説明

洗浄剤組成物及び洗浄方法

【課題】短時間で風呂釜内部の洗浄ができ、しかも風呂釜内部に繁殖する菌に対しても十分な除菌効果を有する洗浄剤組成物および風呂釜の除菌洗浄方法の提供
【解決手段】ビグアナイド系除菌剤、界面活性剤、及びキレート剤を含有し、pHが8以上であることを特徴とする洗浄剤組成物および該洗浄剤組成物を浴槽内の水に添加し風呂釜内に循環させることを特徴とする風呂釜の除菌洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂釜の内部や配管に付着した汚れを除去する洗浄剤組成物に関し、詳しくは、風呂釜や配管内に繁殖する細菌に対して優れた除菌効果を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の風呂釜や配管の内部には、脂質やたんぱく質等の人体から発生する垢や石鹸かす等が付着し、またこれらを栄養源とする菌が繁殖している。これらは、風呂を沸かす際の熱効率が低下するばかりか、風呂水に汚れや菌が排出されてしまい、沸かしたての風呂でも不衛生である。
【0003】
従来より、風呂釜内部の汚れを除去する為に風呂釜洗浄剤が提案されている。この風呂釜洗浄剤は、水に溶解させたときに過酸化水素を遊離させるような無機過酸化物、例えば過炭酸塩や過ホウ酸塩を主成分としたものである。そして、この風呂釜洗浄剤の使用方法は、浴槽に穴が2つあるタイプ(自然対流式風呂釜)の場合は、浴槽に水を張った状態で、配管内部に風呂釜洗浄剤を専用の注入具により直接注入して使用する。また、浴槽に穴が1つのタイプ(強制循環式風呂釜)の場合は、浴槽に張った水に風呂釜洗浄剤を溶解させた後、加熱運転(追い炊き)を行うことにより洗浄を行う。
【0004】
しかし、これら従来の風呂釜洗浄剤は、主成分である無機過酸化物は粉末なので、水に溶解させる為にかき回したり、水を加熱したりしなければならず、非常に手間がかかるばかりか不経済である。更に、無機過酸化物が水に溶解してから過酸化水素が遊離し、更に過酸化水素から酸素ガスが発生するにはかなりの時間を要する為、短時間での洗浄では効果が低いものであった。酸素ガスの発生を促進させる為に加熱運転を行う対策もあるが、長時間の加熱は危険が伴うと共に不経済である。
【0005】
さらに、無機化酸化物を水に溶解させた際に遊離する過酸化水素は極微量であり、菌に対しての効果は不十分であった。
【0006】
特開平11−302690には過酸化水素水を用いることも示唆されているが、過酸化水素水は劇物であり、一般家庭での使用は取り扱いが困難であり、安全性の点で問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開昭56―90898
【特許文献2】特開平11―302690
【特許文献3】特開平11―61193
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、短時間で風呂釜内部の洗浄ができ、しかも風呂釜内部に繁殖する菌に対しても十分な除菌効果を有する洗浄剤組成物の開発が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点を解決するために、鋭意研究を行ったところ、特定の除菌剤と界面活性剤、キレート剤の組み合わせが優れた洗浄、除菌効力を有することを見いだし本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ビグアナイド系除菌剤、界面活性剤、及びキレート剤を含有し、pHが8以上であることを特徴とする洗浄剤組成物を提供するものである。
【0011】
また、上記洗浄剤組成物を浴槽内の水に添加し風呂釜内に循環させることを特徴とする風呂釜の除菌洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、液体タイプである為、風呂水に容易に溶解し、薬剤溶解させる手間が著しく軽減されるばかりでなく、短時間で洗浄、除菌を行うことができる。また、液体タイプであるにもかかわらず、安全性が高く家庭内でも手軽に取り扱うことができる。従って、本発明の洗浄剤組成物は、自然循環タイプ、強制循環タイプのいずれの風呂釜に対しても優れた除菌・洗浄効果を有するものである。
【0013】

