説明

洗浄方法

【課題】モータユニットに付着した塵埃や汚染物質を、ユニットが完成した状態でも、軸受などに対して影響を及ぼすことなく効果的に除去することが可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】超臨界状態よりも低い圧力のチャンバ内で、超臨界二酸化炭素を噴出する第1のノズルと、超臨界二酸化炭素を吸引回収する第2のノズルとが一体になったノズルユニットを、被洗浄物の被洗浄表面に対して相対的にトラバースさせ、被洗浄面に対して第1のノズルから超臨界二酸化炭素を噴出すると共に、第2のノズルから、超臨界二酸化炭素と共に被洗浄物の表面から剥離した粉粒体または被洗浄物の表面から溶解した汚染物質を吸引回収する。これにより軸受オイルの二次汚染することなく確実に洗浄できると共に、被洗浄物に大きな荷重を与えないので、変形を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い清浄度を必要とする部品の洗浄方法に関するものであり、特に記録ディスク駆動装置や、これに用いられるスピンドルモータや、さらにそれにその部品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置(以下HDDと略記)や光ディスク装置などは、記録密度の著しい向上が要求されており、そのために、ディスク面上の1ビット当たりの面積は急激に小さくなってきている。その結果、記録ディスクと信号の記録再生を行うためのヘッド素子との距離は、再生信号のエラーレートを抑制するために、年々小さな値しか許容できなくなってきており、ヘッド素子の浮上量は10nm以下になっている。
【0003】
ここで記録ディスクが回転中に、ヘッドと記録ディスク表面間にサブミクロンオーダーの塵埃粒子(パーティクル)が噛み込まれると、ヘッド素子が記録ディスクから浮上できなくなり、ヘッド素子及びそれを搭載するヘッドジンバルアセンブリがクラッシュする危険性が有る。この様なクラッシュの発生を防止するために、記録ディスク駆動装置内における空気の清浄度は、高いレベルに保持される必要が有る。
【0004】
また、スピンドルモータなどHDDの部品を組立中に、作業者の皮脂などがモータなどに付着して、それが記録ディスク搭載作業中にHDD内の別の部分に転写されたり、もしくはアウトガスの原因になったりして、記録ディスクやヘッド素子にたいするコンタミネーションとして残ってしまい、ディスク回転起動時にヘッドが貼り付いてしまうこともある。
【0005】
空気の清浄度を高いレベルに保持するには、記録ディスク駆動装置内を外気から遮断して塵埃の流入を阻止するように、HDDを密封するだけでは無く、記録ディスク装置内における塵埃粒子の発生を抑制し、またHDD内部品表面に皮脂などの付着/残存を防止する必要が有る。
【0006】
そのため、この様なモータの組立には、まず各部材毎に洗浄液により洗浄して、部材表面に付着した塵埃粒子や油脂(切削油、作業者の皮脂)などを取り除いた後、クリーンルームなどの洗浄度の高い環境下で、各部材を厳密な管理下(組立環境からの発塵、作業者の皮脂等)で、各部材を順次組立する必要が有る。
【0007】
しかしながら、単品部品は洗浄されても、組立途中の各種汚染を完全防止することは困難であり、モータ完成状態での塵埃抑制のために、ユニット状態(モータ完成状態)での洗浄が求められ始めた。
【0008】
ここで、ユニットでの洗浄方法としては例えば特許文献1に示すように、ロータハブとベースの開口部に撥水性部材を塗布して、モータユニット全体を洗浄液に浸漬して超音波洗浄を実施する方法がある。
【0009】
さらに特許文献2に示すように、昇華性物質(主にドライアイス)をキャリヤガスと洗浄液と共に被洗浄物に噴射し、昇華性物質が衝突する際のエネルギーと 昇華性物質が昇華する際のエネルギーを用いて洗浄するものがある。
【0010】
また、特許文献3に示すように、CO2ガスを75.2Kg/cm2、31.1℃以上に加圧加熱することで得られる超臨界流体を用いて、被洗浄物に付着した油脂、水分、有機溶剤、被洗浄物の表面に残存する粉粒体、剥離物等を洗い流すものがある。
【特許文献1】特開2006−314188号公報
【特許文献2】特開2003−211106号公報
【特許文献3】特開平10−24270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された方法のように、微小隙間に撥水性皮膜を形成しても、ユニット状態での洗浄には超音波洗浄が必須であり、撥水膜は容易に破壊され得る。撥水膜が部分的にでも破壊されると、モータ内部に洗浄液が侵入して、モータの軸受オイルが抜けてしまったり、モータ内部でのショート等の重欠陥が発生したりし得る。また剥離した撥水膜は塵埃となり2次汚染の要因となる。
【0012】
また洗浄液がロータとステータの隙間に入らないように、ロータとステータの隙間部分にOリングを嵌める方法も考えられるが、確実に洗浄水の侵入を防止するために複雑な治具をモータ1台毎に用意することが必要であり、製造コストの増加もさることながら、治具のメンテナンス不良などで不良率の増加要因ともなりうる。また、Oリングとモータ部品の接触や、Oリング保持治具自身の摺動部等が原理的に避けられず、かえって塵埃発生の要因が増えるという課題を有していた。
【0013】
