説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法

【課題】 高粘性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法であって、特に、シート状樹脂基材に積層されて型押し賦形を施される賦形用シートに代表される、積層シートの製造に用いられる塗工液(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)の脱泡方法を提供すること。
【解決手段】 周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A)を連続式ニーダーに投入し、加熱、減圧下で攪拌と脱泡とを行うことを特徴する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高粘性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法であって、特に、シート状樹脂基材に積層されて型押し賦形を施される賦形用シートに代表される、積層シートの製造に用いられる塗工液(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)の脱泡方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学レンズや映写スクリーンなどに用いられる光学シートの製造方法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法などの製造方法が知られている。しかしながら、これらの製造方法では、大きなサイズのシートの成形が困難である、大量生産のためには数多くの金型が必要となる、等の問題があった。
【0003】
このため、紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用い、円筒形のレンズ型により、シート状基材の両面に連続的にレンズを形成する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
前記特許文献1には、レンチキュラーレンズスクリーンの製造工程として、ベースフィルムの両面に紫外線硬化性樹脂を塗布する工程と、レンチキュラーレンズのレンズ面形状と反対形のレンズ成形型面が形成された型を有する一対の成形用のロール間に紫外線硬化性樹脂が塗布されたベースフィルムを通して両面にレンチキュラーレンズを成形する工程と、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることにより、ベースフィルムの両面にレンチキュラーレンズを形成する工程を有するとあるが、ここで塗布されるような樹脂組成物において脱泡が不十分な場合、最終的に光学シートの内部に気泡が残存する、あるいは塗布から硬化の工程の間で表面付近の気泡が弾け塗膜欠陥を生じることになり、画像への悪影響を及ぼす結果となる。従って、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を効率よく脱泡する方法が必要とされる。
【0005】
高粘性液体等の粘性液体の脱泡方法に関しては、液体を入れる容器に気相部を設け、その気相部を減圧して液体内の気泡を除去する減圧法は広く用いられる方法の一つである(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、高粘度樹脂の脱泡を行う場合、減圧下において破法性(泡抜け)が悪くなり、減圧工程を長時間必要とした。また、減圧工程における粘度を低く抑えるべく、樹脂組成物を60℃以上、特に80℃以上に加温して減圧脱泡を行う場合、特に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物においては、減圧工程が長時間に及ぶと、熱重合によりゲル化しやすくなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平01−159327号公報
【非特許文献1】石井淑夫編、泡のエンジニアリング、初版第1刷、株式会社テクノシステム、2005年3月25日、p.759−760
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の解決しようとする課題は、高粘度の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造工程において、特に混合・脱泡工程を効率よく行う処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A)を連続式ニーダーに投入し、加熱、減圧下で攪拌と脱泡を行うことにより、効率よく混合・脱泡工程を行うことができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A)を連続式ニーダーに投入し、加熱、減圧下で攪拌と脱泡とを行うことを特徴する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法は、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を効率よく混合、脱泡することができ、処理した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光学シートを製造する際に樹脂層内に気泡が残存しにくい。また、得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、シート状樹脂基材に積層する塗工液として用いる場合、塗工工程における樹脂組成物の消費速度に併せて連続的に供給することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる連続式ニーダーとは、主に横型のシリンダーを有し、単数または複数の軸に取り付けられた多数のパドルやスクリューにより混合・混練し、製品取出し口から連続的に排出することの出来る装置、減圧のための脱気口を供えたものをいう。本発明で用いる連続式ニーダーは、高粘性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して、適切な粘度に制御しながら攪拌と脱泡を行うために、電気ヒータまたは熱媒等のジャケットによりシリンダーを加熱できる設備を具備することが望ましい。
【0012】
