説明

波長検出装置

【課題】
分光器に個体差があったり測定環境が変動したりして分光器の特性が変化したとしても、被検出光源から出力される被検出光の波長を誤差なく精度よく検出できるようにする。
【解決手段】
基準光源で発光される基準光の波長に基づいて、被検出光源から出力される被検出光の波長を検出する波長検出装置において、前記被検出光がアルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の場合に、前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長に最も近似した波長を有し、かつ光強度が一定以上の白金Ptの三つの発光線のうち、一つ以上の発光線を前記基準光として用いるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ等の光の波長を検出する波長検出装置に関し、特にアルゴンフッ素(ArF)エキシマレーザ、クリプトンフッ素(KrF)エキシマレーザの発振レーザ光の波長を検出するに好適な波長検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エキシマレーザをステッパ(縮小投影露光装置)の光源として用いる場合には、エキシマレーザの発振レーザ光を狭帯域化する必要がある。さらにこの狭帯域化された発振レーザ光のスペクトルの中心波長が露光中にずれないように高精度に安定化制御する必要がある。
【0003】
図19は一般的なレーザの波長安定化制御装置である。
【0004】
狭帯域化は、狭帯域化モジュール26内に配設されたエタロン、グレーティングなどの狭帯域化素子を、コントローラ20によってドライバ28を介して駆動(たとえばエタロン又はグレーティングの設置角度を調整)することによって行われる。露光中はスペクトルの中心波長が変動しないように波長の制御がなされる。
【0005】
すなわち露光中はモニタモジュール22内において、常時基準光に対する発振レーザ光L0の相対波長が検出されることにより発振レーザ光L0の絶対波長が検出される。
【0006】
次にこの検出結果が、コントローラ20にフィードバックされることにより狭帯域化素子がドライバ28を介して駆動される。
【0007】
そしてレーザチャンバ27を介して発光されるレーザ光L0のスペクトルの中心波長が目標とする波長に固定される。
【0008】
特許文献1では、アルゴンフッ素エキシマレーザ(波長約193.3nm)の発振レーザ光の絶対波長を検出するための基準光として波長193.696nmの砒素(As)の発光線を使用している。
【0009】
すなわち、砒素封入放電ランプから発光される発光線を基準光として分光器に入射させる。同時に波長を検出したいアルゴンフッ素エキシマレーザの発振レーザ光を被検出光として同分光器に入射させる。そして分光器では、基準光と被検出光が分光され、分光した光の像がラインセンサ上に結像される。ラインセンサ上の検出位置は、検出波長に対応する。
【0010】
そして分散値を用いてラインセンサ上の検出位置の差から、基準光に対する被検出光の相対波長を求め、この求めた相対波長と既知の基準光の波長に基づき被検出光の絶対波長を演算している。
【0011】
ここで分散値について説明する。図12はラインセンサのセンサチャンネル番号(ラインセンサ上の位置)とセンサ信号強度の関係を示す。ラインセンサは複数の受光チャンネルを備えており、最大強度の光を検出したチャンネル番号に応じてラインセンサ上の光検出位置が定まる。ラインセンサでは、波長に応じてラインセンサへの入射位置が異なるので、ラインセンサの光検出位置から光の波長を検出することができる。よって光を検出したチャンネル番号から光の波長が定まる。
【0012】
分散値は、ラインセンサのチャンネル間隔(単位μm)に相当する波長(単位nm)のことである。分散値(ラインセンサのチャンネル間隔に相当する波長)を定めることができれば、この分散値を用いて基準光Laを検出したチャンネル番号Saと被検出光L0を検出したチャンネル番号S0との差から、基準光Laに対する被検出光L0の相対波長を求めることができる。
【0013】
チャンネル間隔がどの程度の波長に相当するか(分散値)は、センサ上に光を導く分光器の特性によって定まる。分光器の特性は、グレーティングの溝の数、凹面鏡の焦点距離、空気中における光の屈折率など分光器を構成する各種光学要素部品の特性値によって定まる。
【0014】
ここで従来は、分光器の特性は既知であるとして、つまり分散値は既知の値として被検出光の波長λ0を演算していた。
【0015】
具体的には、分光器内部の凹面鏡の焦点距離などの設計値に基づいて分光器毎に理論的(分光器設計上の)分散値Dt(センサ1チャンネル当たりの波長)を求める。
【0016】
そしてこの求めた理論的分散値Dtを固定して、基準光Laの検出チャンネル番号Saと被検出光L0の検出チャンネル番号S0との差から基準光Laに対する被検出光L0の相対波長を求め、この求めた相対波長と基準光Laの既知の波長λa(193.696nm)から被検出光L0の波長λ0を演算するようにしていた。
【特許文献1】特開平4−163980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし設計上の分光器の特性値と、実際に製造された個々の分光器の特性値とは若干異なる。つまり分光器の個体差により理論的分散値Dtには誤差が含まれている。
【0018】
また分光器の特性は温度の変化、圧力の変化等測定環境の変化に応じて変化する。たとえば温度が変化することによってグレーティングの溝の間隔が変化する。また圧力が変化すると空気中における光の屈折率が変化する。このため温度、圧力の変化によってセンサの検出位置と波長との関係が変動してくる。
【0019】
以上のように設計上の分光器の特性と実際に製造された個々の分光器の特性との違い、測定環境の変動による分光器の特性の変動などに起因して、分光器の実際の分散値Dは理論的分散値Dtとは異なる値を示す。したがって分光器の特性が既知であるとして、つまり理論的分散値Dtが既知であるとして、基準光Laの検出チャンネル番号Saと被検出光L0の検出チャンネル番号S0との差から基準光Laに対する被検出光L0の相対波長を求め、この求めた相対波長と基準光Laの既知の波長λa(193.696nm)から被検出光L0の波長λ0を演算した場合には、この求めた波長λ0には検出誤差が含まれることになる。波長λ0には0.0001nmオーダーの検出精度が求められているが、この要請に応えることはできない。
