説明

洗濯乾燥機

【課題】脱水運転時における洗濯物のしわや機械的なダメージを充分に解消できて、乾燥をしたときの洗濯物の仕上がり具合を充分に好ましくすることのできる洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】洗濯物を、水槽に収容した回転槽の内部で洗濯し、次いで回転槽を回転させて脱水し、その後に乾燥させる機能を有し、その脱水時に、洗濯物が回転槽の周壁に張り付く回転槽の高速回転動作と、前記洗濯物が回転槽の周壁に張り付かない回転槽のアンバランス解消回転動作とを交互に複数回行う洗濯乾燥機において、標準コースにおける脱水時の最終回の回転槽の高速回転動作を省略した上質仕上げコースを実行可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗濯乾燥機においては、洗濯物を回転槽の内部で洗濯し、次いで回転槽を回転させて脱水し、その後に乾燥させる機能を有している。しかして、その脱水時には、洗濯物が回転槽の高速回転による遠心力で脱水されるものの、絞られたまま回転槽の周壁に張り付けられることで、しわが生じやすく、且つ機械的なダメージを受けやすい。このため、脱水後、洗濯物を乾燥させても、脱水時に生じたしわや機械的なダメージが残り、仕上がり具合が充分に好ましくはないという問題点を有していた。
【0003】
そこで、脱水時に、洗濯物を脱水する回転槽の高速回転と、その回転槽の高速回転で絞られた洗濯物をほぐすほぐし回転とを行うようにしたものが供されている(例えば特許文献1参照)。
そのほか、しわの少ない乾燥を目指して、風の吹出口をノズル化し、それにより風速を上げて高速の風を直接洗濯物に当てることにより、しわを伸ばすようにしたものも考えられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175370号公報
【特許文献2】特開2011−101670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のもののようにほぐし回転を行っても、洗濯物のしわや機械的なダメージを充分に解消するには至っておらず、乾燥をしたときの洗濯物の仕上がり具合は充分に好ましくはないままである。
又、上記特許文献2のもののように高速の風を直接洗濯物に当てるようにしても、それは脱水運転ですでに付いたしわを乾燥時に高速の風で伸ばすというもので、しわを脱水運転時から生じにくくすることにはなっていない。
【0006】
そこで、脱水運転時における洗濯物のしわや機械的なダメージを充分に解消できて、乾燥をしたときの洗濯物の仕上がり具合を充分に好ましくすることのできる洗濯乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の洗濯乾燥機においては、洗濯物を、水槽に収容した回転槽の内部で洗濯し、次いで回転槽を回転させて脱水し、その後に乾燥させる機能を有し、その脱水時に、前記洗濯物が回転槽の周壁に張り付く回転槽の高速回転動作と、前記洗濯物が回転槽の周壁に張り付かない回転槽のアンバランス解消回転動作とを交互に複数回行う洗濯乾燥機において、標準コースにおける脱水時の最終回の回転槽の高速回転動作を省略した上質仕上げコースを実行可能としたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態を示す上質仕上げコースの内容説明図
【図2】洗濯乾燥機全体の縦断側面図
【図3】ヒートポンプの構成を通風路の構成と合わせて示す概略図
【図4】標準コースの内容説明図
【図5】第2の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態につき、図1ないし図4を参照して説明する。
まず、図2には、ドラム式の洗濯乾燥機の全体構造を示しており、外箱1を外殻としている。この外箱1は、詳細には、底部の基台1aと、これに被着結合した箱本体1bとから成るもので、そのうちの箱本体1bの前面部(図2で左側)のやゝ上側に、洗濯物出入口2を形成し、該出入口2を開閉する中空の扉3を設けている。又、箱本体1bの前面部の上部には、操作パネル4を設けており、その裏側(外箱1内)に制御装置5を設けている。
【0010】
外箱1の内部には、水槽6を配設している。この水槽6は軸方向が前後(図2で左右)の横軸円筒状を成すものであり、それを左右一対(一方のみ図示)のサスペンション7により前上がりの傾斜状に弾性支持している。
水槽6の背部には、モータ8を取付けている。このモータ8は、この場合、例えば直流のブラシレスモータから成るもので、アウターロータ形であり、ステータ8aを水槽6の背部に取付け、ロータ8bの中心部に結合した回転軸8cを、軸受ブラケット9に内装した複数の軸受10を介して水槽6の内部に挿通している。
