説明

活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤、活性光線硬化型インクジェットインク、インクジェット記録方法、トリアリールスルホニウム塩の製造方法および活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤固体

【課題】長期間保存してもインクの吐出安定性の低下が少なく保存性に優れるインクジェットインクを与える光酸発生剤を提供する。
【解決手段】カチオン重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤であって、光酸発生剤が、下記の精製工程を有する製造方法により製造されたものであることを特徴とする。[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる、光酸発生剤および活性光線硬化型インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化する活性光線硬化型組成物は、塗料、接着剤、印刷インキ、インクジェットインク、電気絶縁封止材など種種の用途に用いられている。
【0003】
これらの中のインクジェットインクとして用いられる用途においては、特に紫外線で硬化する紫外線硬化型インクジェットインクが、速乾性、インク吸収性のない記録媒体への記録が可能であるなどの利点を有するため、近年注目されている。
【0004】
紫外線硬化型インクジェットインクの中でもカチオン重合性化合物を用いたインクは、酸素による重合阻害を受けないため薄膜硬化性に優れ、硬化膜の柔軟性に比較的優れている。
【0005】
また、カチオン重合性化合物を含有するインクジェットインクに用いられる重合開始剤としては、ベンゼンを発生せず環境適性に優れるという長所を有するトリアリールホスホニウム塩からなる酸発生剤が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
紫外線硬化型インクジェットインクにおいては、インクを長期保存すると、インクの粘度が上昇したり、顔料を含む沈殿を生じたりして、インクジェットノズル口にインクの詰まりを生じ、インクの出射不良が発生する場合がある等の問題があった。
【0007】
そして、カチオン重合性化合物を用いたインクにおいても、上記のような長期保存した場合の問題があり、これを改善するものとして、下記のような技術が知られている。
【0008】
例えば、インク中のカチオン型不純物、金属不純物および強酸性物質の総含有量を、500ppm以下にして、経時での増粘、ゲル化を抑える技術が知られている(特許文献2参照)。
【0009】
また、純度80%以上のトリアリールスルホニウム化合物(光重合開始剤)を用いることで、活性エネルギー線硬化性の光学的立体造形用樹脂組成物の保存中の粘度上昇を抑える技術が知られている(特許文献3参照)。
【0010】
近年、インクジェット方式を用いる画像形成の分野においては、より高感度で、高精細な画質が要求され、またコスト的観点より、より長期間高品質な状態で使用可能なインクジェットインクが求められている。
【0011】
しかしながら、このような要求に対して、上記のようなインク中の不純物の含有量を減少させたインクジェットインクを用いても不十分であり、より長期間に亘り、高感度で、高精細な画像を形成可能なインクジェットインクの提供は難しかった。
【0012】
即ち、長期間保存して粘度の増加が見られず、外観上沈殿物の発生も見られないという状態のインクであっても、インクジェットノズル口付近にインクが付着し、出射した液滴の軌道に曲がりを生ずる、ノズルから出射しない、などの場合があるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−139425号公報
【特許文献2】特開2005−146001号公報
【特許文献3】国際公開第04/113396号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、トリアリールスルホニウム化合物を光酸発生剤として含有するインクジェットインクを用いる環境適性に優れるインクジェット記録において、長期間保存してもインクの吐出安定性の低下が少なく保存性に優れるインクジェットインクを与える光酸発生剤およびその製造方法ならびに、この光酸発生剤を用いたインクジェットインクおよびインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.カチオン重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤であって、該光酸発生剤が、トリアリールスルホニウム塩であり、該トリアリールスルホニウム塩は、下記の精製工程を有する製造方法により製造されたものであることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤。
[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]
2.カチオン重合性化合物および1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク。
3.2に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
4.カチオン重合性化合物およびトリアリールスルホニウム塩を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられるトリアリールスルホニウム塩の製造方法であって、下記の精製工程を有することを特徴とするトリアリールスルホニウム塩の製造方法。
[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]
5.重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤固体であって、該光酸発生剤固体は、トリアリールスルホニウム塩を含有し、該光酸発生剤固体の酸発生量(光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を20時間リフラックスしたとき、リフラックス前後の溶液中の水素イオン濃度(mol/L)の差)が、1×10−4(mol/L)以下であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤固体。
【0015】
本発明においては、さらに上記1における精製工程が、下記である態様が好ましい態様である。