【0020】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、分光器に個体差があったり測定環境が変動したりして分光器の特性が変化したとしても、被検出光源から出力される被検出光の波長を誤差なく精度よく検出できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、本発明の第1発明では、上記解決課題を達成するために、
基準光源で発光される基準光の波長に基づいて、被検出光源から出力される被検出光の波長を検出する波長検出装置において、
前記被検出光がアルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の場合に、前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長に最も近似した波長を有し、かつ光強度が一定以上の白金Ptの三つの発光線のうち、一つ以上の発光線を前記基準光として用いるようにしている。
【0022】
上記第1発明を図13に対応させて説明する。
【0023】
すなわち第1発明によれば基準光源の基準光として、アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長に最も近似した波長を有し、かつ光強度が一定以上の白金Ptの三つの発光線のうち、一つ以上の発光線が用いられる。
【0024】
ここで例えば図13に示すようにアルゴンフッ素エキシマレーザの被検出光L0の波長λ0に最も近似した波長をもつ白金Ptの3つの発光線LP1、LP2、LP3が基準光として用いられた場合、センサ10上における基準光LP1、LP2、LP3の波長λP1、λP2、λP3に基づいて、被検出光L0の波長λ0が検出される。
【0025】
このように第1発明によれば、アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長に最も近似した波長を有し、かつ光強度が一定以上の白金Ptの三つの発光線のうち、一つ以上の発光線基準光として用いているので、被検出光L0の波長λ0を検出することができる。
【0026】
これにより分光器7に個体差があったり測定環境が変動などしたりして分光器7の特性が変化したとしても、被検出光源1から出力される被検出光L0の波長λ0を誤差なく精度よく検出することができる。
【0027】
また、第2発明では、上記解決課題を達成するために、
被検出光源から出力される被検出光の光強度を極小にする吸収線に基づいて前記被検出光の波長を検出する波長検出装置において、
前記被検出光がアルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の場合に、前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長と近似した波長を有する白金Pt、砒素As、ネオンNe、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線のうち、一つ以上の吸収線を前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線に対する吸収線として用いるようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下図面を参照して本発明に係る波長検出装置について説明する。
【0029】
本実施形態ではアルゴンフッ素(ArF)エキシマレーザの波長を検出する場合を想定している。しかしクリプトンフッ素(KrF)エキシマレーザの波長を検出する場合にも適用することができる。クリプトンフッ素エキシマレーザの波長は約248.4nmである。アルゴンフッ素エキシマレーザの波長は約193.3nmである。またレーザ光以外の光の波長の検出にも適用することができる。
【0030】
図1は実施形態の波長検出装置の構成を示す。
【0031】
被検出光源1は、波長を検出したい被検出光L0が射出される光源であり、本実施形態ではアルゴンフッ素エキシマレーザ装置である。アルゴンフッ素エキシマレーザ装置のレーザチャンバで放電励起されることによって発振されたレーザ光は、フロントミラー21と狭帯域化モジュール26が構成する共振器内を往復移動することによって増幅されレーザ取り出し窓から所定パワーの発振レーザ光L0として射出される。
【0032】
一方基準光源2は、ネオンNeがバッファガスとして封入されている砒素(As)ランプである。なおバッファガスはランプのフィラメントが燃えないようにランプ内に封入されている。砒素ランプはホローカソードランプが使用される。よって基準光源2からは、波長が異なる2つの基準光Ln、Laとして、波長193.00345nmのネオンNeの発光線Lnと、波長193.7590nmの砒素Asの発光線Laが発光される。したがって本実施形態によれば1つの基準光源2から2つの基準光Ln(ネオン)、La(砒素)を発光できるという利点が得られる。2つの基準光源を別々に用意する必要はない。
【0033】
被検出光L0はレンズ3を介してビームスプリッタ5に入射される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5で反射されシャッタ6に導かれる。基準光Ln、Laはレンズ4を介してビームスプリッタ5に入射される。基準光Ln、Laの一部はビームスプリッタ5を透過しシャッタ6に導かれる。
【0034】
こうして被検出光L0および基準光Ln、Laはシャッタ6を通過して分光器7内に入射される。
【0035】
分光器7に被検出光L0および基準光Ln、Laが入射されると、まず凹面鏡M1に入射され、反射光が回折格子であるグレーティング8に入射される。入射される光の波長に応じてグレーティング8の回折角度が変化する。グレーティング8で回折された被検出光L0および基準光Ln、Laは凹面鏡M2に入射され、反射光が反射鏡9を介してセンサ10に導かれる。
【0036】
センサ10はラインセンサが使用される。具体的には一次元または二次元のイメージセンサまたはダイオードアレイを用いて構成することができる。
【0037】
分光器7に入射される光の波長が異なればグレーティング8での回折角度が異なりセンサ10への入射位置が異なる。この結果センサ10へは波長の異なる被検出光L0および基準光Ln、Laが分光されて入射され、センサ10上の検出位置に応じて分光器7に入射された被検出光L0および基準光Ln、Laの各波長λ0、λnおよびλaを検出することができる。すなわち光の波長によってラインセンサ上でのスペクトルプロファイルが変化する。なおグレーティングの代わりにエタロンを使用した場合には、ラインセンサ上でのフリンジパターンが変化する。
【0038】
基準光源2で発光された基準光Ln、Laと、被検出光源1で発光された被検出光L0を同時に分光器7に入射させてもよく、基準光と被検出光とを時間的にずらして分光器7に入射させてもよい。
