説明

波長変換材料、波長変換層、波長変換フィルタ、波長変換フィルタを備えた波長変換発光デバイス及び光電変換デバイス

【課題】高い蛍光強度を有する波長変換材料、波長変換フィルタ、また、該波長変換フィルタを用いた波長変換発光デバイス及び光電変換デバイスを提供すること。
【解決手段】一般式(I)で表されるシアニン化合物を少なくとも一種含有する波長変換材料である。


(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR−、−NR−を表し、A及びAは炭素原子数6〜20の芳香環を表し、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の構造を有するシアニン化合物を含む波長変換フィルタに関する。本発明の波長変換フィルタは、液晶、PDP、有機EL等のディスプレイ、イメージセンサ、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、オーディオ、ビデオ、カーナビゲーション、電話機、携帯端末機及び産業用計測器等の表示用、太陽電池等の光電変換素子用、蛍光灯、LED、EL照明等の照明用、色素レーザー用、コピー防止用等に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、エネルギーを吸収して励起した電子が、基底状態へ戻る際に余分なエネルギーとして電磁波を放射するような材料は、吸収と放出のエネルギーの違いから波長変換能を有しており、波長変換色素(色変換色素)として、染料、顔料、光学フィルタ、農業用フィルムに用いられており、有機化合物においては吸収及び放出の波長が無機化合物に比較して制御しやすいため盛んに研究されてきた。特に吸収したエネルギーを蛍光として放射する化合物は蛍光色素と呼ばれ、可視光の蛍光を放射するものは実用性が高く、ディスプレイ等の表示装置、蛍光灯等の照明装置、生物学及び医学におけるマーカーとしての用途が挙げられる。
【0003】
波長変換色素の中でも、高い蛍光強度を有する色素は高輝度高効率の波長変換フィルタ用として用いることができ、特に、固体でも蛍光を放射するものは実用性に優れるため望まれていた。
【0004】
特許文献1には記録色素用途としてベンゾオキサゾール骨格を有するシアニン化合物が例示されている。特許文献2には感光性平版印刷版材料の増感剤としてベンゾオキサゾール骨格を有するシアニン化合物が例示されている。特許文献3には化学センサー用途としてシアニン化合物が例示されている。しかしながら、これらの文献には波長変換能に関する記載は無く、波長変換フィルタに用いることは記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/114073号公報
【特許文献2】国際公開第2008/117738号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第520262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は高い蛍光強度を有する波長変換材料、波長変換フィルタ、また、該波長変換フィルタを用いた波長変換発光デバイス及び光電変換デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するシアニン化合物を有する波長変換材料が蛍光強度に優れ、固体においても蛍光を発し、該波長変換材料を有する波長変換フィルタが蛍光強度に優れることを知見し、これを使用することにより、上記課題を解決し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、第1の実施形態は、下記一般式(I)で表されるシアニン化合物を少なくとも一種含有する波長変換材料を提供することで上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR−、−NR−を表し、A及びAは炭素原子数6〜20の芳香環を表し、該芳香環は置換されていてもよく、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基及び該アリール基と、A又はAとの結合は、−O−、−S−、−NR’’−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、該メチレン基中の連続したメチレン基は、−CH=CH−又は−C≡C−を表してもよい。R、R’及びR’’は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表す。Anq−はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0010】
本発明の第2の実施形態の波長変換層は第1の実施形態に記載の波長変換材料を用いてなる層であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタは第2の実施形態に記載の波長変換層を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の実施形態の波長変換発光デバイスは、発光部と、第3の実施形態に記載の波長変換フィルタとを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の実施形態の光電変換デバイスは、光電変換素子と、第3の実施形態に記載の波長変換フィルタとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成を採ることによって、本発明のシアニン化合物を含む波長変換フィルタは、蛍光強度に優れ、色純度の高い画像表示用途に好適な波長変換フィルタであり、更に、該波長変換フィルタは波長変換効率に優れるため、波長変換発光デバイス及び光電変換デバイスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタを示す断面図であり、(a)〜(c)は各構成例を示す図である。
【図2】本発明の第4の実施形態の波長変換方式を用いた波長変換発光デバイスの概略断面図である。
【図3】本発明の第5の実施形態の波長変換方式を用いた光電変換デバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のシアニン化合物を含有してなる波長変換材料、波長変換フィルタ、波長変換発光デバイス、光電変換デバイスについて、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0017】