【0011】
水槽6の内部には、ドラム11を収容している。このドラム11も軸方向が前後の横軸円筒状を成すもので、それを後部の中心部で上記モータ8の回転軸8cの先端部に取付けることにより、水槽6と同軸の前上がりの傾斜状に支持している。又、その結果、ドラム11はモータ8により直に回転されるようになっており、従って、ドラム11は回転槽であり、モータ8はドラム11を回転させるドラム駆動装置として機能するようになっている。
【0012】
ドラム11の周側部(胴部)には、小孔12を全域にわたって多数(一部のみ図示)形成すると共に、洗濯物掻き上げ用のバッフル13を複数(1つのみ図示)設けている。又、ドラム11及び水槽6は、ともに前面部に開口部14,15を有しており、そのうちのドラム11の開口部14の周囲部内側には、例えば液体封入形の回転バランサ16を設け、水槽6の開口部15に、環状のベローズ17を介して前記洗濯物出入口2を連ねている。この結果、洗濯物出入口2は、ベローズ17、水槽6の開口部15、及びドラム11の開口部14を介して、ドラム11の内部に連なっている。
【0013】
水槽6の底部中の最低部、この場合、最後部には、排水口18を形成しており、この排水口18に機内排水ホース19の基端部を接続し、該機内排水ホース19の先端部を、排水弁20を介して排水パイプ21に接続している。排水パイプ21の先端部は、外箱1の基台1aから機外に臨み、図示しない機外排水ホースを接続している。
【0014】
このほか、外箱1内の最上部には、給水弁22と、給水ケース23を配設している。このうち、給水弁22は、入口部に、図示しない水道の蛇口に接続した機外給水ホース(これも図示せず)を接続するようになっており、出口部を接続パイプ24を介して給水ケース23に接続している。給水ケース23は、内部に洗剤貯留部(これも図示せず)を有しており、その内部を機内給水ホース25を介して水槽6内にその上部から連通させている。従って、給水弁22は、給水ケース23を介して水槽6内に通じるものであり、これらの給水弁22と給水ケース23とにより水槽6内に給水する給水装置26を構成している。
【0015】
更に、外箱1内の後下部には、ヒートポンプユニット27を、図3に示す循環ファン28と共に配置している。ヒートポンプユニット27は、ユニットケース29の内部に図3に示すアキュムレータ30を併設した圧縮機31と、凝縮器32、絞り器である絞り弁33、及び蒸発器34を配設して成るもので、それらの圧縮機31、凝縮器32、絞り弁33、及び蒸発器34を、図3に示すように順に接続することによって、ヒートポンプ(冷凍サイクル)35を構成している。なお、ヒートポンプ35には冷媒を封入しており、又、ユニットケース29内では、詳しくは図示しないが、凝縮器32及び蒸発器34を通る風路と、圧縮機31及び絞り弁33を配置したスペースとを仕切壁により隔てている。
【0016】
ユニットケース29の図3で下側の端部には、上記凝縮器32及び蒸発器34を通る風路に連なる入気口36を形成しており、この入気口36には入気ダクトパイプ37の一端部を接続している。入気ダクトパイプ37の他端部は、前記水槽6の前部の上部に形成した温風出口38を接続している。
【0017】
循環ファン28は、ケーシング28aの内部に送風羽根28bを配設し、この送風羽根28bを回転駆動するモータ28cをケーシング28a外に配設して成るもので、そのケーシング28aをユニットケース29に並設して、該ケーシング28aの入口部をユニットケース29の前記凝縮器32及び蒸発器34を通る風路の出口部と連通させている。又、ケーシング28aは出口部を出気ダクトパイプ39を介して、前記水槽6の後部の上部に形成した温風戻り口40に接続している。
【0018】
かくして、入気ダクトパイプ37、ユニットケース29の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路、循環ファン28のケーシング28a、出気ダクトパイプ39により、水槽6の温風出口38と温風戻り口40とを接続する通風路41を構成している。なお、図3には、通風路41を前記ヒートポンプ35と併せて概略的に示しており、そのほか、入気ダクトパイプ37内に設けた入気温度センサ42、並びに出気ダクトパイプ39内に設けた出気温度センサ43をも示している。
【0019】
次に、上記構成の洗濯乾燥機の作用を述べる。
