説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】 微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果を発揮できる洗浄装置を提供する。
【解決手段】 本発明の洗浄装置は、気泡混合液を通過させて噴出させることにより、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aと、前記微細気泡発生装置Aで生じた微細気泡混合液を被洗浄機器又は装置Bに供給するための供給手段Cとで構成される。微細気泡発生装置Aにおける環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する微細気泡発生装置を備えた洗浄装置、及びそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置やシステムの汚染に対して物理洗浄や薬品洗浄などのさまざまな洗浄が行われている。
【0003】
物理洗浄の1つとして、エアバブリングを用いた洗浄方法が知られている。例えば、特許文献1には、微細気泡を流して洗浄する膜洗浄システムが記載されている。この膜洗浄システムでは、微細気泡の発生源として、高圧水と圧縮空気とをインジェクターに導入し、混合して微細気泡を生成する微細気泡発生装置を用いている。しかし、この方法では、例えば気泡径5μm以下の極微細な気泡を得ることは難しく、また微細な箇所の汚染に対しては洗浄効果の低下を生じていた。このため、複数の洗浄手段の併用や薬剤の使用等が必要であった。
【0004】
また、特許文献2の微細気泡洗浄装置や、特許文献3の微細気泡発生ポンプを用いても、同様に、極微細な気泡を得ることは難しく、また微細な箇所の汚染に対しては洗浄効果の低下を生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開2006−263501号公報
【特許文献2】特開2005−52689号公報
【特許文献3】特開2003−251157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、気泡径の極めて小さい微細気泡を発生可能な微細気泡発生装置を備え、微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果を発揮でき、さらに複数の洗浄手段の併用や薬剤の使用等を行わなくても高い洗浄効果を発揮できる洗浄装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、気泡径の極めて小さい微細気泡を含有する微細気泡混合液を用いることにより、被洗浄機器又は装置の微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果を発揮でき、さらに複数の洗浄手段の併用や薬剤の使用等を行わなくても高い洗浄効果を発揮できる洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、機器や装置の洗浄装置において、気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置を用いると、気泡混合液中に気泡径の極めて小さい微細気泡が発生すること、こうして得られる微細気泡混合液を用いると、機器や装置の微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果を発揮して、全体として洗浄効果を著しく高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、気泡混合液を通過させて噴出させることにより、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aと、前記微細気泡発生装置Aで生じた微細気泡混合液を被洗浄機器又は装置Bに供給するための供給手段Cとで構成される洗浄装置を提供する。
【0010】
前記洗浄装置では、微細気泡発生装置Aにおける環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えていることが好ましい。
【0011】
前記洗浄装置では、微細気泡発生装置Aは、略円盤状のステータと、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータにそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス流入口と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットからなる微細気泡分散撹拌機を槽の内部に設置した微細気泡分散槽であることが好ましい。
