説明

活性エネルギー線硬化型ワニス組成物

【課題】本発明は、紙基材面または印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化性ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該転写フィルムを剥離させる表面加工方法において、優れた基材・印刷インキ密着性、硬化性、美粧性を有する活性エネルギー線硬化型ワニス組成物を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化型ワニスが、(A)スチレン−アクリル樹脂、(B)光重合性単量体、(C)光重合開始剤、(D)シリコーン系および/または高分子系ワックス添加剤からなり、該活性エネルギー線硬化型ワニスの降伏値が150〜250mN/m2となることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ワニス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材の表面を高光沢化する表面加工方法に適した活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
雑誌、コミックス、教科書などの表紙、紙袋、カレンダー、紙器製品は、油性またはUVオフセットインキで印刷した後、印刷面に耐擦過性や耐ブロッキング性の向上、スリップ性や光沢の付与を目的としてオーバープリントワニスが塗工されている。
【0003】
このようなオーバープリントワニスとしては、養生期間を必要とする熱硬化型溶剤系または水系等の種々のものが主に利用されてきた。
ところが近年では塗工物が短時間で得られるといった生産性の向上が要求され、塗工後ですぐに乾燥・硬化する活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニス組成物が開発され使用されるようになっている。
【0004】
また最近では活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスを支持基材に塗工する際、美粧性を付与して塗工する方法が提案されている(特許文献1乃至2)。本方法では、支持基材に活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させることで、転写フィルムと同柄のオーバープリント層を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−036352号公報
【特許文献2】特開平5−232853号公報
【特許文献3】特開2007−90162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献3の表面加工に用いるワニスでは、塗工時に貼り合せたフィルムの剥離の際に塗膜表面が一部取られて光沢感が劣化する傾向にあり、他にもワニスの流動特性の限定がないことから、ホログラムやエンボス柄を転写フィルムに用いる場合には本加工方法に適した活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスとは言い難いものであった。
【0007】
そこで、これらの問題を解決する手段として、支持基材にワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させる表面加工方法に適していて、かつワニスの流動特性から良好な美粧性を有する活性エネルギー線硬化型オーバープリントワニスの組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成する為に鋭意検討した結果、紙基材面または印刷インキで印刷した該印刷面にワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性転写フィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、美粧性転写フィルムを剥離させる表面加工方法を行う際に、特定の組成からなる活性エネルギー線硬化性オーバープリントワニスを使用することにより、上記課題を全て解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、第1の発明は、紙基材上に、活性エネルギー線硬化型ワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてなる印刷物に用いる活性エネルギー線硬化型ワニスにおいて、
(A)スチレン−アクリル樹脂15〜35重量%、(B)光重合性単量体50〜80重量%、(C)光重合開始剤0〜20重量%および(D)添加剤0.1〜10重量%を含む活性エネルギー線硬化型ワニスであって、
(A)スチレン−アクリル樹脂が、
(a)スチレン系単量体70〜95重量%と(b)(メタ)アクリル酸エステル 単量体5〜30重量%と
を共重合させてなり、かつ
重量平均分子量8000〜14000
であり、
(B)光重合性単量体が、
(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する単量体
であり、さらに、
(D)添加剤が、
シリコーン系および高分子系ワックス添加剤から選ばれる1種類以上
であり、
前記活性エネルギー線硬化型ワニスが、
降伏値150〜250 mN/m2(25℃)
であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ワニス組成物に関するものである。
【0010】
また、第2の発明は、(b)(メタ)アクリル酸エステル単量体が、極性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であることを特徴とする第1の発明に記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物に関するものである。
【0011】
さらに、第3の発明は、光重合性単量体が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する含窒素環状化合物を含むことを特徴とする第1の発明または第2発明に記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物に関するものである。
【0012】
また、第4の発明は、第1の発明1〜第3の発明いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物を、紙基材上に塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてなる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、紙基材面または印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化性ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該転写フィルムを剥離させる表面加工方法において、優れた基材・印刷インキ密着性、硬化性、美粧性を有する活性エネルギー線硬化型ワニス組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
