説明

注入装置

【目的】小型化可能で、しかも、注入材を注入管まで圧送する配管が1つでよい注入装置を提供する。
【構成】注入材を注入管14より吐き出して空洞あるいは隙間に注入充填する注入装置であり、固化材を含有するA材を作液するA材作液装置11、可塑材を含有するB材を作液するB材作液装置12、吸い込み口が各作液装置と接続され、出口が配管15を介して注入管14に接続され、各作液装置で作液されたA材、B材を吸い込み、これらを混合攪拌してなる注入材を配管15より注入管へ圧送する混合攪拌注入ポンプ13を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注入装置に係わり、特に、注入材を注入管より吐き出して空洞あるいは隙間に注入充填する注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の補強効果、止水効果等を目的に、非流動性で可塑性の注入材を空洞あるいは隙間に注入充填することが行なわれている。すなわち、軟弱地盤内の間隙や空洞、岩盤等の硬質地盤内の破砕帯や隙間、地盤と構造物の境界面の空洞(トンネルの覆工背面への裏込めも含む)及び地盤の弱い所に発生した隙間、土木構造物の空洞等に注入材を注入充填して地盤の補強、止水を図っている。
かかる注入材としては、空洞や隙間の箇所に限定的に注入できること、湧水で流されることがないように耐水性、材料不分離性を有することが求められている。このため、可塑性の注入材が用いられる(特許文献1、特許文献2参照)。可塑性とは、塑性状態、すなわち、流動しにくいが柔らかくて自立性のある状態になる性質をいう。可塑性は亀裂や湧水があっても、注入材が逸走しないようにするために必要な特性である。
注入材の打設・注入方法としては2台のポンプを設け、モルタル系のA液と可塑化材系のB液をそれぞれ別々のポンプで圧送し、注入管の注入口付近で合流混合する方法がある(特許文献1)。また、2液混合グラウチング(地盤注入のこと)方法として、同様に、2台のポンプを設け、各ポンプによりA液、B液を圧送し、注入管の手前で合流器を用いて合流し、静止型混合器で混合して注入管に送る方法がある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3514614号公報
【特許文献2】特許第3378501号公報
【特許文献3】特開2005−120673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の施工(注入材の打設・注入)では、すでに今現在供用されている空間から、既設構造体の背面空洞に対して注入を施すケースが多く、施工時間や作業スペースが極めて限られており、施工性と注入材の長距離圧送が求められている。つまり、限られたスペースと施工環境で所定の配合の注入材を調合し、それを速やかに施工箇所(空洞、隙間)に長距離圧送する必要があり、混合から吐出までに時間がかかれば、注入材の性状にばらつきがでてしまう。
従来技術では2台のポンプを用いるため装置が大型になり、しかも、各ポンプからA液、B液を混合地点まで圧送する2つの液路(配管)が必要となり、限られたスペースと施工環境に適さない。また、従来技術では注入管の注入口近傍でA液、B液を合流混合するが均一な混合が難しい問題がある。
以上から本発明の目的は、装置を小型化でき、しかも、注入材を注入管まで圧送する液路(配管)が1つでよい注入装置を提供することである。
