説明

洗浄装置の被洗浄体送り出し装置

【課題】構造が簡単で、多段に積重ねられた被洗浄体を1つ、1つ引き離す引き離し作業が迅速に行なえる優れた作業性を確保する。
【解決手段】被洗浄体支持部7a,7bを上下二段の落下用回転体19と待機用回転体21とで構成し、下位の落下用回転体19は受面19bにより積重ねられた最下位の被洗浄体3を支持する一方、支持解除用切欠部19aによって被洗浄体受部9へ向け落下させる。上位の待機用回転体21の待機支持面21bは前記受面19bによって支持された最下位と次に位置する二番目の被洗浄体3の間に入り込み最下位の被洗浄体3が支持解除用切欠部19aから落下するまで仮支持を続ける。待機用回転体21の支持解除用切欠部21aは最下位の被洗浄体3が落下すると支持部位Pに回動してくる落下用回転体19の受面19bに対して二番目の被洗浄体3の支持を解除し落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段に積重ねられた被洗浄体を1つ1つ引き離して洗浄装置へ送り出す洗浄装置の被洗浄体送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に養鶏場の卵は卵容器に入れて出荷され出荷後はそれを回収して洗浄した後、繰返し使用される。
【0003】
卵容器は板状に形成された容器本体に対して卵を入れる窪み部が縦・横に整列して設けられた形状となっていて、回収時は多段に積重ねられた状態で回収される。
【0004】
多段に積重ねられた卵容器は、洗浄装置へ送り出す時に1つ1つ引き離す必要があるため、吸収装置等の吸引手段を用いることが一般的な手段となっている。
【0005】
その外にも特許文献1に示すようにトレー供給移動装置によってトレーを1つ1つ検査位置まで移動させる手段が知られている。
【特許文献1】特開2005−153928号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積重ねられた卵容器等の被洗浄体を1つ1つ引き離す前者の吸引手段は真空引きするためコンプレッサ等の吸引装置や吸引部並びにそれらを制御する制御部等が必要となり装置全体が大型化し複雑な構造を招く。しかも、吸引部は吸引位置及び送り出し位置へ回動することで行なわれるため、1つ1つ引き離してから送り出すまでの時間がかかり作業性の面でも望ましくなかった。
【0007】
また、後者の手段にあっては、トレー専門カート、引き出し用ガイド、引き出し用の爪を有するトレー移動部が必要となる等大がかりな装置となる。
【0008】
そこで、本発明にあっては構造が簡単で1つ1つの引き離し作業が迅速に行なえる作業性に優れた洗浄装置の被洗浄体送り出し装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、被洗浄体を所定の高さに積重ねてセットする被洗浄体セット部と、前記被洗浄体セット部に積重ねられた最下位の被洗浄体を支持する対向配置された4箇所の被洗浄体支持部と、前記被洗浄体支持部によって支持が解除され落下した被洗浄体を受ける被洗浄体受部とを有し、前記4箇所に配置された被洗浄体支持部を上下2段の落下用回転体と待機用回転体の組合せ構造とし、前記下位の落下用回転体は、回転体の一部分がカットされた落下用の支持解除用切欠部と被洗浄体を受ける半月状の受面が前記被洗浄体の支持部位に対して交互に臨むよう回転自在に支持される一方、前記上位の待機用回転体は、前記落下用回転体と同期して回転し前記被洗浄体の支持部位に対して交互に臨む回転体の一部分がカットされた落下用の支持解除用切欠部と半月状の待機支持面とからなり、前記半月状の待機支持面は落下用回転体の受面で受けた最下位と次に位置する二番目の被洗浄体の間に入り落下用回転体が最下位の被洗浄体を落下させるまで仮支持を続けると共に、支持解除用切欠部は最下位の被洗浄体が前記支持解除用切欠部から落下した後、続いて被洗浄体の支持部位へ回動してくる落下用回転体の受面へ向けて二番目の被洗浄体の支持を解除し落下させる形状となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被洗浄体支持部を落下用回転体と待機用回転体の組合せ構造としたため装置全体を簡単な構造にすることができる。
【0011】
