説明

注水カッタ

【課題】切断部位に注水してカッタの冷却若しくは切断粉の飛散防止を図るための注水タンクを備えた注水カッタが提供されている。従来、ハンドル部に対するタンク本体の位置によりその重量バランスが損なわれる問題があった。本発明では、この重量バランスの問題を解消する。
【解決手段】平面視でタンク本体21をハンドル部10に対して鋸刃とは反対側に配置する。また、平面視でタンク本体21をハンドル軸線Hに対して傾斜配置することにより、その重心位置を従来の平行配置よりもハンドル部10に接近した位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用者が手に持って使用する手持ち式の切断工具であって、円形のカッタ(切断刃具)と注水タンクを備えた注水カッタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガラス、セメントあるいはコンクリートを切断するためにいわゆるダイヤモンドホイールと称されるカッタを備えた注水カッタには、カッタのリム(チップ)の冷却を主たる目的として注水タンクを備えたものが提供されている。下記の特許文献に、この注水カッタに関する技術が開示されている。これらの注水カッタによれば、切断部位付近に注水タンクから注水することにより、チップの冷却がなされ、また切断粉の飛散が抑制されて効率のよい切断作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-318404号公報
【特許文献2】特開平9-193136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の注水カッタには、使用者がハンドル部を把持した状態における重量バランスの点で改善する必要があった。
特許文献1に開示された注水カッタでは、注水タンクがカッタの上部を覆うカッタケースに覆い被さる状態で配置されており、ハンドル部に対してカッタと注水タンクが同じ側に配置された構成となっている。また、特許文献2に開示された注水カッタでは、ハンドル部に対して注水タンクがカッタとは反対側に配置されているものの、平面的に見てハンドル部の側方から離れた部位に配置されていた。
このため、上記従来の注水カッタでは、ハンドル部を把持した際の重量バランスが悪く、使用者は当該注水カッタを一定の姿勢に保持するために手先に力をかける必要があり、特に長時間使用する場合の疲労が大きい等の点で使い勝手が損なわれていた。
また、両文献に開示された注水カッタはハンドル部の後部に比較的重量の大きなバッテリパックを装着する構成であり、このバッテリパックの位置との関係で注水タンクの重量バランスを改善する必要があった。
本発明は、使用者がハンドル部を把持した際の当該注水カッタの重量バランスを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、下記の発明によって解決される。
第1の発明は、使用者が把持するハンドル部を備えた注水カッタであって、切断材の上面に当接されるベースと、このベースの上面に支持された工具本体を備え、工具本体は、切断進行方向に対してハンドル部の一方側にカッタを備え、他方側に、カッタによる切断部位に注水する水を溜めておくための注水タンクを備えており、注水タンクのタンク本体の下流側先端が平面視でベースの上方に位置する注水カッタである。
第1の発明によれば、ハンドル部に対してカッタとは反対側に注水タンクのタンク本体が配置されて、使用者がハンドル部を把持した際の当該注水カッタの重量バランスがとられてその使い勝手が高められている。
しかも、タンク本体の下流側先端がベースの上方に位置していることから、水を溜めた結果比較的重量の大きなタンク本体の重心をベースの上方若しくはこれにより接近させた部位に設定することができ、これによりハンドル部に対するタンク本体の重量バランスを良くして使用者の疲労を低減しつつ当該注水カッタの安定性を高めることができる。
第2の発明は、第1の発明において、タンク本体を平面視で下流側ほど切断部位側に接近する方向に傾斜させて配置した注水カッタである。
第2の発明によれば、タンク本体が下流側(先端部側)ほど切断部位に接近する方向に傾斜配置されている。従来は、タンク本体をハンドル部に沿ってほぼ平行に配置した結果、当該タンク本体が一定量の水を溜める必要上比較的太い円筒形状を有するためハンドル部から離れた部位において平行に配置されていたが、これを上記のように傾斜配置することによりその重心位置をよりハンドル部に近い部位に設定することができ、これによってもハンドル部に対するタンク本体の重量バランスを良くして当該注水カッタの使い勝手を高めることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、注水タンクの傾斜角度が平面視傾斜角度よりも側面視傾斜角度の方が大きく設定された注水カッタである。
