説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】気泡を生じさせた液体を射出して固体表面を洗浄する際の洗浄効率をより向上させた洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】液体を導入する液体導入部11と、液体導入部より導入される液体に気体を混入する気体導入部12と、流断面積を狭める絞り部と気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とからなり、気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる末広ノズル部14と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出口17とを有することを特徴とする洗浄ノズル10と、洗浄に用いる液体を洗浄ノズルの液体導入部に供給する液体供給手段と、液体導入部より導入される液体に気体を混入するために、洗浄ノズルの気体導入部に気体を導入する気体供給手段と、を有する洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の固体表面を洗浄するのに有用な洗浄装置及び洗浄方法に関し、特に、洗浄対象物に直接射出する液体におけるボイド率を高く維持できる所定の形状を有する洗浄ノズルを用いた洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面に付着した汚染物質を除去するために、水、界面活性剤、有機溶剤等の液体を洗浄液として用い、これを洗浄面に射出して洗浄を行うことが一般に行われていた。しかし、水のみの洗浄では洗浄効果が弱く、界面活性剤や有機溶剤等を使用すると洗浄効果は向上するものの洗浄廃液の処理等が必要となり、環境負荷が高いものであった。
【0003】
そこで、界面活性剤や有機溶剤等を使用することなく、洗浄効果を高める方法として、空洞現象により発生させた微細気泡を含む水を被洗浄対象物に噴射して洗浄する洗浄方法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。この洗浄方法は、断面積が急激に広がる部分を持つノズルを用い高圧水を供給することにより行われるものであった。
【特許文献1】特開平5−317815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような空洞現象(キャビテーション)により気泡を発生させて液体を射出する洗浄装置においては、液体に含まれる気泡のボイド率が10%程度が限界であり、より洗浄効果の高い洗浄装置が求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、気泡を生じさせた液体を射出して固体表面を洗浄する際の洗浄効率をより向上させ、さらに、低コストで、洗浄を確実に行うことができる洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄装置は、液体を導入する液体導入部と、液体導入部より導入される液体に気体を混入する気体導入部と、流断面積を狭める絞り部と気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とからなり、気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる末広ノズル部と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出口とを有する洗浄ノズルと、洗浄に用いる液体を洗浄ノズルの液体導入部に供給する液体供給手段と、液体導入部より導入される液体に気体を混入するために、洗浄ノズルの気体導入部に気体を導入する気体供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の他の洗浄装置は、液体を導入する液体導入部と、液体導入部より導入される液体に気体を混入する自給式の気体導入部と、流断面積を狭める絞り部と気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とからなり、気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる末広ノズル部と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出口とを有する洗浄ノズルと、洗浄に用いる液体を洗浄ノズルの液体導入部に供給する液体供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
