説明

洗浄装置及び自動分析装置

【課題】洗浄時における反応容器からの洗浄液の溢れを高い信頼性の下に判定することが可能な洗浄装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】吸引ノズルと吐出ノズルとを有し、自動分析装置に設置して反応容器内の反応液を測定した後または測定する前の反応容器を洗浄液によって洗浄する洗浄装置12及び自動分析装置。洗浄装置12は、少なくとも洗浄液と接する表面が第1の導電性部材からなり、反応容器5外部の容器開口近傍に配置される第2の導電性部材13bと、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の電気的特性を測定する測定部14と、測定部が測定した第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の電気的特性をもとに洗浄液の反応容器からの溢れを判定する判定部15bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、吸引ノズルと吐出ノズルとを有し、反応容器を洗浄液によって洗浄する洗浄装置を搭載している。このため、自動分析装置は、洗浄装置の故障、例えば、吸引ノズルの詰りに起因した、洗浄液の反応容器からの溢れ対策を講じている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−309739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された洗浄装置は、導電性素材から成形される2本の吸引ノズルの外表面を非導電性材料で被覆すると共に、2本の吸引ノズルを接着する必要がある。このため、特許文献1の洗浄装置は、上下動する吸引ノズルが反応容器と接触して非導電性材料や接着剤が剥離する可能性があり、反応容器からの洗浄液の溢れを高い信頼性の下に判定するうえで問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、洗浄時における反応容器からの洗浄液の溢れを高い信頼性の下に判定することが可能な洗浄装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の洗浄装置は、吸引ノズルと吐出ノズルとを有し、自動分析装置に設置して反応容器内の反応液を測定した後または測定する前の反応容器を洗浄液によって洗浄する洗浄装置において、前記吸引ノズルは、少なくとも前記洗浄液と接する表面が第1の導電性部材からなり、前記反応容器外部の容器開口近傍に配置される第2の導電性部材と、前記第1の導電性部材と前記第2の導電性部材との間の電気的特性を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記第1の導電性部材と前記第2の導電性部材との間の電気的特性をもとに前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の洗浄装置は、上記の発明において、前記第2の導電性部材は、前記洗浄装置近傍の前記反応容器を複数配置する前記自動分析装置の反応テーブル外周に設置されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の洗浄装置は、上記の発明において、前記第2の導電性部材は、前記反応容器を複数配置する前記自動分析装置のBFテーブルであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の洗浄装置は、上記の発明において、前記電気的特性は、導電率又は電位差であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の洗浄装置は、上記の発明において、前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定した場合に、当該洗浄装置の洗浄動作を停止させる駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬を反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、前記洗浄装置によって前記反応液を測定した後または測定する前の反応容器を洗浄液によって洗浄することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段が前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定した場合に、分析動作を停止させる制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記洗浄液が前記反応容器から溢れている場合に、その旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄装置及び自動分析装置によれば、少なくとも洗浄液と接する表面が第1の導電性部材からなる吸引ノズルと反応容器外部の容器開口近傍に配置される第2の導電性部材との間の電気的特性を測定し、測定した電気的特性をもとに洗浄液が反応容器から溢れているか否かを判定するので、洗浄時における反応容器からの洗浄液の溢れを高い信頼性の下に判定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の洗浄装置及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置に設置される実施の形態1の洗浄装置の概略構成図である。
