説明

洗浄剤組成物

【課題】えり汚れ、靴下汚れなど、多様な汚れに対して優れた漂白、洗浄効果を発揮する、洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)無機過酸化物及び(b)下記一般式(1)で表される化合物を、それぞれ特定範囲の比率で含有する洗浄剤組成物。
RO−[(PO)m/(EO)n]SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖アルキル基、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、それぞれ独立して0<m<5、0≦n<10の数である。Mは陽イオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮脂汚れ、泥汚れに対して優れた洗浄効果を発揮する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衿や袖口に付着した皮脂や蛋白に由来する汚れ、靴下に付着する泥などの無機汚れは非常に頑固な汚れであり、通常の洗濯では満足できるレベルまで落とすことは難しく、前洗いや漬け置き洗浄などの方法が行われている。
【0003】
また、通常の洗濯では落ちにくい繊維製品の汚れに対して、事前に液体洗浄剤や石鹸を塗布した後、もみ洗いや通常の洗濯に供する方法も行われている(特許文献1)。更に、泥汚れを除去する効果を高めるための前処理剤が提案されている(特許文献2)。一方、特許文献3には、布地の前処理用の濃縮洗剤溶液を、特定の方法で前溶解して調製し、布地に導入する方法が開示されている。また、特許文献4には、えり汚れへの効果を高めるために過酸化水素と特定のノニオン界面活性剤を併用した組成が開示されている。
【0004】
しかし、これらの方法でも頑固な汚れを落とす効果は不充分であり、更なる洗浄力の強化が望まれる。
【特許文献1】特開平10−298599号
【特許文献2】特開2003−105390号
【特許文献3】特表2000−504064号
【特許文献4】特開平5−171195号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、えり汚れ(皮脂等に由来する汚れ)、靴下汚れ(皮脂や泥等の複合汚れ)など、多様な汚れに対して優れた漂白、洗浄効果を発揮する、洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)無機過酸化物〔以下、(a)成分という〕を0.1〜25質量%(但し、量は過酸化水素に換算した値)、(b)下記一般式(1)で表される化合物〔以下、(b)成分という〕を0.1〜20質量%含有する洗浄剤組成物に関する。
RO−[(PO)m/(EO)n]SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m及びnは平均付加モル数であり、それぞれ独立して0<m<5、0≦n<10の数である。POとEOはランダムでもブロックでもよい。Mは陽イオンである。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、皮脂汚れ、泥汚れ、これらの複合汚れ等、多様な汚れに対して優れた漂白、洗浄効果を発揮する、繊維製品用として好適な洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一般に頑固な汚れを落とす際に用いる洗浄剤には過炭酸ソーダ、過ホウ酸ソーダなどの過酸化水素の供給源となる化合物が用いられており、その酸化力により漂白効果が得られることが知られている。しかし、えり汚れ、靴下汚れなどの皮脂を含んだ複合汚れに対して、汚れ表面へ漂白成分を作用させることは可能であるが、皮脂汚れ内部まで過酸化水素を浸透させ漂白効果を発揮することは、従来技術では不十分であった。本発明の洗浄剤組成物は、特定の界面活性剤〔(b)成分〕を選択することにより皮脂内部まで漂白成分を浸透させ、皮脂内部の汚れを酸化漂白可能としていると考えられる。また、酸化剤〔(a)成分〕を使用することにより、皮脂自体を酸化し親水化することで繊維から離脱しやすくしており、ここに特定の界面活性剤〔(b)成分〕による乳化作用が加わることで高い洗浄効果が発揮されていると推定される。
【0009】
<(a)成分>
本発明で用いる(a)成分としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過燐酸塩等の無機の過酸化物塩を挙げることができ、これらの中でも過炭酸塩が好ましい。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0010】
(a)成分は粒状、粉末状などの粒子状のものが用いられ、その平均粒径は、好ましくは200〜1000μmであり、特に好ましくは250〜600μmである。また、洗浄剤組成物のケーキングを防止するためには、孔径125μmの篩を通過するような微粉末の含有量が、(a)成分中50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物中の(a)成分の含有量は、充分な漂白力、洗浄力を付与するとともに、他成分との配合を考慮すると、過酸化水素に換算して、0.1〜25質量%であり、好ましくは3〜25%、更に好ましくは8〜25質量%であり、特に好ましくは10〜15質量%である。
【0012】
<(b)成分>