また特許文献2に記載されたように、噴射ノズルからドライアイスをハブ等のモータ部品に高速に衝突させる事で、ハブに偏荷重が掛かり(モーメント荷重が掛かる)、その結果シャフト/ハブ圧入部にダメージが掛かり、圧入精度の劣化(たとえば軸方向面振れAxial Repetitive Run Out;以下ARROと略記)の発生や、軸受にダメージが加わりモータ性能に影響を及ぼすことになる。また、噴射ノズルから噴射されたドライアイスは部品表面を洗浄した後に、表面の汚染物質と共に飛散してしまい、2次汚染の原因になる。さらにドライアイスを噴射ノズルで噴射するまでに、供給管路内にてドライアイスが帯電してしまい、被洗浄物も帯電し、ドライアイスにて剥離した再び塵埃を吸着してしまい、洗浄効果を失うという課題を有していた。
【0014】
また特許文献3に記載されるように、気体と液体の中間形態である超臨界流体を洗浄剤として用いる方法は、単品部品の高度洗浄には非常に有効な手段といえるが、粘度が低く浸透性が良い超臨界流体に浸ける方法では、撥水剤を塗布してもわずかな隙間から浸透してしまう。ここで超臨界流体は液体に近い密度を持つ為、油などの非極性物質の溶解度が大きい。その為、僅かな隙間から軸受の油保持部まで浸透した超臨界流体は、軸受部の油までも溶解(油抜け)させてしまうという課題を有していた。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、モータを組み立てた後でも、部品の精度劣化を引き起こすことなく洗浄する事が可能な洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る洗浄方法は、超臨界流体を噴出する第1のノズルと、超臨界流体を吸引回収する第2のノズルとが一体になったノズルユニットを用意する工程と、被洗浄物の被洗浄表面に対してノズルユニットを相対的に移動可能なトラバース装置を用意する工程と、被洗浄物を所定の位置にセットする工程と、トラバース装置によってノズルユニットを被洗浄表面に対して相対的に移動させながら、被洗浄面に対して第1のノズルから超臨界流体を噴出すると共に、第2のノズルから、超臨界流体と共に被洗浄物の表面から剥離した粉粒体または被洗浄物の表面から溶解した汚染物質を吸引回収する工程と、洗浄物を所定位置から取り外す工程とを有するものである。
【0017】
これにより、超臨界流体を被洗浄物の意図する表面だけに噴出することが出来るので、超臨界流体がモータ内部等に侵入することを防ぐことが可能になる。またノズルから噴出した衝撃エネルギーにより、被洗浄物表面に付着した塵埃を除去することができる。また剥離した粉粒体または溶解した汚染物質をその場で吸引することが可能になるので、2次汚染の心配がない。さらに超臨界流体を噴出したときの衝撃を、超臨界流体を吸引回収することで緩和でき、精密部品/ユニットなどであっても変形などを生ずるおそれが無くなる。
【0018】
また、本発明に係る洗浄方法は、二酸化炭素を臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の条件によって、超臨界流体として第1のノズルから噴出させるようにしたものである。
【0019】
超臨界流体に二酸化炭素を使うことにより、(1)二酸化炭素は無極性分子なので被洗浄物に組立時に付着した油脂類を良く溶かすので洗浄効果が高い(2)二酸化炭素の臨界条件が、臨界温度が31℃、臨界圧力が7.4Mpaと比較的低圧であり、取り扱いが容易である、(3)操作温度が31℃〜90℃と、被洗浄物が通常の組立工程で経験する温度と同じなので、被洗浄物に対する特別な設計配慮が必要ない、(4)フロン系溶媒の様にオゾン層を破壊することがなく、また新たに温室効果ガスである二酸化炭素を発生させるわけではないので、再生して循環使用出来るので、環境負荷が少ない、(5)材料そのものが安価である、(6)不燃性、無害であり作業者に対して安全である、といった特徴をもつものである。
【0020】
さらに、本発明に係る洗浄方法は、第1から第2の発明に係る洗浄方法であって、被洗浄物を臨界圧力以下の圧力環境下にセットして、超臨界状態にある洗浄流体で洗浄を行うものである。
【0021】
これにより、被洗浄物は内部まで二酸化炭素などの気体には曝されるが、超臨界流体に浸漬されないので、例えば軸受内部の潤滑油などを溶解させることはない。すなわち超臨界流体とノズルを用いることでスポット的な超臨界流体洗浄が可能となり、超臨界流体がモータ内部等に侵入することを防ぐことが可能になる。また、第1のノズルより噴射された超臨界流体が、低圧のチャンバ内の被洗浄物に噴射される事で超臨界流体状態から気体に相変化して、気体として体積が膨張し、その際の膨張圧力によって、超臨界流体に溶解しない物質も除去する事が出来る。これにより、超臨界流体に溶解する汚染物質の抽出除去と、超臨界流体に溶解しない汚染物質の除去という2つの作業を同時に行うことが出来るので、設備コストの低減とタクトタイムの削減を図ることが出来る。
【0022】
また、本発明に係る洗浄方法は、チャンバ内圧力は、大気圧よりも高くしたものである。
【0023】
これにより、第2のノズルを大気圧程度に低い圧力環境下に接続することが容易になり、吸引回収用の専用ポンプをチャンバに設ける必要が無いにもかかわらず、第1のノズルから噴出した超臨界流体を確実に第2のノズルに吸引回収することが容易になる。
【0024】
次に本発明に係る洗浄方法は、第1のノズルの噴出口の先端はほぼ円環状をなし、第2のノズルは第1のノズルの噴出口の先端の周囲をほぼ環状に取り巻くように吸引口を形成したものである。
【0025】
