説明

洗浄剤適用および衛生適用におけるリン酸トリアミドの使用

本発明は、洗浄剤への適用および衛生への適用におけるリン酸トリアミドの使用を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リン酸トリアミドは、US4,530,714の中で記載される。これらの化合物の使用がそこでも同様に記載される−植物生長媒体中で使用される場合、これらは土壌の窒素含量が保持される分野において寄与する。
【0002】
US5,770,771は、N−ヒドロカルビルチオリン酸トリアミド、例えばN−(n−ブチル)チオリン酸トリアミドの多段階の製造法を開示する。
【0003】
WO2006/010389A1はまた、リン酸トリアミドの使用を扱う。その際、多数の使用が挙げられる:窒素ベースの肥料を使用する際の窒素損失の回避、動物小屋内でのアンモニア害の回避、動物の栄養摂取における飼料添加物としての尿素の使用ならびに医薬用途。
−窒素ベースの肥料を使用する際の窒素損失の回避は、酵素的ウレアーゼ触媒反応による尿素加水分解−場合によって硝化作用の制限を平行して行って−が抑止されることによって達成される。そうして苗の発芽および生育に悪影響を及ぼしうる土壌中の高いアンモニア濃度が回避されることになる。
−酵素的ウレアーゼ触媒反応による尿素加水分解の抑止によって同様に、動物の発育および成長に悪影響を及ぼしうる、小屋内での時に重大なアンモニア害が回避されることになる。
−またWO2006/010389A1は、このように、いわゆる"非蛋白窒素化合物"による動物の栄養価の高い蛋白質に富んだ植物栄養分の部分的な代用にも成功する。ここでは放出したアンモニア割合が、存在する微生物によって即座に微生物蛋白質に処理されえ、そうして毒性反応が起こりえないように、動物の第一胃内で行われるウレアーゼ触媒反応による尿素加水分解を制御することに成功する場合に尿素を用いることができる。
−医薬領域においては、直接的または間接的にウレアーゼ活性によって誘発されるかまたは促進される障害または病気の予防または治療のためのウレアーゼ阻害剤が提案される。例として、カテーテルインクラステーション、潰瘍性の胃疾患および腸疾患、尿石症、腎盂腎炎、腎石症、アンモニア脳症、肝性脳症、肝性昏睡、尿路感染症および胃腸感染症が挙げられる。
【0004】
DE10252382A1は同様に、窒素ベースの肥料を使用する際の窒素損失の回避、動物小屋内でのアンモニア害の回避および動物の栄養摂取における飼料添加物としての尿素の使用を扱う。該文献は、この関連において極めて効果的なウレアーゼ阻害剤としてのリン酸エステルジアミドを記載する。同様に該文献は、リン酸トリアミドの誘導体としてN−(n−ブチル)チオリン酸トリアミドを記載するが、それはしかし比較的加水分解を起こしやすいとされる。DE10252382A1は、上記の適用のためにとりわけ良好に適した化合物としてのテトラアミノホスホニウム塩の使用を教示する。
【0005】
US6,869,923は、衛生領域において洗浄剤中で使用することのできる香料組成物を記載する。しかしながらこの組成物は、尿のにおいだけを洗浄中および洗浄後に回避したいと思うユーザーがこの選択肢を持たず、むしろその他の、一般的に心地よく感じられるにおいによってしかこのにおいを隠すことができないという欠点を有する。
【0006】
US6,376,457は、衛生領域において洗浄剤中で使用するための香料組成物を記載する。ここでもユーザーは尿の不快なにおいを回避することができない−ユーザーはそれを単に強力な−また一般的に心地よく感じられる−においによってしかおおうことができない。
【0007】
同様に、本質的にトイレ内の洗浄剤および香料のための分散装置を扱うUS6,625,821は、衛生領域において尿のにおいの問題を解決するための香料の使用のみを記載する。
【0008】
以上より、尿で汚された面を洗浄するのに際して尿のにおいを回避する課題、および新たに尿に曝された場合、遅れて初めて、および理想的にはそれに相応するにおいを全く帯びないかもしくは放たないような洗浄された面を保持する課題が生まれる。
【0009】
意想外にも、これらの課題は、請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物、請求項15および16記載の計量供給装置、請求項17記載のパーツキット、請求項18記載の洗浄装置および請求項19および20記載のこれらの使用によって解決される。
【0010】
少なくとも1つのN−アルキル−チオリン酸トリアミドと、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびベタイン界面活性剤から成る群から選択された少なくとも1つの界面活性剤とを含有する組成物が、本発明に従って、提示された課題を解決する。
