説明

注型成形用金型、及び注型成形品の製造方法

【課題】注型成形による二層成形の際に発生する非製品領域を容易に除去可能な注型成形用金型、及び、注型成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】キャビティ5の端部付近に、下型4より突出した突出部(流路狭め部)6を形成する。前記突出部6により、第一層に形成された低剛性部(薄肉部)は、他より薄肉となっているため剛性が低く、低剛性部を起点に、下方へ力を加えることで、低剛性部より先端が分離し、除去すべき非製品領域の部分が小さくなる。また、前述の通り、低剛性部の周囲の第一層は剛性が低くなっているため、手による加工でも十分に先端を分離させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二層成形によって成形される注型成形品の製造に関するものであり、より詳細には、主として浴槽の様な成形品を製造するにあたって発生する樹脂硬化不良対策の為の非製品領域を容易に除去可能な金型、及び注型成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴槽やキッチンカウンターにおいては、キズがつきにくい、外観・手触りが良い、等の性質を有する樹脂による製品が普及している。
【0003】
しかし、上記の様な性質の材料は高価であるため、表面層と裏面層で異なる材料を使用した二層成形による成形が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているキッチンカウンターがある。特許文献1には表面層を、剛性を有する樹脂(例えばアクリル樹脂)によって形成し、裏面層を発泡樹脂等の安価な樹脂によって製造する方法が開示されている。これにより、外観や手触りを損なわず、従来よりも低コストで製品を提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010―207453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
注型成形においては、成形を行う際、樹脂の侵入につれて成形キャビティ内の圧力が高まり、樹脂硬化不良が生じることがある。そのため成形キャビティ内に、製品として使用する領域と、該領域の外側であり、流れ方向末端側に非製品領域を設けている。
【0007】
非製品領域は、金型による成形が終了すると排除されるのであるが、前記非製品領域は、一層成形の場合、手による加工で除去することが可能な程度に薄くすることが可能である。
【0008】
しかし、第一層成形時に、前記非製品領域にガスケット(パッキン)等を当てる形で第二層を成形する二層成形による加工法では、非製品領域を薄くすることができない。即ち、第二層を成形するために、非製品領域が手加工では除去することができない程に厚肉となる。したがって、非製品領域の除去のためにプレ加工機を導入する必要があり、加工工程の増加や、余分な設備投資が問題となった。
【0009】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、注型成形による二層成形の際に発生する非製品領域を容易に除去可能な注型成形用金型、及び、注型成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、注型成形による二層成形の際に使用する注型成形用金型において、当該金型は少なくとも一対の金型片により内部に成形キャビティを形成し、前記成形キャビティは製品領域と、当該製品領域の外側にある非製品領域から成り、前記金型片の少なくとも一方は、前記非製品領域の一部に樹脂の流路を狭める流路狭め部を有しており、前記流路狭め部により第一層の少なくとも一部に薄肉部を形成することを特徴とする注型成形用金型である。
【0011】
本発明の注型成形用金型は、一方、若しくは他方の金型片において、非製品領域に樹脂の侵入する流路を狭める流路狭め部を有している。本発明では、前記流路狭め部により、第一層に薄肉部を形成し、前記薄肉部は打撃等による軽い衝撃を与えることで破壊することができる。したがって、樹脂硬化不良対策の為の非製品領域を薄肉部と共に容易に除去することができるため、プレ加工機を導入する必要がなくなる。尚、前述の通り、薄肉部の破壊によって非製品領域を除去するため、薄肉部は非製品領域の内側に作成することが望ましい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の注型成形用金型を使用し、第一層の非製品領域の少なくとも一部に薄肉部を形成する第一層を成形する工程と、前記第一層とは異なる材質により第二層を形成する工程を有することを特徴とする注型成形品の製造方法である。
【0013】
