説明

洗浄装置

【課題】被洗浄対象物の汚れを効率よく効果的に除去することが可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄システム1は、繊維構造体100を収容するための洗浄槽10と、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とを撹拌混合するための前処理槽20と、前処理槽20において撹拌混合された超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とを洗浄槽10に供給するための弁22と洗浄剤供給管23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には洗浄装置に関し、特定的には、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いて、例えば繊維の洗浄を行なう洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄方法としては、水、有機溶剤、酸、アルカリなどの溶媒を利用する湿式洗浄があるが、このような湿式洗浄方式に変わって、超臨界流体を溶媒とする洗浄方式が環境配慮型の洗浄方式として普及しつつある。超臨界流体を溶媒とする洗浄方式では、例えば、超臨界状態の二酸化炭素が溶媒として用いられる。
【0003】
二酸化炭素は、ある温度以下で圧縮すると液体状態の二酸化炭素になり、また、31.1℃でかつ圧力が7.4MPa以上では超臨界状態の二酸化炭素となる。このような性質を有する超臨界状態の二酸化炭素は、1900年代初頭から抽出剤として使用されている。超臨界状態の二酸化炭素は、気体と液体の中間の粘度、拡散係数、密度、溶解力を持ち、微細機構に入り込みやすく、疎水性物質の溶解度が高い、といった特徴を持つ。また、洗浄溶媒として超臨界状態の二酸化炭素を用いることによって、水を溶媒とする場合と異なり、乾燥をする必要がなくなる。超臨界状態の二酸化炭素は、このような利点を有するので、高精度の洗浄が求められる半導体材料などの電子デバイス部品の洗浄に応用されている。
【0004】
近年では、超臨界流体を用いる洗浄方式は、半導体以外の被洗浄対象物として衣類洗浄にも応用されている。ドライクリーニング溶剤による環境汚染が深刻化する中、安全性の高い代替溶剤として超臨界状態の二酸化炭素が注目されている。また、ドライクリーニング溶剤が洗浄後の被洗浄対象物に残ることによって、健康に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
超臨界状態の二酸化炭素を用いる洗浄においては、使用後の超臨界状態の二酸化炭素を回収して再利用することが可能であり、洗浄後に乾燥を必要としないなど環境面に対する利点がある。一方、超臨界状態の二酸化炭素を生成するためには二酸化炭素を高圧にする必要があるが、現在では高圧ガスに関する法規制が厳しく、また、超臨界状態の二酸化炭素を用いるドライクリーニング装置では、設備が大掛かりになるという課題がある。そのため、超臨界状態の二酸化炭素を用いる洗浄は主として業務用のクリーニング技術として普及している。しかしながら、環境面、健康面に対する利点を踏まえると、将来的には新しい洗濯スタイルとして家庭用に普及する可能性が考えられる。
【0006】
例えば、特開2005−168940号公報(特許文献1)には、超臨界状態の二酸化炭素を用いるドライクリーニング装置が記載されている。このドライクリーニング装置においては、洗浄剤としての合成化学物質や助剤を使用せずに、超臨界状態の二酸化炭素を洗浄槽内に吐出して衣類等を洗浄する。
【0007】
特表2002−543951号公報(特許文献2)には、洗浄槽や二酸化炭素クリーニング溶液供給管路において、液体状態の二酸化炭素に所定の数または量で洗剤配合物を添加する二酸化炭素ドライクリーニングの洗剤注入システムが記載されている。
【0008】
特開2005−312604号公報(特許文献3)には、水溶性の汚れを有効に除去するために、液体状態の二酸化炭素に水を添加する水添加装置を備える洗浄装置が記載されている。
【0009】
特開2002−4169号公報(特許文献4)には、二酸化炭素に溶解しにくい汚染物質を繊維等から除去するために、超臨界、亜臨界または液体状態の二酸化炭素に極性溶媒を混合する繊維洗浄方法が記載されている。
【特許文献1】特開2005−168940号公報
【特許文献2】特表2002−543951号公報
【特許文献3】特開2005−312604号公報
【特許文献4】特開2002−4169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2005−168940号公報(特許文献1)に記載のドライクリーニング装置のように超臨界状態の二酸化炭素のみを用いて洗浄を行なう場合には、超臨界状態の二酸化炭素のみによっては除去することができない汚れが被洗浄対象物に付着しているときには、超臨界二酸化炭素による洗浄処理の前後に別処理が必要となる。たとえば、超臨界二酸化炭素は無極性物質であるので、超臨界二酸化炭素のみによる洗浄処理では、水溶性の汚れを除去することができない。そのため、被洗浄対象物に水溶性の汚れが付着している場合には、超臨界二酸化炭素による洗浄処理の前後に別処理を行うことが必要となる。超臨界二酸化炭素による洗浄処理に加えて別処理を行うためには、手間がかかり、クリーニング業においては人件費などのコストが上昇するという問題がある。
【0011】
また、特表2002−543951号公報(特許文献2)に記載の洗剤注入システムでは、汚れの種類に応じて異なる洗剤配合物を、洗浄槽や二酸化炭素クリーニング溶液供給管路において液体状態の二酸化炭素に添加しているが、洗剤配合物が洗浄槽内において超液体状態の二酸化炭素中に十分に分散するまでには時間がかかるので、洗剤配合物が液体状態の二酸化炭素中に十分に分散する前に、洗剤配合物を添加された液体状態の二酸化炭素によって被洗浄対象物が洗浄される。洗剤配合物が液体状態の二酸化炭素中に十分に分散していなければ、液体状態の二酸化炭素に添加された洗剤配合物は被洗浄対象物に接触しにくく、十分な洗浄力が得られにくい。