上記一般式(I)におけるR〜R、R、R’及びR’’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−へプタデシル、n−オクタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−SO2−で中断された基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル、シクロペンタンカルボニル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−OCO−で中断された基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−COO−で中断された基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CH=CH−を表す基としては、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−C≡C−を表す基としては、エチニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニルなどが挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるR〜R、R、R’及びR’’で表される置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、A又はAとの結合が−O−で中断された基としてはフェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ等が挙げられ、A又はAとの結合が−S−で中断された基としてはフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ等が挙げられ、A又はAとの結合が−SO2−で中断された基としては、フェニルスルホン、1−ナフチルスルホン、2−ナフチルスルホン等が挙げられ、A又はAとの結合が−CO−で中断された基としては、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられ、A又はAとの結合が−OCO−で中断された基としては、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ等が挙げられ、A又はAとの結合が−COO−で中断された基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)におけるR〜Rで表される置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、4−クロロフェニルメチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、ベンジルオキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基、1−アントリルメトキシ等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、ベンジルチオ、フェニルチオメチル、フェニルチオエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−SO2−で中断された基としては、ベンジルスルホニル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル、1−ナフチルメチルカルボニル基等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−OCO−で中断された基としては、フェニルアセテート基、1−ナフチルアセテート機等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−COO−で中断された基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェニチルオキシカルボニル基等が挙げられ、該アリールアルキル基中のアルキル基が−CH=CH−を表す基としてはスチリル基などが挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)におけるA及びAで表される炭素原子数6〜20の置換されていてもよい芳香環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環などが挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)におけるR〜Rで表される置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、上記一般式(I)におけるA及びAを置換していてもよい置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。尚、炭素原子を有する置換基で置換される場合は、該置換基を含めたR〜R、R、R’及びR’’で表される基全体の炭素原子数が規定された炭素原子数範囲を満たすものとする。
【0022】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンは、下記〔化2〕に示されるような共鳴構造を有するが、一般式(I)及び(I’)のどちらの構造式であってもよい。
また、上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンにおいて、Xが−CR−を表すとき、RとRで表される基が結合する不斉炭素原子をキラル中心とするエナンチオマー、ジアステレオマー又はラセミ体等の光学異性体が存在する場合があるが、これらのうち、いかなる光学異性体を単離して用いても、あるいはそれらの混合物として用いてもよい。
【0023】
【化2】

(式中、A、A、R、R、R及びXは上記一般式(I)と同じである)
【0024】
本発明に係る上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンの具体例としては下記化合物が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
上記一般式(I)におけるAnq−で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リン酸アニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開平8−253705号公報、特表2004−503379号公報、特開2005−336150号公報、国際公開第2006/28006号パンフレット等に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドアニオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン、ジベンゾイル酒石酸アニオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等の金属錯体化合物であるクエンチャーアニオンも本発明の波長変換機能を阻害しない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0030】
上記のクエンチャー陰イオンとしては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表されるもの、下記式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)又は(12)で表されるものが挙げられ、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開第98/29257号パンフレット等に記載されたような陰イオンも挙げられる。