本発明の別の目的は、注入材、例えば可塑状モルタルを限られた施工環境の現場で効率的に調合し、長距離圧送しても注入材の特性にばらつきが出ないように吐出、充填可能な注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、注入材を注入管より吐き出して空洞あるいは隙間に注入充填する注入装置であり、固化材を含有するA材を作液するA材作液装置、可塑材を含有するB材を作液するB材作液装置、吸い込み口が各作液装置と接続され、出口が配管を介して前記注入管に接続され、各作液装置で作液されたA材、B材を吸い込み、これらを混合攪拌してなる注入材を前記配管より前記注入管へ圧送する混合攪拌注入ポンプを備えている。
上記本発明の注入装置は、更に、前記A材作液装置からのA材と前記B材作液装置からのB材を合流して前記混合攪拌注入ポンプに供給する合流管を備えている。
上記本発明の注入装置は、更に、注入管より注入材を吐き出す圧力を調整する吐き出し圧力調整部を備えている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、A材作液装置と、B材作液装置と、各作液装置で作液されたA材、B材を吸い込み、これらを混合攪拌してなる注入材を1つの配管より注入管へ圧送する混合攪拌注入ポンプとで注入装置を構成するようにしたから、装置を小型化でき、しかも、注入材を注入管まで圧送する液路(配管)が1つでよいため、限られたスペースと施工環境に好適な注入装置を提供することができる。
本発明によれば、固化材を含有するA材と、可塑剤を含有するB材を、別々に作液し、それを合流させて1ヶ所のポンプで混合攪拌しながら圧送することにより、均一な混合を確保するとともに、混合された材料の圧送による性状変化を抑えることが可能となる。
本発明によれば、混合攪拌注入ポンプの手前に合流管を設け、該合流管でA材作液装置からのA材とB材作液装置からのB材を合流して混合攪拌注入ポンプに供給するようにしたから、混合攪拌注入ポンプの吸い込み口を1つにできるため、ポンプの構成をシンプルにすることができる。
本発明によれば、注入管より注入材を吐き出す圧力を調整する吐き出し圧力調整部を設けたから、注入圧力の調整により容易に充填性をコントロールすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(A)注入装置の第1実施例
図1は第1実施例の注入装置の構成図であり、トンネルの背面空洞に注入材を充填する場合を示している。古いトンネルではトンネル21の覆工コンクリート22と地山との間に空洞23が存在することが多く、この空洞はトンネルの安定性に対しマイナスに作用し、早期に充填することが望ましい。
第1実施例の注入装置は、A材作液装置11と、B材作液装置12と、各作液装置で作液されたA材、B材を吸い込み、これらを混合攪拌して圧送する混合攪拌注入ポンプ13と、注入材を背面空洞23に吐き出す注入管14と、注入材を攪拌注入ポンプ13から注入管14まで送る可撓性のチューブ(配管)15と、注入管14より注入材を吐き出す圧力を調整する吐き出し圧力調整部16を備えている。
A材作液装置11は、固化材(硬化発現材)としてセメント系無機粉体を使用し、混和剤として特殊ポリマー系複合体を使用し、これらを水と混ぜることによりA材を作液する。B材作液装置12は、可塑材として耐水性の微粉末無機粉体を使用し、これを水に混ぜることによりB材を作液する。耐水性は注入材を水に溶けにくくする性質を付与するものである。
【0007】
表1は標準配合における1000L(リットル)の注入材の配合例であり、A材、B材を1:1の割合で混合している。
【表1】