【0012】
また、特開2005−312604号公報(特許文献3)、特開2002−4169号公報(特許文献4)のように、超臨界または液体状態の二酸化炭素に水や極性溶媒を添加して被洗浄対象物を洗浄する場合には、水や極性溶媒は超臨界または液体状態の二酸化炭素に溶解しにくいので、水や極性溶媒と、超臨界または液体状態の二酸化炭素とが分離した状態で被洗浄対象物に接触する恐れがある。水や極性溶媒と、超臨界または液体状態の二酸化炭素とが分離した状態で被洗浄対象物に接触すると、水や極性溶媒が接触した部分では水溶性や極性の汚れが除去され、非水溶性や非極性の汚れが除去されずに残り、一方、超臨界または液体状態の二酸化炭素が接触した部分では、非水溶性や非極性の汚れが除去され、水溶性や極性の汚れが除去されずに残って、十分に洗浄できなかったり、洗いむらが生じたりしてしまう。
【0013】
そこで、この発明の目的は、被洗浄対象物の汚れを効率よく効果的に除去することが可能な洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に従った洗浄装置は、被洗浄対象物を収容するための洗浄槽と、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とを撹拌混合するための前処理槽と、前処理槽において撹拌混合された超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とを洗浄槽に供給するための供給手段とを備える。
【0015】
洗浄槽とは別個に形成された前処理槽において超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とを撹拌混合することによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とが、被洗浄対象物に接触する前に、短時間で均一に混合されやすくなる。添加剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に、少なくとも可溶化していると、添加剤が被洗浄対象物に接触する機会が増大するので、超臨界または液体状態の二酸化炭素だけでなく添加剤によっても、被洗浄対処物を洗浄することができ、洗浄力を高めることができる。たとえば、添加剤が水や極性溶媒である場合には、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とが十分に混合されることによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素による非水溶性や非極性の汚れの除去に加えて、水や極性溶媒によって水溶性の汚れや極性の汚れを除去することができて、洗いむらも生じにくくなる。
【0016】
このようにすることにより、被洗浄対象物の汚れを効率よく効果的に除去することが可能な洗浄装置を提供することができる。
【0017】
この発明に従った洗浄装置においては、前処理槽は、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に添加剤を可溶化、乳化、および、溶解からなる群より選ばれた少なくとも一種の状態にさせるための添加剤可溶化手段を含むことが好ましい。
【0018】
ここで、添加剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に可溶化されている状態とは、たとえば、界面活性剤に囲まれた水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に浮遊している状態であるが、界面活性剤と水のサイズが十分小さいため、見かけ上は1相に見える状態のことをいう。また、界面活性剤や水等の添加剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に乳化している状態とは、たとえば、界面活性剤に囲まれた水が、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に浮遊している状態で、濁ったように混ざっていることをいう。また、界面活性剤や水等の添加剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に溶解している状態とは、添加剤が分子レベルで二酸化炭素と混ざっている状態のことをいう。
【0019】
このように、前処理槽が添加剤可溶化手段を含むことにより、添加剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に、少なくとも可溶化させることができる。
【0020】
この発明に従った洗浄装置においては、洗浄槽は、被洗浄対象物に添加剤を接触させるための添加剤接触手段を含むことが好ましい。
【0021】
このようにすることにより、添加剤が被洗浄対象物に接触する機会を増大させて、添加剤による洗浄力を向上させることができる。
【0022】
この発明に従った洗浄装置においては、添加剤は、水と、親二酸化炭素基と親水基とを有する第一の界面活性剤とを含むことが好ましい。
【0023】
ここで、親二酸化炭素基とは、超臨界または液体状態の二酸化炭素に対して親和性を有する基のことをいう。添加剤中の第一の界面活性剤は、親二酸化炭素基を有する場合、確実に超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。また、第一の界面活性剤は親水基を有するので、水は、第一の界面活性剤とともに超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。このようにして、添加剤中の水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化しやすくなる。
【0024】