【0012】
前記洗浄装置では、被洗浄機器又は装置Bが、膜モジュール、フィルター又は紡糸ノズルであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aの該環状スリットに、気泡混合液を通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いて、被洗浄機器又は装置Bを洗浄することを特徴とする洗浄方法を提供する。
【0014】
前記洗浄方法では、気泡混合液を、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えている環状スリットに通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いることが好ましい。
【0015】
前記洗浄方法では、略円盤状のステータと、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータにそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス流入口と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットからなる微細気泡分散撹拌機の該環状スリットに、気泡混合液を通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いることが好ましい。
【0016】
前記洗浄方法では、被洗浄機器又は装置Bが、膜モジュール、フィルター又は紡糸ノズルであることが好ましい。
【0017】
なお、本発明の洗浄装置は、被洗浄機器又は装置を洗浄するために用いられる装置に限られ、限外又は精密濾過膜モジュールを用いて透過水(濾過水;製品)を得るために用いられる装置は含まない。また、本発明の洗浄方法は、被洗浄機器又は装置を洗浄する方法に限られ、限外又は精密濾過膜モジュールを用いて透過水(濾過水;製品)を得る方法は含まない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定構造の微細気泡発生装置により、洗浄液中に気泡径の極めて小さい微細気泡(超微細気泡)が発生するため、機器や装置の微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果が発揮される。また、複数の洗浄手段の併用や薬剤の使用等を行わなくても高い洗浄効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の洗浄装置の一例を示す概略図である。この装置は、気泡混合液を通過させて噴出させることにより、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aと、前記微細気泡発生装置Aで生じた微細気泡混合液を被洗浄機器又は装置Bに供給するための供給手段Cとで構成されている。本発明の洗浄方法では、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aの該環状スリットに、気泡混合液を通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いて、被洗浄機器又は装置Bを洗浄する。
【0020】
図1において、1は微細気泡分散槽、11は槽、2は微細気泡分散撹拌機、21は微細気泡分散撹拌機のモーター部、22は微細気泡分散撹拌機の本体部、3は送液ポンプ、4は装置システム、5は液(洗浄液)供給ライン、6は気泡形成ガス供給ライン、7は微細気泡混合液供給ライン、8は廃液排水ラインを意味する。図1において、微細気泡分散槽1及び微細気泡分散撹拌機2で構成される部分が本発明における微細気泡発生装置Aに相当し、装置システム4が本発明における被洗浄機器又は装置Bに相当し、送液ポンプ3が本発明における供給手段Cに相当する。
【0021】
微細気泡分散槽1は、液(洗浄液)供給ライン5より供給される液(洗浄液)をもとに微細気泡混合液を調製する容器としての槽11を有している。槽11の底部には微細気泡分散撹拌機2が取り付けられている。微細気泡分散撹拌機2は本体部22とモーター部21とで構成されており、本体部22は槽11内の気泡混合液中に置かれている。微細気泡分散撹拌機2の本体部22には、槽11内の気泡混合液を該本体部22内に流入させる液流入口と、気泡形成ガス(空気)供給ライン6を通じて供給される気泡形成ガス(空気)を該本体部22内に流入させる気泡形成ガス(空気)流入口と、流入した液及び気泡形成ガスを撹拌、混合すると共に、得られた気液混合物に遠心力を与える回転体(撹拌翼)と、遠心力を付与された気液混合物を槽11内の気泡混合液中に噴出させる環状スリットとを備えている。本体部22内で形成された気液混合物をして環状スリットを高速で通過、噴出させることにより、気泡径が極めて小さい超微細気泡が多数生成し、槽11内に微細気泡混合液が調製される。