一方、上下二段に構成された落下用回転体と待機用回転体が同期して回転することで、多段に積重ねられた最下位の被洗浄体は被洗浄体支持部の待機用回転体の待機支持面で支持された後、支持解除用切欠部を介して落下し下位の落下用回転体の受面によって支持することができる。この時、上位の待機用回転体の待機支持面は最下位と次に位置する二番目の被洗浄体の間に入り込み最下位の被洗浄体が支持解除用切欠部を介して被洗浄体受部に落下するまで仮支持を続けることができる。
【0012】
仮支持された二番目の被洗浄体は最下位の被洗浄体が落下すると支持部位に回動してくる落下用回転体の受面に対して二番目の被洗浄体を支持解除用切欠部によって支持を解除し落下させることができる。以下、前記動作を繰返すことで、多段に積重ねられた被洗浄体を1つ1つ迅速に落下させることができると共に、作業性の向上が図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1は、前記2段の落下用回転体と待機用回転体の内、少なくても待機用回転体を、最下位の被洗浄体と次に位置する二番目の被洗浄体の隙間より薄い板厚の形状とし、多段に積重ねられた最下位と次に位置する二番目の被洗浄体の間に確実に入り込めるようにする。
【0014】
第2は、前記被洗浄体受部に、落下した被洗浄体を洗浄装置へ向けて搬送する搬送装置を備えることで、落下した被洗浄体を迅速に洗浄装置へ向けて送り出せるようにする。
【0015】
第3は、前記落下用回転体と待機用回転体の間で、前記待機用回転体の外周裏面に、重なり合った被洗浄体同志を引き離す引き離し部材を設けることで、強く重なり合った被洗浄体同志を確実に分離し、最下位の被洗浄体を確実に落下させることができるようにする。
【実施例】
【0016】
以下、図1乃至図9の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0017】
図1は本発明にかかる被洗浄体送り出し装置の概要平面図を示している。被洗浄体送り出し装置1は、卵容器等の被洗浄体3を所定の高さに積重ねてセットする被洗浄体セット部5と、被洗浄体セット部5にセットされた最下位の被洗浄体3を支持する対向配置された4箇所の被洗浄体支持部7a,7bと、被洗浄体支持部7a,7bによって支持が解除され落下した被洗浄体3を受ける被洗浄体受部9とを有する構造となっている。
【0018】
被洗浄体3は図5に示す如くこの実施形態では養鶏場から卵を出荷する時に使用される卵容器となっていて板状に形成された容器本体3aに対して卵を入れる窪み部3bが縦・横に整列して設けられ、使用後は回収して繰返し使用される。
【0019】
被洗浄体セット部5は、図1に示す如く被洗浄体3の縦,横の寸法と同じに形成された矩形の枠体11に、前記した被洗浄体支持部7a,7bと案内ガイド体13がそれぞれ設けられている。
【0020】
案内ガイド体13は、矩形に形成された前記枠体11の前後(図1上下)に各1箇所と、左右(図1左右)に各2箇所ずつそれぞれ設けられている。
【0021】
この実施形態の案内ガイド体13は上方が開放された一対の対向し合うロッド状に作られ、被洗浄体セット部5に多段に積重ねてセットされた被洗浄体3を所定の高さに揃えて前後・左右に位置ずれを起こすことなく正しく保持する一方、多段に積重ねられた状態のまま正確に下降させるガイド規制壁として機能している。
【0022】
洗浄体支持部7a,7bは、図1,上2箇所が第1、第2の洗浄体支持部7a、図1下2箇所が第3、第4の洗浄体支持部7bとなっていて、図3に示すように上下の軸受15によって回転自在に両端支持された回転軸17に上下2段の落下用回転体19と待機用回転体21がそれぞれ装着された組合せ構造となっている。
【0023】
第1〜第4の洗浄体支持部7a,7bの各回転軸17には、その下部に1つ又は2つのスプロケット23が設けられ、図1に示す如く第1の駆動モータM1からの回転動力がチェーン25を介して伝達されることで、各洗浄体支持部7a,7bの落下用回転体19と待機用回転体21が同期して回転することが可能となっている。
【0024】
この時の第1、第2の洗浄体支持部7aの回転方向は図1に示す如く左回転と右回転、第3、第4の洗浄体支持部7bは右回転と左回転となっていて、互いに打ち消し合う回転の向きによって搬送作用が生まれることなく被洗浄体3の支持が可能となっている。
【0025】
下位の落下用回転体19は、図4に示す如く円板状に形成され、その一部分が120°にわたってカットされた落下用の支持解除用切欠部19aと残りの240°の領域となる半月状の受面19bとからなっている。