そして、本発明の洗浄方法は、液体を導入する液体導入工程と、液体導入工程より導入される液体に気体を混入する気体導入工程と、流断面積を狭める絞り部の後に形成された気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部に気液混合流体を通過させ、気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる微小気泡生成工程と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出工程と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の洗浄装置は、その用いる洗浄ノズルに特徴を有するものであって、この洗浄ノズルにおける微小気泡生成部の構成は、微小気泡生成部を有するノズル本体は、流断面積を狭める絞り部と、気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とを有している。このような構造により気液混合流体の流れ方向に圧力差を生成させて乱流を生じさせることで、液体に導入された気体からなる気泡を剪断して多数の微小気泡を生成する。さらに好ましくは、該微小気泡生成部は円錐形状を有し、気液混合流体の流れ方向に拡径するベンチュリー型のものが挙げられる。
【0010】
さらに、省エネルギーの観点からは、該微小気泡生成部における末広部の開き角度が狭い方が望ましく(導入する液体の圧力を下げることができる)、該末広部の開き角度は40度未満であり、さらに、20度以下であることが好ましい。
【0011】
ここで、洗浄ノズルに設けられる気体導入部は、強制導入させても、気体を自然吸引させてもどちらでもよく、実施の状況に合わせて選択することができる。強制導入とは、気体を自然吸引するものではないことを意味し、例えば、コンプレッサーを用いて加圧しながら気体を液体中に導入することを含むものである。気体を強制導入することによって、気液割合を任意に設定したり、調整したり、または、液体における気体の割合を高くすることが可能となる。また、流量比を制御することで、生成される微小気泡の径を制御することも可能である。
【0012】
自然吸引させる場合には、洗浄ノズルにおいて、微小気泡生成部の直前に自給式の吸引式気体導入口を設けて、液体導入部により導入された液体が移動するときに、微小気泡生成のために設けられた流断面積を狭める絞り部において圧力が低下する作用を利用して気体を自然吸引するようにすればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄装置及び洗浄方法によれば、微小気泡を多く含んだ液体を洗浄液として射出することができ、これにより洗浄効率が高い効果的な洗浄を行うことができる。また、従来の洗浄と比べて、同等の洗浄効果を得ようとする場合には、液体の供給圧力が小さくて済むためエネルギー消費が少なく、また、液体の使用量も少なくすることができ低コスト、環境負荷の低減等の効果を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る洗浄装置の構成を示した概略図であり、図2は本発明に係る洗浄ノズルの構成例を示した概略断面図である。また、図3は洗浄時の微小気泡による洗浄機構を説明する模式図である。
【0016】
まず、本実施形態の洗浄装置1は、洗浄ノズル2と、洗浄に用いる液体を洗浄ノズル2の液体導入部に供給する液体供給手段3と、液体導入部より導入される液体に気体を混入するために、洗浄ノズル2の気体導入部に気体を導入する気体供給手段4と、からなるものである。
【0017】
洗浄ノズル2は、例えば、図2に示した洗浄ノズル10のように、液体を導入する液体導入部11と、この液体導入部11より導入される液体に気体を混入する気体導入部12と、気体導入部12から強制導入により気体が供給液体に導入された気液混合流体を内部に引き込む気液混合流体導入部13と、末広ノズル部14と、から構成されている。
【0018】
末広ノズル部14は、気液混合流体導入部13の後段で、流れ方向に断面積が小さくなった後に、その断面積が徐々に大きくなるノズルであり、ベンチュリー管形状を有している。このベンチュリー管形状をさらに説明すれば、気液混合流体導入部13と末広ノズル部14の連結部には、流断面積を絞った絞り部が形成されており、この絞り部の後、一定の断面積のスロート部15を通過すると、内壁は連続的に拡径していくものである。スロート部15以降の内壁で囲まれる空間は略円錐形状を有しているものであり、この末広ノズル部14の内壁で囲まれた空間(略円錐形状の空間)が微小気泡生成部16を形成している。図示したものでは、末広ノズル部14の絞り部は直線状の傾斜面に形成されているが、断面視形状がR面に形成されていてもよい。
【0019】