上記構成の洗濯乾燥機では、種々の運転コースがあり、そのうちの「標準」コースについて最初に説明する。この「標準」コースでは、最初に洗濯行程が実行される。この洗濯行程には、洗い運転とすすぎ運転とがあり、そのうちの洗い運転では、給水装置26により水槽6からドラム11内に給水する動作が行われ、続いて、モータ8が作動されることにより、ドラム11が低速で正逆両方向に交互に回転される。これにより、ドラム11に収容された洗濯物が上げ下げ(タンブリング)されて撹拌され、洗浄される。
この後、排水弁20が開放されて、ドラム11及び水槽6内の水が、機内排水ホース19、排水パイプ21、及び機外排水ホースを順に通じて機外に排出される。
【0020】
すすぎ運転では、上記洗い運転と同様の動作が行われるものであり、図4に示すように、上記同様の給水(給水弁22の開放)を行った後に、ドラム11を低速で正逆両方向に交互に回転させる。このときのドラム11の回転は、正逆いずれの方向でも、洗濯物が遠心力でドラム11の周壁に張り付くことのない速度の回転である。かくして洗い後の洗濯物を上げ下げして撹拌し、すすぐ。
【0021】
洗濯行程が終了すると、次に脱水行程が実行される。この脱水行程も、図4に示すとおりであり、ドラム11を、この場合、最初に1000〔rpm〕程度に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を前述の経路で機外に排出する。
次いで、ドラム11の回転速度を低速に落とし、このとき、排水弁20を閉塞させて給水弁22を開放させることにより水槽6内に低水位の給水をする。
【0022】
この後、ドラム11を、この場合も1000〔rpm〕程度に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を機外に排出する。
次いで、ドラム11を前記すすぎ動作と同程度の低速で正逆両方向に交互に回転させつつ、排水弁20を閉塞させて給水弁22を開放させることにより、水槽6内に低水位の給水をする。
【0023】
この後、ドラム11を、洗濯物がドラム11の周壁に張り付く例えば400〔rpm〕程度に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし(高速回転動作A)、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を機外に排出する。
次いで、ドラム11を前記すすぎ動作と同程度(洗濯物がドラム11の周壁に張り付かない速度)の低速で正方向に複数回回転させることで、洗濯物を撹拌(上げ下げ)してドラム11内における洗濯物の片寄りを解消する(均等に分散させる)第1回目のアンバランス解消回転を実行する(アンバランス解消回転動作a)。
【0024】
更にその後、ドラム11を、洗濯物がドラム11の周壁に張り付く、この場合、700〔rpm〕以上に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし(高速回転動作B)、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を機外に排出する。
この後、ドラム11を再び前記すすぎ動作と同程度(洗濯物がドラム11の周壁に張り付かない速度)の低速で正方向に複数回回転させることで、洗濯物を撹拌してドラム11内における洗濯物の片寄りを解消する第2回目のアンバランス解消回転を実行する(アンバランス解消回転動作b)。
【0025】
次いで、ドラム11を、この場合も洗濯物がドラム11の周壁に張り付く1000〔rpm〕程度に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし(高速回転動作C)、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を機外に排出する。
その後、ドラム11を更に前記すすぎ動作と同程度(洗濯物がドラム11の周壁に張り付かない速度)の低速で正方向に複数回回転させることで、洗濯物を撹拌してドラム11内における洗濯物の片寄りを解消する第3回目のアンバランス解消回転を実行する(アンバランス解消回転動作c)。
【0026】
そして、その後に、ドラム11を、この場合も洗濯物がドラム11の周壁に張り付く、最高で1400〔rpm〕程度まで段階的に高速回転させてドラム11内の洗濯物の遠心脱水をし(最終高速回転動作D)、同時に排水弁20を開放させて、脱水によりドラム11内から排出された水を機外に排出する。
【0027】