本発明で用いられる連続式ニーダーとしては、例えば、(株)栗本鐵工所製「KRCニーダー」、「KRCリアクター」、「KEXエクストルーダー」、本田鐵工(株)製「CKH型連続混練機」、「CKE型連続混練真空押出成型機」、神鋼テクノ(株)製「ニ軸押出機エクセルーダ」、東芝機械(株)製「単軸押出機」、「TEMシリーズ二軸押出機」、「TECシリーズ二軸押出機」、三庄インダストリー(株)製「真空混練押出成型機」、日本製鋼所製「TEXシリーズニ軸押出機」、(株)パウレック製「押し出しニーダー」、ビューラー社製12軸押出機「RING EXTRUDER」等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とは、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上であることが必要である。周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・sより小さい活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、樹脂組成物の脱気口から減圧ラインへの流入を抑制することが困難となるため好ましくない。本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は60℃において周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、該組成物が熱重合によりゲル化しない程度の温度域、例えば60〜120℃の範囲に加熱することにより、脱泡に適当な粘度に制御しやすいことから好ましく、熱重合によりゲル化しない程度の温度域において周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・s、より好ましくは1×10〜1×10dPa・sとなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がより好ましい。
【0014】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えば、合成樹脂と必要に応じてモノマー類とオリゴマー類と光重合開始剤、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤、その他の添加剤等を含有する組成物等が挙げられる。
【0015】
前記合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂に代表される熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、前記モノマー類としては、例えば、多価アルコール類の(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記オリゴマー類としては、例えば、分子内に一つ以上の不飽和二重結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
また、有機溶剤についても、必要に応じて含有して差し支えない。有機溶剤は本発明における減圧と脱泡を行う工程で減圧除去することができる。
【0017】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、任意の用途に用いることができるが、例えば、種々のシート状樹脂基材に塗工して積層シートとすることができる。この場合、各種の高粘度向けのコーターを用いることができるが、中でもノズルスロットを有するスロットノズル機構を備え、裏当ローラを経て移動するシート状樹脂基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の被膜を施す装置で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっており、スロットノズル機構の送出チャンネル内の空所には直線上に位置合わせされ、相互に離間し各々が2つのポンプギア(両ポンプギア)を有する複数のポンプ部と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピースと、前記複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構が設けられ、該ギアポンプ機構が全被覆巾に渡って延びており、上記ポンプ部と前記スペーサーピースとは互いに独立の部材として形成されている被覆装置を用いることが、ポンプ内部等で樹脂が経時的にゲル化等を起こさず、樹脂を安定的にシート上に積層できる点から好ましい。
【0018】
特に上述のように積層シートを製造しようとする場合、本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成部を用いれば、シート状樹脂基材に積層した際に、積層後の活性エネルギー線硬化型樹脂層の膜厚を均一に維持できることからより好ましい。更に、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がより好ましい。
【0019】
また、本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、例えば、ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましく用いることができる。
【0020】
上述の積層シートをレンチキュラーレンズの如き光学シートの製造に供する賦形用シートとして用いる場合には、前記ポリエステル樹脂としては、シート状樹脂基材が熱による変形の影響を受けない温度領域、例えば30〜100℃での加熱による粘度低下が適度に大きく、賦形性と硬化物の機械物性のバランスのより良好な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が得られ、また、溶剤溶解性も良好なことから、数平均分子量(Mn)1,000〜8,000のポリエステル樹脂であることが好ましく、1,500〜5,000のポリエステル樹脂がより好ましい。さらに、ポリエステル樹脂としては、環球法による軟化点が80〜150℃のものが好ましい。
【0021】
前記ポリエステル樹脂としては、不飽和二重結合を有するものである方が活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。また、分岐状ポリエステル樹脂であってもよい。
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるものが挙げられる。
【0022】
前記ポリカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、またはその無水物;トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三官能以上のカルボン酸、またはその無水物等が挙げられる。また、炭素原子数1以上4以下の低級アルキルカルボン酸エステル類をポリカルボン酸成分として使用することもできる。これらのポリカルボン酸成分は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、マレイン酸および/またはフマール酸をポリカルボン酸成分の一部乃至全部として用いた場合には、得られるポリエステル樹脂に不飽和二重結合を導入でき、また、重合性ビニル系化合物との相溶性に優れるポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。なお、必要により安息香酸、p−トルイック酸、p−tert−ブチル安息香酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