これにより、第1のノズルから噴出した超臨界流体および被洗浄物の表面から剥離した粉粒体または前記被洗浄物の表面から溶解した汚染物質を確実に回収することができ、二次汚染をより確実に防止することが出来る。
【0026】
また、本発明に係る洗浄方法の被洗浄物は、少なくとも洗浄中に接地させるようにしたものである。
【0027】
これにより、第1,第2のノズル内や配管中を超臨界流体が高速に搬送される時の内部摩擦が引き起こす静電気による帯電を防止でき、一旦剥離した粉粒体等パーティクルの再付着を防止できる。
【0028】
さらに、本発明に係る洗浄方法の被洗浄物は、洗浄後にイオナイザにより除電するようにしたものである。
【0029】
これにより、洗浄中に生じた静電気を被洗浄物から除くことが出来、洗浄後にクリーンルーム内に飛散する小さな粉粒体を被洗浄物の表面に引き寄せることを防止できる。
【0030】
また、発明に係る洗浄方法は、回転中心軸周りにほぼ回転対称形状を成す被洗浄物の表面を洗浄するために、複数のノズルユニットを用意して、少なくとも洗浄中は複数のノズルユニットが回転中心軸に対してほぼ均等に配置されるように相対的に移動させるものである。
【0031】
これにより、モータのハブなどの被洗浄物の中心軸に対してほぼ均等位置に配置されるので、被洗浄物に対して偏荷重が掛からなくなる。その結果シャフトに対してハブの直角度が劣化して、ディスクを取り付けたときのディスクのARROが劣化することを防止することが出来る。
【0032】
また、本発明に係る洗浄方法は、第1のノズルから噴出される超臨界流体が被洗浄物の表面に与える噴出力よりも、第2のノズルから吸引される気流による吸引力が大きくしたものである。
【0033】
これにより、第1のノズルから噴出する超臨界流体と、被洗浄物の表面から剥離した粉粒体または被洗浄物の表面から溶解した汚染物質を確実に回収することが可能になる。
【0034】
さらに、ほん発明に係る洗浄方法は、ノズルユニットが被洗浄物に与える力を計測し、所定以上の荷重が被洗浄物に加わらないように第1のノズルにおける噴出状態または前記第2のノズルにおける吸引状態の内、少なくとも一方を制御するようにしたものである。
【0035】
これにより、過大な力が被洗浄物に加わることを抑制し、被洗浄物の変形を最小限にする事が出来る。
【0036】
また、発明に係る洗浄方法は、第1のノズルの先端は、第2のノズルの吸引口の先端よりも、被洗浄物の被洗浄表面から離れているようにしたものである。
これにより、超臨界流体、粉粒体または汚染物質を飛散させることなく確実に回収することが容易になる。
【0037】
さらに、発明に係る洗浄方法は、前記チャンバ内に前記部品を入れ、チャンバ内の大気を前記超臨界流体とほぼ同一組成で常温常圧のガスと置換し、しかる後に、チャンバ内圧力を上げるようにしたものである。
【0038】
これによりチャンバ内の大気中の水分を除去することが出来るので、被洗浄物を取り出す際に、チャンバ内での結露などを防止できる。
【0039】
また、発明に係る洗浄方法は、前記部品または前記チャンバ内の温度を0℃以上100℃以下に制御しながらチャンバ内圧力を減圧するようにしたものである。
【0040】
これによりチャンバから取り出したときに被洗浄物が結露してしまうことを防止できる。また万一チャンバ内に水分があっても、減圧時の断熱冷却で結露してしまうことを防止できる。また二酸化炭素のオイルへの溶解度は温度が高い程低いため、超臨界流体洗浄時にオイルに溶け込んだ二酸化炭素のオイルからの排出にも効果が高い。
【0041】
さらに、本発明に係る洗浄方法は、前記部品を出荷する前に、所定時間(好ましくは30分以上)、大気圧以下の所定気圧(このましくは絶対圧力として0.9kPa以下)まで下げるようにしたものである。
【0042】
これによりオイル中に溶融している二酸化炭素ガスが、急激に減圧により一気に気泡となって軸受隙間内で膨張してオイル漏れが生ずるのを防止できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、洗浄方法として油脂類を確実に除去することが出来る超臨界流体洗浄を、完成状態のモータなどの洗浄に適用することが可能になる。すなわち、被洗浄物に対する超臨界流体の噴射による変形などの悪影響を生ずることなく、油脂類や製品表面上の粉粒体などを確実に除去回収できる。
【0044】
また、噴射ノズルと吸引ノズルとを一体構造として被洗浄物上をトラバースする事でモータをユニット状態で効果的に洗浄する事が出来るので、モータの清浄度が飛躍的に向上できる。
【0045】
加えてモータの組立後に、ユニット状態でモータ表面を洗浄することが可能であるため、特にモータの外表面を構成する各部品については事前に洗浄しておく必要度が少なくなり、部材の入手、管理が非常に簡略化出来る。
【0046】
またモータ組立時に付着する塵埃に対する管理(部品そのものの洗浄度や組立時の清浄環境)も簡略化する事が出来るので、大幅なコストダウン(設備や品質管理面)が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に、本発明の一実施形態として、図面とともに詳細に説明する。
【0048】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗浄方法が適用されるスピンドルモータの断面図である。このスピンドルモータは、記録ディスク駆動用に用いられ、HDD等の記録ディスク装置の一部を構成している。
<スピンドルモータの構成>
