説明

活性化特性が変更された凝固第X因子ポリペプチド

本発明は、活性化の際に第VIIIa因子/FIXaまたは第VIIa因子/TFのいずれかに対する必要性を迂回することのできる第X因子ポリペプチド、特にヒト第X因子およびその誘導体をコードする修飾型cDNA配列に関する。本発明はさらに、このような修飾型cDNA配列を含む組換え発現ベクター、このような組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞、非修飾型の野生型タンパク質の生物学的活性を有するが活性化特性が変更されている組換えポリペプチドおよび誘導体、ならびにこのような組換えタンパク質およびそれらの誘導体の製造法に関する。本発明はまた、このような修飾型DNA配列を含む、ヒト遺伝子療法において使用するためのトランスファーベクターも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化の際に第VIIIa因子/FIXaまたは第VIIa因子/TFのいずれかに対する必要性を迂回することのできる第X因子ポリペプチド、特にヒト第X因子およびその誘導体をコードする修飾型cDNA配列に関する。本発明はさらに、このような修飾型cDNA配列を含む組換え発現ベクター、このような組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞、非修飾型の野生型タンパク質の生物学的活性を有するが活性化特性が変更されている組換えポリペプチドおよび誘導体、ならびにこのような組換えタンパク質およびそれらの誘導体の製造法に関する。本発明はまた、このような修飾型DNA配列を含む、ヒト遺伝子療法において使用するためのトランスファーベクターも包含する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンK依存性タンパク質は、特定のタイプの血友病の処置に使用されている。古典的な血友病すなわち血友病Aは、遺伝性の出血障害である。血友病Aは、血液凝固第VIII因子のX染色体連鎖型欠乏に起因し、ほぼ男性のみが侵され、その発生率は10,000人に1〜2人である。X染色体の欠陥は、自身は血友病でない女性キャリアにより伝達される。血友病Aの臨床的発現は、出血傾向の亢進である。第VIII因子濃縮物による処置が実現する前の重度血友病患者の平均余命は20年未満であった。血漿由来第VIII因子濃縮物の使用およびその後の第VIII因子の組換え形態の使用は、血友病患者を取り巻く状況を大いに改善し、平均余命を大きく延ばし、大部分の患者に多少なりとも普通の生活を行う機会を与えた。血友病Aよりも有病率が5倍少ない血友病Bは、非機能的な第IX因子またはその欠失によって引き起こされ、血漿由来第IX因子濃縮物または組換え形態の第IX因子を用いて処置される。血友病Aおよび血友病Bの両方における、疾患処置の際の最も大きな医学的問題は、置換因子に対する同種抗体の生成である。全血友病A患者の最大30%が第VIII因子に対する抗体を発生させる。FIXに対する抗体は、免疫寛容誘導療法に対する感受性が低いため、規模は小さいが重篤な結果をもたらす。
【0003】
最新の凝固モデルは、生理学的な凝固誘発因子が、平時は血管外に存在し傷害が起きた場合にのみ接触可能となる組織因子(TF)発現細胞の表面上でのTFと第VIIa因子(FVIIa)の間の複合体の形成であることを示している。第VIIa因子/TF複合体は第IX因子および第X因子を活性化し、これらは最終的にいくつかのトロンビンを生成する。ポジティブフィードバックループにおいてトロンビンは第VIII因子および第IX因子を活性化し、次いでこれらはここでも第X因子、いわゆる血液凝固カスケードの「内因性」の経路を活性化し、それによって完全な止血を達成する完全なトロンビンバーストの発生に必要な第Xa因子の生成を増幅する。超生理学的な濃度のFVIIaを投与することにより、第VIIIa因子および第IXa因子に対する必要性を迂回して止血が達成されることが示されている。第VII因子のcDNAのクローニング(US 4,784,950)は、血漿由来凝固因子の組換え置換法の開発を可能にした。この第VIIa因子の、高力価のFVIIIに対する阻害抗体を有する患者に対する投与は、1988年に初めて成功した。それ以来、第VIIa因子の適用数は着実に増加しており、このことは第VIIa因子が一般的な止血剤となる可能性を示している(Erhardtsen,2002)。残念ながら、第VIIa因子はわずか2時間超の血漿半減期しか有さず、従って頻繁に再投与しなければならないため、このような治療法は侵襲的かつ非常に高価である。
【0004】
このように、改善された凝固因子、特にバイパス止血剤(haemostatic bypassing agents)である凝固因子に対する要望は現在も存在する。バイパス止血剤は、特定の凝固因子が欠失しているか、非機能的であるか、または阻害抗体によりブロックされている患者に投与された場合に、凝固を起こす物質である。このような化合物が凝固カスケードにおけるブロックを迂回する活性(バイパス止血活性)は、当該分野で公知の凝固アッセイによって測定することができる。本質的に、バイパス止血剤は、欠失した、非機能的な、またはブロックされた凝固因子が有効なトロンビン生成において必要とされないような直接的な方法で、欠失した、非機能的な、またはブロックされた凝固因子の「下流」の凝固カスケードにおいて欠失した、非機能的な、もしくはブロックされた凝固因子の基質またはその他の基質を活性化させる能力を有する。
【0005】
第X因子もまた、大規模な研究の対象となっている。
【0006】
第X因子のcDNAは特徴付けられている(Leytus et al.1984,PNAS,82:3699−3702)。凝固第X因子は、分子量58.5kDaの、ビタミンK依存的な糖タンパク質であり、チモーゲンとして肝細胞から血漿に分泌される。第X因子は始めに、合計488アミノ酸からなる、シグナルペプチドを有するプレプロペプチドとして産生される。シグナルペプチドは、小胞体に輸出される間にシグナルペプチダーゼによって切断され、プロペプチド配列は、成熟N末端鎖のN末端の最初の11グルタミン酸残基においてガンマカルボキシル化が行われた後に切断される。さらなるプロセシング工程は、Arg182とSer183の間の切断によって行われる。このプロセシング工程はまた、同時に、トリペプチドArg180−Lys181−Arg182の除去も行う。生じる分泌型第X因子チモーゲンは、Cys172とCys342の間のジスルフィド架橋を通じて共有結合的に連結された、139アミノ酸のN末端側軽鎖(Mr 16,200)および306アミノ酸のC末端側重鎖(Mr 42,000)からなる。さらなる翻訳後プロセシング工程には、Asp103のβ−ヒドロキシル化ならびにN型およびO型グリコシル化が含まれる。
【0007】
第VIIIa因子/第IXa因子または第VIIa因子/TFは両方とも、生理学的条件下で、活性化型血小板表面の第X因子を、カルボキシ末端側からArg234を切断しそれによってSer183〜Arg234の52アミノ酸のいわゆるアクチベーションペプチドを遊離させることによって活性化することができる。
【0008】
活性化型第X因子(第Xa因子)は、自己触媒的切断において、その重鎖のカルボキシ末端側のC末端における小フラグメントからArg464を切断し、第Xaβ因子を生じる。しかし、その両方の形態の第Xa因子は同等の触媒活性を有するため、この切断の生理学的関係は不明確である。
【0009】
第X因子を修飾する試みがいくつかなされている:
Wolf et al.1991(JBC,266,no.21,pp.13726−13730)は、第X因子のアクチベーションペプチドを除去してそれをジペプチドArg−Lysで置換することで、第X因子のアクチベーションペプチドの領域内に二つの新規のフューリン切断コンセンサス部位を導入した。このような第X因子変異体は、細胞内プロセシングの間にすでに活性化されるため、活性化型第X因子を分泌することになる。
【0010】
Wolf et al.1995(Blood,86,pp4153−4157)は、血漿中に注入した後にゆっくりと脱アシル化され経時的に活性化型第X因子を生成する、第Xa因子のアシル化不活性型変異体を作製した。
【0011】
Rudolph et al.1997(Prot.Express and Puri.,10:373−378)は、プロペプチド切断部位の領域において第X因子を修飾し、Thr39のArg置換が細胞培養物中でのプロペプチドプロセシングの効果を大きく改善することを見出した。
【0012】
Camire et al. 2000(Biochemistry,39 pp.14322−14329)は、第X因子のプレプロペプチドをトロンビンのそれで置換することによって、細胞培養においてより高い割合のガンマカルボキシル化を達成した。しかし、ガンマカルボキシル化の割合は増加したが、第X因子10〜30%は非カルボキシル化状態のままであった。
【0013】
Rudolph et al.,2002(Thromb Haemost.,88:756−62)は、アクチベーションペプチドが除去された第X因子変異体を作製した。このような第X因子変異体は補因子非依存的な様式で自己活性化することが見出され、この論文はアクチベーションペプチドの主たる機能がFXの誤った活性化を防止することであると結論付けている。
【0014】
Thiec et al.2003(JBC,12,pp10393−10399)は、第X因子のGlaドメインおよび最初のEGFドメインをFIXの対応するドメインで置換し、このようなキメラ体がTF/FVIIa複合体と生産的に相互作用する能力を調査した。
【0015】
WO 98/38317(優先日:1997年2月27日)は、Gly228とIle235の間の天然の活性化切断部位を修飾し、自然界では第X因子を活性化しないプロテアーゼがこのような第X因子アナログを切断および活性化できるようにした第X因子アナログをクレームしている。
【0016】
WO 98/38318(優先日:1997年2月27日)は、アミノ酸Arg180〜Arg234が除去され、Gly173〜Arg179までのアミノ酸が変更された第X因子アナログにより、自然界ではFXを活性化しないプロテアーゼがこの修飾配列を切断し、前記の第X因子アナログを活性化することができるようになったことを教示している。
【0017】
