説明

洗浄装置

【課題】省スペース化の課題,洗浄液多量消費の課題,キャビテーション発生の課題,および微粒異物の詰りの課題を同時に解決すること。
【解決手段】洗浄槽3と、洗浄槽3内の気体を凝縮する熱交換器4および真空ポンプ5を含む減圧手段6と、洗浄槽3内の復圧手段7と、減圧と復圧とを繰り返して洗浄槽3内の洗浄液を沸騰させる制御手段14とを備える洗浄装置において、熱交換器4は、冷却水により気体を冷却するプレート式熱交換器にて構成され、熱交換器4の上流側に、デミスタにより洗浄液,気体に含まれる洗浄液の微小液滴および微粒異物を前記気体から分離し、分離した液体を洗浄槽3へ戻す気液分離器9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の他、電子部品や機械部品などを洗浄する洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、洗浄槽内の気体に含まれる蒸気を凝縮する熱交換器およびこの熱交換器の下流に設けた真空ポンプを含み、洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された洗浄槽内へ外気を導入して、洗浄槽内を復圧する復圧手段とを備え、前記減圧と前記復圧とを繰り返して洗浄槽内の洗浄液を沸騰させる洗浄装置(以下、減圧沸騰洗浄装置と称する。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−32459号公報
【特許文献2】特開平7−136604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この出願の発明者等は、特許文献1と同様な洗浄装置を開発する過程において、特許文献1の洗浄装置におけるつぎの第一〜第三の課題を見出した。すなわち、第一の課題は、蒸気凝縮用の熱交換器としてシェル・アンド・チューブ式熱交換器を用いているので、熱交換器の占有体積が大きく、結果として装置が大型化し、広い設置スペースが必要となるという省スペース化の課題である。第一の課題は、病院などに設置するこの種洗浄装置としては解決すべき重要な課題である。第二の課題は、洗浄液の沸騰により、洗浄液が洗浄槽外へ排出され、洗浄液の減少が著しいという洗浄液多量消費の課題である。洗浄液は、微小液滴として流出する場合と、洗浄槽内の水位が上昇して、洗浄液が流出する場合がある。第三の課題は、飽和温度以上の洗浄液が真空ポンプに吸い込まれることにより、キャビテーションが発生し、場合によっては、真空ポンプを損傷するキャビテーション発生の課題である。この第三の課題は、真空ポンプを用いた減圧沸騰洗浄装置においてこの出願の発明者らが見出した新規な課題である。
【0005】
第一の課題を解決するために、熱交換器を公知のプレート式熱交換器とした実験を行ったところ、第四の課題があることを見出した。第四の課題は、液体のまま流出する洗浄液に含まれる血液異物などの微粒子(以下、微粒異物という。),洗浄液の沸騰の際に生ずる微小液滴に含まれる微粒異物(洗浄液および微小液滴と独立して存在する微粒異物を含む。)が、プレート式熱交換器の微小隙間(隙間は、流体流通隙間と称することができる。)を塞ぐという微粒異物の詰りの課題である。微粒異物が詰まると、熱交換器の伝熱効率が低下し、結果として、減圧手段の減圧能力が低下して減圧に時間がかかる,すなわち減圧洗浄時間が長くなり、消費電力が増加するという課題と、熱交換器の詰りを解消する再生の作業が困難であるという課題を伴う。この第四の課題は、凝縮用熱交換器をプレート式熱交換器とした減圧沸騰洗浄装置における特有の課題であり、この出願の発明者らが見出した新規な課題である。
【0006】
第二の課題を解決するために、特許文献2のように、洗浄槽の下流側に気液分離器を設けることが考えられるが、単なる気液分離器では、解決することはできない。なお、特許文献2の気液分離器は、その下流側に減圧タンクを備える構成であるので、第三の課題の
解決を意図するものではない。
【0007】
この発明は、減圧沸騰洗浄装置において、第一の課題〜第四の課題,すなわち省スペース化の課題,洗浄液多量消費の課題,キャビテーション発生の課題,および微粒異物の詰りの課題を同時に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽内の気体を凝縮する熱交換器および前記熱交換器の下流に設けた真空ポンプを含み、前記気体を外部へ吸引排出して前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と、前記減圧手段および前記復圧手段を制御して前記減圧と前記復圧とを繰り返して前記洗浄槽内の洗浄液を沸騰させる制御手段とを備える洗浄装置において、前記熱交換器は、冷却水により前記気体を冷却するプレート式熱交換器にて構成され、前記熱交換器の上流側に、デミスタにより洗浄液,前記気体に含まれる洗浄液の微小液滴および微粒異物を前記気体から分離し、分離した液体を前記洗浄槽へ戻す気液分離器を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第一の課題〜第四の課題を同時に解決できる。