説明

注射可能な持続的な薬品送達ビヒクルとしての界面活性剤をベースとしたゲル

本発明は有益薬剤の持続送達用の方法および組成物を提供する。ある種の態様では、本発明は界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる組成物であって、親水性環境への露呈時に界面活性剤および溶媒が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物を提供する。他の態様では、本発明は界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる組成物であって、界面活性剤、溶媒、および親水性媒体が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対するクロス−リファレンス】
【0001】
本出願は2003年11月14日に出願された米国暫定出願番号60/519,989号および2004年11月10日に出願された米国特許出願番号10/...,...,号の権利を主張し、それは引用することにより本発明の内容となる。
【技術分野】
【0002】
発明の分野
本発明は有益薬剤の持続送達用の組成物および方法に関する。ある種の態様では、本発明は界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる組成物に関し、そこで組成物は例えば水または体液もしくは組織の如き親水性環境への露呈時に粘着性ゲルを形成する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
移植可能または注射可能な重合体状薬品送達ビヒクルは多くの欠点を有しそして有益薬剤の持続送達用のあまり理想的でない手段であると証明されてきた。熱可塑性または熱硬化性の生分解性重合体を利用する移植可能な薬品送達システムは、薬品を重合体中に加えそして混合物を例えば円筒、円形、または繊維の如き形態に成形することにより、体外で形成されなければならない。移植片を次に体内に切開により挿入しなければならない。
【0004】
移植可能な薬品送達システムに必要な切開を回避するための1つの手段は、体内に放出させうる活性剤を含有する小粒子、微球、またはマイクロカプセルの注射である。これらの物質は、それらの粒状性のために注射器で体内に注射できるが、それらはある種のプロテーゼに必要な構造一体性を有する連続的な膜または固体移植片を形成しない。さらに、微球の大きい表面積と仮定すると、注射時に多量の初期の薬品放出がしばしばある。さらに、蛋白質およびDNAをベースとした薬品はしばしばカプセル化工程中に使用される有害な溶媒および極端な温度によって分解される。微球の注射は、微球を投与時に再構成しなければならない二段階方法も包含する。
【0005】
注射可能な移植片中で使用される重合体組成物は、移植部位における重合体の急速な固化を促進しそして移植片からの薬品の拡散を促進するための水性体液中に非常にまたは比較的可溶性である溶媒/可塑剤をしばしば使用する。これらの溶媒の急速放出は、特に有益薬剤が溶媒中に可溶性でありそして溶媒が体液中に急速に分散する時には、重合体組成物からの有益薬剤の初期の急速放出をしばしばもたらす。噴出(burst)はしばしば、全てでないとしても、非常に短時間、例えば数時間または1もしくは2日間、で有益薬剤のかなりの部分を放出させる。
【0006】
特に持続送達、すなわち、数週間または1ヶ月もしくはそれ以上の期間にわたる有益薬剤の送達、が望まれるか、或いは狭い観察機会(window)および過剰な有益薬剤の放出が処置される患者に悪い結果を生じうる場合、或いは処置される患者の体内での例えばホルモンなどの如き有益薬剤の自然の1日毎の特徴を模する必要がある場合、微粒子およびゲルに伴う「噴出」の影響は受け入れることができない。これに関すると、従来の溶媒をベースとした組成物および微粒子に関しては典型的には組成物中に含有される薬品の30%〜75%が最初の注射から1日以内に放出されるような薬品噴出を有していなければならない。
【0007】
さらに、体液の急速吸収は重合体沈殿をもたらして硬化した移植片または硬化した膜を
有するものを製造して、内部の孔および重合体の内部の大部分を体液との接触から制限させる。薬品はそのような重合体状デポ剤から時間がたつとゆっくり拡散するが、デポ剤の内部への体液の遅い到達のために移植された重合体の完全な生分解を得るための有意により長い時間がかかり、それは長期にわたる慢性療法にとって望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
移植可能なまたは注射可能な重合体状薬品送達ビヒクルに関して当該技術で遭遇する問題を克服する有益薬剤の持続送達を可能にする組成物および方法に関する要望が当該技術に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、初期の薬品噴出が最少にされる持続薬品送達ビヒクルとして作用する非−重合体状の容易に注射可能な生相容性(biocompatible)および生分解性組成物に関する。ある種の態様では、本発明は、界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達用の注射可能な組成物であって、親水性環境への露呈時に界面活性剤および溶媒が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物に関する。本発明の他の態様は、界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる組成物であって、親水性環境への露呈時に界面活性剤および溶媒が粘着性ゲルを形成し、そこで有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物を患者に投与することを含んでなる患者に持続期間にわたり有益薬剤を送達する方法に関する。
【0010】
ある種の他の態様では、本発明は界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達用組成物であって、界面活性剤、溶媒、および親水性媒体が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物に関する。本発明の他の態様は、界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる組成物であって、界面活性剤、溶媒、および親水性媒体が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物を患者に投与することを含んでなる患者に持続期間にわたり有益薬剤を送達する方法に関する。
【0011】
図面の詳細な記述
図1は種々の溶媒および界面活性剤を含有する数種のリゾチーム調合物に関して得られたインビトロ放出特徴を示す。
【0012】
例示態様の詳細な記述
ここで使用される用語「有益薬剤」(“beneficial agent”)は、単独でまたは他の製薬学的賦形剤もしくは不活性成分と組み合わされた、人間または動物への投与時に所望される有益な、しばしば薬理学的な影響を与えるいずれかの剤をさす。
