説明

洗浄装置

【課題】従来の洗浄装置は、超音波振動子などによるキャビテーションを用いて洗浄していたが、洗浄効果が得られないと共に、洗浄時間が長いという課題を有していた。
【解決手段】被洗浄物11を収容するための洗浄室12と、前記洗浄室内2に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段13とを設け、被洗浄物11に衝撃波を負荷することにより被洗浄物11を洗浄することを特徴とした洗浄装置である。特に衝撃波発生装置として、爆薬を起爆させる、あるいは、電極を解して放電エネルギーを付与して高い圧力範囲の衝撃波を発生させることを利用して洗浄を行うものである。本構成にすることによって、洗浄時間が短時間で行えるとともに、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよいので、省エネ及び環境負荷低減を実現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された被洗浄物に衝撃波を付加することによって、短時間で被洗浄物を洗浄できる洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波振動子を用いてキャビテーションを発生させ、被洗浄物を洗浄処理することが行われている。例えば、特許文献1及び特許文献2では、図4に示すように、被洗浄物1と水、洗剤などを洗浄室2に投入する。被洗浄物1と洗剤を含んだ水を攪拌させるため、攪拌手段3を設けて機械的な作用を付与している。さらに、洗浄室2の下部に設けた超音波振動子4を電源5によって動作させ、キャビテーションを発生させて衣類を洗浄する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭62−292191号公報
【特許文献2】特開平8−89684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1および2では、超音波が溶液中の空気粒子に当たり、気泡が発生してしまうため、キャビテーションが減衰し、超音波の効果が薄くなってしまうという課題があった。特に衣類などは多量の気体を含んでいるため、超音波に期待されるキャビテーションによる衝撃力が弱く、超音波による洗浄効果が得られないという課題があった。また、洗浄効果を上げるために、超音波による洗浄時間を長くする、あるいは洗剤を投入などしなければならなかった。
【0004】
本発明は、衝撃波を用いて洗浄することで、短時間かつ、洗剤を極力使用しない洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、被洗浄物を収容するための洗浄室と、前記洗浄室内に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段とを設け、前記衝撃波発生手段は、前記洗浄室に設けた電極を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させ、被洗浄物に衝撃波を負荷することにより被洗浄物を洗浄することを特徴とした洗浄装置である。
【0006】
特に衝撃波発生装置として、電極を介して放電エネルギーを付与することで高い圧力範囲の衝撃波を発生させて洗浄を行うものである。
【0007】
本構成にすることによって、洗浄時間が短時間で行えるとともに、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよいので、省エネ及び環境負荷低減を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗浄装置は、高い圧力範囲の衝撃波を利用することによって、洗浄時間が短時間で行えるものである。被洗浄物の汚れ度合いにもよるが、1度の衝撃波を負荷させるだけで、汚れを洗浄することができるので、非常に短時間で洗浄を実現することが可能となる。さらに、汚れだけでなく、被洗浄物に付着した細菌や微生物なども瞬時に除菌および殺菌することができる。また、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよいことから、省エネと環境負荷低減を実現することが可能となる。
【0009】
また、被洗浄物として、衣類を洗浄する場合においては、攪拌などの機械的な作用を付与することがないので、衣類の傷みを低減することができるという効果も得られる。
【0010】
また、被洗浄物として食器を洗浄する場合では、食器を積み重ねて載置しても洗浄することができるため、作業性および使い勝手が向上するという効果を得ることができる。