【0039】
本実施形態では、被検出光源1のエキシマレーザ装置をステッパ(縮小投影露光装置)の光源として用いる場合を想定している。この場合エキシマレーザの発振レーザ光L0を狭帯域化する必要がある。さらにこの狭帯域化された発振レーザ光L0のスペクトルの中心波長が露光中にずれないように高精度に安定化制御する必要がある。
【0040】
狭帯域化は、レーザチャンバの共振器内に配設されたエタロン、グレーティングなどの狭帯域化素子を駆動(たとえばエタロン又はグレーティングの設置角度を調整)することによって行われる。露光中はスペクトルの中心波長が変動しないように波長の制御がなされる。
【0041】
このために、図1に示す波長検出装置によって、露光中は常時基準光Ln、Laに対する発振レーザ光L0の相対波長が検出されることにより発振レーザ光L0の絶対波長λ0が検出される。そしてこの検出結果がフィードバックされることにより狭帯域化素子が駆動され、発振レーザ光L0のスペクトルの中心波長が目標とする波長に固定される。
【0042】
コントローラ20は後述する図3に示す波長検出処理を行い、得られた波長検出結果に基づき上述する波長の固定制御を実行する。
【0043】
ここで本実施形態に適用される原理について説明する。
【0044】
図2はセンサ10のチャンネル番号S(ラインセンサ上の位置)とセンサ信号強度の関係を示す。センサ10は複数の受光チャンネルを備えており、最大強度の光を検出したチャンネル番号に応じてラインセンサ上の光検出位置が定まる。ラインセンサでは、波長に応じてラインセンサへの入射位置が異なるので、ラインセンサの光検出位置から光の波長を検出することができる。よって光を検出したチャンネル番号から光の波長が定まる。
【0045】
ここで分光器7の分散値D(ラインセンサ10のチャンネル間隔に相当する波長)を定めることができれば、この分散値Dを用いて基準光LnまたはLaを検出したチャンネル番号SnまたはSaと、被検出光L0を検出したチャンネル番号S0との差を、基準光LnまたはLaに対する被検出光L0の相対波長に変換することができる。そしてこの求めた相対波長と基準光LnまたはLaの既知の波長λn(=193.00345nm)またはλa(=193.7590nm)から被検出光L0の波長λ0を演算することができる。
【0046】
本実施形態では、上記分光器7の分散値Dが測定環境の変動等に応じて変動することを考慮して、実際の分散値Dを求め、この求めた実際の分散値Dに基づき被検出光L0の波長λ0を演算している点を特徴とする。以下図3に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0047】
同図3に示すように、まずコントローラ20は、図1に示す波長検出装置のシャッタ6をオープンさせて、被検出光L0および基準光Ln、Laを分光器7に入射させる(ステップ101)。
【0048】
つぎのステップ102ではセンサ10の出力が読み出される。
【0049】
図2に示すようにセンサ10からはセンサ信号強度の3つのピークに対応するセンサチャンネル番号Sn、S0、Saが出力される。ここでネオンNeの発光線の波長λnは、λn=193.00345nm(真空中)であり、砒素Asの発光線の波長λaは、λa=193.7590nm(真空中)であり、被検出光L0の発光線のλ0は、λnより大きく、λaよりも小さい(λ0=193.3nm)。
【0050】
よってネオンNeの発光線を検出したチャンネル番号Snよりも大きく、砒素Asの発光線を検出したチャンネル番号Saよりも小さいS0が発振レーザ光L0を検出したチャンネル番号とされる(ステップ102)。
【0051】
つぎに、分散値D(センサ10の1チャンネル当たりの波長)が、下記(1)式に示すようにして、2つの基準光Ln、Laを検出したチャンネル番号Sn、Saと、2つの基準光Ln。Laの既知の波長λn(=193.00345nm)、λa(=193.7590nm)を用いて演算される。
【0052】
D=(λa−λn)/(Sa−Sn) …(1)
つぎに、上記分散値Dを用いて被検出光L0の波長λ0が下記(2)式に示すようにして、求められる。
【0053】
λ0=λn+(S0−Sn)・D …(2)
すなわち分散値Dに、被検出光S0を検出したチャンネル番号S0と基準光Lnを検出したチャンネル番号Snとの差を乗算することによって基準光Lnに対する被検出光L0の相対波長(S0−Sn)・Dが求められ、この相対波長(S0−Sn)・Dに基準光Lnの既知の波長λnを加算することによって被検出光L0の波長λ0が演算される。なお上記(2)式ではネオンNeの波長λn、チャンネル番号Snを用いているが、この代わりに砒素Asの波長λa、チャンネル番号Saを使用してもよい(ステップ104)。
【0054】
以上のように本実施形態によれば、分光器7の実際の分散値Dを求め、この実際の分散値Dに基づき被検出光L0の波長λ0を演算しているので、分光器7に個体差があったり測定環境が変動したりして分光器7の特性が変化したとしても、被検出光源1から出力される被検出光L0の波長λ0を誤差なく精度よく検出することができる。
【0055】
上記実施形態では、上記(1)式に示すように、センサ10のチャンネル位置Sと波長λの関係がほぼ線形な関係にある場合を想定している。
【0056】
つぎにセンサ10のチャンネル位置Sと波長λの関係が線形な関係にない場合に好適な実施形態について説明する。たとえばセンサ10の1チャンネル当たりの幅が一様でない場合に使用して好適である。
【0057】
図4は、図1において分光器7の代わりにCzerny-Turner型のグレーティング分光器7′を使用した場合の分光器内部の光学系の配置を示している。
【0058】
同図4に示すように、分光器7′に被検出光L0および基準光Ln、Laが入射されると、まず凹面鏡M1に入射され、反射光がグレーティング8に入射される。グレーティング8への入射角をαとする。入射される光の波長に応じてグレーティング8の出射角が変化する。波長λnの基準光Lnの出射角をβnとし、波長λaの基準光Laの出射角をβaとし、波長λ0の被検出光L0の出射角をβ0とする。グレーティング8で回折された被検出光L0および基準光Ln、Laは凹面鏡M2に入射され、反射光が反射鏡9を介してセンサ10に導かれる。凹面鏡M2の焦点距離をf(mm)とする。
【0059】
コントローラ20ではステップ101、102と同様の処理が実行される。
【0060】
ただし本実施形態では被検出光L0および基準光Ln、Laを同時に分光器7に入射させてセンサ10上の3つの検出位置を同時に計測するようにしている。そしてセンサ信号強度がピークとなる3つのチャンネル位置を補間することによりピーク中心波長に相当するチャンネル番号Snが求められる。同様な補間によってチャンネル番号Sa、S0が求められる。