【0031】
【化7】

(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表し、R18及びR19は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルホリノ基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の数を表す。また、R20、R21、R22及びR23は、各々独立にアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
上記一般式(I)中のAnq−で表される陰イオンとしては、以上に挙げた各種陰イオンの中でも、ハロゲンアニオン、六フッ化リン酸アニオン、四フッ化ホウ素アニオン、過塩素酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオンが好ましい。
【0035】
上記一般式(I)で表されるシアニン化合物は、上記シアニン陽イオンとAnq−で表される陰イオンとの塩であり、従来周知の方法に準じて製造することができる。また、上記例示のシアニン陽イオンとAnq−で表される陰イオンは電荷を中性に保つ形で任意に組み合わせることができる。
【0036】
シアニン化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、2−メチルチオ基を有するベンゾオキサゾール誘導体四級塩(1)とインドレニン誘導体四級塩(2)を反応させ、必要に応じてアニオン交換をする方法によって製造できる。また、国際公開第2007/114073号パンフレットに記載された方法によって合成することもできる。
【0037】
【化10】

(式中、A、A、R、R、R、X及びAnは上記一般式(I)と同じである)
【0038】
本発明の第1の実施形態における波長変換材料とは、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物又はシアニン化合物の他に他の色素を含んだ組成物や塗液のことであり、また、充填剤、封止剤、接着剤などの形態をとってもよい。
該組成物には、必要に応じて、溶剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光安定剤、硬化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、界面活性剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、重金属不活性剤、ハイドロタルサイト、有機カルボン酸、着色剤、加工助剤、無機添加剤、充填剤、透明化剤、造核剤、結晶化剤等を使用することができる。
【0039】
上記他の色素とは、特に限定されないが、例えばシアニン系色素、ピリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、クマリン色素系染料、ナフタルイミド系色素、ピロメテン系色素、ペリレン系色素、ピレン系色素、アントラセン系色素、スチリル系色素、ローダミン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、ジケトピロロピロール系色素、イリジウム錯体系色素、ユーロピウム錯体系色素などが挙げられる。
【0040】
また、上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール系、ジオール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、脂肪族または脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系、シアノ基を有する炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素系等が挙げられる。
【0041】
本発明の第2の実施形態の波長変換層は、吸収した光より長波長の光を蛍光として放出する特性を有する。
【0042】
本発明の第2の実施形態の波長変換層は、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を少なくとも1種類含有する第1の実施形態の波長変換材料を用いていれば特に形態を問わないが、例えば、上記シアニン化合物をバインダー樹脂中に溶解又は分散した樹脂液から得られるフィルム、フィルタからなってもよいし、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物のみからなる単独膜又は積層体からなってもよい。また、上記シアニン化合物は充填剤、封止剤、接着剤等の形態にして波長変換層に含有させてもよい。
【0043】
本発明の第2の実施形態の波長変換層の製造方法は、例えば蒸着法、スパッタ法や溶媒中に溶解又は分散した後ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法あるいはエクストルージョンコート法によって恒久支持体又は一時支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。
【0044】
あるいはまた、本発明の第2の実施形態の波長変換層の製造方法として、第1の実施形態が上記一般式(I)で表されるシアニン化合物と高分子材料とを含む混合物であり、該混合物を押出成形、キャスト成形又はロール成形して、直接的に自立層を形成してもよい。用いることのできる高分子材料は、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル; ポリアミド; ポリカーボネート; ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ− 1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合樹脂等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂等を含む。
【0045】
あるいはまた、本発明の第2の実施形態の波長変換層の製造方法として、第1の実施形態が上記一般式(I)で表されるシアニン化合物と、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂、光重合開始剤及び/又は熱硬化剤との混合物であり、該混合物を光照射及び/又は加熱処理により硬化膜とすることもできる。
【0046】