本発明の成形方法は、第一層の非製品領域の少なくとも一部に薄肉部を形成する工程と、前記第一層とは異なる材質により第二層を形成する工程を有することを特徴とする注型成型品の製造方法である。当該製造方法より、製品としては不要ではあるが、成形時に必要である非製品領域を容易に除去することができる。また、薄肉部を設ける方法として、一方、若しくは他方の金型片に突出部を設ける方法の他、薄肉部を設けたい場所に別部材を挿入する方法を取ることにより薄肉部を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、成形時にできた非製品領域を容易に除去することができるため、プレ加工機を導入する必要がなく、低コスト化が可能であり、且つ工程を増やさずに加工を進めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)〜(d)本発明の第1実施形態に係る金型と、浴槽の成形工程を示す断面図である。
【図2】(a)成形した浴槽の端部を示す拡大断面図である。(b)前記(a)の浴槽から非製品領域を排除したことを示す断面図である。
【図3】本発明の(a)第2実施形態、及び(b)第3実施形態に係る金型を示す断面図である。
【図4】第2実施形態に係る金型を用いて成形された成形品であって、特に傾斜部を示す断面図で、(a)分離前を示し、(b)分離後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の第1実施形態に係る金型と二層成形方法について説明する。尚、以下の説明における上下方向は、特に断りのない限り成形型1の通常設置時を基準とする。
【0017】
本発明の第1実施形態の金型は、上下一対の金型片の間に形成された成形キャビティに樹脂を注入し、硬化させて成形品を成形する、いわゆる注型成形を実施するものである。尚、本実施形態においては、成形品は浴槽である。
【0018】
成形型1は、図1aに示すように、上型3と下型4を備えた構成となっている。そして、上型3と下型4を合致させたとき、両者の間に成形キャビティ5が形成される。そして、前記成形キャビティ5の周端部付近には下型4より突出した突出部(流路狭め部)6が形成されている。
【0019】
また、前記成形キャビティ5は製品領域7と非製品領域8を有している。製品領域7は、製品として流通する部分を形成する領域であり、非製品領域8は、製品領域7の外側、即ち樹脂の流れ方向末端側に位置し、前記突出部6近辺の成形キャビティ5より成形される領域である。そして、非製品領域は当該浴槽が製品として流通する際には取り除かれる。
【0020】
突出部6は下型4を周囲より隆起させることにより形成されており、抜き勾配のついた断面略台形で上方へ向かって突出している。したがって、突出部6は、上方に向かうにつれて狭まっている。また、突出部6は、成形型1によって形成される成形キャビティ5の四方の縁部分全てに亘って延びている。
【0021】
上型3と下型4を型締めすることにより、成形型1の内部に成形キャビティ5が形成される。その際、前記突出部6により、突出部6の周辺は、他の部位よりも成形キャビティ5が上下方向に狭くなっている。そして成形キャビティ5に樹脂を充填し、硬化させることにより、第一層15を成形する(図1b)。
【0022】
この時、本実施形態における第一層15の非製品領域8は、後述するガスケット9を乗せるため、樹脂硬化不良対策として本来必要である肉厚よりも厚く成形している。
【0023】
次に、上型3を取り外し、第一層15の周縁部にガスケット(パッキン)9を配置する。そして、第二層を成形するための上型10を下型4に合致させ、型締めする(図1c)。
【0024】
上型10は上型3とは別の部材であり、上型10は第二層を成形するために使用される。上型10は、先に使用した上型3よりも、第二層成形分だけ成形キャビティを広く形成し、結果、上型10と、先に硬化させた第一層15との間に新たな成形キャビティ12が形成される。
【0025】
成形キャビティ12内に、第一層15を成形する際に注入した樹脂とは異なる樹脂を充填し、硬化させることにより第二層20が成形される(図1d)。尚、第二層20成形時においては、樹脂封止部材であるガスケット9を第一層の周縁に配置するため、第二層20を形成する樹脂がガスケット9より先端にまで侵入することはない。
【0026】
第一層は浴槽が浴室に設置される際、表層として外部に露出する部分であるため、外観や手触りの良い樹脂を使用する。反対に、第二層は外部に露出しないため、断熱性や強度が大である樹脂を注入する。実際に浴槽を使用する際には、使用者は浴槽の第一層のみを使用することになるから、第二層に使用されている樹脂の手触りや見た目を確認することはできない。
【0027】
次に、成形型より取り出した第一、第二層の加工について、図2を用いて説明する。
【0028】