すなわち、蒸気凝縮用の熱交換器をプレート式熱交換器としているので、シェル・アンド・チューブ式熱交換器と比較して、洗浄装置に占める熱交換器の空間を小さくでき、装置の小型化により、省設置スペース化を実現でき、第一の課題である省スペース化の課題を解決できる。また、デミスタにより分離された洗浄液が前記洗浄槽へ戻されて使用されるので、使用洗浄液量を低減でき、第二の課題である洗浄液多量消費の課題を解決できる。また、前記デミスタの液滴の除去機能により、前記飽和温度以上の洗浄液の液滴が前記熱交換器を経由して前記真空ポンプへ吸い込まれることが防止され、第三の課題であるキャビテーション発生の課題を解決できる。さらに、前記デミスタによる微粒異物の除去機能により、第四の課題である微粒異物の詰りの課題を解決できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記気液分離器は、前記熱交換器と別体に構成された容器と、この容器内を入口側空間と出口側空間とに仕切るように配置されたデミスタとを備え、前記容器は、前記洗浄槽からの気体を前記入口側空間へ導入する気体入口と、前記デミスタにより洗浄液,洗浄液の微小液滴および微粒異物を分離した後の気体を前記熱交換器へ向けて流出させる気体出口と、前記デミスタにより分離された液体を前記洗浄槽へ還流させる液体出口とを備え、前記デミスタを再生または交換可能に構成したことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、微粒異物を捕捉したデミスタを再生または交換することにより、前記プレート式熱交換器の洗浄と比較して、微粒異物の詰り除去作業を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記洗浄槽内の液温を検出する液温センサを備え、前記制御手段は、前記減圧時の前記液温センサの検出温度の変化勾配が設定値以下となると、前記デミスタの再生または交換時期を報知することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記液温センサの検出温度の変化勾配により前記デミスタの再生または交換時期を報知するので、前記デミスタの再生または交換時期を容易に知ることができるとともに、差圧検出によるものと比較して、装置構成を簡素化できるという効果を奏する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記復圧手段の給気路を前記出口側空間に接続し、前記給気路,前記出口側空間,前記デミスタ、前記気体入口を順次通して前記洗浄槽内を復圧することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記容器のを通して前記洗浄槽内を復圧する際の気流により、前記デミスタにて捕捉した微粒異物の一部を除去できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、減圧沸騰洗浄装置における第一の課題〜第四の課題,すなわち省スペース化の課題,洗浄液多量消費の課題,キャビテーション発生の課題および微粒異物の詰りの課題を同時に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の洗浄装置の実施例1を示す概略図である。
【図2】本発明の洗浄装置の実施例1の制御手順の要部を示す図である。
【図3】本発明の洗浄装置の実施例2を示す概略図である。
【図4】本発明の洗浄装置の実施例2の制御手順の要部を示す図である。
【図5】本発明の洗浄装置の実施例3を示す概略図である。
【図6】本発明の洗浄装置の実施例4を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、この発明の洗浄装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、被洗浄物の洗浄に限らず、すすぎや消毒を行う装置に好適に実施される。
【0019】
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と、前記減圧手段および前記復圧手段を制御して前記減圧と前記復圧とを繰り返して前記洗浄槽内の洗浄液を沸騰させる制御手段とを備える洗浄装置である。前記減圧手段は、前記気体を凝縮する熱交換器および前記熱交換器の下流に設けた真空ポンプを含んで構成される。
【0020】
前記熱交換器は、冷却水により前記気体を冷却するプレート式熱交換器にて構成されている。そして、前記熱交換器の上流側に、デミスタ(デミスタブランケットとも称する。)により液体の状態で流出する洗浄液,前記気体に含まれる洗浄液の微小液滴および微粒異物を前記気体から分離し、分離した液体を前記洗浄槽へ戻す気液分離器を備えている。プレート式熱交換器とは、微小隙間を存して多数のプレートを積層し、前記微小隙間に前記気体と冷却水を交互に流通させる構造の周知の熱交換器である。
【0021】
この発明の実施の形態1においては、前記熱交換器をプレート式熱交換器としているので、同じ熱交換能力のシェル・アンド・チューブ式熱交換器と比較して、洗浄装置における占有体積を減少でき、洗浄装置の小型化により省スペース化を実現できる。また、同じ外形寸法のシェル・アンド・チューブ式熱交換器と比較して、伝熱面が広く、冷却能力が高いので、少ない冷却水量で、所定の冷却能力を発揮できる。その結果、大幅に冷却水量を低減できる。