【0026】
図6は4箇所に配置された落下用回転体19のみを示したもので、支持解除用切欠部19aが被洗浄体3を支持する支持部位Pに臨み平行線X上に揃った時に被洗浄体3の支持を解除し落下させることが可能となっている。
【0027】
また、半月状の受面19bが2点鎖線で示す如く支持部位Pに臨む時に被洗浄体3の受面領域(240°の領域)にわたって支持し続けることが可能となっている。
【0028】
上位の待機用回転体21は図4に示す如く円板状に形成され板厚αは図5に示すように積重ねられた被洗浄体3と被洗浄体3の隙間dより薄い板厚に作られているが、多段に積重ねられた被洗浄体3を支持できる十分な強度の面剛性を備えた材質で作られている。
【0029】
上位の待機用回転体21には、円板状の一部分が120°にわたってカットされた落下用の支持解除用切欠部21aと残りの240°の領域となる半月状の待機支持面21bとからなり、待機用回転体21の外周裏面には被洗浄体引き離し部材23が設けられている。
【0030】
被洗浄体引き離し部材23は、上位の待機用回転体21と落下用回転体19の間に位置し、多段に積重ねられた重みで強く重なり合って落下せずに残る最下位の被洗浄体3に作用し次に位置する二番目の被洗浄体3から引き離しを行なう機能を備えている。
【0031】
図7は4箇所に配置された待機用回転体21のみを示したもので、支持解除用切欠部21aが被洗浄体3を支持する支持部位Pに臨み平行線上に揃った時に被洗浄体3の支持を解除し落下させることが可能となっている。半月状の待機支持面21bは2点鎖線で示す如く支持部位P2臨む時に被洗浄体3の支持領域(240°の領域)にわたって支持し続けることが可能となっている。
【0032】
落下用回転体19と待機用回転体21の関係は、図9に示す如く0°〜360°回転する内、0°の時、120°の領域にわたってカットされた落下用回転体19の支持解除切欠部19aと待機用回転体21の支持解除用切欠部21aは0°を通る中心線Y上に対して山形状となる上下に組合せセットされた構造となっている。これにより、残りの240°の領域の一方は半月状の受面19b、他方は半月状の待機支持面21bとなり、上位の待機用回転体21の待機支持面21bは、支持部位Pに臨み支持部位Pを通過するまで被洗浄体3の支持が可能となっている。
【0033】
図9は4箇所ある内、1箇所の落下用回転体19と待機用回転体21の0°の時から360°まで回転した時の各動作図を示している。これによると、落下用回転体19と待機用回転体21が60°の時、最下位の被洗浄体3は待機用回転体21から落下用回転体19の受面19bに落下する回転位置となっている。以下、150°の時、最下位の次に位置する二番目の被洗浄体3の間に待機用回転体21の待機支持面21bが入り込む仮支持回転位置、240°の時、引き離し部材23により被洗浄体3を下方へ向けて強制的に引き離す引き離し回転位置、360°の時、0°と同じとなり前記動作を繰返すようになっている。
【0034】
一方、被洗浄体受部9は、図1に示すように第2の駆動モータM2によって回転動力が与えられる駆動スプロット25と従動スプロット27とに搬送チェーン29が平行に掛け回された搬送装置となっていて、落下した被洗浄体3を図外の洗浄装置へ向け強制的に迅速に搬送が行なわれるようになっている。
【0035】
この場合、被洗浄体受部9は必ずしも搬送チェーンタイプの搬送装置に特定されず滑り台タイプであってもよい。
【0036】
このように構成された被洗浄体送り出し装置によれば、上下二段に構成された落下用回転体19と待機用回転体21が同期して回転することで積重ねられた最下位の被洗浄体3を上位の待機用回転体21の待機支持面21bで受けた後、支持解除用切欠部21aを介して下位の落下用回転体19の受面19bに落下させることができる。この時、上位の待機用回転体21の待機支持面21bは最下位と次に位置する二番目の被洗浄体3の間に入り込み最下位の被洗浄体3が支持解除用切欠部19aから落下するまで仮支持を続ける。この時、強く重なり合って落下しない場合、引き離し部材23が作用し確実に落下させる。最下位の被洗浄体3が被洗浄体受部9に落下すると待機用回転体21に仮支持された二番目の被洗浄体3は支持部位Pに回動してくる落下用回転体19の受面19bに対して二番目の被洗浄体3を支持解除用切欠部19aによって支持を解除し落下させる動作を繰返すことで、被洗浄体3の送り出しを行なう。
【0037】
