説明

洗浄装置

【課題】自動分注装置において、定期メンテナンス作業であるチップ装着部の洗浄作業に関して、その作業負担を軽減する。
【解決手段】自動分注装置の内部に洗浄液容器とその内部に洗浄具を設けて、チップ装着部を洗浄するための洗浄セクションを設ける。チップ装着部の搬送機構を利用することにより、チップ装着部を洗浄液に浸された洗浄具に接触させて上下運動をすることによりチップ装着部を洗浄する。洗浄具としては例えば洗浄ブラシを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に関し、特に、試料を吸引及び吐出するノズルの洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分注装置では検体の吸引及び吐出を行うためにノズルが用いられる。典型的な分注装置においては、ノズルチップとそれが装着されるチップ装着部とによってノズルが構成される。通常、ノズルチップには樹脂製のディスポーザブルチップが用いられる。ディスポーザブルチップを用いる場合には、当該ディスポーザブルチップを取り外す際に、その取り外し力や反動力によってノズルチップの内壁等に残留した検体から細かい飛沫が発生する場合がある。その飛沫はチップ装着部に付着する可能性がある。このため、例えば1日に1回程度の頻度でチップ装着部を洗浄する必要がある。従来、チップ装着部の洗浄作業は人手で行われている。なお、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、分注用ノズルを洗浄する方法が示されているが、チップ装着部の洗浄については記載されておらず、また洗浄具を利用してより積極的に(つまり物理的な接触を利用して)ノズルを洗浄することについても記載されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平5−1983号公報
【特許文献2】特開平8−21840号公報
【特許文献3】特開平11−271331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分注装置においては、定期的なメンテナンスとして、チップ装着部の洗浄を行う必要がある。人手による洗浄作業は、スパナ等の工具を使ってチップ装着部を取り外した上で、チップ装着部を洗浄するものである。特に、処理能力が高い分注装置においては5個以上のチップ装着部を備えるものもあり、洗浄作業はユーザにとって時間と手間のかかる作業となっていた。
【0005】
本発明の目的は、分注装置のメンテナンスの負担を軽減できる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に洗浄液を蓄える洗浄液容器と、前記洗浄液容器の内部に設けられた洗浄具と、分注用ノズルチップが着脱可能に装着されるチップ装着部を搬送する搬送機構と、前記搬送機構の動作を制御する手段であって、前記チップ装着部の洗浄時に、前記チップ装着部を前記洗浄具による洗浄位置まで移動させて前記チップ装着部を洗浄する制御を実行する制御手段と、を含むことを特徴とする洗浄装置に関する。望ましくは、前記洗浄具は洗浄ブラシである。
【0007】
上記構成によれば、チップ装着部の洗浄時においては、チップ装着部が搬送機構によって洗浄セクションまで搬送され、チップ装着部が洗浄液容器内の洗浄具及び洗浄液によって洗浄される。よって、定期的にあるいは所望のタイミングで上記の洗浄動作を実行させることにより、自動的に且つ確実にチップ装着部を洗浄できる。洗浄具としては様々なものを利用できるが、洗浄具として洗浄ブラシを利用すれば、複数の植毛をチップ装着部の表面に当接させて洗浄効率を高められる。例えば、乾燥している検体や粘度が高まった検体を確実に掻き落とすことも可能である。チップ装着部における汚染が生じる可能性がある部分に洗浄具を当接させるのが望ましく、例えば、チップ装着部の先端部における内周面、外周面、先端面の全部又は一部にそれを当接させるのが望ましい。洗浄具はある程度それ自身が変形可能なスポンジ、布、等の材料で構成してもよい。
【0008】
望ましくは、前記チップ装着部は分注用エア流路としての中空孔を有し、前記洗浄ブラシは、前記洗浄液容器の底面上に起立配置され、前記チップ装着部の洗浄時に、前記中空孔に前記洗浄ブラシが挿入される。
【0009】
上記構成によれば、洗浄液容器の底に起立して設けられ、洗浄液に浸された洗浄ブラシが、チップ装着部の中空孔に挿入されることで、中空孔の内面が洗浄される。中空孔の内面に付着した液体を洗浄具としての洗浄ブラシで除去することができる。勿論、チップ装着部の外面を洗浄ブラシに接触させるように、当該洗浄ブラシを構成してもよい。