【0022】
また、前記減圧手段の作動による減圧と前記復圧手段の作動による復圧とを繰り返して前記洗浄槽内の洗浄液を沸騰させる。その洗浄液の沸騰の際に、洗浄液の微小液滴と血液異物などの微粒異物とが、気体(殆どが蒸気)に含まれて前記洗浄槽から前記プレート式
熱交換器へ向けて流出する。微粒異物は、前記洗浄槽の水位が上昇して流出する洗浄液に含まれて出てゆく場合と、微小液滴に含まれて出てゆく場合と、単独ででてゆく場合がある。
【0023】
流出した洗浄液と洗浄液の微小液滴と微粒異物は、前記デミスタにより捕捉され、気体から洗浄液が分離される。分離された洗浄液は、前記洗浄槽へ還流されて、洗浄に使用されるので、使用する洗浄液量が減少する。
【0024】
また、飽和温度以上の洗浄液の前記気液分離器下流側への流出が防止されるので、その洗浄液が前記真空ポンプへ吸い込まれることにより生ずるキャビテーションが防止され、前記真空ポンプの損傷が防止される。
【0025】
また、洗浄液の前記気液分離器下流側への流出が防止されるので、洗浄液による前記プレート式熱交換器の微小隙間の閉塞が防止され、洗浄液による前記プレート式熱交換器の伝熱面の減少が防止される。前記デミスタによる微小液滴の捕捉効率は、好ましくは、90%〜99%とする。この伝熱面の減少が防止される結果、前記真空ポンプによる前記洗浄槽の所定圧力までの減圧を短時間に行うことができ、洗浄時間を短縮することができる。また、所定圧力までの減圧を短時間に行うことができる結果、前記熱交換器での冷却水量を減少させることができる。
【0026】
さらに、流出した微粒異物は、前記デミスタにより除去され、微粒異物による前記プレート式熱交換器の詰りが防止される。前記デミスタにより除去すべき微粒異物の径は、前記プレート式熱交換器の微小隙間より小さく設定される。好ましくは、圧損の関係から前記微小隙間を2〜3mmとすると、前記デミスタにより除去すべき微粒異物の径は、1mm以上とする。この微粒異物の好ましい捕捉効率は、90〜99%である。
【0027】
こうして、前記プレート式熱交換器の詰りの原因となる微粒異物が前記デミスタにより捕捉されるので、前記プレート式熱交換器の伝熱効率の低下を防止できる。その結果、前記減圧手段による減圧時間が長くなり、消費電力が増加するという課題を解決することができる。
【0028】
この実施の形態においては、好ましくは、前記デミスタの上流側に前記デミスタが捕捉する微粒異物よりも大径の微粒異物を捕捉するプレフィルタを備える。このプレフィルタは、着脱自在で、詰まった微粒異物を洗浄等により除去することで再生可能な構成とする。前記デミスタの捕捉する微粒異物の径を1mm以上とすると、前記プレフィルタの捕捉する異物の径を5mm以上とする。
【0029】
ここで、この発明の実施の形態の洗浄装置を構成する構成要素を説明する。前記洗浄槽は、被洗浄物が出し入れ可能、所定量の洗浄液を貯留可能、貯留した洗浄液を加熱手段により所定温度に加熱可能であって、内部を所定圧力に減圧した後、復圧の減復圧の繰り返しに耐えうる構成であればよく、特定の構造に限定されない。
【0030】
前記減圧手段は、前記熱交換器と前記真空ポンプとを含むもので、前記熱交換器の上流側に蒸気エゼクタを備えることができる
【0031】
前記熱交換器は、微小隙間を存して多数のプレートを積層し、前記微小隙間に前記気体と冷却水を交互に流通させる形式のプレート式熱交換であればよく、前記微小隙間は、好ましくは、圧損の上限を1kPaとした場合、2〜3mmとする。
【0032】
前記真空ポンプは、好ましくは、水封式の真空ポンプとするが、これに限定されるもの
ではなく、この発明の課題の一つが、飽和温度以上の液滴が吸い込まれることにより生ずるキャビテーションを防止することであるので、このキャビテーションを生ずる可能性のある真空ポンプであればよい。
【0033】
前記気液分離器は、流入した気体から洗浄液および洗浄液の微小液滴を分離する気液分離を行う機能と、分離した洗浄液を前記洗浄槽へ還流する機能と、前記プレート式熱交換器の微小隙間に詰まる可能性のある微粒異物を先に捕捉する機能と、微粒異物の詰りの解消を前記プレート式熱交換器よりも容易に行える機能とを備える。
【0034】
これらの機能を満たすべく、前記気液分離器は、好ましくは、前記熱交換器と別体に構成された容器と、この容器内を入口側空間と出口側空間とに仕切るように配置されたデミスタとを備え、前記容器は、前記洗浄槽からの気体を前記入口側空間へ導入する気体入口と、前記デミスタにより洗浄液,洗浄液の微小液滴および微粒異物を分離した後の気体を前記熱交換器へ向けて流出させる気体出口と、前記デミスタにより分離された液体を前記洗浄槽へ還流させる液体出口とを備える。
【0035】
この気液分離器の構成において、好ましくは、洗浄液および洗浄液の微小液滴を分離する機能の大部分を前記デミスタにより行うように構成する。しかしながら、前記気体入口から導入される気体の導入方向を前記容器の内周壁に対して水平周方向として、遠心分離によって洗浄液および洗浄液の微小液滴を分離するように構成し、洗浄液および洗浄液の微小液滴を分離する機能の大部分をこの遠心分離機能により行い、残りを前記デミスタにより行うように構成できる。
