説明

活性エネルギー線硬化組成物、及びそれを用いたディスプレイ用フィルター並びにディスプレイ

【課題】
本発明は、視認性、密着性、及び剥離性に優れた活性エネルギー線硬化組成物及びそれを用いたディスプレイ用フィルター並びにディスプレイを提供する。
【解決手段】
ウレタンアクリレートプレポリマー(A)と、
カルボキシ基並びに、芳香族環及び/または脂肪族環を有する、アクリレートモノマー(B)と、
芳香族環及び/または脂肪族環を有し、かつカルボキシ基を有しない、アクリレートモノマー(C)を、
少なくとも含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認性、密着性、耐衝撃性及び剥離性に優れた活性エネルギー線硬化組成物及びそれを用いたディスプレイ用フィルター並びにディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしてプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が、家庭用ディスプレイや携帯電話用ディスプレイとして普及している。これらのディスプレイには、通常、表示パネルの保護や反射防止等を目的としたディスプレイ用フィルターが装着されている。従来、これらのディスプレイ用フィルターをディスプレイの表示パネルに装着する際、表示パネルとディスプレイ用フィルターとの間にガラス板を介在させていた。
【0003】
上記の装着方法は、表示パネルとガラス板との間に空気層が存在するので耐衝撃性は優れるが、コスト、生産効率の点で不利であり、また空気層が介在するために表示画像が多重になる現象、所謂、二重映り現象が生じるという不都合があった。そこで、表示パネルにディスプレイ用フィルターを、粘着剤層を介して直接に装着するという方法が注目されている。
【0004】
上記のディスプレイ用フィルターを表示パネルに直接に装着する態様は、コスト、生産効率に優れるが、表示パネルと粘着剤層との屈折率差に起因する界面反射によってコントラストや輝度が低下して視認性が劣化するという問題がある。また、この態様は、表示パネルとディスプレイ用フィルターとの密着性と剥離性を同時に満足する粘着剤層が要求されている。ここで、剥離性とは、ディスプレイ用フィルターを表示パネルに直接貼合せる際、異物噛み込みや位置ズレなどの原因で貼合せに失敗した時や、フィルター交換の必要が生じた時など、表示パネルを破損させないようにディスプレイ用フィルターの剥離が可能な性能である。即ち、適度の密着性を有する粘着剤層が要求されている。
【0005】
上記の表示パネルにディスプレイ用フィルターを装着するための粘着剤層として、活性エネルギー線硬化組成物を用いることが知られている(例えば特許文献1、2)。
【0006】
一方、ディスプレイ用フィルターに用いられる粘着剤層の屈折率を高めることによって、表示パネルのガラス基板との屈折率差を小さくして界面反射を低減させ、コントラスト低下や輝度低下を抑制することが知られている。例えば、特許文献3、4には、スチレンやフェノキシエチルアクリレート等の芳香族環含有モノマーを含有させることによって粘着剤の屈折率を高めることが提案されている。
【0007】
しかしながら、前述の特許文献1〜4に開示されている技術では、本発明が目的とする、視認性、密着性、及び剥離性を同時に満足することはできなかった。
【0008】
また、ディスプレイ用フィルターを表示パネルに直接に装着する態様において、耐衝撃性を向上させる1つの手段として、粘着剤層の厚みを大きくすることは有効であるが、粘着剤層の厚みを大きくすると、例えば50μm以上にすると、活性エネルギー線硬化組成物を硬化するときの重合収縮によって粘着剤層の表面に波打状のムラが生じやすくなり、良好な平滑性が得られないという問題が発生した。
【特許文献1】特開2000−63767号公報
【特許文献2】特開2006−171261号公報
【特許文献3】特開2003−13029号公報
【特許文献4】特開2003−342546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、耐衝撃性に優れ、被着物に対する適度な密着性と剥離性とを有し、かつ高屈折率化が図られた活性エネルギー線硬化組成物、及び前記活性エネルギー線硬化組成物を粘着剤層に適用することによって視認性、平滑性、密着性及び剥離性に優れたディスプレイ用フィルター並びにディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
(1)ウレタンアクリレートプレポリマー(A)と、
カルボキシ基並びに、芳香族環及び/または脂肪族環を有する、アクリレートモノマー(B)と、
芳香族環及び/または脂肪族環を有し、かつカルボキシ基を有しない、アクリレートモノマー(C)を、
少なくとも含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。
(2)分子末端に水酸基またはカルボキシ基を有する、ウレタンプレポリマー(D)を含有する、上記(1)に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
(3)重合開始剤(E)を含有する、上記(1)または(2)に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化せしめた粘着剤層を備えた、ディスプレイ用フィルター。
(5)前記粘着剤層の厚みが、50〜2000μmである、上記(4)に記載のディスプレイ用フィルター。
(6)表面保護機能および/または光学機能を有する機能層を備えた、上記(4)または(5)に記載のディスプレイ用フィルター。
(7)導電層を備えた、上記(4)から(6)のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
(8)上記(4)から(6)に記載のディスプレイ用フィルターの粘着剤層を介して、該ディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼合した、ディスプレイ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、被着物に対する適度な密着性と剥離性とを有し、かつ高屈折率化が図られた活性エネルギー線硬化組成物が得られ、この活性エネルギー線硬化組成物を粘着剤層としてディスプレイ用フィルター及びディスプレイに適用することによって、ディスプレイの視認性が向上し、ディスプレイの表示パネルとディスプレイ用フィルターとの適度な密着性と剥離性が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において活性エネルギー線硬化組成物とは、活性エネルギー線を照射することにより化学反応が起こり硬化する組成物を指す。かかる活性エネルギー線とは、紫外線、可視光線、赤外線等の電磁波、電子線等の放射線等のエネルギー線を指し、プロセス適性の面から特に紫外線が好ましい。
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、ウレタンアクリレートプレポリマー(A)と、カルボキシ基並びに、芳香族環及び/または脂肪族環を有するアクリレートモノマー(B)と、芳香族環及び/または脂肪族環を有し、かつカルボキシ基を有しないアクリレートモノマー(C)とを少なくとも含有する。
【0014】
更に本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、上記(A)、(B)、(C)を含有する組成物に、分子末端に水酸基またはカルボキシ基を有するウレタンプレポリマー(D)を含有させるのが好ましい。
【0015】
また更に本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、上記(A)、(B)、(C)を含有する組成物、または上記(A)、(B)、(C)、(D)を含有する組成物に、重合開始剤(E)を含有させるのが好ましい。
【0016】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化組成物に用いられる各成分について詳細に説明する。
【0017】
本発明にかかるウレタンアクリレートプレポリマー(A)は、例えば分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)の分子末端のイソシアネート基を、アクリレート変性することによって得られる。
【0018】
上記の分子末端のイソシアネート基をアクリレート変性するために用いられるアクリレート化合物としては、アクリレート基もしくはメタクリレート基と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、もしくはアミド基等のイソシアネート基と反応しうる官能基とを有する化合物が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0019】