さらに、この末広ノズル部14は、微小気泡生成部16と通じる気液混合流体を射出する射出口17を先端に有する構成となっている。ここで、微小気泡生成部16(略円錐形状の空間)は、その拡がり角θが0度より大きく40度以下であればよく、20度以下であることが好ましい。図2に示した角θは6度である。
【0020】
この拡がり角θが大きいと、射出口17近傍で流れの剥離が起きてしまい、流れに対する抵抗が大きくなる。したがって、それだけノズルの入口の圧力を高くする必要があり、その分だけ動力を余分に使わなければならなくなる。この拡がり角θを狭くすることで、省エネルギー性に優れるノズルを提供することができる。なお、図示の実施形態では、末広ノズル部14の内壁で囲まれた空間の内壁は断面視で直線状(空間が円錐状である)であるが、例えば、断面視において緩やかな湾曲面に形成してもよい。
【0021】
洗浄ノズル10の構成部材は、ステンレス、チタン、砲金、真鍮等の金属、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、PVC、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂、加工可能なガラス等により作成できるが、これらの材質に限定されるものではなく、洗浄ノズルの使用環境への耐候性や、供給液体等の圧力に耐えうる強度を有する材料の中で適切な材料を採用して作成することができる。
【0022】
液体供給手段3は、洗浄液となる液体を洗浄ノズル2に供給するためのものであり、所定の流量で液体を供給することができるものであればよく、例えば、ポンプ等が挙げられる。
【0023】
この液体供給手段3により供給される液体は、液体導入部11から洗浄ノズル10の内部に引き込まれ、気液混合流体として洗浄ノズル2から射出されて洗浄対象面の洗浄に用いられるものであり、水道水、純水、超純水、有機溶剤、薬液等の洗浄効果を有するものであれば特に限定されずに用いることができる。また、この液体の温度は、特に限定されないが、20〜25℃程度の室温付近で用いられることが多く、さらに高い温度のほうが洗浄効果を高めることができる。
【0024】
このとき、微小気泡を安定して存在させることができるため、液体中に気泡合一防止剤を添加してもよい。微小気泡は、複数の微小気泡が直接合一したり、複数の気泡が合体してまずは泡沫が形成され、次いで合一したりして径の大きい気泡となりやすく、気泡合一防止剤の添加がこれを防止するのに効果的であるからである。
【0025】
ここで用いられる気泡合一防止剤としては、イソプロピルアルコール(IPA)、ペンタノール、オクタノール等のアルコール、食塩、塩化カリウム等の塩、その他界面活性剤等の気泡の合一を防止するものとして公知の物質を用いることができる。この気泡合一防止剤の添加量は、溶液濃度が50〜40000ppmの範囲であることが好ましい。
【0026】
気体供給手段4は、液体導入部11より導入された液体に気体を混入するために、洗浄ノズル2の気体導入部12に気体を導入することができるものであり、コンプレッサー等が挙げられ、液体中に強制的に気体を混入させるものである。
【0027】
ここで、本実施例では空気を導入するような構成としているが、液体貯留槽を設けて、この液体貯留槽に貯留される空気以外の気体を液体に強制導入するようにしてもよい。このとき導入される気体としては、窒素、酸素、炭酸ガス、水素、アルゴン、オゾン等が挙げられる。
【0028】
液体供給手段3、気体供給手段4は、それぞれ、供給する液体を貯留する液体貯留手段、供給する気体を貯留する気体貯留手段に接続しておき、洗浄を行うときに貯留されている液体、気体を洗浄ノズル2に供給することができるようになっているものである。この液体貯留手段、気体貯留手段は、それぞれ、例えば、金属、樹脂等により形成した容器等であって、液体又は気体を安定して貯留することができるものであれば、その材質は特に限定されずに用いることができる。
【0029】
また、気体貯留手段については、気体として空気を導入する場合には、特に設ける必要がなく、気体供給手段4が、その周囲に存在する空気を圧縮して洗浄ノズルに送り込むことができるようにすればよい。
【0030】
次に、本発明の洗浄方法について、図2に示した洗浄ノズルを用いた洗浄装置を例に説明する。
【0031】
本発明の洗浄方法は、洗浄ノズル2から洗浄対象物に微小気泡を含んだ液体を射出し、洗浄対象物の洗浄面に存在する汚染物質を除去するものであり、汚染物質を効率的に除去するために、洗浄面に所定の圧力以上で微小気泡を含んだ液体を衝突させるようにするものである。そのため、まず、液体貯留手段に貯留されている液体を液体供給手段3により洗浄ノズル2に導入する液体導入工程を行い、次いで、この洗浄ノズル2に導入された液体に気体供給手段4により気体を混入する気体導入工程を行う。