WO 01/10896(優先日:1999年8月10日)は、Glu226〜Ile235の間のアミノ酸のうちの少なくとも一つが置換された第X因子アナログを記載する。その実施例において、その第X因子変異体をFXIにより切断可能にするFIX由来の活性化切断部位の導入が示されている。
【0018】
WO 03/035861(優先日:2001年10月19日)は、そのアクチベーションペプチドを除去しフィブリノペプチドAのアミノ酸P10〜P1で置換することで、この第X因子変異体をトロンビンにより活性化可能にするキメラトロンビン切断部位が作製された、第X因子の変異体をクレームしている。
【0019】
WO 2004/005347(優先日:2002年7月3日)は、野生型第X因子においては Leu−Thr−Arg−Ile−Val−Glyである残基P3−P2−P1−P1'−P2'−P3'をX−Pro−Arg−Ala−Y−Zに変更することによって、トロンビンにより活性化することができるようになった第X因子の変異体を教示している。
【0020】
Volkel et al(2005),Mol.Biotechnol.,29(1):19−30は、FXアクチベーションペプチドに新規のプロテアーゼ切断部位を導入することで、前立腺特異的抗原が当該FX変異体を特異的に活性化できるようになることを教示している。
【0021】
数名の著者は、活性化型第X因子(FXa)をバイパス止血剤として使用する可能性を示唆しているが(Ni et al.,1992(Thromb.Haemost.67:264−271;Himmelspach et al.,2002(Thromb.Haemost.88:1003−1011))、そのような製剤が血栓形成性であるかおよび播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起このではないかといういくつかの懸念を残している。
【0022】
非活性化型チモーゲン第X因子の治療的使用は、ずっと安全なアプローチのようである。米国特許第4,501,731号(優先日1983年6月27日)は、第X因子をそのままバイパス止血剤として使用することを示唆している。WO 03/006054(優先日:2001年7月10日)においてはさらに、薬学的組成物中の第X因子が、FVIIaと組み合わせることで、FVIIaの止血能を相乗作用的に増強することができることを示している。
【0023】
しかし、内因性凝固経路を通じた第X因子の活性化の効果は、(組織因子の利用性の制限によって)外因性凝固経路が凝固の初期フェーズに限定されている阻害性患者(inhibitor patients)において大きく損なわれるので、凝固が必要とされる状況下での活性化ならびに利用性および/または活性が制限された補因子の必要性の迂回を手助けする様式で第X因子を修飾することが有益である。変異型第X因子チモーゲンは、活性化前の段階で作製および投与できるが、凝固活性(例えばトロンビン生成)が必要とされる場合に内因性および外因性凝固経路の天然の活性化因子を要せずに高い効率で活性化が起きるよう、安定でなければならない。
【0024】
数名の著者は、自然界ではFXを切断および活性化しないプロテアーゼによって活性化することができる第X因子アナログを作製することを試みていることが記載されている。この第X因子アナログは、アクチベーションペプチドの除去またはArg234における切断部位より前のアクチベーションペプチドの配列の修飾のいずれかを有する。しかし、これらの第X因子アナログは、不十分なバイパス止血活性しか示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明において取り組む一つの問題は、バイパス止血剤を同定することである。特に、第VIII因子阻止因子の力価が高い患者の処置に使用することができるバイパス止血剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明においては、驚くべきことに、(i)野生型第X因子のアクチベーションペプチド内に存在しないプロテアーゼ切断部位が形成されるよう、第X因子のアクチベーションペプチドを修飾し、(ii)アクチベーションペプチドおよび/または軽鎖のC末端領域のアミノ酸数を減らすことにより、増強されたバイパス止血活性を有する生物学的に活性な第X因子変異体(図1)が獲得できることが見出された。
【0027】
本発明においてアクチベーションペプチドは、第X因子内の、プロテアーゼ切断部位を含むArg179〜Arg234のペプチドまたはポリペプチドを意味し、このプロテアーゼ切断部位がプロテアーゼによって切断されると、第X因子が活性化された第Xa因子となる。
【0028】
本発明の一つの局面は、アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内には存在しないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、かつArg179〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数が野生型第X因子と比較して1〜52アミノ酸減少している、第X因子変異体である。
【0029】
本発明の別の局面は、アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内には存在しないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、かつ修飾型アクチベーションペプチドは野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短い、第X因子変異体である。本発明の別の局面は、アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のSer183〜Arg234のアミノ酸配列内には存在しないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、かつ修飾型アクチベーションペプチドは野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短い、第X因子変異体である。
【0030】
本発明はさらに、アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のSer183〜Arg234のアミノ酸配列内には存在せずかつフューリンプロセシング部位ではないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、修飾型アクチベーションペプチドが野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短い、第X因子変異体に関する。
【0031】
野生型第X因子をコードするcDNA配列および野生型第X因子のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に示される。本願において使用される場合、第X因子配列内におけるアミノ酸番号は、配列番号2に示される野生型配列のアミノ酸番号を意味する。
【0032】
本発明に従う第X因子変異体は、新規に導入されたプロテアーゼプロセシング部位がこのプロテアーゼプロセシング部位を切断することができるプロテアーゼにより切断されることで活性化される。通常、本発明の第X因子変異体は、細胞内プロテアーゼ、例えばフューリンによって活性化できない。従って、本発明の第X因子変異体は、通常、Wolf et al.1991(JBC,266,no.21,pp.13726−13730)により記載された変異体とは逆で、宿主細胞で発現させた際にプロセシングを受けて第Xa因子とならない。通常、本発明の第X因子変異体は、非活性化形態で患者に投与され、第Xa因子への活性化は、患者体内への投与後にのみ起きる。
【0033】
本発明の変異体は、それらのアクチベーションペプチド配列および/または軽鎖のC末端領域におけるアミノ酸数が、野生型第X因子のアミノ酸配列と比較して削減される。この変異体はArg179〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数の削減、またはArg180〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数の削減、またはLys181〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数の削減、またはArg182〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数の削減が行われ得;このアミノ酸数の削減は野生型第X因子のアミノ酸配列に対するものである。
【0034】
好ましくは、本発明の変異体は、それらのアクチベーションペプチド配列におけるアミノ酸数が野生型第X因子のアミノ酸配列と比較して削減される。例えば、変異体は、野生型第X因子のアミノ酸配列と比較して、Arg182〜Ile235に対応するアミノ酸残基間のアミノ酸数が削減され得る。
【0035】
上記のアミノ酸数は、野生型第X因子と比較して、1〜52アミノ酸、好ましくは5〜49アミノ酸、より好ましくは10〜48アミノ酸、より好ましくは20〜47アミノ酸、さらにより好ましくは30〜47アミノ酸、最も好ましくは38〜47アミノ酸(例えば、39、40、41、42、43、44、45、または46アミノ酸)削減される。
【0036】
アミノ酸数の削減は、第X因子配列のアクチベーションペプチドおよび/または軽鎖からの一つまたはそれ以上のアミノ酸の除去によるものであり得る。野生型第X因子のアミノ酸配列に対する置換および挿入を含むがこれらに限定されない追加の変異も行われ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「プロテアーゼプロセシング部位」は、プロテアーゼにより認識および切断可能なアミノ酸配列を意味する。最終的にプロテアーゼにより切断される化学結合は、プロセシング部位内部またはプロセシング部位のC末端側に存在し得る。例えば、プロセシング部位がTQSFNDFTR(配列番号3)である場合、実際の切断は、この配列のアルギニンのC末端側で行われ得る。好ましくは、新規のプロセシング部位は、修飾型アクチベーションペプチドのC末端領域、例えば野生型第X因子の活性化プロセシング部位が存在する領域に存在する。
【0038】
プロテアーゼによるプロテアーゼプロセシング部位の切断は、第X因子変異体を活性化する。
【0039】