上記の分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)は市販のものを利用可能であり、また十分に確立された方法により得ることもできる。それらは、例えばヒドロキシ末端ポリオールと化学量論的に過剰のイソシアネート化合物との反応により製造されうる。上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられるが、これらの中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0020】
以下、上記のポリオール化合物について詳細に説明する。
ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールをエステル化反応させて得られるものである。
【0021】
ここで用いる多価カルボン酸としては、特に制限されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、乳酸、ダイマー酸等が挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸、ピロリメット酸、ダイマー酸が好ましい。
【0022】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等を用いることができ、中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の2官能アルコールが好ましい。
【0023】
ポリエーテルポリオールは多価アルコールをエーテル化反応させて得られるものである。ここで用いる多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオールの製造に用いる多価アルコールと同様のものを用いることができる。
【0024】
ポリカプロラクトンポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,1,9−ノナンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド,もしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等公知慣用の多価アルコールのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0025】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる多価アルコールとホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは前記多価アルコールとジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0026】
分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)の合成に用いられるイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物に用いられるウレタンアクリレートプレポリマー(A)の重量平均分子量は、1万〜5万の範囲が好ましく、特に2万〜5万の範囲が好ましい。上記範囲の重量平均分子量のウレタンアクリレートプレポリマー(A)を用いることによって、耐衝撃性の良好な硬化物を得ることができる。ウレタンアクリレートプレポリマー(A)の重量平均分子量が5万を超えて大きくなると、本発明の活性エネルギー線硬化組成物が高粘度となりやすく、作業性や塗布性が劣る場合があるために好ましくない。また、該プレポリマーの重量平均分子量が1万より低くなると、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化させた粘着剤層の耐衝撃性の低下や密着性の低下が起こる場合があるために好ましくない。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物100質量%中におけるウレタンアクリレートプレポリマー(A)の含有比率は、20〜95質量%の範囲が好ましく、30〜90質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物において、上記のウレタンアクリレートプレポリマー(A)は、硬化物(本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化させた粘着剤層)の弾性率を高めて、良好な耐衝撃性を付与することができる。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、ディスプレイ用フィルターの粘着剤層として好ましく用いられるが、耐衝撃性の観点から粘着剤層の厚みによって弾性率を適宜調整するのが好ましく、上記のウレタンアクリレートプレポリマー(A)に、更に分子末端に水酸基またはカルボキシ基を有するウレタンプレポリマー(D)を併用するのが好ましい。ウレタンアクリレートプレポリマー(A)を単独で用いた場合、所望する弾性率より高くなりすぎて逆に耐衝撃性にとって不利となることがあるが、ウレタンプレポリマー(D)は、硬化物の弾性率が高くなるのを抑制して調整するという効果がある。また、ウレタンプレポリマー(D)は被着物との密着性を高めるという効果を有する。
【0031】
ウレタンプレポリマー(D)は、ウレタンアクリレートプレポリマー(A)100質量%に対して10〜300質量%の範囲で含有させることができる。好ましくはウレタンアクリレートプレポリマー(A)100質量%に対して20〜200質量%の範囲である。
【0032】
ウレタンプレポリマー(D)は、例えば上述した分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)の分子末端のイソシアネート基を、多価カルボン酸、オキシカルボン酸、あるいは多価アルコール等でブロックして分子末端にカルボキシ基もしくは水酸基を導入することによって得られる。上記の多価カルボン酸、オキシカルボン酸、及び多価アルコールについて以下に説明する。
【0033】
多価カルボン酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ダイマー酸、エタン−1,1,2−トリカルボン酸、ヘキサン−2,3,5−トリカルボン酸等公知慣用の有機酸が好適に用いられるが、他の成分との相溶性の面からジカルボン酸が好ましい。
【0034】
オキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、トリオキシ酪酸、トリオキシ吉草酸、トリオキシヘキサン酸、グルコン酸等公知慣用の有機酸が好適に用いられる。これらの酸は,溶剤または可塑剤などに溶解して使用しても良い。
【0035】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを好ましく用いることができる。中でも、他の成分との相溶性や吸水安定性の面から1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール等のジオールが特に好ましい。
【0036】
上記のウレタンプレポリマー(D)の重量平均分子量は、前述したウレタンアクリレートプレポリマー(A)と同様な理由から、1万〜5万の範囲が好ましく、特に2万〜5万の範囲が好ましい。
【0037】
上記したウレタンアクリレートプレポリマー(A)を合成するに際し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)の分子末端のイソシアネート基を全てアクリレートで変性せずに、ウレタンプレポリマー(f)のイソシアネート基の一部をカルボキシ基もしくは水酸基で変性することによって、分子末端に水酸基またはカルボキシ基を有するウレタンプレポリマー(D)を含むウレタンアクリレートプレポリマー(A)を得ることができる。このウレタンプレポリマー(D)を含むウレタンアクリレートプレポリマー(A)も、本発明のウレタンアクリレートプレポリマー(A)として好ましく用いることができる。
【0038】
上記のウレタンプレポリマー(D)を含むウレタンアクリレートプレポリマー(A)は、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)に、アクリレート化合物と、多価カルボン酸、オキシカルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも一種とを反応させることによって得られる。ここで、アクリレート化合物、多価カルボン酸、オキシカルボン酸および多価アルコールは、前述と同じものを用いることができる。
【0039】