表面加工方法としては、紙基材面または印刷インキで印刷した該印刷面に活性エネルギー線硬化型ワニスを塗工し、繰返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムを塗工面に重ね合わせた後、活性エネルギー線にて塗膜を硬化させ、該ポリオレフィンフィルムを剥離させる順序を経る。
【0015】
紙基材の種類としては、特に限定されず、コートボール紙、アート紙、ポリエチレンコート紙、マットコート紙等が用いられる。印刷インキとしては、従来から使用されているオフセット印刷用インキなどが例示できる。
【0016】
繰り返し使用できる美粧性を有するポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどが使用できる。ポリオレフィンフィルムの表面形状としては、平面柄やホログラム柄、エンボス柄などが用いられる。
【0017】
本発明における(A)スチレン−アクリル樹脂は、(a)スチレン系単量体70〜95重量%と(b)(メタ)アクリル酸エステル単量体5〜30重量%とを共重合させて合成される。
【0018】
(a)スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルスチレン系のスチレン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用できる。
【0019】
(b)(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−ヘプチル、2−エチルヘキシル、2−エチルブチル、ノニル、ドデシル、ラウリル、ステアリル等の直鎖または分岐のアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート類、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートや3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート類が挙げられ、その他エポキシ基を有する(メタ)アクリレート類やアミド基を有する(メタ)アクリレート類が例示でき、これらを1種または2種以上使用できる。
【0020】
(A)スチレン−アクリル樹脂は、重量平均分子量が8000〜14000のものが好適である。
【0021】
なお、(a)スチレン系単量体の合計量が、70重量%より少ないと塗膜にした際の光沢感が不足してしまい、(a)スチレン系単量体の合計量が、95重量%より多いと、印刷基材への密着性が不足してしまう。
【0022】
(A)スチレン−アクリル樹脂の配合量としてはワニス組成物中に15〜35重量%であることが好ましい。配合量が15重量%より少ないと光沢感が不足し、35重量%より多いとワニス粘度が高くなりすぎてしまい、塗工適性のないものとなる。(a)スチレン系単量体としては、光沢感、塗膜物性およびコストを考慮するとスチレンが好ましい。また(b)(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、油性オフインキに対する密着性からステアリルメタクリレートまたは2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン−アクリル樹脂の合成方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の方法で製造することができる。分子量は公知の方法、例えば重合開始剤、連鎖移動剤の種類や使用量、分離・精製により調節が可能である。
【0023】
本発明における(B)光重合性単量体は、(分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するモノマーあるいはオリゴマーなどが挙げられる。本発明において、単量体とは、モノマーおよびオリゴマー両方を含むこととする。
【0024】
分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル;その他イソボニル(メタ)アクリレート;グリセロール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどがある。エチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものとしては、2−エチルヘキシル(EO)変性アクリレートなどが例示できる。
【0025】
分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどがある。エチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどが例示できる。
【0026】
分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどがある。これらのエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)で変性されたものなども使用でき、トリメチロールプロパン(EO)変性トリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0027】
本発明における(B)光重合性単量体が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する含窒素環状化合物としては、モルフォリンアクリレートやイソシアヌレート型アクリレート、イミドアクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ジビニルエチレンウレア、1−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトンなどが挙げられる。ワニス粘度や塗工適性を考慮すると、好ましくはモルフォリンアクリレートを用いる。
【0028】
分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するオリゴマーとしては、上記モノマーの1種または2種以上を適宜重合させて得られたものを用いることができる。上記(B)光重合性単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。(B)光重合性単量体の配合量としてはワニス組成物中に50〜80重量%である。配合量が50%より少ないとワニス粘度を下げることが困難になってしまう。80%より多いとスチレン−アクリル樹脂の配合量が減ってしまうことで、光沢感が不足してしまう。
【0029】