【0023】
前記ポリオール成分としても、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール 、1,4−ブテンジオール 、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコ−ル類等が挙げられる。これらのポリオール成分は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物をポリオール成分の一部乃至全部として用いた場合には、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上に制御しやすいポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。
【0024】
従って、前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸成分の一部乃至全部としてマレイン酸および/またはフマール酸を用い、かつ、ポリオール成分の一部乃至全部としてビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物を用いて得られるものが特に好ましい。
【0025】
なお、これらのポリカルボン酸成分とポリオール成分を用いてポリエステル樹脂を製造する際には、ジブチル錫オキシド等のエステル化触媒を適宜使用することができる。
【0026】
前記重合性ビニル系化合物としては、特に限定されるものではなく、各種の重合性ビニルモノマーや重合性ビニルオリゴマー、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート等の(メタ)アクリル系モノマー、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系オリゴマーなどが挙げられる。これら重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーはそれぞれ単独で用いることができるが、通常は重合性ビニルモノマーの単独使用、重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が好ましく、なかでも重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が特に好ましい。なお、重合性ビニルオリゴマーとしては、数平均分子量が200以上2,000以下で、かつ前記ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)よりも小さいオリゴマーが好ましい。
【0027】
また、これら重合性ビニル系化合物のなかでも、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができることから、分子中に不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレートを必須成分として用いることが好ましい。
【0028】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂が、シート状樹脂基材に積層されて賦形用シートとして用いられる場合、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度(T4)は40℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、温度(T6)は80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。中でも、温度(T4)が40℃以上で、且つ、温度(T6)は80℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましく、温度(T4)が55℃以上で、且つ、温度(T6)は60℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がより好ましい。
【0029】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂としては、特に該活性エネルギー線硬化型樹脂がシート状樹脂基材に積層されて賦形用シートとして用いられる場合にあっては、前記ポリエステル樹脂と前記重合性ビニル系化合物を必須成分とし、さらに必要により前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤、溶剤等を含有してなるもの等が挙げられる。
【0030】
なお、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度に対する粘度変化があまりに急激な場合、賦形工程のわずかな温度の振れが賦形性に及ぼす影響を無視できなくなるため、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては適当な感温性を示すものであることがより好ましく、具体的には前記温度(T4)と温度(T6)の温度差(T4−T6)が20℃以上であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。このとき、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T5)が30〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
【0031】
前記ポリエステル樹脂と前記重合性ビニル系化合物とは、得ようとする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上であれば任意の割合で混合してよいが、なかでも、その重量比(ポリエステル樹脂/重合性ビニル系化合物)が40/60〜90/10の範囲であることが、前記温度差〔温度(T4)−温度(T6)〕が20℃以上で、かつ、前記温度(T5)が30〜100℃である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得やすいことから好ましい。また、ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の組み合わせは自由に選択できるが、最終製品として得られる賦形物の用途が光学物品の場合、組成物として透明性が得られる組み合わせであることが好ましい。
【0032】
