説明

洗浄剤の製造方法

【課題】 環境負荷が少なく、経時的安定性に優れると共に、洗浄力に優れ、安定した品質を与え、簡便でかつ汎用性の高い洗浄剤の製造方法及び洗浄剤を提供する。
【解決手段】 原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを添加して電解質溶液とし、該電解質溶液中に空気による気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊し超微細気泡を含む溶液を製造する工程を少なくとも含むことを特徴とする洗浄剤の製造方法。
用いる塩類としては、塩化ナトリウムが挙げられ、その濃度は0.01〜0.1質量%であることが好ましく、また、メタ珪酸ナトリウムの添加量は、5〜100ミリモル%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種家庭用及び業務用として使用することができる、有機洗剤を含有しない無機系の洗浄剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無機系洗浄剤としては、例えば、第三リン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムを主成分とする洗浄剤組成物が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この洗浄剤組成物の製造方法は、40〜80℃の温度にした水に、第三リン酸ナトリウム15〜40質量%、メタケイ酸ナトリウム15〜35質量%、硫酸ナトリウム7〜15質量%を加えて攪拌し、十分に溶解させた後、ホウ酸ナトリウム0.5〜18質量%、ピロリン酸ナトリウム12〜50質量%を順次加えて攪拌し、溶解して洗浄剤原液を製造することが効果的である旨記載されている。
また、上記無機系洗浄剤組成物の製造方法とは異なるが、水質向上のために、電解質水溶液をマイナスイオン化する方法が種々知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0003】
しかしながら、上述の無機系洗浄剤組成物にあっては、従来からそれなりの洗浄効果が見られているが、更に洗浄力及び安定した品質を得るために未だ改良の余地があり、優れた無機系洗浄剤組成物の製造方法が切望されているのが現状である。
【0004】
一方、近年ナノバブルの工学的な利用への可能性が発表され、ナノバブル利用技術の開発が盛んになっている。ナノバブルの生成方法は、液体中において、液体の一部を分解ガス化する工程及び/又は該液体中で超音波を印加する工程からなるナノバブル(ナノオーダーの気泡)を生成する方法(例えば、特許文献4参照)や、ナノバブルを含む水により、物体の洗浄を行うことを特徴とするナノバブル利用洗浄方法及び装置(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記ナノバブルを含む水を用いる洗浄は、環境負荷が少ない点で好ましいものであるが未だ洗浄力が十分でなく、また、ナノバブルを含む水は、未だ経時的な保存安定性が十分でない点に課題があり、更に、ナノバブルの製造が工業的に確立されていない点などに課題があるのが現状である。
【特許文献1】特許第2876054号公報
【特許文献2】特開2002−69497号公報
【特許文献3】特開2001−79557号公報
【特許文献4】特開2003−334548号公報
【特許文献5】特開2004−121962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、環境負荷が少なく、経時的安定性に優れると共に、洗浄力に優れ、安定した品質を与え、簡便でかつ汎用性の高い洗浄剤の製造方法及び洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、純水や、軟化処理水等を原水とし、この原水に特定の成分を添加して電解質溶液とし、該電解質溶液中に空気による気泡(マイクロバブル)を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊し超微細気泡を含む溶液を製造することにより、上記目的の洗浄剤の製造方法及び洗浄剤が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを添加して電解質溶液とし、該電解質溶液中に空気による気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊し超微細気泡を含む溶液を製造する工程を少なくとも含むことを特徴とする洗浄剤の製造方法。