【0016】
自動分析装置1は、血球成分を含む血液や尿等の検体を自動分析する装置であり、図1に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、試薬分注装置6,7、検体容器移送機構8、検体分注装置10、分析光学系11、洗浄装置12、第一撹拌装置17、第二撹拌装置18及び制御部21を備えている。
【0017】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ第一試薬の試薬容器2aと第二試薬の試薬容器3aが周方向に複数配置され、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。複数の試薬容器2a,3aは、それぞれ検査項目に応じた試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類,ロット及び有効期限等の試薬情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が付加されている。ここで、試薬テーブル2,3の外周には、試薬容器2a,3aに付加した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する読取装置が設置されている。
【0018】
キュベットホイール4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列されており、試薬テーブル2,3を駆動する駆動手段とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を周方向に移動させる。キュベットホイール4は、反応容器5を保持する保持部4aと光源11aが出射した光束を分光部11bへ導く円形の窓4bとを有している。
【0019】
反応容器5は、分析光学系11から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等によって四角筒状に成形されたキュベットと呼ばれる容器である。反応容器5は、近傍に設けた試薬分注装置6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0020】
試薬分注装置6,7は、それぞれ水平面内を回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム6a,7aに試薬を分注する分注プローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によって分注プローブ6b,7bを洗浄するプローブ洗浄手段を有している。
【0021】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、配列された複数のラック9を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック9は、検体を収容した複数の検体容器9aを保持している。検体容器9aは、収容した検体の検体情報を記録したバーコード等の記録媒体が貼付され、検体容器移送機構8によって移送されるラック9の歩進が停止するごとに、検体分注装置10によって検体が各反応容器5へ分注される。
【0022】
検体分注装置10は、図1に示すように、アーム10aに検体を分注する分注プローブ10bが設けられている。アーム10aは、駆動機構によって昇降駆動と回動駆動される支柱に支持されている。
【0023】
分析光学系11は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料に分析光を透過させて分析するための光学系であり、図1に示すように、光源11a、分光部11b及び受光部11cを有している。光源11aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部11bと対向する位置に設けた受光部11cによって受光される。受光部11cは、制御部21と接続されている。
【0024】
洗浄装置12は、分析開始前や測光が終了した反応容器5を洗浄するもので、図2に示すように、配管によって接続された洗剤ノズル組12A,12B、洗浄ノズル組12C〜12F、吸引ノズル12G,12H、廃液タンク12J、洗剤タンク12L、洗浄水タンク12M及び送液ポンプ12N〜12Sを有する他、外部電極部13、測定部14及び洗浄制御部15を備えている。洗剤ノズル組12A,12B、洗浄ノズル組12C〜12F、吸引ノズル12G,12Hは、保持部材12Iに保持されており、導電性素材からなる保持部材12Iを駆動する駆動手段によって一体に上下動され、反応テーブル4の回転によって矢印方向に沿って搬送されてくる反応容器5を順次洗浄する。