【0010】
望ましくは、前記中空孔に前記洗浄ブラシが挿入された状態で前記チップ装着部が上下に運動する。この構成によれば洗浄効果を高められる。また、上下運動を行わせるために既存の搬送機構を活用できる。
【0011】
望ましくは、前記チップ装着部は分注用エア流路としての中空孔を有し、前記チップ装着部に対する前記洗浄ブラシによる洗浄後に、前記中空孔からエアを吐出させる排気手段が設けられる。この構成によれば、洗浄作業によって、チップ装着部の中空孔の内部に付着した残留液をエアで排出して吹き飛ばすことができる。中空孔に洗浄液が残留することによる問題(例えば、ノズル搬送中の液滴落下)を未然に防止できる。
【0012】
望ましくは、更に水分吸収手段を含み、前記制御部は、前記チップ装着部に対する前記洗浄ブラシによる洗浄後に、前記チップ装着部を前記水分吸収手段に接触させる。この構成によれば、洗浄ブラシを用いた洗浄後に、チップ装着部の表面に存在している洗浄液を水分吸収手段によって吸い取らせることができる。これにより、チップ装着部の表面に洗浄液が残留してその後のノズル動作に影響が及ぶことを防止できる。
【0013】
なお、チップ装着部の洗浄は、チップ装着部からノズルチップを取り外す度に行わせることもできるが、予め定められたタイミングで行わせるようにしてもよい。例えば、分注装置の1日の稼働後に洗浄工程を実行させてもよいし、1日の稼働前にそれを実行させてもよい。また、定期的にメンテナンスを行う者がその判断で洗浄動作の指令を与えてもよい。また、多連ノズル(複数のノズルからなるノズル列)に対して同時に洗浄を行うようにしてもよい。その場合には各ノズルごとに洗浄具を用意しておくのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、分注装置のメンテナンスの負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置の機能を搭載した自動分注装置の説明図である。自動分注装置100は、検体処理システム全体の中の一つの装置であって、分注作業のための専用装置として使用される。図1は、自動洗浄装置100の全体としての構成図であるので、チップ装着部の洗浄のために特に必要でない構成品が示されているが、実際には、洗浄機能のために必要な構成品としては、洗浄槽32と、5連ノズルユニット16とその搬送機構と、搬送機構の制御部20とが必要となる。
【0016】
自動分注装置100に対しては、自動分注装置100よりも上流側に配置された装置から、分注処理の対象である検体が搬送されてくる。図1には、ラック搬送ベルト12の上に3つの親検体ラック(10a,10b,10c)が、X軸の正方向に搬送されることが示されている。検体の種類としては、血液・尿などが挙げられる。
【0017】
自動分注装置100には、5連ノズルユニット16が備えられる。5連ノズルユニット16は、5個のチップ装着部(36a〜36e)を有している。5連ノズルユニット16は、X方向への移動をガイドするためのX軸リニアガイド18の上に搭載されている。そのX軸リニアガイド18の両端部分は、Y軸方向への移動を行うための2台のY軸リニアガイド20A,20Bの上に搭載されている。5連ノズルユニット16をX方向及びY方向へ移動するための駆動源として、図示されていないX軸駆動モータ及びY軸駆動モータが用いられている。また、5連ノズルユニット16の内部には、Z軸駆動モータが搭載されている。5連ノズルユニット16を移動させるための駆動源であるX軸駆動モータ、Y軸駆動モータ及びZ軸駆動モータは、制御部20からの指令信号に従って各方向への移動量が制御される。5連ノズルユニット16は、制御部20によって移動量・移動速度を指令されることにより、XYZ三次元座標の搬送可能範囲内において任意の位置に搬送され位置決めされる。
【0018】
5連ノズルユニット16の移動範囲内には、未使用ノズルチップラック24と、子検体分注用ラック28と、チップリムーバ30と、洗浄槽32などが所定の位置に配置されている。未使用ノズルチップラック24は、新品未使用の多数のノズルチップを保管しているラックである。なお、本実施形態におけるノズルチップはいわゆるディスポーザブルチップである。子検体分注用ラック28は、検体の分注先の試験管がまとめて配置されるラックである。チップリムーバ30は、金属製のチップ装着部に取り付けられた樹脂製のノズルチップを外すための装置である。本実施形態においては、未使用ノズルチップラック24の横側にチップ装着部を洗浄するための場所として洗浄セクションが設けられる。洗浄槽32は、その洗浄セクションに配置される。