あるいはまた、ウェットエッチングを伴うパターニングの必要がある用途に本発明の第2の実施形態の波長変換層を使用する場合には、第1の実施形態が一般式(I)で表されるシアニン化合物と光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)からなる組成物を用いることで製造することができる。この場合には、光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)の硬化物が、パターニング後の波長変換層のバインダーとして機能する。また、パターニングを円滑に行うために、該光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂は、未露光の状態において有機溶媒又はアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。用いることができる光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)は、具体的には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと、光又は熱重合開始剤とからなる組成物、(2)ボリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物、(3)鎖状又は環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物(ナイトレンが発生して、オレフィンを架橋させる)、及び(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物等を含む。特に、(1)のアクリル系多官能モノマー及びオリゴマーと光又は熱重合開始剤とからなる組成物を用いることが好ましい。なぜなら、該組成物は高精細なパターニングが可能であり、且つ重合して硬化した後は、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性が高いからである。
【0047】
本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタは、例えば、LED照明、エレクトロルミネッセンス照明等に用いることができる。
【0048】
本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタは、第2の実施形態の波長変換層を含んでいればよく、波長変換フィルタの構成に制限はない。本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタの構成例を図1に示す。例えば、波長変換フィルタは、支持体100と、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を含有する波長変換層120とを含み、必要に応じて、下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、潤滑層150等を設けることができる。図1(a)に示すように、支持体100の一方の表面上に、下塗り層110、波長変換層120、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、図1(b)に示すように、透明支持体の一方の表面上に下塗り層110、波長変換層120、ハードコート層140及び潤滑層150を積層し、他方の表面上に下塗り層110、反射防止層130及び潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、本発明の波長変換フィルタは、図1(c)に示すように、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を含有する波長変換支持体105の表面上に下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140及び潤滑層150を積層した構造であってもよい。上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を含有する波長変換層120又は波長変換支持体105は、本発明の第2の実施形態の波長変換層として機能する。
【0049】
支持体100の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリフルオレン樹脂、シリコーン樹脂等の合成高分子材料を用いることができる。支持体100は可視光に対して80%以上の透過率を有することが好ましく、86%以上の透過率を有することがさらに好ましい。透明支持体100のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。透明支持体100の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0050】
図1中の各層には、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加してもよい。また、支持体100に各種の表面処理を施してもよい。該表面処理は、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等を含む。
【0051】
波長変換層120又は波長変換支持体105は、特に制限されるものではないが、波長変換層120の厚みは0.1〜100μmの範囲から、波長変換支持体105の厚みは10〜10000μmの範囲から、それぞれ選択されることが好ましい。
【0052】
波長変換層120又は波長変換支持体105は、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を含有し、その使用量は通常波長変換フィルタの単位面積当たり1〜1000mg/m2の範囲内、好ましくは5〜300mg/m2の範囲内とすることが望ましい。このような範囲の使用量とすることにより、充分な波長変換効果を発揮するとともに、本発明の第4の実施形態である波長変換発光デバイス及び第5の実施形態である光電変換デバイスで適切な波長変換効率及び光電変換効果を発揮する。図1(c)の構成で用いられる波長変換支持体105を波長変換層として用いる場合も、同様の範囲内の使用量において上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を用いることが好ましい。上記の単位面積当たりの好ましい使用量を満たすためには、使用するバインダー樹脂の種類等によっても異なるが、例えばバインダー樹脂100質量部に上記シアニン化合物0.001〜10質量部の割合で配合した樹脂液を用いて、前述の好ましい範囲の厚みを持つ波長変換層120又は波長変換支持体105を形成することが望ましい。
【0053】
反射防止層130は、本態様の波長変換フィルタにおける反射を防止して光透過率を向上させるための層である。反射防止層130は、透明支持体100よりも低い屈折率を有する材料から形成される低屈折率層であってもよい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層、ゾルゲル法により得られる層、あるいは微粒子を含む層として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層中に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0054】