上記ウレタンプレポリマー(D)を含むウレタンアクリレートプレポリマー(A)において、分子末端アクリレート比率は、ウレタンプレポリマー(D)及びウレタンアクリレートプレポリマー(A)の全ての分子の全末端の50〜90%であるのが好ましく、アクリレート化合物と、多価カルボン酸、オキシカルボン酸および多価アルコールから選ばれる少なくとも一種の化合物との仕込み比率を調整することによって、あるいは仕込み順序と仕込み時間を調整することによって、上記ウレタンプレポリマー(D)及びウレタンアクリレートプレポリマー(A)の全分子の分子末端アクリレート比率を調整することができる。上記の分子末端アクリレート比率は、ウレタンプレポリマー(D)を含むウレタンアクリレートプレポリマー(A)の酸価もしくは水酸基価を滴定法等で求め、得られた酸価もしくは水酸基価と分子量から算出することができる。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、カルボキシ基並びに、芳香族環及び/または脂肪族環を有する、アクリレートモノマー(B)(以降、モノマー(B)と称す)と、芳香族環及び/または脂肪族環を有し、かつカルボキシ基を有しないアクリレートモノマー(C)(以降、モノマー(C)と称す)とを含有する。これらのモノマー(B)、(C)は、反応性希釈剤として用いることができる。
【0041】
前述したように、上記のモノマー(B)及びモノマー(C)のような環状構造(芳香族環あるいは脂肪族環)を有するモノマーを用いることによって、粘着剤層の高屈折率化が図られ、この粘着剤層を介してディスプレイに直接にディスプレイ用フィルターを装着(貼合)したときの視認性が向上することが知られている。しかしながら、モノマー(B)を単独で用いると、表示パネルのガラス基板との密着性が強くなりすぎて剥離性が低下するという問題、及び活性エネルギー線硬化組成物の粘度が高くなりすぎて基材への塗布性が悪化するという問題が生じること、また、モノマー(C)を単独で用いると、必要十分な密着性が得られないという問題、及び活性エネルギー線硬化組成物に活性エネルギー線を照射して硬化するときに重合収縮が起こり、その結果、硬化物表面の平滑性が損なわれて視認性や密着性が低下するという問題が生じることを見いだした。
【0042】
上記の問題は、モノマー(B)とモノマー(C)を併用することによって解決することを見いだした。特に、高屈折率化を図るために、活性エネルギー線硬化組成物100質量%中における芳香族環及び/または脂肪族環を有するモノマー(B)、(C)の比率を10質量%以上とした場合に、本発明の効果が更に享受できる。
【0043】
本発明において、活性エネルギー線硬化組成物100質量%中におけるモノマー(B)とモノマー(C)の合計の含有比率は、表示パネル等の被着物と粘着剤層との界面反射を低減して視認性を向上させるという観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、活性エネルギー線硬化組成物100質量%中におけるモノマー(B)とモノマー(C)の合計の含有比率の上限は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。モノマー(B)とモノマー(C)の合計の含有比率が70質量%よりも大きくなると、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化させた粘着剤層の耐衝撃性の低下や、重合収縮が起こりやすくなるという問題、ウレタンアクリレートプレポリマー(A)との相溶性が低下して白濁するという問題が起こりやすくなる。
【0044】
本発明にかかる活性エネルギー線硬化組成物において、モノマー(B)とモノマー(C)の含有比率は、上記したそれぞれのモノマーを単独で用いる場合の問題点を解決するという観点から、質量比でモノマー(B):モノマー(C)=9:1〜1:9の範囲が好ましく、8:2〜2:8の範囲がより好ましい。
【0045】
本発明にかかるモノマー(B)及びモノマー(C)としては、単官能もしくは2官能のアクリレート化合物を用いることができるが、重合収縮の発生程度の軽減、及び硬化物の硬度が高くなりすぎないように調整するという観点から、単官能のアクリレート化合物が好ましい。また、モノマー(B)及びモノマー(C)における芳香族環及び脂肪族環は特に限定されないが、好ましくは複素環以外の芳香族環及び/または脂肪族環を有する場合である。
【0046】
本発明にかかるモノマー(B)とモノマー(C)の具体的化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
モノマー(B)としては、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロイソフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロテレフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルイソフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテレフタル酸等が好ましく用いられる。
【0048】
モノマー(C)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロステアリル(メタ)アクリレート、シクロラウリル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロデカル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、水転ビスフェノールA型エチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
上記のモノマー(C)の中でも、芳香族環を有する化合物が、硬化物の高屈折率化の観点から好ましく用いられる。また、モノマー(C)として、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ基を有するモノマーを用いることも好ましい。
【0050】
ヒドロキシ基を有するモノマー(C)(以降、モノマー(C2)と称す)は、密着性の付与度、重合収縮度及び粘度において、ヒドロキシ基を有しないモノマー(C)(以降、モノマー(C1)と称す)とモノマー(B)との中間的な特性を有するので、上記特性を調整するという観点から、モノマー(C)として、ヒドロキシ基を有しないモノマー(C1)とヒドロキシ基を有するモノマー(C2)とを併用することが好ましい。上記モノマー(C1)と(C2)との含有比率(質量比)は、モノマー(C1):モノマー(C2)=9:1〜3:7の範囲が好ましく、特に8:2〜5:5の範囲が好ましい。
【0051】
また、モノマー(C2)は、ディスプレイ用フィルターを構成するプラスチックフィルムとの密着性を高めるという意味からも好ましく用いられる。従って、本発明にかかる活性エネルギー線硬化組成物において、モノマー(B)とモノマー(C1)を併用することによって、モノマー(B)は表示パネルのガラス基板との密着性を向上させ、モノマー(C1)はディスプレイ用フィルターにおけるプラスチックフィルムと粘着剤層との密着性を向上させることができるので好ましい。モノマー(C1)は、密着性という観点からは、特に表示パネルのガラス基板との密着性が過度にならないように調整するという働きを有する。前述したウレタンプレポリマー(D)も密着性に寄与するが、その効果はモノマー(B)及びモノマー(C2)に比べると小さく、特に、表示パネルのガラス基板との密着性向上を図る上でモノマー(B)は必須である。
【0052】
本発明にかかる活性エネルギー線硬化組成物には、上記のモノマー(B)及びモノマー(C)以外の重合性モノマー、例えば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのような脂肪族系アクリレートモノマー、スチレンのようなビニル系モノマーを用いることができるが、これらの他の重合性モノマーの含有比率(質量比)は、モノマー(B)とモノマー(C)の合計量100質量%に対して、0質量%以上20質量%以下が好ましく、0質量%以上10質量%以下がより好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化組成物において、これらの他の重合性モノマーの含有比率が、モノマー(B)とモノマー(C)の合計量100質量%に対して20質量%を越えると、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を本発明が目的とするディスプレイ用フィルターの粘着剤層として使用したときに、視認性、密着性、重合収縮等の改良効果が阻害される。
【0053】
言い換えれば、本発明にかかる活性エネルギー線硬化組成物において、モノマー(B)とモノマー(C)を含む重合性モノマーの総量に対する、モノマー(B)とモノマー(C)の合計量の比率は、80質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物には、上記成分以外に重合開始剤(E)を含有するのが好ましい。かかる重合性開始剤(E)としては市販のものを広く使用することができるが、以下に示すような光重合開始剤が好ましく用いられる。例えば、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン系、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のヒドロキシアルキルフェノン系、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等のアミン系が挙げられる。これらの重合開始剤(E)は、単独でまたは2種類以上組合せて用いることができる。