【0019】
5連ノズルユニット16を用いて行う分注作業は、基本的に、(1)新品ノズルチップの装着、(2)検体の吸引、(3)検体の吐出、(4)ノズルチップの取外し、という4つの工程からなる。親検体ラックに搭載される複数の親検体の分注作業について、以下順に説明する。
【0020】
それぞれの親検体は、1本の試験管の中に注入されており、例えば5本の試験管を1組にまとめて搭載した親検体ラックが、その親検体ラックを搬送単位として、ラック搬送ベルト12に乗せられて自動分注装置100に対して搬送される。分注作業が施される親検体が搭載された親検体ラックは、自動分注装置100のほぼ中央の分注位置26で一時的に停止する。
【0021】
(1) 新品ノズルチップの装着。5連ノズルユニット16は、親検体ラックが分注位置26に到着する前に、未使用ノズルチップラック24の上に移動し、新品のノズルチップをチップ装着部に取り付ける装着動作を行う。
【0022】
(2) 検体の吸引。ノズルチップを装着した後に、5連ノズルユニット16は分注位置26に停止した親検体ラックに向かって移動し、各ノズルチップを各試験管の中に挿入し、試験管内の検体をノズルチップ内に吸引する。
【0023】
(3) 検体の吐出。分注位置26において検体を吸引した後、5連ノズルユニット16は子検体分注用ラック28に向かって移動する。各ノズルチップ内に吸引された検体は、子検体分注用ラック28の上に搭載された複数の試験管に少量ずつ分注される。
【0024】
(4) ノズルチップの取外し。ノズルチップ内に吸引した検体を全て吐出した後に、5連ノズルユニット16はチップリムーバ30の設置場所に移動し、チップリムーバ30に設けられたU字型の切欠き溝に対して、ノズルチップの上縁口部分を引っ掛けてノズルチップを取り外す。全数のノズルチップを一括で取り外した段階で、一通りの分注作業は完了する。
【0025】
ノズルチップを取り外した後に、再度、制御部20から分注動作の指令が行われると、再び、未使用ノズルチップラック24において新品のノズルチップを取り付ける工程(1)に戻り、分注作業が繰り返される。以上示したように、5連ノズルユニット16は前述の4工程(1)(2)(3)(4)の動作を行うことで、分注作業を繰り返して行うことができる。
【0026】
(1)から(4)までの定められた分注工程を繰り返して実行している間に、液体である検体は、ノズルチップにしか接触することはない。それ故に、基本的には、チップ装着部に検体が直接触れて濡れてしまう状態は発生しない。しかしながら、検体の吸引と吐出を多数回繰り返していると、液体である検体から微量の飛沫が発生することがあり、その微量の飛沫は、ノズルチップ内部の空気の流れに沿って、チップ装着部の表面に付着してしまうことがある。検体の飛沫がチップ装着部に付着することに対する予防措置として、チップ装着部から空気を排出しながら工程(4)のノズルチップの取外し動作を行うような対策も考えられた。しかしながら、このような予防措置を行っても飛沫の付着が発生することがあり、チップ装着部を1日に1回程度の頻度で洗浄することが必要になっていた。本実施形態に係る洗浄装置は、上記のような背景の下で問題に対処するために考案されたものである。
【0027】
図2は、図1に示した5連ノズルユニット16の斜視図である。前述したように5連ノズルユニット16はX軸リニアガイド18の上に搭載されている。5連ノズルユニット16は、1回の動作で5つの検体を同時に処理できるように、5台の分注モジュ−ル(34a〜34e)から構成されている。全部で5個のチップ装着部(36a〜36e)には、分注作業を行う度に未使用のノズルチップが装着されて分注作業が行われる。図2においては、例えば1つのチップ装着部として、チップ装着部36aにノズルチップ38aが装着されている様子が示されている。シリンジポンプ42aは、図示されていない配管チューブによってチップ装着部36aと接続される。
【0028】
