説明

洗米水の飼料原料化方法、および装置

【課題】精米工場、炊飯工場、製粉工場、酒造工場等で大量に排出、浄化処理されている洗米水を、濃厚回収、濃縮、減菌、pH調整、貯留、均質化、強制排出の機能を備えたシステムを介して、これを飼料原料として利用するために必要なシステムであって、25℃で7日間保存しても品質を安定に保持できるシステムを提供する。
【解決手段】洗米時、米1kgに対して水を10%〜20%加えて、固形分濃度8%以上の洗米水を得る装置を備え、これに続く固液分離操作によって、固形分10%〜20%の濃厚洗米水を得る処理能力200リットル/時間以上の装置を備える。次工程の加熱殺菌機構において、60〜100℃の温度域で、10〜60秒間加温することによって、原料米に付着した土壌由来の一般細菌数、真菌数、大腸菌群数を回収直後の半数以下に減菌できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米工場、炊飯工場、製粉工場、酒造工場等で、大量に排出、浄化処理されている洗米水を良質な飼料原料として調製し、利用するために必要な方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗米時に固形分濃度8%の洗米水を排出する技術がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この回収された洗米水は水で希釈され、排水処理されている。同濃度の洗米水は、飼料原料として十分な栄養価を有するほか、ビタミンやミネラルなどの機能性成分も多く含まれていることが知られており、輸入穀物に依存する我が国の畜産業界では未利用資源としての活用が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第4239147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗米水を飼料原料として利用するためには、米に付着している土壌由来細菌による腐敗を抑えて鮮度を保持し、併せて、固形分濃度を高めて運搬コストを最少化させる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、加熱殺菌とギ酸添加の併用、ならびに固液分離法の組み合わせにより完成したものである。
【0006】
精米工場、炊飯工場、製粉工場、酒造工場等で大量に排出、浄化処理されている洗米水を、飼料原料として利用するために必要な、濃厚回収、濃縮、減菌、pH調整、貯留、均質化、強制排出等のプロセスを組み合わせた飼料原料化方法、および、これらの機能を備えた装置システムであり、以下の方法、装置により構成される。
洗米時、米1kgに対して水を10%〜20%加えて、固形分濃度8%以上の洗米水を得る装置を備えたシステム。および、これに続く固液分離操作によって、固形分10%〜20%の濃厚洗米水を得る処理能力200リットル/時間以上の装置を備えたシステム。
次工程の加熱殺菌機構において、60〜100℃の温度域で、10〜60秒間加温することによって、原料米に付着した土壌由来の一般細菌数、真菌数、大腸菌群数を回収直後の半数以下に減菌できる装置を備えたシステム。
さらに、濃厚回収および減菌処理を施した濃厚洗米水に対して、ギ酸(95%以上)を重量比で0.2%〜0.6%加えて、pHを3.5〜4.0に調整し、25℃で7日間保存しても、同洗米水回収直後の菌数水準に達しない域で鮮度保持できるpH自動調整装置を備えたシステム。
【発明の効果】
【0007】
本発明が可能とした洗米水の高濃度回収・鮮度保持・貯留システムによれば、現在、全国規模で大量に廃棄処分されている洗米水を集中的に濃厚回収し、優れた栄養価を有する良質な国産自給飼料原料として、畜産農家に提供できる。
【0008】
また、従来、洗米水は25℃で一晩放置すると変敗が生じる問題点があった。これに対して、本発明の鮮度保持処理によれば、上記のような問題点が解消されると同時に、固形分を約20%まで濃厚化することで減量し、運搬コストを大幅に低減することも可能としており、25℃で7日間は、飼料原料としての良好な品質を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 洗米水の高濃度回収・鮮度保持・貯留の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗米水の高濃度回収・鮮度保持・貯留システムは、後述する濃厚回収、濃縮、減菌、pH調整、貯留、均質化、強制排出する機能を備えた装置の組み合わせからなり、濃厚洗米水を25℃で7日間保存しても、これらを介して、飼料原料としての品質を保持できるように構成されていることを特徴とするものである。
【実施例】
【0011】
既設の洗米装置の前工程に超節水型洗米装置▲1▼を設け、固形分8%以上の洗米水を分離して回収タンク▲2▼に貯留する。この一次洗米を終えた洗い米は、既設の洗米装置▲9▼ですすぎ洗いされ、炊飯工程に移送される。このすすぎ洗いの時に発生する希薄な洗米水は既存浄化槽▲10▼に送られ浄化処理される。回収タンク▲2▼に貯留された一次洗米水は遠心分離型固液分離装置▲3▼で脱水され、固形分20%前後に濃縮され、チューブ式殺菌装置▲4▼で連続的に減菌処理されて貯蔵タンク▲5▼に貯留されるが、強制排出ポンプ(兼循環混合ポンプ)▲8▼で均質化され、粘度低下の目的で液化酵素が添加装置▲6▼から所定量注入され、同時にpH自動調整装置▲7▼よりギ酸が添加されて、pH3.5に調整される。以上の方法により、回収・鮮度保持された濃厚洗米水は強制排出ポンプ▲8▼によりバルク運搬容器に充填されるか、または、タンクローリー車の吸引機構によって車載タンクに回収され運搬される。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、安全・良質な家畜飼料原料としての洗米水の回収・鮮度保持に利用できる。
【符号の説明】
【0013】
1 超節水型洗米装置
2 一次洗米水回収タンク
3 遠心式固液分離装置
4 チューブ式加熱殺菌装置
5 20%濃縮・減菌洗米水貯蔵タンク
6 液化酵素添加装置
7 pH自動調整装置
8 強制排出ポンプ(兼循環混合ポンプ)
9 既設の洗米装置
10 既存の浄化槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精米工場、炊飯工場、製粉工場、酒造工場等で大量に排出、浄化処理されている洗米水を、飼料原料として利用するために必要な、濃厚回収、濃縮、減菌、pH調整、貯留、均質化、強制排出等のプロセスを組み合わせた飼料原料化方法、および、これらの機能を備えた装置システム。
【請求項2】
洗米時、米1kgに対して水を10%〜20%加えて、固形分濃度8%以上の洗米水を得る装置を備えたシステム。および、これに続く固液分離操作によって、固形分10%〜20%の濃厚洗米水を得る処理能力200リットル/時間以上の装置を備えたシステム。
【請求項3】
次工程の加熱殺菌機構において、60〜100℃の温度域で、10〜60秒間加温することによって、原料米に付着した土壌由来の一般細菌数、真菌数、大腸菌群数を回収直後の半数以下に減菌できる装置を備えたシステム。
【請求項4】
さらに、濃厚回収および減菌処理を施した濃厚洗米水に対して、ギ酸(95%以上)を重量比で0.2%〜0.6%加えて、pHを3.5〜4.0に調整し、25℃で7日間保存しても、同洗米水回収直後の菌数水準に達しない域で鮮度保持できるpH自動調整装置を備えたシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−165729(P2012−165729A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44468(P2011−44468)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【出願人】(592214830)食協株式会社 (5)
【Fターム(参考)】