【0011】
その際、有利なのは、N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.01〜75質量%、とりわけ有利には0.1〜50質量%および極めて有利には0.25〜20質量%である組成物である。N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.5〜10質量%である上記のような組成物が最も有利である。最良の洗浄作用および防腐作用は、該組成物が1つまたは複数のN−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)を、例えば0.6、0.8、1、2、5または8質量%の量で含有する場合に得られる。
【0012】
少なくとも1つの界面活性剤が0.01〜99質量%の(全体の)量で存在する上記のような組成物が有利であり、より有利なのは、少なくとも1つの界面活性剤が0.5〜50質量%の(全体の)量で存在する組成物であり、なおより有利なのは、1〜25質量%の(全体の)量で存在する組成物である。最も有利なのは、少なくとも1つの界面活性剤が1〜15質量%の(全体の)量で存在する上記のような組成物である。この場合、最良の洗浄作用および防腐作用は、該組成物が1つまたは複数の界面活性剤を、例えば2、5、8、10または12質量%の(全体の)量で含有する場合に生じる。
【0013】
その際、"(全体の)量"という記載は、n−アルキルチオリン酸トリアミドのみもしくは本発明による界面活性剤のみが組成物中に存在する場合、この物質の量を考慮に入れ、一方で複数のn−アルキルチオリン酸トリアミドもしくは複数の本発明による界面活性剤が存在する場合、そのつどこれらの合計を考慮に入れるように理解されるべきである。つまり化合物が、例えばアニオン性界面活性剤x質量%およびカチオン性界面活性剤y質量%を含有する場合、考慮に際してx+y質量%に基づいていなければならない;これに対して、例えばベタイン界面活性剤x質量%および非イオン性界面活性剤y質量%が存在する場合、単にベタイン界面活性剤のx質量%にのみ基づいていなければならない。
【0014】
本発明による界面活性剤は:アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびベタイン界面活性剤であってよい。これらはそのつど分岐状または非分岐状であってよい。
【0015】
界面活性剤は、一般的に疎水性部分と親水性部分とから成る。その際、疎水性部分は、一般的にC原子4〜20個、好ましくはC原子6〜19個およびとりわけ有利にはC原子8〜18個の鎖長を有する。疎水性基の官能性単位は一般的にOH基であり、その際、アルコールは分岐状または非分岐状であってよい。一般的に親水性部分は、本質的にアルコキシル化単位(例えばエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO))、その際、通常、これらのアルコキシル化単位の2〜30個、好ましくは5〜20個は互いに並んでいる、および/または荷電単位、例えばスルフェート、スルホネート、ホスフェート、カルボン酸、アンモニウムおよび酸化アンモニウムから成る。
【0016】
アニオン性界面活性剤の例は:カルボキシレート、スルホネート、スルホ脂肪酸メチルエステル、スルフェート、ホスフェートである。カチオン性界面活性剤の例は:第4級アンモニウム化合物である。ベタイン界面活性剤の例は:アルキルベタインである。
【0017】
その際、"カルボキシレート"とは、分子中に少なくとも1個のカルボキシレート基を有する化合物と理解される。本発明に従って使用することのできるカルボキシレートの例は、
>セッケン−例えばアルカリ金属またはアンモニウムのステアリン酸塩、オレイン酸塩、ヤシ脂肪酸塩、
>エーテルカルボキシレート−例えばAkypo(R)RO 20、Akypo(R)RO 50、Akypo(R)RO 90
である。
【0018】
その際、"スルホネート"とは、分子中に少なくとも1個のスルホネート基を有する化合物と理解される。本発明に従って使用することのできるスルホネートの例は、
>アルキルベンゼンスルホネート−例えばLutensit(R)A−LBS、Lutensit(R)A−LBN、Lutensit(R)A−LBA、Marlon(R)AS3、Maranil(R)DBS、