スピンドルモータは、ステータ(静止部材)2を構成するベース100と、ロータ1を構成するアルミ製もしくは鉄合金系材料製のロータハブ101と、ロータ1をステータ2に対して回転自在に支持するための流体軸受装置を備える。
【0049】
流体軸受装置は、中空円筒状のスリーブ102、シャフト106と、スリーブ102の下部を閉鎖する円板状のスラストプレート105を有している。スリーブ102は鉄、鉄合金、銅、銅合金等の金属材料等によって形成され、ベース100に固定される。
【0050】
スリーブ102には、円板状のスラストプレート105が接着、カシメ、圧入、溶接等の方法により固定される。またスリーブ102のスラストプレート105が固定された反対側(図における上方)は開口しており、スリーブ102の開口端は流体軸受装置の内側に向かって傾斜しており、シャフト106との間隔が開口端から流体軸受装置に向かって狭くなる様に配置されているため、テーパシール部108として機能して潤滑剤としての潤滑油107をシャフト106とスリーブ102との間の隙間に安定して保持している。さらにスリーブ106の内周面側には、へリングボーン形状のラジアル動圧発生溝(図示せず)が軸線方向に並んで形成されている。なおラジアル動圧発生溝は、スパイラル形状であってよい。またスリーブ106の表面にはニッケルメッキ処理などの表面硬化処理などを行ってもよい。
【0051】
シャフト106は、金属材料で形成された直径2〜4mmの円筒状の外周面を有する部材であって、スリーブ106の内周面に回転可能な状態で挿入される。またシャフト106の下端には円板状のスラストフランジ109が溶接、圧入、接着、ビス締め等の方法で接合される。なおシャフト106は回転中心の軸として用いられることから、例えばSUS等の素材的には硬い材料が使われている。
【0052】
スラストフランジ109は、円板状の部材であって、上述のようにシャフト106の下端側(流体軸受装置の閉鎖側)にとりつけられている。そしてスラストフランジ109は、スリーブ102の段差部とスラストプレート105とで囲まれた空間に配置されている。スラストフランジ109の下面は、スラストプレート105に対向し、スラストフランジ109の上面は、スリーブ102に対向している。この対向面の少なくとも片側の面には、スラスト動圧発生溝が形成されている。
【0053】
スラストプレート105は、流体軸受装置の底面を覆うように取り付けられた円板上の部材であり、対向するスラストフランジ109の対向面の片側にはスラスト動圧発生溝(図示せず)が形成されている。なおスラスト動圧発生溝が形成される面は、本実施形態の構成に限定されるものではなく、軸方向に隙間を形成しつつ対向する面のいずれか一方に形成されていればよい。すなわちスラストフランジ109の下面あるいは、スラストフランジ109の上面にスラスト動圧発生溝が形成されていてもよい。
【0054】
また、ラジアル動圧発生溝およびスラスト動圧発生溝を含むシャフト106、スリーブ102の内周円筒部との隙間、およびスラストフランジ109とスリーブ102との間およびスラストフランジ109とスラストプレート105との間の隙間には潤滑油107が充填されている。
【0055】
ロータ1であるロータハブ101は、略お椀状の形状を有し、中心部分には貫通穴が形成されており、シャフト106が接着圧入、溶接等によって固定されている。ロータハブ101の内周には、略円環状のロータマグネット104が取り付けられており、ステータコア103に対して半径方向において対向している。ロータハブ101の上面には、ディスク搭載面が形成されている。
【0056】
ロータマグネット104は、ロータハブ101の内周面側において、円周方向に取り付けられている。一方、ベース100には、スリーブ102が接着、接着圧入、溶接等で固定されている。またそのスリーブ102とほぼ同軸状に、コイル110が巻回されたステータコア103が接着等の工法により固定されている。ロータマグネット104と、ステータコア103により回転磁界を発生し、ロータハブ101に回転力を付与する。
<超臨界二酸化炭素に関して>
超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態にあり、通常の気体、液体とは異なる性質を示すユニークな流体をいう。図9は二酸化炭素の状態図である。二酸化炭素は常温1気圧では気体であり、−80℃1気圧では固体(ドライアイス状態)になり、−20℃20気圧では液化することはよく知られている。ここで更に圧力を臨界圧力Pc(75.2kgf/cm2)以上、温度を臨界温度Tc(31.1℃)以上にすると、超臨界状態に相変化する。このとき、超臨界流体は、どこにでも忍び込む気体の性質(拡散性)と、成分を溶かし出す液体の性質(溶解性)を持ち、かつその密度を連続して大幅に変化できる特長を持つ。
<洗浄装置の構成>
図2に本実施例の洗浄方法を適用した洗浄装置のブロック図を示す。チャンバ50内には、被洗浄物を固定する洗浄用取り付け台3やノズルユニット24等を含む後述の本体部が設置されている。このノズルユニット24は超臨界二酸化炭素を被洗浄物に対して噴射すると共に汚染物質と共にそれを吸引回収する役割を有する。ここで昇圧装置43によって昇圧され、温度調整された二酸化炭素は超臨界状態となる。そして供給圧力制御装置17aによって超臨界二酸化炭素の圧力と流量が制御され、ノズルユニット24に供給される。二酸化炭素は、回収圧力制御装置17bによって回収吸収側の圧力と流量が制御されて、洗浄後回収される。さらに減圧装置41によって超臨界二酸化炭素の圧力が下げられて、分離槽42に送出される。この分離槽42は被洗浄物に付着していた汚染物質や塵埃を二酸化炭素から分離するためのものである。そして分離槽42からは清浄な二酸化炭素が送出されて、再び昇圧装置43に環流する。