反射防止層130を1つ又は複数の低屈折率層と1つ又は複数の中・高屈折率層との積層体から形成することによって、より広い波長領域の光反射を防止することができる。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、後述のアンチグレア機能を付与する場合を除いて、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0055】
中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及び環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
【0056】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。分散させる無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び硫化亜鉛のような金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSが含まれる。あるいはまた、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0057】
反射防止層130は、その表面にアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、反射防止層130が形成される表面(たとえば、粗面化された下塗り層110等)に微細な凹凸を形成するか、あるいはエンボスロール等により反射防止層130表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を付与することができる。アンチグレア機能を有する反射防止層130は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0058】
ハードコート層140は、その下に形成される層(波長変換層120及び/又は反射防止層130)を保護するための層であり、透明支持体100よりも高い硬度を有する材料から形成される。ハードコート層140は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成することもできる。
【0059】
本態様の波長変換フィルタの表面に潤滑層150を形成してもよい。潤滑層150は、波長変換フィルタ表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層150は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコーンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層150の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0060】
上記の下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、及び潤滑層150は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法及びエクストルージョンコート法のような当該技術において知られている任意の塗布方法により形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成する際には、蒸着、スパッタ、CVD、レーザーアブレーション等の当該技術において知られている任意の成膜技術を用いてハードコート層140を形成してもよい。
【0061】
波長変換フィルタの各構成層は、その積層順序に従って1層ずつ順次形成してもよいし、2つ以上の層を同時塗布法により形成してもよい。
【0062】
本発明の第4の実施形態の波長変換発光デバイスは、発光部(光源)と、波長変換部として、本発明の第3の実施形態の波長変換フィルタとを有していれば特に限定はされず、従来の波長変換発光デバイスに準じた構成とすることができる。例として図2に、カラーディスプレイ用の波長変換発光デバイスの例を示す。図2に示した波長変換発光デバイスは、支持体50の上に発光層40が設けられている。該発光層40を発光させる手法は限定されないが、例えばEL(エレクトロルミネッセンス)素子であれば発光層を電極で挟み電流を流すことで発光させることができる。
【0063】
また、発光層40上に赤、緑、青の波長変換層20R、20G及び20Bを設けることで、発光層40から放出された光を波長変換することができる。これらの波長変換層の少なくとも1つが本発明の第1の実施形態の波長変換フィルタである。該波長変換フィルタは、変換後の波長に応じて、適宜赤、緑、青の波長変換層20R、20G、20Bとすることができる。上記波長変換層として、例えば、上記一般式(I)で表されるシアニン化合物をバインダー樹脂中に溶解又は分散した樹脂液から得られたフィルムからなる波長変換フィルタを採用することができる。
【0064】
更に適宜、赤、緑、青のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bを設けることができる。これらのカラーフィルタ層は、赤、緑、青の波長変換層20R、20G及び20Bにより変換された光の色座標又は色純度を最適化するために、必要に応じて設けられるものである。
【0065】
支持体50の材料として、例えば、波長変換フィルムにおける支持体100の材料として挙げたガラス等の無機材料、合成高分子材料を用いることができる。発光層40を発光させる電極を適宜作製するため、電極を形成しやすい支持体としてガラスが好ましい。
【0066】
各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、所望される波長域の光のみを透過させる機能を持つ。各色のカラーフィルタ層10R、10G及び10Bは、波長変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換されなかった光源からの光を遮断し、また波長変換層20R、20G及び20Bによって波長分布変換された光の色純度を向上させることに対して有効である。これらのカラーフィルタ層は、例えば液晶ディスプレイ用カラーフィルタ材料等を用いて形成してもよい。
【0067】
図2に示したRGBの波長変換発光デバイスを一組の画素として、複数の画素を支持体上にマトリックス状に配置することによって、カラーディスプレイ用の波長変換発光デバイスを形成することができる。波長変換層の所望されるパターンは、使用される用途に依存する。赤、緑、及び青の矩形又は円形もしくはその中間の形状の区域を一組として、それをマトリックス状に透明支持体全面に作成してもよい。あるいはまた、微小の区域に分割された適当な面積比で配設される二種の波長変換層を用いて、単独の波長変換層では達成できない単一色を示すようにしてもよい。
【0068】
図2の例ではRGB各色の波長変換層を設けた場合を示したが、青色の光を放出する発光素子を光源として用いる場合には、青色に関して波長変換層を用いずに、カラーフィルタ層のみを用いてもよい。
【0069】