【0061】
そしてステップ103、104の代わりに以下の処理が実行される。
【0062】
以下グレーティング8の溝本数密度をN(gr/mm)とし、グレーティング8の回折次数をmとする。またセンサ10の受光チャンネルの1ch(チャンネル)当たりの幅をMCD(mm/ch)とする。
【0063】
するとグレーティング8の入射角と出射角との関係から下記(3)、(4)、(5)、(6)、(7)式が成立する。
【0064】
N・m・λn=sinα+sinβn …(3)
N・m・λa=sinα+sinβa …(4)
N・m・λ0=sinα+sinβ0 …(5)
βa=βn+δβna=βn+dna/f …(6)
β0=βn+δβn0=βn+dn0/f …(7)
ただし、dna=(Sn−Sa)・MCDdn0=(Sn−S0)・MCDである。
【0065】
よって(3)式−(4)式より、
N・m(λn−λa)=sinβn−sinβaが得られ、
N・m(λn−λa)=sinβn−sinβa=kとおく。
【0066】
これに(6)式を代入すると、
sinβn−sin(βn+dna/f)=k
2sin(−dna/2f)・cos(βn+dna/2f)=k
が得られる。これより、
βn=acos(k/2sin(−dna/2f))−dna/2f …(8)
が得られる。
【0067】
(3)式、(8)式から、
sinα=N・m・λn−sinβn …(9)
が算出される。
【0068】
また(7)式、(8)式から、
sinβ0=sin[acos{k/2・sin(−dna/2f)−dna/2f}+dn0/f] …(10)
が算出される。
【0069】
よって(5)、(9)、(10)式から、
λ0=(sinα+sinβ0)/(N・m) …(11)
と波長λ0が算出される。
【0070】
以上のように本実施形態においても分光器7′の実際の特性値を考慮して被検出光L0の波長λ0を精度よく検出することができる。
【0071】
以上説明した実施形態では、図2に示すように、波長λ0=193.3nmの被検出光L0よりも波長の小さい波長λn=193.00345nmのネオンNeの発光線Lnと、同被検出光L0よりも波長の大きい波長λa=193.7590nmの砒素Asの発光線Laを基準光として使用しているが、被検出光L0に波長が近接している基準光であれば基準光の種類(元素の種類)、被検出光L0に対する波長の大小、基準光の数は問わない。
【0072】
図5に示すように、被検出光L0よりも波長がそれぞれ小さい波長λn=193.00345nmのネオンNeの発光線Ln(センサ10の検出チャンネル番号Sn)と、波長λc=193.0905nmの炭素Cの発光線Lc(センサ10の検出チャンネル番号Sc(>Sn))を基準光として使用してもよい。
【0073】
また図6に示すように、被検出光L0よりも波長が小さい波長λn=193.00345nmのネオンNeの発光線Ln(センサ10の検出チャンネル番号Sn)と、被検出光L0よりも波長が大きい波長λg=193.4048nmのゲルマニウムGeの発光線Lg(センサ10の検出チャンネル番号Sg)を基準光として使用してもよい。
【0074】
また図7に示すように、被検出光L0よりも波長がそれぞれ大きい波長λg=193.4048nmのゲルマニウムGeの発光線Lg(センサ10の検出チャンネル番号Sg)と、波長λa=193.7590nmの砒素Asの発光線La(センサ10のチャンネル番号Sa(>Sg))を基準光として使用してもよい。
【0075】
また図8に示すように、被検出光L0よりも波長が小さい波長λn=193.00345nmのネオンNeの発光線Ln(センサ10の検出チャンネル番号Sn)と、被検出光L0よりも波長がそれぞれ大きい波長λg=193.4048nmのゲルマニウムGeの発光線Lg(センサ10の検出チャンネル番号Sg)と、波長λa=193.7590nmの砒素Asの発光線La(センサ10のチャンネル番号Sa)との3つの基準光を使用してもよい。
【0076】
またこれら砒素As、ネオンNe、ゲルマニウムGe、炭素Cを適宜組み合わて基準光として使用することもできる。
【0077】
炭素Cを基準光として発光させる炭素ランプがあればこれを使用することができる。たとえば図5に示すネオンNeと炭素Cの組み合わせの場合、ネオンNeをバッファガスとする炭素(C)ランプを基準光源2として使用することができる。
【0078】
また図6に示すネオンNeとゲルマニウムGeの組み合わせの場合、ネオンNeをバッファガスとするゲルマニウム(Ge)ランプを基準光源2として使用することができる。
【0079】
また図7に示す砒素AsとゲルマニウムGeの組み合わせの場合、砒素AsとゲルマニウムGeを混合させたホローカソードランプを基準光源2として使用することができる。
【0080】
また図8に示すようにネオンNeとゲルマニウムGeと砒素Asの組み合わせの場合、これら193nm付近で発光する各元素を含んだランプを基準光源として使用することができる。
【0081】
図8に示すように3つの元素を基準光を使用した場合には、2つの元素を順次選択して前述した(1)式から分光器7の分散値Dを求めるとすると、3つの分散値D1、D2、D3が得られる。この場合には、これら3つの分散値D1、D2、D3の平均値を、最終的な分光器7の分散値Dと決定すればよい。
【0082】
図2に示すように被検出光L0の波長λ0が2つの基準光Ln、Laの波長λn、λaの間に存在する場合には補間により被検出光L0の波長λ0を精度よく求めることができるという利点が得られる。これはラインセンサ10の各センサ位置と波長との関係が完全に線形ではないからである。なお図5に示すように被検出光L0の波長λ0が2つの基準光Ln、Lcの波長λn、λc間の外に存在する場合には外挿になるので被検出光L0の波長λ0の検出精度がやや劣ることになる。
【0083】
また上述した実施形態では、バッファガスとしてネオンガスが封入された砒素ランプを基準光源2として使用するなどして、1つの基準光源2から2種類の基準光を発光出力させるようにしているが、基準光を別々の基準光源から発光出力させる実施も可能である。
【0084】
図9は2個の基準光源11、12を使用した構成例を示している。
【0085】
同図9に示すように、基準光源11、12として、波長λa=193.7590nmの砒素Asの発光線Laを発光出力する砒素ランプ11と、波長λn=193.00345nmのネオンNeの発光線Lnを発光出力するネオンランプ12が用意され、各基準光源11、12から発光出力された光が積分球13に入射される。同様に、波長λ0=193.3nmの被検出光L0が被検出光源1から発光出力され、レンズ3を介して積分球13に入射される。これら被検出光L0、基準光La、Lnの積分球13への入射は同時に行われる。