(2) 塩類が塩化ナトリウムであって、その濃度が0.01〜0.1質量%である上記(1)記載の洗浄剤の製造方法。
(3) メタ珪酸ナトリウムの添加量が、5〜100ミリモル%である上記(1)又は(2)記載の洗浄剤の製造方法。
(4) 気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊させる工程を少なくとも2時間以上行う上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の洗浄剤の製造方法。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の洗浄剤の製造方法により得られることを特徴とする洗浄剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを溶解した電解質溶液とし、これに気泡(マイクロバブル)を発生させると共に、超音波でこの気泡を圧壊し超微細気泡(ナノバブル)で活性化しているので、メタケイ酸ナトリウムを主剤とした無機系洗浄剤が安定した品質で得られると共に、経時的保存安定性及び洗浄力に優れた洗浄剤の製造方法及び洗浄剤が提供される。
また、本発明方法は、所定の製造設備さえ備えればいかなる当業者も容易に本発明方法を再現でき、かつ、洗浄効果の高い洗浄剤を製造することができ、有機薬品を一切含有しないことから、洗浄作業時の人体への悪影響、例えば、手肌の肌荒れ等が少なく、洗浄廃液の処理が容易でかつ洗浄廃液の環境への負荷が少ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の洗浄剤の製造方法(以下、単に「本発明方法」という)は、原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを添加して電解質溶液とし、該電解質溶液中に空気による気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊し超微細気泡を含む溶液を製造する工程を少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる原水としては、水道水、軟化処理した処理水、純水、超純水、精製水、イオン交換水、蒸留水などを用いることができ、好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、純水、イオン交換水を用いることが望ましい。
なお、純水は、純水製造装置、例えば、G−20B(オルガノ社製)などを用いることにより得られる。
【0012】
本発明に用いる塩類は、原水を電解質溶液とするために用いるものである。
用いることができる塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、コスト、安全性の点から、塩化ナトリウムが望ましい。
この塩類の添加量(濃度)は、好ましくは、全量に対して、0.01〜1質量%、更に好ましくは、0.01〜0.1質量%とすることが望ましい。
この塩類の濃度が0.01質量%未満であると、後述する超音波の処理において原水中に超微細気泡を十分に含ませることができず、一方、1質量%を越えると、製品としての無機系洗浄剤の洗浄力に悪影響を与えることとなる。
【0013】
本発明に用いるメタ珪酸ナトリウムは、原水を電解質溶液とする電解質成分であると共に、洗浄成分として機能するものであり、メタ珪酸ナトリウムに属するものであれば、特に限定されずに無水物、水和物等を用いることができる。
このメタ珪酸ナトリウムの添加量(濃度)は、好ましくは、全量に対して、5〜100ミリモル%、更に好ましくは、5〜50ミリモル%とすることが望ましい。
このメタ珪酸ナトリウムの濃度が5ミリモル%未満であると、洗浄力が低下することとなり、一方、100ミリモル%を越えると、アルカリ度が高すぎ安全性から取り扱いが困難となる。
【0014】
本発明方法では、純水などの原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを上述の如く好ましい範囲で添加し、必要により撹拌しながら添加して電解質溶液とし、この電解質溶液中に気泡発生器により空気による気泡(マイクロバブル、直径が50μm以下の気泡)を発生させると同時に超音波発振器による超音波により気泡を圧壊し超微細気泡(ナノバブル、直径が1μm以下の気泡)を含む溶液を製造する。
気泡発生器としては、空気による気泡(マイクロバブル)を発生できるものであれば、特に限定されず、例えば、旋回加速器を利用した強制押込方式などを用いることができる。