更に、その後には、ドラム11を前記すすぎ動作と同程度(洗濯物がドラム11の周壁に張り付かない速度)の低速で正方向に複数回回転させることで、洗濯物を撹拌してドラム11内における洗濯物の片寄りを解消する最終のアンバランス解消回転を実行する(最終アンバランス解消回転動作d)。又、このときには、排水弁20を脱水によりドラム11内から排出された水を全部機外に排出する時点まで開放し、循環ファン28を最初から作動させる。この循環ファン28の作動により、ドラム11内の空気が水槽6内から通風路41を通して水槽6外に出された後、水槽6内に、そしてドラム11内に戻される循環が行われるものであり、この循環で、ドラム11内には風が供給され、脱水が促進される。従って、循環ファン28と通風路41は、ドラム11内に給風する給風装置として機能するようになっている。
なお、以上の脱水行程の実行により洗濯物の脱水率は70〔%〕以上にまで達する。
【0028】
脱水行程が終了すると、次に、乾燥行程が実行される。この乾燥行程では、ドラム11をやはり前記すすぎ動作と同程度の低速で正逆両方向に回転させつつ、循環ファン28を作動させる。この循環ファン28の作動により、ドラム11内の空気が水槽6内から前記通風路41を通して水槽6外に出された後、水槽6内に、そしてドラム11内に戻す循環が行われることは上述のとおりである。
【0029】
又、このときには、ヒートポンプ35の圧縮機31の作動を開始させる。これにより、ヒートポンプ35に封入された冷媒が圧縮されて高温高圧の冷媒となり、その高温高圧の冷媒が凝縮器32に流れて、ユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路の空気と熱交換する。その結果、ユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路の空気が加熱され、反対に、冷媒の温度は低下して液化される。この液化された冷媒が、次に、絞り弁33を通過して減圧された後、蒸発器34に流入し、気化する。それにより、蒸発器34はユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路の空気を冷却する。このユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路の空気を冷却することでその熱を奪った冷媒は、その後、圧縮機31に戻る。
【0030】
これらにより、前記循環ファン28の作動によって水槽6内から前記通風路41中のユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路に流入した空気は、蒸発器34で冷却されて除湿され、その後に凝縮器32で加熱されて温風化される。そして、その温風が通風路41の後段(出気ダクトパイプ39)を通して水槽6内に戻し供給され、そしてドラム11内に送り入れられる。
ドラム11内に送り入れられた温風は、ドラム11内の洗濯物と接触してその水分を奪い、その後に水槽6の温風出口38から通風路41の前段(入気ダクトパイプ37)を経てユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路に流入する。
【0031】
かくして、蒸発器34と凝縮器32を有するユニットケース29内の凝縮器32及び蒸発器34を通る風路とドラム11を有する水槽6内との間を空気が循環することにより、ドラム11内の洗濯物が乾燥される。
この後、乾燥行程が終了し、「標準」コースが終了される。
【0032】
さて、上記構成の洗濯乾燥機では、以上の「標準」コースに対し、「上質仕上げ」コースの実行が操作パネル4の選択操作で可能である。この「上質仕上げ」コースは、図1に示すとおりであり、上記「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)を省略したものである。又、それに併せて、この場合、「標準」コースにおける脱水行程の第3回目のアンバランス解消回転(アンバランス解消回転動作c)も省略している。
【0033】
加えて、この場合の「上質仕上げ」コースにおいては、脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間を、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)より1回前のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間(例えば49〔秒〕間)より長く(例えば2〔分〕間に)しており、そのほかは「標準」コースと同じである。
【0034】
既述のように洗濯乾燥機の脱水時には、洗濯物がドラム11の高速回転による遠心力で脱水されるものの、絞られたままドラム11の周壁に張り付けられることで、しわが生じやすく、且つ機械的なダメージを受けやすいものであり、それが「標準」コースにおいては回数多く行われるのに対して、「上質仕上げ」コースにおいては、その「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作を省略している。