これら一連の作業において、4箇所に配置された被洗浄体支持部7a,7bの回転によって多段に積重ねられた被洗浄体3を1つ1つ引き離し確実に迅速に落下させることができるようになる。また、被洗浄体支持部を落下用回転体19と待機用回転体21の二段の組合せによって構造を簡単にできる。
【0038】
なお、この実施形態では被洗浄体を卵に入れる卵容器として説明したが、必ずしも被洗浄体でなくてもよく、積重ね可能な容器であればどのようなものであってもよい。また、洗浄用だけではなく、新しく積重ねられたものを1つ1つ送り出す時に使用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる被洗浄体送り出し装置の概要平面図。
【図2】図1A矢印からみた概要説明図。
【図3】一箇所の被洗浄体支持部を示した概要斜視図。
【図4】被洗浄体支持部の落下用回転体と待機用回転体を示した分解概要斜視図。
【図5】被洗浄体を積重ねた状態を示す一部分の概要説明図。
【図6】4箇所の落下用回転体のみを示した説明図。
【図7】4箇所の待機用回転体のみを示した説明図。
【図8】0°の時の4箇所の被洗浄体支持部の概要平面図。
【図9】落下用回転体と待機用回転体の0°から360°まで回転した時の動作説明図。
【符号の説明】
【0040】
3 被洗浄体
5 被洗浄体セット部
7a,7b 被洗浄体支持部
9 被洗浄体受部
19 落下用回転体
19a,21a 支持解除用切欠部
21 待機用回転体
21b 待機支持面
23 引き離し部材
29 搬送チェーン(搬送装置)
P 支持部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄体を所定の高さに積重ねてセットする被洗浄体セット部と、前記被洗浄体セット部に積重ねられた最下位の被洗浄体を支持する対向配置された4箇所の被洗浄体支持部と、前記被洗浄体支持部によって支持が解除され落下した被洗浄体を受ける被洗浄体受部とを有し、
前記4箇所に配置された被洗浄体支持部を上下2段の落下用回転体と待機用回転体の組合せ構造とし、前記下位の落下用回転体は、回転体の一部分がカットされた落下用の支持解除用切欠部と被洗浄体を受ける半月状の受面が前記被洗浄体の支持部位に対して交互に臨むよう回転自在に支持される一方、前記上位の待機用回転体は、前記落下用回転体と同期して回転し前記被洗浄体の支持部位に対して交互に臨む回転体の一部分がカットされた落下用の支持解除用切欠部と半月状の待機支持面とからなり、前記半月状の待機支持面は落下用回転体の受面で受けた最下位と次に位置する二番目の被洗浄体の間に入り落下用回転体が最下位の被洗浄体を落下させるまで仮支持を続けると共に、支持解除用切欠部は最下位の被洗浄体が前記支持解除用切欠部から落下した後、続いて被洗浄体の支持部位へ回動してくる落下用回転体の受面へ向けて二番目の被洗浄体の支持を解除し落下させる形状となっていることを特徴とする洗浄装置の被洗浄体送り出し装置。
【請求項2】
前記2段の落下用回転体と待機用回転体の内、少なくても待機用回転体は、最下位の被洗浄体と次に位置する二番目の被洗浄体の隙間より薄い板厚の形状となっていることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置の被洗浄体送り出し装置。
【請求項3】
前記被洗浄体受部は、落下した被洗浄体を洗浄装置へ向けて搬送する搬送装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置の被洗浄体送り出し装置。
【請求項4】
前記落下用回転体と待機用回転体の間で前記待機用回転体の外周裏面に、重なり合った被洗浄体同志を引き離す引き離し部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄装置の被洗浄体送り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−68905(P2008−68905A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250758(P2006−250758)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(506314427)株式会社 オーディエム (3)
【出願人】(396013329)株式会社クレオ (12)
【Fターム(参考)】