(b)成分は、下記一般式(I)で表される化合物である。
RO−[(PO)m/(EO)n]SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m及びnは平均付加モル数であり、それぞれ独立して0<m<5、0≦n<10の数である。POとEOはランダムでもブロックでもよい。Mは陽イオンである。)
【0013】
一般式(1)において、高い洗浄力を得るためには、mは、0<m<5であり、更に0<m<1、特に0.2<m<0.5が好ましく、nは、0≦n<10であり、更に0≦n<2.3、特に1≦n<2.3が好ましい。また、POとEOはブロック共重合体の形態で配列されたもの、中でもRO−にPOが結合し、次いでEOが結合したブロック配列を含むものが、高い洗浄力を得る点から好ましい。すなわち、(b)成分としては、下記一般式(1−1)で表される化合物が好ましい。
RO−(PO)m(EO)nSO3M (1−1)
(式中、Rは炭素数9〜24の直鎖アルキル基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、RO−にPOが結合し、次いでEOが結合したブロック配列である。m及びnは平均付加モル数であり、それぞれ独立して0<m<1、0≦n≦2.3の数である。Mは陽イオンである。)
【0014】
更には、(b)成分を構成している化合物として、プロピレンオキシド付加モル数が1の化合物、更にはRO−にPOが1モル結合した構造(RO−PO−)を有する化合物の割合が(b)成分中に5〜55質量%であることが、洗浄力向上の点から好ましい。
【0015】
(b)成分は、例えば次のようにして製造することができる。
工程(I):炭素数8〜18の直鎖アルコール1モルにプロピレンオキサイドを平均で0モル超、5モル未満の範囲で付加させる工程
工程(II):上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを平均で0モル以上、10モル未満の範囲で付加させる工程
工程(III):上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和する工程
【0016】
工程(I)、(II)を実施する方法としては、従来公知の方法が使用可能である。すなわち、オートクレーブにアルコールとアルコールに対し0.5〜1モル%のKOHを触媒として仕込み、昇温・脱水し、130〜160℃の温度で、それぞれ所定量のプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドを付加反応させることにより製造できる。このとき、付加形態はブロック付加であり、かつプロピレンオキサイド付加〔工程(I)〕、エチレンオキサイド付加〔工程(II)〕の順に行う。使用するオートクレーブには攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置が備えられていることが望ましい。
【0017】
工程(III)は、上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和させる工程である。硫酸化の方法としては、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸等を用いる方法が挙げられるが、特に、廃硫酸及び廃塩酸等の発生を防止する観点から、三酸化硫黄をアルコキシレートと同時にガス状又は液状で連続的に供給する方法が好ましく、更にはガス状の三酸化硫黄を、液状のアルコキシレートと同時に供給する方法が好ましい。
【0018】
硫酸化物の中和方法としては、所定量の中和剤へ硫酸化物を添加・攪拌しながら中和を行うバッチ式と、硫酸化物と中和剤を配管内へ連続的に供給し、攪拌混合機にて中和を行うループ式などが挙げられるが、本発明では中和方法に限定はない。ここで使用される中和剤としてはアルカリ金属水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、アルカリ金属水溶液が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。すなわち、一般式(1)中のMとして、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルカノールアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物中の(b)成分の含有量は、充分な漂白力、洗浄力を付与するという観点から、0.1〜20質量%であり、好ましくは1〜10質量%であり、特に好ましくは3〜8質量%である。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物において、(a)成分と(b)成分の質量比は、洗浄力向上の観点から、(a)/(b)=250/1〜1/250が好ましく、更には250/1〜1/10、特には10/1〜1/1が好ましい。
【0021】