さらに、本発明の洗浄剤組成物を浴槽内の水に添加し、風呂釜内に循環させることにより風呂釜の配管や内部を除菌、洗浄することができるとともに、浴槽も除菌、洗浄を行うことができる。したがって、従来風呂釜内部の除菌、洗浄と、浴槽の除菌、洗浄を行わなければならなかったが、本発明の洗浄剤組成物を用いて上記方法で除菌、洗浄を行うことにより、風呂釜の配管や内部と浴槽の除菌、洗浄同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、ビグアナイド系除菌剤、界面活性剤、及びキレート剤を含有し、pHが8以上であることを特徴とするものである。
【0015】
ビグアナイド系除菌剤は、具体的には、1,1’−(ヘキサメチレンビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアナイド]ジグルコネイト、ビス(p−クロロフェニルビグアナイド)ヘキサンジハイドロクロライド、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)ハイドロクロライド等を挙げることができ、好ましくは、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)ハイドロクロライドを挙げることができる。ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)ハイドロクロライドは安全性も高く、また1分子中の活性部位が多いため、汚れに付着した菌や汚れに覆われた菌に対しても効力を発揮することができる。本発明の洗浄剤組成物中におけるビグアナイド系除菌剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、風呂水に溶解させたときの濃度が1ppm以上になる量、より好ましくは、5ppm以上になる量、更に好ましくは10ppm以上になる量を配合する。1ppm以下では、除菌、洗浄効果が不十分である。
【0016】
本発明に用いられる界面活性剤の種類は従来公知の界面活性剤を用いることができる。具体的には、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、飽和または不飽和脂肪酸塩類、アルキルエーテルカルボン酸塩類、α―スルホ脂肪酸塩類、α―スルフォ脂肪酸エステル類等のアニオン系界面活性剤、4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリセリンエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アミンオキサイド等のノニオン界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤等の両性界面活性剤を単独若しくは混合して用いることができる。
【0017】
これらのうち、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤の単独若しくは混合して用いることが、ビグアナイド系除菌剤の活性を阻害しないため好ましい。更には、風呂釜内部の汚れへの浸透性、分散性の点で、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが更に好ましい。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物中における界面活性剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、風呂水に溶解させたときの濃度が1ppm以上になる量、より好ましくは、5ppm以上になる量、更に好ましくは10ppm以上になる量を配合する。1ppm以下では、除菌、洗浄効果が不十分である。
【0019】
本発明に用いられるキレート剤は、従来公知のキレート剤を用いることができる。具体的には、ホスホン酸、トリポリリン酸等のリン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸等のアミノ酢酸、グルコン酸、クエン酸、コハク酸等のオキシカルボン酸及びこれらの塩を単独で若しくは混合して用いることができる。これらのうち、エチレンジアミンテトラ酢酸を用いることが好ましく、更に好ましくは、エチレンジアミンテトラ酢酸4ナトリウム塩及び/又はエチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウムを用いることが特に風呂釜内部の汚れに対するキレート効果が高く好ましい。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物中におけるキレート剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、風呂水に溶解させたときの濃度が1ppm以上になる量、より好ましくは、10ppm以上になる量、更に好ましくは50ppm以上になる量を配合する。1ppm以下では、キレート効果が不十分である。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄、除菌効果の点からは、そのpHを8以上にすることが好ましいが、安全性の点を考慮すると、pHを8〜11、好ましくは9〜10にすることが好ましい。pHを8以上に調整する方法は、従来公知のpH調整剤を用いて調整することができるが、前述のキレート剤を組み合わせて用いることにより、調整することができる。キレート剤として好ましいエチレンジアミンテトラ酢酸4ナトリウム塩及びエチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウムを用いてpH調整を行うことが好ましい。
【0022】

本発明の洗浄剤組成物におけるビグアナイド系除菌剤、界面活性剤、キレート剤及び水の配合割合は特に限定されないが、全組成物中、ビグアナイド系除菌剤0.1〜10質量%、界面活性剤0.1〜10質量%、及びキレート剤1〜10質量%、水70〜98重量%とすることが洗浄、除菌効果を効率的に発揮するために好ましい。
本発明の洗浄剤組成物は、適当な水溶性溶媒、好ましくは水により適当に希釈される。
【0023】
更に、本発明の洗浄剤組成物には、次亜塩素酸塩、ヒダントイン、ハロゲン化シアヌル酸、過酸化水素、無機過酸化物等の洗浄・漂白剤、香料、色素、防錆剤、4級アンモニウム塩等の他の殺菌剤、ハイドロトロープ剤、増粘剤、発泡剤、起泡剤等を適宜添加することができる。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、自然循環式風呂釜、強制循環式風呂釜のいずれにも好適に使用することができる。自然循環式の風呂釜の場合は、浴槽に水を張った状態で、注入容器を用いて風呂釜内に直接本発明の洗浄剤組成物を注入し洗浄除菌する。また、強制循環式風呂釜の場合は、浴槽に張った水に本発明の洗浄剤組成物を溶解させ、浴槽内の洗浄剤液を風呂釜内に循環させることによって洗浄除菌する。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
実施例1:洗浄力試験
以下の組成で本発明の液体風呂釜用洗浄除菌剤を作成した。
【0027】
【表1】

【0028】
(洗浄力の試験)
処方例1〜5をそれぞれ400分の1に希釈した水溶液(400gの各本発明品を160リットルの風呂水に溶解させた濃度に相当。それぞれを本発明品1〜5とする。)100mlに風呂釜内のモデル汚れとしてステアリン酸カルシウム0.15gを入れ、スターラーバーで10分間攪拌し分散状態を以下の基準で評価した。なお、対象品1として、過炭酸ナトリウムを400分の1に希釈した水溶液を、また、対象品2としては水を用いた。結果を表2に示す。
【0029】
(分散状態評価基準)
完全に分散している・・・○
やや分散している・・・△
全く分散していない・・・×
【0030】
【表2】