【0036】
そして、前記容器を本体とこの本体を開閉可能とする蓋とから構成し、前記デミスタを前記本体に着脱自在に装着する構成とすることで、前記デミスタの再生または、交換を容易にする。前記デミスタの再生は、液体による洗浄だけではなく、気体により微粒異物を吹き飛ばす方法などを含む。前記プレート式熱交換器に微粒異物が詰まると、数十枚にも及ぶプレートを1枚、1枚、洗浄して元に戻す必要がある。これに対して前記デミスタを前記熱交換器と別体の容器内に着脱自在に設けておくことで、前記デミスタに捕捉された微粒異物の除去が容易となるので、前記プレート式熱交換器にて捕捉された場合と比較して、微粒異物の詰りを容易に解消することができる。
【0037】
前記の分離した洗浄液を前記洗浄槽へ還流する機能は、好ましくは、前記洗浄槽と前記液体出口とが、強制還流手段を備えない連通管にて接続することにより実現する。前記強制還流手段とは、ポンプであるが、前記強制還流手段を備えないことにより、装置構成を簡略化できる。
【0038】
この発明は、前記の発明の実施の形態に限定されるものではなく、前記復圧手段の給気路を前記洗浄槽に直接接続するのではなく、前記容器の出口側空間に接続し、前記給気路−前記出口側空間−前記デミスタ−前記気体入口を順次通して前記洗浄槽内を復圧するように構成することができる。
【0039】
また、前記デミスタの再生または交換時期を報知する報知手段を備えることができる。この報知手段は、好ましくは、前記洗浄槽内の液温を検出する液温センサを備え、前記制御手段は、前記減圧時の前記液温センサの検出温度の変化勾配が設定値以下となると、前記デミスタの再生または交換時期を報知するように構成する。こうした構成を採用した場合は、前記洗浄槽内の減圧を行う際に、洗浄液の温度を制御するために用いる液温センサをそのまま使用して、前記報知に用いることができ、装置の構成を簡素化できる。報知の手段としては、表示器による表示,音声による報知などを含む。
【0040】
しかしながら、前記報知手段として、前記デミスタの気体の流れに対して前後の差圧を検出して、検出差圧が設定値以上となると、前記デミスタの再生または交換時期を報知するように構成することができる。
【実施例1】
【0041】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の洗浄装置の一実施形態を示す概略図であり、図2は、同実施例1の制御手順の要部を示すフローチャート図である。
【0042】
本実施1の洗浄装置1は、洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物2が浸漬される洗浄槽3と、前記気体を凝縮する熱交換器4およびこの熱交換器4の下流に設けた真空ポンプ5を含み、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段6と、減圧された洗浄槽3内へ外気を導入して、洗浄槽3内を復圧する復圧手段7と、熱交換器4の上流側に設けられ、デミスタ8により洗浄液,前記気体に含まれる洗浄液の微小液滴および微粒異物を前記気体から分離し、分離した液体を洗浄槽3へ戻す気液分離器9とを主要部として備えている。
【0043】
そして、洗浄槽3内の洗浄液を加熱する加熱手段10と、洗浄槽3内の洗浄液を排出する排水手段11と、洗浄槽3内の圧力を検出する圧力センサ12と、洗浄槽3内の洗浄液の温度を検出する液温センサ13と、これらセンサ12,13の検出信号などに基づき前記各手段6,7,10,11を制御する制御手段14とを備える。
【0044】
洗浄装置1は、被洗浄物2の洗浄、すすぎおよび消毒の内、いずれか一以上の処理を実行可能とされる。本実施例1では、被洗浄物2の洗浄およびすすぎの後、被洗浄物2の乾燥が、一つの洗浄槽3で実行可能とされる。
【0045】
洗浄液は、減圧手段6による洗浄槽3内の減圧により沸騰可能であれば特に問わないが、たとえば水である。本実施例1では、洗浄液は、洗浄剤を0.5%前後含んだ水である。但し、洗浄液は、洗剤を含む水の他、洗剤を含まない水でもよい。また、洗浄液は、軟水、純水、溶剤など、洗浄に使用できるその他の液体でもよい。
【0046】
被洗浄物2は、洗浄を図りたい物品であり、たとえば、医療器具、電子部品または機械部品である。
【0047】
洗浄槽3は、内部空間の減圧に耐える中空容器である。本実施例1の洗浄槽3は、上方へ開口して中空部を有する第一容器本体(以下、単に第一本体という。)15と、この第一本体15の開口部を開閉する着脱自在の第一蓋16とを備える。第一本体15に第一蓋16をした状態では、第一本体15と第一蓋16との隙間は第一パッキン17で封止される。これにより、第一本体12の中空部は密閉され、洗浄槽3内に密閉空間が形成される。
【0048】
洗浄槽3には、洗浄槽3内に洗浄液を供給する給水手段18が接続される。本実施例1の給水手段18は、原水タンク19の水を、給水路20を介して洗浄槽3に供給する。給水路20には、原水タンク19の側から順に、給水ポンプ21と第一給水弁22とが設けられる。給水ポンプ21を作動させた状態で第一給水弁22を開くと、原水タンク19の水が給水路20を介して洗浄槽3に供給される。洗浄槽3へ供給される水には、給水路20の中途において、薬液タンク23からの洗浄剤を薬注ポンプ24により混入することができる。なお、第一給水弁22の開閉は、給水ポンプ21および薬注ポンプ24の作動の有無と連動する。但し、洗浄剤の添加は適宜に省略でき、その場合には薬注ポンプ24および薬液タンク23の設置は省略できる。