また、本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分以外の界面活性剤を含有していてもよいが、本発明で開示する特定の界面活性剤の効果を有効に発現するために、組成物中に含まれる(b)成分以外の界面活性剤の含有量は5質量%以下であることが、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。ここでいう界面活性剤とは、分子中に親水性及び親油性原子団を有する両親媒性物質のことであり、特に、(b)成分以外の界面活性剤とは、組成物中に含まれる陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤および、下記記載の特定の陰イオン界面活性剤の合計量を含有量とする。特定の陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩及び脂肪酸塩から選ばれる一種以上である。これら陰イオン界面活性剤の対イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、特にナトリウムイオン又はカリウムイオンが挙げられる。
【0022】
また、上記界面活性剤のうち、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーから選ばれる一種以上が挙げられる。
【0023】
本発明では、特に、(1)アルキル鎖の炭素数が12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、(2)炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖の1級又は2級のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを5〜20モル付加したHLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの少なくとも何れかを含む界面活性剤の合計含有量が5質量%以下、更に3質量%以下であることが好ましい。
【0024】
<(c)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、更に(c)炭素数6〜14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数6〜14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物〔以下、(c)成分という〕を1〜20質量%含有することが、より高い洗浄力を得るために好ましい。
【0025】
(c)成分としては、特に制限されないが、下記一般式(c1)で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
〔式中、R1は、炭素数5〜13の直鎖アルキル基を示し、Yは、スルホン酸基もしくはカルボン酸基又はそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もしくはアンモニウム塩を示す。〕
【0028】
式(c1)中、R1の炭素数が5以上であると汚れに対する吸着性が高くなり、充分な洗浄性能を発揮することができ、13以下であると低温の洗浄条件においても充分な溶解性を付与することができるため好ましい。かかる一般式(c1)に該当する化合物としては、例えば下記一般式(c2)又は(c3)で表されるものが好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
〔式中、R2は炭素数5〜13の直鎖アルキル基を示し、M1はナトリウム原子、カリウム原子又はアンモニウム基を示し、R3は炭素数5〜13の直鎖アルキル基を示す。〕
【0031】
(c)成分は、その安定性を高めるために、水溶性バインダー及びその他の成分とともに混合して造粒物にすることもできる。(c)成分の造粒物は、特開平11−217590号の段落0017〜0022の記載を参照することができる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量は、充分な洗浄力を付与するため及びケーキングを防止するため、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜10質量%であり、特に好ましくは3〜5質量%である。
【0033】
<(d)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、更に分散剤〔以下、(d)成分という〕を1〜5質量%含有することが、より高い洗浄力を得るために好ましい。
【0034】
(d)成分である分散剤は特に制限されないが、高分子系分散剤が挙げられ、カルボン酸系重合体として、(d1)ポリアクリル酸、アクリル酸−アリルアルコール共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ヒドロキシアクリル酸重合体、多糖類−アクリル酸共重合体等のアクリル酸系重合体、(d2)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン−1,2−ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸等の多価カルボン酸系重合体が挙げられる。また、(d3)グリオキシル酸系重合体、(d4)多糖類(カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等)、等の高分子化合物が挙げられる。
【0035】
(d)成分としては、重量平均分子量が数百〜10万のカルボン酸系重合体、特にアクリル酸系重合体が好ましい。カルボン酸系重合体は、固体粒子汚れを衣料から洗濯浴中へ分散させる作用とその粒子が衣料へ再付着(再汚染)するのを防ぐ作用の点で好ましい。