本発明の別の局面において、第X因子変異体内の天然の第X因子アクチベーションペプチドは、自然界では第X因子を活性化するプロテアーゼがこの第X因子変異体を切断および活性化できないように修飾される。これは、第X因子のアクチベーションペプチド配列に変異を導入することによって達成され得る。変異には、挿入、欠失、および置換が含まれる。自然界では第X因子を活性化するプロテアーゼがこの第X因子変異体を切断および活性化できず、新規のプロテアーゼプロセシング部位を通じてのみ活性化が行われるようにするアクチベーションペプチド配列における欠失および/または置換が好ましい。最も好ましくは、野生型第X因子のアクチベーションペプチドに存在するプロテアーゼプロセシング部位は、自然界では野生型第X因子を切断および活性化しないプロテアーゼに対するプロテアーゼプロセシング部位で置換される。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によれば、修飾型第X因子変異体のアクチベーションペプチド内の新規のプロテアーゼプロセシング部位は、セリンプロテアーゼによって切断できるものである。より好ましくは、セリンプロテアーゼは、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子、活性化型プロテインC、エラスターゼ、またはカリクレインからなる群より選択される。
【0041】
一つの実施態様において、本発明の第X因子変異体における修飾型アクチベーションペプチドは、次式:
−R1−P−R2
[式中、Pは切断プロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列、すなわち切断プロテアーゼによって認識および切断することができる、「プロセシング部位」とも称されるアミノ酸配列を意味し、
1は、化学結合または一つもしくはそれ以上のアミノ酸(例えば1〜48アミノ酸)を意味し、
2は、化学結合または一つもしくはそれ以上のアミノ酸(例えば1〜5アミノ酸)を意味する]
により表される。
【0042】
本発明に従う第X因子変異体における修飾型アクチベーションペプチドは、好ましくは、野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短い。従って、−R1−P−R2−の最大の長さは通常51アミノ酸である。−R1−P−R2−の全体の長さは、好ましくは、3〜40アミノ酸、より好ましくは4〜40アミノ酸、さらにより好ましくは5〜30アミノ酸、さらにより好ましくは6〜20アミノ酸、最も好ましくは7〜15アミノ酸、例えば7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸の範囲である。
【0043】
1は、最大48アミノ酸の長さを有し得る。しかし、好ましくは、R1は、化学結合または1〜20、好ましくは1〜10アミノ酸(例えば1、2、または3アミノ酸)からなる。R1は、野生型第X因子のアクチベーションペプチドの部分配列であり得る。52アミノ酸からなる野生型第X因子のアクチベーションペプチドのアミノ酸配列は、配列番号4に示される。例えば、R1は、配列番号4のアミノ酸1〜45のN末端側またはその内部フラグメントを含むかまたはこれらからなり得る。R1の例には、以下の配列が含まれるがこれらに限定されない:
配列番号4のアミノ酸1(すなわちアミノ酸番号1=Ser);
配列番号4のアミノ酸1〜2(すなわちSer−Val);
配列番号4のアミノ酸1〜3(すなわちSer−Val−Ala);
配列番号4のアミノ酸1〜4;配列番号4のアミノ酸1〜5;
配列番号4のアミノ酸1〜6;配列番号4のアミノ酸1〜7;
配列番号4のアミノ酸1〜8;配列番号4のアミノ酸1〜9;
配列番号4のアミノ酸1〜10;配列番号4のアミノ酸1〜11;
配列番号4のアミノ酸1〜12;配列番号4のアミノ酸1〜13;
配列番号4のアミノ酸1〜14;配列番号4のアミノ酸1〜15;
配列番号4のアミノ酸1〜16;配列番号4のアミノ酸1〜17;
配列番号4のアミノ酸1〜18;配列番号4のアミノ酸1〜19;
配列番号4のアミノ酸1〜20;配列番号4のアミノ酸1〜21;
配列番号4のアミノ酸1〜22;配列番号4のアミノ酸1〜23;
配列番号4のアミノ酸1〜24;配列番号4のアミノ酸1〜25;
配列番号4のアミノ酸1〜26;配列番号4のアミノ酸1〜27;
配列番号4のアミノ酸1〜28;配列番号4のアミノ酸1〜29;
配列番号4のアミノ酸1〜30;配列番号4のアミノ酸1〜31;
配列番号4のアミノ酸1〜32;配列番号4のアミノ酸1〜33;
配列番号4のアミノ酸1〜34;配列番号4のアミノ酸1〜35;
配列番号4のアミノ酸1〜36;配列番号4のアミノ酸1〜37;
配列番号4のアミノ酸1〜38;配列番号4のアミノ酸1〜39;
配列番号4のアミノ酸1〜40;配列番号4のアミノ酸1〜41;
配列番号4のアミノ酸1〜42;配列番号4のアミノ酸1〜43;
配列番号4のアミノ酸1〜44;および配列番号4のアミノ酸1〜45。
【0044】
2が化学結合または1もしくは2アミノ酸からなることがさらに好ましい。最も好ましくは、R2は化学結合である。
【0045】
一般的に、新規に導入されたプロテアーゼ切断部位が切断される際に切断される化学結合のC末端側のアミノ酸は、好ましくはイソロイシンまたはバリンである。このアミノ酸は、好ましくは後ろにバリンが続くものである。他の好ましい、新規に導入されたプロテアーゼ切断部位が切断される際に切断される化学結合のC末端側のアミノ酸は、アラニン、セリン、またはスレオニンである。
【0046】
2が化学結合の場合、新規に導入されたプロテアーゼ切断部位が切断される際に切断される化学結合のC末端側のアミノ酸は、第X因子変異体の重鎖のN末端アミノ酸であり、これはIle235に対応する。このアミノ酸は、Ile、Val、Ala、Ser、またはThrであり得る。好ましくは、Ile235に対応するアミノ酸はIleまたはValである。Val236に対応するアミノ酸は好ましくはValである。
【0047】
別の実施態様において、R2はIle、Val、Ala、Ser、Thr、Ile−Val、またはVal−Valであり得る。
【0048】
Pは、少なくとも3アミノ酸、好ましくは30アミノ酸を超えない長さを有する。好ましくは、Pは、4〜15アミノ酸、より好ましくは4〜10アミノ酸の長さを有する。プロテアーゼによる切断は、通常、PのC末端側で起こる。Pは、切断プロテアーゼにより切断されるタンパク質の部分アミノ酸配列であり得る。あるいは、Pは、切断プロテアーゼによって切断可能な非天然または人工のアミノ酸配列であり得る。
【0049】
適当なプロテアーゼによって切断されかつ適当なプロテアーゼプロセシング部位を含むタンパク質には、第VII因子、第IX因子、抗トロンビンIII、第II因子、第VIII因子、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン等の凝固因子およびセルピン、ならびに当業者に公知のそれらのアミノ酸配列が含まれる(下記参照)。従って、Pは、これらのタンパク質のいずれか一つの、プロテアーゼプロセシング部位を含む部分配列またはフラグメントであり得る。切断プロテアーゼによって切断可能である限り、これらのプロセシング部位のバリエーションも本発明に包含される。このバリエーションは、アミノ酸置換、欠失、挿入、およびそれらの組み合わせを含む。
【0050】
セリンプロテアーゼにより認識および切断することができるアミノ酸配列を含む適当なアミノ酸配列Pは、次項(i)〜(iv)に示される:
(i) FVIIに由来し例えば第Xa因子により切断することができるアミノ酸配列は、アミノ酸配列LEKRNASKPQGR(配列番号5)である。FVIIに由来し例えば第Xa因子により切断することができるアミノ酸配列のさらなる例は、
配列番号5のアミノ酸2〜12;
配列番号5のアミノ酸3〜12;
配列番号5のアミノ酸4〜12;
配列番号5のアミノ酸5〜12;
配列番号5のアミノ酸6〜12;
配列番号5のアミノ酸7〜12;または
配列番号5のアミノ酸8〜12;
からなるアミノ酸配列である。
(ii) FIXに由来し例えばFXIaにより切断することができるアミノ酸配列は、アミノ酸配列AETVFPDVDYVNSTEAETILDNITQSTQSFNDFTR(配列番号6)である。FVIIに由来し例えばFXIaにより切断することができるアミノ酸配列のさらなる例は、
配列番号6のアミノ酸2〜35;配列番号6のアミノ酸3〜35;
配列番号6のアミノ酸4〜35;配列番号6のアミノ酸5〜35;
配列番号6のアミノ酸6〜35;配列番号6のアミノ酸7〜35;
配列番号6のアミノ酸8〜35;配列番号6のアミノ酸9〜35;
配列番号6のアミノ酸10〜35;配列番号6のアミノ酸11〜35;
配列番号6のアミノ酸12〜35;配列番号6のアミノ酸13〜35;
配列番号6のアミノ酸14〜35;配列番号6のアミノ酸15〜35;
配列番号6のアミノ酸16〜35;配列番号6のアミノ酸17〜35;
配列番号6のアミノ酸18〜35;配列番号6のアミノ酸19〜35;
配列番号6のアミノ酸20〜35;配列番号6のアミノ酸21〜35;
配列番号6のアミノ酸22〜35;配列番号6のアミノ酸23〜35;
配列番号6のアミノ酸24〜35;配列番号6のアミノ酸25〜35;
配列番号6のアミノ酸26〜35;配列番号6のアミノ酸27〜35;
配列番号6のアミノ酸28〜35;配列番号6のアミノ酸29〜35;
配列番号6のアミノ酸30〜35;または配列番号6のアミノ酸31〜35;
からなるアミノ酸配列である。
(iii) 抗トロンビンIIIに由来し例えば第IIa因子により切断することができるアミノ酸配列は、アミノ酸配列GSEAAASTAVVIAGRS(配列番号7)である。抗トロンビンIIIに由来し例えば第IIa因子により切断することができるアミノ酸配列のさらなる例は、抗トロンビンIIIを切断することができるプロテアーゼにより切断可能な配列番号7のフラグメントである。