【0055】
これらの重合開始剤(E)の、活性エネルギー線硬化組成物100質量%中における比率は、0.05〜10質量%の範囲が好ましく、0.05〜3質量%の範囲がより好ましい。0.05質量%より少ないと、硬化性が充分でなく光重合後に未反応単量体が多く残存して、接着界面において気泡の発生などを生じる場合がある。また、10質量%より多い場合は光重合後に重合開始剤(E)が光重合後に残存して、黄変などの問題が発生する場合がある。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物には必要に応じて可塑剤を加えることもできる。かかる可塑剤としては、安息香酸ベンジル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸系化合物、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチルなどのアジピン酸系化合物、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸系化合物、リン酸トリエチレン、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルフェニルなどのリン酸化合物、ジオクチルセバケート、メチルアセチルリシノレートなどの脂肪酸系化合物、ジイソデシル−4,5−エポキシテトラヒドロフタレートなどのエポキシ系化合物、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリイソデシルなどのトリメリット酸系化合物、その他オレイン酸ブチル、塩素化パラフィン、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリブテン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。しかし、これらの可塑剤は前記ウレタンプレポリマーとの相溶性を考慮して選択される必要がある。
【0057】
活性エネルギー線硬化組成物100質量%中における可塑剤の含有比率は1〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0058】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化組成物には必要に応じて各種の重合禁止剤を添加することもできる。かかる重合禁止剤としては例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール等を用いることができる。また、必要に応じて、上記以外の各種添加剤、たとえば、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色防止剤、顔料、染料等を用いることもできる。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物には、粘度の調整や重合開始剤等の固形物の分散・溶解のために、有機溶媒等の溶媒を用いても良いが、特に有機溶媒(有機溶剤)は作業者に対する有害性、火災の危険性、環境汚染、乾燥速度および溶剤の浪費などの観点から、その添加量は少ない方が好ましく、例えば活性エネルギー線硬化組成物100質量%に対して5質量%以下が好ましい。本発明においては、無溶媒であることが特に好ましい。
【0060】
従来から、活性エネルギー線硬化組成物としてアクリル系プレポリマーを用いることが知られている。かかる活性エネルギー線硬化組成物を硬化せしめた硬化物(粘着剤)の弾性率を適度に高めて良好な耐衝撃性を得るためには、分子量の高い(例えば分子量10万以上)アクリル系プレポリマーを用いる必要がある。しかし、高分子量のアクリル系プレポリマーは粘度が高く、該アクリル系プレポリマーを用いた活性エネルギー線硬化組成物は高粘度になるので、該組成物に塗布適性を持たせるためには該組成物を比較的多量の溶剤で希釈して粘度を下げる必要がある。このような溶剤を含有する組成物を基材に塗布した後活性エネルギー線を照射して硬化するには、事前に塗布物の溶剤を蒸発させなければならず、そのための乾燥工程が必要となり、その結果、製造設備の肥大化及び生産効率の低下という不利益の要因となっていた。
【0061】
これに対して、本発明のウレタン系プレポリマーは、比較的低分子量(上記したように1万〜5万)であっても適度に高弾性の硬化物が得られるという特長を持つ。従って、かかるウレタン系プレポリマーを用いた本発明の活性エネルギー線硬化組成物の粘度は、上記した高分子量のアクリル系プレポリマーを用いた活性エネルギー線硬化組成物に比べて、組成物の粘度が大幅に低く、溶剤で希釈しなくとも塗布適性が得られるので、実質的に溶剤の乾燥工程は不要となる。また、塗布方式の種類、塗布速度、塗布膜厚等の条件によっては粘度調整の必要な場合が生じることが予想されるが、たとえ、粘度調整が必要な場合であっても、本発明のウレタン系プレポリマーを用いた活性エネルギー線硬化組成物は、従来から知られるアクリル系プレポリマーを用いた活性エネルギー線硬化組成物に比べて、少量の溶剤量で粘度調整が可能となるので、乾燥効率の点で有利である。
【0062】
上述した本発明の活性エネルギー線硬化組成物は粘着剤として極めて有用であり、視認性、耐衝撃性及び被着物との密着性に優れ、更に被着物側に粘着剤の残留物を残さずに剥離することができるという特性を有する。これらの特性を有する粘着剤は、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ等のディスプレイの表示パネルに、ディスプレイ用フィルターを直接に貼り付けるための粘着剤層として極めて有用である。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物を活性エネルギー線で硬化せしめた粘着剤層は、ディスプレイ用フィルターの一部として予め積層しておいてもよいし、あるいは、ディスプレイの表示パネル側に上記粘着剤層を予め貼合しておき、該粘着剤層上にディスプレイ用フィルターを貼合してもよい。
【0064】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化せしめた粘着剤層(以降、単に粘着剤層と称す)を有するディスプレイ用フィルターについて詳細に説明する。
【0065】
本発明のディスプレイ用フィルターとしては、例えば、プラスチックフィルムの一方の面に粘着剤層を有し、他方の面に表面保護機能および/または光学機能を有する機能層を備えたフィルタを例示することができる。粘着剤層は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイの表示パネルに直接に貼り付けるために、最外層とするのが好ましい。ここで、粘着剤層を保護するためのカバーフィルムや離型フィルムは、ディスプレイパネルにディスプレイ用フィルターを装着する前、あるいは装着後には剥離除去されるので、ディスプレイ用フィルターの構成には含まれない。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化せしめた粘着剤層をプラスチックフィルムに積層または形成する方法として、
イ)プラスチックフィルム上に活性エネルギー線硬化組成物を塗布して得られた塗布膜に活性エネルギー線を照射し硬化させて粘着剤層を形成する方法、
ロ)別の基材(例えば離型PETフィルム)に活性エネルギー線硬化組成物を塗布して得られた塗布膜をプラスチックフィルムに転写した後、活性エネルギー線を照射し硬化させて粘着剤層を形成する方法、
ハ)別の基材(例えば離型PETフィルム)に活性エネルギー線硬化組成物を塗布して得られた塗布膜に活性エネルギー線を照射し硬化させて粘着剤層を形成した後、プラスチックフィルムに粘着剤層を転写、積層する方法、
を用いることができる。
【0067】
本発明においては、上記の製造方法の中でも、イ)及びハ)の方法が好ましく用いられる。
【0068】
上記の製造方法において、プラスチックフィルムもしくは別の基材上に本発明の活性エネルギー硬化組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布方法としては、スリットダイコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロールコーター等を用いることができるが、中でも厚み均一性の良い塗膜が得られるスリットダイコーターが適している。
【0069】