【0057】
次に洗浄装置のうち、チャンバ50内本体部の概略構成を説明する。チャンバ50内本体部の平面図を図3(a)に、横断面図を図3(b)に示す。スピンドルモータのステータ2は、洗浄用取り付け台3に、クランプ4により固定される。洗浄用取り付け台3は、スピンドルモータの帯電を防ぐために、アース手段14によって接地されている。なおアース手段は被洗浄物がロータ1である場合はロータ1に接続されるのが望ましく、被洗浄物がステータ2の場合は、ステータ2に接続されるのが望ましい。
【0058】
本洗浄装置には、図4(a)(b)に示すようにスピンドルモータを洗浄するために超臨界二酸化炭素を噴射する第1のノズル25と、塵埃7(パーティクル)等の剥離した粉粒体や、溶解した汚染物質(コンタミネーション)等を、超臨界二酸化炭素と共に吸引回収する第2のノズル26とが一体になった、ノズルユニット24を備える。ノズルユニット24の詳細な構成に関しては後述する。この第1のノズル25は洗浄流体供給管5に接続され、第2のノズル26は吸引回収管6に接続されている。
【0059】
上記ノズルユニット24は、スピンドルモータに対して、水平方向、垂直方向、回転軸方向に移動/回転自在に設けられたトラバースユニット11,12とロータリーテーブル13とに固定されている。これにより被洗浄物の洗浄表面に対してノズルユニット24を相対的に移動させることが
可能である。
【0060】
また被洗浄物は回転中心軸周りにほぼ回転対称形状を成すため、被洗浄物の表面を洗浄するために複数の前記ノズルユニット24を用意して、少なくとも洗浄中は前記複数のノズルユニット24が回転中心軸に対してほぼ均等に配置され、上記トラバースユニット11,12およびロータリーテーブル13により相対的に移動させる。
【0061】
洗浄用取り付け台3は図示しない加温装置が取り付けられているとともに、弾性支持部15によって、洗浄装置基台18上に配設されている。この弾性支持部15には噴射によりスピンドルモータに加わる荷重を計測するための荷重センサ16が複数個配設されている。そして洗浄剤が噴射・吸引されたときの反力を計測して、圧力制御装置17にフィードバックされて噴射力と吸引力とを制御する。
<ノズルユニットの構成>
ノズルユニット24は、図4(b)に示すように、被洗浄物を洗浄するための超臨界二酸化炭素20を噴射する第1のノズル25と、一部が昇華した超臨界二酸化炭素と共に、剥離した塵埃7等の粉粒体や、溶解した汚染物質が混在する回収物質10を吸引回収する第2のノズル26とが一体になっている。
【0062】
ここで第1のノズル25を取り囲むように、第2のノズル26が配置されている。ここで、第2のノズル26の先端は、第1のノズル先端よりも更に突出して構成されている。また第1のノズル25は金属製又は導電性を有するフレキシブルチューブで構成されて、接地されている。
【0063】
また第1のノズル25の先端付近には、キャリヤガスを暖めて、超臨界二酸化炭素20が供給管内で詰まるのを防ぐ加温装置(図示せず)が装着されている。
【0064】
なお第1ノズルの直径は、1〜3mm程度にするのが良い。これによって第1ノズルから噴出する超臨界二酸化炭素の噴出力は1〜10kgf程度のオーダに抑制することが出来る。
<装置の動作と洗浄作用>
次に本洗浄装置の動作について図8に示す工程フロー図を用いて説明する。まず被洗浄物をチャンバ50内の洗浄用取り付け台3にクランプ4を用いて固定する。このとき、被洗浄物がアース手段14によって接地されるようにセッティングする。次にチャンバ50内の大気を二酸化炭素ガスによって置換する。この置換によって大気中の水分を除去すると共に、二酸化炭素以外の不要なガス成分を除去して、超臨界状態を維持しやすくするためである。必要に応じて被洗浄物をプリヒートする。これによって洗浄中の結露を防止するものである。なお被洗浄物は複数個同時にセットしても構わない。そしてチャンバ50内の圧力を臨界圧力以下まで高める。このときの上昇圧力は、供給される超臨界二酸化炭素の圧力の1/5〜4/5程度としかつ臨界圧力よりも低くすることが望ましい。これはチャンバ50内の圧力と供給される超臨界流体の圧力に差があることによって、超臨界流体は高速度(数10〜数100m/sec)で噴出されて、物理的な衝撃力によって、取れにくい塵埃を剥がす力を生ずるようになる。また気体状態の圧力であるため、圧力に反比例して体積は増大する。従って、衝突の衝撃に加えて、洗浄流体自体の膨張も急激に生ずるため、塵埃の剥離をより容易なものにする事が出来る。さらに、チャンバ50の内外とも圧力差があるので、第2のノズル26を外気側圧力と平衡(もしくは近づける)するように圧力調整するだけで、第1のノズル25から噴出した洗浄流体を確実に第2のノズル26から回収できるので、超臨界流体が被洗浄面以外に染み込んでいってしまうことを防止できる。
【0065】
次に複数本のノズルユニット24を被洗浄物(ここではスピンドルモータ)に対して相対的に移動して、回転軸周りにほぼ対象位置になるように配置させる。
【0066】
そして洗浄流体9を噴出すると共に、昇華物を汚染物質などと共に吸引回収する。この時超臨界二酸化炭素自身の溶解能力に加えて、超臨界圧力よりも低い圧力のチャンバ50内に噴出するので、超臨界流体は加速されて高速で被洗浄面に衝突してその衝撃力で付着物を剥がす。この時、超臨界流体の供給圧力を変動幅が数気圧相当の三角波状または間歇的になるように変化させると、洗浄流体の衝突による塵埃の剥離がより効果的に行える。