>アルキルスルホネート−例えばAlscoap OS−14P、BIO−TERGE(R)AS−40、BIO−TERGE(R)AS−40 CG、BIO−TERGE(R)AS−90 Beads、Calimulse(R)AOS−20、Calimulse(R)AOS−40、Calsoft(R)AOS−40、Colonial(R)AOS−40、Elfan(R)OS 46、Ifrapon(R)AOS 38、Ifrapon(R)AOS 38 P、Jeenate(R)AOS−40、Nikkol(R)OS−14、Norfox(R)ALPHA XL、POLYSTEP(R)A−18、Rhodacal(R)A−246L、Rhodacal(R)LSS−40/A、
>スルホン化油、例えばロート油、
>オレフィンスルホネート、
>芳香族スルホネート−例えばNekal(R)BX、Dowfax(R)2A1
である。
【0019】
その際、"スルホ脂肪酸メチルエステル"とは、以下の一般式(I)
【化1】

[式中、Rは、C原子10〜20個を有する:好ましくは、Rは、C原子12〜18個およびとりわけ有利には14〜16個を有する]
の単位を有する。
【0020】
その際、"スルフェート"とは、分子中に少なくとも1個のSO基を有する化合物と理解される。本発明に従って使用することのできるスルフェートの例は、
>脂肪アルコールスルフェート、例えばヤシ油脂肪アルコールスルフェート(CAS 97375−27−4)−例えばEMAL(R)10G、Dispersogen(R)SI、Eflan(R)280、Mackol(R)100N、
>その他のアルコールスルフェート−例えばEmal(R)71、Lanette(R)E、
>ヤシ油脂肪アルコールエーテルスルフェート−例えばEmal(R)20C、Latemul(R)E150、Sulfochem(R)ES−7、Texapon(R)ASV−70 Spec.,Agnique SLES−229−F、Octosol 828、POLYSTEP(R)B−23、Unipol(R)125−E、130−E、Unipol(R)ES−40、
>その他のアルコールエーテルスルフェート−例えばAvanel(R)S−150、Avanel(R)S 150 CG、Avanel(R)S 150 CG N、Witcolate(R)D51−51、Witcolate(R)D51−53
である。
【0021】
ここで"ホスフェート"とは、分子中に少なくとも1個のPO基を有する化合物と理解される。本発明に従って使用することのできるホスフェートの例は、
>アルキルエーテルホスフェート−例えばMaphos(R)37P、Maphos(R)54P、Maphos(R)37T、Maphos(R)210TおよびMaphos(R)210P、
>ホスフェート、例えばLutensit A−EP、
>アルキルホスフェート
である。
【0022】
"第4級アンモニウム化合物"とは、分子中に少なくとも1個のR基を有する化合物と理解される。本発明に従って使用することのできる第4級アンモニウム化合物の例は、
>ヤシ脂肪アンモニウム、獣脂アンモニウムまたはセチル/オレイルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物、メソスルフェート、スルフェートおよびカーボネート
である。
【0023】
さらに、"ベタイン界面活性剤"は、適用条件下、すなわち標準圧力下および室温(20℃)で、またはシミュレーションのために実施例の中で選択した条件下で、そのつど少なくとも1つの正電荷および負電荷を持つ化合物と理解される。その際、"アルキルベタイン"は、分子中に少なくとも1個のアルキル単位を有するベタイン界面活性剤である。本発明に従って使用することのできるベタイン界面活性剤の例は、
コカミドプロピルベタイン−例えばMAFO(R)CAB、Amonyl(R)380 BA、AMPHOSOL(R)CA、AMPHOSOL(R)CG、AMPHOSOL(R)CR、AMPHOSOL(R)HCG;AMPHOSOL(R)HCG−50、Chembetaine(R)C、Chembetaine(R)CGF、Chembetaine(R)CL、Dehyton(R)PK、Dehyton(R)PK 45、Emery(R)6744、Empigen(R)BS/F、Empigen(R)BS/FA、Empigen(R)BS/P、Genagen(R)CAB、Lonzaine(R)C、Lonzaine(R)CO、Mirataine(R)BET−C−30、Mirataine(R)CB、Monateric(R)CAB、Naxaine(R)C、Nxaine(R)CO、Norfox(R)CARB、Norfox(R)Coco Betaine、Ralufon(R)414、TEGO(R)−Betain CKD、TEGO(R)Betain E KE 1、TEGO(R)−Betain F、TEGO(R)−Betain F 50およびアミンオキシド、例えばアルキルジメチルアミンオキシド、すなわち一般式(II)
【化2】