上記の方法で塗布されて形成された塗布膜(本発明の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層)は、活性エネルギー線が照射されて硬化するが、活性エネルギー線として紫外線を用いて光重合により硬化させる場合は、窒素ガスなどの不活性ガスで置換して酸素の無い雰囲気中で行うか、または紫外線透過性フィルムによる被覆で空気と遮断した状態で行うのが望ましい。電子線の照射により硬化させる場合は、公知の電子線照射装置を使用することができる。
【0070】
活性エネルギー線として紫外線あるいは電子線を用いる場合の照射量は、積算光量で100〜3000mJであることが好ましく、さらに100〜1000mJであることが好ましい。照射量が100mJより少ないと硬化が不十分となる場合があり、3000mJより多いと作業性が劣る場合があり、また照射時の熱により基材を変形、損傷させる場合がある。
【0071】
上記のようにして得られた粘着剤層は、耐衝撃性の観点から弾性率は0.03〜1.0MPaの範囲が好ましいく、デュロメータ硬さはE1/15〜E30/15の範囲が好ましい。
【0072】
粘着剤層の厚みは、良好な耐衝撃性を得るという観点から、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、特に100μm以上が好ましい。厚みの上限は、活性エネルギー線硬化組成物の塗布適性、硬化速度等の生産性を考慮して、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、特に500μm以下が好ましい。また、粘着剤層の厚みが大きくなると、視認性が低下するので、上記の上限である2000μmの厚みより大きくしないのが好ましい。
【0073】
本発明のディスプレイ用フィルターを構成するプラスチックフィルムとしては、以下に示すような樹脂からなるフィルムを用いることができる。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0074】
プラスチックフィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コストの観点及びディスプレイ用フィルターの剛性を確保するという観点から80〜250μmの範囲が特に好ましい。
【0075】
本発明に用いられるプラスチックフィルムには、粘着剤層あるいは後述する機能層との密着性(接着強度)を強化するための下引き層(プライマー層)を設けておくのが好ましい。
【0076】
本発明のディスプレイ用フィルターは、プラスチックフィルムに対して粘着剤層を形成する面とは反対面に、表面保護機能および/または光学機能を有する機能層を設けるのが好ましい。かかる表面保護機能を有する機能層としては、ハードコート層、防汚層等が挙げられ、光学機能を有する機能層としては、反射防止層、防眩層等が挙げられる。上記機能層は、単一層であっても複数層で構成されていてもよく、単一層で構成する場合は、上記した複数の機能を1つの層に付与してもよい。または、異なる複数の機能層を積層することもできる。以下にそれぞれの機能層について詳細に説明する。
【0077】
表面保護機能を有する機能層の一つであるハードコート層は、傷防止のために設けられる層である。ハードコート層は硬度が高いことが好ましく、ハードコート層の表面硬度はJIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度で表すことができ、ハードコート層が設けられた側の表面(ハードコート層上に他の機能層を有する場合は他の機能層表面)を直接鉛筆で引っかくことによって鉛筆硬度を評価することができる。本発明におけるハードコート層が設けられた側の表面の鉛筆硬度は、1H〜9Hが好ましく、2H〜9Hがより好ましい。
【0078】
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などを用いることができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0079】
ハードコート層の厚みは、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。ハードコート層の厚みが0.1μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために、表面硬度が十分でなく、傷が付きやすくなる傾向にある。一方、ハードコート層の厚みが20μmを超える場合には、折り曲げなどの応力により、硬化膜にクラックが入りやすくなる傾向にある。
【0080】
ハードコート層には、後述する反射防止層を構成する高屈折率層としての機能を付与することができる。ハードコート層の高屈折率化は、高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより図られる。
【0081】
表面保護機能を有する機能層の一つである防汚層は、ディスプレイ用フィルターの表面を人が触ることによる油脂性物質の付着や環境からのごみや埃の付着を防止し、あるいは付着しても除去しやすくするための層である。防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚みは、1〜10nmの範囲が好ましい。
【0082】
光学機能を有する機能層の一つである反射防止層は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。また、視感反射率に下限は特になく、0%であることが最も好ましいが、視感反射率は0.05%程度であれば十分である。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
【0083】
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
高屈折率層を形成する材料としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを重合硬化させたもの、あるいはシリコーン系、メラミン系、エポキシ系の架橋性樹脂原料を架橋硬化させたもの等の有機系材料、酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。これらの中でも、有機系材料が好ましく用いられる。
高屈折率層の厚みは、0.01〜20μmの範囲が好ましく、0.05〜10μmの範囲がより好ましい。
【0084】
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素ポリマー、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 、SiO2 等の無機系材料で構成することができる。低屈折率層の厚みは、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.02〜0.5μmの範囲がより好ましい。
【0085】
光学機能を有する機能層の一つである防眩層は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JISK 7136:2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。防眩層の厚みは、0.01〜20μmが好ましい。
【0086】
上記した反射防止機能と防眩機能はそれぞれ独立した層として設けても良く、また両者の機能を併せ持つ層として設けても良い。
【0087】
前述したように、機能層は単一層であっても、複数層であってもよいが、単一層の場合は複数の機能を併せ持つのが好ましい。以下に複数の機能を併せ持った単一層を例示する。
a)反射防止性ハードコート層
b)防眩性ハードコート層
c)防眩性反射防止層
また、機能層を複数層で構成することも好ましく、以下に複数構成の機能層を例示する。尚、下記例示の複数構成においては、右側に記載の層が視認側に配置される(左側に記載の層が表示パネル側に配置される)。
d)ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
e)高屈折率ハードコート層/低屈折率層
f)ハードコート層/防眩層
g)ハードコート層/防眩性反射防止層
h)ハードコート層/防汚層
i)ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/防汚層
j)防眩性ハードコート層/防汚層
k)反射防止性ハードコート層/防汚層
本発明のディスプレイ用フィルターは、上記した機能層の他に、導電層(電磁波遮蔽層)、近赤外線遮蔽層、色調調整層等を設けることができる。これらの層は、前述した本発明の粘着剤層と機能層の間に設けるのが好ましい。また、近赤外線遮蔽層及び色調調整層は、粘着剤層あるいは機能層に近赤外線遮蔽機能や色調調整機能を付与することによって省略することができる。
【0088】