【0049】
洗浄槽3には、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段6が接続される。本実施例1の減圧手段6は、洗浄槽3内の気体を、排気路25を介して吸引排出する。排気路25には、気液分離器9,洗浄槽3の側から順に、減圧手段6の構成要素である熱交換器4、逆止弁26よび水封式の真空ポンプ6が設けられる。
【0050】
熱交換器4は、排気路25内の蒸気を冷却し凝縮させるプレート式熱交換器である。プレート式熱交換器4は、微小隙間を存して多数のプレートを積層して、微小隙間に気体流路27と冷却水流路28とを交互に形成(気体流路27と冷却水流路28とは並列に多数形成されているが、図1では、それぞれ1本のみ図示している。)し、流通させる構造の周知の熱交換器である。
【0051】
そして、冷却水流路28には、第二給水弁29を介して水が供給され排出される。熱交換器4において、排気路25内の蒸気を予め凝縮させることで、その後の真空ポンプ6の負荷を軽減して、洗浄槽3内の減圧を有効に図ることができる。
【0052】
水封式の真空ポンプ6は、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されて作動される。そのために、真空ポンプ6には、第三給水弁30を介して水が供給され排出される。真空ポンプ6を作動させる際、第三給水弁30は、真空ポンプ6に連動して開かれる。
【0053】
気液分離器9は、排気路25の熱交換器4の上流側で、洗浄槽3の下流側に設けている。気液分離器9は、熱交換器4と別体に構成された容器31と、この容器31内を入口側空間32と出口側空間33とに仕切るように配置されたデミスタ8とを含んで構成されている。
【0054】
容器31は、洗浄槽3からの気体を入口側空間32へ導入する気体入口34と、デミスタ8により洗浄液および洗浄液の微小液滴を分離した後の気体を熱交換器4へ向けて流出させる気体出口35と、デミスタ8により分離された液体を洗浄槽3へ還流させる液体出口36とを備える。デミスタ8は、熱交換器4の微小隙間に微粒異物が詰まらないように、1mm以上の微粒異物を捕捉する機能を有する。そして、洗浄槽3内の排気路25の入口に5mm以上の径の異物を除去するプレフィルタ37を設けている。
【0055】
また、容器31は、上方へ開口して中空部を有する第二容器本体(以下、単に第二本体という。)38と、この第二本体38の開口部を開閉する着脱自在の第二蓋38とを備える。第二本体38に第二蓋39をした状態では、第二本体38と第二蓋39との隙間は第二パッキン40で封止される。これにより、第二本体38の中空部は密閉され、気液分離器9内に密閉空間が形成される。こうした構成により、デミスタ8の洗浄または、交換を容易としている。
【0056】
洗浄槽3の底部と容器31の液体出口36とは、ポンプを備えない連通管41している。これにより、気液分離器9にて分離された洗浄液は洗浄槽3に還流される。気液分離器9の液面と、洗浄槽3の液面は、連通管41の作用により、図1に示すように等しくなる。
【0057】
また、洗浄槽3には、減圧下の洗浄槽3内へ外気を導入して洗浄槽3内を復圧する復圧手段7が接続される。本実施例1の復圧手段7は、減圧下の洗浄槽3内に、給気路42を介して外気を導入する。給気路42には給気フィルタ43および給気弁44が設けられており、洗浄槽3内が減圧された状態で給気弁44を開くと、差圧により外気を洗浄槽3内へ導入して、洗浄槽3内を復圧することができる。
【0058】
また、洗浄槽3には、洗浄槽3内の洗浄液を加熱する加熱手段10が設けられる。本実施例1の加熱手段10は、洗浄槽3内の洗浄液中に蒸気を吹き込んで、洗浄液を加熱する。具体的には、洗浄槽3には、ボイラなどの蒸気供給源から給蒸路45を介して蒸気が供給可能とされる。給蒸路45に設けた給蒸弁46を開閉することで、洗浄槽3内への蒸気供給の有無を切り替えることができる。
【0059】
また、洗浄槽3には、洗浄槽3内の洗浄液を排出する排水手段11が設けられる。本実施例1の排水手段11は、洗浄槽3内の洗浄液を、洗浄槽3の底部から排水路47を介して排出する。排水路47には、排水弁48が設けられており、洗浄槽3内に洗浄液が貯留された状態で排水弁48を開くと、洗浄液を洗浄槽3外へ自然に導出することができる。
【0060】
減圧手段6、復圧手段7、加熱手段10,排水手段11および給水手段18は、制御手段14により制御される。この制御手段14は、前記各センサ12,13の検出信号などに基づき、前記各手段6,7,10,11,18を制御する制御器である。具体的には、給水ポンプ5、薬注ポンプ24、第一給水弁22、第二給水弁29、第三給水弁30、真空ポンプ24、給気弁28、給蒸弁30、排水弁32、給蒸弁46、排水弁47、圧力センサ9および液温センサ10は、制御器33に接続されている。そして、制御手段14は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽3内の被洗浄物2の洗浄を図る。