【0013】
ここで使用される用語「注射可能な」は、皮膚または他の組織内への注射に適する組成物をさす。注射可能な組成物は、例えば、注射器から通常の条件下で常圧でまたは自動注射器から高圧で分配させることができる。
【0014】
ここで使用される用語「持続送達」、「持続期間にわたる送達」、およびそれらの全ての変種は、本発明に従う粘着性ゲルからの有益薬剤の長期間にわたる放出をさし、それらは一般的に1週間もしくはそれより長い、そして好ましくは30日間もしくはそれより長い期間にわたるであろう。本発明のある種の態様では、有益薬剤の持続送達は患者に対する本発明に従う組成物の投与後に起きる。
【0015】
ここで使用される句「分散させたまたは溶解させた」は、本発明に従う組成物中の有益薬剤の存在を確立させる全ての意味を包括し、そして溶解、分散、懸濁などを包含する。
【0016】
ここで使用される用語「患者」は、動物、哺乳動物、または人間をさす。
【0017】
用語「投与」、「投与する」、およびそれらの全ての変種は、本発明の組成物を患者内に導入するいずれかの手段をさしそしてそれらを包含する。投与が処置目的のためである時には、投与は予防または治療目的のいずれかでありうる。予防的に提供される時には、組成物はいずれかの症状に先んじて与えられる。治療的に提供される時には、組成物は症状の開始時(または直後)に与えられる。
【0018】
ここで使用される用語「粘着性ゲル」は、約100〜約200,000ポイズ、好ましくは約500〜約50,000ポイズの粘度を有する本発明の組成物をさす。
【0019】
ここで使用される用語「親水性媒体」は、水性媒体、例えば、水、食塩水、1種もしくはそれ以上の緩衝剤の溶液、または体液もしくは組織をさす。ここで使用される用語「親水性環境」は、水性環境、例えば、人間および動物の体液もしくは組織のものをさす。
【0020】
ある種の態様では、本発明は1種もしくはそれ以上の界面活性剤および初期の薬品噴出が最少にされるような持続薬品送達ビヒクルとして作用する少なくとも1種の溶媒を含んでなる非−重合体状の容易に注射可能な生相容性および生分解性組成物に関する。ある種の他の態様では、本発明は溶媒、界面活性剤、および有益薬剤を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる持続期間にわたる患者に対する有益薬剤の送達方法に関する。
【0021】
広範囲の生物学的分子、例えば脂質、を包含する界面活性剤は、親水性部分および疎水性部分を有する両性分子である。燐脂質を包含するほとんどの脂質はほんのわずかだけ表面−活性であり、すなわち、それらは水中で極端に低い溶解度を有しそして非常に低い臨界ミセル濃度(CMC)を有する。PEG化された(PEGylated)脂質は、約1000〜約50,000の範囲にわたる分子量のポリエチレングリコール(PEG)に対する共有結合により誘導化された脂質である。PEG化された脂質およびPEG化された燐脂質は両性であり、高度に表面−活性であり、そして従来の脂質よりはるかに高いCMCおよび溶解度を有する。溶媒および水の存在下における高い濃度では、PEG化された脂質および燐脂質は種々の大量のゲル相を形成する。
【0022】
水中または疎水性溶媒中に溶解させる時に、PEG化された燐脂質を包含する界面活性剤は自己−凝集して種々の微小構造、例えばミセル、小胞、薄片、円板など、を形成して混合の自由エネルギーを最小にする。1種もしくは複数の界面活性剤の親水性−疎水性均衡(HLB)、界面活性剤濃度、水性媒体の塩濃度を包含する水性媒体の性質、溶媒の性質、および温度によって、これらの三成分系は複雑な相性能を示す。低い界面活性剤濃度では、棒状のミセル相は粘弾性溶液をもたらしうる。高い界面活性剤濃度では、立方体相、濃縮されたミセル相、六面体相、およびある種の連続二相はゲルのように構成された相を形成する。
【0023】
界面活性剤は、界面活性剤、疎水性溶媒、および親水性媒体を包含する三成分系においてゲルのような液体結晶相を形成しうる。そのようなゲル相は、種々の温度において、相の形状の大部分、すなわち、大きな組成範囲にわたりうる。本発明のある種の態様では、界面活性剤、疎水性溶媒、および疎水性媒体を混合することにより、または疎水性溶媒および界面活性剤を予備混合し、そして次に例えば混合物の皮下もしくは筋肉内投与により混合物を親水性環境に呈してその場でゲルを形成することにより、ゲル相が得られうる。
両方の方式を非経口的使用のための治療薬用デポ剤送達台として使用することができ、そして前者は局所用薬品送達台として使用することができる。
【0024】
ある面では、本発明は有益薬剤をずっと実質的に溶解または分散させた界面活性剤および溶媒から粘着性ゲルとして形成された組成物を投与することによる有益薬剤を患者に全身的または局所的に投与する方法に関する。有益薬剤は患者に長期間にわたり放出され、有益薬剤の調節された噴出およびその後の持続放出のある有益薬剤の送達を与える。
【0025】
本発明はさらに、ゲルのような液体結晶相が1種もしくはそれ以上の界面活性剤および溶媒により親水性媒体の存在下でまたは親水性環境中で形成されそして有益薬剤がゲル中に実質的に溶解または分散された有益薬剤の持続送達用組成物に関する。好ましい態様では、本発明の組成物は、ゲル形成には充分高いが通常の貯蔵および注射器または自動注入器による送達温度における取り扱い可能性および注射可能性には充分低い粘度を有する液体結晶相に存在する。
【0026】
ある面では、本発明は、界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達用組成物に関する。親水性環境に対する組成物の露呈時に、有益薬剤が溶解または分散された粘着性ゲルが形成される。本発明の他の態様は、界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる有益薬剤を患者に持続期間にわたり送達する方法に関する。組成物中への水性体液の拡散時に、有益薬剤が溶解または分散された粘着性ゲルが形成される。有益薬剤は次に粘着性ゲルから持続期間にわたり放出される。
【0027】
他の面では、本発明は界面活性剤、溶媒、および親水性媒体が有益薬剤を溶解または分散させた粘着性ゲルを形成するような界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達用組成物に関する。本発明の他の態様は、界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる有益薬剤を患者に持続期間にわたり送達する方法に関する。そのような組成物は粘着性ゲルを形成しそして注射によりまたは局所的に投与することができる。
【0028】