この気泡発生器において、超微細気泡を効率良く生成せしめる点から、空気による気泡(マイクロバブル)を1ml当たり2万個以上発生させるものが望ましい。
【0015】
また、超音波発振器としては、例えば、超音波を照射する超音波振動子を有するものが挙げられる。この照射される超音波の周波数は、超微細気泡を効率良く生成せしめる点から、好ましくは、16KHz以上、更に好ましくは、28KHz以上、特に好ましくは、
28〜40KHzの周波数であることが望ましい。
【0016】
本発明方法では、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、上述の気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊させる工程(活性化工程)を少なくとも2時間以上行うことが好ましく、更に好ましくは、4〜6時間とすることが望ましい。
また、この活性化工程の際の原水(電解質溶液)の温度は、溶存ガスの溶解度を高く維持する点から、30℃以下で行うことが好ましく、更に好ましくは、20〜25℃とすることが望ましい。
【0017】
このようにして、得られた超微細気泡を含む塩類、メタ珪酸ナトリウム含有混合水(処理溶液)は、pH、Mアルカリ度及び塩素イオンの測定を行い、所定の基準値、pH12.5〜13.5、Mアルカリ度800mmol以上及び塩素イオン0.1%以下を満足していることを確認する。なお、この基準値は、洗剤としての一例を示すものである。
【0018】
得られた処理溶液は、そのまま無機系の洗浄剤として容器等に充填、または、濾過フィルターを通して製品貯槽へ導入され、製品貯槽から所定量の洗浄剤が小分けされ製品とされる。
【0019】
図1は、本発明方法の具体的実施形態の一例を示す概略図である。
本発明方法は、大別して第1工程〜第2工程から構成されるものである。図1に示すように、本発明方法の製造システム1は、第1工程で原水(水道水)2を溶解槽6内に導入する。
原水2は、調整弁3を介して活性炭濾過器(ハウジング型で活性炭フィルターを具備する)4に供給される。この濾過器4を介することにより、原水2から不溶性の不純物(浮遊物質を実質的に含まないこと)及び残留塩素が除去される。得られた原水は、純水装置5(ハウジング型で活性炭フィルターを具備する)に供給される。この純水装置5により原水2から溶解イオンが除去され、原水2は溶解槽(ステンレス製)6にバッチ形式(2m2)で導入される。
【0020】
溶解槽6内の原水2には、塩類である塩化ナトリウム(NaCl)200g及びメタ珪酸ナトリウム・9水塩108kgを添加し撹拌機11を用いて完全に溶解され、原水2が電解質溶液とされる。なお、塩類における塩化ナトリムの濃度は、0.01〜1質量%の濃度であること、また、メタ珪酸ナトリウムは5〜100ミリモル%の範囲で添加することが望ましい。
溶解槽6には気泡(マイクロバブル)発生器7、その気泡を圧壊し超微細気泡に生成する超音波発生器8が設けられている。活性化における原水の温度上昇を抑制するため原水の冷却器9が設けられ、原水の温度を30℃以下にする。
このような原水2の活性化処理は、少なくとも2時間以上行うことが好ましい。
このようにして、得られた洗浄成分及び超微細気泡含有混合水は、pH、Mアルカリ度及び塩素イオンの測定を行い、所定の基準値を満足していることを確認する。
【0021】
次に第2工程について説明する。この工程は、所定の基準値に達した処理溶液は、製品の無機系洗浄剤として移送ポンプ10を介して濾過フィルター12を通して製品貯槽13へ導入される。濾過フィルター12には、ハウジング型の糸巻きフィルターが使用され、製品貯槽13は容量200リットルの密閉槽である。製品貯槽13には供給バルブ14が設けられ、供給バルブ14から所定量の洗浄剤が小分けされ製品15として提供される。
なお、上記実施形態において、原水2に水道水を使用し、活性炭濾過器4、純水装置5を用いたが、経済的な負担が大きくない程度で純水を原水2として使用してもよい。
また、本発明方法にあっては、気泡(マイクロバブル)発生装置7を用い、気泡を発生させ、それを超音波発赤器8により圧壊し超微細気泡を含有する活性水を使用したが、薬品を加えた原水2を超微細気泡で活性化させ得るものであり限り、これらの装置を本発明方法の実施に使用することも可能である。
【0022】