【0061】
以下、本実施例1の洗浄装置1を用いた洗浄方法について図1および図2に基づき具体的に説明する。
【0062】
<注水工程開始前>
初期状態において、洗浄槽3内に洗浄液はなく、給気弁44以外の各弁22,29,30,46,48は、閉じられ、各ポンプ5,21,24は作動を停止している。この初期状態から、注水工程S1、加熱工程S2、減復圧パルス工程S3および排水工程S4が順次になされる。
【0063】
注水工程S1に先立って、洗浄槽3内には被洗浄物2が入れられ、洗浄槽3の第一蓋16は閉じられる。但し、被洗浄物2は、注水工程S1の直後に洗浄槽3内に入れてもよく、その場合も、洗浄槽3内に被洗浄物2を入れた後、洗浄槽3の第一蓋16は閉じられる。いずれにしても、被洗浄物2は、洗浄槽3内の洗浄液内に浸漬される。
【0064】
<注水工程>
注水工程S1は、給水手段18により洗浄槽3内に洗浄液を入れる工程である。本実施例1では、第一給水弁22を開けた状態で、給水ポンプ21および薬注ポンプ24を作動させて、洗浄槽3内に洗浄液が入れられる。洗浄槽3内へ供給される水には、薬注ポンプ24の作動により、所望量の洗浄剤が添加される。注水工程S1において、洗浄槽3の第一蓋16が閉じられている場合、洗浄槽3への注水に伴い、洗浄槽3内の空気は給気路42から排出される。
【0065】
洗浄槽3に設けた液位センサ(図示省略)により、洗浄槽3内の所定水位まで洗浄液が貯留されたことを検知すると、給水手段18による給水を停止する。具体的には、給水弁22を閉じると共に、給水ポンプ21および薬注ポンプ24を停止して、次工程へ移行する。
【0066】
<加熱工程>
加熱工程S2は、洗浄槽3内の洗浄液を減復圧パルス開始温度まで加熱する工程である。具体的には、洗浄液が減復圧パルス開始温度になるまで、加熱手段10により洗浄液を
加熱する。本実施例1では、給蒸弁46を開いて、洗浄槽3内の洗浄液中に蒸気を吹き込んで、洗浄液を加熱する。この給蒸中、液温センサ13により洗浄液の温度を監視し、洗浄液が減復圧パルス開始温度になると、給蒸弁46を閉じて次工程へ移行する。
【0067】
減復圧パルス開始温度は、特に問わないが、被洗浄物2の汚れが血液汚れの場合、60℃を超えるとタンパク質が熱変形し固着するので、そのような被洗浄物2の場合には、減復圧パルス開始温度は60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。本実施例1では、減復圧パルス開始温度は、たとえば50℃に設定される。
【0068】
<減復圧パルス工程>
減復圧パルス工程(減圧沸騰洗浄工程と称することができる。)S3では、洗浄槽3内の洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで、洗浄液を沸騰させ続けるように洗浄槽3内の減圧が図られる。この間、洗浄液の沸騰中には、所定タイミングで洗浄槽3内を瞬時に復圧して、洗浄液の沸騰を一時的に中断させる操作が繰り返される。このようにして、減圧と瞬時の復圧とが繰り返される。減復圧パルス終了温度は、特に問わないが、洗浄温度が低くなると洗浄効果が低下するため、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。
【0069】
より具体的に説明すると、減復圧パルス工程S3では、減圧手段6の作動を継続して、洗浄槽3内の圧力を徐々に低下させ、それにより洗浄液の沸騰の継続が図られる。但し、この間、液温センサ13により洗浄液の温度を監視し、洗浄液の温度が所定ずつ下がるたびに、復圧手段6により洗浄槽3内を一時的に復圧する。減圧手段6による洗浄槽3内の減圧は、給気弁44を閉じて、第二給水弁29および第三給水弁30を開いた状態で真空ポンプ24を作動させればよい。また、復圧手段7による設定圧力までの瞬時の復圧は、給気弁44を開けばよい。この復圧時にも、減圧手段6は作動させたままでよい。そして、給気弁44を開けて洗浄槽3内を復圧して、洗浄液の沸騰を中断させた後は、給気弁44を再び閉じて、洗浄槽3内の減圧とそれによる洗浄液の沸騰が図られる。
【0070】
このような減復圧パルス工程S3を洗浄液が減復圧パルス終了温度になるまで行う。減復圧パルス終了温度は、特に問わないが、たとえば30℃に設定される。
【0071】
(減復圧パルス工程における本実施例1の作用・効果)
以上のように、減復圧パルス工程S3においては、減圧手段6の作動による減圧と復圧手段7の作動による復圧とが繰り返されて、洗浄槽3内の洗浄液が沸騰する。その洗浄液の沸騰の際に、洗浄液の微小液滴と、被洗浄物に付着していた微粒異物が、気体に含まれて洗浄槽3から熱交換器4へ向けて流出する。また、減圧時に洗浄液は、蒸気として洗浄槽3から流出する。
【0072】
洗浄槽3から流出する異物のうち径の大きいものは、まずプレフィルタ37により捕捉される。その結果、デミスタ8による異物の捕捉量が減少し、デミスタ8の再生時期を遅らせることができる。
【0073】
そして、プレフィルタ37により捕捉されずに流出した微粒異物は、デミスタ8により除去される。その結果、微粒異物によるプレート式熱交換器4の微小隙間の詰りが防止される。その結果、微小異物の詰まりによるプレート式熱交換器4の熱交換能力の低下が防止され、短時間で減圧を行うことができ、洗浄時間を短縮することができる。