【0086】
積分球13では、入射された光が乱反射され、一様に散乱される。よって2つの基準光La、Lnと被検出光L0は積分球13内で一様に混合し1つの光源からレンズ14を介して分光器7に入射される。分光器7内に光に入射された後の処理については前述した実施形態と同様であるのでその説明は省略する。
【0087】
上述した2つの基準光La、Lnと被検出光L0は同時に入射させることが望ましい。環境に応じて変動する分光器7の特性をリアルタイムで測定できるからである。
【0088】
つぎにファプリーペロエタロン分光器を使用した波長検出装置について図10、図11を参照して説明する。
【0089】
図10に示すように、この波長検出装置では、被検出光源1から出力された被検出光である発振レーザ光L0が、レンズ3を介して、ビームスプリッタ5にて一部反射され拡散板15に照射される。拡散板15からは被検出光L0が散乱されて出射されエタロン16に照射される。一方基準光源2から出力された基準光Ln(ネオンNeの発光線)、La(砒素Asの発光線)はレンズ4を介して、ビームスプリッタ5で一部透過され、拡散板15で拡散された後エタロン16に照射される。ここにエタロン16は内側の面が部分反射ミラーとされた2枚の透明板から構成されている。エタロン16は波長の異なる基準光Ln、La、被検出光L0を透過させる。
【0090】
エタロン16を透過した光は集光レンズ17に入射される。この集光レンズ17はたとえば色収差補正が施された色消しレンズであり、色消し集光レンズ17を経ることにより色収差が補正される。
【0091】
ラインセンサ18は集光レンズ17の焦点上に配設されている。これにより集光レンズ17を経た光は、ラインセンサ18上に結像され、このラインセンサ18上の検出面上に、基準光La(砒素As)の波長λaに対応した干渉縞19a、基準光Ln(ネオンNe)の波長λnに対応した干渉縞19bおよび被検出光L0の波長λ0に対応した干渉縞19cを形成する。これら干渉縞は、ラインセンサ18上で同心円状に形成される。
【0092】
砒素Asに対応する干渉縞19aのラインセンサ18の中心位置からの半径はRaであり、ネオンNeに対応する干渉縞19bの同半径はRnであり、被検出光L0に対応する干渉縞10cの同半径はR0である。
【0093】
ラインセンサ18では、ラインセンサ中心から各干渉縞結像位置までの半径Ra、RnおよびR0が検出される。
【0094】
ここで図11に示すように、ラインセンサ中心から干渉縞結像位置までの半径Rの2乗R2と、ラインセンサ18に結像された光の波長λの関係は、理論的に線形な関係に近似される。
【0095】
すなわち基準光Ln、Laの干渉縞19b、19aの半径の2乗Rn2、Ra2と波長λn、λaとの関係は線形な関数で表されその係数を求めることができる。具体的には直線Qの傾きが定まる。
【0096】
よって、いま被検出光L0の干渉縞19cの結像位置、つまり干渉縞19cの半径R0がラインセンサ18で検出されているので、これにより半径の2乗R02を求めることができ、図11に示す直線Qから、半径の2乗R02 に対応する波長λ0を被検出光L0の波長として求めることができる。
【0097】
なお上述した説明では、アルゴンフッ素(ArF)エキシマレーザの発振レーザ光を被検出光とする場合について説明したが、クリプトンフッ素(KrF)エキシマレーザの発振レーザ光を被検出光L0とする場合には、波長λ0=248.4nmに近接した波長の発光線を出力する基準光源を使用して同様に被検出光L0の波長λ0を検出することができる。たとえば基準光源2として鉄(Fe)の異なる準位の発光線を出力する鉄(Fe)ランプを使用することができる。鉄(Fe)ランプからは、波長248.2371nm、248.4188nmの2つの発光線が出力される。
【0098】
なお図1に示す回折格子型の分光器7の代わりに、図12に示す回折格子型の分光器7′′を用いてもよい。
【0099】
ところで、上述した実施形態では、ネオンNe、砒素As、炭素C、ゲルマニウムGeの発光線を基準光として用いるようにしているが、白金Ptの発光線を基準光として用いるようにしてもよい。
【0100】
なお、白金Ptの発光線を出力する光源としてはホローカソードランプを使用することができる。
【0101】
図13に示すように、白金Ptは波長が異なる三つの発光線LP1、LP2、LP3を有している。
【0102】
白金ランプから出力される三つの各発光線LP1、LP2、LP3の波長はλP1=193.4369nm(センサ10のチャンネル番号SP1)、λP2=193.2243nm(センサ10のチャンネル番号SP2)、λP3=193.7245nm(センサ10のチャンネル番号SP3)であり、アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長λ0=193.3nmに近似している。
【0103】
このため、三つの各発光線LP1、LP2、LP3のうち一つの発光線のみでも基準光として使用することが可能である。
【0104】
但し、三つの各発光線LP1、LP2、LP3のうち二つ以上の発光線を基準光として使用すれば、前述した実施形態と同様にして分光器7の分散値Dを求めることができ、なお一層被検出光源1から出力される被検出光L0の波長λ0を誤差なく精度よく検出することができる。
【0105】
さて、以上説明した実施形態では、アルゴンフッ素エキシマレーザの波長を検出するための基準光として発光線を用いるようにしているが、吸収線を用いてアルゴンフッ素エキシマレーザの波長を検出してもよい。
【0106】
図14、15は、吸収線を用いてアルゴンフッ素エキシマレーザの波長を検出する波長検出装置の実施形態を示す図である。但し、図15は吸収線のスペクトル線幅がアルゴンフッ素エキシマレーザのスペクトル線幅よりも狭い場合の実施形態を示す図である。
【0107】
アルゴンフッ素エキシマレーザ装置である被検出光源1からはフロントミラー21を介して所定パワーの発振レーザ光L0が被検出光L0として射出される。
【0108】
一方吸収セル23には、アルゴンフッ素エキシマレーザの発光線に対する吸収線として、波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmの吸収線BP1、BP2、BP3を有する白金Ptの蒸気ガスが封入されている。
【0109】
ここで、白金Ptガスの吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1、λP2、λP3は図13に図13に示される発光線LP1、LP2、LP3の波長の値と同一であり、アルゴンフッ素エキシマレーザの発光線L0の波長λ0=193.3nmに近似している。