(iv) さらなるプロテアーゼ切断部位の非限定的な例は、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、活性化型プロテインC、エラスターゼ、またはカリクレインにより切断することができるアミノ酸配列である。これらのセリンプロテアーゼにより認識および切断されるアミノ酸配列は、当業者に公知である(例えば“Hemostasis and Thrombosis,Basic Principles and Clinical Practice”,Fourth Edition,Colman et al.2001に記載されている。第IIa因子:p34−35、p176、第IXa因子:p40−41、第Xa因子:p34−35、第XIa因子 p128−129、第XIIa因子:p194、aPC:p34−35、p159、カリクレイン:p103−104、またはエラスターゼ(O'Reilly et al.,1999;Antiangiogenic activity of the cleaved conformation of the serpin antithrombin:Science,285,1926−1928))。これらのアミノ酸配列は、参照により本明細書に援用される。
【0051】
プロテアーゼ切断部位のフラグメントもまた、そのような断片化したプロテアーゼ切断部位を含むFX変異体が依然として切断に対して感受性でありかつそのFX変異体が依然として生物学的活性を有する限り、本発明に包含される。
【0052】
構造−R1−P−R2−内のプロセシング部位Pが配列番号5、配列番号6、配列番号7、ならびに上記(i)、(ii)、(iii)、および(iv)項に記載されるそれらの切断可能なフラグメントからなる群より選択されるアミノ酸配列からなることが好ましい。
【0053】
第X因子配列の天然型の軽鎖のC末端の一つまたはそれ以上のアミノ酸が除去去れ得ることも見出された。従って、本発明の第X因子変異体は、修飾型アクチベーションペプチドR1−P−R2に隣接する次の構造:
LC−R1−P−R2−HC1−HC2−
[式中、R1、PおよびR2の意味は上記の通りであり、
LCは第X因子配列の軽鎖のC末端アミノ酸を意味し、
HC1は第X因子配列の重鎖のN末端アミノ酸を意味し、HC2は第X因子配列の重鎖の二番目のアミノ酸を意味する]
を含み得る。HC1は野生型配列におけるIle235に対応する。HC1は、Ile、Val、Ala、Ser、またはThrであり得る。好ましくは、HC1はIleまたはValである。HC2は野生型配列におけるVal236に対応する。HC2はIle、Val、Ala、Ser、またはThrであり得る。好ましくは、HC2はIleまたはValであり;より好ましくは、HC2はValである。
【0054】
LCは、Arg179〜Arg182のアミノ酸残基のいずれか一つまたはそれ以上であり得る。LCは、好ましくは、Arg182、Lys181、Arg180、およびArg179からなる群より選択される。
【0055】
より具体的には、本発明の第X因子変異体は、次の構造:
−Arg182−R1−P−R2−HC1−HC2−;好ましくは−Lys181−Arg182−R1−P−R2−HC1−HC2−;より好ましくはArg180−Lys181−Arg182−R1−P−R2−HC1−HC2−
[式中、R1、PおよびR2、HC1およびHC2の意味は上記の通りである]
を含み得る。
【0056】
別の実施態様において、Arg182に対応するアミノ酸もまた除去される。従って、本発明の第X因子変異体は、次の構造:
−Lys181−R1−P−R2−HC1−HC2−;好ましくはArg180−Lys181−R1−P−R2−HC1−HC2−
[式中、R1、PおよびR2、HC1およびHC2の意味は上記の通りである]
を含み得る。
【0057】
さらに別の実施態様において、Lys181およびArg182に対応するアミノ酸もまた除去される。従って、本発明の第X因子変異体は、次の構造:
Arg180−R1−P−R2−HC1−HC2−
[式中、R1、PおよびR2、HC1およびHC2の意味は上記の通りである]
を含み得る。
【0058】
さらに別の実施態様において、Arg180、Lys181、およびArg182に対応するアミノ酸もまた除去される。従って、本発明の第X因子変異体は、次の構造:
Arg179−R1−P−R2−HC1−HC2−
[式中、R1、PおよびR2、HC1およびHC2の意味は上記の通りである]
を含み得る。
【0059】
特定の局面において、LC1は、Pが第IX因子アミノ酸配列由来の少なくとも7連続アミノ酸を含む第IX因子の部分アミノ酸配列である場合、Pro171〜Arg182のアミノ酸残基(配列番号2を参照のこと)のいずれか一つであり得る。本発明のこの局面によれば、Pは、
配列番号6のアミノ酸1〜35、配列番号6のアミノ酸2〜35、
配列番号6のアミノ酸3〜35、配列番号6のアミノ酸4〜35、
配列番号6のアミノ酸5〜35、配列番号6のアミノ酸6〜35、
配列番号6のアミノ酸7〜35、配列番号6のアミノ酸8〜35、
配列番号6のアミノ酸9〜35、配列番号6のアミノ酸10〜35、
配列番号6のアミノ酸11〜35、配列番号6のアミノ酸12〜35、
配列番号6のアミノ酸13〜35、配列番号6のアミノ酸14〜35、
配列番号6のアミノ酸15〜35、配列番号6のアミノ酸16〜35、
配列番号6のアミノ酸17〜35、配列番号6のアミノ酸18〜35、
配列番号6のアミノ酸19〜35、配列番号6のアミノ酸20〜35、
配列番号6のアミノ酸21〜35、配列番号6のアミノ酸22〜35、
配列番号6のアミノ酸23〜35、配列番号6のアミノ酸24〜35、
配列番号6のアミノ酸25〜35、配列番号6のアミノ酸26〜35、
配列番号6のアミノ酸27〜35、配列番号6のアミノ酸28〜35、および
配列番号6のアミノ酸29〜35からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。好ましくは、Pは配列番号3からなる。
【0060】
別の実施態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸Ser183〜Arg234が−R1−P−R2−[式中、R1、P、およびR2の意味は上記の通りである]で置換された第X因子アミノ酸配列を含む第X因子変異体に関する。本発明はさらに、配列番号2のアミノ酸Arg182〜Arg234が−R1−P−R2−[式中、R1、P、およびR2の意味は上記の通りである]で置換された第X因子アミノ酸配列を含む第X因子変異体に関する。別の実施態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸Lys181〜Arg234が−R1−P−R2−[式中、R1、P、およびR2の意味は上記の通りである]で置換された第X因子アミノ酸配列を含む第X因子変異体に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸Arg180〜Arg234が−R1−P−R2−[式中、R1、P、およびR2の意味は上記の通りである]で置換された第X因子アミノ酸配列を含む第X因子変異体に関する。
【0061】
好ましい局面において、本発明の第X因子変異体は、配列番号2のアミノ酸Ser183〜Arg234が、配列番号5〜7のアミノ酸配列のいずれか一つまたは本明細書中上記の(i)、(ii)、もしくは(iii)項のいずれか一つに記載されるそれらのフラグメントで置換された第X因子アミノ酸配列を含む。配列番号2のアミノ酸Ser183〜Arg234が、配列番号3に示されるアミノ酸配列で置換された第X因子アミノ酸配列を含む第X因子変異体が最も好ましい。最も好ましい第X因子変異体の完全アミノ酸配列は、配列番号8および配列番号9に示される。
【0062】
本明細書中上記の新規のプロテアーゼプロセシング部位が第X因子分子の重鎖に導入された実施態様もまた本発明に包含される。重鎖に導入されたプロテアーゼプロセシング部位は、修飾型アクチベーションペプチドに存在するプロテアーゼプロセシング部位に加えて追加のプロセシング部位である場合も、修飾型アクチベーションペプチドのプロテアーゼプロセシング部位の代わりに存在する場合もある。重鎖への挿入は、好ましくは、Ile235または対応する残基(例えばVal)のC末端側になされる。第X因子の重鎖への挿入は、2005年6月1日に出願された欧州特許出願05011773.8に詳細に記載されており、その開示内容を参照により本明細書に援用する。当該出願に記載される実施態様は、本願に記載される実施態様と組み合わせることができる。
【0063】
例えば、本発明は、式
−LC−R1−HC1−R1−P−R2−HC2−
[式中、LC、R1、P、R2、HC1、およびHC2の意味は上記の通りである]
により特徴付けられる第X因子変異体を包含する。この例において、R2は、好ましくは、Ile、Val、Ala、Ser、およびThrのうちの一つであり、最も好ましくは、R2はIleまたはValである。
【0064】
このような実施態様の別の例は、式
−LC−R1−HC1−HC2−R1−P−R2−HC3−
[式中、LC、R1、P、R2、HC1、およびHC2の意味は上記の通りであり、HC3は第X因子の重鎖の三番目のアミノ酸を意味する]
の変異体である。この実施態様において、R2は、好ましくは、Ile−ValまたはVal−Valである。
【0065】
本発明の第X因子変異体は、第X因子配列内の他の位置にさらなる修飾を有し得る。従って、第X因子のアクチベーションペプチド内の修飾および部分欠失は、配列番号2に示される野生型配列のアミノ酸配列に対するいくつかの修飾のうちの一つであり得る。39位のスレオニンがアルギニンで置換されることが好ましい。
【0066】
一つの具体的な実施態様において、本発明の第X因子変異体は、Gly173〜Arg179の間の第X因子アミノ酸配列内に修飾を有さない。別の実施態様において、本発明の第X因子変異体は、Gly173〜Arg179の間の第X因子アミノ酸配列内に修飾を有するが、このGly173〜Arg179の間の第X因子アミノ酸配列内の修飾は、自然界では配列番号2のGly173〜Arg179の間を切断しないプロテアーゼに対するプロセシング部位をもたらすものではない。Gly173〜Arg179の間の第X因子アミノ酸配列内の修飾は、一つまたはそれ以上の(例えば1、2、または3個の)アミノ酸の欠失、置換、および/または挿入であり得る。
【0067】
他の具体的な実施態様において、野生型第X因子配列のアクチベーションペプチド(すなわちアミノ酸Ser183〜Arg234)は配列RKRで置換されていないか;上記の構造−R1−P−R2−はRKRではないか;または第X因子変異体は配列−Arg182−Arg−Lys−Arg−[Ile235]−を有さない。
【0068】
別の実施態様において、野生型第X因子のSer183〜Arg234のアミノ酸配列内に存在しないプロテアーゼプロセシング部位は、RKRRKではない。
【0069】