5台の分注モジュ−ル(34a〜34e)は、分注の機能に関して互いに共通なので、説明を簡略化するために1つの分注モジュール34aについて機能を記す。分注モジュール34aは、シャフト軸を回転させるZ軸駆動モータ41aと、Z軸駆動モータ41aの回転力をチップ装着部36aの上下方向への搬送力に変換するためのZ軸案内機構40aと、分注モジュールの下側に設けられたチップ装着部36aとを有している。Z軸駆動モータ41aが回転すると、その回転力がZ軸案内機構40aに伝達されて、チップ装着部36aがZ軸に沿って上下に移動する。シリンジポンプ42aが動作すると、チューブにてシリンジポンプ42aと接続されているチップ装着部36aの中央孔から空気を吸入または吐出することができる。本実施形態においては、各チップ装着部(36a〜36e)は単独で自在に移動することはなく、5連ノズルユニット16としてひとつのグループを形成して移動する。
【0029】
図3は、図1に示した自動分注装置において、洗浄装置として機能する部分を模式的に示した説明図である。図3には洗浄槽32と5連ノズルユニット16の一部分とが示されている。洗浄槽32は、図1に示した自動分注装置100の内部に設けられた洗浄セクションに配置される。洗浄槽32は、洗浄液容器52、洗浄ブラシ(56a〜56e)、吸水パッド62などから構成される。洗浄液容器52は、液体を溜める直方体形状の金属製の容器である。洗浄液容器52は、例えばステンレスのように耐腐食性のある材料を用いることが好ましいが、ガラス等の材料で構成することもできる。
【0030】
洗浄液容器52の中には、金属製の底面ブロック54が配置される。底面ブロック54には5つの穴が設けられ、その穴には5本の洗浄ブラシ(56a〜56e)が直立して配置される。洗浄ブラシは直線上に配置され、その間隔はX軸方向に同一のピッチで配置される。5本の洗浄ブラシ(56a〜56e)は、2本の針金を束ねてその間に毛材を植毛し、針金をねじって作られたブラシが使用される。植毛されたブラシ以外にも、スポンジを装着した概円筒形の洗浄具を用いることもできる。
【0031】
洗浄液容器52には、洗浄液を注入するための洗浄液注入管58が備えられている。洗浄液注入管58は樹脂製で、その形状は一部屈曲している。洗浄液注入管58には、図示されていない洗浄液注入用バルブが備えられており、そのバルブを開閉することで所要量の洗浄液を洗浄液容器52に注入することができる。洗浄液には、基本的には、いわゆる洗剤(表面活性剤を含んだ希釈液)が用いられるが、例えばヒビテンのように殺菌作用のある消毒液を使用することも可能である。
【0032】
洗浄液容器52の底面には、容器内の洗浄液を排出するための洗浄液排出管60が備えられている。洗浄液排出管60には排出用バルブ61が設けられており、そのバルブの開閉によって、洗浄処理後の洗浄液あるいは洗浄液容器内の残留物を排出することができる。
【0033】
洗浄液容器52の奥側には吸水パット62が配置されている。吸水パット62は5個のチップ装着部(36a〜36e)に付着した水分を吸収するための部品である。吸水パッド62は吸水紙で作られているが、高分子吸収材、木綿またはスポンジ等の素材で構成してもよい。本実施形態の吸水パッド62はディスポーザブルであり、1回の洗浄の度に交換される。吸水パッド62の形状は、形成が簡易な平面形状となっている。なお、スポンジのように成型が可能な素材で吸水パット62を成型する場合には、チップ装着部36の下端の円筒形状に一致させて接触面積が増えるように窪みを設けて成型してもよい。
【0034】
5連ノズルユニット16は前述したように5個のチップ装着部(36a〜36e)を有する。各チップ装着部には、その円筒部分と中心軸を同一にして中空孔が貫通して形成されており、(全5個のチップ装着部の代表例として)例えばチップ装着部36aの中空孔37aは、チップ装着部36aを上部で支持している支持部39aの貫通穴と連通している。支持部39aの貫通穴はチューブ64の接続部まで貫通している。支持部39aのチューブ接続部にはチューブ64aが接続され、そのチューブ64aの他端はシリンジポンプ42aに接続されている。5連ノズルユニット16には計5台のシリンジポンプが備え付けられており、各チップ装着部とチューブでそれぞれに接続されている。
【0035】
チップ装着部(36a〜36e)の洗浄を行う場合には、まず、洗浄液の注入が行われる。つまり、図示されていない洗浄液注入用バルブを開いて洗浄液注入管58から洗浄液を洗浄液容器52に注ぐ。洗浄液は、洗浄ブラシ56の先端部が液面から少し出る程度の高さまで注入される。本実施形態においては、注入する洗浄液の量が数百ミリリットル程度で少量であるので、洗浄液の注入流量の調節と液面の高さの判別は、オペレータの目視判断によって手動で実行される。但し、電磁バルブを用いて洗浄液の注入開始動作を自動化することは可能であるし、洗浄液の高さを液面センサによって検出して、所定の量の洗浄液が注入された場合に電磁バルブを閉じることにより、注入完了動作を自動化することも可能である。洗浄液の注入が完了すると、5本の洗浄ブラシ(56a〜56e)は、先端に毛材の部分をわずかに液面から上に出した状態になり、洗浄ブラシの本体部分はほとんどが洗浄液の中に浸される。洗浄液の注入によって洗浄の前準備が完了する。