ところで、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる洗浄は、業務用クリーニングのみならず、今後は家庭用の洗浄装置にも普及する可能性がある。家庭用の洗浄装置では、確実に、また、均一に、被洗浄対象物から水溶性の汚れを除去することが必要となる。
【0025】
そこで、この発明の洗浄装置では、上述したように、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化した水は、被洗浄対象物と接触することによって、被洗浄対象物に付着している水溶性汚れを水に抽出すること、すなわち、被洗浄対象物から水溶性汚れを除去することができる。
【0026】
また、添加剤として超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化させる界面活性剤および水は微量であり、洗浄時に高圧にされている超臨界または液体状態の二酸化炭素を常圧に戻すと、二酸化炭素と界面活性剤と水はそれぞれ分離するため、界面活性剤と水は重力によって洗浄槽の下部に落下して、界面活性剤も水も、被洗浄対象物に残留することなく、被洗浄対象物は乾燥した状態での洗い上がりとなる。このようにすることにより、水を使った通常の洗濯と比較して、被洗浄対象物の濡れが少ないので強度低下による傷みが少なくなる。また、洗浄終了後に被洗浄対象物を乾燥する必要がないので、乾燥のための電力も使わず省エネルギーでもある。
【0027】
この発明に従った洗浄装置においては、添加剤は、水と、非親二酸化炭素基と親水基とを有する第二の界面活性剤と、第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化させるための助剤とを含むことが好ましい。
【0028】
ここで、非親二酸化炭素基とは、超臨界または液体状態の二酸化炭素に対して親和性を有しない基のことをいう。添加剤中の第二の界面活性剤が非親二酸化炭素基を有する場合、超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化しにくいので、助剤を用いて超臨界または液体状態の二酸化炭素中に第二の界面活性剤を少なくとも可溶化させることが可能である。また、第二の界面活性剤は親水基を有するので、水は、第二の界面活性剤とともに超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。このようにして、親水基を有する第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化させることによって、水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化しやすくなる。
【0029】
したがって、界面活性剤が親二酸化炭素基を持たず、非親二酸化炭素基と親水基を有する第二の界面活性剤である場合でも、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化した水は、被洗浄対象物と接触することによって、被洗浄対象物に付着している水溶性汚れを水に抽出すること、すなわち、被洗浄対象物から水溶性汚れを除去することができる。
【0030】
この発明に従った洗浄装置においては、添加剤は、超臨界または液体状態の二酸化炭素が洗浄槽に供給される前に、予め前処理槽の内部に収容されていることが好ましい。
【0031】
このようにすることにより、添加剤を収容するための部材を別個に形成する必要がなくなり、また、添加剤を収容するための別個に形成された部材から添加剤を前処理槽に供給するためのポンプが不要になる。
【0032】
この発明に従った洗浄装置においては、被洗浄対象物は繊維構造体であることが好ましい。
【0033】
このようにすることにより、繊維構造体の洗浄を高圧の超臨界または液体状態の二酸化炭素で行うことができる。
【0034】
超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる繊維構造体の洗浄は、従来のクリーニングと異なり、石油やパークロロエチレンのような有機溶剤を使わない。また、超臨界または液体状態の二酸化炭素は洗浄後揮発してしまう。そのため、超臨界または液体状態の二酸化炭素による洗浄後の繊維構造体は皮膚への刺激が少なく、また、従来のクリーニング直後の薬剤の臭いがしない。このように、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる繊維構造体の洗浄は、健康的な衣類洗浄技術である。
【0035】
また、たとえば、添加剤が水や極性の溶媒を含むことによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素による洗浄の前後に別処理をしなくても、水溶性の汚れを一度に除去できるので、作業の手間や人件費などのコストを削減することができる。このように、水溶性汚れの除去が可能であるので、家庭での洗濯にも適している。
【0036】
また、洗浄後の繊維構造体が水に濡れていないため布傷みが少なく、洗浄後に繊維構造体を干す手間が省け、洗濯後の時間を有効活用することができる。洗浄後に繊維構造体を乾燥させる必要がないので、乾燥のための電力も使わず省エネルギーでもある。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、この発明によれば、被洗浄対象物の汚れを効率よく効果的に除去することが可能な洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
図1は、この発明の一つの実施の形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【0040】