【0036】
カルボン酸系重合体としては、下記の一般式で表される繰り返し単位を有するものを挙げることができる。なお、共重合体は一般的にランダム重合である。
【0037】
【化3】

【0038】
〔式中、X、Pは、それぞれ水素原子、水酸基又は−CH2OHを示し、Yは、水素原子、−COOM’又は−CH2COOM’を示し、Zは、−COOM’又は−CH2COOM’を示す。なお、M’はいずれも無機又は有機の対イオンを示す。〕
【0039】
これらのカルボン酸系重合体の中では、アクリル酸−マレイン酸コポリマーの塩とポリアクリル酸塩が好ましく、これらの重量平均分子量は1,000〜80,000のものが好ましい。これらの塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。カルボン酸系重合体は、通常は不飽和の有機カルボン酸や有機ポリカルボン酸を重合することによって容易に得ることができるが、重量平均分子量が2,000以上で且つカルボキシル基が10以上を有するものであるならば、その原料としての不飽和カルボン酸単量体は限定されるものではない。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物中の(d)成分の含有量は、充分な分散能を付与すると共に他成分との配合を考慮すると、1〜5質量%が好ましく、より好ましくは2〜4質量%であり、特に好ましくは3〜4質量%である。
【0041】
<(e)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、更にキレート剤〔以下、(e)成分という〕を1〜5質量%含有することが、より高い洗浄力を得るために好ましい。
【0042】
(e)成分として使用できるものを以下に挙げる。なお、本発明では、(d)成分として使用する高分子化合物は、(e)成分の含有量には含めないものとする。(e1)フィチン酸等のリン酸系化合物又はそれらの塩、(e2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はそれらの塩、(e3)2-ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1-ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はそれらの塩、(e4)グリシンもしくはその誘導体、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸又はその塩、(e5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はそれらの塩、(e6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸等の有機酸又はそれらの塩、(e7)ゼオライトA等のアルミノケイ酸塩、(e8)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそれらの塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそれらの塩、等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の洗浄剤組成物が(c)成分を含有する場合、(e)成分は、次の方法により測定される有機過酸残存率が80%以上のものが好ましい。有効酸素濃度12質量%の過炭酸ナトリウム100ppm(質量比、以下同様)及び35℃のイオン交換水からなる水溶液を1Lビーカーで調製し、そこに(c)成分0.1mmol/Lを添加する。このときの(c)成分の添加濃度は、下記式
【0044】
【化4】

【0045】
で表される化合物を基準とする。次に、20分間反応させたのち、前記有機過酸前駆体と等モル量のキレート剤を添加し、さらに20分間反応させたときの有機過酸残存量を用い、次式:有機過酸残存率(%)=反応後の有機過酸量×100/初期の有機過酸量、から求める。有機過酸量の測定はチオ硫酸ナトリウムによる滴定法により行う。
【0046】
(e)成分の20℃における有機過酸残存率は、(c)成分の分解を抑制して洗浄力を高めるため、80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。
【0047】
(e)成分としては、下記一般式(e1)で表されるものを挙げることができる。
【0048】
【化5】

【0049】
〔式中、W1及びX1は、それぞれ水素原子、−R、−R−OH、−COOM、−SO3M又は−PO3M(ここで、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基又はアルキレン基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム基を示す)を示し、Y1及びZ1は、それぞれ水素原子、−R、−R−OH、−COOM、−SO3Mもしくは−PO3M又は−R’−COOM、−R’−SO3Mもしくは−R’−PO3M(ここで、M、Rは前記と同じ意味を示し、R’は炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基又はアルキレン基を示す)を示す。〕
【0050】