このように構成される本発明方法では、純水などの原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを添加して電解質溶液とし、この電解質溶液中で物理的に極めて不安定な空気による気泡(マイクロバブル)を超音波により瞬時に圧壊させることで、超微細気泡(ナノバブル)で活性化された洗浄剤(液)となっているので、メタケイ酸ナトリウムを主剤とした無機系洗浄剤が安定した品質で得られると共に、経時的保存安定性及び洗浄力に優れた洗浄剤の製造方法及び洗浄剤が提供されるものとなる。
本発明では、得られる洗浄剤は、単にナノバブル水を含む水(洗浄水)に較べ、後述する実施例及び比較例で示すように、経時的保存安定性及び洗浄力に優れたものとなる。
【0023】
本発明方法によって製造された無機系の洗浄剤は、原液のまま、または、適宜水で1〜500倍に希釈して飲食店等の廃棄ダクト部分に付着した油脂汚れ等、家庭でのガスレンジ回り等の油脂汚れを簡単に落とすことができる。従って、今までにない洗浄効果の高い洗浄剤を製造することができ、有機薬品を一切含有しないことから、洗浄廃液の処理が簡単でかつ洗浄廃液の環境への負荷が少ない。このため、食品製造工場、加工処理場、外食産業の厨房などの食品取り扱い場所の洗浄に安全に導入することができる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〜2及び比較例1〜3〕
図1に準拠し、下記純水製造装置、気泡発生器、超音波発振器を用いて下記各方法により洗浄剤を調製した。得られた各洗浄剤について下記評価方法により、洗浄力試験(洗浄率、再汚染率)を行った。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0026】
(純水製造装置)
オルガノ社製のG−20Bを用いた。
(気泡発生器)
協和エンジニアリング社製のマイクロバブル発生装置(1ml当たり2万個以上のマイクロバブル発生装置)を用いた。
(超音波発振器)
シャープ社製の超音波発振機UT−1204U、超音波振動子UI−12R3を用いた。超音波の周波数は、40KHzで行った。
【0027】
(洗浄力試験方法)
下記に示す財団法人洗濯科学協会「湿式人工汚染布による洗浄試験マニュアル」に準拠して洗浄力試験を行った。
具体的には、汚染布〔JIS K 3362−1990、湿式人工汚染布:天然汚垢布(エリ垢布)、財団法人洗濯科学協会製〕による洗浄試験を行い、色差計(NR−300、日本電色工業社製)で反射率(Y値)を測定し、下記式に基づいて洗浄率、再汚染率を測定した。
(洗浄試験方法)
洗濯機:2槽式
洗剤濃度:原液100倍希釈
洗浄水容量:15リットル
洗浄時間:15分
洗浄温度:25℃
タオル負荷:バスタオル2枚、フェイスタオル5枚
浴比:1:15
汚染布:人工汚垢
脱水:2分
すすぎ:1回目 常温3分、2回目 常温5分
乾燥:風乾
【0028】
(洗浄率の算出方法)
洗浄率(%)=〔<洗浄後の汚染布反射率(Y値)−洗浄前の汚染布反射率(Y値)>/<汚染布の白布射率(Y値)−洗浄前の汚染布反射率(Y値)>〕×100
この洗浄率(%)の数値が100に近い程、洗浄力がよいことを示し、完全に落ちた場合が100%で、全く落ちない場合は0%である。
(再汚染率の算出方法)
再汚染率(%)=〔洗浄後の白布反射率(Y値)/洗浄前の白布反射率〕×100
この再汚染率(%)の数値が100に近い程、再汚染していないことを示し、例えば、再汚染率99%とは100−99=1%となり、1%しか汚れていないことになる。
【0029】
(実施例1)
純水製造装置より得られた純水(原水)100kgを気泡発生器、超音波発生器が設けられた溶解槽に入れ、この原水に塩化ナトリウム(NaCl)100g及びメタ珪酸ナトリウム・9水塩5400gを添加し撹拌機を用いて溶解して電解質溶液とした。塩化ナトリムの濃度は、0.1質量%、メタ珪酸ナトリウムは50ミリモル%である。
この原水を気泡発生器、その気泡を圧壊し超微細気泡に生成する超音波発生器の活性化処理を原水25℃で2時間行って洗浄剤(処理溶液)を得た。
このようにして、得られた洗浄成分及び超微細気泡含有混合水のpH、Mアルカリ度及び塩素イオンの測定を行い、上述の所定の基準値を満足していることを確認した。
【0030】
(実施例2)
上記実施例1において、塩化ナトリウム濃度0.01質量%に代えた以外は上記実施例1と同様にして洗浄剤(処理溶液)を得た。
【0031】
(比較例1)
上記実施例1において、塩化ナトリウム(NaCl)及びメタ珪酸ナトリウムを添加しないで純水のみ、上記実施例1と同様にして洗浄剤(処理溶液)を得た。
(比較例2)
上記実施例1において、メタ珪酸ナトリウムを添加しないで塩化ナトリウム(NaCl)を100gを添加した以外は、上記実施例1と同様にして洗浄剤(処理溶液)を得た。