なお、本発明において活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は、HAAKE社製レオメーター RS500を用いて、測定周波数:6.28rad/sec.(1Hz)、測定開始温度:25℃、測定終了温度:150℃、昇温速度:2℃/min.の条件で、溶剤を含有しない賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について測定を行って得られるものである。また、温度(T4)、温度(T5)及び温度(T6)は、それぞれ前記複素粘性率(η)の温度変化の測定結果のチャートから求めることができる。
【0033】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記したように必要により前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤等を含有させることができ、前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これら他の樹脂の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂100重量部に対して100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0034】
また、前記光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル等が挙げられ、なかでも1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。光重合開始剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の合計(または、活性エネルギー線照射で硬化する樹脂成分)100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.1〜6重量部である。
【0035】
本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に用いる添加剤としては、例えば、離形工程における離形性を向上させるための離形剤、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤等が挙げられる。
【0036】
これらその他の添加剤のなかでも、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理時の熱重合の防止や貯蔵安定性を保つために、熱重合防止剤を配合することが望ましい。熱重合防止剤としては、特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の合計(または、加熱により硬化する樹脂成分)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部である。なお、本発明により処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には有機溶剤を含有してもよいが、賦形用シートに代表される積層シートの製造に供される塗工液として用いられる場合は、厚膜塗工後の有機溶剤除去を発泡なく行うことが困難なこと、および近年のVOC削減の動向より、無溶剤で実施することがより好ましい。
【0037】
本発明で処理される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えば、合成樹脂と必要に応じてモノマー類とオリゴマー類と光重合開始剤、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤、その他の添加剤等を、例えば、マックスブレンド翼に代表される高粘性液体に適性を有する攪拌翼を備えたオートクレーブに投入して系全体が均一となるまで攪拌することにより製造することができる。
【0038】
本発明において、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を減圧・脱泡する工程は、上述の連続式ニーダーの原料投入口から連続的、かつ定量的に供給された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、製品取出し口に向けて、多数のパドルによって移送・攪拌しながら、シリンダーを脱気口からの排気で減圧下(例えば20kPa以下の真空度)とすることにより、実施することができる。
【0039】
ここで、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を構成する原料が複数ある場合、上述の連続式ニーダー1台を用いて、原料投入口から製品取出し口への移送の間に、該装置が元来有するところである混合・混練機能を利用して、脱泡工程と同時進行的に行うことができる。また、上述の連続式ニーダー2台を直列に配置して、第1の連続式ニーダーで主に混合工程を行い、第2の連続式押出機または連続式ニーダーで主に脱泡工程を行うこともできる。その場合、第1の連続式ニーダーは、必ずしも減圧を必要としない。
【0040】
ここで、本発明の処理方法の一例としての装置構成を、図1を用いて説明する。本発明の脱泡工程に用いる、1個の脱気口を備えた連続式ニーダーである、(株)栗本鐵工所製のアルミ鋳込みヒータ加熱S2KRCニーダー(1)の前に、原料混合用として連続式ニーダーである(株)栗本鐵工所製のバンドヒータ加熱S1.5KRCニーダー(2)を配置し、(2)の製品取出し口が(1)の原料投入口がつながるように、バルブ(7)、(8)ともに配管した。さらに、(2)には粉体を連続的に供給できる粉体定量供給機である(株)クマエンジニアリング製のアキュレート302(3)から粉体原料を、バイキングポンプ(4)を通して加温・攪拌装置を備えた3リットルの攪拌槽(5)に仕込んだ液体原料を、それぞれ供給できるように配置してある。また、(1)の脱気口(9)は真空ポンプ(6)につないで系内を減圧できるようにしてある。
【0041】
減圧工程用のニーダー(1)を例えば、70〜90℃に、原料混合用ニーダー(2)および液体原料供給槽(5)を、例えば、80〜100℃にそれぞれ設定する。ついで、粉体定量供給機(3)からの粉体原料の供給速度を44.4g/minに、バイキングポンプによる液体原料の供給速度が15.6g/minになるようにそれぞれ調整する。次に、バルブ(7)を閉じバルブ(8)をあけた状態で粉体原料および液体原料を原料混合用ニーダー(2)に供給し、85min−1の回転数にて運転して混合操作を行う。バルブ(8)から吐出された粉体原料と液体原料の混合物は、気泡を多く含むものの均一であり、その粘度は、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)測定によれば、例えば、80℃において2×10〜5×10dPa・sとなる。
【0042】
次に、バルブ(7)を開けてバルブ(8)を閉じ、脱泡工程用ニーダー(1)を28min−1にて運転しながら脱泡工程用ニーダー(1)の脱気口(9)より排気することにより、減圧脱泡が実施される。このときの最高真空到達度は、例えば、1.0〜10kPaである。脱泡工程用ニーダー(1)の製品取出し口から吐出された粉体原料と液体原料の混合物は、気泡の混入は認められないはずである。