[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)より10℃以下の範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トリアリールスルホニウム化合物を光酸発生剤として含有するインクジェットインクを用いる環境適性に優れるインクジェット記録において、長期間保存してもインクの吐出安定性の低下が少なく保存性に優れるインクジェットインクを与える光発生剤およびその製造方法ならびに、この光酸発生剤を用いたインクジェットインクおよびインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明は、カチオン重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤(以下単に本発明の光酸発生剤と略記する)であって、該光酸発生剤が、トリアリールスルホニウム塩であり、該トリアリールスルホニウム塩は、上記の精製工程を有する製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、特に上記特定の精製工程を有する製造方法で製造したトリアリールホスホニウム塩を酸発生剤として活性光線硬化型インクジェットインクに用いることで、保存性に優れるインクジェットインクを得ることができる。
【0020】
本発明の光酸発生剤が用いられる活性光線硬化型インクジェットインクは、カチオン重合性化合物および光酸発生剤を含有する。
【0021】
(光酸発生剤)
本発明において、活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる光酸発生剤は、トリアリールスルホニウム塩である。
【0022】
本発明に係るトリアリールスルホニウム塩は、置換基を有してもよいフェニル基が3個結合した硫黄原子を有するスルホニウムの塩であり、特に下記一般式〔1〕〜〔4〕で表される化合物であることが環境適性の面から好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
式中、R〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R〜Rが同時に水素原子を表すことがなく、R〜Rが同時に水素原子を表すことがなく、R〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは、非求核性のアニオン残基を表す。
【0025】
〜R17で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0026】
Xは、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C、R18COO、R19SO、SbF、AsF、PF、BF等を挙げることができる。
【0027】
ただし、R18およびR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていてもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。
【0028】
この中でも、安全性の観点から、B(C、PFが好ましい。
【0029】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0030】
トリアリールスルホニウム塩の具体例を下記に挙げる。
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
(精製工程)
本発明に係る精製工程は、トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程である。
【0040】
但し、Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。
【0041】
本発明に係る加熱工程における加熱処理は、トリアリールスルホニウム塩を加熱する処理である。
【0042】
加熱処理の具体的方法は、トリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し、溶液を調製し、この溶液を加熱する方法またはトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱する方法であるが、トリアリールスルホニウム塩の固体を溶解した溶液を加熱する方法が好ましい。
【0043】
トリアリールスルホニウム塩の固体を溶解した溶液を加熱する方法においては、溶液を加熱した後、この溶液をプロトン除去工程に供する。
【0044】
溶媒としては、トリアリールスルホニウム塩の構造にもよるが、プロトン性、非プロトン性の極性有機溶媒が好適に用いられる。
【0045】
例えば、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アニソール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、等のエーテル、アセタール類、アセトン、イソホロン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、炭酸プロピレン、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールとその誘導体、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸等の有機酸及びその無水物、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド等の含窒素化合物、ジフェニルスルホン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン等の含硫黄化合物などが挙げられるが、ジオキサン、炭酸プロピレンが好ましく用いられる。
【0046】
加熱処理工程の加熱温度t(℃)は、トリアリールスルホニウム塩を溶解した溶媒を加熱する方法の場合には溶媒の温度を、固体粒子を加熱する方法の場合には、加熱する雰囲気の温度である。
【0047】
加熱温度が60℃未満であると、インクジェットインクを長期間保存した場合、出射不良などを生ずる。
【0048】
本発明においては、さらに加熱時間をh(hr)とした時、K−59h≧82である。
【0049】
但し、Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。
【0050】
K−59hが82未満の場合には、長期間保存した場合、出射不良などを生ずる。
【0051】
加熱処理においては、加熱温度を上記範囲内であれば変化させてもよい。
【0052】
加熱温度hは、60℃〜トリアリールスルホニウム塩の分解温度未満であるが、60℃〜(トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)−10(℃))であることがトリアリールスルホニウム塩を分解させることなく処理できるため好ましい。
【0053】
本発明に係るプロトン除去工程は、下記に挙げる処理などにより、加熱により発生すると思われるプロトンを除去する工程であり、アルカリ剤と接触させるアルカリ処理、各種クロマトグラフによるクロマト分離処理、水と接触させる水処理などが挙げられる。
【0054】
アルカリ処理は、トリアリールスルホニウム塩をアルカリ剤と接触させる処理である。
【0055】
アルカリ処理は、トリアリールスルホニウム塩を溶解した溶媒中でアルカリ剤と接触させる方法により行われる。
【0056】