本発明の方法および組成物中での使用に適する界面活性剤は、例えば、イオン性界面活性剤(少なくとも1種のイオン化された部分を有する)および非イオン性界面活性剤(イオン化された基を有さない)を包含する。イオン性界面活性剤はアニオン性界面活性剤、例えば脂肪酸類および脂肪酸類の塩類(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);ステロール酸類およびそれらの塩類(例えば、コレートおよびデオキシコレート);カチオン性界面活性剤、例えばアルキルトリ−メチルおよびエチルアンモニウムブロミド類(例えば、セチルトリエチルアンモニウムブロミド(CTAB)およびC16TAB);両性界面活性剤、例えばリゾ脂質類(例えば、リゾホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミン)、およびCHAPS;並びにツヴィッテルゲント類(Zwittergents)、例えばツヴィッテルゲント(R)3−14を包含するが、それらに限定されない。
【0029】
本発明の方法および組成物中での使用に適する非イオン性界面活性剤は脂肪アルコール類、すなわち、構造式CH(CHC(H)OH(例えばここでnは少なくとも6である)を有するアルコール類、例えばラウリル、セチルおよびステアリルアルコール類;脂肪糖類、例えばオクチルグルコシドおよびジギトニン;ルブロール類(Lubrols)、例えばルブロール(R)PX;トリトン類(Tritons)、例えばトリトン(R)X−100、ノニデント類、例えばノニデント(R)P−40;ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば商品名スパン(SPAN)(R)で販売されているもの)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば商品名ツイーン(TWEEN)(R)で販
売されているもの)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば商品名ミルジ(MYRJ)(R)で販売されているもの)、ポリオキシエチレンステロイドエステル類、ポリオキシプロピレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンステロイドエステル類、ポリオキシエチレンエーテル類(例えば商品名ブリジ(BRIJ)(R)で販売されているもの)、ポリグリコールエーテル類(例えば商品名テルギトール(TERGITOL)(R)で販売されているもの)などを包含するが、それらに限定されない。好ましい非イオン性界面活性剤はポリグリコールエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、ポリスルベート80、ポリオキシエチレン4−ラウリルエーテル、プロピレングリコール、およびそれらの混合物である。
【0030】
本発明の方法および組成物中での使用に適するアニオン性界面活性剤は長鎖アルキルスルホネート類、カルボネート類、およびサルフェート類、並びにアルキルアリールスルホネート類などを包含するが、それらに限定されない。好ましいアニオン性界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム、スルホ琥珀酸ジアルキルナトリウム(例えば、ビス−(2−エチルヘキシル)−スルホ琥珀酸ナトリウム)、7−エチル−2−メチル−4−ドデシル硫酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0031】
本発明の方法および組成物中での使用に適するカチオン性界面活性剤は長鎖アミン塩類または第四級アンモニウム塩類、例えば、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドなどを包含するが、それらに限定されない。
【0032】
本発明の方法および組成物中での使用に適する両性界面活性剤はアニオンとしてカルボキシレートまたはホスフェート基をそしてカチオンとしてアミノまたは第四級アンモニウム部分を含む化合物を包含するが、それらに限定されない。これらは、例えば、種々のポリペプチド類、蛋白質類、アルキルベタイン類、並びに天然燐脂質、例えばリゾレシチン類およびリゾセファリン類を包含する。
【0033】
好ましい界面活性剤は燐脂質類、PEG化された燐脂質類、PEG化された脂質類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体類、エトキシル化されたソルビタンエステル類、ソルビタンエステル類、エトキシル化されたエーテル類、エトキシル化されたひまし油類、ビタミンE−TPGS(D−α−トコフェリルPEG1000スクシネート)、スフィンゴ脂質類、糖脂質類、リゾホスホ脂質類、脂肪酸類、胆汁酸類、エトキシル化されたグリセリド類、エトキシル化された脂肪アルコール類、およびそれらの混合物を包含するが、それらに限定されない。
【0034】
本発明の方法および組成物中での使用に適するPEG化された脂質類は、例えば、PEG−DSPE(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンに共役されたポリエチレングリコール)、mPEG−DS(ジステアロイルに共役されたメチルエーテル−ポリエチレングリコール)、およびPEG−セラミド類を包含する。
【0035】
本発明のある種の態様の組成物および方法において界面活性剤として作用する脂質類および燐脂質類は、PEG以外の重合体、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルタミド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオ
キシド共重合体、上記重合体の共重合体、およびそれらの混合物に共役されうる。前記重合体のいずれかに共役された脂質類および燐脂質類はそれ故、本発明のある種の態様の方法および組成物において界面活性剤として機能しうる。
【0036】
本発明のある種の態様では、組成物は合計重量の約5%〜約80%の界面活性剤を含んでなる。ある種のより好ましい態様では、本発明の組成物は合計重量の約10%〜約70%の界面活性剤を含んでなる。さらにより好ましい態様では、本発明の組成物は合計重量の約15%〜約60%の界面活性剤を含んでなる。
【0037】
本発明の方法および組成物中での使用に適する溶媒は、親水性、非プロトン性、および疎水性溶媒を包含する。好ましい溶媒はオレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、乳酸ラウリル、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、グリコフロール(glycofurol)、エタノール、トコフェロール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、トリグリセリド類、アルキルトリグリセリド類、ジグリセリド類、ごま油、ピーナッツ油、ひまし油、オリーブ油、綿実油、ペルフルオロカーボン、N−メチル−ピロリドン、DMSO、グリセロール、オレイン酸、グリコフロール、乳酸ラウリル、ペルフルオロカーボン、炭酸プロピレン、またはそれらの混合物を包含するが、それらに限定されない。
【0038】
本発明のある種の態様では、組成物は合計重量の約20%〜約95%の溶媒を含んでなる。ある種のより好ましい態様では、本発明の組成物は合計重量の約30%〜約90%の溶媒を含んでなる。さらにより好ましい態様では、本発明の組成物は合計重量の約40%〜約55%の溶媒を含んでなる。