【0074】
デミスタ8により捕捉された微粒異物が所定量に達すると、第二蓋39を開いて、デミスタ8を第二本体38外へ取り出し、洗浄することで、微粒異物を除去する。デミスタ8の洗浄の代わりに、洗浄済みか新品のデミスタ8を第二本体38へ装着してもよい。
【0075】
プレフィルタ37も、洗浄槽3の第一蓋16を外して、定期的に洗浄して再生する。
【0076】
また、洗浄槽3から流出した洗浄液,洗浄液の微小液滴は、気液分離器9のデミスタ8により捕捉されて、気体から洗浄液が分離される。分離された洗浄液は、液滴となって落下し、第二容器本体37の底部に貯留される。貯留された洗浄液は、サイフォンの原理で、洗浄槽3へ還流されて、洗浄に使用される。こうしたデミスタ8による洗浄液分離機能と分離した洗浄液の還流使用機能により、装置外へ無駄に排出される洗浄液および洗浄剤の量を減少でき、洗浄液の補充量を削減でき、洗浄液および洗浄剤の使用量を大幅に減少させることができる。
【0077】
また、デミスタ8による洗浄液の分離機能により、洗浄液の気液分離器9下流側への流出が防止されるので、洗浄液によるプレート式熱交換器4の気体が流通する微小隙間の閉塞が防止され、洗浄液によるプレート式熱交換器4の伝熱面の減少が防止される。この伝熱面の減少の防止により、プレート式熱交換器4による蒸気凝縮能力低下が防止されて、真空ポンプ5による洗浄槽3の所定圧力までの減圧を短時間に行うことができる。その結果、洗浄時間を短縮することができる。また、所定圧力までの減圧を短時間に行うことができることにより、熱交換器4での冷却水使用量を減少させることができる。
【0078】
また、特許文献1の減圧沸騰洗浄装置においては、飽和温度以上の洗浄液が真空ポンプへ吸い込まれるとキャビテーションを生ずるが、この実施例1においては、デミスタ8による洗浄液の分離機能により、飽和温度以上の洗浄液の気液分離器9下流側への流出が防止されるので、前記キャビテーションが防止され、真空ポンプ5の損傷が防止される。
【0079】
<排水工程など>
その後の排水工程S4は、洗浄槽3内を大気圧まで復圧して、洗浄槽3内の洗浄水を排出する工程である。具体的には、給気弁44を開いて洗浄槽3内を大気圧まで復圧した後、排水弁47を開けて洗浄水を排水すればよい。その後は、所望により、被洗浄物2のすすぎがなされる。すすぎ工程後には、洗浄水を排水した後、乾燥工程を行うのがよい。乾燥工程では、洗浄槽3内に蒸気を供給して被洗浄物2の温度を上げた後、洗浄槽3内を減圧する。あるいは、蒸気との熱交換により洗浄槽3内へ暖かい空気を入れつつ、減圧手段6により洗浄槽3内からの真空引きを図ればよい。これにより、洗浄槽3内の被洗浄物2の乾燥が図られる。
【実施例2】
【0080】
つぎに、この発明の実施例2を図3および図4に基づき説明する。以下の説明では、実施例1と異なる構成を中心に説明し、同じ構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0081】
この実施例2において、実施例1と異なる点は、洗浄槽3内の液温を検出し、減復圧パルス工程S3において洗浄液の温度を制御するための液温センサ13を用いて、制御手段14が、液温センサ13の検出温度の変化勾配が設定値以下となると、デミスタ8の再生時期を表示器49により報知するように構成した点である。
【0082】
この実施例2の作用、効果を図4に基づき説明する。図4を参照して、S21で、減復圧パルス工程S3の減圧が開始されたかどうかを判定する。YESが判定されると、S22にて、液温センサ13による検出温度の変化勾配が設定値以下かどうか,すなわち減圧による所期の液温低下が生じているかどうかを判定する。前記設定値は、予め実験によりデミスタ8の詰り具合との関係で定めておく。S22にて、YESが判定されると、制御手段14は、デミスタ8の詰りと推定して、S23へ移行して、表示器49によりデミスタ8の洗浄が必要なことをユーザーやメンテナンス員に知らせる。S23では、洗浄要の
報知と同時に洗浄装置の運転を自動的に停止する。この洗浄装置の運転の停止は、洗浄要の報知を先行させて、報知から所定時間遅れで停止を行うように構成することができる。
【0083】
この実施例2によれば、デミスタ8の再生または交換の時期を容易に知ることができ、洗浄装置の洗浄能力低下を防止できる。また、洗浄液の温度を制御するために用いる液温センサ13を使用して、洗浄要の報知に用いているので、洗浄装置の構成を簡素化できる。さらに、減圧時の洗浄液の温度低下勾配は、減圧性能を直接的に示すものであり、たとえデミスタ8の詰りが生じていても所定の減圧性能が確保されていれば、洗浄運転を継続できる。洗浄運転の継続という観点からは、差圧によりデミスタ8の洗浄時期を検出する方法と比較して、減圧時の洗浄液の温度低下勾配による検出の方が好ましい。
【実施例3】
【0084】
つぎに、この発明の実施例3を図5に基づき説明する。以下の説明では、実施例1と異なる構成を中心に説明し、同じ構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0085】