【0022】
槽11内で調製された微細気泡混合液は、微細気泡混合液供給ライン7を通じて、送液ポンプ3により、被洗浄体である装置システム4に送液され、装置システムが洗浄される。洗浄後の廃液は廃液排水ライン8を通じて系外に排出される。
【0023】
なお、微細気泡分散撹拌機2の設置部位は、必ずしも槽11の底部でなくてもよく、槽11の側部であってもよい。また、微細気泡分散撹拌機2は、一つのみ設けられてもよく、複数設けられていてもよい。微細気泡分散槽1の槽11に供給される液(洗浄液)は、連続的であっても間欠的であってもよい。
【0024】
洗浄液としては、例えば水(特に清浄水)、有機溶媒、これらの混合物などを使用できる。洗浄液には、被洗浄機器又は装置Bの汚染物に応じて、洗浄効果を高める添加剤が含まれていてもよい。
【0025】
なお、本発明の洗浄方法では、上記に限らず、微細気泡混合液で満たされた微細気泡分散槽1の槽11内に、被洗浄機器又は装置Bを投入することでも、被洗浄機器又は装置Bに付着した汚染物を除去することができる。
【0026】
微細気泡発生装置Aでは、例えば環状スリットの構造、気泡混合液の環状スリットにおける通過速度、本体部22への気泡形成ガスと液の供給割合等を調整することにより、微細気泡混合液中の微細気泡の気泡径、気泡径分布、及び気泡の個数を制御することができる。気泡の個数、気泡径、気泡径の分布等は、パーティクルカウンタを用いて測定することができる。
【0027】
微細気泡発生装置Aによれば、気泡径5μm以下(あるいは5μm未満)の気泡を多数発生させることができる。例えば、気泡径2〜5μmの気泡の個数が、20〜30℃において、例えば100個/mL以上、好ましくは300個/mL以上、さらに好ましくは1000個/mL以上、特に2000個/mL以上の微細気泡混合液を得ることができる。本発明では、このような微細気泡(超微細気泡)を含む混合液を用いるため、膜モジュール、フィルター、紡糸ノズル等の被洗浄機器又は装置の微細な箇所の汚染に対しても優れた洗浄効果が得られる。また、複数の洗浄手段の併用や薬剤の使用等を行わなくても高い洗浄効果を得ることができる。
【0028】
なお、上記微細気泡発生装置Aでは、通常、気泡径が5μmを超える気泡(例えば、気泡径5〜50μmの気泡)も発生する。例えば、上記微細気泡発生装置Aにより得られる微細気泡混合液中に含まれる気泡径2〜50μmの気泡の個数は、20〜30℃において、一般に100個/mL以上、好ましくは300個/mL以上、より好ましくは1000個/mL以上、さらに好ましくは2000個/mL以上である。
【0029】
前記環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えているのが好ましい。環状スリットがこのような構造を有すると、気泡混合液が高速で通過して噴出することにより、気泡混合液中に気泡径の極めて小さい微細気泡が発生する。これは、気泡混合液が、内径側から外径側に向かって間隙最小部から連続的に拡大する流路(流路拡大部)を通過する際に、(i)流路の広がりに気泡の膨張速度が追いつかず、気泡が破壊される現象、(ii)溶存した気泡形成ガスが、間隙最小部から流路拡大部に通過する際に生じる減圧作用によりガス化する現象、又は(iii)前記(i)と(ii)が同時に生じる現象が生じているためと推測される。
【0030】
上記好ましい環状スリットの構造においては、少なくとも内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えている限り特に制限されず、例えば、間隙最小部の内径側に、間隙最小部に向かって連続的に流路が縮小する流路縮小部を有していてもよい。また、環状スリットは、内径側から外径側に向かって段階的に流路断面積が増える構造、内径側から外径側に向かって段階的に流路断面積が減少する構造、内径側から外径側に向かって連続的に流路断面積が増える構造、内径側から外径側に向かって連続的に流路断面積が減少する構造を有していてもよい。
【0031】
本発明では、超微細気泡を効率よく発生させる観点から、環状スリットは、内径側から外径側に向かって間隙最小部から連続的に流路断面積が増える流路拡大部を備えることが好ましい。
【0032】