[式中、R1、R2およびR3は、互いに無関係に、脂肪族の、環状のまたは第4級のアルキル基またはアミドアルキル基である]の化合物、例えばMazox(R)LDA、Genaminox(R)、Aromox(R)14 DW 970である。
【0024】
とりわけ有利な一実施態様は、1つまたは複数のN−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)が:N−メチル−チオリン酸トリアミド、N−エチル−チオリン酸トリアミド、N−プロピル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ブチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ペンチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ヘキシル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロヘキシルチオリン酸トリアミド、N−へプチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロヘプチル−チオリン酸トリアミド、N−オクチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロオクチル−チオリン酸トリアミドからなる群から選択されている記載された組成物である。その際、とりわけ有利なのは、N−エチル−チオリン酸トリアミド、N−プロピル−チオリン酸トリアミド、N−ブチル−チオリン酸トリアミドおよびN−ペンチル−チオリン酸トリアミドから成る群から選択された少なくとも1つのN−アルキルチオリン酸トリアミドを含有する組成物である。また極めて有利なのは、N−プロピル−チオリン酸トリアミドおよびN−ブチル−チオリン酸トリアミドから成る群から選択された少なくとも1つのN−アルキルチオリン酸トリアミドを含有する組成物である。
【0025】
本発明のさらに別の有利な一実施態様は、上で記載されたような、少なくとも2つのN−アルキル−チオリン酸アルキルアミドを含有する組成物である。その際、最も有利な実施態様は、組成物がN−プロピル−チオリン酸トリアミドおよびN−ブチル−チオリン酸トリアミドを含有するものである。
【0026】
N−アルキル−チオリン酸アルキルアミドは強酸および強塩基の存在下では貯蔵安定性が低下しているので、5〜9の範囲内の、好ましくは6〜8の範囲内の、例えば6.5、7または7.5のpH値を有する組成物が有利である。しかし該組成物は、強酸または強塩基とも一緒に使用することができる。その際、好ましくは、以下でより詳細に記載される計量供給装置が用いられる。
【0027】
本発明のさらに別の有利な一実施態様は、付加的に以下の物質の少なくとも1つを含有する組成物である:非イオン性界面活性剤、ポリマー、染料、香料、錯化剤、酸、塩基、殺生剤、ヒドロトロープ、増粘剤。
【0028】
非イオン性界面活性剤は、表面で吸着しかつ臨界ミセル形成濃度(cmc)より上で凝集して中性ミセルとなる、非荷電の、中和pH範囲内でイオン電荷を持たない、極性の、親水性の、水可溶性にする頭部基を(アニオン性およびカチオン性界面活性剤とは異なって)有する表面活性物質である。親水性の頭部基の種類に応じて、(オリゴ)オキシアルキレン基、殊に(オリゴ)オキシエチレン基(ポリエチレングリコール基)、それらには脂肪アルコールポリグリコールエーテル(脂肪アルコールアルコキシレート)、アルキルフェノールポリグリコールエーテルならびに脂肪酸エトキシレート、アルコキシル化トリグリセリドおよび混合エーテル(両側がアルキル化されたポリエチレングリコールエーテル)が含まれる;および炭水化物基、それらには、例えばアルキルポリグルコシドおよび脂肪酸−N−メチルグルカミドが含まれる;とを区別することができる。
【0029】
非イオン性化合物の例は、アルコールアルコキシレートである。
【0030】
アルコールアルコキシレートは、C原子4〜20個、好ましくはC原子6〜19個およびとりわけ有利にはC原子8〜18個の鎖長を有する疎水性部分、その際、アルコールは分岐状または非分岐状であってよい、および繰り返し単位2〜30個を有する、アルコキシル化単位、例えばエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BuO)である親水性部分をベースとする。例は、なかでもLutensol(R)XP、Lutensol(R)XL、Lutensol(R)ON、Lutensol(R)AT、Lutensol(R)A、Lutensol(R)AO、Lutensol(R)TOである。
【0031】