【0032】
(比較例3、ジェイペック社製洗浄剤「NOVA」の配合組成)
メタ珪酸ナトリウム・9水塩10質量%、塩化ナトリウム0.1質量%、残部純水からなる洗浄剤を用いた。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜2は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べて、洗浄力に優れると共に、再汚染防止性にも優れることが判った。
これに対して、比較例を個別的にみると、比較例1は塩化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムを添加しないで純水から製造した洗浄剤であり、比較例2は塩化ナトリウムを単独添加して製造した洗浄剤であり、これらの場合、本発明の塩化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムを添加して製造した実施例1及び2の洗浄剤に較べ、明らかに洗浄力に劣ることが判った。
比較例3は、メタ珪酸ナトリウム・9水塩10質量%、塩化ナトリウム0.1質量%、残部純水からなる洗浄剤を用いたものであり、洗浄力は実施例1及び2の洗浄剤と較べると、やや劣る程度である。しかしながら、実施例1及び2ではメタ珪酸ナトリウムの添加量が50ミリモル%(2.3質量%)であり、本発明となる実施例1及び2では、メタ珪酸ナトリウムの量が少ないもの(1/5程度)であってもその洗浄力は従来の洗浄剤よりも優れていることが判る。
更に、表2の結果は、実施例1及び2の洗浄剤を遮光性の密閉容器に入れ、常温(25℃)下で3ヶ月放置した後の洗浄力試験結果であるが、経時的にもその洗浄性能は劣化せず、優れた洗浄性能を発揮できることが判った。なお、再汚染率も変化はなく、再汚染防止性にも優れていることが判った。
これらの結果等を総合すると、本発明は、所定の製造設備さえ備えればいかなる当業者も容易に本発明を再現でき、かつ、洗浄効果の高い洗浄剤を製造することができると共に、有機薬品を一切含有しないことから、洗浄作業時の人体への悪影響、例えば、手肌の肌荒れ等が少なく、洗浄廃液の処理が容易でかつ洗浄廃液の環境への負荷が少ないものであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明方法は、既存の洗浄剤よりも洗浄効果が単に高いのみならず、環境負荷のより低い洗浄剤を簡便に製造するに資し、産業上の利用可能性が極めて高い洗浄剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の洗浄剤の製造方法を実施するための製造工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 製造システム
2 原水
5 純水装置
6 溶解槽
7 気泡(マイクロバブル)発生装置
8 超音波発生器
13 製品貯槽
15 製品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に塩類及びメタ珪酸ナトリウムを添加して電解質溶液とし、該電解質溶液中に空気による気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊し超微細気泡を含む溶液を製造する工程を少なくとも含むことを特徴とする洗浄剤の製造方法。
【請求項2】
塩類が塩化ナトリウムであって、その濃度が0.01〜0.1質量%である請求項1記載の洗浄剤の製造方法。
【請求項3】
メタ珪酸ナトリウムの添加量が、5〜100ミリモル%である請求項1又は2記載の洗浄剤の製造方法。
【請求項4】
気泡を発生させると同時に超音波により気泡を圧壊させる工程を少なくとも2時間以上行う請求項1〜3の何れか一つに記載の洗浄剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載の洗浄剤の製造方法により得られることを特徴とする洗浄剤。


【図1】
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【公開番号】特開2006−307053(P2006−307053A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132547(P2005−132547)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(591195031)株式会社ジェイペック (8)
【Fターム(参考)】