53および第2反射膜63が帯電するのを抑制し、反射膜間の適正なギャップを維持するエタロン5を提供できる。
【0050】
また、本実施形態のエタロン5は、固定基板50の可動基板60と対向する面と反対の面は平面であり、導電性を有するDLC膜56が全面に形成されている。
固定基板50の可動基板60と対向する面と反対の面は平面であるため、エタロン5を金属などの筐体などに配置するのが容易であり、かつ筐体などを通して帯電する電荷を逃がすことが可能である。
このように、エタロン5の外面の帯電を防止でき、エタロン5の外面から反射膜への電荷の移動を抑制できる。
【0051】
本実施形態のエタロン5は、可動部61と薄肉部62を備えたダイヤフラム構造を有している。このため、薄肉部62が撓んで可動部61が移動し易く、反射膜間のギャップを調整することが容易である。また、可動基板60の固定基板50と対向する面は、平面に形成されており、固定基板50と可動基板60とを接合するのが容易である。
【0052】
本実施形態のエタロン5は、DLC膜56,66の抵抗率が1010Ω・cm以下であることから、DLC膜56,66は良好な導電性を有し、反射膜などの表面上に溜まる電荷を逃がすことが容易であり、帯電防止の効果がある。
また、DLC膜56,66は透光性を有するため、第1反射膜53、第2反射膜63の下にDLC膜56,66を配置しても光を透過し、フィルターとしての特性を劣化させることがなく、光学膜として利用できる。
【0053】
本実施形態のエタロン5の製造方法は、固定基板50の第1反射膜53の下層に導電性を有するDLC膜56を形成でき、可動基板60における第2電極64および第2反射膜63の下層に導電性を有するDLC膜66を連続して形成できる。
このため、第1反射膜53、第2反射膜63において帯電の少ないエタロン5を製造でき、適正な反射膜間のギャップを適正に維持できるエタロン5を提供できる。
また、DLC膜56,66は化学的に安定しており、エッチング液に対して耐性を有するため、エッチング加工における保護膜として利用することができる。このため、製造工程を簡素化することができる。
さらに、エタロン5の製造工程中においてもDLC膜が帯電防止膜として機能して、ごみなどの異物が基板に吸着しにくくなり、歩留まりが向上してコストの低減を図ることができる。
[第2実施形態]
【0054】
次に、上記第1実施形態で説明したエタロンを使用した、光フィルターモジュールおよび光分析装置について説明する。第2実施形態では、測定物の色度を測定する測色装置を例にとって説明する。
図9は光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光フィルターモジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0055】
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図9には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0056】
光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーター70に印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0057】
電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター70の第1電極54および第2電極64に印加する電圧を制御する。
【0058】
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0059】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター70への印加電圧を設定する。
【0060】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0061】
このように、本実施形態の光分析装置としての測色装置1および光フィルターモジュールとしての測色センサーは、反射膜における帯電の少ないエタロン5を有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、分光精度に優れている。
以上、第2実施形態では、光分析装置として測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
[第3実施形態]
【0062】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0063】
図10は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図11は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図10に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0064】
また、図11に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0065】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0066】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0067】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0068】
なお、図10,11において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明のエタロンを用いてガスの成分を検出することができる。
【0069】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
[第4実施形態]
【0070】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0071】
図12は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0072】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0073】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0074】
また、図12において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0075】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
[第5実施形態]
【0076】
また、他の光分析装置として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図13は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図13に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0077】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0078】
さらには、光フィルターモジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0079】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0080】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5…エタロン、21…光源、22…レンズ、31…受光部、32…電圧制御部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、50…第1基板としての固定基板、51…電極形成部、52…反射膜形成部、53…第1反射膜、53a…反射膜形成膜、54…第1電極、54a…電極形成膜、55…接続パッド、56…ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、57…接合膜、58…反射防止膜、59…支持部、60…第2基板としての可動基板、61…可動部、62…薄肉部、63…第2反射膜、63a…反射膜形成膜、
64…第2電極、64a…電極形成膜、65…接続パッド、66…ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、67…接合膜、68…反射防止膜、70…静電アクチュエーター、72…第1凹部、74…第2凹部、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を備え、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面と反対の面は、平面であり導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2基板は前記第2反射膜を有する可動部と、前記可動部の周りに前記可動部よりも厚みが薄く形成された薄肉部とを有し、
前記第2基板の前記第1基板と対向する面は、平面であり導電性を有する前記ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
を含むことを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、
を含むことを特徴とする光分析装置。
【請求項7】
第1基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、
前記第1基板の第1凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第1凹部を形成する工程と、
前記第1基板の前記第1凹部に第1電極を形成する工程と、
前記第1基板の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に第1反射膜を形成する工程と、
第2基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、
前記第2基板の第2凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第2凹部を形成する工程と、
前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1電極に対向する第2電極を形成する工程と、
前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1反射膜に対向する第2反射膜を形成する工程と、
前記第1電極および前記第1反射膜を形成した前記第1基板と、前記第2電極および前記第2反射膜を形成した前記第2基板とを接合する工程と、を有する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、を備え、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が連続して形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面と反対の面は、平面であり導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2基板は前記第2反射膜を有する可動部と、前記可動部の周りに前記可動部よりも厚みが薄く形成された薄肉部とを有し、
前記第2基板の前記第1基板と対向する面は、平面であり導電性を有する前記ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜の抵抗率が1010Ω・cm以下である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
を含むことを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、前記第1基板に対して一部または全体が変位可能な第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板と対向する面に第1凹部が形成され、前記第1凹部に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面の前記第1凹部に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1基板における前記第1反射膜の下層に形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第2基板における前記第2電極および前記第2反射膜の下層に連続して形成された導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部から得られる信号に基づき前記光の光特性を分析する分析処理部と、
を含むことを特徴とする光分析装置。
【請求項7】
第1基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、
前記第1基板の第1凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第1凹部を形成する工程と、
前記第1基板の前記第1凹部に第1電極を形成する工程と、
前記第1基板の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に第1反射膜を形成する工程と、
第2基板の表面に導電性を有するダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程と、
前記第2基板の第2凹部を設ける部分の前記ダイヤモンドライクカーボン膜をパターニングする工程と、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜をマスクとしてエッチングして前記第2凹部を形成する工程と、
前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1電極に対向する第2電極を形成する工程と、
前記第2基板の前記第2凹部を形成した面とは反対の面の前記ダイヤモンドライクカーボン膜上に前記第1反射膜に対向する第2反射膜を形成する工程と、
前記第1電極および前記第1反射膜を形成した前記第1基板と、前記第2電極および前記第2反射膜を形成した前記第2基板とを接合する工程と、を有する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−44987(P2013−44987A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183380(P2011−183380)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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