【0039】
本発明の方法および組成物中での使用に適する有益薬剤は、場合により製薬学的に許容可能な担体および本発明の組成物および方法で得られうる有利な結果に実質的に悪影響を与えない追加成分、例えば酸化防止剤、安定剤、透過促進剤など、と場合により組み合わされていてもよい、1種もしくは複数の生理学的または製薬学的に活性な物質を包含する。有益薬剤は、薬剤、薬物、ビタミン、栄養素などを包含する。この記述に合致するタイプの剤の中には、比較的低分子量の化合物、蛋白質、ペプチド、遺伝物質、栄養素、ビタミン、食品補足剤、性器殺菌剤、造影剤、受精抑制剤および受精促進剤が包含される。好ましい有益薬剤は、例えば、蛋白質、ペプチド、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイドを包含するがそれに限定されない小分子、鎮痛薬、局所鎮痛薬、抗生物質剤、抗−炎症性コルチコステロイド、抗微生物剤、コントラスト剤、例えば、Gd−DTPA(ガドリウム(III)ジエチルトリアミン五酢酸)、ガドジアミド、ガドテリドール、Gd−DTPA−標識アルブミン、Gd−DTPA−標識デキストラン、およびクロム−標識赤血球、眼薬、および化学療法剤を包含する。
【0040】
本発明の方法および組成物中で使用できる有益薬剤は、末梢神経、アドレナリン作用性受容体、コリン作用性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、ニューロエフェクター結合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、再生系、骨格系、オータコイド系、栄養および排泄系、ヒスタミン系並びに中枢神経系に作用する薬品を包含する。
【0041】
本発明の組成物および方法において使用できる有益薬剤の例は、プロクロルペルジン・エジシレート(prochlorperzine edisylate)、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、メカミルアミン・ヒドロクロリド(mecamylamine hydrochloride)、プロカインアミド・ヒドロクロリド(procainamide hydrochloride)、アンフェタミン・サルフェ−ト(ampheta
mine sulfate)、メタムフェタミン・ヒドロクロリド(methampheatmine hydrochloride)、ベンズアンフェタミン・ヒドロクロリド(benzamphetamine hydrochloride)、イソプロテレノール・サルフェ−ト(isoproterenol sulfate)、フェンメトラジン・ヒドロクロリド(phenmetrazine hydrochloride)、ベタネコール・クロリド(bethanechol chloride)、メタコリン・クロリド(methacholine chloride)、ピロカルピン・ヒドロクロリド(pilocarpine hydrochloride)、アトロピン・サルフェ−ト(atropine sulfate)、スコポラミン・ブロミド(scopolamine bromide)、イソプロパミド・ヨーダイド(isopropamide iodide)、トリジヘキセチル・クロリド(tridihexethyl chloride)、フェンホルミン・ヒドロクロリド(phenformin hydrochloride)、メチルフェニデート・ヒドロクロリド(methylphenidate hydrochloride)、テオフィリン・コリネート(theophylline cholinate)、セファレキシン・ヒドロクロリド(cephalexin hydrochloride)、ジフェニドール(diphenidol)、メクリジン・ヒドロクロリド(meclizine hydrochloride)、プロクロルペラジン・マレエート(prochlorperazine maleate)、フェノキシベンズアミン(phenoxybenzamine)、チエチルペルジン・マレエート(thiethylperzine maleate)、アニシンドン(anisindone)、ジフェナジオン・エリスリチル・テトラナイトレート(diphenadione erythrityl tetranitrate)、ジゴキシン(digoxin)、イソフルロフェート(isoflurophate)、アセタゾールアミド(axetazolamide)、メタゾールアミド(methazolamide)、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethiazide)、クロロプロマイド(chloropromaide)、トラザミド(tolazamide)、クロルマジノン・アセテート(chlormadinone acetate)、フェナグリコドール(phenaglycodol)、アロプリノール(allopurinol)、アルミニウム・アスピリン(aluminum aspirin)、メトトレキセート(methotrexate)、アセチル・スルフィソキサゾール(acetyl sulfisoxazole)、エリスロマイシン(erythromycin)、ヒドロコルチソン(hydrocortisone)、ヒドロコルチコステロン・アセテート(hydrocorticosterone acetate)、コルチソン・アセテート(cortisone acetate)、デキサメタソン(dexamethasone)およびその誘導体、例えばベータメタソン(betamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、メチルテストステロン(methyltestosterone)、17−S−エストラジオール(17−S−estradiol)、エチニル・エストラジオール(ethinyl estradiol)、エチニル・エストラジオール3−メチルエーテル(ethinyl estradiol 3−methyl ether)、プレドニソロン(prednisolone)、17α−ヒドロキシプロゲステロン・アセテート(17α−hydroxyprogesterone acetate)、19−ノル−プロゲステロン(19−nor−progesterone)、ノルゲストレル(norgestrel)、ノルエチンドロン(norethindrone)、ノルエチステロン(norethisterone)、ノルエチエデロン(norethiederone)、プロゲステロン(progesterone)、ノルゲステロン(norgesterone)、ノルエチノドレル(norethynodrel)、アスピリン(aspirin)、インドメタシン(indomethacin)、ナプロキセン(naproxen)、フェノプロフェン(fenoprofen)、スリンダック(sulindac)、インドプロフェン(indoprofen)、ニトログリセリン(nitroglycerin)、イソソルバイド・ジナイトレート(isosorbide