本発明では、通常、環状スリットは、微細気泡発生装置Aにおいて、モーター部21及び本体部22から構成されている微細気泡分散撹拌機2(モーター付きエアレーター)の本体部22に設けられている。モーター部21としては、キャンドモーターが好適に用いられる。
【0033】
微細気泡分散撹拌機2の本体部22は、略円盤状のステータ(対向する上部ステータと下部ステータとで構成されている)と、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータの任意の部位(例えば、下底部)にそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス流入口(気泡供給管)と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットとで構成することができる。
【0034】
このような本体部22を有する微細気泡分散撹拌機では、例えばモーター部21を用いること等で動力を発生させることにより、本体部22に供給される気泡形成ガスと本体部22に取り込まれた液とが混合され気泡混合液となり、さらに該気泡混合液が高速で環状スリットを通過するので気泡混合液中に気泡径の極めて小さい微細気泡が発生する。
【0035】
図2は、微細気泡分散撹拌機2の本体部22の一例を示す概略断面図である。図2において、221は回転軸、222は気泡形成ガス経路、223はボルト、224は孔部、225は液流入口(液取り入れ口)、226は回転体、226aは回転体226の円盤、226bは回転体226の遠心翼、227は上部ステータ部、228は下部ステータ部、229は環状スリット、229aは環状スリット229の流路縮小部、229bは環状スリット229の間隙最小部、229cは環状スリット229の流路拡大部、230は流路を示す。
【0036】
回転軸221は、モーター部21とつながっており、モーター部21によって高速回転(例えば3600〜4000rpm)可能である。また回転軸221には、回転体226が設けられており、回転体226は円盤226aと複数の遠心翼226bにより構成されている。このため、回転軸の高速回転により、本体部22内部に液流入口225から洗浄液5が取り込まれ、さらに本体部22内部で取り込まれた洗浄液5と気泡形成ガス経路222を通じて供給される気泡形成ガスとが混合され、気泡混合液となり、さらにまた該気泡混合液は、環状スリット229を本体部22の内部側から外部側に向かって(遠心方向に)高速で通過して噴出する。該気泡混合液が環状スリット229を高速で通過して噴出する際に気泡混合液中に微細気泡が発生して微細気泡混合液となる。なお、気泡は回転体226の高速回転作用によって細かく裁断されていると推測される。
【0037】
また、本体部22には、孔部224を備えている。このため、液を溜める初期のときに内部に残留する気体を排出できる。従って、可動時にステータ内に気体が残留することによるキャビテーションの発生やキャビテーションによって回転体226が機能しないことを防止することができる。また、気体供給量が過剰であれば、この孔から出てくるので、目視にて、ガス供給量を調整できる。
【0038】
気泡形成ガス(空気)6の供給量としては、特に制限されないが、例えば、微細気泡発生装置Aにおいて超微細気泡を、気泡混合液1ml中に100個以上発生させる場合、0.01L/min以上であるのが好ましい。
【0039】
微細気泡発生装置Aで得られた微細気泡混合液は、供給手段C(例えば送液ポンプ3等)により、洗浄の対象物である被洗浄機器又は装置B(装置システム)に送液される。供給手段Cにおける送液速度、送液圧力は、被洗浄機器又は装置Bに応じて適宜選択することができる。被洗浄機器又は装置Bとしては、例えば、膜モジュール、フィルター、紡糸ノズルなどが挙げられる。
【0040】
膜モジュールやフィルターとしては、例えば、逆浸透膜(RO)装置の前処理、地下水の除菌・除濁、工業用水の除菌・除濁、河川水の除菌・除濁、プロセス水の高度処理、食品製造用水の高度処理、海水の除菌・除濁等の用途に用いられるものや、化学薬品、溶剤、純水、ポリマー、モノマー、高粘度・高湿溶液のろ過、触媒回収、粉末や活性炭の除去用途に用いられるものが挙げられる。また空気や各種ガス中に浮遊している粉塵、水滴、油適等を取り除く用途に用いられるものであってもよい。
【0041】
このような用途に用いられる膜モジュールやフィルターは、プレフィルター領域、精密ろ過膜(MF膜)領域、限外ろ過膜(UF膜)領域、ナノフィルター領域、逆浸透膜(RO膜領域)の何れの領域で用いられるものであってもよい。本発明によれば、精密ろ過膜(MF膜)領域や限外ろ過膜(UF膜)領域のものを好適に洗浄することができる。
【0042】