また、導電層(電磁波遮蔽層)、近赤外線遮蔽層、色調調整層等を設けるに際して、別のプラスチックフィルムにこれらの層を設けたフィルムと、前述の機能層を設けたプラスチックフィルムとを別の粘着剤層(別の粘着剤層としては、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を硬化せしめた粘着剤層を使用しても、その他の粘着剤層を使用しても問題はなく、特に限定されない。)を介して貼合した、所謂、2枚構成のディスプレイ用フィルターであってもよい。このような2枚構成の場合でも、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を硬化せしめた粘着剤層はディスプレイ用フィルターの一方の最外層となるように配置され、機能層は他方の最外層となるように配置される。上記の2枚構成のディスプレイ用フィルターの代表的な構成を以下に示す。
【0089】
<本発明の粘着剤層/プラスチックフィルム1/導電層/別の粘着剤層/近赤外線遮蔽層/プラスチックフィルム2/機能層>
上記の構成において、色調調整機能を、近赤外線遮蔽層、別の粘着剤層、あるいは本発明の粘着剤層に付与することができ、また、近赤外線遮蔽層は、別の粘着剤層、本発明の粘着剤層、あるいは機能層に近赤外線遮蔽機能を付与することによって省略することができる。また、導電層として、銅箔等の金属箔をフォトリソ・エッチング方法で作製したメッシュ状の導電層を用いる場合は、プラスチックフィルム1と導電層との間に接着剤層を介在させてもよい。
【0090】
本発明にかかるディスプレイ用フィルターとしては、プラスチックフィルムが1枚のみで構成される、所謂、モノフィルムフィルターの形態が、材料コスト及び生産コストの点で好ましい。かかるモノフィルムフィルターの代表的な構成を以下に例示する。
【0091】
a):本発明の粘着剤層/近赤外線遮蔽層/プラスチックフィルム/導電層/機能層
b):本発明の粘着剤層/導電層/プラスチックフィルム/機能層
上記a)の構成において、色調調整機能を近赤外線遮蔽層あるいは本発明の粘着剤層に付与することができ、また、近赤外線遮蔽層は本発明の粘着剤層あるいは機能層に近赤外線遮蔽機能を付与することによって省略することができる。同様に、上記b)の構成において、色調調整機能を本発明の粘着剤層に付与することができ、また、近赤外線遮蔽機能を本発明の粘着剤層あるいは機能層に付与することができる。また、上記したように、導電層として、銅箔等の金属箔をフォトリソ・エッチング方法で作製したメッシュ状の導電層を用いる場合は、プラスチックフィルムと導電層との間に接着剤層を介在させてもよい。
【0092】
以下に、導電層、近赤外線遮蔽層、色調調整層について詳細に説明する。
【0093】
導電層は、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するための層である。導電層の面抵抗値は、低い方が好ましく、10Ω/□以下が好ましく、5Ω/□以下がより好ましく、特に3Ω/□以下が好ましい。面抵抗値の下限値は0.01Ω/□程度である。導電層の面抵抗値は、4端子法により測定することができる。導電層としては、導電性薄膜あるいは導電性メッシュが用いられる。
【0094】
導電性薄膜としては、金属薄膜や酸化物半導体膜、それらの積層体などを用いることができる。金属薄膜の材料としては、銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などが用いられる。金属薄膜の形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、メッキ等の公知の方法を用いることができる。酸化物半導体膜の材料としては、亜鉛、チタン、インジウム、スズ、ジルコニウム、ビスマス、アンチモン、タンタル、セリウム、ネオジウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、ガリウム等の酸化物、硫化物、またはこれら酸化物の混合物などが用いられる。酸化物半導体の形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビームアシスト、真空蒸着、湿式塗工等の公知の方法を用いることができる。
【0095】
本発明に用いられる導電層としては、導電性メッシュが好ましい。導電性メッシュは、上記の金属薄膜に比べて、低い面抵抗値が得られるという利点がある。
【0096】
導電性メッシュを得るための1つの方法として、銅箔等の金属膜をプラスチックフィルムに接着材を介して貼り合わせた金属膜積層フィルムを、フォトリソグラフ法、スクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターン作製した後、金属膜をエッチングする方法がある。
【0097】
フォトリソグラフ法は、金属膜積層フィルムの金属膜に紫外線等の照射により感光する感光層を設け、この感光層にフォトマスク等を用いて像様露光し、現像してレジスト像を形成する方法である。
【0098】
スクリーン印刷法は、金属膜積層フィルムの金属膜表面にエッチングレジストインクをパターン印刷し、硬化させてレジスト像を形成する方法である。
【0099】
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、エッチングレジストで保護された導体部分以外の不要導体をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0100】
導電性メッシュを得るための他の方法としては、1)金属薄膜(上記の金属箔を積層する以外の方法で形成された金属薄膜)をエッチング加工する方法、2)印刷で直接メッシュパターンを形成する方法、3)感光性銀塩を用いる方法、4)印刷パターン上に金属膜積層後に現像する方法、及び5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法なども挙げられる。以下にそれぞれの方法を詳細に説明する。
【0101】
上記1)の方法は、プラスチックフィルム上に粘着材あるいは接着材からなる接着層を介さずに金属薄膜を形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフ法あるいはスクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。金属薄膜の形成は、金属(例えば銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金など)をスパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、あるいはメッキ等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0102】
上記2)の方法としては、プラスチックフィルムに導電性ペースト等をメッシュパターンに印刷する方法や、プラスチックフィルムに触媒インク等でメッシュパターンを印刷し、これに金属メッキを施す方法がある。後者の1つの方法として、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法がある。
【0103】
上記3)の方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層をプラスチックフィルムにコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法である。形成された銀メッシュは更に銅、ニッケル等の金属でメッキするのが好ましい。この方法は、国際公開第04/7810号パンフレット、特開2004−221564号公報、特開2006−12935号公報等に記載されており、参照することができる。
【0104】
上記4)の方法は、プラスチックフィルム上に剥離可能な樹脂でメッシュパターンとは逆パターンの印刷を施し、その印刷パターン上に金属薄膜を上記1)と同様の方法で形成した後、現像して樹脂とその上の金属膜を剥離して金属のメッシュパターンを形成する方法である。剥離可能な樹脂として、水、有機溶剤あるいはアルカリに可溶な樹脂やレジストを用いることができる。この方法は、特開2001−185834号公報、特開2001−332889号公報、特開2003−243881号公報、特開2006−140346号公報、特開2006−156642号公報等に記載されており、参照することができる。
【0105】
上記5)の方法は、上記1)と同様の方法でプラスチックフィルム上に形成された金属薄膜からレーザーアブレーション方式で金属メッシュを作製する方法である。レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
【0106】
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることができる。
【0107】
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
【0108】
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
【0109】
また、この方法の場合、金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
【0110】