【0036】
洗浄作業を開始するためには、オペレータは図1に示す自動分注装置100の操作パネル上に設けられている洗浄スイッチを操作する。図1に示す制御部20では、洗浄スイッチが操作されたことを検出して、5連ノズルユニット16の搬送機構に対して、所定の洗浄シーケンス動作を実行するように指令する。
【0037】
図4を用いて、洗浄作業を行うためのチップ装着部の動作について順に示す。図4にはチップ装着部36aの洗浄作業中の動作が示されている。図4に示すIからVIまでの動作は、全て搬送機構の制御部20からの指令に従って行われる。
【0038】
まず、チップ装着部36aは、チップリムーバ30によって既にノズルチップを取り外した状態で洗浄セクションに移送される。図4においては、1個のチップ装着部36aの動作を代表的に示しているが、他の4個のチップ装着部(36b〜36e)についても全く同じ動作が実行される。搬送機構の制御部20は、まず、移動命令を指令し、チップ装着部36aを洗浄ブラシ56aの真上の位置に移動させる(動作I)。洗浄ブラシ56aの真上の位置でシリンジポンプ42aはその容積一杯に空気を吸引する。
【0039】
シリンジポンプ42aの内部に空気を蓄えた後、制御部20は次の移動命令を指令し、チップ装着部36aは、直立した洗浄ブラシ56aに向かって垂直に降下する(動作II)。チップ装着部36aの降下により、中空孔37aには直立した洗浄ブラシ56aが挿入される。5連ノズルユニット16の位置決めの精度は高精度であるので、洗浄ブラシ56aは中空孔37aの中心位置に真っ直ぐ挿入される。挿入と同時に洗浄ブラシ56aの毛材が中空孔37aの内壁面に接触する。
【0040】
チップ装着部36aに洗浄ブラシ56aが挿入された状態において、制御部20は次の移動命令を指令し、チップ装着部36aはZ軸方向に上下に往復運動を行う(動作III)。チップ装着部36aの下端面35または中空孔37aの内壁面が洗浄液に浸った状態で、中空孔37aに挿入された洗浄ブラシ56aとチップ装着部36aは、相対的に上下方向に擦り合わされる。洗浄ブラシ56aの植毛が内面壁を直接に擦るので、内部に付着した汚れを掻き出して取り除くことができる。
【0041】
複数回の上下運動を終えた後に、制御部20は次の移動命令を指令し、チップ装着部36は上方に移動して洗浄液より高い位置を保ち、そのまま水平方向に移動して、吸水パッド62の上部の位置で停止する(動作IV)。停止後にシリンジポンプ42aに吸引していた空気を吐出する。空気を中空孔から排出することにより、中空孔内部に付着している残留液は中空孔の外部に吹き飛ばされる。中空孔から空気を吐出する回数は、吸引していた空気を1回で全部吐出してもよいし、数回に分けて吐出してもよい。空気を吐出する動作を行う場所は、吸水パッド62の上でなくても洗浄液容器52の上でもよい。
【0042】
吸水パッド62の上方に移動した後に、制御部20は次の移動命令を指令し、Z軸方向にその位置を降下させて移動する(動作V)。チップ装着部36の下端面35は、吸水パッド62に接触するまでその高さを降下する。チップ装着部36と吸水パッド62との接触回数は1回とは限らず、複数回であってもよいので、接触した後にZ軸方向への上昇と下降動作を繰り返すこともできる。チップ装着部36aを吸水パッド62に接触させて残留液を吸い取ることによって、チップ装着部36aから液滴が落下してしまうことを事前に防止できる。
【0043】
吸水パッド62に接触した後は、制御部20は移動命令を指令し、チップ装着部36aは上方に移動する(動作VI)。上方に移動した後は、次の移動指令の指示待ち状態に移行する。移動指示待ちの状態において制御部20から新たにノズルチップの装着指令がなされると、チップ装着部は未使用ノズルチップラック24に移動して、分注処理を継続することができる。チップ装着部36aの洗浄処理は、通常、一日の最終過程で行われることが多いため、洗浄処理が完了するとそのまま自動分注装置100の運転を停止して、チップ装着部36aが自然に乾燥するように放置してもよい。
【0044】
ちなみに、チップ装着部36aの円筒面33の洗浄については、固定された洗浄ブラシ56aの周りをチップ装着部36aが一周する動作を行うことによって洗浄することができる。
【0045】