dinitrate)、プロプラノロール(propranolol)、チモロール(timolol)、アテノロール(atenolol)、アルプレノロール(alprenolol)、シメチジン(cimetidine)、クロニジン(clonidine)、イミプラミン(imipramine)、レボドーパ(levodopa)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、メチルドーパ(methyldopa)、ジヒドロキシフェニルアラニン(dihydroxyphenylalanine)、テオフィリン(theophylline)、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン(ketoprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、セファレキシン(cephalexin)、エリスロマイシン(erythromycin)、ハロペリドール(haloperidol)、ゾメピラック(zomepirac)、乳酸第一鉄、ビンカミン(vincamine)、ジアゼパム(diazepam)、フェノキシベンズアミン(phenoxybenzamine)、ジルチアゼム(diltiazem)、ミルリノン(milrinone)、マンドール(mandol)、クアンベンズ(quanbenz)、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)、ラニチジン(ranitidine)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フェヌフェン(fenufen)、フルプロフェン(fluprofen)、トルメチン(tolmetin)、アルクロフェナック(alclofenac)、メフェナミック(mefenamic)、フルフェナミック(flufenamic)、ジフイナル(difuinal)、ニモジピン(nimodipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、ニソルジピン(nisoldipine)、ニカルジピン(nicardipine)、フェロジピン(felodipine)、リドフラジン(lidoflazine)、チアパミル(tiapamil)、ガロパミル(gallopamil)、アムロジピン(amlodipine)、ミオフラジン(mioflazine)、リシノールプリル(lisinolpril)、エナラプリル(enalapril)、エナラプリラト(enalaprilat)、カプトプリル(captopril)、ラミプリル(ramipril)、ファモチジン(famotidine)、ニザチジン(nizatidine)、スクラルフェート(sucralfate)、エチンチジン(etintidine)、テトラトロール(tetratolol)、ミノキシジル(minoxidil)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、ジアゼパム(diazepam)、アミトリプチリン(amitriptyline)、およびイミプラミン(imipramine)を包含するが、それらに限定されない。別の例は蛋白質およびペプチドであり、それらは骨形態発生蛋白質、インスリン(insulin)、コルチシン(colchicine)、グルカゴン(glucagon)、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺および下垂体ホルモン、カルシトニン(calcitonin)、レニン(renin)、プロラクチン(prolactin)、コルチコトロフィン(corticotrophin)、向甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛膜ゴナドトロピン(chorionic gonadotropin)、ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone)、牛ソマトトロピン(bovine somatotropin)、豚ソマトトロピン(porcine somatotropin)、オキシトシン(oxytocin)、バソプレッシン(vasopressin)、GRF、ソマトスタチン(somatostatin)、リプレッシン(lypressin)、パンクレオジミン(pancreozymin)、黄体形成ホルモン、LHRH、LHRH作用物質および拮抗物質、ロイプロリド(leuprolide)、インターフェロン類、例えばインターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、および交感インターフェロン、インターロイキン類、成長ホルモン類、例えばヒト成長ホルモン並びにその誘導体、例えばメチオニン−ヒト成長ホルモンおよびデス−フェニルアラニンヒト成長ホルモン、牛成長ホルモンおよび豚成長ホルモン、受精抑制剤、例えばプロスタグランジン類、受精促進剤、成長因子、例えばインスリン類似成長因子、凝固因子、ヒト膵臓ホルモン放出因子、これらの化合物の同族体および誘導体、並びにこれらの化合物の製薬学的に許容可能な塩類、またはそれらの同族体もしくは誘導体を包含するが、それらに限定されない。
【0042】
ある種の態様では、本発明はまた、全身的な副作用を回避するかまたは最少にするためのそのような剤の局所適用のための化学療法剤と一緒の用途も見出した。ある態様では、化学療法剤を含有する本発明のゲルは時間につれての化学療法剤の持続的送達のために腫瘍組織内に直接注射することができる。ある態様では、特に腫瘍の切除後には、ゲルを生じた腔内に直接移植することができ、または残存組織にコーティングとして適用することもできる。ゲルが手術後に移植される態様では、比較的高い粘度を有するゲルは小直径の針を通ることができないため、それらを利用することが可能である。本発明のある種の態様の方法および組成物において使用できる代表的な化学療法剤は、例えば、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)、BCNU、ビンクリスチン(vincristine)、カンプトテシン(camptothecin)、エトプシド(etopside)、サイトキン類、リボザイム類、インターフェロン類、腫瘍遺伝子の翻訳または転写を抑制するオリゴヌクレオチド類およびヌクレオチド配列、前記のものの機能的誘導体、並びに例えば引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,651,986号明細書に記載されたものを包含する。本発明のある種の態様では、組成物および方法は水溶性化学療法剤、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン並びにパクリタキセルの水溶性誘導体、の持続送達において特に有用である。噴出影響を最少にする本発明のある種の態様の特徴は全ての種類の水溶性有益薬剤の投与において特に有利であるが、特に臨床的に有用であり且つ有効である化合物は有害な副作用を有するかもしれない。
【0043】