膜モジュールやフィルターは、平板型、チューブラー型、スパイラルモジュール型、中空糸型の何れあってもよい。
【0043】
膜モジュールやフィルターの材質としては、特に制限されず、例えばポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ポリプロピレン、レーヨン、コットン、グラスファイバー、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリプロピレン、ステンレス(SUS)、繊維状活性炭、ABS樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0044】
洗浄方式については、特に制限されず、フラッシング洗浄方式(水を膜面に高流速で流すことにより、膜面の付着物等を除去する方式)や逆圧洗浄方式(膜の二次側から一次側に[透過水(濾過水)を得る場合とは反対方向に]水等を圧力で押し込み、膜に付着した汚染物質を除去する方式)等のいずれであってもよい。
【0045】
微細気泡混合液を用いてフラッシング洗浄を行う場合、ろ過膜モジュールに対する膜面流速は0.05m/sec以上0.5m/secで流水させ、膜ろ過モジュールを洗浄することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
なお、実施例で用いたキャンドモーター付きエアレーター102bは、エアレーター(本体部)[(株)帝国電機製作所で開発中のマイクロバブルエアレーター]及びモータ部で構成されている。エアレーター(本体部)は、図2で示されるように、略円盤状のステータと、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータの下底部にそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス(空気)流入口と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気液混合物を通過させて噴出させることにより気液混合物中に微細気泡を発生させる環状スリットとで構成されている。前記環状スリットは、間隙最小部、及び流路拡大部から構成され、内径側から外径側に向かって間隙最小部から連続的に流路断面積が増える流路拡大部を備えている。
【0048】
各部位の寸法は以下の通りである。ステータ部227、228の直径a:200mmφ、回転体226の直径b:130mmφ、遠心翼226bの幅(高さ):8mm、環状スリット229の間隙最小部229bのギャップc:0.2mm、遠心翼226bと下部ステータ部との距離(ギャップ)d:4mm、液流入口225の直径:10mmφ、環状スリット229の流路拡大部229cにおける拡がり角度(断面での拡がり角度)θ:5°、回転体226の回転数:3600rpm、気泡形成ガス経路222からの空気供給量(コンプレッサーにて供給):0.2L/minである。なお、この微細気泡発生装置(回転体226の直径b:130mmφ)を用いた場合の微細気泡の発生個数(水道水26L使用;20〜30℃)をパーティクルカウンタ[パーティクルセンサの仕様:型式「Liquilaz-E20P」、測定粒径範囲2〜125μm、試料流量20mL/min、最大可測濃度10000個/mL、周辺装置(シリンジサンプラ、データ処理専用ソフト「Sampleersight」)]で測定したところ、気泡径2〜5μmの気泡の個数は約3800個/mL、気泡径2〜50μmの気泡の個数は約5700個/mLであった。なお、実施例1では、回転体226の直径bが90mmφのものを用いた。上記エアレーターを用いた場合、パーティクルカウンタで測定した粒径分布から、気泡径2μm未満の気泡、あるいは気泡径数百ナノメーター以下のナノバブルも多数発生しているものと推測される。
【0049】
(実施例1)
中空糸膜モジュールを用いた河川水の浄化装置を運転(膜濾過運転)して、目詰まりを起こした中空糸膜モジュールを、微細気泡発生装置より得られる微細気泡混合液を用いて洗浄した(図3参照)。
【0050】
原水として河川水を使用し、洗浄水として前記河川水について砂ろ過を行うことにより飲料水と同程度に浄水処理した水(砂ろ過水)を使用した。
【0051】
中空糸膜モジュールは、下記表1に示す中空糸膜モジュール(ダイセン・メンブレン・システムズ社製、商品名「FB02−FUC1582」)を用いた。ろ過方式は内圧全量ろ過であり、ろ過圧力は0.05MPaである。この中空糸膜モジュールを用いた河川水の浄化装置では、濁度5〜20の水を濁度0.1程度にすることができる。
【0052】
【表1】

【0053】