(C)光重合性開始剤としては、活性エネルギー線照射によって、容易に開裂して2個のラジカルができる光開裂型または水素引き抜き型、あるいはこれらを混合して使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、チオキサントン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6,−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0030】
本発明で言う活性エネルギー線とは、電子線、紫外線あるいはγ線の如き、電離性放射線や電磁波などを総称するものである。
【0031】
上記(C)光重合開始剤は、1種又は2種以上を用いることができる。(C)光重合開始剤はワニス組成中に0〜20重量%用いる。(C)光重合開始剤は電子線で硬化させる際には不要であり、またLED光源の紫外線により硬化させる場合には10〜20重量%必要とする。20重量%より多いと塗膜中の開始剤の量が多すぎてしまい、耐擦性などの塗膜強度が不足してしまう。一般光源の紫外線により硬化させる場合には1〜10重量%必要とする。
【0032】
(D)添加剤としては、シリコーン系および/または高分子系ワックス添加剤が挙げられ、慣用公知の添加剤を用いることが出来る。シリコーン系添加剤であれば、例えばポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等である。高分子系ワックス添加剤であれば、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンやアマイド、カルナバなどが用いられる。これらの中でいずれも単独あるいは複数のものを組み合わせて使用することができる。
【0033】
(D)添加剤は、ワニス組成物中0.1〜10重量%用いる。0.1重量%より少ないと、塗膜の耐擦過性やスリップ性が不足してしまい、反対に10重量%より多いと塗工直後に泳ぎが発生したり、塗膜に曇が見られる場合がある。
【0034】
25℃におけるワニスの流動特性として、降伏値が150〜250mN/m2となることが必要である。150mN/m2より小さいと、該表面加工時にホログラム等の柄を使用した際、柄の転写が不十分となり、美粧性が損なわれてしまう。また、250mN/m2より大きいと、レベリング不良などの塗工適性の劣化を生じる。流動特性の測定方法は、ワニスの粘度をB型粘度計にて測定を行い、612降伏値Yを下式に従い算出する。回転数6、12rpmの順にそれぞれ測定し、粘度をV6、V12とする。その後すぐに回転数12、6rpmの順に測定し、粘度をV'12、V'6とし、計算式(1)に従い降伏値Yを得る。
計算式(1)
【数1】

【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物の塗工方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート、シルクスクリーンコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、スプレーコート等の公知の手段が適用できる。好ましくは、溶剤希釈を必要としない手段である。溶剤希釈すると表面加工時に使用するポリオレフィンフィルムの柄層が徐々に溶解してしまい、該ポリオレフィンフィルムの繰返し使用回数が少なくなり、結果として加工費の上昇に繋がってしまう。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、防菌防かび剤等を配合することができる。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、或いは酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムの微粒子からなる無機系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0037】
光安定剤としては、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)が挙げられる。ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1−(メチル)−8−(1,2,2,66−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス1,1−ジメチルエチル]−4−ヒドロキシフェニル]メチル−ブチルマロネート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
【0038】
これらの紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、組成物中に任意の量で添加されても良いが、コスト面から組成物の全量を基準として0.5〜5重量%の範囲で添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0039】
防菌防かび剤としては、銀系無機化合物、バイナジン、プリベントール、チエベンダドール、ベンズイミダゾール、チアゾリルスルファミド化合物等が挙げられる。
【0040】
帯電防止剤としては、アルキルアミンサルフェート型、第4級アンモニウム塩型、ピリジニウム塩型等の陽性イオン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型等の両性イオン型がある。特に第4級アンモニウム塩型が好ましく、その例として低分子の界面活性剤、第4級アンモニウム塩基含有のアクリレート共重合体がある。
【0041】
その他、着色剤、滑剤、充填剤、潜在性硬化剤、難燃剤、可塑剤等を配合することもできる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
溶剤に酢酸エチル、重合開始剤に2、2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を用い、以下の単量体の配合で溶液重合を行うことにより、活性エネルギー線硬化型ワニス組成物(ワニス1)を得た。
[(A)スチレン−アクリル樹脂]
A1:スチレン/ステアリルメタクリレート=90/10の共重合体、
重量平均分子量11000 25重量%、
[(B)光重合性単量体]
B1:トリメチロールプロパン(EO)変性トリアクリレート 40重量%
B2:トリプロピレングリコールジアクリレート 28重量%
[(C)光開始剤]
C1:α−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン 5重量%、
[(D)添加剤]
D1:BYK−322(ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系添加剤)2重量%
【0044】