成形された第一層15の端部は、下型4に設けられた突出部6により、スリット16が形成されている(図2a)。スリット16は断面略台形状であり、上方に向かうにつれて幅が狭く形成されている。また、前記スリット16により、第一層15の端部には他部より薄肉の低剛性部17(薄肉部)が形成されている。
【0029】
低剛性部17は、他より薄肉となっているため剛性が低く、低剛性部17を起点に、下方へ力を加えることで、低剛性部17より先端が分離し、除去すべき非製品領域の部分が小さくなる(図2b)。また、前述の通り、低剛性部17の周囲の第一層は剛性が低くなっているため、手による加工でも十分に先端を分離させることができる。
【0030】
そして、低剛性部17を起点に先端を分離させた後は、図示しないエンドミルで加工を行う。その結果、成形品18と成る。
【0031】
次に、第2、第3実施形態について説明する。
【0032】
第2実施形態の下型23は、図3aに示すように、成形キャビティ25の側面部に流路狭め部24を形成している。流路狭め部24を構成する各辺は共に垂直よりも端部側に向かって傾斜している。その結果、図4aに示すように、下型23の流路狭め部24によって、第一層41に傾斜部43が成形される。傾斜部43は第一層41において、薄肉部44に向かって傾斜し、且つ厚みが薄くなっている。換言すれば、傾斜部43は、薄肉部44に近づくにつれて、第二層42に近接している。すなわち、傾斜部43は、傾斜しているだけであり、複雑に入り組んだ形状ではない。そのため、第一層41を成形後、図4aにおいて、下型23(図示省略)を上方に引き上げるだけで、容易に下型23を取り外すことができる。なお、図4bに示すように、第一層41は、傾斜部43の先端部(薄肉部44)より容易に分離させることが可能となり、成形品40が完成となる。
【0033】
第3実施形態の下型27は、図3bに示すように、それ自身により流路狭め部を形成せず、エチレンプロピレンゴム等の止水性及び弾性を有する部材により形成される封止部材28により流路狭め部を形成している。
【0034】
上記した各実施形態では、流路狭め部の高さについて特に触れていないが、流路狭め部があまりに高いと、それより先に樹脂が侵入しない恐れがあるので、他の部より50%〜70%程度流路を狭める程度の高さであることが望ましい。
【0035】
実施形態1においては、第二層20を成形する際、第一層15成型時とは別の上型10を使用した。しかし、本発明はこれに限らず、第一層の硬化終了後、上型3を上方へずらすことで、上型3と第一層15の間に新たな空間を作り、当該空間をもって第二層を成形する成形キャビティとしても良い。
【0036】
また、各実施形態においては、下型、及び封止部材により流路狭め部を形成したが、本発明はこれに限らず、その他の方法によって流路狭め部を形成することができる。
【0037】
また、上記した各実施形態では、浴槽を成形する例を示したが、本発明はこれに限らず、キッチンカウンター、シンク等、様々な成形品の成形に採用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 成形型(注型成型用金型)
3,10, 上型
4,23,27 下型
5,12,25 成形キャビティ
6 突出部(流路狭め部)
7 製品領域
8 非製品領域
15,41 第一層
16 スリット
17 低剛性部(薄肉部)
18,40 成形品
20,42 第二層
24 流路狭め部
28 封止部材(流路狭め部)
44 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注型成形による二層成形の際に使用する注型成形用金型において、当該金型は少なくとも一対の金型片により内部に成形キャビティを形成し、前記成形キャビティは製品領域と、当該製品領域の外側にある非製品領域から成り、前記金型片の少なくとも一方は、前記非製品領域の一部に樹脂の流路を狭める流路狭め部を有しており、前記流路狭め部により第一層の少なくとも一部に薄肉部を形成することを特徴とする注型成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の注型成形用金型を使用し、第一層の非製品領域の少なくとも一部に薄肉部を形成する第一層を成形する工程と、前記第一層とは異なる材質により第二層を形成する工程を有することを特徴とする注型成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200910(P2012−200910A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65310(P2011−65310)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】