本発明の洗浄剤組成物中の(e)成分の含有量は、充分な洗浄力を付与するため、1〜5質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜4質量%であり、特に好ましくは2〜4質量%である。
【0051】
本発明の洗浄剤組成物において、(b)成分と、(b)成分以外の界面活性剤の質量比は、洗浄力の点で、[(b)成分/(b)成分以外の界面活性剤]の値は1/10以上、更に1/1以上、特に3/1以上が好ましい。
【0052】
また、本発明の洗浄剤組成物において、(a)成分と(c)成分の質量比は、有機過酸の生成効率の点で、(a)/(c)=30/1〜1/1、更に20/1〜5/1、特に20/1〜10/1が好ましい。
【0053】
<酵素>
本発明の洗浄剤組成物は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の酵素を含有することができ、アミラーゼ及び/又はプロテアーゼを含有することがより好ましく、アミラーゼ及びプロテアーゼを含有することが特に好ましい。
【0054】
上記以外にも、本発明の洗浄剤組成物には、洗浄剤や漂白剤に配合される公知の成分を含有することができる。その一例を以下に示す。
(1)酸剤
洗濯液(組成物溶液)のpHが高くなりすぎないように、酸剤を含有することができる。酸剤としては、有機性の金属イオン封鎖剤のほか、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、グルコン酸等のポリカルボン酸を挙げることができる。
(2)増量剤
増量剤(中性塩)として、一般的に芒硝と呼ばれている硫酸ナトリウムを含有することができる。硫酸ナトリウムは無機性のアルカリ剤と同様に乾燥後の洗剤粒子の骨格形成に効果的である。その他の好ましい中性塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムを挙げることができる。
(3)ポリマー類〔(d)成分以外のもの〕
組成物を高密度化する場合のバインダーや粉末物性剤として、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を含有することができる。なお、これらのポリマー類は、疎水性微粒子に対する再汚染防止効果も有しており、重量平均分子量が200〜200000のものを用いることができる。また、色移りを防止する効果を付与するためにポリビニルピロリドンを含有することができる。
(4)酵素安定剤
酵素安定剤として、還元剤(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム)のカルシウム塩やマグネシウム塩、ポリオール、ホウ素化合物等を含有することができる。還元剤は、水道水中の塩素を除去することにより、酵素を安定化する。さらに亜硫酸ナトリウムは、前記効果とともに酸化防止剤としての効果も有している。
(5)青味付剤
青味付剤としては、特公昭49−8005号公報、特公昭49−26286号公報、特公昭53−45808号公報記載のものを挙げることができる。
(6)ケーキング防止剤
ケーキング防止剤としては、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酢酸塩、スルホコハク酸塩、タルク、微粉末シリカ、粘土、酸化マグネシウム等を挙げることができる。なお、粘土(スメクタイト状粘土)は、柔軟化剤としても効果的である。
(7)香料
香料としては、従来洗剤に含有されている香料、例えば特開昭63−101496号公報記載の香料、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、トリシクロ[5.2.1.02,6]−デセ−3−エン−8−イルアセテート、トリシクロ[5.2.1.02,6]−デセ−3−エン−8−イソプロピオネート、3−アミル−4−アセトキシテトラヒドロピラン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、2−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、α,α’−ジメチル−p−エチルヒドロシンナミックアルデヒド等を挙げることができる。もちろんその他の洗剤成分による劣化のないように、含有する各香料成分の種類及び場合により含有比率や含有量を考慮する。
(8)消泡剤
消泡剤としては、従来より知られている例えばシリコーン/シリカ系のものを挙げることができる。この消泡剤は、次に説明する特開平3−186307号公報4頁左下欄に記載の方法を用いて製造した消泡剤造粒物としてもよい。消泡剤造粒物の製法の一例を挙げれば、まず、日澱化学株式会社製マルトデキストリン(酵素変成デキストリン)100gに消泡成分としてダウコーニング社製シリコーン(コンパウンド型、PSアンチフォーム)を20g添加し混合し、均質混合物を得る。次に、得られた均質混合物50質量%、ポリエチレングリコール(PEG-6000、融点58℃)25質量%及び中性無水ボウ硝25質量%を70〜80℃で混合後、不二パウダル株式会社製押出し造粒機(型式EXKS-1)により造粒し、造粒物を得る。
【0055】
本発明の洗浄剤組成物は上記(a)、(b)成分、更に好ましくは(c)〜(e)成分、酵素、その他の成分を含有するものであり、その形態は、通常粉末又は粒状である。本発明の組成物は、衣料、寝具等の繊維製品の洗浄用に好適である。
【0056】