本発明の第X因子変異体は、生物学的活性を有する。本明細書中で使用される場合、用語「生物学的活性」は、第X因子活性を意味する。第X因子活性を有するタンパク質は、そのチモーゲン形態のタンパク質がプロテアーゼによる切断を通じて活性化され得、かつその活性化形態において第Xa因子活性を有することを意味する。第X因子活性は、インビトロ凝固アッセイにおいて決定することができる。例えば、第X因子活性は、実施例4に記載されるような、外因性凝固経路の活性を測定するプロトロンビン時間(PT)アッセイにおいて決定することができる。サンプル中の凝固活性で表現される第X因子活性は、mU/mlまたはU/mlで示される。
【0070】
このようにして決定された第X因子活性は、サンプル中に存在する第X因子抗原の量を意味し、従って、その変異体の「比活性」が算出され得、これは典型的にはU/mgタンパク質またはmU/μgタンパク質で表現される。本発明の変異体の比活性は、好ましくは、配列番号2に示される野生型配列を有する組換え第X因子分子の第X因子活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%である。
【0071】
本発明の第X因子変異体はさらに、バイパス止血活性を有する。この活性は、実施例4に記載されるように、FVIIIまたはFIX欠乏血漿を用いて凝固活性(aPPT)を測定することによって決定することができる。このようなアッセイにおける凝固活性は、野生型配列を有する組換え第X因子のそれよりも、好ましくは70倍超、より好ましくは100倍超、最も好ましくは500倍超高い。FVIII欠乏血漿を用いた凝固活性は、野生型配列を有する組換え第X因子のそれよりも、好ましくは200倍超、より好ましくは300倍超、より好ましくは500倍超、最も好ましくは1000倍超さらには1500超高い。FIX欠乏血漿を用いた凝固活性は、野生型配列を有する組換え第X因子のそれよりも、好ましくは100倍超、より好ましくは200倍超、最も好ましくは500倍超または1000倍超高い。
【0072】
第X因子変異体は、第VIII因子阻止因子の存在下で改善されたバイパス活性を有する。この活性は、後述の実施例4に記載されるようにして決定することができる。本発明の第X因子変異体の、(例えば実施例4に従い決定される)FVIII阻止因子含有血漿中での凝固時間は、同じ第X因子活性になるよう調整した場合、野生型配列を有する組換え第X因子の凝固時間と比較して少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%減少する。
【0073】
本発明に従う好ましい第X因子変異体は、先行技術に記載される第X因子変異体と比較してバイパス止血活性が増強された第X因子変異体である。例えば、本発明に従う第X因子変異体は、通常、配列番号2のアミノ酸番号で、配列Glu226−Gln227−Ser228−Phe229−Asn230−Asp231−Phe232−Thr233−Arg234(EQSFNDFTR=配列番号10)を含む対照第X因子変異体(対照変異体のアクチベーションペプチドの長さは52アミノ酸である、すなわちアクチベーションペプチド全体にわたって部分欠失は存在しない)と比較して、バイパス止血活性が有意に増強されている。FVIIIまたはFIX欠乏血漿中でのバイパス止血活性は、対照変異体と比較して、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍増加する。本発明の第X因子変異体の、(例えば実施例4に従い決定される)FVIII阻止因子含有血漿中での凝固時間は、同じ第X因子活性になるよう調整した場合、対照変異体の凝固時間と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%減少する。
【0074】
別の実施態様において、本発明に従う第X因子変異体は、配列番号2のアミノ酸226〜234が配列番号3に示されるアミノ酸配列で置換されており、対照第X因子変異体のアクチベーションペプチドの長さが52アミノ酸である第X因子アミノ酸配列を含むその対照第X因子変異体と比較してバイパス止血活性が有意に増強されている。この対照変異体は、実施例に記載される「535」構築物に対応する。FVIIIまたはFIX欠乏血漿中でのバイパス止血活性は、対照変異体と比較して、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍増加する。本発明の第X因子変異体の、(例えば実施例4に従い決定される)FVIII阻止因子含有血漿中での凝固時間は、同じ第X因子活性になるよう調整した場合、対照変異体の凝固時間と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%減少する。
【0075】
本発明の別の局面は、修飾型アクチベーションペプチドが野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内に存在しないプロテアーゼプロセシング部位を有するよう第X因子配列のアクチベーションペプチドを修飾し、野生型第X因子と比較してArg179に対応する残基〜Ile235の間のアミノ酸数を1〜52アミノ酸削減することを含む、バイパス止血剤の製造方法である。
【0076】
本発明の別の局面は、修飾型アクチベーションペプチドが野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内に存在しないプロテアーゼプロセシング部位を有するよう第X因子配列のアクチベーションペプチドを修飾し、修飾型アクチベーションペプチドが野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短くなるようアクチベーションペプチドを部分除去することを含む、バイパス止血剤の製造方法である。
【0077】
好ましくは、新規の切断部位は、修飾型アクチベーションペプチドのC末端領域に存在する。本発明の方法の好ましい実施態様は、本明細書中に記載された第X因子変異体の好ましい実施態様に対応する。
【0078】
本発明はさらに、本願に記載される修飾型ヒト第X因子をコードするポリヌクレオチドに関する。用語「ポリヌクレオチド」は、概ね、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを意味し、これらは非修飾型のRNAもしくはDNAまたは修飾型のRNAもしくはDNAであり得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖のDNA、または一本鎖もしくは二本鎖のRNAであり得る。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」はまた、一つまたはそれ以上の修飾型塩基および/または非一般的塩基、例えばイノシンを含むDNAまたはRNAを含む。当業者に公知の多くの有用な目的を果たす様々な修飾がDNAおよびRNAに対してなされ得ることが理解されるであろう。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、そのようなポリヌクレオチドの化学的、酵素的、または代謝的な修飾形態、ならびにウイルスならびに例えば単純細胞および複雑細胞を含む細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
【0079】
当業者は、遺伝子暗号の縮重性から、あるポリペプチドが異なるポリヌクレオチドによってコードされ得ることを理解しているであろう。これらの「変異体」は本発明に包含される。
【0080】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。用語「単離された」ポリヌクレオチドは、他の核酸配列、例えば(しかしこれらに限定されない)、他の染色体および染色体外DNAおよびRNAを実質的に含まないポリヌクレオチドを意味する。単離されたポリヌクレオチドは、宿主細胞から精製され得る。当業者に公知の従来的な核酸精製法が、単離されたポリヌクレオチドを獲得するのに使用され得る。この用語はまた、組換えポリヌクレオチドおよび化学合成ポリヌクレオチドを含む。
【0081】
本発明のさらに別の局面は、本発明に従うポリヌクレオチドを含むプラスミドまたはベクターである。好ましくは、プラスミドまたはベクターは発現ベクターである。特定の実施態様において、ベクターは、ヒト遺伝子療法において使用するためのトランスファーベクターである。
【0082】
本発明のさらに別の局面は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のプラスミドもしくはベクターを含む宿主細胞である。
【0083】
本発明の宿主細胞は、ヒト第X因子の変異体の製造法において利用され得、これも本発明の一部である。この方法は、
a)本発明の宿主細胞を、第X因子変異体が発現する条件下で培養し、
b)場合により、宿主細胞または培養培地からヒト第X因子の変異体を回収する
ことを含む。
【0084】
グリコシル化またはその他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞および宿主細胞環境の性質に依存して変化し得る。特定のアミノ酸配列に言及する場合、そのような配列の翻訳後修飾物も本願に含まれる。
【0085】
本願において使用される場合、「第X因子」は、非活性化形態(第X因子)からなる生産物を意味する。上記定義に属する「第X因子」には、ネイティブのヒト第X因子のアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。小規模の修飾がなされたアミノ酸配列を有する、例えばN末端アミノ酸欠失または付加を含む修飾型N末端を有するタンパク質も、そのタンパク質が第Xa因子の活性を実質的に保持している限り含まれる。上記定義に属する「第X因子」には、個々の個体ごとに存在および発生する可能性のある天然の対立遺伝子変異体も含まれる。さらに、上記定義に属する「第X因子」には、第X因子の変異体が含まれる。このような変異体は、一つまたはそれ以上のアミノ酸残基において野生型配列と相違する。このような相違の例には、一つもしくはそれ以上のアミノ酸残基(例えば1〜10アミノ酸残基)によるNおよび/もしくはC末端の切断、またはNおよび/もしくはC末端における一つもしくはそれ以上の余分な残基の付加、例えばN末端におけるメチオニン残基の付加、ならびに保存的アミノ酸置換、すなわち類似の特徴を有するアミノ酸グループ、例えば(1)小アミノ酸、(2)酸性アミノ酸、(3)極性アミノ酸、(4)塩基性アミノ酸、(5)疎水性アミノ酸、(6)芳香族アミノ酸、の中で行われる置換が含まれ得る。このような保存的置換の例を以下の表に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