【0025】
洗剤ノズル組12A,12B及び洗浄ノズル組12C〜12Fは、それぞれ長さが異なり、反応容器5内の底部近くまで挿入される吸引ノズル12a、反応容器5内の中間まで挿入される吐出ノズル12b及び反応容器5内の上部まで挿入されるオーバーフロー吸引ノズル12cを有している。ここで、吸引ノズル12aは、少なくとも反応容器5内の洗剤や洗浄水と接する表面が第1の導電性部材からなる。このためには、吸引ノズル12aは、例えば、全体を導電性金属等とするか、吸引ノズル12aの表面に導電性シートを貼付し、或いは導電性塗料を塗布する等の手段がある。
【0026】
洗剤ノズル組12Aは、反応容器5内の反応液を吸引ノズル12aによって吸引して廃液タンク12Jへ廃棄すると共に、送液ポンプ12Nによって洗剤タンク12L内の洗剤を吐出ノズル12bから反応容器5内に吐出する。このとき、オーバーフロー吸引ノズル12cは、過剰な洗剤を吸引して廃液タンク12Jへ廃棄することにより、洗剤が反応容器5から溢れることを防止している。他のノズル組12B〜12Fも洗剤ノズル組12Aと同様に構成され、洗剤や洗浄水の溢れを防止している。
【0027】
洗剤ノズル組12Bは、洗剤ノズル組12Aが反応容器5内に吐出した洗剤を吸引ノズル12aによって吸引して廃液タンク12Jへ廃棄する共に、送液ポンプ12Oによって洗剤タンク12L内の洗剤を吐出ノズル12bから反応容器5内に吐出する。
【0028】
洗浄ノズル組12Cは、洗剤ノズル組12Bが反応容器5内に吐出した洗剤を吸引ノズル12aによって吸引して廃液タンク12Jへ廃棄し、送液ポンプ12Pによって洗浄水タンク12M内の洗浄水を吐出ノズル12bから反応容器5内に吐出する。
【0029】
洗浄ノズル組12Dは、洗浄ノズル組12Cが反応容器5内に吐出した洗浄水を吸引ノズル12aによって吸引して廃液タンク12Jへ廃棄し、送液ポンプ12Pによって洗浄水タンク12M内の洗浄水を吐出ノズル12bから反応容器5内に吐出する。以下、洗浄ノズル組12E,12Fは、洗浄ノズル組12Dと同様に構成され、洗浄ノズル組12Dと同様の操作を繰り返す。
【0030】
吸引ノズル12Gは、洗浄ノズル組12Fが反応容器5内に吐出した洗浄水を吸引し、廃液タンク12Jへ廃棄する。吸引ノズル12Hは、下端に合成樹脂性のチップ12hが取り付けられ、吸引ノズル12Gが残した洗浄水を吸引し、廃液タンク12Jへ廃棄する。廃液タンク12Jは、真空ポンプ12Kによって内部が負圧に保持されている。
【0031】
外部電極部13は、洗浄装置12の位置の反応容器5外部の開口5a近傍に配置され、図2及び図3に示すように、電気絶縁性を有する支持部材13aに第2の導電性部材からなる外部電極13bが設けられている。
【0032】
測定部14は、配線14aによって各吸引ノズル12a表面の第1の導電性部材と電気的に接続され、配線14bによって外部電極13bと接続されている。測定部14は、配線14bと各配線14aとの接続を内部で順次切り替えることにより、各吸引ノズル12aと外部電極13bとの間の導電率を測定する。測定部14は、測定した各吸引ノズル12aと外部電極13bとの間の測定信号を洗浄制御部15へ出力する。
【0033】
洗浄制御部15は、制御部21と連携して洗浄装置12の作動を制御し、図2に示すように、駆動制御部15aと判定部15bとを有している。駆動制御部15aは、送液ポンプ12N〜12Sや真空ポンプ12Kの作動並びに保持部材12Iを駆動する駆動手段の作動を制御する。判定部15bは、測定部14が測定した吸引ノズル12aと外部電極13bとの間の導電率をもとに洗剤が反応容器5から溢れているか否かを判定する。洗剤が溢れていると判定した場合、判定部15bは、駆動制御部15aと制御部21へ溢れ判定信号を出力する。溢れ判定信号が入力されると、駆動制御部15aは送液ポンプ12N〜12Sを停止して吐出ノズル12bから洗剤や洗浄水の吐出を止め、制御部21は動分析装置1の分析動作を停止させる。
【0034】
第一撹拌装置17及び第二撹拌装置18は、分注された検体と試薬とを撹拌棒17a,18aによって撹拌し、反応させる。
【0035】
制御部21は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部21は、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、試薬分注装置6,7、検体容器移送機構8、検体分注装置10、分析光学系11、洗浄装置12、撹拌装置17,18、入力部22及び表示部23等と接続され、これら各部の作動を制御する。特に、制御部21は、判定部15bから溢れ判定信号が入力された場合に自動分析装置1の分析動作を停止させる。
【0036】