図1に示すように、洗浄装置として洗浄システム1は、主に、洗浄槽10と、前処理槽20と、供給手段として洗浄剤供給管23と弁22と、添加剤槽30と、二酸化炭素供給源41と、酸化炭素を高圧化して送出するポンプ42と、蒸発器51と、凝縮器52と、二酸化炭素貯留槽53と、二酸化炭素から分離された汚れを回収する汚れ受け容器70から構成されている。洗浄システム1を構成する各槽と部材は、配管によって接続され、配管に配置されている弁は、適宜開閉される。洗浄槽10には、被洗浄対象物として衣類などの繊維構造体100が収容される。繊維構造体100は、衣類や、リネン、布団、枕、マット、ハンカチ、タオル、ぬいぐるみなど、繊維からできているものであればなんでもよい。
【0041】
添加剤槽30には、添加剤200が収容されている。この実施の形態においては、添加剤200は、界面活性剤と水とを含む。添加剤槽30は、添加剤200を前処理槽20に供給するためのポンプを備えている。
【0042】
この実施の形態においては、添加剤200は、分子内に親二酸化炭素基と親水基を持つ第一の界面活性剤と水とから構成されていることが好ましい。親二酸化炭素基は、たとえばシロキサン、カルボキシル基などのようなルイス塩基性基、ポリオキシプロピレンなどの自由体積が大きな分子団を持つ炭化水素基などである。また、親水基をもつ物質としては、スルホコハク酸塩、カルボン酸塩、ポリオキシエチレンなどがある。また、親二酸化炭素基を持つ第一の界面活性剤として、フッ素系の界面活性剤を使用してもよい。フッ素系の界面活性剤は超臨界または液体状態の二酸化炭素との親和性が高く、超臨界または液体状態の二酸化炭素に溶けやすい。なお、親二酸化炭素基と親水基を持つ第一の界面活性剤であれば、ここで例示した以外の界面活性剤であっても本発明に適用されることができる。
【0043】
界面活性剤が親二酸化炭素基を持たず、非親二酸化炭素基と親水基を有する第二の界面活性剤である場合には、添加剤200は、フッ素系の溶剤などの助剤を含むことが好ましい。このような助剤を用いることによって、単体では超臨界または液体状態の二酸化炭素中に可溶化、乳化、または、溶解されない第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素中に可溶化、乳化、または、溶解することができる。親水基を有する第二の界面活性剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素に可溶化、乳化、または、溶解することによって、水が第二の界面活性剤とともに超臨界または液体状態の二酸化炭素に可溶化、乳化、または、溶解する。助剤とする添加剤200は、フッ素系の溶剤であることが好ましいが、第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素中に可溶化、乳化、または、溶解させることができる物質であればこれに限らない。以下、界面活性剤や水等の添加剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中において可溶化、乳化、または、溶解のいずれかの状態にされていることを、少なくとも可溶化されている、という。
【0044】
以上に説明した添加剤200と、添加剤200に含まれる界面活性剤と助剤の種類は例示であって、これらに限られるものではない。
【0045】
前処理槽20は、添加剤槽30と配管によって接続されている。前処理槽20と添加剤槽30との間の弁31を開放し、添加剤槽30のポンプが駆動することによって、添加剤槽30内に収容されている添加剤200が前処理槽20内に供給される。添加剤200は、前処理槽20内において超臨界または液体状態の二酸化炭素に十分に少なくとも可溶化する量が供給されることが好ましい。特に、水はそのままでは超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化しないので、添加剤200中の水が多すぎると、水と、超臨界または液体状態の二酸化炭素とが分離して水相が形成されやすいからである。
【0046】
前処理槽20には、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に添加剤200を分散または少なくとも可溶化させるための添加剤可溶化手段21が配置されている。添加剤可溶化手段21は、前処理槽20内で添加剤200と超臨界または液体状態の二酸化炭素を十分に撹拌するための手段として、例えば、前処理槽20内に設けられた撹拌羽や、回転子である。また、添加剤可溶化手段21としては、前処理槽20全体をゆする揺動機構や、前処理槽20の温度を上げる加熱装置、超音波などで振動を与える超音波発生装置であってもよい。添加剤可溶化手段21は、前処理槽20内の添加剤200が十分に、短時間で超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化するようにすればよく、これらの方法に限られない。このようにして、添加剤200が高圧の超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に少なくとも可溶化される。ここで、添加剤200が少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素を、洗浄剤という。
【0047】
本発明における超臨界または液体状態の二酸化炭素とは、温度が31.1℃でかつ圧力が7.4MPa以上の超臨界または液体状態の二酸化炭素のことである。液体状態の二酸化炭素とは、超臨界以下の圧力と温度で超臨界または液体状態の二酸化炭素を高圧下に置き液体状態にした超臨界または液体状態の二酸化炭素のことである。これらの状態にある超臨界または液体状態の二酸化炭素は、ガスの状態の超臨界または液体状態の二酸化炭素に比べて密度が大きく、添加剤200中の界面活性剤が少なくとも可溶化しやすい状態である。界面活性剤が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化することにより、界面活性剤とともに添加されている水が界面活性剤に囲まれて超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化し、超臨界または液体状態の二酸化炭素、界面活性剤、水の3成分が見かけ上1相をなす。