第3の発明によれば、水を溜めた結果重量の大きなタンク本体を平面視でよりハンドル部に接近させて支持することができ、これによりハンドル部に対する当該タンク本体の重量バランスを一層よくして当該注水カッタの使い勝手をより高めることができる。
第4の発明は、第1〜第3の何れか一つの発明において、注水タンクのタンク本体に注水ホースを接続するためのホース接続部が、タンク本体の肩部よりも側面視で下方に位置する注水カッタである。
第4の発明によれば、タンク本体に溜めた水を注水ホースを経て確実かつ効率よく切断部位に注水することができる。
第5の発明は、第1〜第4の何れか一つの発明において、工具本体は、カッタを回転させる駆動源としての駆動モータと、この駆動モータを内装するモータハウジングを備えており、このモータハウジングに取り付けたブラケットを介して注水タンクが支持されて切断進行方向に直交する方向の位置を調整可能な注水カッタである。
第5の発明によれば、注水タンクのタンク本体を切断進行方向に直交する方向に位置調整することにより、ハンドル部に対するその重量バランスをより一層良好に採りやすくなる。
第6の発明は、第1〜第5の何れか一つの発明において、工具本体は、カッタを回転させる駆動源としての駆動モータと、この駆動モータを内装するモータハウジングを備えており、このモータハウジングに取り付けたブラケットを介して注水タンクがモータハウジングの上方に支持されて、ブラケットに設けた鉛直方向に延びる支持柱部に注水タンクの重量を軸力として作用させた注水カッタである。
第6の発明によれば、水が溜められている結果比較的重量が大きなタンク本体をより上方において安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係る注水カッタ全体の右側面図である。
【図2】図1中(II)矢視図であって、注水カッタ全体の前面図である。
【図3】図2中(III)矢視図であって、注水カッタ全体の左側面図である。
【図4】図3中(IV)矢視図であって、注水カッタ全体の後面図である。
【図5】図4中(V)矢視図であって、注水カッタ全体の平面図である。
【図6】注水タンク本体の縦断面図である。
【図7】図3の(VII)-(VII)線矢視図であって、注水ホース接続部の縦断面図である。
【図8】注水カッタ全体の右側面図である。本図は、カッタの切り込み深さを最小に設定した状態を示している。
【図9】注水カッタ全体の前面図である。本図は、工具本体を右側に傾斜させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1〜図5には、本実施形態に係る手持ち式の注水カッタ1が示されている。この注水カッタ1は、ガラス板等の切断材Wの上面に当接させるベース2と、このベース2の上面に支持した工具本体3と、工具本体3に取り付けた注水タンク20を備えている。
工具本体3は、電動式の駆動モータ4により回転する円形のカッタ5を備えている。このカッタ5には、いわゆるダイヤモンドホイールと称される周囲に多数のチップを供えたものが用いられている。カッタ5の上側半周の範囲はカッタケース6で覆われている。カッタケース6の左側部に減速用の歯車列が収容された減速ギヤ部7が結合され、この減速ギヤ部7を介して駆動モータ4が左側方へ突き出す状態に取り付けられている。従って、駆動モータ4のモータ軸線Jは、切断進行方向に対してほぼ直交している。
工具本体3は、上下傾動支軸3aを介してベース2に対して上下に傾動可能に支持されている。上下傾動支軸3aを中心にして工具本体3を上下に傾動させることにより、切断材Wに対するカッタ5のベース2の下面からの突き出し寸法(切り込み深さ)を調整することができる。工具本体3は、図1に示す最大切り込み深さと図8に示す最小切り込み深さとの間で傾動させることができる。この種の注水カッタ1では、図1に示す最大切り込み深さでの使用頻度が最も高い。カッタ5の切り込み深さを切断材Wの板厚よりも小さくすることにより、切断材Wの溝切り加工を行うことができる。
また、工具本体3は、ベース2の上面に相互に同軸に配置された左右傾動支軸3b,3bを中心にして切断進行方向の主として右側に傾動させることができる。図9に示すように工具本体3を切断進行方向に対して右側に傾動させることにより、切断材Wに対してカッタ5を斜めに切り込むことができ、これにより傾斜切り加工を行うことができる。
【0008】
工具本体3には、使用者が把持するハンドル部10が設けられている。このハンドル部10は、減速ギヤ部7の上部から前後方向に沿って後方へ大きく延びる状態に設けられている。以下、平面視で(平面的に見て)このハンドル部10が延びる方向をハンドル軸線Hという。ハンドル軸線Hは、図4及び図5に示すように平面視で切断進行方向(カッタ5の面方向)に一致している。また、ハンドル軸線Hは、図1に示すように側面視(側方から見て)ではやや後方へ下る方向に傾斜している。