この実施例3において、実施例1と異なる点は、デミスタ8を気液分離器9から取り出すことなく、第二蓋39を外して、洗浄ホースなど洗浄手段50により異物除去のための洗浄液を噴出して、デミスタ8に付着した微粒異物を除去するように構成した点である。そして、この洗浄手段50を用いての洗浄の際に、排水弁48を開くことにより、除去された異物を連通管41−排水路47を通して排出するように、連通管41を排水路47の排水弁48の上流側に接続している。
【実施例4】
【0086】
つぎに、この発明の実施例4を図6に基づき説明する。以下の説明では、実施例1と異なる構成を中心に説明し、同じ構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
この実施例4において、実施例1と異なる点は、つぎの構成である。実施例1では、復圧手段7の給気路42を洗浄槽3に直接接続しているが、実施例4では、気液分離器9の第二容器本体38の出口側空間33に接続している。
【0088】
この実施例4の構成によれば、復圧時、外気が給気路42−出口側空間33−デミスタ8−気体入口34を順次通して洗浄槽3内へと流れる気流が形成される。その際、図6の一点差線矢示Aにて示す空気の流れにより、デミスタ8により捕捉された微粒異物の一部が除去されて、第二容器本体38内に落下する。こうして、復圧の度に、デミスタ8の気流による洗浄が行われるので、デミスタ8の再生または交換時期を遅らせることができる。
【0089】
本発明の洗浄装置は、前記実施例1〜4の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、減復圧パルス工程S3における減圧と復圧との繰り返し方法は、適宜に変更可能である。
【0090】
また、前記実施形態の洗浄装置において、超音波振動による洗浄を付加してもよい。すなわち、洗浄槽3にさらに超音波振動子を設置してもよい。そして、たとえば、加熱工程S2において、超音波振動による洗浄を図るのがよい。加熱工程S2は、洗浄液を加熱するだけで洗浄には寄与していないため、この工程において洗浄液に超音波振動を与えることで、被洗浄物2を超音波洗浄して、洗浄効果を一層向上することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 洗浄装置
2 被洗浄物
3 洗浄槽
4 熱交換器
5 真空ポンプ
6 減圧手段
7 復圧手段
8 デミスタ
9 気液分離器
13 液温センサ
14 制御手段
31 容器
32 入口側空間
33 出口側空間
34 気体入口
35 気体出口
36 液体出口
42 給気路
49 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が貯留され、その洗浄液に被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、前記洗浄槽内の気体を凝縮する熱交換器および前記熱交換器の下流に設けた真空ポンプを含み、前記気体を外部へ吸引排出して前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記洗浄槽内へ外気を導入して、前記洗浄槽内を復圧する復圧手段と、前記減圧手段および前記復圧手段を制御して前記減圧と前記復圧とを繰り返して前記洗浄槽内の洗浄液を沸騰させる制御手段とを備える洗浄装置において、
前記熱交換器は、冷却水により前記気体を冷却するプレート式熱交換器にて構成され、
前記熱交換器の上流側に、デミスタにより洗浄液,前記気体に含まれる洗浄液の微小液滴および微粒異物を前記気体から分離し、分離した液体を前記洗浄槽へ戻す気液分離器を備えた
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記気液分離器は、前記熱交換器と別体に構成された容器と、この容器内を入口側空間と出口側空間とに仕切るように配置されたデミスタとを備え、前記容器は、前記洗浄槽からの気体を前記入口側空間へ導入する気体入口と、前記デミスタにより洗浄液,洗浄液の微小液滴および微粒異物を分離した後の気体を前記熱交換器へ向けて流出させる気体出口と、前記デミスタにより分離された液体を前記洗浄槽へ還流させる液体出口とを備え、前記デミスタを再生または交換可能に構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽内の液温を検出する液温センサを備え、
前記制御手段は、前記減圧時の前記液温センサの検出温度の変化勾配が設定値以下となると、前記デミスタの再生または交換時期を報知することを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記復圧手段の給気路を前記出口側空間に接続し、前記給気路,前記出口側空間,前記デミスタ、前記気体入口を順次通して前記洗浄槽内を復圧することを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−45834(P2011−45834A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196356(P2009−196356)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】