【0011】
さらに、洗浄装置は水などを用いるため、湿度が高くカビなどの細菌が繁殖することがあるが、衝撃波を負荷することで洗浄装置内に付着したカビなどを殺菌・除去することができるため、常に清潔な洗浄装置を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、被洗浄物を収容するための洗浄室と、前記洗浄室内に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段とを設け、前記衝撃波発生手段は、前記洗浄室に設けた電極を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させ、被洗浄物に衝撃波を負荷することにより被洗浄物を洗浄することによって、洗浄時間が短時間で行えるとともに、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよいので、省エネ及び環境負荷低減を実現することが可能となる。
【0013】
特に、洗浄室に設けた電極を介して放電エネルギーを付与させることによって、容易に高い圧力範囲の衝撃波を洗浄室内に発生させることが可能となる。また、放電の場合、水中を伝播する衝撃波は複数存在するので、爆弾を用いた衝撃波のように1つの衝撃波ではないため、高い洗浄効果が得られることとなる。
【0014】
第2の発明は、特に、被洗浄物を衣類とし、洗浄室に衣類と水を投入し、衣類の汚れを衝撃波によって洗浄することによって、短時間で衣類洗浄が可能になるとともに、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよい。そのため、省エネ及び環境負荷低減が可能な衣類の洗浄装置を実現できる。さらに、衣類を攪拌する必要が無いので、衣類を傷めることが無い。そのため、洗濯機では洗えないようなウールやシルクなども洗浄可能となる。
【0015】
第3の発明は、特に、被洗浄物を食器とし、洗浄室に食器と水を投入し、食器の汚れを衝撃波によって洗浄することによって、短時間で衣類洗浄が可能になる。そのため、洗剤などの化学薬品などを極力使用しなくてよいので、省エネ及び環境負荷低減が可能な食器洗い洗浄装置を実現できる。さらに、食器を積み重ねて載置しても洗浄効果が得られるので、従来の食器洗い機のように1枚1枚食器を並べる必要がないので、使い勝手を工場することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、被洗浄物を水とし、衝撃波によって洗浄装置内に存在する細菌やカビなどの微生物を殺菌することができるため、いつまでも清潔な洗浄装置を実現することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における洗浄装置の概略構造を表す概略図である。
【0019】
本実施の形態1において、被洗浄物を衣類とした場合の洗浄装置を示す。
【0020】
図1において、被洗浄物11を収容するための洗浄室2と、前記洗浄室内1に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段13とを設けている。また、衝撃波を被洗浄物11であ
る衣類に伝播するため、洗浄室12には水を設けた。衝撃波発生手段13は、洗浄室12に設けた電極14を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させた。具体的には電源15から充電器16を介して蓄積したエネルギーを電極14の先端で一気に放電させることによってプラズマを生成し、液中に放電衝撃波を発生させている。
【0021】
衣類への洗浄の評価は、泥汚れを付着させた汚染布、皮脂などの有機物を付着させた汚染布を用い、衝撃波の負荷前後の汚染布の表面反射率を色差計によって測定した。
【0022】
本実施の形態1において、電源15からの放電電圧を1kV〜30kVまで変化させて評価を実施した。その結果、全ての領域において、約20〜80程度の反射率の変化が認められ、洗浄効果があることが確認でき、特に10kV以上で高い洗浄効果があることが解った。なお、これらの評価における圧力は約1MPa〜約500MPaであった。
【0023】
衝撃波を負荷することで瞬時に洗浄が可能となるので、従来の洗濯機あるいは超音波を利用しキャビテーションによる衝撃波を用いた洗濯機に比べて、大幅に洗浄時間の短縮と省エネ効果が得られることとなる。一般の洗濯機の洗浄時間が30分〜50分とした場合、衝撃波による洗浄時間は約1秒程度であり、約1800分の1〜3000分の1の時間短縮を実現できる。