このハンドル部10の基部側下面には、トリガ形式のスイッチレバー11が設けられている。使用者がハンドル部10を把持した手の指先でこのスイッチレバー11を引き操作すると駆動モータ4が起動してカッタ5が回転する。ハンドル部10の右側面(図1において手前側の側面)には、このスイッチレバー11の引き操作状態をロックするためのロックオンスイッチ12が設けられている。
このハンドル部10の後部には、充電式のバッテリパック13が装着されている。このバッテリパック13の電力を電源として駆動モータ4が起動する。このバッテリパック13は、ハンドル部10の後部から抜き出して、別途用意した充電器で充電することにより繰り返し使用することができる。
【0009】
注水タンク20は、ブラケット25を介して駆動モータ4に支持されている。注水タンク20は、円筒形状のタンク本体21と、その後部を塞ぐ蓋22と、タンク本体21の前部に注水ホース30を接続するためのホース接続部23を備えている。ブラケット25は、タンク本体21の周囲に巻き付けられるように取り付けられた取り付け円環部25aと、駆動モータ4を内装するモータハウジング4aの周囲に巻き付けられるように取り付けられた支持円環部25bと、両円環部25a,25bを結合する支持柱部25cを備えている。取り付け円環部25aと支持円環部25bは、何れも固定ねじの締め込みによりそれぞれタンク本体21とモータハウジング4aに対する締め付け状態を固定することができる。
逆に、取り付け円環部25aと支持円環部25bは、それぞれの固定ねじを緩めることによりタンク本体21に対する締め付け位置及びモータハウジング4aに対する締め付け位置を変更することができ、これによりタンク本体21の工具本体3に対する相対位置を変更することができる。モータハウジング4aに対する支持円環部25bの締め付け位置を変更することによってタンク本体21の位置をモータ軸線J方向及びその回りに位置変更することができ、これにより当該タンク本体21の切断進行方向に直交する方向の位置を調整することができる。
取り付け円環部25aは、支持柱部25cを介してその中心軸線を支持円環部25bの中心軸線(モータ軸線J)に対して一定角度だけ傾斜させた向きに結合されている。これにより、図5に示すように平面視でタンク本体21は、その中心軸線(タンク軸線T)をハンドル軸線Hひいては切断進行方向に対して一定角度θ1だけ傾斜させた向きに支持されている。この平面視傾斜角度θ1は、本実施形態では10°に設定されている。この平面視傾斜角度θ1は、例えば約0°〜約15°の範囲内で設定することができる。これにより、タンク本体21は平面視でその先端部(注水ホース30の接続部であるホース接続部23の先端部23a)をその後部側(蓋22が取り付けられた後部)より切断部位Cに接近させる方向に傾斜した状態に支持されている(平面視傾斜配置)。
また、ブラケット25の取り付け円環部25aは、側面視(右側から見て)でもその中心軸線を支持円環部25bの中心軸線に対して傾斜させた向きに結合されている。このため、図1に示すようにカッタ5の切り込み深さを最大に設定した状態において、側面視でタンク本体21は、そのタンク軸線Tをベース2の下面に対して角度θ2だけ起立方向に傾斜させた向きに支持されている。この側面視傾斜角度θ2は、本実施形態では70°に設定されている。この側面視傾斜角度θ2は、例えば約30°〜約90°の範囲内で設定することができる。
このため、タンク本体21は側面視でその先端部23aを後部側よりも切断部位Cに接近させる方向に傾斜した状態に支持されている(側面視傾斜配置)。
【0010】
このように、本実施形態では、タンク本体21の側面視傾斜角度θ2が平面視傾斜角度θ1よりも十分に大きな傾斜角度に設定されている。このため、図1〜図4によく示されているようにタンク本体21は、側面視でそのほぼ全体がハンドル部10よりも上方に位置し、これにより当該タンク本体21をハンドル部10に干渉させることなく、またハンドル部10を把持する際にタンク本体21が邪魔になるといった把持性を損なうことなく、当該タンク本体21をハンドル部10により接近させた位置に支持することができる。
また、側面視傾斜角度θ2が大きく設定されてタンク本体21のホース接続部23が当該タンク本体21の肩部21cの下端部よりも下側に位置する状態に支持されている。このため、図1に示すようにカッタ5の切り込み深さを最大に設定した状態においても、タンク本体21内の水を効率よく注水できるようになるとともに、切断部位Cの視認性を確保することができる。
さらに、図3に示すように、カッタ5の切り込み深さを最大に設定した状態では、ブラケット25の支持柱部25cがほぼ鉛直方向に沿って位置する状態となる。このため、水を溜めたタンク本体21の重量の大半が、支持柱部25cに対して曲げ力よりも軸力として付加されることから、当該支持柱部25c等の変形あるいは位置ずれに対して耐久性を持たせることができる。