アルカリ処理においてトリアリールスルフォニウム塩を溶解する溶媒は、前述の加熱処理で用いられる溶媒を用いる。
【0057】
アルカリ剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。
【0058】
接触させる方法としては、トリアリールスルフォニウム塩の溶液とアルカリ剤の混合物を攪拌する方法が挙げられる。
【0059】
アルカリ処理の温度としては、10℃〜トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)−10(℃)が好ましく、特に加熱や冷却の装置が不要であることから10℃〜40℃が好ましい。
【0060】
アルカリ処理工程の後は、硫酸マグネシウム等を用いて脱水処理を行い水を除去する工程を有することが好ましい。
【0061】
クロマト分離処理としては、例えば、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに前記アルカリ剤水溶液を通過させた後に、前記加熱処理を行ったトリアリールスルホニウム塩溶液を通過させる方法が挙げられる。
【0062】
水処理は、トリアリールスルホニウム塩を溶解した溶媒と水の混合物を攪拌することにより行うことができる。
【0063】
上記のように、本発明に係る精製工程は、従来行われていた活性炭、塩基性吸着剤、カラムクロマトグラフィー等の吸着方法、あるいは、単に再結晶等を行い相分離する方法などと異なり、上記のような温度と時間の範囲で一定以上加熱して、不純物が変化して生じたプロトンを除去することが特徴である。
【0064】
(光酸発生剤固体)
本発明の活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤であるトリアリールスルホニウム塩は、固体である。
【0065】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインク用酸発生剤固体は、トリアリールスルホニウム塩を含有し、その酸発生量(光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を20時間リフラックスしたとき、リフラックス前後の溶液中の水素イオン濃度(mol/L)の差をいう)が、1×10−4(mol/L)以下である。
【0066】
上記酸発生量としたトリアリールスルホニウム塩の固体を用いることで、長期間保存してもインクの吐出安定性の低下が少なく保存性に優れるインクジェットインクが得られる。
【0067】
酸発生量を本発明に係る範囲としたトリアリールスルホニウム塩の固体は、上記の精製工程を有する製造方法により得られる。
【0068】
本発明における光酸発生剤の熱酸発生量は以下のように求められる。
(1)光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を20時間リフラックスする。
(2)リフラックス前とリフラックス後の溶液について、各々、溶液1gと純水4gを混合して上澄みである水層のpHを測定する。
(3)pHの測定結果よりリフラックス前後の[H]濃度を計算で求め、リフラックス前の[H]濃度−リフラックス後の[H]濃度を、熱酸発生量とする。
【0069】
本発明に係る精製工程を経たトリアリールスルホニウム塩を用いたインクジェットインクが長期間保存してもノズルへの付着による液滴の弾道曲がり、出射不良などを抑制するという効果を有する理由は明確ではないが、以下のように推察される。
【0070】
従来、トリアリールスルホニウム塩をインクジェット用酸発生剤として用いる場合、上記のように、用いるトリアリールスルホニウム塩に含まれる不純物を減少させてインクジェットインクに含有させる方法が知られている。
【0071】
そして、不純物を減少させる方法としては、活性炭、塩基性吸着剤等への吸着による方法、カラムクロマトグラフィー、晶析、再結晶等の分離する方法などが挙げられている。
【0072】
しかしながら、これらの不純物を減少させる方法を施したトリアリールスルホニウム塩であってもインクを長期間保存した場合、インクジェットノズルからの液滴の曲がり、出射不良などの問題を生ずる場合があった。
【0073】
この問題は、上記のような精製方法を施しただけでは、未だ極少量の不純物が残存しており、この残存不純物が長期間保存の間に分解などしてプロトン酸を発生し、このプロトン酸が、極少量の重合物を生成して、この極少量の重合物の存在が原因と推測される。
【0074】
この極少量の重合物は、外観上沈殿物を形成することなく、また通常の粘度測定方法では増粘を検出することができないレベルで存在していると推測される。
【0075】
本発明では、残存する極少量の不純物が加熱処理工程で分解して、プロトン酸を生成し、このプロトン酸が、プロトン酸除去工程で除去されているため、上記レベルの極少量の重合物の発生が抑制されているため、と推測される。
【0076】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、活性光線の照射により光酸発生剤が発生した酸により、カチオン重合しうる化合物である。
【0077】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環を有する化合物(以下、オキセタン化合物という)、オキシラン環を有する化合物(以下、オキシラン化合物という)が挙げられる。
【0078】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物としてのオキセタン化合物は、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物である。
【0079】
具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0080】
これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
オキセタン化合物は、活性光線硬化型インクジェットインクに好ましくは5〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%含まれる。
【0082】
オキシラン化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等のエポキシ化合物が挙げられる。
【0083】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0085】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0086】
ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0087】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0088】
本発明においてもっとも好ましい脂環式エポキシドとしては、たとえば、特開2004−315778号、特開2005−28632号公報に記載のものが挙げられる。
【0089】
例示化合物を以下に記載する。
【0090】
【化10】