以上では述べられていないが、引用することにより本発明の内容となる上記の米国特許第5,242,910号明細書に記載された有益薬剤を本発明の組成物および方法において使用することもできる。
【0044】
とりわけ、マイクロカプセル化するかまたは微球に処理するのが難しい例えば酵素リソチームにより例示される蛋白質、並びにウイルス性および非ウイルス性の両者のベクター中に導入されたcDNAおよびDNAの如き物質を、しばしば他の処理技術で遭遇する高温および変性溶媒への露呈により引き起こされる分解水準を伴わずに本発明の組成物に導入させうる。
【0045】
本発明のある種の態様では、例えば、乾燥粉砕、湿潤粉砕、微小化、凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧−凍結乾燥、ホモジェニゼーション、または超臨界流体微小化により、有益薬剤は粒子中に調合される。本発明のある態様では、粒子をコーティングして有益薬剤の放出のさらなる調節を与える。本発明のある種の態様では、有益薬剤の粒子は安定剤、例えば、スクロース、テハロース、マンニトール、およびグリシン;緩衝剤、例えば、ホスフェート、ヒスチジン、およびスクシネート;または酸化防止剤、例えば、ビタミンEもしくはメチオニンを含んでなる。本発明のある態様では、有益薬剤の粒子は1種もしくはそれ以上の安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる。本発明のある種の態様では、有益薬剤の粒子は安定化のために別の分子、例えば亜鉛塩、または1種もしくはそれ以上の重合体と複合させることができる。
【0046】
本発明の好ましい態様では、有益薬剤は界面活性剤、溶媒、および親水性媒体から形成された粘着性ゲル中に典型的には約0.1〜約200ミクロン、好ましくは約1〜約125ミクロン、そしてしばしば約2〜約100ミクロンの平均粒子寸法を有する粒子の形態で導入される。
【0047】
界面活性剤、溶媒、および親水性媒体から形成された粘着性ゲル中の有益薬剤の粒子の懸濁液または分散液を製造するためには、いずれかの従来の低剪断装置、例えば二重遊星
ミキサー、を使用することができる。この方法で、有益薬剤の効率的な分布が有益薬剤を実質的に分解させずに得られうる。
【0048】
好ましい態様では、有益薬剤は、典型的には、本発明の組成物中に合計重量の約1%〜約50%の量で、好ましくは合計重量の約5%〜約40%の量で、そしてしばしば合計重量の約10%〜約30%の量で溶解または分散される。組成物中に存在する有益薬剤の量によって、異なる放出特徴および噴出指数が得られうる。
【0049】
本発明のある種の態様では、有益薬剤の放出速度および充填量は意図する持続送達期間にわたる有益薬剤の治療的に有効な送達を与えるように調節される。好ましくは、有益薬剤はゲル中に有益薬剤の水中飽和濃度を越える濃度で存在する。有益薬剤の放出速度は特定の環境、例えば投与される特定の有益薬剤に依存するが、約7〜約90日間にわたり、1日当たり約0.1マイクログラム〜1日当たり約100ミリグラム、好ましくは1日当たり約10マイクログラム〜1日当たり約10ミリグラムの程度の放出速度が得られうる。送達がより短い期間にわたり起きる場合には、より多い量の有益薬剤が送達されうる。一般的に、より多い噴出に耐えうる場合には、より高い放出速度が可能である。さらに、移植または注射される組成物の容量を調節することにより有益薬剤の服用量を調節しうる。
【0050】
本発明のある種の態様では、親水性媒体は水、食塩水、1種もしくはそれ以上の緩衝剤の溶液、体液、または体組織を包含するが、それらに限定されない。親水性環境は水性環境、例えば、人間もしくは動物の体液または組織のものを包含するが、それらに限定されない。
【0051】
組成物が界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる本発明の態様では、組成物は合計重量の約0.1%〜約10%の親水性媒体を含んでなる。ある種のより好ましい態様では、そのような組成物は合計重量の約0.1%〜約2%の親水性媒体を含んでなる。さらにより好ましい態様では、そのような組成物は合計重量の約0.1%〜約0.5%の親水性媒体を含んでなる。
【0052】
ある種の態様では、他の成分、例えばポリエチレングリコール、吸湿剤、安定剤、緩衝剤、孔形成剤、粘度−増加剤など、がゲル組成物中にそのような追加成分が所望されるかまたは組成物に有用な性質を与える程度まで存在できる。組成物が水性環境中で可溶性であるかまたは不安定であるペプチドまたは蛋白質を包含する時には、例えば安定剤でありうる溶解度調整剤を組成物中に含むことが非常に望ましい。種々の溶解度調整剤は引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,654,010号明細書および第5,656,297号明細書に記載されている。例えば、hGHの場合には、ある量の2価金属、好ましくは亜鉛、の塩を含むことが好ましい。有益薬剤との複合体を形成するかまたは会合して安定化用のまたは調整された放出効果を与えうるそのような調整剤および安定剤の例は、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、他の制酸類などとして組成物中に存在する好ましくは2価の金属カチオンを包含する。使用されるそのような剤の量は、もし存在するなら、形成される複合体の性質にまたは有益薬剤および剤の間の会合の性質に依存するであろう。約100:1〜1:1、好ましくは10:1〜1:1の溶解度調節剤または安定剤対有益薬剤のモル比を典型的に使用することができる。
【0053】
本発明のある種の態様では、組成物は巨大分子を安定化させる剤、例えば、トレハロース、スクロース、およびグリシンを包含するがそれらに限定されない、リオプロテクタント類(lyoprotectants)を含んでなりうる。ある態様では、本発明の組成
物は緩衝剤、例えば、ホスフェート類、スクシネート類、ヒスチジン類、およびアセテートを含んでなりうる。別の態様では、本発明の組成物は追加の界面活性剤、例えばツイーン20を包含しうる。
【0054】
ある種の態様では、粘度−増加剤を本発明の組成物中に分散または溶解させて組成物の粘度を高めて、それらを安定化させうる。粘度−増加剤は重合体、例えばポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、ポリ−ラクチド−グリコール酸、ポリカプロラクトン−LA−GA共重合体を包含するが、それらに限定されない。本発明のある種の態様では、組成物は合計重量の約0.1%〜約5%の粘度−増加剤を含んでなる。
【0055】
本発明のある種の態様では、組成物は移植または注射前に非常に粘着性である。追加の界面活性剤を組成物中に分散または溶解させて針の中への組成物の通過を可能にするのに充分なほど粘度を下げることにより、組成物の粘度を低下させうる。また、孔形成剤および有益薬剤の溶解度調節剤を、典型的な製薬学的賦形剤および本発明のある種の態様の組成物の有益な面を変化させない他の添加剤と共に、組成物に加えて所望する放出特徴を与えることもできる。
【0056】