また、本発明の洗浄剤組成物の嵩密度は0.4〜0.9g/mlが好ましく、0.6〜0.9g/mlが更に好ましい。又、その平均粒径としては、溶解性および保存安定性の観点から、100〜700μmが好ましく、400〜700μmが更に好ましい。
【0057】
<洗浄方法>
通常、本発明の洗浄剤組成物は、水を含む液体成分に溶解させて得た水性媒体として用いられる。当該水性媒体中の洗浄剤組成物の濃度は0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%、更には0.3〜2質量%が好適である。かかる濃度の水性媒体に繊維製品を30分以上、好ましくは30〜120分接触させることが好ましい。水性媒体の温度は5〜50℃、更に20〜40℃が好ましい。また、水性媒体は、使用時の温度においてpHが8〜12、更に10〜11であることが好ましい。水性媒体に繊維製品を接触させた後は、水道水にてよく濯いだ後に乾燥させるか、洗剤水溶液とともに洗濯機で洗浄し、すすぎ後に乾燥させる方法が好ましい。なお、かかる水性媒体は、汚れの付着している部分に直接塗布や滴下して付着させる方法、及びトリガー式スプレーヤーなどのスプレー付き容器に充填してスプレーする方法で、繊維製品に適用することもできる。
【実施例】
【0058】
表1に示す粒状の洗浄剤組成物を0.5質量%の濃度で含有する水溶液を調製する。この水溶液に、下記で調製した2種の汚染布を各4枚ずつ入れ、2時間浸漬する。その後、汚染布を取り出し、濃度0.0667質量%のJAFET(繊維製品新機能評価協議会)標準洗剤水溶液に投入し、ターゴトメーターにて普通洗浄した(80rpm×10分、温度20℃、使用水4°DH(Ca/Mg=3/1))。水道水ですすぎ、乾燥させて、次式により洗浄率を算出した。結果を表1に示す。
洗浄率(%)=[(漂白後の反射率−漂白前の反射率)/(白布の反射率−漂白前の反射率)]×100
反射率は日本電色工業(株)製ND−300Aで460nmフィルターを使用して測定した。
【0059】
(1)皮脂汚れ汚染布(人工汚染布)の作製
10cm×10cm木綿布に下記組成より成るモデル皮脂汚れ2gを均一に塗布して皮脂汚れ汚染布を作製した。
・モデル皮脂汚れ組成綿実油 60%
・コレステロール 10%
・オレイン酸 10%
・パルミチン酸 10%
・液体及び固体パラフィン 10%。
【0060】
(2)泥汚れ汚染布(人工汚染布)の作製
鹿沼園芸用赤玉土を120℃±5℃で4時間乾燥後粉砕し、150メッシュ(100μm) パスのものを 120℃±5℃で2時間乾燥後、約 150gを1リットルのパークレンに分散させ、金巾#2023布をこの液に接触させ、ブラッシングし、分散液を除去し、過剰付着汚れを脱落させて、泥汚れ汚染布を作製した。
【0061】
【表1】

【0062】
1)過炭酸ソーダは過酸化水素濃度として20%含有するものを用いた。従って、例えば、過炭酸ソーダの配合量が80質量%であれば、過酸化水素として16質量%含むことになる。(平均粒径480μm)
2)化合物1;C1225O(PO)0.4(EO)1.5SO3Na(ブロック付加物、プロピレンオキシド付加モル数が1の化合物の割合が29質量%)
3)化合物2;C1021O(PO)0.3(EO)1.8SO3Na(ブロック付加物、プロピレンオキシド付加モル数が1の化合物の割合が25質量%)
4)化合物3;C1225O(EO)3SO3Na
5)化合物4;C1225OSO3Na
6)AOBS;ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム
7)高分子系分散剤;アクリル酸−マレイン酸共重合体、平均分子量70000(BASF社製、ソカランCP−5)
8)キレート剤;トリロンM(BASF社)
9)アルカリプロテアーゼ;アルカリプロテアーゼK−16、Bacillus sp.KSM-K16(微工研菌寄第11418号)、活性1.87PU/mg、特開平5-25492号の参考例に従って精製したもの。
10)LAS−Na;直鎖アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸ナトリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無機過酸化物を0.1〜25質量%(但し、量は過酸化水素に換算した値)、(b)下記一般式(1)で表される化合物を0.1〜20質量%含有する洗浄剤組成物。
RO−[(PO)m/(EO)n]SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m及びnは平均付加モル数であり、それぞれ独立して0<m<5、0≦n<10の数である。POとEOはランダムでもブロックでもよい。Mは陽イオンである。)
【請求項2】
更に(c)炭素数6〜14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数6〜14のアルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物を1〜20質量%含有する請求項1記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−155510(P2009−155510A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336276(P2007−336276)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】