【0091】
【化11】

【0092】
【化12】

【0093】
【化13】

【0094】
【化14】

【0095】
【化15】

【0096】
【化16】

【0097】
【化17】

【0098】
【化18】

【0099】
【化19】

【0100】
本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0101】
これらオキシラン化合物は、本発明の活性光線硬化型インクジェットインク中に好ましくは5〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%含まれる。
【0102】
本発明においてはカチオン重合性化合物としてさらに、ビニルエーテル化合物を併用することもできる。
【0103】
ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0104】
本発明においては、活性光線硬化型インクジェットインクが、カチオン重合性化合物として上記の、オキセタン化合物およびエポキシ化合物を含有する場合に、本発明の効果は特に大きく、好ましい態様である。
【0105】
(活性光線硬化型インクジェットインク)
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、上記光酸発生剤およびカチオン重合性化合物を含有する。
【0106】
また、酸発生剤の含有量は、カチオン重合性化合物に対して、0.1〜15.0質量%が好ましくは、さらに1.0〜10.0質量%が好ましく、特に3.0〜5.0質量%が好ましい。
【0107】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、色剤、増感剤を含有することが好ましくさらに、下述する塩基性化合物などその他の添加剤を含んでもよい。
【0108】
光酸発生剤としては、本発明に係るトリアリールスルホニウム塩以外のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などを併用して用いることができる。
【0109】
併用して用いることができる光酸発生剤の含有量は、光酸発生剤全体に対して、0〜5質量%であることが好ましい。
【0110】
併用できる酸発生剤としては、例えば、特開平8−143806号公報、特開平8−283320号公報に記載のものが挙げられる。
【0111】
(色剤)
色剤としては、各種染料、顔料を用いることができるが、特に顔料が好ましく用いられる。
【0112】
顔料は、概ね粒径0.01〜3.0μmの粒子として、インクジェットインクに分散して用いられる。
【0113】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0114】
顔料の分散を行う際には、分散剤を添加して行うことが好ましい。
【0115】
分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。
【0116】
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0117】
好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0118】
C.I Pigment Yellow−1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、109、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213、 C.I Pigment Orange−16、36、38、C.I Pigment Red−5、7、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、112、122、123、144、146、168、184、185、202、C.I Pigment Violet−19、23、C.I Pigment Blue−1、2、3、15:1、15:2、15:3、15:4、18、22、27、29、60、C.I Pigment Green−7、36、C.I Pigment White−6、18、21、C.I Pigment Black−7、等を挙げることができる。
【0119】
(増感剤)
本発明においては、用いる光源の波長に応じて、増感剤を併用することができる。
【0120】
増感剤としては、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体およびチオキサントン誘導体等が用いられる。
【0121】
多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
【0122】
これらの増感剤としては、例えば、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などを挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0123】
カルバゾール誘導体としては、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等が挙げられる。
【0124】
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
【0125】
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。
【0126】
前記の塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。
【0127】
前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様に、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0128】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0129】
具体的には、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、2−(メチルアミノ)エタノールおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0130】
塩基性化合物を存在させる際の濃度は、光カチオン重合性化合物の総量に対して10〜50000質量ppm、特に100〜5000質量ppmの範囲であることが好ましい。
【0131】
なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0132】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、以下のような物性値を持つことが、吐出安定性、効果性、画質の面から好ましい。
【0133】
50℃における粘度が1〜30mPa・sである。
【0134】
表面張力(白金プレート法)が20〜40N/mであることが、好ましく、さらに20〜30N/mであることが好ましい。
【0135】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明の活性光線硬化型インクジェットインクをインクジェットノズルより記録媒体上に吐出して、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる記録方法である。
【0136】
(インク着弾後の活性光線照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。
【0137】