【0032】
ここで、洗浄ノズル10を用いた場合に、液体導入工程は、洗浄液となる液体を液体導入部11から洗浄ノズル内部に導入するものである。この液体は、洗浄ノズル内部を通過して、洗浄ノズルの射出部から洗浄対象物に射出され、洗浄対象物の洗浄に用いられる。
【0033】
このとき、液体導入部11から導入される液体の洗浄ノズルへの供給圧力は、洗浄ノズルの形状等にも影響されるが、洗浄対象物への液体の射出圧、すなわち所望の洗浄力が得られるように適宜調整して用いることができる。
【0034】
例えば、洗浄ノズル20と洗浄対象物との距離が1〜5cmである場合に、洗浄対象面からの汚染物質の除去を効率よく行うためには、液体の供給圧は0.1〜0.5MPaで行うことが好ましく、0.2〜0.4MPaであることがより好ましい。
【0035】
次いで行われる、気体導入工程は、洗浄ノズル内部に導入された液体に気体を混入するために、気体導入部12から気体を導入するものであり、この気体は、例えば、コンプレッサー等の気体供給手段4により液体中に気体が混入される。
【0036】
気体をコンプレッサーにより導入する場合、気体を強制導入することができるため、気液割合を任意に設定することができ、圧力により気体の導入量を増大させることができる点で好ましい。
【0037】
このとき、液体中の気体の割合(ボイド率)を10〜40%とすることができ、10〜30%とすることが好ましく、中でも20%以上とすることが特に好ましい。例えば、図2においてスロート部15の直径が3mmであって、θが6°の洗浄ノズル10を用いたときに、供給液体にかける圧力を0.3MPaとした場合、液体の供給量を9.0mL/分、気体の供給量を1.8NL/分とすることが好ましい。これによりボイド率を20%以上とすることができ、高い洗浄効果を得ることができる。
【0038】
そして、微小気泡生成工程は、気体が導入された供給液体を細い流路の後にそれよりも広い流路を通すように、気液混合流体の流れ方向に圧力差を生じさせて、気体導入工程により気体が混入された液体中で、多数の微小気泡を生成させるものである。まず、液体供給手段及び気体供給手段により得られた気液混合流体は、気液混合流体導入部13を通過した後、洗浄ノズル10における、流断面積を狭める絞り部からスロート部15を通過し、次いで、気液混合流体の流れ方向に流断面積が増大する末広部を通過する。このとき、スロート部15においてはベルヌーイの定理により圧力が下がった状態となり、末広部に入ったところで圧力が増大していき、このとき生じる乱流により液体中に混入された気体が剪断され多数の微小気泡が生成する。ここで、スロート部を通過した直後の圧力が増大していく末広部が微小気泡生成部として微小気泡を生成する場となる。
【0039】
ここで生じる微小気泡は、例えば、その直径が50〜500μm、好ましくは50〜200μmの気泡を多数生成するものである。
【0040】
次に、射出工程は、微小気泡生成工程に生成した多数の微小気泡を含有した気液混合流体を洗浄対象物に射出して、洗浄対象物の洗浄面に存在する汚染物質を洗浄面から除去するものである。
【0041】
このとき、例えば、液体のみの洗浄と比較して微小気泡を含有する液体が洗浄効果が高いことが知られているが、これは、洗浄対象物に微小気泡を含有した液体が衝突する際に、次のような効果が生じるためと考えられる。
【0042】
すなわち、液体のみと同様に液体の流れによる衝撃で汚染物質が洗浄面から除去される他、図3に示したように、微小気泡51が洗浄対象物50の洗浄面と衝突する際に液体流等の影響により微小気泡51が図3に示したように変形し、微小気泡51と洗浄対象物50が衝突する直前にその間に存在していた液体が、微小気泡51と洗浄対象物50とが衝突することで、洗浄面と水平方向に加速して押出され、このときの押出された液体の流れ(サイドジェット)によって汚染物質52の除去が促進されるものと考えられる。
【0043】
また、この洗浄ノズル10から射出される液体の射出方向は、洗浄対象物の洗浄面に射出するものであれば特に限定されるものではないが、洗浄面に対して垂直となる方向に射出することが、微小気泡を含有する液体が洗浄面へ衝突する際の圧力が最大となり、洗浄効果を高める点で好ましい。
【0044】
なお、本実施形態のように、ボイド率を高めることにより、水だけの洗浄や従来の気泡を含有させた洗浄と比べて、洗浄液として使用する液体の使用量を減らすことができるため節水効果により洗浄操作を低コストで行うことができる。それでいて同等以上の洗浄効果を得ることができる。
【0045】
さらに、このようにボイド率が高くなった場合には、液体供給手段による液体の供給圧力を、水だけの洗浄や従来の気泡を含有させた洗浄と比べて、低くしても同等以上の洗浄効果を得ることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