【0024】
さらに洗濯機のように攪拌など機械的な作用を常時付与することなく、衝撃波によって瞬時に洗浄が行えるので、衣類の傷みを軽減することができる。
【0025】
また、洗剤を用いなくても洗浄可能となるため、環境負荷低減を実現することができる。
【0026】
また、衝撃波の負荷回数を増加させて洗浄効果を評価したところ、回数が多いほど洗浄効果が高くなることが解った。ただし、衝撃波の負荷回数を増加させても、洗浄時間の積算時間はごく短時間であり、従来の洗濯機に比べ大幅に洗浄時間を短縮することができるとともに、省エネ効果が得られることとなる。
【0027】
また、洗浄能力をさらに高めるため、洗浄室12に界面活性剤などの洗剤を添加し、衝撃波を負荷したところ、洗剤を添加しない場合に比べ約1.2〜1.5倍の洗浄効果が確認できた。これは界面活性剤によって、衣類に浸透した汚れが浮き上がり、浮き上がった汚れが衝撃波によって効率よく除去されたためと考えられる。
【0028】
さらに、洗剤として衣類にやさしい中性洗剤やウールなどの繊維のスケールの立ち上がりを抑制するような成分、例えばシリコンや柔軟剤などを添加することによって、通常洗濯機では洗えないようなウールやシルクなども洗浄することが可能となる。
【0029】
なお、洗剤を添加しない場合においても、洗浄時に攪拌する必要が無いので繊維同士の絡み合いや、例えばウールのスケール同士が絡み合うことがないので、洗浄は可能である。
【0030】
図4に示すような従来の洗濯機でウールを洗濯した場合、約10〜30%ほど縮みが発生したが、本実施の形態の洗浄装置では縮みは発生しなかった。また、中性洗剤およびシリコンなどの柔軟剤を添加した場合では、縮みも発生せず、肌触りも良好であった。
【0031】
以上のように、本実施の形態の洗浄装置は、洗濯機のように攪拌など機械的な作用を常時付与することなく、衝撃波によって瞬時に洗浄が行えるので、洗浄時間の大幅短縮と省エネ効果が得られると共に、衣類の傷みを軽減し、今までは洗濯機で洗えなかったような
衣類まで容易に洗浄する事が可能となる。
【0032】
また、本洗浄装置は衣類の汚れを除去するだけでなく、衣類に付着した細菌などを殺菌除去する効果も得られる。これは、衝撃波を負荷することで衣類に付着した細菌の細胞壁を破壊することができるため殺菌効果があると共に、衣類から細菌を剥離することができたためであると考えられる。
【0033】
さらに、本洗浄装置は衣類に付着した細菌のみならず、洗浄装置に付着したカビなどの細菌についても殺菌除去することが可能となる。つまり、洗浄装置は水などを用いることが多く、湿度が高いため、カビなどの細菌が洗浄室12あるいは洗浄装置に付着することが多い。しかし、洗浄時に衝撃波を負荷することによって、衝撃波は衣類だけでなく、洗浄室12の壁面などにも伝播されるので、洗浄室12に付着したカビなどを殺菌除去することが可能となる。このため、常に洗浄装置を清潔に保つことができる。
【0034】
また、洗浄室12に衣類ではなく、被洗浄物2として水などの液体を設けて、衝撃波を負荷することで、洗浄装置内の細菌を剥離除去しても良い。
【0035】
なお、今実施の形態において、衝撃波発生手段13を電極14を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させる方式としたが、衝撃波が得られる手段であればこれに限るものではない。
【0036】
例えば、図2に示すように爆薬を起爆させて衝撃波を発生させる方式でも同様の効果が得られる。但し、爆弾を用いた場合は、放電で発生させた衝撃波のように複数の衝撃波を有するのではなく、1つしか衝撃波が得られないので、軽い汚れを落とすのに適している。
【0037】
なお、本実施の形態においては洗浄装置を述べたが、これに限るものではない。
【0038】
例えば、洗浄室2に排水および脱水機構を設けて衣類を脱水する機能を付与し、洗濯機を形成してもよい。さらに、洗浄室2内に加熱手段あるいは乾燥した空気を送風する乾燥手段を設けて、衣類の洗浄、脱水、乾燥機能を付与し、洗濯乾燥機を形成しても同様の効果が得られる。
【0039】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における洗浄装置の概略構造を表す概略図である。
【0040】