ある種の態様では、本発明の組成物は好ましくは粘着性ゲルとして形成されるため、組成物の投与手段は注射に限定されないが、その送達方式がしばしば好ましい。本発明のある種の態様では、組成物は移植手術により投与されうる。他の態様では、本発明の組成物は皮膚または他の組織に局所的に適用できる。組成物を残留製品として投与する場合には、それらを手術の完了後に存在する体腔内に適合するように形成することができ、またはゲルを残存する組織もしくは骨にブラシ塗りするかもしくは載せることによりそれらを流動性ゲルとして適用することもできる。そのような適用は、注射可能な組成物で典型的に存在する濃度より高い濃度のゲル中への有益薬剤の充填を可能にする。
【0057】
本発明のある種の態様は、外傷治癒、骨再生、および他の構造的支持目的のために使用できる有益薬剤を含まない組成物に関する。
【0058】
ある種の態様では、本発明のある種の好ましい組成物は合計重量の5%〜80%の界面活性剤、合計重量の20%〜95%の溶媒、および合計重量の1%〜50%の有益薬剤を含んでなる。他の態様では、本発明の好ましい組成物は合計重量の5%〜80%の界面活性剤、合計重量の20%〜95%の溶媒、合計重量の0.1%〜10%の親水性媒体および合計重量の1%〜50%の有益薬剤を含んでなる。
【実施例】
【0059】
下記の実施例は本発明のある種の態様の説明でありそして本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【0060】
実施例1:リゾチームの持続送達用組成物の製造
試料製造
4種の試験試料および2種の対照試料を以下の通りにして製造した。各試料に関して、界面活性剤および溶媒を以下の表に記載された重量比で20mlのシンチレーション瓶に混入した。各試料中の界面活性剤および溶媒の合計重量は約5グラムであった。試料を次にケイエンス・ハイブリッド(Keyence Hybrid)ミキサーを用いて10分間にわたり混合した。リゾチーム(ウォーシントン(Worthington)からの17970u/mgDW)を次に乾燥箱内の各瓶に混合物の粘度が試料が放出セル内に充填されるのに充分な水準に増加するまで加えて、各試料に対して約1グラムのリゾチームを添加した。瓶をしっかり密封しそしてケイエンスミキサー中に1分間にわたり入れた。瓶を次にオーバーヘッドミキサーを用いて均質な混合物が得られるまで撹拌した。透明なゲル相がヒドロゲル調合物(プルロニック(Pluronic)F127/水/ブタノール)に関して得られた。
【0061】
【表1】

【0062】
インビトロ放出試験
試料を500mgのインビトロ放出セル中に充填した。浴の温度を37℃に保ちそしてpHを7.4に保った。試料を1時間、4時間、1日、2日、3日、5日、7日、10日、および14日後に除去し、そしてHPLCを用いて分析して蛋白質濃度を測定した。図1に示されているように、14日目に、4個の試験試料が急速放出対照より遅い放出速度を示しそしてまた調節放出対照のものより速い放出速度を示した。14日目に、逆プルロニック31R1/安息香酸ベンジル試料は試験試料の最も速い放出速度を示し、プルロニックF127/水/ブタノール試料は2番目に速い試験試料の放出速度を示し、プルロニックL64/安息香酸ベンジル試料は3番目に速い試験試料の放出速度を示し、そしてポリソルベート80/安息香酸ベンジルは最も遅い試験試料の放出速度を示した。
【0063】
実施例2:ヒト成長ホルモンの持続送達用組成物の製造
以下に示される量の組み換えヒト成長ホルモン、スクロース、グリシン、およびホスフェートの凍結乾燥、その後の粒子縮小および寸法分類、並びに/または噴霧乾燥により、組み換えヒト成長ホルモンの粒子を製造する。(以下に示された量の)ポリソルベート20および安息香酸を二重遊星ミキサー中でポリソルベート20が安息香酸中に溶解するまで混合することにより、ゲルを次に製造する。以下に示された量のポリビニルピロリドンを次にポリソルベート20/安息香酸混合物にゆっくり加えて粘着性ゲルを形成する。ヒト成長ホルモン粒子を次にゆっくりゲル中に分散させて薬用量形態を形成する。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例3:リゾチームの持続送達用組成物の製造
20mlのシンチレーション瓶の中で2種の成分をオーバーヘッドミキサーまたはスパチュラのいずれかを用いて混合することにより、80重量%のポリソルベート80(クロダ(Croda))および20重量%の安息香酸ベンジル(チャルキット(Charkit))を含有する10グラムの合計重量を有する界面活性剤/溶媒混合物を製造する。リゾチーム溶液を噴霧乾燥して約5ミクロンのリゾチーム粒子を生ずるかまたは凍結乾燥したリゾチームケーキを粉砕しそしてふるいにかけて約38〜125ミクロンのリゾチーム粒子を生ずることにより、リゾチーム粒子を製造する。1〜2グラムのリゾチーム粒子を重量測定しそしてオーバーヘッドミキサーまたはスパチュラのいずれかを用いて界面活性剤/溶媒混合物の中に完全に分散させ、それが調合物の粘度を高める。調合物をインビトロ放出セル内に充填し、そして放出特徴を得る。
【0066】
実施例4:モノクローン抗体の持続送達用組成物の製造
60重量%のプルロニックL64(バスフ(BASF))および40重量%の安息香酸ベンジル(チャルキット)を含有する40グラムの合計重量を有する界面活性剤/溶媒混合物を小さい二重−遊星ミキサー中で製造する。10グラムのポビドン(povidone)17pFまたはポリビニルピロリドン(バスフ)を溶媒/界面活性剤混合物に加えて調合物の粘度を高める。ポリビニルピロリドンをベヒクル中に溶解させる。約5〜10ミクロンの粒子寸法を有するモノクローン抗体粒子を噴霧乾燥により製造し、粘着性ビヒクルに加え、そして二重遊星ミキサーにより真空下で分散させて気泡の生成を防止する。生じた調合物を大きなHDPE注射器に移し、そこでそれを小さい0.5−mlガラス注射器に充填する。
【0067】
実施例5:
組み換えヒト成長ホルモンの持続送達用組成物の製造
50重量%のクレモフォル(Cremophor)ELP(バスフ)および50重量%のひまし油(クロダ)を含有する500グラムの合計重量を有する界面活性剤/溶媒混合物を大規模な二重遊星ミキサー中で製造する。固体の組み換えヒト成長ホルモン(rhGH)粒子を界面活性剤/溶媒混合物の中に真空下で連続的に混合することにより均質に分散させる。調合物を閉鎖系の中で充填カートリッジに移し、そこには個別の注射器または瓶が充填されている。
【0068】
この文書に引用または記載されたそれぞれの特許、特許出願、および文献は引用することにより本発明の内容となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は種々の溶媒および界面活性剤を含有する数種のリゾチーム調合物に関して得られたインビトロ放出特徴を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤、溶媒、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達のための注射可能な組成物であって、親水性環境への露呈時に、界面活性剤および溶媒が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物。