【0110】
このため狭帯域化された発振レーザ光L0の波長λ0を、上記吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1、λP2、λP3のうち一つ以上の吸収線の波長に調整することにより、発振レーザ光L0の絶対波長を検出することができる。
【0111】
なお、白金Ptの吸収線BP1、BP2、BP3以外にも、ネオンNe、砒素As、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線の波長もアルゴンフッ素エキシマレーザの発光線L0の波長λ0=193.3nmに近似している。
【0112】
これらネオンNe、砒素As、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線の波長は図2、図5、図6、図7R>7、図8に示される上述した発光線の波長の値と同一である。
【0113】
このため狭帯域化された発振レーザ光L0の波長λ0を、上記砒素As、ネオンNe、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線Ba、Bn、Bc、Bgの波長λa、λn、λc、λgのうち、一つ以上の吸収線の波長に調整することにより、発振レーザ光L0の絶対波長を検出することもできる。
【0114】
被検出光L0はモニタモジュール22内のビームスプリッタ5aに入射される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5aで反射されビームスプリッタ5bに入射される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5bを透過して吸収セル23に入射される。また、ビームスプリッタ5bで反射された残りの被検出光L0は拡散板15bに照射された後、散乱され、その光強度がフォトダイオード24で検出される。そして、吸収セル23を通過した被検出光L0は、拡散板15aに照射される。拡散板15aからは被検出光L0が散乱されて出射され分光器7内に入射される。そして、前述したようにセンサ10上において、複数の受光チャンネルにより最大強度の光を検出したチャンネル番号に応じてラインセンサ上の被検出光L0の検出位置が定まり、被検出光L0を検出したチャンネル番号から被検出光L0の波長λ0が定まる。
【0115】
図15は自然発光のアルゴンフッ素エキシマレーザの被検出光L0を吸収セル23(白金Ptガスを封入)に透過させたことにより、被検出光L0の発光線の光強度が、発光線L0のスペクトル線幅よりも狭いスペクトル線幅の吸収線BP1、BP2、BP3によって極小にされる様子を示したものである。
【0116】
なお、白金Ptガスを封入する場合には、スルータイプのホローカソードランプを使用しても良い。
【0117】
センサ10は複数の受光チャンネルを備えており、最大強度の光を検出したチャンネル番号に応じてセンサ10上の光検出位置が定まる。センサ10では、波長に応じてセンサ10への入射位置が異なるので、センサ10の光検出位置から光の波長を検出することができる。よって光を検出したチャンネル番号から光の波長が定まる。
【0118】
いま吸収セル23に白金Ptガスが封入されているものとする。この場合、被検出光L0は白金Ptガスを通過した後、拡散板15aを介して分光器7に入射され、そのスペクトルの光強度がセンサ10上のチャンネル番号SPで検出される。
【0119】
この場合被検出光L0の発光線幅W0よりも狭いスペクトル線幅W1、W2、W3の吸収線BP1、BP2、BP3が被検出光L0の発光線幅W0内に含まれる。すなわち波長λ0=193.3nmを有する被検出光L0の発光線幅W0内に、白金Ptの波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmが各々含まれる。従って、被検出光L0の発光線内の波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmに相当する部分の光強度が吸収線BP1、BP2、BP3によって極小にされる。
【0120】
また、例えば吸収セル23に砒素AsまたはネオンNeまたは炭素CまたはゲルマニウムGeなどのガスが封入されているものとする。
【0121】
この場合被検出光L0の発光線幅W0よりも狭いスペクトル線幅の吸収線Ba、Bn、Bc、Bgも被検出光L0の発光線幅W0内に含まれる。すなわち波長λ0=193.3nmを有する被検出光L0の発光線幅W0内に、砒素Asの波長λa=193.7590nm、ネオンNeの波長λn=193.00345nm、炭素Cの波長λc=193.0905nm、ゲルマニウムGeの波長λg=193.4048nmが各々含まれる。従って、被検出光L0の発光線内の波長λa=193.7590nm、λn=193.00345nm、λc=193.0905nm、λg=193.4048nmに相当する部分の光強度が吸収線Ba、Bn、Bc、Bgによって極小にされる。
【0122】
図16は吸収線のスペクトル線幅がアルゴンフッ素エキシマレーザのスペクトル線幅よりも広い場合の実施形態を示す図である。
【0123】
この場合もアルゴンフッ素エキシマレーザ装置である被検出光源1からはフロントミラー21を介して所定パワーの発振レーザ光L0が被検出光L0として射出される。
【0124】
そして被検出光L0はモニタモジュール22内のビームスプリッタ5aに入射される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5aで反射されビームスプリッタ5bに入射される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5bを透過してビームスプリッタ5cに入射される。また、ビームスプリッタ5bで反射された残りの被検出光L0は拡散板15bに照射された後、散乱され、その光強度がフォトダイオード24で検出される。被検出光L0の一部はビームスプリッタ5cで反射され吸収セル23に入射される。そして、被検出光L0は吸収セル23を透過し、その光強度が光強度検出器25にて検出される。
【0125】
一方、ビームスプリッタ5cを透過した一部の被検出光L0は、拡散板15aに照射される。拡散板15aからは被検出光L0が散乱されて出射され分光器7内に入射される。そして、前述したようにセンサ10上において、被検出光L0の光強度を検出したチャンネル番号から被検出光L0の波長λ0が定まる。
【0126】
図17はアルゴンフッ素エキシマレーザの被検出光L0を吸収セル23(白金Ptガスを封入)に透過させたことにより、被検出光L0の発光線の光強度が、発光線L0のスペクトル線幅よりも広いスペクトル線幅の吸収線BP1またはBP2またはBP3によって極小にされる様子を示したものである。