【0048】
前処理槽20と洗浄槽10とは、洗浄剤供給管23によって接続されている。洗浄剤供給管23には、弁22が配置されており、弁22を開放することによって、添加剤200が少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素、すなわち、洗浄剤が前処理槽20から洗浄槽10内に供給される。
【0049】
洗浄槽10には、繊維構造体100に添加剤200を接触させるための添加剤接触手段11が配置されている。添加剤接触手段11としては、洗浄槽10内に設けられる撹拌羽や回転子である。また、添加剤接触手段11は、繊維構造体100と洗浄剤とを収容したままで回転さられる回転ドラムや、洗浄槽10全体をゆする揺動機構、洗浄剤または洗浄槽10の温度を上げるための加熱装置であってもよい。添加剤接触手段11は、洗浄槽10内に導入された添加剤200を洗浄槽10内で十分に運動させる他の方法でもよく、これらの方法に限られない。また、添加剤接触手段11は、例えば、前処理槽20から洗浄槽10への導入口に形成されたノズルなど、繊維構造体100に向かって洗浄剤を吹きつけるように供給するための噴射部であってもよい。
【0050】
本発明の洗浄システム1の運転工程について以下に説明する。
【0051】
洗浄槽10内に繊維構造体100を収容した後、洗浄システム1の運転を開始する。まず、二酸化炭素供給源41からポンプ42に気液混合状態の二酸化炭素が導入される。ポンプ42は、気液混合状態の二酸化炭素を高圧にして、超臨界または液体状態の二酸化炭素にする。弁43と弁44が開放されると、超臨界または液体状態の二酸化炭素が前処理槽20に送出される。また、弁31が開放されて、添加剤槽30のポンプが駆動し、添加剤200が添加剤槽30から前処理槽20内に供給される。前処理槽20内に添加剤200が供給されるのは、弁44の開放前、すなわち、前処理槽20に超臨界または液体状態の二酸化炭素が供給される前が好ましい。
【0052】
前処理槽20においては、添加剤可溶化手段21が駆動して、添加剤200と超臨界または液体状態の二酸化炭素とが撹拌混合される。界面活性剤と水が同時に超臨界または液体状態の二酸化炭素中に存在するとき、界面活性剤が水を取り囲む形になることで、水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化することになる。
【0053】
前処理槽20内において、添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に少なくとも可溶化された後、弁22が開放されて、添加剤200と超臨界または液体状態の二酸化炭素とが十分に混合された状態のままで、洗浄槽10内に供給される。
【0054】
洗浄槽10内の空気は、繊維構造体100が収容された後に排出されている。洗浄槽10内には、供給される超臨界または液体状態の二酸化炭素の量や圧力に応じて、予め高圧の超臨界または液体状態の二酸化炭素を供給しておいてもよい。洗浄槽10内に予め高圧の超臨界または液体状態の二酸化炭素を供給しておく場合には、洗浄槽10内の圧力を前処理槽20内の圧力よりも小さくしておくことが望ましい。また、洗浄槽10内の圧力は、前処理槽20から供給される超臨界または液体状態の二酸化炭素で高圧化されてもよい。
【0055】
添加剤200を少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素、すなわち、洗浄剤が洗浄槽10内に供給されると、添加剤接触手段11が駆動され、洗浄槽10内の繊維構造体100は、洗浄剤によって洗浄される。添加剤接触手段11は、洗浄槽10内において洗浄剤を従来の洗濯機と同様に繊維構造体100と一緒に撹拌する。このように、添加剤200を十分に少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素が、繊維構造体100と共に撹拌されることによって、添加剤200が繊維構造体100に効率よく接触する。
【0056】
このような方法で、超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化した添加剤200を積極的に繊維構造体100に接触させることにより、繊維構造体100の洗浄効果を向上させることができる。更なる利点として、繊維構造体100の洗浄を効率よく行なうことができるので、洗浄時間が短縮され1回の運転にかかる電気代などのコストを削減することができる。また、添加剤200の溶け残りがなくなるため、溶け残った添加剤200が繊維構造体100に付着して再汚染されるということがなくなる。
【0057】
添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に少なくとも可溶化している状態で、添加剤200が繊維構造体100と接触すると、被洗浄対象物に付着している水溶性の汚れは、添加剤200に含まれる界面活性剤が取り囲んだ水の中に溶けだす。このようにして、繊維構造体100の水溶性の汚れは、添加剤200である水によって除去される。また、繊維構造体100の油溶性の汚れは、高圧にした超臨界または液体状態の二酸化炭素の中に溶け出して、除去される。
【0058】
洗浄槽10内において、添加剤200を少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素によって繊維構造体100が洗浄されることによって、洗浄前に繊維構造体100に付着していた汚れが洗浄剤中に溶け出す。
【0059】
繊維構造体100の洗浄が終了すると、繊維構造体100から溶け出した汚れを少なくとも可溶化した洗浄剤は、弁61が開放されて、蒸発器51に導入される。蒸発器51では、汚れを少なくとも可溶化している洗浄剤を減圧し、超臨界または液体状態の二酸化炭素と、汚れと添加剤200を分離する。汚れと添加剤200を取り除かれた超臨界または液体状態の二酸化炭素は、弁62が開放されて凝縮器52に供給される。一方、蒸発器51において分離された汚れは、弁67を開いて汚れ受け容器70に回収される。また、二酸化炭素以外の気体は、弁66が開かれると洗浄システム1の外部に排気される。