この第2の実施の形態は、洗浄ノズルとして図4に示した洗浄ノズル20を用い、気体供給手段4を設けていない以外は第1の実施形態と同一の構成でなされた洗浄装置によるものである。そして、この洗浄ノズル20は、洗浄ノズル10において、気体導入を自給により行う吸引式気体導入口が設けられ、気体供給手段を個別に設けることなく吸引式気体導入口26から気体を取り入れること以外の構成は、図2の洗浄ノズル10と同様のものである。
【0047】
すなわち、この洗浄ノズル20は、液体を導入する液体導入部21と、末広ノズル部22とから構成されている。末広ノズル部22は、液体導入部21において流れ方向に断面積が小さくなった後に次第に大きくなるノズルであり、ベンチュリー管形状を有している。液体導入部21と末広ノズル部22との連結部には、流断面積を絞った絞り部が形成されており、この絞り部の後、一定の断面積のスロート部23を通過すると、内壁は連続的に拡径していき、スロート部23以降の内壁で囲まれる空間は略円錐形状を有している。この末広ノズル部22の内壁で囲まれた空間(略円錐形状の空間)が微小気泡生成部24を形成している。図示したものでは、末広ノズル部22の絞り部は直線状の傾斜面に形成されているが、断面視形状がR面に形成されていてもよい。さらに、この末広ノズル部22は、微小気泡生成部24と通じる気液混合流体を射出する射出口25を構成する先端部を有している。
【0048】
また、スロート部23に液体に気体を自給的に混入する吸引式気体導入口26が設けられ、これは、液体導入部21により導入された液体が、スロート部23で流速が増すため、ベンチュリー効果によって圧力が低下し、この減圧になった液体流に周囲の気体が自然吸引されるものである。このように気体を自給的に供給する構成とすることによって、コンプレッサー等の装置が不要となり、気体を一定割合、すなわち単位水流量に対する吸引空気量(ボイド率)を一定の割合で供給液体中に取り込むことができる簡便な構成となる。したがって、操作が簡便で、コストを抑えた洗浄装置を構成することができる。
【0049】
このとき、ボイド率は、洗浄ノズル20の形状、特に、スロート部23及び吸引式気体導入口26の形状、と使用する際の液体の流速に依存するが、10〜30%とすることができ、洗浄に好ましい20%以上とすることもできる。
【0050】
この実施形態では、気体導入を自給式に行うため、気体導入手段を個別に設ける必要がなく、第1の実施形態の洗浄ノズルを用いる場合に比べて、気体導入に係るエネルギーを節約して低コストで洗浄操作を行うことができる。
【0051】
(第3の実施形態)
この第3の実施の形態は、第2の実施の形態において、洗浄ノズルとして、吸引式気体導入口が複数個設けられている点が異なるのみで、その他は第2の実施形態と同一の構成を有するものである。以下、相違点である洗浄ノズルについて説明する。図5は、気液混合流体の流れ方向に対して垂直な末広ノズル部の断面図であるが、吸引式気体導入口が設けられた部分を説明するものである。
【0052】
この実施形態で用いる洗浄ノズルは、図5で示すように、吸引式の気体導入口を有するものであって、この吸引式気体導入口を複数個有するものである。図5において、図5(a)は吸引式気体導入口26Aを2個、図5(b)は吸引式気体導入口26Bを3個、図5(c)は吸引式気体導入口26Cを4個、有するものを例示したが、それ以上の吸引式気体導入口を設けるようにしても良い。
【0053】
第2の実施形態のような吸引式気体導入口を有する洗浄ノズルは、気体を供給する手段を別に設ける必要がなく、それでいて気体の導入効率は高く維持できるため、洗浄ノズルとして優れたものであるが、気液混合流体を射出中心が、洗浄ノズルの軸の延長上からずれたものとなる場合があった。この洗浄ノズルの軸は、スロート部の軸、末広部における軸(略円錐形状の中心軸)のことであり、射出される気液混合液体の原因は定かではないが、吸引式気体導入口から導入される気体が、末広部において、その吸引式気体導入口が設けられている側面に偏って存在しやすく、それとは反対方向へ気液混合流体の射出がしやすくなるためと考えられる。
【0054】
そこで、この実施形態においては、そのような気液混合流体の射出時のずれ(偏流)を解消すべく、吸引式導入口を複数個所設けるようにしたが、このとき、吸引式気体導入口は、スロート部における気体の供給場所が、等間隔で配置されていることが好ましい。このように等間隔で配置することにより、微小気泡を含有する液体の射出位置を、洗浄ノズルの軸の延長上近辺に射出の中心がくるように調整することができ、洗浄対象物の洗浄面において、所望の位置に気液混合流体を射出することができる。このとき、各吸引式気体導入口は同一量の気体を導入するようにしておくことが好ましい。