【0067】
またその後、必要に応じてイオナイザなどによる除電や加熱を行い、被洗浄物を取り出す。なお、被洗浄物を洗浄用取り付け台3に複数個取り付けている場合、順次洗浄を行えばよい。
【0068】
ここで、洗浄物をチャンバ50から取り出すために、チャンバ50を減圧する際には、チャンバ50内または被洗浄物の温度が0℃以上100℃以下、望ましくは20℃以上80℃以下になるように温度調整しながら行う。これにより減圧時の断熱膨張による温度低下を防止して、チャンバ50内から被洗浄物を取り出したときに、大気中の水分が凝着して結露することを防止できる。
【0069】
図10は各種気体の鉱油に対する飽和溶解度を示すブンゼン係数を示す。ブンゼン係数とは、気体が1気圧の時、溶液1mlに溶けるその気体の量を、その気体を0℃にした時の体積(ml)である。但し図10においてはそれを百分率で表示している。図10に示すように、二酸化炭素は温度が高いほど溶解しにくい。しかし空気は温度が高い方が溶解しやすいが、二酸化炭素に比較して、1桁ほど溶解度は小さい。流体軸受用のオイルはエステルオイルであるので数値に関して図10の値とは若干の差はあるが、傾向は変わらない。また溶解量はガスの分圧が高いほどそれに比例して高くなる。したがって、被洗浄物が流体軸受装置を含むものである場合、チャンバ50から被洗浄物を取り出す前に、チャンバ50内のガスを通常の空気に置換して、その状態で更に大気圧よりも低い圧力(望ましくは絶対圧力として0.9kPa以下)にして、所定時間(望ましくは30分以上)保持することが望ましい。さらにはそのときの温度も高温(40〜100℃程度)にする事が好ましい。超臨界流体洗浄時にチャンバ50内は高圧の二酸化炭素ガスで満たされるので、オイル内に二酸化炭素が溶解してしまい、そのまま出荷すると、輸送途中などで気圧が低い環境に曝されるとオイル内の二酸化炭素が気泡となって軸受内に滞留してしまい、その結果オイルが軸受シール部から漏れ出てしまうことが考えられる。出荷後のこのような現象を防止するために、出荷前に温度を高めて減圧環境下に曝すことで、余分な二酸化炭素ガスを出来るだけ早期に排出しておくことが出来、市場でのトラブル発生確率を低減することが出来る。
【0070】
被洗浄物30の表面に付着した汚れは剥離、または超臨界二酸化炭素に溶解され、被洗浄物から除去(洗浄)される。被洗浄物30から除去された汚れは、一部が昇華した超臨界二酸化炭素と共に第2のノズル26により吸引回収される。したがって洗浄流体9や剥離した塵埃や汚染物質が第1ノズルの周囲に飛散しないので、洗浄後に被洗浄物の二次汚染を生ずる可能性は無い。さらに超臨界二酸化炭素そのものは31℃以上でありしかも使用量も少ないので、チャンバ50内に噴出して気圧が下がって断熱冷却されても被洗浄物に対して熱衝撃を生ずる心配はない。ただし、洗浄時間が長くなる場合は、被洗浄物の温度が下がりすぎて、洗浄後に空気中の水分を吸収して結露してしまう可能性が生ずる。これを防止するために、事前に被洗浄物を加熱しておくか、洗浄中、もしくは洗浄後に被洗浄物を加熱しても良い。
【0071】
本実施の形態によれば、ノズルユニット24は被洗浄物30に対して相対的に移動可能であるため、被洗浄物30の表面をくまなく洗浄出来る。また第2のノズル(吸引ノズル)26は、第1のノズル(噴射ノズル)25と一体となって設けられているため、噴射された超臨界二酸化炭素により剥離または溶解した汚染物質は、第2のノズル26により直ちに吸引により回収される。そのため剥離した汚染物質は、噴射により周囲環境に拡散されるがなく、2次汚染を防止する事ができる。
【0072】
また第1のノズル25と第2のノズル26は前述の通り一体化し、噴射と吸引をしている。これにより被洗浄物に加わる噴射力を吸引力により相対的に弱める事が出来きるので、超臨界二酸化炭素を噴射する際に被洗浄物に加わる応力を軽減する効果も併せ持つ。また噴射力と吸引力は、洗浄用取り付け台3を弾性支持する弾性支持部15に配設された荷重センサ16より測定され、圧力制御装置17にフィードバックされ、被洗浄物に加わる荷重を常に一定に制御することが可能になる。これらの構成により従来例が抱えていた、超臨界二酸化炭素の噴射時の荷重による被洗浄部物(モータ)の組み立て精度の劣化や軸受へのダメージを防ぐことが出来る。なお一つのノズル当たり噴射力よりも吸引力が若干大きめ(1N〜50N程度)に設定すると、ノズル25から噴射された超臨界流体は確実に第2のノズル26によって回収され、しかも部品を変形させてしまうと言った不具合も発生しない。
【0073】
さらに、複数のノズルユニット24を回転軸に対してほぼ均等にバランスを取るように配置されているので、噴射力による偏荷重や、偏荷重によるロータハブ101のシャフト106に対する圧入精度の劣化や軸受へのダメージを防ぐことができる。
【0074】
また超臨界に酸化炭素が供給管内を搬送される際に、相互摩擦および供給管路を構成する配管内壁との摩擦によって静電気を発生して帯電する結果、洗浄後の被洗浄物に塵埃が再付着してしまい良好な洗浄効果が得られなくなる場合があった。しかし本実施の形態では、被洗浄物、被洗浄物が固定された洗浄用取り付け台3、第1のノズル25が接地されているため帯電する事が無く、かつ剥離した塵埃は直ちに回収されるため、良好な洗浄効果が得られる。なお、それでも帯電が完全に抑制できない場合は、洗浄後に出来るだけ早い時点でイオナイザによる除電を施せばよい。これにより静電気による微粒子吸着を最小限に出来る。