【0060】
蒸発器51で分離された超臨界または液体状態の二酸化炭素は、凝縮器52において再度高圧にされる。凝縮器52において高圧にされた超臨界または液体状態の二酸化炭素は、弁63が開放されて二酸化炭素貯留槽53に供給され、二酸化炭素貯留槽53に貯留される。二酸化炭素貯留槽53に貯留された超臨界または液体状態の二酸化炭素は、次回の洗浄時に弁64が開放されて洗浄槽10に導入され、洗浄に使用される。超臨界または液体状態の二酸化炭素は、洗浄槽10、蒸発器51、凝縮器52、二酸化炭素貯留槽53を、図中に一点鎖線の矢印で示すように流れて何度でも循環させることができるが、使い古した超臨界または液体状態の二酸化炭素を排出する場合は、弁65を開いて排気することもできる。
【0061】
このように、前処理槽20において撹拌を行い、添加剤200と超臨界または液体状態の二酸化炭素を十分に撹拌混合させることで、添加剤200を完全に少なくとも可溶化してから洗浄槽10に導入することができる。添加剤200が十分に少なくとも可溶化した超臨界または液体状態の二酸化炭素が繊維構造体100に接触すると、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化している添加剤200と繊維構造体100との接触機会が増大し、洗浄効果が向上する。また、洗浄槽10内において添加剤200を超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化させるために時間をかける必要がないので、繊維構造体100は、洗浄効果を発揮する状態の添加剤200といち早く接触することにより、洗浄力が向上する。更なる利点として、添加剤200と超臨界または液体状態の二酸化炭素とを撹拌することによって添加剤200の少なくとも可溶化のスピードが向上し、洗浄システム1の運転時間の短縮につながるので、1回の運転にかかる電気代などのコストを削減することができる。また、添加剤200の溶け残りがなくなるため、溶け残った添加剤200が繊維構造体100に付着して繊維構造体100が再汚染されるということがなくなる。
【0062】
仮に、洗浄槽10内で超臨界または液体状態の二酸化炭素と界面活性剤と水を混ぜようとしても、洗浄槽10には繊維構造体100が収容されており、洗浄槽10自体の体積が大きいため、超臨界または液体状態の二酸化炭素と界面活性剤と水とは混ざりにくい。洗浄時間を延ばせばこの問題は解決されるように思えるが、超臨界または液体状態の二酸化炭素洗浄では撹拌のために二酸化炭素を循環させることが必要であり、移染を防ぐために循環経路で超臨界または液体状態の二酸化炭素を浄化する手段を備えている。そのため、添加剤200を十分に混ぜるために洗浄槽10での洗浄時間を延ばすと、被洗浄対象物を洗浄するための添加剤200が無駄に失われてしまう。一方、前処理槽20において、超臨界または液体状態の二酸化炭素、界面活性剤、水を十分になじませて1相にした状態で洗浄槽10に送りこむことにより、洗浄槽10に収容されている繊維構造体100は、はじめから洗浄に有効な添加剤200を含んだ超臨界または液体状態の二酸化炭素と触れるため、添加剤によって洗浄される機会、つまり、添加剤200との接触する機会が増え、洗浄効果も向上する。
【0063】
以上のように、洗浄システム1は、繊維構造体100を収容するための洗浄槽10と、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とを撹拌混合するための前処理槽20と、前処理槽20において撹拌混合された超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とを洗浄槽10に供給するための弁22と洗浄剤供給管23とを備える。
【0064】
洗浄槽10とは別個に形成された前処理槽20において超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とを撹拌混合することによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とが、繊維構造体100に接触する前に、短時間で均一に混合されやすくなる。添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に少なくとも可溶化していると、添加剤200が繊維構造体100に接触する機会が増大するので、超臨界または液体状態の二酸化炭素だけでなく添加剤200によっても、被洗浄対処物を洗浄することができ、洗浄力を高めることができる。たとえば、添加剤200が水や極性溶媒である場合には、超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とが十分に混合されることによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素による非水溶性や非極性の汚れの除去に加えて、水や極性溶媒によって水溶性の汚れや極性の汚れを除去することができて、洗いむらも生じにくくなる。
【0065】
このようにすることにより、繊維構造体100の汚れを効率よく効果的に除去することが可能な洗浄システム1を提供することができる。
【0066】
また、洗浄システム1においては、前処理槽20は、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に添加剤200を可溶化、乳化、および、溶解からなる群より選ばれた少なくとも一つの状態にさせるための添加剤可溶化手段21を含む。
【0067】