タンク本体21のホース接続部23には、手動式の開閉コック24を介して注水ホース30が接続されている。開閉コック24を摘んで回転操作することにより、ホース接続部23を注水ホース30に対して開閉させることができる。開閉コック24を開くと、タンク本体21から注水ホース30内に水が注入される。開閉コック24を閉じると、ホース接続部23が閉じられて、タンク本体21内と注水ホース30内が遮断されて注水が停止される。
【0011】
注水ホース30の先端側(下流側)は、カッタ5の切断材Wに対する切り込み部位(切断部位C)にまで取り回されている。図7に示すように、切断部位Cの左側方において、カッタケース6の左側部には、注水ノズル31が取り付けられている。この注水ノズル31に注水ホース30が接続されている。注水ノズル31は、切断部位Cの僅かに上方に向けられている。開閉コック24を開くと、この注水ノズル31から切断部位Cに向けて注水されて、カッタ5の冷却がなされ、また切断粉の飛散が防止される。
図6に示すようにタンク本体21の後部には水を補充するための補充口21aが設けられている。この補充口21aが蓋22によって塞がれる。蓋22は、タンク本体21のタンク軸線T回りに回転させれば、補充口21aに取り付けることができ、逆に補充口21aから取り外すことができる。補充口21aの周囲には弾性ゴム製のシールリング21bが装着されている。これに対して、蓋22の内側には、押圧部22aが全周にわたって内周側へ張り出す状態に設けられている。この押圧部22aの下面にはテーパ面22bが同じく全周にわたって設けられている。補充口21aに対して蓋22を締め付け方向に回転させると、締め付け完了の直前において押圧部22aのテーパ面22bにシールリング21bが押圧される。このため、押圧部22aのテーパ面22bにシールリング21bが押圧されるまでの間は、蓋22を軽い力で楽に回転させることができ、締め付け完了時点でシールリング21bが押圧部22aのテーパ面22bで弾性的に縮径側に押圧されることにより、当該蓋22の高い水密性が確保される。
蓋22を外せば補充口21aから水を補充することができるので、わざわざタンク本体21を工具本体3から取り外すことなく当該タンク本体21内に水を補充することができる。
【0012】
以上のように構成した注水カッタ1によれば、切断部位C付近に注水するための注水タンク20のタンク本体21が、ハンドル部10に対してカッタ5(カッタケース6)とは反対側に支持されて当該ハンドル部10を中心とする重量バランスが採られている。特に、図9に示すように工具本体3を切断進行方向右側に傾斜させて傾斜切りを行う場合に、タンク本体21がカッタ5及びハンドル部10の上方に位置することからハンドル部10に対する当該タンク本体21のオーバーハング荷重が小さくなり、この点でもタンク本体21の重量バランスが良くなることから使用者は小さな力でハンドル部10を把持して当該注水カッタ1をより楽に移動操作することができる。
しかも、タンク本体21が平面的に見てハンドル部10に対して一定の角度(平面視傾斜角度θ1)で傾斜配置され、かつ側面視でもハンドル部10に対して一定の角度(側面視傾斜角度θ2)で傾斜配置されている。このようにタンク本体21がハンドル部10に対して平面視及び側面視の双方で三次元的に傾斜配置されることにより、水を溜めたタンク本体21の重心位置をよりハンドル部10側に接近させてそのオーバーハング荷重を小さくすることができ、ひいては使用者がハンドル部10を把持した際の当該注水カッタ1の重量バランスがとられてその使い勝手が高められている。
また、タンク本体21の先端部(ホース接続部23の先端部23a)が平面視でベース2の上方に位置していることから、当該タンク本体21の重心位置をベース2の上方若しくはこれにより接近させた部位に設定することができ、これによりハンドル部10に対するタンク本体21の重量バランスを良くして使用者の疲労を低減しつつ当該注水カッタ1の安定性を高めることができる。
さらに、タンク本体21の平面視傾斜角度θ1よりも側面視傾斜角度θ2の方が十分に大きく設定されていることから、ハンドル部10に対するタンク本体21の干渉を回避しつつ当該タンク本体21を平面視でよりハンドル部10に接近させて支持することができ、これによりハンドル部10に対する当該タンク本体21の重量バランスを一層よくして当該注水カッタ1の使い勝手を一層高めることができる。
【0013】
また、例示した注水タンク20によれば、側面視傾斜角度θ2が大きく設定されてホース接続部23が、タンク本体21の肩部21cよりも側面視で下方に位置していることから、当該タンク本体21に溜めた水を注水ホース30を経て確実かつ効率よく切断部位Cに注水することができる。
また、タンク本体21が大きな側面視傾斜角度θ2で傾斜配置されることにより、ハンドル部10の把持性及び切断部位Cの視認性を確保することができ、この点でも当該注水カッタ1の使い勝手を高めることができる。
さらに、ブラケット25の主として支持円環部25bの位置を調整することにより、タンク本体21のモータ軸線J方向の位置を調整することができ、これによりハンドル部10に対する当該タンク本体21の良好な重量バランスをより一層楽に設定することができる。