表2は冬期における1000Lの注入材の配合例であり、標準配合と同様にA材、B材を1:1の割合で混合している。
【表2】

混合攪拌注入ポンプ13において、吸い込み口13a、13bは作液装置11,12と可撓性のチューブ(配管)17,18で接続されている。モータ13cは、回転することによりポンピング機能を発揮して各作液装置11,12からA材、B材を混合攪拌室13dに吸い込むと共に、混合攪拌部13eを回転してA材、B材を混合攪拌して出口13fより配管15を介して注入管14に圧送する。吐き出し圧力調整部16は注入材の吐き出し圧力を調整するもので、作業者が適切な吐き出し圧力となるように調整して注入管14より注入材を吐き出す。
【0008】
表3は本発明の注入材の性状データを示すもので、A材およびB材のフロー値、注入材の混合後のフロー値(静止時)、注入材の混合後のフロー値(15回打撃時)、注入材の比重、注入材の一軸圧縮強度を示している。この表3より明らかなように、混合攪拌注入ポンプ13で混合攪拌して得られる注入材の試験値(フロー値、比重、一軸圧縮強度)はすべて規格値をクリアした値を示している。
【表3】

なお、表中の「80×80mm円筒コーン測定法」とは、内径80mm、高さ80mmの円筒の中をモルタルで満たし、そのモルタル試料の広がり、すなわち直径を測定してフロー値とするフロー測定法であり、mm単位で表わしたものである。
【0009】
注入材の混合後のフロー値(静止時)は80〜155mmが好ましいが、表3より本発明の注入材はその範囲内にあり可塑性注入材として最適で、しかも、耐水性により水中打設または流水のある場所でも材料分離が少ない。また、一軸圧縮強度も大きく、空洞、隙間に注入充填することで空洞部、隙間部を強固に補強することができる。
以上、第1実施例の注入装置により注入材を注入すれば以下の効果が得られる。
(1) 固化材を含有するA材と、可塑剤を含有するB材を、別々に作液し、それを合流させて1ヶ所のポンプで混合攪拌しながら圧送することにより、均一な混合を確保するとともに、混合された材料の圧送による性状変化を抑えて、注入圧力の調整だけで(配合は変更しないで)充填性をコントロールすることが可能となる。
(2) ポンプが1台ですむ。
(3) 本発明により生成された注入材は可塑性状が優れている。このため、亀裂、細部への逸走が少なく限定注入が可能である。
(4) 本発明により生成された注入材は非エアー系であり(気泡を混入しない)、耐水性に優れる。この結果、トンネルの裏込めで多く用いられていたエアーモルタルの欠点、すなわち、水に流されやすい、エアーがだんだんしぼんで注入材の性状が変わってしまう等の欠点を解決できる。
(5) 本発明により生成された注入材はポンプで圧送するときの流動性を備え、長距離圧送が可能であり、作液プラントやポンプの設置場所が注入箇所から離れて限定されている場合にも施工が可能である。
(6) 本発明により生成された注入材は、注入後の体積収縮が極少ない。このため、注入材を空洞、隙間に確実に埋めるように充填することができる。
(7) 本発明により生成された注入材は、材料分離抵抗性が高く、湧水箇所に対しても、注入材が水で薄まったり、流出することがなく、適正に充填可能である。
(8) A材、B材とも液状にしておくので、1つのポンプで均一に混合攪拌することができ、均一な品質(適正なフロー値・・流動性の確保、適正な可塑性状・・亀裂などにモルタルが逃げない)を確保することが出来る。
(9) 本発明の注入装置はシンプルな構成で、大量注入に適している。
(10) A材、B材が1:1の配合なので、合流させやすい。
【0010】
(B)注入装置の第2実施例
図2は第2実施例の注入装置の構成図であり、図1の第1実施例の注入装置と同一部分には同一符号を付している。異なる点は、(1)混合攪拌注入ポンプ13の吸い込み口を1つにした点、(2)A材作液装置11からのA材とB材作液装置12からのB材を合流して吸い込み口13aより混合攪拌注入ポンプに供給する合流器19を設けた点である。なお、第2実施例でも表1、表2に従ってA材,B材を配合して注入材を生成する。また、第2実施例の注入材の性状は表3に示す性状と一致する。
第2実施例によれば、第1実施例と同様の効果がある。また、第2実施例によれば、混合攪拌注入ポンプの吸い込み口を1つにできるため、ポンプの構成をよりシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例の注入装置の構成図である。
【図2】第2実施例の注入装置の構成図である。
【符号の説明】
【0012】
11 A材作液装置
12 B材作液装置
13 混合攪拌注入ポンプ
14 注入管
15 可撓性のチューブ(配管)
16 圧力調整部
21 トンネル
22 覆工コンクリート
23 背面空洞


【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入材を注入管より吐き出して空洞あるいは隙間に注入充填する注入装置において、
固化材を含有するA材を作液するA材作液装置、
可塑材を含有するB材を作液するB材作液装置、
吸い込み口が各作液装置と接続され、出口が配管を介して前記注入管に接続され、各作液装置で作液されたA材、B材を吸い込み、これらを混合攪拌してなる注入材を前記配管より前記注入管へ圧送する混合攪拌注入ポンプ、
を備えたことを特徴とする注入装置。
【請求項2】
前記A材作液装置からのA材と前記B材作液装置からのB材を合流して前記混合攪拌注入ポンプに供給する合流管、
を備えることを特徴とする請求項1記載の注入装置。
【請求項3】
注入管より注入材を吐き出す圧力を調整する吐き出し圧力調整部、
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の注入装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−57114(P2008−57114A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231886(P2006−231886)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】