高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いこと好ましい。
【0138】
活性光線の照射方法は、特に限定されず例えば下記の方法で行うことができる。
【0139】
特開昭60−132767号に開示されている、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査し、照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われ、さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化が完了する方法。
【0140】
米国特許第6,145,979号に記載の、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法。
【0141】
本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0142】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、さらに活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。
【0143】
活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0144】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが、記録媒体のカール、皺、記録媒体の質感変化、などの面から好ましい。
【0145】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0146】
(インクの加熱および吐出条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性光線硬化型インクジェットインクを加熱した状態で、活性光線を照射することが、吐出安定性の面から、好ましい。
【0147】
加熱する温度としては、35〜100℃が好ましく、35〜80℃に保った状態で、活性光線を照射すること、吐出安定性の点でさらに好ましい。
【0148】
インクジェットインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加熱する方法がある。
【0149】
インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃が好ましく、さらに設定温度±2℃が好ましく、特に設定温度±1℃が、吐出安定性の面から好ましい。
【0150】
各ノズルより吐出する液滴量としては、記録速度、画質の面から2〜20plであることが好ましい。
【0151】
(記録媒体)
本発明のインクジェット記録方法に用いることのできる記録媒体としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。
【0152】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
【0153】
その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。
【0154】
また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。
【0155】
次いで、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0156】
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。
【0157】
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【0158】
記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。
【0159】
この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。
【0160】
プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。
【0161】
その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0162】
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
【0163】
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。
【0164】
ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0165】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0166】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インクジェットインク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。
【0167】
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0168】
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けて活性光線硬化型インクジェットインクの吐出を行った後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
【0169】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段および搬送手段と連動して記録ヘッド3か活性光線硬化型インクジェットインクらを吐出することにより、記録媒体P上に活性光線硬化型インクジェットインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0170】
照射手段4は、例えば特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプおよび特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。
【0171】
ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0172】
特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管および殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができ好ましい。
【0173】
ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0174】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0175】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0176】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。
【0177】
又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にするとさらに好ましい。