入力部22は、制御部21へ検査項目や沈降成分を含む検体の分注手順等に関する入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部23は、分析内容,分析結果或いは洗浄装置12の位置における反応容器5からの洗剤や洗浄水を含む洗浄液の溢れを告知する警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。この他、自動分析装置1は、分析結果を一覧表等にしてプリントアウトする出力部(図示せず)を備えている。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注装置6が試薬容器2aから第一試薬を順次分注する。第一試薬が分注された反応容器5は、検体分注装置10によってラック9に保持された複数の検体容器9aから検体が順次分注される。
【0038】
検体が分注された反応容器5は、キュベットホイール4が停止する都度、第一撹拌装置17によって撹拌されて第一試薬と検体が反応する。第一試薬と検体が撹拌された反応容器5は、試薬分注装置7によって試薬容器3aから第二試薬が順次分注された後、キュベットホイール4の停止時に第二撹拌装置18によって撹拌され、更なる反応が促進される。
【0039】
次いで、キュベットホイール4が再び回転すると、キュベットホイール4は、反応容器5が光源11aに対して順次相対移動し、反応容器5が分析光学系11を通過する。これにより、受光部11cが制御部21に光量に応じた信号を出力する。
【0040】
制御部21は、受光部11cから入力される波長ごとの光量信号をもとに各反応容器5内の液体試料の波長ごとの吸光度を求め、検体の成分濃度等を分析する。この際、制御部21は、分析した検体の成分濃度等の分析結果を記憶し、分析結果を表示部23に表示する。このようにして、分析が終了した反応容器5は、洗浄装置12によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0041】
このとき、吸引ノズル12aにノズル詰りを発生することなく適正に作動していると、洗浄装置12の洗浄ノズル組12A〜12F、例えば、洗浄ノズル組12Bでは、図4に示すように、吸引ノズル12aによる洗剤Dの吸引と、吐出ノズル12bから新たな洗剤Dの吐出がバランスし、洗剤Dの液位が所定位置に保持される。このため、吸引ノズル12aの第1の導電性部材と第2の導電性部材である外部電極13bとの間が電気的に遮断されているので、測定部14が測定する導電率は、図5に示すように、限りなくゼロに近くなる。
【0042】
但し、例えば、オーバーフロー吸引ノズル12cが詰まると共に、図6に示すように、吸引ノズル12aに異物Sが詰ると、吸引ノズル12aによる洗剤Dの吸引がない状態で新たな洗剤Dが吐出ノズル12bから反応容器5内に吐出されることになる。このため、図示のように、洗剤Dが反応容器5から溢れ出し、溢れ出た洗剤Dによって吸引ノズル12aの第1の導電性部材と第2の導電性部材である外部電極13bとの間が電気的に接続される。この結果、測定部14が測定する導電率は、図5に示すように、著しく増大する。
【0043】
従って、判定部15bは、図5に示すように、予め設定した閾値Tを基準とし、測定部14が測定した吸引ノズル12aの第1の導電性部材と外部電極13bとの間の導電率をもとに洗剤が反応容器5から溢れているか否かを判定する。即ち、判定部15bは、測定部14から入力される導電率信号をもとに導電率が閾値Tを越えた場合に反応容器5から洗剤が溢れていると判定する。洗剤が溢れていると判定した場合、駆動制御部15aは、測定部14からの溢れ判定信号をもとに洗浄装置12の洗浄動作を停止させる。
【0044】
ここで、洗剤と洗浄水(純粋又はイオン交換水)とでは、洗剤の方が大きい導電率を有している。このため、反応容器5から洗剤が溢れた場合でも、洗浄水が溢れた場合でも判定することができるように、導電率が小さい方の液体を基準として閾値Tを設定する。
【0045】
そして、反応容器5から洗剤が溢れていると判定した場合、判定部15bは、制御部21へ溢れ判定信号を出力する。この溢れ判定信号を受信すると、制御部21は、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、試薬分注装置6,7、検体容器移送機構8、検体分注装置10、分析光学系11及び撹拌装置17,18へ制御信号を出力し、分析動作を停止させる。
【0046】
このように、自動分析装置1は、各吸引ノズル12aの第1の導電性部材と第2の導電性部材である外部電極13bとの間の導電率をもとに洗剤や洗浄水が反応容器5から溢れているか否かを判定する。このため、自動分析装置1は、洗浄装置12による洗浄時における反応容器5からの洗剤や洗浄水の溢れを高い信頼性の下に判定することができる。また、洗浄装置12は、各吸引ノズル12aの第1の導電性部材と外部電極13bとの間の導電率をもとに洗剤や洗浄水が反応容器5から溢れているか否かを判定するので、構成が簡単なうえ、長期に亘って高い信頼性を保持することができるという利点を有している。
【0047】