アルコールフェノールアルコキシレートは、アルキルフェノールへのアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドの付加によって製造される一般式(III)
【化3】

の化合物である。その際、好ましくは、R4=Hである。それ以外に、R5=Hであり、かつ従ってEOである場合に有利である;R5=CH3である場合、それはPOであり、かつR5=CH2CH3である場合、それはBuOである。それ以外に、とりわけ有利なのは、オクチル−[(R1=R3=H、R2=1,1,3,3−テトラメチルブチル(ジイソブチレン)]、ノニル−[(R1=R3=H、R2=1,3,5−トリメチルヘキシル(トリプロピレン)]、ドデシル−、ジノニル−またはトリブチルフェノールポリグリコールエーテル(例えばEO、PO、BuO)R−C6H4−O−(EO/PO/BuO)n R C8〜C12、n=5〜10が存在する化合物である。このような化合物の限定されない例は、Norfox(R)OP−102、Surfonic(R)OP−120、T−Det(R)O−12である。
【0032】
脂肪酸エトキシレートは、様々の量のエチレンオキシド(EO)で後処理された脂肪酸エステルである。
【0033】
トリグリセリドは、全ての3個のヒドロキシ基が脂肪酸でエステル化されているグリセロール(グリセリド)のエステルである。これらはアルキレンオキシドで変性することができる。
【0034】
脂肪酸アルカノールアミドは、アルキル基Rを有する少なくとも1個のアミド基および1個または2個のアルコキシル基を有する一般式(IV)
【化4】

[式中、Rは、C原子11〜17個を包含し、かつ1≦m+n≦5である]の化合物である。
【0035】
アルキルポリグリコシドは、アルキルモノグルコシド(アルキル−α−D−および−β−D−グルコピラノシドならびにごく僅かな割合の−グルコフラノシド)、アルキルジグルコシド(−イソマルトシド、−マルトシド他)およびアルキルオリゴグルコシド(−マルトトリオシド、テトラオシド他)からの混合物である。アルキルポリグリコシドは、なかでもグルコース(またはデンプン)からのまたはn−ブチルグルコシドと脂肪アルコールとからの酸触媒反応(フィッシャー反応)によって入手される。アルキルポリグリコシドは、一般式(V)
【化5】

[式中、
m=0〜3でありかつ
n=4〜20である]に相当する。一例は、Lutensol(R)GD70である。
【0036】
一般式(VI)
【化6】

の非イオン性のN−アルキル化された、好ましくはN−メチル化された脂肪酸アミドの基において、R1は、一般にn−C12−アルキル基を表し、R2は、C原子1〜8個を有するアルキル基を表す。R2は、好ましくはメチルである。
【0037】
これらの非イオン性界面活性剤の添加の利点は、それらが表面張力を下げ、そうして良好な濡れ性が確保されるという点にある。
【0038】
ポリマーは:エチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BuO)から成る付加物であってよい。その際、モノマーの配列は、交互、ランダムまたはブロック状であってよい。有利なのは、本質的にブロック状に分布している化合物である。このような化合物の例は、Pluronics(R)である。
【0039】
染料は、なかでも:Acid Blue 9、Acid Yellow 3、Acid Yellow 23、Acid Yellow 73、Pigment Yellow 101、Acid Green 1、Acid Green 25であってよい。洗浄剤中で染料を使用する利点は、それらが計量供給を軽減し、かつ場合によって洗浄の間、すでに洗浄された箇所を示すという点にある。
【0040】
香料は、アルコール、アルデヒド、テルペンおよび/またはエステルの個々の化合物または混合物であってよい。香料の例は下記のものである:レモングラス油、コーチン(Cochin)、ジヒドロミルセノール、リリアール、フェニルエチルアルコール、テトラヒドロリナロール、ヘキサノール cis−3、ラバンジングロッソ、シトラール、アリルカプロエート、シトロニトリル、ベンジルアセテート、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトロネロール、イソアミルサリチレート、イソボルニルアセテート、テルピニルアセテート、リナリルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロミルセノール、アグルニトリル(Agrunitril)、ユーカリ油、ヘルバフロラート(Herbaflorat)およびオレンジ油。洗浄剤中で香料を使用する利点は、それらが洗浄の間、すでに洗浄された箇所を示し、ならびに視覚レベル以外のものに対する組成物の洗浄作用の認識を高めるという点にある。