【0178】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0179】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0180】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0181】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録媒体Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
【0182】
照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0183】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2および照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射および硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0184】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0185】
実施例1
<トリアリールスルホニウム塩の合成および精製>
特開2005−146001号公報明細書の実施例(段落0041)に記載の方法と同様の方法にて、上記例示化合物TAS−1の構造のトリアリールスルホニウム塩である白色粉末を得た。
【0186】
特開2005−146001号公報明細書の実施例(段落0042)に記載の方法と同様にして、上記白色粉末を塩化メチレンに溶解し、アルミナカラムを通し、炭酸ナトリウムで処理し、硫酸マグネシウムで脱水処理し、再結晶作業を行いトリアリールスルホニウム塩白色粉末(S−2−a)を得た。S−2−aの分解温度は、180℃であった。
【0187】
(精製)
上記S−2−aを、ジオキサンに溶解して、サンプル管に密閉し、暗所で加熱温度70℃で8時間保存した。
【0188】
その後、アルミナカラムを通し、その後炭酸ナトリウム水溶液と攪拌混合した。
【0189】
次いで、有機層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水処理後、ジオキサンを減圧除去乾燥し、メタノールで再結晶作業を行い精製トリアリールスルホニウム塩粉末(光酸発生剤11)を得た。
【0190】
得られた光酸発生剤11を50%炭酸プロピレン溶液(光酸発生剤溶液11)として、インクジェットインク調製用試料とした。
【0191】
上記光酸発生剤溶液11において、精製時の加熱温度と時間を表1に記載のものとした他は、光発生剤溶液11の調製と同様にして、光酸発生剤1〜10および12〜23を調製し、光酸発生剤溶液1〜10および12〜23を調製した。
【0192】
また、上記光酸発生剤溶液11において、精製時の加熱温度を60℃から100℃まで4時間で、等間隔に温度を上昇させて加熱した他は、光発生剤溶液11の調製と同様にして、光酸発生剤24を調製し、光酸発生剤溶液24調製した。
【0193】
また、上記トリアリールスルホニウム塩白色粉末(S−2−a)を、暗所で、100℃の雰囲気下4時間加熱した。加熱後ジオキサンに溶解し、アルミナカラムを通し、その後炭酸ナトリウム水溶液と攪拌混合した。次いで、有機層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水処理後、ジオキサンを減圧除去乾燥し、メタノールで再結晶作業を行い精製トリアリールスルホニウム塩粉末(光酸発生剤25)を得た。上記と同様に、光酸発生剤溶液25を調製した。
【0194】
さらに、本発明における精製工程を経ない上記S−2−aを光酸発生剤26とし、上記と同様にして、光酸発生剤溶液26を調製した。
【0195】
<活性光線硬化型インクジェットインク1〜26の作製>
(顔料分散体の調製)
以下の方法に従って、顔料を含む顔料分散液を調製した。
【0196】
下記の2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱、撹拌して溶解した。
【0197】
(顔料分散液)
PB824(味の素ファインテクノ社製、分散剤) 5部
OXT−221(東亞合成社製、オキセタン化合物) 80部
上記溶液を室温まで冷却した後、これに顔料としてカーボンブラックMA−7(三菱化学製)15部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーで8時間を要して分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0198】
(インクジェットインクの調製)
上記調製した顔料分散液、上記光で得られた酸発生剤溶液を用い、下記に示す組成のインクジェットインク1〜27を調製した。
【0199】
得られたインクジェットインクは、ADVATEC社製のテフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。
【0200】
(インクジェットインク組成)
OXT−221:(ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、東亞合成社製) 下記各成分との合計が100質量部となる量
OXT−212:(3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、東亞合成社製) 15部
EPR:(上記例示化合物EP−17) 15部
X−22−4272(信越シリコーン社製、シリコーン系ノニオン界面活性剤)
0.1部
2−メチルアミノエタノール 0.03部
光酸発生剤溶液(表1に記載) 5部
DEA(9,10−ジエトキシアントラセン、川崎化成工業社製) 2部
顔料分散液 10部
<評価>
(保存性)
調製したインクジェットインクを密閉状態で暗所で70℃で3週間保存を行った。
【0201】
保存したインクジェットインクについて下記のようなインクジェット記録を行い、吐出安定性およびノズル面の評価を行い、保存性の指標とした。
【0202】
コニカミノルタIJ株式会社製インクジェットプリントユニットSP−L2130を用い、前記の保存した各々のインクジェットインクを用いて、1ヶ月間の連続印字運転を行った。
【0203】
記録媒体は、基材幅213mm、180m巻のロール状の白PETを使用し、記録媒体幅方向の解像度360dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、記録媒体の送り方向の解像度360dpiで、1日当たり360m分(2ロール分)の記録媒体に、印字率18%の文字画像を毎分30mの搬送速度で印字する作業を1ヶ月間継続した。
【0204】
照射光源は、高圧水銀ランプを用い、積算光量が180mJ/cmとなるような光量にて紫外線照射してインクを硬化した。
【0205】
連続運転1ヵ月後、インクジェットノズルより30分間連続して吐出させ、各インクジェットノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性、ノズル面の状態の評価を行った。
【0206】
〔吐出安定性〕
○:30分連続出射しても、ノズル欠、曲がり発生しない
△:30分連続出射でノズル欠は生じないが、曲がり僅かに発生するが実用上問題ない
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する
〔ノズル面の状態〕
○:インクの付着物が見られない
△:インクの付着物が液滴状に僅かに見られるものの、ノズル口の部分には影響していない
×:インクの付着がノズル面に多数見られ、ノズル口をふさいでいる。
【0207】
結果を表1に示す。
【0208】
【表1】