原水槽101から河川水を、バルブ107を経て、送液ポンプ104を介し、流速0.38L/minで中空糸膜モジュール105に供給した。中空糸膜モジュール105で膜濾過された透過水は、バルブ108を経て、透水槽106に送られ貯水された。運転開始時直後に初期のフラックスを測定した。中空糸膜モジュール105を用いた河川水の浄化により、中空糸膜モジュール105のフラックスが徐々に低下して、最小値のフラックスとなった時を目詰まりと判断して、河川水の浄化を中止した。
【0054】
次に、バルブ107により流路を切り替えて、微細気泡発生装置102で微細気泡を発生させることにより得た微細気泡混合洗浄水を、微細気泡混合液供給ライン103を通じ、送液ポンプ104を介して中空糸膜モジュール105に導入し、洗浄流速:320mL/min、洗浄時間:10分でフラッシング洗浄を行った。中空糸膜モジュール105の洗浄時には、バルブ108を閉じ、洗浄廃液の全量を廃液排水ライン109を通じて排出させた。洗浄後、フラックスを測定した。
そして、下記式(1)から、1回目の透水性能回復率を測定した。
透水性能回復率(%)=(洗浄後のフラックス)/(初期のフラックス)×100 …(1)
【0055】
洗浄終了後、バルブ107により流路を切り替えて、原水槽101から河川水を再び中空糸膜モジュール105に供給し、中空糸膜モジュール105を用いた河川水の浄化を行った。そして、中空糸膜モジュール105を用いた河川水の浄化により、中空糸膜モジュール105のフラックスが徐々に低下して、最小値のフラックスとなった時を目詰まりと判断して、河川水の浄化を中止した。
【0056】
次に、バルブ107により流路を切り替えて、再び微細気泡発生装置102で微細気泡を発生させることにより得た微細気泡混合洗浄水を中空糸膜モジュール105に導入し、洗浄流速:320mL/min、洗浄時間:10分でフラッシング洗浄を行った。中空糸膜モジュール105の洗浄時には、バルブ108を閉じ、洗浄廃液の全量を廃液排出ライン109を通じて排出させた。洗浄後、フラックスを測定した。
そして、上記式(1)から、2回目の透水性能回復率を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
(比較例1)
微細気泡発生装置を作動させず、洗浄水として微細気泡を含有しない砂ろ過水を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、1回目の透水性能回復率及び2回目の透水性能回復率を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
(実施例2)
実施例1と同様にして、中空糸膜モジュールを用いた河川水の浄化装置を運転(膜濾過運転)して、目詰まりを起こした中空糸膜モジュールを、微細気泡発生装置より得られる微細気泡混合液を用いて洗浄した(図3参照)。
なお、実施例1では1回目の透水性能回復率及び2回目の透水性能回復率を測定したが、実施例2では、更にもう一回河川水の浄化及びフラッシング洗浄を行い、3回目の透水性能回復率も測定した。結果を表3に示す。
【0060】
(比較例2)
微細気泡発生装置を作動させず、洗浄水として微細気泡を含有しない砂ろ過水を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、1回目の透水性能回復率、2回目の透水性能回復率を測定した。結果を表3に示す。
【0061】
(比較例3)
微細気泡発生装置として、気泡分散槽102a中に、キャンドモーター付きエアレーター102bの代わりに、マイクロバブル発生器(泡多郎 品番BL12AA−12−R4、ニッタ・ムアー株式会社製;液体と気体を円筒形状の中で超高速旋回させることによって気泡を発生させる機器)を取り付けた装置を用いた以外は実施例2と同様の操作を行った。実施例2と同様にして、1回目の透水性能回復率、2回目の透水性能回復率を測定した。結果を表3に示す。
【0062】
なお、このマイクロバブル発生器を用いた場合の微細気泡の発生個数(パーティクルカウンタで測定;25℃)は、気泡径2〜5μmの気泡:0個/mL、気泡径2〜50μmの気泡:2717個/mLである(ニッタ・ムアー株式会社のカタログ「気液せん断方式マイクロバブル発生器 泡多郎 AWATARO CATA−10070A−01」より)。
【0063】
【表3】

【0064】
(実施例4)
微細気泡分散攪拌機(微細気泡発生装置)を備える洗浄装置(図4)を用いて、目詰まりしたカートリッジフィルターに対して微細気泡を導入した洗浄水によるフィルター洗浄を行った。
カートリッジフィルターエレメント
品番「FCC−22」富士フイルム株式会社製
濾材材質:セルロース膜(ポリエステルサポート)