用語「組換え」は、例えば、その変異体が、遺伝子操作技術によって宿主生物において生成されたことを意味する。本発明の第X因子変異体は通常、組換え第X因子変異体である。
【0088】
提案した変異体の発現:
適当な宿主細胞内において組換えタンパク質を高レベルで産生させるには、当業者に公知の方法に従い、上記の修飾型cDNAを、適当な調節エレメントと共に、様々な発現系において増殖させることができる組換え発現ベクター内の有効な転写ユニットに組み込む必要がある。有効な転写調節エレメントは、動物細胞を天然の宿主とするウイルスまたは動物細胞の染色体DNAから得ることができる。好ましくは、シミアンウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスの長末端反復配列由来のプロモーター・エンハンサーの組み合わせ、またはベータ−アクチンもしくはGRP78等の動物細胞において高度に構成的に転写される遺伝子を含むプロモーター・エンハンサーの組み合わせを使用することができる。高レベルのmRNAをcDNAから安定的に転写させるために、転写ユニットは、その3’近位部分に、転写終結・ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含むべきである。好ましくは、この配列は、シミアンウイルス40初期転写領域、ウサギベータ−グロビン遺伝子、またはヒト組織プラスミノゲン活性化因子遺伝子から得られるものである。
【0089】
次に、cDNAは、第X因子変異体の発現のために、適当な宿主細胞株のゲノムに組み込まれる。好ましくは、この細胞株は、正確なフォールディング、Glaドメインの合成、ジスルフィド結合の形成、アスパラギン結合型グリコシル化、O結合型グリコシル化、およびその他の翻訳後修飾、ならびに培養培地への分泌を確保するために、脊椎動物起源の動物細胞株であるべきである。他の翻訳後修飾の例は、初期ポリペプチド鎖のヒドロキシル化およびタンパク質分解プロセシングである。利用できる細胞株の例は、サルCOS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、ハムスターBHK−21細胞、ヒト胎児腎臓293細胞、およびハムスターCHO細胞である。
【0090】
対応するcDNAをコードする組換え発現ベクターは、いくつかの異なる方法で動物細胞株に導入することができる。例えば、組換え発現ベクターは、異なる動物ウイルスベースのベクターから構築することができる。これらの例は、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、および好ましくはウシパピローマウイルスベースのベクターである。
【0091】
対応するDNAをコードする転写ユニットはまた、そのゲノムに組換えDNAが導入された特定の細胞クローンの単離を容易にするために、これらの細胞内で優性選択マーカーとして機能し得る別の組換え遺伝子と共に動物細胞に導入され得る。このタイプの優性選択マーカー遺伝子の例は、ジェネティシン(G418)に対する耐性を付与するTn5アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、およびピューロマイシンに対する耐性を付与するピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼである。このような選択マーカーをコードする組換え発現ベクターは、所望のタンパク質のcDNAをコードするベクターと同じベクター上に加えることも、多くの場合に異なる転写ユニット間の緊密な物理的結合をもたらす、宿主細胞のゲノムに同時に導入および組み込まれる別のベクターにコードさせることもできる。
【0092】
所望のタンパク質のcDNAと共に利用できる他のタイプの選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードする様々な転写ユニットに基づくものである。このタイプの遺伝子を、内因性のdhfr活性を欠く細胞、特にCHO細胞(DUKX−B11、DG−44)に導入した後、これらはヌクレオシド欠乏培地中で成長することが可能となる。このような培地の例は、ヒポキサンチン、チミジン、およびグリシンを含まないHam's F12である。これらのdhfr遺伝子は、凝固因子cDNA転写ユニットと共に、同一ベクター上または異なるベクター上のいずれかに連結させて、上記タイプのCHO細胞に導入し、組換えタンパク質を産生するdhfr陽性細胞株を作製することができる。
【0093】
上記の細胞株を、細胞毒性のdhfr阻害剤メトトレキサートの存在下で培養する場合、メトトレキサートに対して耐性の新規の細胞株が出現するであろう。これらの細胞株は、dhfr・所望タンパク質一体型の転写ユニット数の増加により高い割合で組換えタンパク質を産生し得る。これらの細胞株を増加した濃度のメトトレキサート(1〜10000nM)下で増殖させる場合は、非常に高い割合で所望のタンパク質を産生する新規の細胞株を獲得することができる。
【0094】
所望のタンパク質を産生する上記細胞株は、懸濁培養下または様々な固体支持体上のいずれかにおいて、ラージスケールで培養することができる。これらの支持体の例は、デキストランもしくはコラーゲンマトリクスベースのマイクロキャリア、または中空繊維もしくは様々なセラミック材の形態の固体支持体である。細胞懸濁培養によりまたはマイクロキャリア上で培養する場合、上記細胞株の培養は、浴槽培養としてまたは長期間にわたって条件培地を連続的に生成する灌流培養として行われ得る。従って、本発明によれば、上記細胞株は、所望の組換えタンパク質の製造のための工業プロセスの開発に十分に適している。
【0095】
上記タイプの分泌細胞の培地に蓄積する組換えタンパク質は、所望のタンパク質と細胞培養培地中の他の物質の間のサイズ、電荷、疎水性、溶解性、比親和性などの違いを利用する方法を含む、様々な生化学的、クロマトグラフィー的方法によって濃縮および精製することができる。
【0096】
このような精製の例は、固体支持体に固定されたモノクローナル抗体への組換えタンパク質の吸着である。このタンパク質は、脱離後、上記特定に基づく様々なクロマトグラフィー技術によりさらに精製することができる。
【0097】
本発明の修飾された生物学的に活性な第X因子変異体を、≧80%の純度、より好ましくは≧95%の純度まで精製することが好ましく、高分子混入物、特に他のタンパク質および核酸に対して99.9%超の純度でありかつ感染因子および発熱因子を含まない薬学的に純粋な状態であることが特に好ましい。好ましくは、単離または精製された、本発明の修飾された生物学的に活性な第X因子変異体は、実質的に他のポリペプチドを含まない。
【0098】
本発明において記載される組換えタンパク質は、治療用途のために薬学的製剤に処方することができる。精製されたタンパク質は、薬学的製剤を提供するため、場合により薬学的賦形剤が添加され得る従来的な生理学的に適合性の水性緩衝溶液に溶解され得る。
【0099】
このような薬学的担体および賦形剤ならびに適当な薬学的処方物は当該分野で周知である(例えば“Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins”,Frokjaer et al.,Taylor & Francis (2000)または“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,3rd edition,Kibbe et al.,Pharmaceutical Press(2000)を参照のこと)。特に、本発明のポリペプチド変異体を含む薬学的組成物は、凍結乾燥形態または安定な溶解形態で処方され得る。ポリペプチド変異体は、当該分野で公知の様々な手法により凍結乾燥され得る。凍結乾燥処方物は、使用前に、一つまたはそれ以上の薬学的に許容できる希釈剤、例えば注射用滅菌水または滅菌性生理食塩水溶液の添加により再構成される。
【0100】
この組成の処方物は、任意の薬学的に適当な投与手段によって個人に送達される。様々な送達系が公知であり、組成物を任意の使い勝手がよい経路により投与するのに使用することができる。好ましくは、本発明の組成物は、全身投与される。全身的な使用のために、本発明の第X因子変異体は、従来方法に従い、非経口(例えば静脈内、皮下、筋内、腹腔内、脳内、肺内、鼻腔内、もしくは経皮)送達用または経腸(例えば経口、膣、もしく直腸)送達用に処方される。最も好ましい投与経路は静脈内投与である。処方物は、注入またはボーラス注射により連続的に投与することができる。いくつかの処方物は徐放系を含む。
【0101】
本発明の修飾された生物学的に活性な第X因子変異体は、治療有効用量で患者に投与され、治療有効用量は、処置する状態または徴候の重傷度または拡大を防止または軽減するという所望の効果を生じるのに十分でありかつ許容できない有害な副作用を生じる用量に達しない用量を意味する。正確な用量は、例えば徴候、処方、投与様式等の多くの要因に依存し、これは各個別の徴候ごとに前臨床および臨床試験において決定する必要がある。
【0102】
本発明の薬学的組成物は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて投与され得る。これらの薬剤は、同一薬物の一部として組み込まれ得る。
【0103】
本発明の別の局面は、血液凝固障害の処置または予防のための医薬の製造のための、本明細書中に記載されるヒト第X因子の修飾型ホモログ、本発明のポリヌクレオチド、本発明のプラスミドもしくはベクター、または本発明の宿主細胞の使用である。血液凝固障害には、血友病A、血友病B、またはFVII/FVIIa欠乏症が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、各々の凝固因子に対する自己免疫抗体によりこれらの疾患が引き起こされるまたは先天性の状態が悪化する。特定の実施態様において、処置される患者は、第VIII因子に対する阻害抗体を有する。好ましくは、処置はヒト遺伝子療法を含む。
【0104】