【0075】
また、洗浄装置の洗浄用取り付け台3に加温装置を持つとともに、噴射ノズルの先端にキャリヤガスを加温するための加温装置(図示せず)をそなえている。これにより被洗浄物が洗浄後に結露すると言う問題を解決する事が出来る。
【0076】
<第1実施形態の変形例>
以上、本発明の実施の形態1について説明したが、本発明は上記実施の形態1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0077】
(A)
上記実施の形態1の説明において、被洗浄物を回転軸に平行な方向(垂直方向)から洗浄するための装置に適用したものを用いたが、変形例として、図5に示すように、回転軸に直交する方向(水平方向)から超臨界二酸化炭素を噴射して洗浄する事も可能である。さらに上記実施の形態1の説明とこの変形例とを組み合わせて併せ持つように、ノズルユニット基部にさらに電磁回転機構を設けて、垂直方向も水平方向も任意に選択しうるようにすることも可能である。
【0078】
(B)
上記説明においては被洗浄物として、軸受部も完成したモータユニット(スピンドルモータ)としたものであるが、図5、図6に示すようにロータハブ101等を単品状態で洗浄する事も可能である。
【0079】
(C)
上記説明においては被洗浄物として、軸受部も完成したモータユニット(スピンドルモータ)としたものであるが、図7に示すようにベース2を単品状態で洗浄する事も可能である。ベース2のように、被洗浄物に対する偏荷重を考慮する必要が無い場合や、被洗浄物が回転中心軸周りに軸対称形状で無い場合は、ノズルユニット24は複数個を均等に配置する必要はなく、単独のノズルユニット24でも実施可能である。
【0080】
(D)
上記説明において、第1のノズルからは超臨界二酸化炭素のみを噴出する構成を説明したが、本願はこれに限定されるものではない。たとえば、第1のノズルには、超臨界二酸化炭素を供給する超臨界二酸化炭素供給管と、その周囲に、キャリヤガスとして二酸化炭素または空気を供給するキャリヤガス供給管が圧力制御装置から同軸状に配置連結されている構成としてもよい。
【0081】
キャリヤガスがキャリヤガス供給管を高速で流れる事によって発生する負圧により、超臨界二酸化炭素は超臨界二酸化炭素供給管から高速で吸い出される。このとき超臨界二酸化炭素は急激に生ずる断熱膨張により、冷却されて、ドライアイスペレットになる。
【0082】
そしてドライアイスペレットは生成と共に加速されてキャリヤガスと混合された洗浄流体となり、被洗浄物の表面に付着した塵埃や汚染物質に向かって高速(数10〜数100m/sec)で噴射される。第1のノズルから噴射されたドライアイスペレットが衝突する際の衝突エネルギーと、ドライアイスペレットが昇華する際に伴う膨張圧力によって、被洗浄物の表面に付着した汚れは剥離、または液化二酸化炭素に溶解され、被洗浄物から除去(洗浄)される。被洗浄物から除去された汚れは、一部が昇華したドライアイスと共に第2のノズルにより吸引回収される。したがって洗浄流体9や剥離した塵埃や汚染物質が飛散しないので、洗浄後に二次汚染を生ずる可能性は無い。さらにドライアイスそのものは温度が低いが、衝突エネルギーによって瞬時に昇華してしまうので、被洗浄物を過度に冷却して、熱衝撃を生ずる心配はない。
【0083】
(E)
なお、上記実施の形態の説明において、洗浄装置本体は圧力を維持するためのチャンバ内に接地することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば通常のクリーンルーム環境内で超臨界流体の万一の飛散による凍傷などの事故を防ぐためのパーティションを設けたエリア内で作業しても問題はない。
【0084】
(F)
なお上記における説明において、図1に示すモータを例にあげたが本発明の適用しうる範囲はこれに限定されるものではなく、他のいかなる形態のモータにも適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明にかかる洗浄方法は、装置が完成又は半完成状態であっても、装置の形状精度や性能を劣化させることなく、確実に洗浄を行うことが可能であり、特に高い清浄度を必要とするHDD等の情報関連装置、半導体関連素子、映像デバイスなどの洗浄方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】スピンドルモータの横断面図
【図2】本発明の実施の形態1の洗浄装置のブロック図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における洗浄方法を適用した洗浄装置の平面図、(b)本発明の実施の形態1における洗浄方法を適用した洗浄装置の横断面図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における洗浄方法を適用した洗浄装置のノズルユニットとトラバース装置の関係を示す模式図、(b)本発明の実施の形態1における洗浄方法を適用した洗浄装置のノズルユニットの断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態1の変形例(A)における洗浄方法を適用した洗浄装置の平面図、(b)本発明の実施の形態1の変形例(A)における洗浄方法を適用した洗浄装置の横断面図
【図6】本発明の実施の形態1の変形例(B)における洗浄方法を適用した洗浄装置の横断面図