【0041】
錯化剤は、カチオンを形成可能な化合物である。これは水の硬度を低下させ、かつ妨げとなる重金属イオンを沈殿させるために用いることができる。錯化剤の例は、NTA、EDTA、MGDAおよびGLDAである。これらの化合物を使用する利点は、多くの洗浄活性化合物が軟水中で良好な作用を獲得するという点にある;それ以外に、水の硬度の低下によって洗浄後の水あかの発生を回避することができる。従ってこれらの化合物の使用によって、洗浄された表面を乾燥する必要がなくなる。これはプロセスフローの観点から好ましく、殊に、このように保護のために施与された本発明による組成物は部分的に再び取り除かれないので、追求するに値する。
【0042】
酸は、有利には水あかを溶解するのに使用される化合物である。酸の例は、ギ酸、酢酸、クエン酸、塩酸、硫酸およびスルホン酸である。
【0043】
塩基は、有利には錯化剤の適切なpH値範囲を調整するのに使用することのできる化合物である。本発明に従って使用することのできる塩基の例は:NaOH、KOHおよびアミンエタノールである。
【0044】
殺生剤は、バクテリアを殺す化合物である。殺生剤の一例は、グルタルアルデヒドである。殺生剤の使用の利点は、それが病原体の蔓延に抵抗を示すという点にある。
【0045】
ヒドロトロープは、組成物中で界面活性剤(類)の溶解性を改善する化合物である。ヒドロトロープの一例は:クメンスルホネートである。
【0046】
増粘剤は、組成物の粘度を高める化合物である。増粘剤の例は:例えばポリアクリレートまたは疎水性に変性されたポリアクリレートである。増粘剤の使用の利点は、比較的高い粘度を有する液体が、傾斜表面または垂直表面上で、比較的低い粘度を有する液体より高い滞留時間を有するという点にある。これは組成物と洗浄されるべき表面間の相互作用時間を高める。
【0047】
本発明による組成物のための計量供給装置は、本発明のさらに別の一対象である。この発明に従う計量供給装置は、本発明による組成物を含有しかつこれを少なくとも1つの開口部を通して送出する容器である。その際、抜き出しは、重力によって、例えば開口部を通して注ぎ出すことによって、ポンピングによって、例えば容器中で過圧を生成することによって、しかし外側から減圧を掛けることによっても行うことができる。本発明による組成物を推進ガスによってこの入れ物から輸送することも有利である。その際、本発明による組成物を、処理されるべき表面上かまたは洗浄のために使用されるべき洗浄装置に可能な限り均一に分散する計量供給装置が有利である。その際、とりわけ有利なのは、本発明による組成物の少なくとも2つの成分が、送出の時点になって初めて互いに混合される計量供給装置である。この種類の計量供給装置は、殊に、少なくとも1つのN−アルキルチオリン酸トリアミド以外に、とりわけ酸性または塩基性である1つまたは複数の界面活性剤が使用される場合に有利である。さらに別の成分が酸または塩基である場合、これらを分離すること、もしくはこれらを貯蔵の間、N−アルキルチオリン酸トリアミドから分離しかつ該成分を使用する時になって初めて合一することもとりわけ有利である。
【0048】
ともに本発明による組成物に相当する、少なくとも2つの同時にまたは連続して使用されるべき物質から成るパーツキットは、本発明のさらに別の一対象を形成する。そうして例えば、1つの入れ物の中には1つまたは複数のN−アルキルチオリン酸トリアミド(類)が含まれており、2つ目の入れ物の中には1つまたは複数の界面活性剤が含まれている。そうして一方で強酸もしくは強塩基の成分に、かつ他方で1つまたは複数のN−アルキルチオリン酸トリアミド(類)に分離することも実現可能であり、かつ本発明の範囲内にある。この種のパーツキットは、本質的に種々の成分を同時に使用すること以外に、該成分を時間的に後にずらして使用することも可能にする。そうして例えば、まず洗浄されるべき表面を界面活性剤含有組成物で洗浄し、引き続きN−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)を含有する組成物で表面を防腐することができる。最終的に、1つ目が界面活性剤およびN−アルキルチオリン酸トリアミド(類)を含有し、かつ2つ目がN−アルキルチオリン酸トリアミド(類)のみを含有する2つの組成物を用いることも可能である。そうして洗浄の間の煩わしいにおいは1つ目の組成物により抑えられ、次いで2つ目の組成物により防腐することができる。これも本発明の有利な一対象を形成する。
【0049】
本発明による組成物を有する洗浄装置は、本発明のさらに別の一対象を形成する。本発明に従う洗浄装置は、洗浄作用を得るのに適している全てのものである。これはなかでも:スポンジ、布切れ、タオル、金属製ワイパー、プラスチック、ガラス、セラミックおよび/またはゴム、不織布およびブラシを含む。