【請求項2】
界面活性剤がアニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性である請求項1の組成物。
【請求項3】
界面活性剤が燐脂質、PEG化された(PEGylated)燐脂質、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、エトキシル化されたソルビタンエステル、ソルビタンエステル、エトキシル化されたエーテル、エトキシル化されたひまし油、D−α−トコフェリルPEG1000スクシネート、スフィンゴ脂質、糖脂質、リソ燐脂質、脂肪酸、胆汁塩、エトキシル化されたグリセリド、エトキシル化された脂肪アルコール、またはそれらの混合物である請求項2の組成物。
【請求項4】
合計重量により5%〜80%の界面活性剤を含んでなる請求項1の組成物。
【請求項5】
溶媒が疎水性である請求項1の組成物。
【請求項6】
疎水性溶媒がオレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、乳酸ラウリル、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、グリコフロール、エタノール、トコフェロール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、トリグリセリド、アルキルトリグリセリド、ジグリセリド、ごま油、ピーナッツ油、ひまし油、オリーブ油、綿実油、ペルフルオロカーボン、N−メチル−ピロリドン、DMSO、グリセロール、オレイン酸、グリコフロール、乳酸ラウリル、ペルフルオロカーボン、炭酸プロピレン、またはそれらの混合物である請求項5の組成物。
【請求項7】
合計重量で20%〜95%の溶媒を含んでなる請求項1の組成物。
【請求項8】
有益薬剤が蛋白質、ペプチド、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局所鎮痛薬、抗生物質剤、抗−炎症性コルチコステロイド、抗微生物剤、コントラスト剤、眼薬、または化学療法剤である請求項1の組成物。
【請求項9】
合計重量により1%〜50%の有益薬剤を含んでなる請求項1の組成物。
【請求項10】
親水性環境が水、食塩水、または体液もしくは組織を含んでなる請求項1の組成物。
【請求項11】
合計重量により5%〜80%の界面活性剤、合計重量により20%〜95%の溶媒、および合計重量により1%〜50%の有益薬剤を含んでなる請求項1の組成物。
【請求項12】
界面活性剤、溶媒、親水性媒体、および有益薬剤を含んでなる有益薬剤の持続送達用組成物であって、界面活性剤、溶媒、および親水性媒体が粘着性ゲルを形成しそして有益薬剤がゲル中に分散または分散される組成物。
【請求項13】
界面活性剤がアニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性である請求項12の組成物。
【請求項14】
界面活性剤が燐脂質、PEG化された燐脂質、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピ
レン共重合体、エトキシル化されたソルビタンエステル、ソルビタンエステル、エトキシル化されたエーテル、エトキシル化されたひまし油、ビタミンE−TPGS、スフィンゴ脂質、糖脂質、リソ燐脂質、脂肪酸、胆汁塩、エトキシル化されたグリセリド、エトキシル化された脂肪アルコール、またはそれらの混合物である請求項13の組成物。
【請求項15】
合計重量により5%〜80%の界面活性剤を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項16】
溶媒が疎水性である請求項12の組成物。
【請求項17】
疎水性溶媒がオレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、乳酸ラウリル、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、グリコフロール、エタノール、トコフェロール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、トリグリセリド、アルキルトリグリセリド、ジグリセリド、ごま油、ピーナッツ油、ひまし油、オリーブ油、綿実油、ペルフルオロカーボン、炭酸プロピレン、N−メチル−ピロリドン、DMSO、グリセロール、オレイン酸、グリコフロール、乳酸ラウリル、ペルフルオロカーボン、またはそれらの混合物である請求項16の組成物。
【請求項18】
合計重量により20%〜95%の疎水性溶媒を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項19】
親水性媒体が水、食塩水、または体液もしくは体組織を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項20】
合計重量により0.1%〜10%の親水性媒体を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項21】
有益薬剤が蛋白質、ペプチド、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核蛋白質、多糖、糖蛋白質、リポ蛋白質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛薬、局所鎮痛薬、抗生物質剤、抗−炎症性コルチコステロイド、抗微生物剤、コントラスト剤、眼薬、または化学療法剤である請求項12の組成物。
【請求項22】
合計重量により1%〜50%の有益薬剤を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項23】
合計重量により5%〜80%の界面活性剤、合計重量により20%〜95%の溶媒、合計重量の0.1%〜10%の親水性媒体、および合計重量により1%〜50%の有益薬剤を含んでなる請求項12の組成物。
【請求項24】
患者に請求項1の組成物を投与することを含んでなる有益薬剤を患者に持続期間にわたり送達する方法。
【請求項25】
組成物を患者に注射により送達する請求項24の方法。
【請求項26】
患者に請求項12の組成物を投与することを含んでなる有益薬剤を患者に持続期間にわたり送達する方法。
【請求項27】
組成物を患者に注射によりまたは局所的に送達する請求項26の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−511525(P2007−511525A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539894(P2006−539894)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037782
【国際公開番号】WO2005/048930
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】