ここで、添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に可溶化されている状態とは、たとえば、界面活性剤に囲まれた水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に浮遊している状態であるが、界面活性剤と水のサイズが十分小さいため、見かけ上は1相に見える状態のことをいう。また、界面活性剤や水等の添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に乳化している状態とは、たとえば、界面活性剤に囲まれた水が、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に浮遊している状態で、濁ったように混ざっていることをいう。また、界面活性剤や水等の添加剤200が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に溶解している状態とは、添加剤200が分子レベルで二酸化炭素と混ざっている状態のことをいう。
【0068】
前処理槽20が添加剤可溶化手段21を含むことにより、添加剤200を超臨界または液体状態の二酸化炭素中に十分に少なくとも可溶化させることができる。
【0069】
また、洗浄システム1においては、洗浄槽10は、繊維構造体100に添加剤200を接触させるための添加剤接触手段11を含む。
【0070】
このようにすることにより、添加剤200が繊維構造体100に接触する機会を増大させて、添加剤200による洗浄力を向上させることができる。
【0071】
また、洗浄システム1においては、添加剤200は、水と、親二酸化炭素基と親水基とを有する第一の界面活性剤とを含む。
【0072】
このように、第一の界面活性剤は、親二酸化炭素基を有する場合、確実に超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。また、第一の界面活性剤は親水基を有するので、水は、第一の界面活性剤とともに超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。このようにして、添加剤200中の水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化しやすくなる。
【0073】
超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる洗浄は、業務用クリーニングのみならず、今後は家庭用の洗浄装置にも普及する可能性がある。家庭用の洗浄装置として洗浄システム1を用いる場合には、確実に、また、均一に、繊維構造体100から水溶性の汚れを除去することが必要となる。
【0074】
超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化した水が繊維構造体100と接触することによって、繊維構造体100に付着している水溶性汚れを水に抽出すること、すなわち、繊維構造体100から水溶性汚れを除去することができる。
【0075】
また、添加剤200として超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化させる界面活性剤および水は微量であり、洗浄時に高圧にされている超臨界または液体状態の二酸化炭素を常圧に戻すと、超臨界または液体状態の二酸化炭素と界面活性剤と水はそれぞれ分離するため、界面活性剤と水は重力によって落下し、界面活性剤も水も、繊維構造体100に残留することなく、繊維構造体100は乾燥した状態での洗い上がりとなる。このようにすることにより、水を使った通常の洗濯と比較して、繊維構造体100の濡れが少ないので強度低下による傷みが少なくなる。また、洗浄終了後に繊維構造体100を乾燥する必要がないので、乾燥のための電力も使わず省エネルギーでもある。
【0076】
また、洗浄システム1においては、添加剤200は、水と、非親二酸化炭素基と親水基とを有する第二の界面活性剤と、第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化させるための助剤とを含む。
【0077】
このように、第二の界面活性剤が非親二酸化炭素基を有する場合、超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化しにくいので、助剤を用いて超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化させることが可能である。また、第二の界面活性剤は親水基を有するので、水は第二の界面活性剤とともに超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化する。このようにして、親水基を有する第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化させることによって、水が超臨界または液体状態の二酸化炭素中に少なくとも可溶化しやすくなる。
【0078】
また、洗浄システム1においては、被洗浄対象物は繊維構造体100である。
【0079】
このようにすることにより、繊維構造体100の洗浄を高圧の超臨界または液体状態の二酸化炭素で行うことができる。
【0080】
超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる繊維構造体100の洗浄は、従来のクリーニングと異なり、石油やパークロロエチレンのような有機溶剤を使わない。また、超臨界または液体状態の二酸化炭素は洗浄後揮発してしまう。そのため、超臨界または液体状態の二酸化炭素による洗浄後の繊維構造体100は皮膚への刺激が少なく、また、従来のクリーニング直後の薬剤の臭いがしない。このように、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いる繊維構造体100の洗浄は、健康的な衣類洗浄技術である。
【0081】
また、たとえば、添加剤200が水や極性の溶媒を含むことによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素による洗浄の前後に別処理をしなくても、水溶性の汚れを一度に除去できるので、作業の手間や人件費などのコストを削減することができる。このように、水溶性汚れの除去が可能であるので、家庭での洗濯にも適している。