【0043】
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は、例えば、1×10dPa・sとなる温度(T4)は70〜90℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)が、例えば、50〜70℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が例えば、30〜50℃である
【0044】
攪拌と脱泡とを行う際の加熱は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sとなる温度で行うと樹脂組成物の脱気口から減圧ラインへの流入が起こりにくく、安定して連続的に脱泡を行うことが可能なことから好ましく、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sとなる温度で行うのがより好ましい。
【0045】
尚、本発明の処理方法においては前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を構成する原料をニーダーに投入し、加熱下で攪拌を行うことにより活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製し、更に、ニーダー中で加熱、減圧下で攪拌と脱泡とを行うことにより活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製と該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の脱泡とを行うこともできる。
【0046】
本発明の処理方法により脱泡された活性エネルギー線硬型樹脂組成物は、上述の連続式ニーダーの製品取出し口から排出され、容器等に充填することができる。また、該活性エネルギー線硬型樹脂組成物を、例えばシート状樹脂基材に積層するための塗工液として用いる場合は、連続式ニーダーの製品取出し口から塗工装置の塗工液だめに連続的に供給することも可能である。
【0047】
本発明の処理方法により脱泡された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、被覆装置において被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層することができる。ここで用いる被覆装置は、例えば、ノズルスロットを有するスロットノズル機構を備え、裏当ローラを経て移動するシート状樹脂基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の被膜を施す被覆装置で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっており、スロットノズル機構の送出チャンネル内の空所には直線上に位置合わせされ、相互に離間し各々が2つのポンプギアを有する複数のポンプ部と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピースと、前記複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構が設けられ、該ギアポンプ機構が全被覆巾に渡って延びており、上記ポンプ部と前記スペーサーピースとは互いに独立の部材として形成されている被覆装置等が挙げられる。この様な被覆装置にあっては、全被覆巾に渡るスロットノズル機構により高粘性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を厚膜で精度よく積層することが可能であり、また、全被覆巾に渡って延びたギアポンプ機構を特徴とする送出チャンネルを有することで、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をゲル化させることなく、連続的に安定してスロットノズルに送出し、シート状樹脂基材上に積層することを可能とする。
【0048】
上記被覆装置では、被覆物が被覆巾に渡って延びた送出チャネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出され、スロットノズル機構の送出チャネル内で、各々2つの相互に噛合されたポンプギアを有する複数のポンプ部を備えたポンプギア機構が全被覆巾に渡って延びると共に、ポンプギアを取付ける離間ピース即ちスペーサーピースと一緒に容易に取外し可能なごとくポンプ部間で配置される。こうした構成により、全被覆巾に渡って一様に分割された充分な被覆物がノズルスロットで得られ、ポンプ部の数を所望の被覆巾に従って選択でき、しかも容易に変更可能である。
【0049】
上述されるような被覆装置を用いて、フィルム状基材の両面もしくは片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層するにあたっては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度分布が粘度分布となって、膜厚等の塗工精度に影響を及ぼすため、第一工程において供給された際の温度を維持したまま行うことが好ましい。このために、被覆装置としては、供給容器の壁が加熱される構造を有するものが好ましい。
【0050】
被覆すべきシート状樹脂基材は例えば、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂からなるシート状樹脂基材、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂からなるシート状樹脂基材、ポリカーボネート樹脂からなるシート状樹脂基材のように活性エネルギー線を透過する基材であることが、これら基材の両面または片面に積層され賦形された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の樹脂層に対して活性エネルギー線を照射する際に、シート状樹脂基材の一方の側からの照射で硬化させることが可能となることから好ましい。シート状樹脂基材の厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて決定されるが、38〜500μmのものが好ましく、50〜150μmのものがより好ましい。また、シート状樹脂基材は樹脂層との密着性を向上させるために、その表面について、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理等の易接着性処理を施したものが好ましい。
【0051】
前記した被覆装置としては、例えば、由利ロール機械(株)製「GPD(ギアーポンプインダイ)システム」等があげられる。
【0052】