本発明に用いることができる導電性メッシュのメッシュパターンとしては、格子状パターン、5角形以上の多角形からなるパターン、円形パターン、あるいはこれらの複合パターンが挙げられ、更にランダムパターンも好ましく用いられる。メッシュの線幅及び線間隔(ピッチ)は、開口率が70%以上98%以下となるように設計するのが好ましく、線幅としては5〜40μmが好ましく、線間隔(ピッチ)は100〜500μmの範囲が好ましい。導電層の厚みは、0.1〜20μmの範囲が適当である。
【0111】
本発明において、導電性メッシュは黒化処理するのが好ましい。黒化処理は、酸化処理や黒色印刷により行うことができる。例えば、特開平10−41682号公報、特開2000−9484号公報、特開2005−317703号公報等に記載の方法を用いることができる。黒化処理は、導電性メッシュの少なくとも視認側の表面と両側面を行うのが好ましく、更には導電性メッシュの両面及び両側面を黒化処理するのが好ましい。
【0112】
また、ディスプレイ用フィルターに用いられる粘着層、プラスチックフィルム、機能層、さらに導電層を含んだ積層体を連続生産ラインで効率よく製造するためには、導電層は連続メッシュであることが好ましい。連続メッシュとは、メッシュパターンが途切れることなく形成されたものであり、例えば、少なくとも導電層を有する積層体を長尺ロール状で製造した場合に、ロールの巻き方向にメッシュが連続的に形成されていることである。このような連続メッシュを用いることにより、該積層体ロールをカットしてシート状のディスプレイ用フィルターを製造するときに、歩留まり及び生産性が向上する。また、連続メッシュは、いろんなサイズのディスプレイへの対応が容易であること、及び、ディスプレイ用フィルターの製造過程において欠陥が発生した場合は、欠陥部分のみの限られた量の廃棄ですむこと等の利点がある。
【0113】
近赤外線遮蔽層は、ディスプレイから発生される近赤外線を遮蔽する層である。近赤外線遮蔽層は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が30%以下となるように調整するのが好ましく、更に15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽層を独立した層として設ける場合は、近赤外線吸収剤を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成することができる。また、近赤外線吸収剤を粘着剤層あるいは機能層等に含有させることによって、それらの層に近赤外線遮蔽機能を付与することができる。近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の公知の有機系吸収剤、または特開2006−154516号公報に記載のタングステン酸化物微粒子あるいは複合タングステン酸化物微粒子等の公知の無機系吸収剤を用いることができる。
【0114】
色調調整層は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための層である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層あるいは粘着剤層に色素を含有させることによって付与してもよい。
【実施例】
【0115】
以下に、実施例を具体的に挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
下記で合成したウレタンアクリレートプレポリマー及びウレタンプレポリマーの分子量、及びアクリレート末端比率は以下のようにして測定した。
【0117】
<分子量の測定>
GPCにより重量平均分子量、数平均分子量を測定した。測定にはWALTERS GPC−150CPlus(日本WALTERS社製)を用い下記条件にて測定した。
【0118】
検出器:WALTERS 2410
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:HR4 2本、HR4E 1本(7.5mm×300mm)
温度:40℃
濃度:0.2%
注入量:100μl
流速:1.0m/m
n数:3
<アクリレート末端比率の測定>
JISK−1557に準拠し、樹脂をクロロホルム中に溶解させ、無水酢酸を添加しKOHで滴定することにより水酸基価を算出した。水酸基価と重量平均分子量からアクリレート末端比率を算出した。
【0119】
<分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)の合成>)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装備したフラスコに、「エクセノ−ル3020」[旭硝子ウレタン(株)製のポリプロピレングリコール(数平均分子量3200)]97.98質量部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11質量部を仕込んだ。
【0120】
次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート8.65質量部を加え、3時間攪拌しながら保温して30分ごとのGPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.5で一定であることを確認し反応を終了し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(f)を得た。
【0121】
<ウレタンアクリレートプレポリマー(A1)の合成>
上記のウレタンプレポリマー(f)を撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装備したフラスコに200質量部仕込み、次に系内を80℃まで昇温し、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.69質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.22質量部を加え、攪拌しながら保温(80℃)し、IR測定にてイソシアネート基が完全に消失したことを確認し反応を終了させてウレタンアクリレートプレポリマー(A1)(重量平均分子量24000)を得た。
【0122】
<ウレタンアクリレートプレポリマー(A2)の合成>
上記のウレタンプレポリマー(f)を撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装備したフラスコに200質量部仕込み、次に系内を80℃まで昇温し、窒素ガス、酸素ガスを吹き込みながら2−ヒドロキシエチルアクリレート2.56質量部、1,3−ブタンジオール0.84質量部を加え、攪拌しながら保温(80℃)し、IR測定にてイソシアネート基が完全に消失したことを確認し反応を終了させて、ウレタンアクリレートプレポリマーA2(重量平均分子量24000)を得た。このようにして得られたウレタンアクリレートプレポリマー(A2)は、分子末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーとウレタンアクリレートプレポリマーを含むプレポリマーである。このプレポリマーのアクリレート末端比率は70%であった。
【0123】
<ウレタンプレポリマー(D)の合成>
上記のウレタンプレポリマー(f)を撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装備したフラスコに200質量部仕込み、次に系内を70℃まで昇温し、窒素ガスを吹き込みながら1,3−ブタンジオール2.6質量部を加え、攪拌しながら保温(70℃)し、IR測定にてイソシアネート基が完全に消失したことを確認し反応を終了させて、ウレタンプレポリマー(D)(重量平均分子量24000)を得た。
(実施例1)
<活性エネルギー線硬化組成物の調製>
ウレタンアクリレートプレポリマー(A1)を75質量部、モノマー(B)として2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸を10質量部、モノマー(C1)としてフェノキシエチルアクリレートを10質量部、可塑剤としてリン酸トリクレジル(以下TCPと表記)5質量部、重合開始剤としてヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュアー184、以下IC184と表記)を1質量部加えて均一に混合することにより活性エネルギー線硬化組成物を調製した。
【0124】
<粘着剤層の作製>
上記の活性エネルギー線硬化組成物を離型PETフィルム上にスロットダイコーターにて塗布した後、高圧水銀ランプを用いて積算光量で1000mJ照射して粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の厚みは200μmであった。
【0125】
<ディスプレイ用フィルターの作製>
近赤外線遮蔽層、プラスチックフィルム(PETフィルム)、導電層、機能層をこの順に有するフィルターを以下の要領で準備し、近赤外線遮蔽層上に上記で作製した粘着剤層を積層して、実施例1のディスプレイ用フィルターを得た。