【0031】
以上の結果より、本発明品1〜5は風呂釜内の主な汚れであるステアリン酸カルシウムについて十分に分散させることができ、従来品に比べ洗浄力が高いことがわかった。
【0032】
実施例2:除菌力試験
下記の試験菌1〜3をそれぞれ普通寒天培地にて36℃で1日間培養した後、滅菌生理食塩水に分散させ試験菌液とした。
【0033】
この試験菌液0.1mlを分取し、直ちに100倍に希釈した。この希釈液を標準寒天培地を用いた混釈培養法により測定し、開始時の試験菌液1ml当たりの生菌数を確認した。
【0034】
本発明品1〜5をそれぞれ10ml試験管にとり、それに試験菌液0.1mlを加えよく攪拌した。10分後、この液を標準寒天培地を用いた混釈培養法により測定し、試験菌1ml当たりの生菌数を確認した。結果を表3に示す。
【0035】
(試験菌)
試験菌1:大腸菌(Escherichia coli:ATCC10536)
試験菌2:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:ATCC6538)
試験菌3:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:ATCC15442)
【0036】
【表3】

【0037】
以上の結果より本発明品1〜5は、風呂釜内に発生する大腸菌や黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対して高い除菌効果を示すことがわかった。

【0038】
実施例3:自然循環式風呂釜の実地試験
【0039】
3年以上風呂釜洗浄を行っていない自然循環式風呂釜について実地試験を行った。
【0040】
約200リットルの浴槽に設置されている自然循環式風呂釜に対して、釜の上の穴の上部5cmまで水を張った(約150リットル)。そこに処方例1の配合割合で製造した本発明の液体風呂釜除菌洗浄剤350ミリリットルが入った注入容器を風呂釜の下穴あて数回スクイズして注入した。2〜3分追い炊き運転を行った後、約10分間放置し、その後水を張った状態でホースで風呂釜の下穴から水を流し込み風呂釜内を洗浄したところ、風呂釜内からは大量の汚れが排出された。
【0041】
さらに排水後の浴槽に水を張り、風呂を沸かした後、風呂水1mlを取りシート状培地(製品名「サニ太くん(一般生菌用)」:チッソ株式会社製)に滴下し36℃で24〜48時間培養を行ったところ、菌は発見できなかった。
【0042】
実施例4:強制循環式風呂釜の実地試験
【0043】
3年以上風呂釜洗浄を行っていない強制循環式風呂釜について実地試験を行った。
【0044】
約200リットルの浴槽に設置されている強制循環式風呂釜に対して、風呂釜の導水口の上部5cmまで水を張った(約150リットル)。そこに処方例1の配合割合で製造した本発明の液体風呂釜除菌洗浄剤350ミリリットルを導水口付近に投入し溶解させた。2〜3分追い炊き運転を行った後、約10分間放置した。排水後、再度風呂釜の導水口の上部5cmまで水を張り、約5分間追い炊き運転を行ったところ、風呂釜内からは大量の汚れが排出された。
【0045】
さらに排水後の浴槽に水を張り、風呂を沸かした後、風呂水1mlを取り風呂水1mlを取りシート状培地(製品名「サニ太くん(一般生菌用)」:チッソ株式会社製)に滴下し36℃で24〜48時間培養を行ったところ、菌は発見できなかった。
【0046】
実施例3および実施例4の結果より、本発明の液体風呂釜除菌洗浄剤は自然循環式風呂釜、強制循環式風呂釜のいずれの風呂釜においても、風呂釜内を洗浄除菌することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば自然循環式風呂釜、強制循環式風呂釜のいずれにも好適に使用することができ、短時間で風呂釜の洗浄ができしかも風呂釜内部に繁殖する菌に対しても十分な除菌効果を有する洗浄剤組成物および風呂釜の除菌洗浄方法の提供をすることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビグアナイド系除菌剤、界面活性剤、及びキレート剤を含有し、pHが8以上であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
ビグアナイド系除菌剤0.1〜10質量%、界面活性剤0.1〜10質量%、及びキレート剤1〜10質量%及び水70〜98重量%を含有し、pHが8以上であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項3】
pHが8〜11である請求項1項乃至2項いずれかの項記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
ビグアナイド系除菌剤が、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)ハイドロクロライドである請求項1項乃至3項いずれかの項記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1項乃至4項いずれかの項記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸−4ナトリウム塩及びエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩である請求項1項乃至5項いずれかの項記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1項乃至6項いずれかの項記載の洗浄剤組成物を浴槽内の水に添加し風呂釜内に循環させることを特徴とする浴槽及び/又は風呂釜内部の洗浄方法。

【公開番号】特開2006−16491(P2006−16491A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195690(P2004−195690)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000102544)エステー化学株式会社 (127)
【Fターム(参考)】