本発明の処理方法により処理された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をシート状樹脂基材の片面または両面に積層して積層シートを製造する場合、積層される該活性エネルギー線硬化型樹脂塑性物の樹脂層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、その用途に応じて決定されるが、通常10μm〜1mm、好ましくは20〜500μmであり、シート状樹脂基材の厚みの0.3〜3倍とするのが好ましい。また、積層シートを賦形用シートとして用いる場合には、賦形工程に用いられる賦形金型の最大深さの1〜5倍とするのが好ましい。
【0053】
本発明の処理方法により処理された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて製造される積層シートは、例えば賦形用シートとして用い、これを型押賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させることにより賦形物とすることができる。賦形用シートの型押賦形は、シート状樹脂基材の片面または両面に積層された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層に、ロール状や平面状の型を型押しして賦形することにより行われる。例えば、シート状樹脂基材の片面または両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層した賦形用シートを、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・s、好ましくは1×10〜1×10dPa・sとなる温度、例えば40〜80℃に加温し、片方または両方に型を有する一対のロール状賦形用金型の間を通過させて、連続押圧による賦形と離型を行い、その後活性エネルギー線を照射して硬化させてシート状樹脂基材の片面または両側に賦形層を有する光学レンズシート等の賦形物を得る方法などが挙げられる。この際に硬化に用いる活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧または高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボン・アーク灯などの各種のものが使用できる。
【実施例】
【0054】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部は、特に記載しない限り重量基準である。
【0055】
尚、実施例に用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、下記の構成原料からなるものである。
【0056】
1.粉体原料:
熱可塑性ポリエステル粉体[環球式による軟化点が100℃、東ソー(株)製高速GPC装置 HLC−8220GPCと東ソー(株)製カラム(TSKgel SuperHZ4000、SuperHZ3000、SuperHZ2000、SuperHZ1000、各1本)により、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、流速0.350ml/min.の条件で測定して得られたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)2,900、同重量平均分子量(Mw)10,400の、分子中に不飽和二重結合を平均2.2個有する熱可塑性ポリエステル樹脂を最大粒径3mmとなるよう微粉砕したもの]
【0057】
2.液体原料:
下記の原料の混合物。
2−1:ウレタンアクリレートオリゴマー[大日本インキ化学工業(株)製;ユニディック V−4260] 298部
2−2:ジペンダエリスリトールとアクリル酸の反応物[日本化薬(株)製;KAYARAD DPHA] 48部
2−3:ベンジルメチルケタール[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE 651] 64部
【0058】
実施例1
前記粉体原料、液体原料を図1に示す装置により混合・脱泡し活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製と該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の脱泡を行った。具体的には、減圧工程用のニーダー(1)を80℃に、原料混合用ニーダー(2)および液体原料供給槽(5)を85℃にそれぞれ設定した。ついで、粉体定量供給機(3)からの粉体原料の供給速度を44.4g/minに、バイキングポンプによる液体原料の供給速度が15.6g/minになるようにそれぞれ調整した。次に、バルブ(7)を閉じバルブ(8)をあけた状態で粉体原料および液体原料を原料混合用ニーダー(2)に供給し、85min−1の回転数にて運転して混合操作の確認をした。バルブ(8)から吐出された粉体原料と液体原料の混合物(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)は、気泡を多く含むものの均一であり、その粘度は、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)測定によれば、80℃において1×10dPa・s、85℃において6×10dPa・sであった。
【0059】
次に、バルブ(7)を開けてバルブ(8)を閉じ、脱泡工程用ニーダー(1)を28min−1にて運転しながら脱泡工程用ニーダー(1)の脱気口(9)より排気することにより、減圧脱泡を実施した。最高真空到達度は1.0kPaであった。脱泡工程用ニーダー(1)の製品取出し口から吐出された粉体原料と液体原料の混合物は、気泡の混入が認められなかった。
【0060】
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)は82℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)が63℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が46℃であった。
【0061】
応用例1
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、由利ロール機械(株)製「GPD(ギアーポンプインダイ)システム」の樹脂ホッパーに仕込み、ダイの温度を110℃、バックロールの温度を65℃とし、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡績(株)製 東洋紡エステルフィルムA4300〕上に、塗布幅300mm、塗布厚100μmで塗布し、厚さ28μmの剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東セロ(株)製 SP−PET−03−25BU〕をラミネートして巻き取った。次に、上記塗工フィルムを上記コーターの巻き出しロールにセットし、上記塗工フィルムの未塗工面に対しても同様に上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記コーターを用いて塗布し、フィルム状基材の両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が積層された積層シートを製造した。110℃における、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の複素粘性率は6.0×10dPa・sであり、得られた積層シートの塗工精度はそれぞれの面について±5μmであり、良好な精度、良好な塗面外観を示した。