【0055】
なお、以上で説明した実施形態における洗浄ノズルは、微小気泡生成部における末広部が略円錐形状を有するものとしたが、これを三角錐、四角錘、五角錘等の略多角錘形状としたり、略三角柱形状としたりしてもよい。また、洗浄ノズルも一つを有するものの他に、複数個を整列させて洗浄効率を上げる構成とした洗浄装置をしてもよいし、気液混合流体を射出できる射出口の複数個をスリット状に設けたものとすることもできる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
図4に示した洗浄ノズルを用いて構成された洗浄装置、すなわち、液体貯留手段と、液体供給手段と、洗浄ノズルと、により構成された洗浄装置、により以下の実験を行なった。なお、ここで用いる洗浄装置の液体貯留手段に貯留された液体はろ過水である。
【0057】
洗浄装置の液体貯留手段には、水道水を孔径1μmのフィルターによりろ過したろ過水にイソプロピルアルコールを1000ppm溶解させた洗浄液を貯留させ、ポンプにより洗浄ノズルに洗浄液を供給できるようにし、鉛直方向下方に洗浄液を射出するようにスロート部の直径1.0mmの洗浄ノズルを設置した。また、洗浄対象物としては、表面に白色ワセリンを厚さ0.15mm程度に一様に塗布した幅24mm×長さ30mmのカバーガラスを用意し、これを洗浄ノズルの射出口から3cm離れた位置に水平に配置した。
【0058】
このガラス基板の洗浄面に対して、液体貯留手段に貯留されている液温24℃のろ過水を、ポンプにより流量700mL/分、供給圧力0.17MPaで洗浄ノズルへ供給して、洗浄ノズルから微小気泡の含んだ洗浄液を10秒間射出した。
【0059】
このとき、吸引式気体導入部から吸引される空気の量は191mL/分であり、洗浄液のボイド率は21体積%であった。
【0060】
この洗浄操作により、洗浄面に塗布した白色ワセリンは十分に除去されていることが目視によって確認され、洗浄操作後のカバーガラスにおける白色ワセリンの除去面積は3.52mmであった。
【0061】
また、ここで吸引される空気の量を調節してボイド率を11〜29%まで変化させたときの白色ワセリンの洗浄操作を同様に行い、白色ワセリンの除去面積を求めた。その結果を表1に示した。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同一の構成となる洗浄装置を用い、洗浄ノズルの吸引式気体導入口を塞いで、洗浄液のボイド率を0%としたときの白色ワセリンの洗浄操作を実施例1と同様に行い、白色ワセリンの除去面積について求めた。その結果を表1に併せて示した。
【0063】
【表1】

この結果から、ボイド率が10%程度となると汚染物質の固体表面からの除去効果が有効に得られ、20%以上になると特に好ましい除去効果が得られることがわかった。
【0064】
(比較例2)
実施例1と同一の構成となる洗浄装置において洗浄ノズルの吸引式気体導入口を塞いで、洗浄液のボイド率が0%となるようにした以外は実施例1と同様の操作により試験を行った。
【0065】
なお、このとき、ポンプにより液体貯留手段から洗浄ノズルに供給される洗浄液の流量は900mL/分、供給圧力は0.28MPaとし、実施例1の水流量700mL/分+空気流量191mL/分に対して流体の総量を同程度にして試験を行った。
【0066】
この洗浄操作により、洗浄面に塗布した白色ワセリンは除去されていないことが目視によっても確認され、洗浄操作後のカバーガラスにおける白色ワセリンの除去面積は0mmであった。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同一の構成となる洗浄装置を用い、イソプロピルアルコールを溶解させずに、水道水を孔径1μmのフィルターによりろ過したろ過水を洗浄液とした以外は実施例1と同様の洗浄操作を行い、白色ワセリンの除去面積について求めた。なお、ここで、ボイド率は11%、21%とし、その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る洗浄装置の構成を示した概略図である。
【図2】本発明に係る洗浄ノズルの構成例を示した概略側断面図である。
【図3】洗浄時の微小気泡による洗浄機構を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る他の洗浄ノズルの概略側断面図である。