次に、紙基材に上記ワニス1を3g/cm2の塗布量となるように塗布し、該塗工面にホログラム柄ポリオレフィンフィルムを貼り合わせた。紫外線(高圧水銀ランプ、120W/cm、コンベアースピード20m/min、露光量60mJ/cm2に設定)を該ポリオレフィンフィルムを透して塗布面のワニスに照射して硬化させた。その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてホログラム柄塗工物を得た。
【0045】
(実施例2〜12、比較例1〜9)
実施例2〜12、比較例1〜9で用いた活性エネルギー線硬化型ワニス組成物の配合を表1、表2に示す。下記の(A)スチレン−アクリル樹脂、(B)光重合性単量体、(C)光重合開始剤を用いてワニス2〜21を得た。
【0046】
[(A)スチレン−アクリル樹脂]
A2:スチレン/ステアリルメタクリレート=70/30の共重合体、
重量平均分子量11000
A3:スチレン/ステアリルメタクリレート=95/5の共重合体、
重量平均分子量11000
A4:スチレン/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
=90/10の共重合体、重量平均分子量11000
A5:スチレン/ステアリルメタクリレート=90/10の共重合体、
重量平均分子量8000
A6:スチレン/ステアリルメタクリレート=90/10の共重合体、
重量平均分子量14000
A7:スチレン/ステアリルメタクリレート=60/40の共重合体、
重量平均分子量11000
A8:スチレン/ステアリルメタクリレート=97/3の共重合体、
重量平均分子量11000
A9:スチレン/ステアリルメタクリレート=90/10の共重合体、
重量平均分子量6000
A10:スチレン/ステアリルメタクリレート=90/10の共重合体、
重量平均分子量16000
[(B)光重合性単量体]
B3:モルフォリンアクリレート
[(C)光重合開始剤]
C2:ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイド
【0047】
ワニス2〜21を用い、実施例1と同一条件でホログラム柄塗工物を得た。なお、実施例11の硬化方法は、電子線照射装置で125kV、3Mrad、酸素濃度100ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。また、実施例12の硬化方法は、実施例1と同じく紫外線硬化であるが、紫外線の光源がLED(松下電工株式会社製LED方式SPOT型紫外線照射装置AICURE、ランプヘッドANUJ61524)のものを用いた。
【0048】
得られた塗工物について基材密着性、硬化性、光沢、美粧性、耐擦過性の評価、および降伏値の測定を行った。
【0049】
評価方法および測定方法を下記に示す。評価結果を表1、表2に示す。なお、評価の実用レベルは4以上である
【0050】
<基材密着性>
塗工1日後、塗工面に刃物で支持紙基材に達するまでの深さまで傷を付け、その上にセロハンテープを貼り合わせ、基材の垂直方向に勢いよく剥がした。塗工面の剥がれ具合を評価した。
(判定基準)
5:剥がれ無し
4:ほとんど剥がれ無し
3:若干剥がれ有り
2:剥がれ有り
1:全て剥がれる
【0051】
<硬化性>
塗工1日後にMEKを浸み込ませた綿棒で塗工面を50回擦り、塗膜の侵食具合を目視で評価した。
(判定基準)
5:取られ無し
4:ほとんど取られ無し
3:若干取られ有り
2:取られ有り
1:全て取られる
【0052】
<光沢>
光沢計(ビッグ・ケミー社製micro-TRI-gloss)にて塗工直後と1日後の光沢値を60°反射角で測定した。
【0053】
<美粧性>
ホログラム柄を転写させた際の、塗工面のギラつき具合を目視にて評価した。
(判定基準)
5:かなりギラつく
4:ギラつく
3:ややギラつく
2:若干ギラつく
1:ギラつかない
【0054】
<耐擦過>
塗工1日後に、塗工面/塗工面を重ね合わせ、学振型摩擦試験機を用い500g荷重にて300回の摩擦を行い、塗工面の傷や取られ具合を評価した。
(判定基準)
5:取られ無し
4:ほとんど取られ無し
3:若干取られ有り
2:取られ有り
1:全て取られる
【0055】
<降伏値>
ワニスの粘度をB型粘度計にて測定を行い、降伏値Yを下式に従い算出する。6、12rpmの順にそれぞれ測定し、粘度をV6、V12とする。その後すぐに12、6rpmの順に測定し、粘度をV'12、V'6とし、計算式(1)に従い降伏値Yを得た。
計算式(1)
【数2】


【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、活性エネルギー線硬化型ワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてなる印刷物に用いる活性エネルギー線硬化型ワニスにおいて、
(A)スチレン−アクリル樹脂15〜35重量%、(B)光重合性単量体50〜80重量%、(C)光重合開始剤0〜20重量%および(D)添加剤0.1〜10重量%を含む活性エネルギー線硬化型ワニスであって、
(A)スチレン−アクリル樹脂が、
(a)スチレン系単量体70〜95重量%と(b)(メタ)アクリル酸エステ
ル単量体5〜30重量%と
を共重合させてなり、かつ
重量平均分子量8000〜14000
であり、
(B)光重合性単量体が、
(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する単量体
であり、さらに、
(D)添加剤が、
シリコーン系および高分子系ワックス添加剤から選ばれる1種類以上
であり、
前記活性エネルギー線硬化型ワニスが、
降伏値150〜250 mN/m2(25℃)
であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ワニス組成物。
【請求項2】
(b)(メタ)アクリル酸エステル単量体が、極性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物。
【請求項3】
光重合性単量体が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する含窒素環状化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型ワニス組成物を、紙基材上に塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して活性エネルギー線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に該ポリオレフィンフィルムを剥離させてなる印刷物。

【公開番号】特開2012−136618(P2012−136618A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289361(P2010−289361)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】