しかも、反応容器5から洗剤や洗浄水が溢れた場合、自動分析装置1は、駆動制御部15aが吐出ノズル12bからの洗剤や洗浄水の吐出を停止させると共に、制御部21が分析動作を停止させる。このため、自動分析装置1は、洗剤や洗浄水の溢れによる悪影響を最小限の範囲に留めることができ、溢れに伴うメンテナンスの手間を最小限に抑えることができる。
【0048】
(実施の形態2)
次に、本発明の洗浄装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の洗浄装置は、生化学分析用の洗浄装置であったのに対し、実施の形態2の洗浄装置は免疫分析用の洗浄装置である。図7は、B/Fテーブルを模式的に示す実施の形態2に係る洗浄装置の概略構成図である。
【0049】
洗浄装置30は、図7に示すように、BF洗浄液を反応管32aへ吐出する吐出ノズル30a、BF洗浄液を反応管32aから吸引する吸引ノズル30b、BF洗浄液を貯留する洗浄液タンク30c、BF洗浄後の廃液を貯留する廃液タンク30dを有する他、BFテーブル32、測定部34及び洗浄制御部35を備えている。ここで、吐出ノズル30a及び吸引ノズル30bは、実際は複数の反応管32a用に複数あるが、簡単のためそれぞれ1本とした。また、吸引ノズル30bは、少なくとも反応管32a内のBF洗浄液と接する表面が、吸引ノズル12aと同様に第1の導電性部材からなる。
【0050】
吐出ノズル30aは、吐出ポンプ30eを設けた供給配管30fによって洗浄液タンク30cと接続され、反応管32aにBF洗浄液を吐出する。吸引ノズル30bは、図7に示すように、吸引ポンプ30gを設けた配管30hによって廃液タンク30dと接続され、反応管32a内のBF洗浄液を吸引する。また、吸引ノズル30bには、発振器31によって交流信号が印加されている。
【0051】
BFテーブル32は、モータ33によって軸32bを中心として回転され、反応管32aを所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル32は、反応管32a外部の容器開口近傍に配置される導電金属からなる円板状の第2の導電性部材であり、図7に示すように、外縁には反応管32aを配置する配置口32cが周方向に沿って複数設けられている。配置口32cには、反応管32aの上部開口外縁が係止される。
【0052】
測定部34は、交流信号が印加される吸引ノズル30bの第1の導電性部材とBFテーブル32との間の静電容量を電圧として測定する。
【0053】
洗浄制御部35は、洗浄装置30の作動を制御し、図7に示すように、駆動制御部35aと判定部35bとを有している。駆動制御部35aは、吐出ポンプ30e、吸引ポンプ30g及びモータ33の作動を制御する。判定部35bは、測定部34が測定した静電容量に起因した電位差をもとにBF洗浄液が反応管32aから溢れているか否かを判定する。洗剤が溢れていると判定した場合、判定部35bは、駆動制御部35aへ溢れ判定信号を出力する。駆動制御部35aは、溢れ判定信号を受信した場合には、吐出ポンプ30eを停止して吐出ノズル30aによるBF洗浄液の吐出停止等、洗浄装置30の洗浄動作を停止させる。
【0054】
ここで、吐出ノズル30aがBF洗浄液を吐出し、吸引ノズル30bが適正に吸引している場合、反応管32aは、図8に示すように、BF洗浄液Lが所定液位に保持される。但し、測定部34が測定する電位差は、反応管32a内の液量が同じであっても、BF洗浄液を含め、保持する液体の導電性の有無によって、図9に示すように異なっている。
【0055】
このとき、例えば、図10に示すように、吸引ノズル30bに異物Sが詰ると、反応管32aからBF洗浄液Lが溢れる。すると、吸引ノズル30bとBFテーブル32との間が導電性のBF洗浄液Lによって電気的に接続される。この結果、BF洗浄液Lが反応管32aから溢れると、測定部34が測定する電位差は、図9に示すように、最大の電位差VFになる。
【0056】
このため、洗浄装置30は、図9に示すように、液溢れがない場合の電位差VL,VHとBF洗浄液が溢れた場合の電位差VFとの間に予め閾値Vtを設定しておく。これにより、判定部35bは、予め設定した閾値Vtを基準とし、測定部34が測定した電位差が閾値Vtを越えるか否かでBF洗浄液の溢れの有無を判定することができる。即ち、判定部35bは、測定部34が測定した電位差が閾値Vtを越えた場合に反応管32aからBF洗浄液が溢れていると判定する。
【0057】
従って、判定部35bは、予め設定した閾値Vtを基準とし、測定部34が測定した電位差が閾値Vtを越えるか否かでBF洗浄液の溢れの有無を判定することができる。即ち、判定部35bは、測定部34が測定した電位差が閾値Vtを越えた場合に反応管32aからBF洗浄液が溢れていると判定する。BF洗浄液が溢れていると判定した場合、駆動制御部35aは、洗浄装置30の洗浄動作を停止させる。
【0058】
このように、洗浄装置30は、測定部34が測定した静電容量に起因した電位差をもとにBF洗浄液が反応管32aから溢れているか否かを判定するので、BF洗浄時における反応管32aからのBF洗浄液洗の溢れを高い信頼性の下に判定することができる。