ろ過精度:0.22μm(100%)
寸法:φ70×250L
初期状態のフィルターの流量:6.67L/min
【0065】
洗浄するカートリッジフィルター113は、鑑賞魚用水槽の汚泥(砂利内沈殿分)を一度タンクに吸い上げ汚水原液とし、上記カートリッジフィルターエレメントにて、この汚水原液のろ過を行い強制的に目詰まりをおこさせたものである。
【0066】
目詰まりをおこしたカートリッジフィルター113を図4の微細気泡発生装置111(気泡分散槽111aとキャンドモーター付きエアレーター111bとで構成される)中にセットし、微細気泡を導入した水道水で30分間浸漬洗浄を行った。浸漬洗浄終了後、さらに図4のようにカートリッジフィルター113をセットし、30分間逆圧洗浄を行った。逆圧洗浄は、微細気泡発生装置111で得られた微細気泡混合液を、水中ポンプ112を用いて、カートリッジフィルター113の二次側から一次側に[透過水(濾過水)を得る場合とは反対方向に]押し込むことにより行った(以下の実施例も同様である)。
【0067】
かかる一連の洗浄における各段階の流量、洗浄回復率を表4に示した。なお、洗浄回復率は、下記式(2)により定義した。
洗浄回復率(%)=(洗浄により回復した流量)/(ろ過により低下した流量)×100 …(2)
【0068】
【表4】

【0069】
(比較例4)
洗浄するフィルターは、上記実施例4と同様の鑑賞魚用水槽の汚泥(砂利内沈殿分)による汚水原液を用いて、上記カートリッジフィルターエレメントにて、ろ過を行い強制的に目詰まりを起こさせたものである。
【0070】
目詰まりをおこしたカートリッジフィルター113をタンク内に固定し、6L/minの旋回流を起こした水道水で30分間浸漬洗浄した。浸漬洗浄終了後、さらに図4のようにカートリッジフィルター113をセットし、30分間逆圧洗浄を行った。ただし、微細気泡発生装置中のキャンドモーター付きエアレーター11bを作動させず、微細気泡を発生させることは行わなかった。
【0071】
かかる一連の洗浄における各段階の流量、洗浄回復率を表5に示した。
【0072】
【表5】

【0073】
(実施例5)
微細気泡分散攪拌機(微細気泡発生装置)を備える洗浄装置(図4)を用いて、カートリッジフィルター113の目詰まりに対する、微細気泡を導入した洗浄水(砂ろ過水)によるフィルター洗浄を行った。
カートリッジフィルターエレメント
品番「DFP−S50−250S」セントラルフィルター工業社製
濾材材質:PP不織布
ろ過精度:1μm(99%)
寸法:φ70×250L
【0074】
洗浄するカートリッジフィルター113は、原水としての河川水についてろ過を行い強制的に目詰まりをおこさせたものである。目詰まりをおこしたカートリッジフィルター113を図4のようにセットし、60分間逆圧洗浄を行った。
【0075】
かかる一連の洗浄における各段階の流量、圧力、洗浄回復率、透過係数を表6に示した。なお、実施例5以降の洗浄回復率は、下記式(3)により定義した。
洗浄回復率(%)=(洗浄後の透過係数)/(使用前の透過係数)×100 …(3)
【表6】

【0076】
(実施例6)
逆圧洗浄する前に、目詰まりをおこしたカートリッジフィルターを微細気泡発生装置中にセットし、微細気泡を導入した洗浄水(砂ろ過水)で90分間浸漬洗浄したこと以外は、実施例5と同様にして、洗浄を行った。
【0077】
かかる一連の洗浄における各段階の流量、圧力、洗浄回復率、透過係数を表7に示した。
【0078】
【表7】

【0079】
(比較例5)
洗浄するフィルターは、上記実施例5及び6と同様の原水としての河川水についてろ過を行い強制的に目詰まりをおこさせたものである。
微細気泡発生装置中のキャンドモーター付きエアレーター111bを作動させず、微細気泡を発生させ無かったこと以外は実施例5と同様にして、その洗浄を行った。
【0080】
かかる一連の洗浄における各段階の流量、圧力、洗浄回復率、透過係数を表8に示した。
【0081】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は本発明の洗浄装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は微細気泡分散撹拌機の本体部の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は実施例で用いた洗浄装置及び洗浄方法の概略説明図(概略フロー図)である。
【図4】図4は実施例で用いた洗浄装置及び洗浄方法の概略説明図(概略フロー図)である。
【符号の説明】
【0083】
1 微細気泡分散槽
2 微細気泡分散撹拌機
3 送液ポンプ
4 装置システム