【0127】
光強度検出器25は光強度を検出するものであればよい。例えばフォトダイオード、フォトマルチプライヤ等である。
【0128】
いま吸収セル23に白金Ptガスが封入されているものとする。そして被検出光L0の光強度は白金Ptガスを通過した後、その光強度が光強度検出器25上の受光チャンネルで検出される。
【0129】
この時被検出光L0の発光線幅W0よりも広いスペクトル線幅W1またはW2またはW3の吸収線によって被検出光L0の発光線が光強度H1から極小の光強度H2にされる。
【0130】
また、例えば吸収セル23に砒素AsまたはネオンNeまたは炭素CまたはゲルマニウムGeなどのガスが封入されているものとする。この時被検出光L0の光強度は砒素AsガスまたはネオンNeガスまたは炭素CガスまたはゲルマニウムGeガスを通過した後、その光強度が光強度検出器25上の受光チャンネルで検出される。そして被検出光L0の発光線幅W0よりも広いスペクトル線幅の砒素AsまたはネオンNeまたは炭素CまたはゲルマニウムGeなどの吸収線によって被検出光L0の発光線が光強度H1から極小の光強度H2にされる。
【0131】
次に、吸収セル23内に白金Ptガスが封入された場合を例として、アルゴンフッ素エキシマレーザの発光線幅よりも狭いスペクトル線幅の白金Ptの三つの吸収線BP1、BP2、BP3を用いた発振レーザ光L0の波長検出の処理について図14、図18、図19を参照して説明する。
【0132】
図18(a)は、吸収線を用いた発振レーザ光L0の波長制御のフローチャートであり、同図(b)は、発振波長λ0と光強度との関係を示す図である。
【0133】
図18(a)のフローチャートにおいて、まず図21に示すコントローラ20が、外部からの指令信号に基づき発振レーザ光L0のスペクトルの中心波長λ0を目標とする波長に固定する波長較正サブルーチンを実行する(ステップ200)。
【0134】
波長較正サブルーチンが実行されると、発振レーザ光L0の発振波長λ0が所定の初期波長で発光される(ステップ201)。
【0135】
次に図14に示すモニタモジュール22内において、白金Ptガスが封入されている吸収セル23を透過し、拡散板15a及び分光器7を通過した発振レーザ光L0の光強度が、センサ10上で求められる。この時最大強度の光を検出したチャンネル番号に応じてセンサ10上の光検出位置が定まる。但し発振レーザ光のスペクトルの光強度を検出するセンサ10上のチャンネル番号は、発振波長λ0の変化に応じて変化する(ステップ202)。
【0136】
次にコントローラ20によって発振レーザ光L0の発振波長λ0が、初期波長から所定の量だけ変化される。これにより発振レーザ光L0のスペクトルの光強度が極小になる極小点Z2、Z1、Z3を順次探していく(ステップ203)。
【0137】
そして発振波長λ0が較正終了波長になったか否かが判定される(ステップ204)。
【0138】
発振レーザ光L0の発振波長λ0が較正終了波長ではないと判定された場合には(ステップ204の判断N0)、再びステップ202、ステップ203に移行され、発振レーザ光L0の発振波長λ0が、さらに所定の量だけ変化される。一方発振レーザ光L0の発振波長λ0が較正終了波長になった場合には(ステップ204の判断YES)、図18(b)に示すように発振波長λ0と光強度との関係のデータdがプロットされる(ステップ205)。
【0139】
そして、図18(b)のデータdの点Z1、Z2、Z3に示すようにセンサ10上で検出された発振レーザ光L0のスペクトルの光強度が吸収線BP1、BP2、BP3によって極小にされる。極小点Z1、Z2、Z3の波長は吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmなので、極小点Z1、Z2、Z3の位置に対応するセンサ10上の受光チャンネルSz1、Sz2、Sz3に入射される発振レーザ光L0のスペクトルの中心波長λ0は吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmで較正される。これにより極小点Z1、Z2、Z3の位置に対応するセンサ10上の受光チャンネルSz1、Sz2、Sz3が判明する。またセンサ10上の受光チャンネル間の波長差は、分光器7とセンサ10との距離およびレンズの特性によって決まり、定数δで表すことができる。従って、センサ10上で光強度が検出される未知の発振レーザ光L0の波長λ0は、吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmと、受光チャンネルSz1、Sz2、Sz3と未知の発振レーザ光L0の波長λ0が検出される受光チャンネルSPとの間のチャンネル数X1、X2、X3と、定数δとを用いて、下記(12)、(13)、(14)式、
λ01=193.4369±X1×δ … (12)
λ02=193.2243±X2×δ … (13)
λ03=193.7245±X3×δ … (14)
のいずれかによって求めることができる。また、上記各式から各々求めた三つの波長λ01、λ02、λ02の平均値を、最終的な未知の発振レーザ光L0の波長λ0として求めることができる。更に、二つ以上の吸収線を用いているので、前述した二つ以上の基準光を用いた実施形態と同様に分光器7の分散値Dを求めることができる(ステップ206)。
【0140】
次にアルゴンフッ素エキシマレーザの発光線幅よりも広いスペクトル線幅の白金Ptの吸収線BP1、BP2、BP3を用いた発振レーザ光L0の波長検出の処理について図16、図18、図19を参照して説明する。
【0141】
まず上述した図18(a)に示すステップ200〜201までの処理が行われる。
【0142】
次に図16に示すモニタモジュール22内において、白金Ptガスが封入されている吸収セル23を透過した発振レーザ光L0のスペクトルの光強度が光強度検出器25上で検出される(ステップ202)。
【0143】
次に図19に示すコントローラ20によって発振レーザ光L0の発振波長λ0が、初期波長から所定の量だけ変化される。これにより光強度検出器25上で検出される発振レーザ光L0のスペクトルの光強度が極小になる極小点を探していく(ステップ203)。
【0144】
次に上述した図18(a)に示すステップ204〜205までの処理が行われる。
【0145】