本発明はまた、血液凝固障害、例えば血友病A、血友病B、またはFVII/FVIIa欠乏症に罹患した個人の処置方法に関し、好ましくは各々の凝固因子に対する自己免疫抗体によりこれらの疾患が引き起こされるまたは先天性の状態が悪化する。この方法は、有効量の本明細書に記載されるヒト第X因子の修飾型ホモログを個人に投与することを含む。別の実施態様において、この方法は、有効量の本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のプラスミドもしくはベクターを個人に投与することを含む。あるいは、この方法は、有効量の本明細書中に記載される本発明の宿主細胞を個人に投与することを含む。
【実施例】
【0105】
実施例:
実施例1:発現プラスミドの構築
第X因子コード配列は、プライマーWe1292およびWe1293(配列番号11および12)を用いてヒト肝臓cDNAライブラリ(Ambion)からPCRにより増幅した。プライマーWe1354およびWe1355(配列番号13および14)を用いた二ラウンド目のPCRにおいて、制限エンドヌクレアーゼNheI切断部位をこのフラグメントの5’末端に導入し、制限エンドヌクレアーゼNotI切断部位を3’末端に導入した。次いで、PCRフラグメントを、pIRESpuro3(BD Biosciences)のNheI/NotI部位に挿入した。得られたプラスミドをpFX−445と命名した。
【0106】
このプロペプチドのプロセシングを改善するため、39位(配列番号2)のアミノ酸スレオニンをアルギニンで置換することによって切断部位を改善した(Rudolph et al.,1997(Protein Expression and Purification 10:373−378))。そのために、pFX−445を、標準的方法(QuickChange XL Site Directed Mutagenesis Kit,Stratagene)に従いオリゴヌクレオチドWe1482およびWe1483(配列番号15および16)を用いた部位特異的変異誘発に供した。得られたプラスミドをpFX−532と命名した。
【0107】
以下に記載される全ての変異は、市販の変異誘発キット(QuickChange XL Site Directed Mutagenesis Kit,Stratagene)を用いて行った。
【0108】
pFX−532に基づき、第XIa因子切断部位を有する構築物を作製した。オリゴヌクレオチドWe1444およびWe1445(配列番号17および18)を用いた置換変異誘発により、第X因子アクチベーション領域の8アミノ酸(配列番号2のアミノ酸225〜233)がFIXのアクチベーション領域由来の8アミノ酸で置換されたプラスミドpFX−535を得た。
【0109】
オリゴヌクレオチドWe1567およびWe1568(配列番号19および20)を用いたpFX−532における部位特異的変異誘発によってプラスミドpFX−641を作製した。このプラスミドは、第X因子アクチベーションペプチド内に二つの変異、Leu232AspおよびThr233Aspを含み、これによって活性化できない第X因子分子を得た。
【0110】
オリゴヌクレオチドWe1976およびWe1977(配列番号21および22)を用いた欠失変異誘発により、FXアクチベーションペプチド配列を欠失するが挿入されたFIXアクチベーション配列を維持するプラスミドpFX−915を得た(図3を参照のこと)。
【0111】
オリゴヌクレオチドWe2357およびWe2358(配列番号23および24)を用いたpFX−915における部位特異的変異誘発により、Ile235がValで置換された、それによってFXの重鎖のアミノ末端アミノ酸がFIXの対応するアミノ酸に変換されたプラスミドpFX−1066を得た。
【0112】
実施例2:修飾型第X因子分子のトランスフェクションおよび発現
プラスミドをE.coli TOP10(Invitrogen)中で増殖させ、標準的なプロトコル(Qiagen)を用いて精製した。HEK293細胞を、Lipofectamin 2000試薬(Invitrogen)を用いてトランスフェクトし、50ng/mlビタミンKおよび4μg/mlピューロマイシンの存在下で無血清培地(Invitrogen 293 Express)中で培養した。トランスフェクションから約4週間後、生化学的な特徴付けのために上清を収集した。
【0113】
実施例3:組換え第X因子変異体の特徴付け
第X因子変異体の発現は、第X因子に対するモノクローナル抗体を用いた定量のELISAにより監視した。その後に、組換えタンパク質の完全性を、SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングにより分析した。サンプルは、還元条件および非還元条件下で分析した。血漿第X因子を、ネイティブ分子量コントロールとして用いた。自己活性化した場合任意の活性化型組換え第X因子変異体を検出および比較するために第Xa因子を用いた。ウェスタンブロットを可視化したところ、全ての組換え第X因子変異体は、約58kDaの正確な分子量を示し、血漿第X因子に相当する位置に移動した。還元した場合、組換え第X因子変異体は、およそ40kDaの重鎖(HC)およびおよそ20kDaの軽鎖(LC)に分解した。58kDaのバンドは、プロセシングを受けていない単一鎖(one chain)(OC)の第X因子を表すものであった。ウェスタンブロットにおいては、第Xa因子も第X因子のいかなる凝集物も検出されなかった。本発明の第X因子変異体は、ウェスタンブロットにおいて、およそ49kDaの分子量を有する、プロセシングを受けていない単一鎖分子として可視化された。これは、非還元型および還元型に共通である。
【0114】
実施例4:ヒト第X因子、第VIII因子、および第IX因子欠乏血漿、ならびにヒト第VIII因子阻害性血漿における、組換え第X因子変異体のインビトロ活性の調査
第X因子活性は、外因性凝固経路の活性を測定するプロトロンビン時間(PT)アッセイにおいて決定した。第X因子欠乏血漿100μlを第X因子変異体細胞培養上清または精製タンパク質100μlと混合した。37℃で60秒間のインキュベーション後、ヒト血漿由来トロンボプラスチン、CaCl2、およびリン脂質を含有するThromborel(Dade Behring)200μlをこの混合物に加え、Schnittger & Grossコーギュレーションタイマーを用いることによって凝固時間を秒単位で決定した。第X因子活性の決定のために、このアッセイを、血漿第X因子標準を用いて較正した。変異型第X因子pFX641の細胞培養上清を、このアッセイのネガティブコントロールとして用いた。この変異体は、野生型第X因子アクチベーションペプチド内に無効化された切断部位を保持する。予想通り、この変異体を216.4U/mlの第X因子に相当する抗原レベルで試験した場合、凝固活性は0.5mU/mlにしか達しなかった。
【0115】
pFX532由来の組換え野生型第X因子、ならびにpFX535、pFX915、およびpFX1066由来の第X因子変異体を精製した。第X因子に特異的な抗体を用いてELISAにより決定した抗原濃度は1.1〜4.3U/mlの範囲であった。第Xa因子が第X因子の測定を妨害しないようにするため、第Xa因子を発色アッセイによって決定した。全ての精製された第X因子変異体は、0.023〜0.103mU/mlの第Xa因子レベルしか含まず(表2)、第X因子の測定に有意に干渉するものではなかった。
【0116】
発現された第X因子変異体を相互に比較するために、第X因子の凝固活性を決定し、これを約1.5U/mlに調整した。試験した全ての変異体は機能的に活性であり、1.10〜1.72U/mlの凝固活性を示した(表2)。
【0117】
FVIIIおよびFIX欠乏血漿における組換え第X因子変異体の機能は、内因性凝固カスケードの活性を測定する活性化部分プロトロンビン時間(aPPT)において試験した。FVIIIまたはFIX欠乏血漿100μlを第X因子変異体細胞培養上清または精製タンパク質100μlと混合した。37℃で6分間のインキュベーション後、SiO2、リン脂質、および40mM NaClを含有するPathromphtin(Dade Behring)100μl、ならびに25mM CaCl2 100μlを加えて凝固反応を開始した。凝固時間は、Schnittger & Grossコーギュレーションタイマーを用いることによって秒単位で決定した。活性は、標準ヒト血漿と比較した場合の各凝固性FX当量として表した。
【0118】
組換え野生型第X因子は、予想通り、第VIII因子欠乏血漿において凝固活性が6.6mU/mlにしか達せず、FIX欠乏血漿において5.8mU/mlにしか達しなかった。対照的に、本発明の第X因子変異体は、第VIII因子欠乏血漿においては12952.0〜26428.0mU/mlの範囲、FIX欠乏血漿においては6327.0mIU/ml〜15515.0mIU/mlの範囲の非常に高い凝固活性に達した(表2)。
【0119】
pFX535由来の第X因子変異体は、WO01/10896に記載される、野生型FXアクチベーションペプチドのIle235のN末端側の領域内に挿入された新規の第IX因子アクチベーション配列を有する第X因子変異体に対応するが、アクチベーションペプチドの長さの欠失はない。驚くべきことに、pFX915およびpFX1066によってコードされる、第X因子野生型アクチベーションペプチドが除去され新規のプロテアーゼ切断部位で置換された本発明の第X因子変異体は、FIX欠乏血漿においてそれぞれ6327.0および15515.0mU/ml、またはFVIII欠乏血漿においてそれぞれ12952.0および26428.0mU/mlという非常に強い凝固活性を示した(表2)。
【0120】
血友病A患者由来のFVIII阻止因子含有血漿を用いて機能的活性の測定をさらに行った。この患者の血漿は、1mlあたり約300ベセズダ単位のFVIII阻止因子を含んでいた。上記のように、凝固はaPPTで測定し、サンプルは第X因子凝固性で調整した。
【0121】
標準および試験サンプルの希釈に使用したサンプル緩衝液コントロールは156.5秒の凝固時間に達し、組換え野生型第X因子は111.4秒の凝固時間に達した。pFX915およびpFX1066によってコードされた本発明の第X因子変異体は、FVIII阻害抗体含有血漿に基づくFEIBAアッセイにおいて、それぞれ21.4および21.1秒の凝固時間を示し、これはpFX535によりコードされた第X因子変異体を使用した場合に得られる凝固時間よりも有意に短かく(表2)、これによりFVIIIまたはFIX欠乏血漿に基づくFVIIIまたはFIX凝固アッセイにおける驚くべき結果が確認された。
【0122】