図3において実施の形態1と異なるところは、被洗浄物を食器とした場合の洗浄装置を示す。図3において、被洗浄物11を収容するための洗浄室12と、前記洗浄室内1に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段13とを設けている。また、衝撃波を被洗浄物11である食器に伝播するため、洗浄室12には水を設けた。衝撃波発生手段13は、洗浄室12に設けた電極14を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させた。
【0041】
具体的には電源15から充電器16を介して蓄積したエネルギーを電極14の先端で一気に放電させることによってプラズマを生成し、液中に放電衝撃波を発生させている。従来の食器洗い洗浄器は流水によって洗浄していたため、食器と食器の間には流水が入るように隙間を設けて設置する必要があったが、本実施の形態の洗浄装置は衝撃波によって汚れを剥離させるため、流水が入る隙間を設ける必要が無く、食器を積み重ねて洗浄室12に載置した。
【0042】
洗浄評価は目視によって行ったが、衝撃波を負荷することで、食器に付着していた汚れ
は全て剥離することが可能となった。食器の積み重なった部分に一部、汚れが附着していたものの、衝撃波の負荷回数を増加させることによって、全て除去することが可能となり、被洗浄物11として衣類を用いた場合と同様の効果が得られた。また、電源15からの放電電圧を1kV〜30kVまで変化させたが、食器の割れなどへの影響は確認できなかった。
【0043】
さらに、より洗浄能力をさらに高めるため、洗浄室12に界面活性剤などの洗剤を添加し、衝撃波を負荷したところ、洗剤を添加しない場合に比べ約1.2〜1.6倍の洗浄効果が確認できた。これは界面活性剤によって、食器に付着した汚れが浮き上がり、汚れが衝撃波によって効率よく除去されたためと考えられる。
【0044】
以上のように、本実施の形態の洗浄装置は、食器洗い機のように流水噴霧など機械的な作用を常時付与することなく、衝撃波によって瞬時に洗浄が行えるので、洗浄時間の大幅短縮と省エネ効果が得られる。さらに、洗浄室12に食器を載置する際にも、食器に流水が噴霧されるように設置する必要がなく、積み重ねて載置するだけで良いので、作業性および使い勝手も向上することができ、更なる洗浄時間の短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる発電装置は、高い圧力範囲の衝撃波を利用することによって、短時間で洗浄することができるとともに、洗剤も必要しない。さらには殺菌効果を有するとともに、洗浄時に攪拌などの必要もない。このため、衣類洗浄や食器洗浄などの洗濯機や食器洗い機、あるいは殺菌装置や電子部品などの洗浄装置等、家庭電化製品や工業用の洗浄装置など、幅広い分野での洗浄装置として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における洗浄装置の概略構造を表す概略図
【図2】本発明の実施の形態1における他の洗浄装置の概略構造を表す概略図
【図3】本発明の実施の形態2における洗浄装置の概略構造を表す概略図
【図4】従来の洗浄装置の概略構造を表す概略図
【符号の説明】
【0047】
11 被洗浄物
12 洗浄室
13 衝撃波発生手段
14 電極
15 電源
16 充電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を収容するための洗浄室と、前記洗浄室内に衝撃波を発生させるための衝撃波発生手段とを設け、前記衝撃波発生手段は、前記洗浄室に設けた電極を介して放電エネルギーを付与することで衝撃波を発生させ、被洗浄物に衝撃波を負荷することにより被洗浄物を洗浄することを特徴とした洗浄装置。
【請求項2】
被洗浄物を衣類とし、衣類の汚れを衝撃波によって洗浄することを特徴とした洗浄装置であり、衝撃波を衣類に伝播するために洗浄室に水を設けた請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
被洗浄物を食器とし、食器の汚れを衝撃波によって洗浄することを特徴とした洗浄装置であり、衝撃波を食器に伝播するために洗浄室に水を設けた請求項1記載の洗浄装置。
【請求項4】
被洗浄物を水とし、洗浄装置内に存在する細菌やカビなどの微生物を殺菌することを特徴とした請求項1記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−12385(P2010−12385A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172999(P2008−172999)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】