【0050】
本発明による組成物、本発明による計量供給装置、本発明によるパーツキットおよび/または洗浄のための、殊に硬質の表面および/または物質および/または内装品(Polstern)の洗浄のための本発明による洗浄装置は、本発明のさらに別の一対象である。
【0051】
洗浄されるべき表面が、建築物用タイル、化粧用タイル、大理石、セラミック、コンクリート、プラスチック、金属、エナメル、ガラスから成る群から選択されている上記のような使用は、有利な本発明の一対象である。同様に、取り除かれるべき汚れが尿および/またはその分解生成物を有する使用が、有利な一実施態様である。
【0052】
本発明を以下で実施例によって、より詳細に説明する。
【0053】
実施例:
そのつど洗浄剤に、NxPT(3:1 N−(n−ブチル)チオリン酸トリアミド:N−プロピルチオリン酸トリアミド)1.0質量%もしくは5.0質量%を添加した。その後、試料を用いて、すなわち洗浄剤自体を用いるのみならず、2つのNxPT含有組成物、"洗浄剤混合物"も用いてアンモニア試験を実施した。
【0054】
アンモニア試験:
・この洗浄剤混合物250mgを、三角フラスコ100ml中に量り入れた。
・固体ウレアーゼ30mg(ナタマメから;5U/mg 凍結乾燥 血清中での尿素測定用、Merck、商品番号4194753)を、100mlのビーカー中に量り入れた。
・該ウレアーゼに、尿素(8.56g/l)を含有する0.9%の食塩液50mlを添加した。
・ビーカーからの液体全体を、素早く三角フラスコ中の試料に注ぎ込んだ。
・拡散管(ドレーガー管(Draeger-Roehrchen)、アンモニア 20/a−D、20〜1500ppm*h、注文番号8101301)を、フラスコが密閉されるように取り付けた(穿孔を施されたゴム栓における管)。
・30分毎に拡散管の値を読み取り、かつ記録した;測定は計6時間を超えて続いた。
【0055】
二重測定(値1、値2)
実施例1:
洗浄剤なし
【表1】

【0056】
実施例2〜4:
型1は、
ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アミン塩 3.3質量%
C13,15−オキソアルコール+8EO 3質量%
アルキルポリグルコシド 1質量%
水 94.7質量%
から成る洗浄剤調製物である。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
実施例5〜7:
型2は、
12〜C18−アルコール+1〜8PO+1〜8EO+C〜C18−アルキルポリグルコシド+C〜C10−カルボン酸 6質量%
ペンタ−三リン酸ナトリウム 3質量%
ブチルグリコール 10質量%
水 81質量%
から成る洗浄剤調製物である。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
実施例8〜10:
型3は、1:20の比の型1の希釈剤である。
【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
実施例11〜13:
型4は、
C13,C15−オキソアルコール+7EO 5質量%
ヤシ油アルカリ金属セッケン 1.8質量%
ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アミン塩 8.25質量%
ペンタ−三リン酸ナトリウム 3質量%
クメンスルホネート 3.2質量%
水 78.75質量%
から成る洗浄剤である。
【0069】
【表11】

【0070】
【表12】

【0071】
【表13】

【0072】
結果より、本発明による組成物を使用した場合、尿のにおいの原因であるアンモニアの放出が、全ての洗浄剤と比較して明らかに減少することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのN−アルキル−チオリン酸トリアミドと、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性およびベタイン界面活性剤から成る群から選択された少なくとも1つの界面活性剤とを含有する組成物。
【請求項2】
N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.01〜75質量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.1〜50質量%である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.25〜20質量%である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