また、上記発光部としては、近紫外から可視域、好ましくは近紫外から青緑色の光を発する任意の光源を用いることができる。そのような光源の例は、無機EL発光素子、有機EL発光素子、プラズマ発光素子、冷陰極管、放電灯(高圧・超高圧水銀灯及びキセノンランプ等)、発光ダイオード等を含む。
【0070】
本発明の第4の実施形態の波長変換発光デバイスにおいて、図2に示されるようにカラーフィルタ層を設ける場合、発光部は波長変換層の側に配置される。
また、本発明の第2の実施形態の波長変換発光デバイスにおいて、カラーフィルタ層を設けずに、例えば波長変換部として図1に示される波長変換フィルタ(カラーフィルタ層を持たない)を用いる場合、発光部は波長変換フィルタのいずれかの側に配置されてもよく、また該波長変換フィルタは光源の表面に直接積層してもよい。
【0071】
本発明の第5の実施形態の光電変換デバイスは、光電変換素子と、本発明の波長変換フィルタとを有していれば特に限定はされず、従来の光電変換デバイスに準じた構成とすることができる。例として図3に、本発明の第3の実施形態の光電変換デバイスとしての太陽電池を示す。光電変換素子240が高効率で発電できるように、周辺の表面シート層200、透明基板210、充填剤層220、集光フィルム230、バックシート層250を波長変換フィルタ化することができる。すなわち、光電変換素子の周辺部剤に上記一般式(I)で表されるシアニン化合物を含ませることで、本発明の波長変換フィルタとしての効果を得ることができる。また、図3に示される上述の各層等のほかに別途波長変換フィルタ層を形成してもよく、例えば各層間に本発明のシアニン化合物を含む接着剤を使用して波長変換フィルタ層を形成することで、同様の効果を得ることが可能である。
【0072】
本発明の第5の実施形態の光電変換デバイスとしては、特に限定されないが、例えば単結晶型、多結晶型、アモルファスシリコン型等のシリコン型太陽電池;GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4系、CdTe−CdS系等の化合物系太陽電池;色素増感型、有機薄膜型等の有機系太陽電池等の太陽電池が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、製造例、評価例、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではない。
【0074】
[製造例1]化合物No.31の六フッ化リン酸塩の製造
N−メチル−2−メチルチオインドリウムのp−トルエンスルホン酸塩10mmol、3−ベンジル−2、3−ジメチルインドレニンの臭素塩10mmol、トリエチルアミン20mmol及びアセトニトリル16gを60℃の条件下にて4時間撹拌した。定法に従い、塩交換を行った後、析出した固体をろ過し、クロロホルム及び水による洗浄、減圧乾燥して目的物である化合物No.31の六フッ化リン酸塩を得た。
【0075】
[製造例2〜6]
製造例2〜6についても製造例1の方法に準じて製造し、目的のシアニン化合物を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
【化11】

【0078】
上記製造例で得た化合物は、H−NMRで目的物であることを確認した。下記表2に結果を示す。
【0079】
【表2】

【0080】
[実施例1〜6及び比較例1]
予め調製した20wt%ポリメチルメタクリレートのトルエン溶液にλmaxにおける吸光度が0.5となるように上記[製造例1、3〜7]で得たシアニン化合物及び比較化合物1を溶解し、ワイヤーバー(RDS30 R.D.S. Webster,N.Y.)にて100μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板へ塗工後、100℃の条件下10分間オーブンで加熱して本発明の光学フィルタを得た。得られた光学フィルタの吸収スペクトルを日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U−3010を用いて、蛍光スペクトルを日立ハイテクノロジーズ社製分光蛍光光度計F4500を用いて各フィルムのλmaxを励起光として測定した。量子効率は日立ハイテクノロジーズ社製分光蛍光光度計F4500とΦ60積分球ユニットを用いて各フィルムのλmax付近を励起光として測定し、面積比率から算出した。結果を下記表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
以上より、実施例1〜6の波長変換フィルタを有し、且つ、蛍光強度に優れるため、本発明の波長変換発光デバイス及び光電変換デバイスに好適であることは明らかである。
【符号の説明】
【0083】
10R 赤色フィルタ層
10G 緑色フィルタ層
10B 赤色フィルタ層
20R 赤波長変換層
20G 緑波長変換層
20B 青波長変換層
30 ブラックマスク
40 発光層
50 支持体
100 支持体
105 波長変換支持体
110 下塗り層
120 波長変換層
130 反射防止層
140 ハードコート層
150 潤滑層
200 表面シート層
210 透明基板
220 充填剤層
230 集光フィルム層
240 光電変換素子
250 バックシート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシアニン化合物を少なくとも一種含む波長変換材料。
【化1】

(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR−、−NR−を表し、A及びAは炭素原子数6〜20の芳香環を表し、該芳香環は置換されていてもよく、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基及び該アリール基とA及びAで表される環構造との結合は、−O−、−S−、−NR’’−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、該メチレン基中の連続したメチレン基は、−CH=CH−又は−C≡C−を表してもよい。R、R’及びR’’は、各々独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表す。Anq−はq価のアニオンを表し、qは1又は2を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換材料からなる波長変換層。
【請求項3】
請求項2に記載の波長変換層からなる波長変換フィルタ。
【請求項4】
発光部と、請求項3に記載の波長変換フィルタとを備えた波長変換発光デバイス。
【請求項5】
光電変換素子と、請求項3に記載の波長変換フィルタとを備えた光電変換デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−102841(P2011−102841A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256952(P2009−256952)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】