つまり、チップ装着部36aを洗浄ブラシ56aの真上から降下させるのではなく、中空孔37aに洗浄ブラシ56aが挿入されないX軸又はY軸方向に少し離れた位置でチップ装着部36aを降下することにより、チップ装着部36aの円筒面33の一部分に洗浄ブラシ56aの一部分を当接させることができる。その当接状態のまま、XY平面上において洗浄ブラシ56aを中心とした円運動を行うことにより、洗浄ブラシ56aによって、チップ装着部36aの円筒面33を一周にわたって擦ることができる。動作IIIによってチップ装着部36aが行う動作は、上下への往復運動であるので中空孔37aの内部を洗浄するのに適しているが、洗浄ブラシ56aの周りを周回する運動を行うことにより、円筒面33についても洗浄することができる。
【0046】
以上、説明した洗浄装置によれば、オペレータが洗浄動作のためのスイッチを押すだけで、洗浄処理を実行することができるので、全数のチップ装着部の洗浄を簡単に自動的に行うことができる。洗浄処理が、定期的かつ自動的に行われるので、チップ装着部に検体が長時間付着したまま放置される恐れがなく、検体がこびり付いてしまうことも防止することができる。本洗浄装置は、分注装置以外の他の検体処理装置に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置を適用した自動分注装置の上面図である。
【図2】5連ノズルユニットの斜視図である。
【図3】洗浄装置として機能する部分を模式的に示した説明図である。
【図4】洗浄動作時のチップ装着部の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
16 5連ノズルユニット、32 洗浄槽、33 円筒面、35 下端面、36a,36b,36c,36d,36e チップ装着部、37a,37b,37c,37d,37e 中空孔、42a シリンジポンプ、52 洗浄液容器、54 底面ブロック、56a,56b,56c,56d,56e 洗浄ブラシ、58 洗浄液注入管、60 洗浄液排出管、61 排出用バルブ、62 吸水パッド、64 チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に洗浄液を蓄える洗浄液容器と、
前記洗浄液容器の内部に設けられた洗浄具と、
分注用ノズルチップが着脱可能に装着されるチップ装着部を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構の動作を制御する手段であって、前記チップ装着部の洗浄時に、前記チップ装着部を前記洗浄具による洗浄位置まで移動させて前記チップ装着部を洗浄する制御を実行する制御手段と、
を含むことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄装置において、
前記洗浄具は洗浄ブラシである、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項2記載の洗浄装置において、
前記チップ装着部は分注用エア流路としての中空孔を有し、
前記洗浄ブラシは、前記洗浄液容器の底面上に起立配置され、
前記チップ装着部の洗浄時に、前記中空孔に前記洗浄ブラシが挿入される、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項3記載の洗浄装置において、
前記中空孔に前記洗浄ブラシが挿入された状態で前記チップ装着部が上下に運動する、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項2記載の洗浄装置において、
前記チップ装着部は分注用エア流路としての中空孔を有し、
前記チップ装着部に対する前記洗浄ブラシによる洗浄後に、前記中空孔からエアを吐出させる排気手段が設けられた、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
請求項1記載の洗浄装置において、
更に水分吸収手段を含み、
前記制御部は、前記チップ装着部に対する前記洗浄ブラシによる洗浄後に、前記チップ装着部を前記水分吸収手段に接触させる、ことを特徴とする洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58175(P2008−58175A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236245(P2006−236245)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】