【0062】
得られた積層シートと、底部幅93μm、上部幅103μm、深さ40μmの矩形形状の溝が、幅47μmの間隔を空けて平行に作成されている平面金型2枚を、それぞれ55℃に加温し、積層シートを金型で挟むように接触させた後、98kPaの圧力を2秒間加えて、積層シートの賦形を行った。次いで40℃まで冷却して金型からシートを剥離し、さらに紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シートを得ることが出来た。
【0063】
比較例
実施例中の液体原料2.6kgを、マントルヒーター、脱気口、ルッキンググラスおよびマックスブレンド翼を備えた10リットルの攪拌槽に仕込んだ。液体原料が100℃に到達したところで、粉体原料7.4kgを、攪拌槽内の温度が85℃を下回らないように分割しながら仕込んだ。粉体原料仕込み開始から、仕込み終了後に槽内が均一になるまでに要した時間は3.0hrであった。次に、脱気口から、発泡による液面上昇により脱気口を閉塞させないようにルッキンググラスから観察しながら排気して、減圧脱泡を実施した。最高真空到達度が1.0kPaとなり、脱泡がほぼ終了するまでに要した時間は1.75hrであった。
【0064】
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、実施例と同様に由利ロール機械(株)製「GPD(ギアーポンプインダイ)システム」にて塗工し、積層シートを製造した。
得られた積層シートの塗工精度はそれぞれの面について±5μmであり、実施例と同等の塗工精度であったが、塗膜外観は、一部に粉体原料の未溶解物とみられるブツが観察された。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の処理方法に用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理装置の配置図である。
【符号の説明】
【0067】
1 脱泡工程用ニーダー
2 混合工程用ニーダー
3 粉体定量供給機
4 バイキングポンプ
5 液体原料供給槽
6 真空ポンプ
7 バルブ
8 バルブ
9 脱気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が60℃において100dPa・s以上の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A)を連続式ニーダーに投入し、加熱、減圧下で攪拌と脱泡とを行うことを特徴する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として60℃において周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項3】
前記加熱を活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sとなる温度で行う請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A)として数平均分子量(Mn)1,000〜8,000のポリエステル樹脂(R)と重合性ビニル系化合物(V)を含有し、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)を用いる請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)として、更に周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)が40〜80℃で、かつ、前記温度(T4)と温度(T6)の温度差(T4−T6)が20℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂(R)として不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(R)としてポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるポリエステル樹脂であって、かつ、ポリカルボン酸成分の一部乃至全部としてマレイン酸および/またはフマール酸を用いて得られるポリエステル樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂(R)としてポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるポリエステル樹脂であって、かつ、ポリオール成分の一部乃至全部としてビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物を用いて得られるポリエステル樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂(R)として数平均分子量(Mn)1,500〜5,000のポリエステル樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項10】
前記重合性ビニル系化合物(V)として不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項4記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。
【請求項11】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を構成する原料をニーダーに投入し、加熱下で攪拌を行うことにより活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製し、更に、ニーダー中で加熱、減圧下で攪拌と脱泡とを行う請求項1〜10のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の処理方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−196514(P2007−196514A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17492(P2006−17492)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】