【0035】
これにより、洗濯物のしわや機械的なダメージを軽減することができる。ことに、前記特許文献2のもののように脱水運転ですでに付いたしわを乾燥時に高速の風で伸ばすというものとは異なり、しわを脱水運転時から生じにくくできるので、洗濯物のしわや機械的なダメージを充分に解消できるものであり、もって、その後に乾燥をしたときの洗濯物の仕上がり具合を充分に充分に好ましく(しわ及び機械的ダメージがない、もしくはそれらが少ない上質な仕上がり具合に)することができる。
【0036】
なお、特に上記構成の洗濯乾燥機では、洗濯物の脱水後の乾燥をヒートポンプ35で行うものであり、このヒートポンプ35による乾燥方式は、電熱ヒータによる乾燥方式に比して、乾燥温度が低い(60〜70〔℃〕)ので、エネルギーの省減に効果がある上に、洗濯物に縮みやしわが生じにくいものであるから、より上質な仕上がり具合を得ることができる。
【0037】
又、「上質仕上げ」コースにおいては、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作を省略する分、脱水率が2〜3〔%〕低下するので、相応に乾燥時間を延ばす必要があるが、それはコース全体の例えば3時間の所要時間の中の10〔分〕程度であり、使用者にとって充分許容できる範囲と考えられるし、それよりもより上質な仕上がり具合が得られるメリットが大きい。
【0038】
しかも、上記構成の洗濯乾燥機では、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間を、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)より1回前のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間より長くしており、これによって上記脱水率の低下を少なくでき、それだけ乾燥時間の延長を少なくできる。又、この場合、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)は、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)よりドラム11の最終回転速度が低く、それだけ、洗濯物にしわや機械的ダメージを与えにくいので、所要時間を延長した弊害を少なく留めることができる。
【0039】
以上に対して、図5は第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
この第2の実施形態においては、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の少なくとも1回のドラム11のアンバランス解消回転動作時間を、「標準」コースにおける同アンバランス解消回転動作時間より短くしている。具体的には、この場合、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の第2回目のアンバランス解消回転(アンバランス解消回転動作b)と、最終のアンバランス解消回転(最終アンバランス解消回転動作d)の各動作時間を、「標準」コースにおける同各アンバランス解消回転動作時間(アンバランス解消回転動作b、最終アンバランス解消回転動作d)よりそれぞれ短く(例えば半分程度に)している。
【0040】
アンバランス解消回転動作でも、それぞれ落下の衝撃で洗濯物にはしわや機械的なダメージが生じる。それに対して、この場合には、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の少なくとも1回のドラム11のアンバランス解消回転動作時間を、「標準」コースにおける同アンバランス解消回転動作時間より短くしていることにより、洗濯物の落下の回数を減らし、しわや機械的なダメージを軽減できるので、より上質な仕上がり具合を得ることができる。
【0041】
なお、この場合の各アンバランス解消回転動作はドラム11を正方向にのみ回転させることで行うものであるから、洗濯物にねじれが生じやすく、それが又洗濯物のしわや機械的なダメージを生じさせる因となりやすいから、本実施形態の制御がそのしわや機械的なダメージを軽減するのにより効果的に作用するが、ドラム11の回転方向は正逆両方向であっても良い。
【0042】