【0209】
表1から、本発明における精製工程を経た酸発生剤を用いた、インクジェットインクは保存性に優れることが分かる。
【0210】
実施例2
<トリアリールスルホニウム塩の作製>
市販品ダウ・ケミカル日本社製UVI−6992、ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェートと(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェートの8:2混合物の50%炭酸プロピレン水溶液を減圧固化して、トリアリールスルホニウム塩酸発生剤固体S−1−aを得た。
【0211】
WO2004/113396号パンフレットの実施例の製造例1の(3)に記載の方法と同様の方法にて下記構造のトリアリールスルホニウム塩光酸発生剤S−3−aを得た。
【0212】
【化20】

【0213】
次いで、上記トリアリールスルホニウム塩酸発生剤固体S−1−a、S−2−a、S−3−aをジオキサンに溶解して、サンプル管に密閉し、暗所で加熱温度100℃で4時間加熱した。
【0214】
その後、アルミナカラムを通し、その後炭酸ナトリウム水溶液と攪拌混合した。
【0215】
次いで、有機層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水処理後、ジオキサンを減圧除去乾燥し、メタノールで再結晶作業を行い精製トリアリールスルホニウム塩光酸発生剤固体S−1−b、S−2−b、S−1−bを得た。
【0216】
また、S−1−aを用い、加熱温度を100℃、4.5時間とし、トリアリールスルホニウム塩酸発生剤固体S−1−cを、加熱温度を60℃とし、加熱時間を10時間として、トリアリールスルホニウム塩酸発生剤固体S−1−dを得た。
【0217】
これらのトリアリールスルホニウム塩酸発生剤固体の酸発生量を測定した。
【0218】
結果を表2に示す。
【0219】
(インクジェットインクの調製)
S−1−a〜d、S−2−a〜b、S−3−a〜bを用い、実施例1と同様にして、酸発生剤溶液2−1〜2−8を調製し、これを用いインクジェットインク2−1〜2−8を調製した。
【0220】
(評価)
実施例1と同様にして、インクジェットインク2−1〜2−8の保存性の評価を行った。
【0221】
結果を表2に示す。
【0222】
【表2】

【0223】
表2から、本発明の光酸発生剤固体を用いたインクジェットインクは、保存性に優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0225】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤であって、該光酸発生剤が、トリアリールスルホニウム塩であり、該トリアリールスルホニウム塩は、下記の精製工程を有する製造方法により製造されたものであることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤。
[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]
【請求項2】
カチオン重合性化合物および請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
請求項2に記載の活性光線硬化型インクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項4】
カチオン重合性化合物およびトリアリールスルホニウム塩を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられるトリアリールスルホニウム塩の製造方法であって、下記の精製工程を有することを特徴とするトリアリールスルホニウム塩の製造方法。
[精製工程:トリアリールスルホニウム塩を、60℃以上、トリアリールスルホニウム塩の分解温度(℃)未満の温度範囲で、加熱処理する加熱工程および該加熱工程の後に行われるプロトン除去工程を有し、該加熱工程はトリアリールスルホニウム塩の固体を加熱した後、トリアリールスルホニウム塩の固体を該プロトン除去工程に供する工程であるか、またはトリアリールスルホニウム塩の固体を溶媒に溶解し溶液とし、該溶液を加熱した後、該溶液を該プロトン除去工程に供する工程であり、該加熱処理工程の加熱温度をt(℃)とし、加熱時間をh(hr)としたとき、K−59h≧82である工程。Kは、加熱時間hをx軸とし、加熱温度tをy軸として加熱時間−加熱温度曲線を求めx=0からx=hまで積分した値である。]
【請求項5】
重合性化合物および光酸発生剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクに用いられる活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤固体であって、該光酸発生剤固体は、トリアリールスルホニウム塩を含有し、該光酸発生剤固体の酸発生量(光酸発生剤の0.02mol/Lジオキサン溶液を20時間リフラックスしたとき、リフラックス前後の溶液中の水素イオン濃度(mol/L)の差)が、1×10−4(mol/L)以下であることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク用光酸発生剤固体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−121078(P2010−121078A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297738(P2008−297738)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】