【図7】本発明の実施の形態1の変形例(C)における洗浄方法を適用した洗浄装置の横断面図
【図8】本発明の実施の形態1における洗浄方法の工程フロー図
【図9】二酸化炭素の状態図
【図10】鉱油に対する各種気体の飽和溶解度線図
【符号の説明】
【0087】
1 ロータ
2 ステータ
3 洗浄用取り付け台
4 クランプ
5 洗浄流体供給管
6 吸引回収管
7 塵埃
9 洗浄流体
10 回収物質
11、12 トラバースユニット
13 ロータリーテーブル
14 アース手段
15 弾性支持部
16 荷重センサ
17 圧力制御装置
17a 供給圧力制御装置
17b 回収圧力制御装置
18 洗浄装置基台
20 超臨界二酸化炭素
24 ノズルユニット
25 第1のノズル
26 第2のノズル
30 被洗浄物
41 減圧装置
42 分離装置
43 昇圧装置
50 チャンバ
100 ベース
101 ロータハブ
102 スリーブ
103 ステータコア
104 ロータマグネット
105 スラストプレート
106 シャフト
107 潤滑油
108 テーパシール部
109 スラストフランジ
110 コイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体を噴出する第1のノズルと、前記超臨界流体を吸引回収する第2のノズルとが一体になったノズルユニットを用意する工程と、
被洗浄物の被洗浄表面に対して前記ノズルユニットを相対的に移動可能なトラバース装置を用意する工程と、
前記被洗浄物を所定の位置にセットする工程と、
前記トラバース装置によって前記ノズルユニットを前記被洗浄表面に対して相対的に移動させながら、前記被洗浄面に対して前記第1のノズルから前記超臨界流体を噴出すると共に、前記第2のノズルから、前記超臨界流体と共に前記被洗浄物の表面から剥離した粉粒体または前記被洗浄物の表面から溶解した汚染物質を吸引回収する工程と、
前記洗浄物を所定位置から取り外す工程と
を有する洗浄方法。
【請求項2】
前記超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度以上でかつ臨界圧力以上にしたものであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記超臨界流体の臨界温度以上で、かつ前記超臨界流体の臨界圧力以下の環境を維持するチャンバ内に前記部品をセットし、前記部品に対して前記超臨界流体を噴出することを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記チャンバ内圧力は、大気圧よりも高くすることを特徴とする請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記第1のノズルの噴出口の先端はほぼ円環状をなし、前記第2のノズルは前記第1のノズルの前記噴出口の前記先端の周囲をほぼ環状に取り巻くように吸引口を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記被洗浄物は、少なくとも洗浄中は接地させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記被洗浄物は、洗浄後にイオナイザにより除電することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項8】
回転中心軸周りにほぼ回転対称形状を成す被洗浄物の表面を洗浄するために、複数の前記ノズルユニットを用意して、少なくとも洗浄中は前記複数のノズルユニットが前記回転中心軸に対してほぼ均等に配置されるように相対的に移動させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記第1のノズルから噴出される前記超臨界状態の二酸化炭素が、前記被洗浄物の表面に与える噴出力よりも、前記第2のノズルから吸引される気流による吸引力が大きいことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記ノズルユニットが前記被洗浄物に与える力を計測し、所定以上の荷重が前記被洗浄物に加わらないように、前記第1のノズルにおける噴出状態または前記第2のノズルにおける吸引状態の内、少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記第1のノズルの前記先端は、前記第2のノズルの吸引口の先端よりも、被洗浄物の前記被洗浄表面から離れていることを特徴とする請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記チャンバ内に前記部品を入れ、チャンバ内の大気を前記超臨界流体とほぼ同一組成で常温常圧のガスと置換し、しかる後に、チャンバ内圧力を上げることを特徴とする、請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項13】
前記部品または前記チャンバ内の温度を制御しながらチャンバ内圧力を減圧することを特徴とする請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項14】
前記部品を出荷する前に、所定時間、大気圧以下の所定気圧まで下げる事を特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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