N−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)の(全体の)量が0.5〜10質量%である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの界面活性剤が0.01〜99質量%の(全体の)量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの界面活性剤が0.5〜50質量%の(全体の)量で存在する、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの界面活性剤が1〜25質量%の(全体の)量で存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの界面活性剤が1〜15質量%の(全体の)量で存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
1つまたは複数のN−アルキル−チオリン酸トリアミド(類)が:メチル−チオリン酸トリアミド、エチル−チオリン酸トリアミド、N−プロピル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ブチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ペンチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−ヘキシル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロヘキシルチオリン酸トリアミド、N−へプチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロヘプチル−チオリン酸トリアミド、N−オクチル−チオリン酸トリアミド(線状または分岐状)、N−シクロオクチル−チオリン酸トリアミドから成る群から選択されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも2つのN−アルキル−チオリン酸トリアミドを含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
5〜9の範囲内のpH値を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
6〜8のpH値を有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
以下の物質:非イオン性界面活性剤、染料、香料、酸、塩基、錯化剤、殺生剤、ヒドロトロープ、増粘剤の少なくとも1つを含有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物のための計量供給装置。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物の少なくとも2つの成分が、送出の時点になって初めて互いに混合される、請求項16記載の計量供給装置。
【請求項17】
一緒に合わせて請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物に相当する、少なくとも2つの同時にまたは連続して使用されるべき物質から成るパーツキット。
【請求項18】
請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物を有する洗浄装置。
【請求項19】
請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物、請求項15または16記載の計量供給装置、請求項17記載のパーツキットおよび/または硬質の表面および/または物質および/または内装品の洗浄のための請求項18記載の洗浄装置の使用。
【請求項20】
洗浄されるべき表面が、建築用タイル、化粧用タイル、大理石、セラミック、コンクリート、プラスチック、金属、エナメル、ガラスから成る群から選択されている、請求項19記載の使用。

【公表番号】特表2010−501654(P2010−501654A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525009(P2009−525009)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058240
【国際公開番号】WO2008/022925
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】