【0126】
<導電層の形成>
厚み100μmのPETフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U34)に、パラジウムコロイド含有ペーストを線幅30μm、線間隔250μmの格子状メッシュパターンを有するスクリーンを用いて印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して、無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して厚みが5μmのメッシュ状の導電層を形成した。
【0127】
<機能層の塗工形成>
上記の導電層が形成されたPETフィルムの導電層上に、下記のハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層を順次塗工した。
【0128】
<ハードコート層>
市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚み10μmのハードコート層を設けた。
【0129】
<高屈折率層>
錫含有酸化インジウム粒子(ITO)6質量部、多官能アクリレート2質量部、メタノール18質量部とポリプロピレングリコールモノエチルエーテル54質量部、イソプロピルアルコール20質量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.67の高屈折率塗料を調製した。
【0130】
この塗料をハードコート層上にマイクログラビアコーターを用いて塗工、乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して、塗工層を硬化させ、厚さ約0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0131】
<低屈折率層>
一次粒子径50nmの外殻を有する中空シリカ粒子(空隙率40%)144質量部、イソプロピルアルコール560質量部からなるシリカスラリーを準備し、メチルトリメトキシシラン219質量部、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン158質量部、上述シリカスラリー704質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合し、燐酸1質量部と水130質量部を配合して、30℃±10℃で攪拌しながら60分加水分解し、さらに温度を80℃±5℃に上げて60分攪拌しながら重合し、シリカ粒子含有ポリマーを得た。
【0132】
次に、このシリカ粒子含有ポリマー1200質量部、イソプロピルアルコール5244質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトキシアルミニウムを15質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.35の塗料を調整した。この塗料を高屈折率層上に小径グラビアコーターで塗工、乾燥、硬化して、厚さ約0.1μmの低屈折率層を形成した。
【0133】
<近赤外線遮蔽層の積層>
上記の導電層と機能層が積層されたPETフィルムの導電層とは反対面に、オレンジ光遮蔽機能を併せ持つ近赤外線遮蔽層(近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン系色素1.5質量部とジイモニウム系色素2.5質量部、およびオレンジ光吸収色素としてのテトラアザポルフィリン系色素0.5質量部をアクリル系樹脂100質量部に混合した塗料を、乾燥膜厚みが12μmになるように塗工した層)を設けた。
(実施例2〜6及び比較例1〜3)
下記表1に記載の成分比率で調製した活性エネルギー線硬化組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、それぞれのディスプレイ用フィルターを作製した。
【0134】
尚、表1中のモノマー(C2)は、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートである。
【0135】
【表1】

【0136】
上記のようにして得られた実施例及び比較例の粘着剤層、及びディスプレイ用フィルターについて、視認性、密着性、剥離性、粘着剤層の平滑性を評価した。
【0137】
<視認性>
ディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの表示パネルに装着し、画像のコントラストを目視で評価した。
【0138】
<密着性及び剥離性>
ディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの表示パネルに装着し、どの程度の力ではがれるかを見た。
【0139】
<平滑性>
活性エネルギー線硬化組成物を塗布・硬化して得られた粘着剤層の表面を目視観察し、平滑性を評価した。
【0140】
実施例及び比較例について上記のようにして評価した結果を以下に示す。
本発明の実施例はいずれも、表示パネルとの密着性が良好であり、かつ表示パネルからディスプレイ用フィルターを問題なく剥離することができた。
【0141】
また、本発明の実施例はいずれも、比較モノマー(2−エチルヘキシルアクリレート)を単独で用いた比較例3に比べて、画像コントラストが向上していた。
【0142】
また更に、本発明の実施例はいずれも、重合収縮が小さく、粘着剤層表面の平滑性は良好であった。
【0143】
これに対して、モノマー(B)を単独で用いた比較例1は、密着性が強すぎて剥離するのに多大な労力を要し、また剥離できたとしても表示パネルに粘着剤が残留した。
【0144】
またモノマー(C1)を単独で使用した比較例2は、重合収縮が起こり粘着剤層表面に波打が発生し、良好な平滑面が得られなかった。
【0145】
また比較例2、3は、表示パネルとの密着性が低く、少しの力で表示パネルからディスプレイ用フィルターがはがれた。
【0146】
また本発明の実施例の中で、ウレタンアクリレートプレポリマー(A1)とウレタンプレポリマー(D)を併用した実施例3、4、及びウレタンアクリレートプレポリマー(A2)を用いた実施例5、6は、ウレタンアクリレートプレポリマー(A1)を用いた実施例1に比べて、以下に示す鋼球落下試験による耐衝撃性が向上していた。
【0147】
実施例3〜6はいずれも、実施例1に比べて落下高さが2〜5cm上昇した。
<鋼球落下試験>
それぞれの実施例のディスプレイ用フィルターを、厚さ1.3mmのソーダガラス上に貼合し、その鉛直上方から高さを変えながら、直径38mmで質量が229gの鋼球を自由落下させてガラス破損時の落下高さを求めた。
【0148】
このガラス破損時の落下高さが高い方が耐衝撃性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレートプレポリマー(A)と、
カルボキシ基並びに、芳香族環及び/または脂肪族環を有する、アクリレートモノマー(B)と、
芳香族環及び/または脂肪族環を有し、かつカルボキシ基を有しない、アクリレートモノマー(C)を、
少なくとも含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項2】
分子末端に水酸基またはカルボキシ基を有する、ウレタンプレポリマー(D)を含有する、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項3】
重合開始剤(E)を含有する、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物を含有する層を硬化せしめた粘着剤層を備えた、ディスプレイ用フィルター。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚みが、50〜2000μmである、請求項4に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項6】
表面保護機能および/または光学機能を有する機能層を備えた、請求項4または5に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項7】
導電層を備えた、請求項4から6のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルター。
【請求項8】
請求項4から6に記載のディスプレイ用フィルターの粘着剤層を介して、該ディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼合した、ディスプレイ。

【公開番号】特開2008−303343(P2008−303343A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153657(P2007−153657)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】