まとめると、第X因子変異体はバイパス止血剤として機能的に活性であること、およびこれらの第X因子変異体は第VIII因子に対する阻止因子を含む血友病A患者血漿において凝固活性を示すことが示された。本発明者らが驚いたのは、pFX915およびpFX1066によりコードされた第X因子変異体が、第VIII因子および第IX因子欠乏血漿において、同じ第X因子凝固当量と同一に調整した場合にpFX535によりコードされた第X因子変異体と比較してずっと強い凝固活性を示したことであった。
【0123】
【表2】

【0124】
実施例5:モノクローナル抗体アフィニティクロマトグラフィによる組換え第X因子変異体の精製
組換え第X因子変異体は、以下のプロトコルに従い精製した。第X因子に特異的なモノクローナル抗体FX−13(ZLB Behring)を、CNBr活性化型セファロースに結合させた。得られたアフィニティ樹脂をPharmacia XK 16クロマトグラフィカラムに注ぎ込み、直径1.6cm、高さ1.8cm、ゲル3.6mlのアフィニティマトリクスを形成した。このアフィニティマトリクスを、2.5M NaCl、10mMリン酸水素二ナトリウム中で保存した。使用前に、ゲルを、10ゲル量の20mMクエン酸三ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.0−HClで平衡化した。
【0125】
100mIU/ml超の第X因子抗原を含む細胞培養上清を、VISKINGチュービングタイプ32/36を用いて、2〜4lの平衡緩衝液中、4〜8℃で一晩透析した。
【0126】
アフィニティゲルに、透析した上清70mlを、流速1ml/分でロードした。ゲルを10倍量の平衡緩衝液で洗浄し、その後に0.1Mグリシン、pH2.5−HClで溶出させた。溶出した物質をNaOHで中和し、1.0M NaClおよび0.1mg/mlカプリル酸ナトリウムによって安定化させた。
【0127】
第X因子変異体の細胞培養上清、フロースルーフラクション、および溶出させた物質由来のサンプルをSDS−PAGEおよびその後の銀染色によって分析した。58kDaのタンパク質バンドを上記の方法によって精製した。58kDaバンドは、抗第X因子抗体により検出するウェスタンブロッティングによって第X因子変異体と同定した。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】FX野生型および新規に導入されたプロテアーゼ切断部位を有するFX変異体の概略図である。番号は配列番号2のアミノ酸番号を意味しており、アクチベーションペプチドはSer183〜Arg234のアミノ酸配列と定義される。第IX因子由来の外来アクチベーション配列は太字で表示している。下線を引いたアミノ酸は、各々の第X因子分子がそれぞれテナーゼ複合体および第VIIa/組織因子により活性化されないようにする点変異を示している。「532」構築物は、第X因子の野生型配列に対応する。
【図2−1】野生型第X因子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
【図2−2】図2−1の続きである。
【図3】第IX因子由来のプロテアーゼプロセシング部位を有する第X因子変異体が凝固第IX因子および第VIII因子に対する必要性を迂回し第XI因子により直接的に活性化される様式を示す凝固カスケードの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内には存在しないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、かつArg179〜Ile235に対応する残基間のアミノ酸数が野生型第X因子と比較して1〜52アミノ酸減少している、上記第X因子変異体。
【請求項2】
アクチベーションペプチド内に修飾を有する生物学的に活性な第X因子変異体であって、その修飾により野生型第X因子のArg179〜Arg234のアミノ酸配列内には存在しないプロテアーゼプロセシング部位が形成され、かつ修飾型アクチベーションペプチドは野生型第X因子のアクチベーションペプチドよりも短い、上記第X因子変異体。
【請求項3】
プロテアーゼプロセシング部位を切断できるプロテアーゼによるプロテアーゼプロセシング部位の切断により第X因子変異体が活性化される、請求項1または2に記載の第X因子変異体。
【請求項4】
プロテアーゼは自然界では野生型第X因子を切断しない、請求項3に記載の第X因子変異体。
【請求項5】
プロテアーゼは自然界では野生型第X因子を活性化しない、請求項3または4に記載の第X因子変異体。
【請求項6】
プロテアーゼプロセシング部位は、セリンプロテアーゼによる第X因子変異体の活性化を実現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の第X因子変異体。
【請求項7】
プロテアーゼプロセシング部位は、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子、活性化型プロテインC、エラスターゼ、またはカリクレインによる第X因子変異体の活性化を実現する、請求項6に記載の第X因子変異体。
【請求項8】
修飾型アクチベーションペプチドが4〜15アミノ酸からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の第X因子変異体。
【請求項9】
配列番号2のアミノ酸226〜234が配列番号3に示されるアミノ酸配列で置換された第X因子アミノ酸配列を含み、対照因子変異体中のそのアクチベーションペプチドの長さが52アミノ酸である対照第X因子変異体と比較してバイパス止血活性が増強されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の第X因子変異体。
【請求項10】
配列番号2のアミノ酸番号で、Glu226−Gln227−Ser228−Phe229−Asn230−Asp231−Phe232−Thr233−Arg234の配列を含む対照第X因子変異体と比較してバイパス止血活性が増強されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の第X因子変異体。
【請求項11】
医薬物質として使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第X因子変異体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の第X因子変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含むプラスミドまたはベクター。
【請求項14】
発現ベクターである、請求項13に記載のプラスミドまたはベクター。
【請求項15】
ヒト遺伝子療法において使用するためのトランスファーベクターである、請求項13に記載のプラスミドまたはベクター。
【請求項16】
請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13〜15のいずれか一項に記載のプラスミドもしくはベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
第X因子変異体が発現する条件下で請求項16に記載の宿主細胞を培養し、場合により宿主細胞または培養培地から第X因子変異体を回収することを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第X因子変異体の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の第X因子変異体、請求項12に記載のポリヌクレオチド、または請求項13〜15のいずれか一項に記載のプラスミドもしくはベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
血液凝固障害の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第X因子変異体、請求項12に記載のポリヌクレオチド、請求項13〜15のいずれか一項に記載のプラスミドもしくはベクター、または請求項17に記載の宿主細胞の使用。
【請求項20】
血液凝固障害が血友病Aである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
血友病AがFVIIIに対する自己抗体に起因するまたはそれによって悪化する、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
血液凝固障害が血友病Bである、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
血友病BがFIXに対する自己抗体に起因するまたはそれによって悪化する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
血液凝固障害がFVIIおよび/またはFVIIa欠乏症である、請求項19に記載の使用。
【請求項25】
FVIIおよび/またはFVIIa欠乏症がFVIIおよび/またはFVIIaに対する自己抗体に起因するまたはそれによって悪化する、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
処置がヒト遺伝子療法を含む、請求項19〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
凝血促進特性を有する医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第X因子変異体、請求項12に記載のポリヌクレオチド、請求項13〜15のいずれか一項に記載のプラスミドもしくはベクター、または請求項16に記載の宿主細胞の使用。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−527234(P2009−527234A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555681(P2008−555681)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001417
【国際公開番号】WO2007/096116
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(597070264)ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー (32)
【Fターム(参考)】