又、第2の実施形態においても、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間を、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)より1回前のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間より長くすることを行っているが、必ずしもその必要はない。又、第1の実施形態自体、「上質仕上げ」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間を、「標準」コースにおける脱水行程の最終回のドラム11の高速回転動作(最終高速回転動作D)より1回前のドラム11の高速回転動作(高速回転動作C)の時間より長くすることを必ずしも行わなくても良い。
【0043】
このほか、第3の実施形態として、「上質仕上げ」コースにおける洗濯物の乾燥終了検知の乾燥率の平均値を、洗濯物が過乾燥とならない値とする。
洗濯物の乾燥終了検知は、通風路41中の入気温度センサ42と出気温度センサ43との検知温度差の最大値がどのくらいまで減少していくか、その割合を、実験結果をベースに乾燥率と相関をとって、従来は約102〜105〔%〕程度に設定している。これは上記入気温度センサ42と出気温度センサ43との検知温度差のばらつきを考慮してのことである。
【0044】
これに対して、洗濯物の乾燥終了検知の乾燥率の平均値を、洗濯物が過乾燥とならない値とする。その値は、この場合、上記従来の値より低い100〔%〕であり、それでも実測値は、運転ごとに99.5〜102〔%〕程度にばらつくので、平均値としてその99.5〜102〔%〕程度の範囲に入るようにする。これにより、洗濯物の部分的な乾燥し過ぎ(過乾燥)による乾きむらを少なくできると共に、縮みの少ない、より上質な仕上がり具合を得ることができる。
【0045】
洗濯物の乾燥のばらつきについては、ドラム11の回転を30〔秒〕で正逆の方向を切換えて行っている運転時間を乾燥終了間際(例えば全乾燥期間の残り1/4前)まで行うようにすることにより、洗濯物間の乾きのばらつきを低減することが可能である。又、乾燥率を従来より下げる分、乾燥終了までの時間が短縮されるので、乾燥時間が延びることのないようにすることができる。
なお、この第3の実施形態も、第1及び第2の実施形態のいずれか1つ又は複数の要素もしくは全部の要素と組み合わせて実施するようにすると良い。
【0046】
そのほか、乾燥方式はヒートポンプによるもの限られず、例えば電熱ヒータによるものとしても良い。更に、洗濯乾燥機全体としても、ドラム式に限られず、水槽と回転槽を縦軸状に有する縦軸形洗濯乾燥機にも同様に適用して実施することができるなど、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【0047】
そのほか、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
図面中、6は水槽、11はドラム(回転槽)、A〜Dは高速回転動作、a〜dはアンバランス解消回転動作を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を、水槽に収容した回転槽の内部で洗濯し、次いで回転槽を回転させて脱水し、その後に乾燥させる機能を有し、その脱水時に、前記洗濯物が回転槽の周壁に張り付く回転槽の高速回転動作と、前記洗濯物が回転槽の周壁に張り付かない回転槽のアンバランス解消回転動作とを交互に複数回行う洗濯乾燥機において、
標準コースにおける脱水時の最終回の回転槽の高速回転動作を省略した上質仕上げコースを実行可能としたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
上質仕上げコースにおける脱水時の最終回の回転槽の高速回転動作時間を、標準コースにおける脱水時の最終回の回転槽の高速回転動作より1回前の回転槽の高速回転動作時間より長くしたことを特徴とする請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
上質仕上げコースにおける脱水時の少なくとも1回の回転槽のアンバランス解消回転動作時間を、標準コースにおける同アンバランス解消回転動作時間より短くしたことを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
上質仕上げコースにおける洗濯物の乾燥終了検知の乾燥率の平均値を、洗濯物が過乾燥とならない値としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48779(P2013−48779A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188955(P2011−188955)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】