【0059】
尚、吸引ノズルと前記導電性部材との間の電気的特性としては、上述の他に、電気抵抗であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置に設置される実施の形態1の洗浄装置の概略構成図である。
【図3】導電性部材となる外部電極と反応容器との位置関係を示す断面図である。
【図4】吸引ノズルが適正に作動している場合に、吐出ノズルが反応容器へ吐出した洗剤の液位が所定位置に保持される様子を示す図3に対応した断面図である。
【図5】液溢れがない場合の導電率とある場合との導電率を示す図である。
【図6】吸引ノズルにノズル詰りが発生し、反応容器から溢れ出した洗剤によって吸引ノズルと外部電極との間が電気的に接続された様子を示す図3に対応した断面図である。
【図7】B/Fテーブルを模式的に示す実施の形態2に係る洗浄装置の概略構成図である。
【図8】吐出ノズルがBF洗浄液を吐出し、吸引ノズルが適正に吸引している場合に、反応管内のBF洗浄液が所定液位に保持される様子を示す断面図である。
【図9】測定部が測定する保持する液体の導電性の有無による電位差並びにBF洗浄液が溢れた場合の電位差を示す図である。
【図10】反応管からBF洗浄液が溢れ、吸引ノズルとBFテーブルとの間がBF洗浄液によって電気的に接続された様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 キュベットホイール
5 反応容器
5a 開口
6,7 試薬分注装置
8 検体容器移送機構
9 ラック
10 検体分注装置
11 分析光学系
12 洗浄装置
12a 吸引ノズル
12b 吐出ノズル
13 外部電極部
13b 外部電極
14 測定部
15 洗浄制御部
15a 駆動制御部
15b 判定部
17 第一撹拌装置
18 第二撹拌装置
21 制御部
22 入力部
23 表示部
30 洗浄装置
30a 吐出ノズル
30b 吸引ノズル
32 BFテーブル
32a 反応管
33 モータ
34 測定部
35 洗浄制御部
35a 駆動制御部
35b 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ノズルと吐出ノズルとを有し、自動分析装置に設置して反応容器内の反応液を測定した後または測定する前の反応容器を洗浄液によって洗浄する洗浄装置において、
前記吸引ノズルは、少なくとも前記洗浄液と接する表面が第1の導電性部材からなり、
前記反応容器外部の容器開口近傍に配置される第2の導電性部材と、
前記第1の導電性部材と前記第2の導電性部材との間の電気的特性を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した前記第1の導電性部材と前記第2の導電性部材との間の電気的特性をもとに前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記第2の導電性部材は、前記洗浄装置近傍の前記反応容器を複数配置する前記自動分析装置の反応テーブル外周に設置されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第2の導電性部材は、前記反応容器を複数配置する前記自動分析装置のBFテーブルであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記電気的特性は、導電率又は電位差であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定した場合に、当該洗浄装置の洗浄動作を停止させる駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
検体と試薬を反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、請求項1〜5のいずれか一つに記載の洗浄装置によって前記反応液を測定した後または測定する前の反応容器を洗浄液によって洗浄することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
前記判定手段が前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定した場合に、分析動作を停止させる制御手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記洗浄液の前記反応容器からの溢れを判定した場合に、その旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−190750(P2010−190750A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35883(P2009−35883)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】