5 液(洗浄液)供給ライン
6 気泡形成ガス供給ライン
7 微細気泡混合液供給ライン
8 廃液排水ライン
11 槽
21 モーター部
22 本体部
101 原水槽
102 微細気泡発生装置
102a 気泡分散槽
102b キャンドルモーター付きエアレーター
103 微細気泡混合液供給ライン
104 送液ポンプ
105 中空糸膜モジュール
106 透水槽
107 バルブ
108 バルブ
109 廃液排水ライン
111 微細気泡発生装置
111a 気泡分散槽
111b キャンドルモーター付きエアレーター
112 水中ポンプ
113 カートリッジフィルター
221 回転軸
222 気泡形成ガス(空気)経路
223 ボルト
224 孔部
225 液流入口
226 回転体
226a 円盤
226b 遠心翼
227 ステータ部(上部ステータ部)
228 ステータ部(下部ステータ部)
229 環状スリット
229a 流路縮小部
229b 間隙最小部
229c 流路拡大部
230 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡混合液を通過させて噴出させることにより、気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aと、前記微細気泡発生装置Aで生じた微細気泡混合液を被洗浄機器又は装置Bに供給するための供給手段Cとで構成される洗浄装置。
【請求項2】
微細気泡発生装置Aにおける環状スリットが、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えている請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
微細気泡発生装置Aが、略円盤状のステータと、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータにそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス流入口と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットからなる微細気泡分散撹拌機を槽の内部に設置した微細気泡分散槽である請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
被洗浄機器又は装置Bが、膜モジュール、フィルター又は紡糸ノズルである請求項1〜3の何れかの項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットを備える微細気泡発生装置Aの該環状スリットに、気泡混合液を通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いて、被洗浄機器又は装置Bを洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
気泡混合液を、内径側から外径側に向かって間隙最小部から拡大するように設けられた流路拡大部を備えている環状スリットに通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いる請求項5記載の洗浄方法。
【請求項7】
略円盤状のステータと、ステータ内部に設けられ、周方向に回転する回転体と、ステータにそれぞれ設けられた液流入口及び気泡形成ガス流入口と、上部ステータと下部ステータの対向面周縁部に周方向に設けられ、ステータ内部で形成された気泡混合液を通過させて噴出させることにより気泡混合液中に微細気泡を発生させる環状スリットからなる微細気泡分散撹拌機の該環状スリットに、気泡混合液を通過させて噴出させることにより得られる微細気泡混合液を用いる請求項5又は6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
被洗浄機器又は装置Bが、膜モジュール、フィルター又は紡糸ノズルである請求項5〜7の何れかの項に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104903(P2010−104903A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279022(P2008−279022)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000150877)株式会社帝国電機製作所 (24)
【出願人】(595140114)セントラルフィルター工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】