【0082】
また、洗浄後の繊維構造体100が水に濡れていないため布傷みが少なく、洗浄後に繊維構造体100を干す手間が省け、洗濯後の時間を有効活用することができる。洗浄後に繊維構造体100を乾燥させる必要がないので、乾燥のための電力も使わず省エネルギーでもある。
【0083】
図2は、この発明の別の実施の形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【0084】
図2に示すように、洗浄装置として洗浄システム2が洗浄システム1と異なる点としては、添加剤槽30を備えず、添加剤200が洗浄システム2の運転開始前に予め前処理槽20内に収容されている。前処理槽20内には、添加剤200を投入するための開閉部材(図示しない)が配置されている。
【0085】
繊維構造体100を洗浄槽10内に収容し、洗浄システム2の運転を開始すると、二酸化炭素供給源41からポンプ42に送られた二酸化炭素がポンプ42によって超臨界または液体状態の二酸化炭素にされて、弁43、弁44が配置されている配管を通って、前処理槽20内に供給される。
【0086】
前処理槽20には、予め添加剤200が収容されているので、超臨界または液体状態の二酸化炭素が前処理槽20内に供給されると、添加剤可溶化手段21が駆動されて、前処理槽20内において前処理槽20に供給された超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤200とが撹拌混合される。
【0087】
前処理槽20は、洗浄槽10と洗浄剤供給管23によって接続され、洗浄剤供給管23には、弁22が配置されている。繊維構造体100の洗浄を開始するまでは、弁22を閉じておくことによって、超臨界または液体状態の二酸化炭素に少なくとも可溶化する前の、高濃度の添加剤200が繊維構造体100に接触することを防ぎ、洗浄後に洗いむらが生じるのを防ぐことができる。
【0088】
弁22を開放することによって、添加剤200は、超臨界または液体状態の二酸化炭素とともに、洗浄槽10内に供給されて、繊維構造体100を洗浄する。
【0089】
洗浄システム2のその他の構成と効果は、洗浄システム1と同様である。
【0090】
このように、洗浄システム2においては、添加剤200は、超臨界または液体状態の二酸化炭素が洗浄槽10に供給される前に、予め前処理槽20の内部に収容されている。
【0091】
このようにすることにより、添加剤200を収容するための部材を別個に形成する必要がなくなり、また、添加剤200を収容するための別個に形成された部材から添加剤200を前処理槽20に供給するためのポンプが不要になる。
【0092】
また、図1に示すように添加剤200をポンプで前処理槽20に供給する場合、液体の添加剤を供給することは比較的容易であるが、固体の添加剤を供給することは困難である。これに対して、図2に示すように、添加剤200を予め前処理槽20に収容することは、液体または固体のいずれの添加剤に対しても容易である。
【0093】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】この発明の一つの実施の形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【図2】この発明の別の実施の形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1,2:洗浄システム、10:洗浄槽、11:添加剤接触手段、20:前処理槽、21:添加剤可溶化手段、22:弁、23:洗浄剤供給管、100:繊維構造体、200:添加剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄対象物を収容するための洗浄槽と、
超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とを撹拌混合するための前処理槽と、
前記前処理槽において撹拌混合された超臨界または液体状態の二酸化炭素と添加剤とを前記洗浄槽に供給するための供給手段とを備える、洗浄装置。
【請求項2】
前記前処理槽は、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に添加剤を可溶化、乳化、および、溶解からなる群より選ばれた少なくとも一種の状態にさせるための添加剤可溶化手段を含む、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽は、被洗浄対象物に添加剤を接触させるための添加剤接触手段を含む、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記添加剤は、水と、親二酸化炭素基と親水基とを有する第一の界面活性剤とを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記添加剤は、水と、非親二酸化炭素基と親水基とを有する第二の界面活性剤と、前記第二の界面活性剤を超臨界または液体状態の二酸化炭素に溶解させるための助剤とを含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記添加剤は、超臨界または液体状態の二酸化炭素が前記洗浄槽に供給される前に、予め前記前処理槽の内部に収容されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記被洗浄対象物は繊維構造体である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−178501(P2009−178501A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22570(P2008−22570)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】