【図5】気液混合流体の流れ方向に対して垂直な末広ノズル部の断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…洗浄装置、2…洗浄ノズル、3…液体供給手段、4…気体供給手段、10…洗浄ノズル、11…液体導入部、12…気体導入部、13…気液混合流体導入部、14…末広ノズル部、15…スロート部、16…微小気泡生成部、17…射出口、20…洗浄ノズル、21…液体導入部、22…末広ノズル部、23…スロート部、24…微小気泡生成部、25…射出口、26…吸引式気体導入口、50…洗浄対象物、51…微小気泡、52…汚染物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を導入する液体導入部と、前記液体導入部より導入される液体に気体を混入する気体導入部と、流断面積を狭める絞り部と気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とからなり、前記気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる末広ノズル部と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出口とを有する洗浄ノズルと、
洗浄に用いる液体を前記洗浄ノズルの液体導入部に供給する液体供給手段と、
前記液体導入部より導入される液体に気体を混入するために、前記洗浄ノズルの気体導入部に気体を導入する気体供給手段と、
を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
液体を導入する液体導入部と、前記液体導入部より導入される液体に気体を混入する自給式の気体導入部と、流断面積を狭める絞り部と気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部とからなり、前記気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる末広ノズル部と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出口とを有する洗浄ノズルと、
洗浄に用いる液体を前記洗浄ノズルの液体導入部に供給する液体供給手段と、
を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ノズルにおける前記自給式の気体導入部が、前記気液混合流体の流れ方向に対する垂直断面において等間隔に複数箇所設けられていることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記末広部が、略円錐形状であって、気液混合流体の流れ方向に拡径するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記末広部の開き角度が20度以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
液体を導入する液体導入工程と、前記液体導入工程より導入される液体に気体を混入する気体導入工程と、流断面積を狭める絞り部の後に形成された気液混合流体の流れ方向に流断面積が徐々に増大する末広部に気液混合流体を通過させ、前記気体導入部から導入された気体から多数の微小気泡を生成させる微小気泡生成工程と、生成した多数の微小気泡を含有する気液混合流体を洗浄対象物に射出する射出工程と、を有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項7】
前記末広部の開き角度が20度以下であることを特徴とする請求項6記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記気体導入工程が、自給式であることを特徴とする請求項6又は7記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記気体導入工程が、前記気液混合流体の流れ方向の垂直断面において、等間隔に複数箇所でなされることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記液体導入工程における、液体の供給圧力が0.1〜0.5MPaであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記微小気泡生成工程で生成された微小気泡を含有する気液混合流体のボイド率が10〜30%であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記液体に気泡合一防止剤を添加することで、生成された微小気泡の合体を抑制しながら微小気泡を射出させることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212788(P2008−212788A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51243(P2007−51243)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】