この結果、ステップ203で光強度検出器25上で検出される発振レーザ光L0のスペクトルの光強度が吸収線BP1、BP2、BP3によって極小にされたときの、センサ10上の受光チャンネルSz1、Sz2、Sz3に入射される発振レーザ光L0の発振波長λ0が吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1、λP2、λP3となる。従って、センサ10上で光強度が検出される未知の発振レーザ光L0の波長λ0は、吸収線BP1、BP2、BP3の波長λP1=193.4369nm、λP2=193.2243nm、λP3=193.7245nmと 受光チャンネルSz1、Sz2、Sz3と未知の発振レーザ光L0の波長λ0が検出される受光チャンネルSPとの間のチャンネル数X1、X2、X3と、上記定数δとを用い、上記(12)、(13)、(14)式から同様にして最終的な未知の発振レーザ光L0の波長λ0として求めることができる(ステップ206)。
【0146】
なお、未知の発振レーザ光L0の波長λ0を求める際には、白金Ptの三つの吸収線BP1、BP2、BP3のうち一つの吸収線か、あるいは二つの吸収線を用いてもよい。
【0147】
但し、上述した実施形態のように三つの吸収線BP1、BP2、BP3のうちの二つ以上の吸収線を使用すれば分光器7の分散値Dを求めることができ、なお一層被検出光源1から出力される被検出光L0の波長λ0を誤差なく精度よく検出することができる。
【0148】
以上説明したように、アルゴンフッ素エキシマレーザにおいて、発振レーザ光L0の波長λ0=193.3nmを検出したい場合には、吸収線として白金Pt、砒素As、ネオンNe、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線のうち、一つ以上の吸収線を前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線に対する吸収線として用いる。
【0149】
これにより分光器7に個体差があったり測定環境が変動などしたりして分光器7の特性が変化したとしても、被検出光源1から出力される被検出光L0の波長λ0を誤差なく精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は本発明に係る波長検出装置の実施形態の構成を示す図である。
【図2】図2はネオンと砒素の発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図3】図3は被検出光の波長を演算する処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は分光器における光学系の配置構成を示す図である。
【図5】図5はネオンと炭素の発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図6】図6はネオンとゲルマニウムの発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図7】図7はゲルマニウムと砒素の発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図8】図8はネオンとゲルマニウムと砒素の発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図9】図9は2個の基準ランプを使用した波長検出装置の構成例を示す図である。
【図10】図10はファプリーペロエタロン分光器を使用した波長検出装置の構成例を示す図である。
【図11】図11は干渉縞の半径の2乗と波長との関係を示す図である。
【図12】図12は本発明に係る回折格子型分光器の変形例を示す図である。
【図13】図13は白金の発光線を出力する基準光源を使用した場合のセンサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【図14】図14は本発明に係る波長検出装置の実施形態の構成を示す図である。
【図15】図15はアルゴンフッ素エキシマレーザの発光線の光強度が、発光線のスペクトル線幅よりも狭いスペクトル線幅の複数の吸収線によって極小にされる様子を示した図である。
【図16】図16は、図15に示す波長検出装置の実施形態の変形例を示す図である。
【図17】図17はアルゴンフッ素エキシマレーザの発光線の光強度が、発光線のスペクトル線幅よりも広いスペクトル線幅の吸収線によって極小にされる様子を示した図である。
【図18】図18(a)は吸収線を用いた発振レーザ光の波長制御のフローチャートを示す図であり、図18(b)は発振波長と光強度との関係を示す図である。
【図19】図19は一般的なレーザの波長安定化制御装置を示す図である。
【図20】図20は従来技術を説明する図であり、センサチャンネル番号とセンサ信号強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
1 被検出光源
2 基準光源
7、7′ 分光器
10、18 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準光源で発光される基準光の波長に基づいて、被検出光源から出力される被検出光の波長を検出する波長検出装置において、
前記被検出光がアルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の場合に、前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長に最も近似した波長を有し、かつ光強度が一定以上の白金Ptの三つの発光線のうち、一つ以上の発光線を前記基準光として用いるようにした
波長検出装置。
【請求項2】
被検出光源から出力される被検出光の光強度を極小にする吸収線に基づいて前記被検出光の波長を検出する波長検出装置において、
前記被検出光がアルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の場合に、前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線の波長と近似した波長を有する白金Pt、砒素As、ネオンNe、炭素C、ゲルマニウムGeの吸収線のうち、一つ以上の吸収線を前記アルゴンフッ素エキシマレーザ発光線に対する吸収線として用いるようにした
波長検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−242967(P2006−242967A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151679(P2006−151679)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【分割の表示】特願平11−51611の分割
【原出願日】平成11年2月26日(1999.2.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】