また、使用頻度が最も多い、カッタ5の切り込み深さを最大にした状態では、ブラケット25の支持柱部25cがほぼ鉛直方向に沿った状態となる。このため、タンク本体21の全重量のより多くがこの支持柱部25cに曲げ力ではなく軸力として受けられることから、水が溜められている結果比較的重量が大きなタンク本体21をより上方において安定的に支持することができる。また、タンク本体21の重量が支持柱部25cに軸力として受けられる結果、当該支持柱部25cの変形を防止して当該注水タンク20ひいては注水カッタ1の耐久性を高めることができる。
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、タンク本体21のハンドル部10に対する平面視傾斜角度θ1及び側面視傾斜角度θ2については、それぞれ0°〜15°、30°〜90°の範囲内で変更することができ、場合によってはより小さな傾斜角度若しくは大きな傾斜角度に設定することができる。
タンク本体21の蓋22及び補充口21aは省略してもよい。また、タンク本体21は例示したように円筒形状のものに限らず、角形筒形状のもの、あるいはより変則な立体形状のものについても同様に適用することができる。
さらに、ブラケット25の支持円環部25bを介してタンク本体21を駆動モータ4に支持する構成を例示したが、例えばハンドル部10や減速ギヤ部7等その他の部位に支持する構成としてもよい。
また、バッテリパック13(直流電源)を電源とする注水カッタ1に限らず、交流電源を電源とする注水カッタの注水タンクについても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0014】
W…切断材
C…切断部位
J…モータ軸線
H…ハンドル軸線
T…タンク軸線
1…注水カッタ
2…ベース
3…工具本体、3a…上下傾動支軸、3b…左右傾動支軸
4…駆動モータ
5…カッタ
6…カッタケース
7…減速ギヤ部
10…ハンドル部
11…スイッチレバー
12…ロックオンスイッチ
13…バッテリパック
20…注水タンク
21…タンク本体
21a…補充口、21b…シールリング、21c…肩部
22…蓋、22a…押圧部、22b…テーパ面
23…ホース接続部、23a…先端部
24…開閉コック
25…ブラケット
25a…取り付け円環部、25b…支持円環部、25c…支持柱部
30…注水ホース
31…注水ノズル
θ1…平面視傾斜角度
θ2…側面視傾斜角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持するハンドル部を備えた注水カッタであって、切断材の上面に当接されるベースと、該ベースの上面に支持された工具本体を備え、該工具本体は、切断進行方向に対して前記ハンドル部の一方側にカッタを備え、他方側に、前記カッタによる切断部位に注水する水を溜めておくための注水タンクを備えており、該注水タンクのタンク本体の下流側先端が平面視で前記ベースの上方に位置する注水カッタ。
【請求項2】
請求項1記載の注水カッタであって、前記タンク本体を平面視で下流側ほど前記切断部位側に接近する方向に傾斜させて配置した注水カッタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の注水カッタであって、前記注水タンクの傾斜角度が平面視傾斜角度よりも側面視傾斜角度の方が大きく設定された注水カッタ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した注水カッタであって、前記注水タンクのタンク本体に注水ホースを接続するためのホース接続部が、前記タンク本体の肩部よりも側面視で下方に位置する注水カッタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した注水カッタであって、前記工具本体は、前記カッタを回転させる駆動源としての駆動モータと、該駆動モータを内装するモータハウジングを備えており、該モータハウジングに取り付けたブラケットを介して前記注水タンクが支持されて前記切断進行方向に直交する方向の位置を調整可能な注水カッタ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した注水カッタであって、前記工具本体は、前記カッタを回転させる駆動源としての駆動モータと、該駆動モータを内装するモータハウジングを備えており、該モータハウジングに取り付けたブラケットを介して前記注水タンクが該モータハウジングの上方に支持されて、前記ブラケットに設けた鉛直方向に延びる支持柱部に前記注水タンクの重量を軸力として作用させた注水カッタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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