説明

活性炭素繊維

【課題】沸点が70〜120℃の範囲の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供する。
【解決手段】BET比表面積が1000〜1800m2/g、全細孔容積が0.4〜0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93〜94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である活性炭素繊維。このような活性炭素繊維において、好ましくは、カルボキシル基量が0.04meq/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸点が70〜120℃の範囲内である有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭素繊維は、粒状活性炭と比較し、外表面積が大きく、細孔が表面に存在するために吸着性能が優れ、繊維状のため紙状、織布状など多様な形態に加工できることとも併せ、様々な分野で活用されている。
【0003】
従来の活性炭素繊維として、たとえば特開2005−138038号公報(特許文献1)には、比表面積700〜1500m2/g、全細孔容積0.3〜0.7cc/g、且つ表面酸性基量が0.5meq/g以下である有機化合物吸着用繊維状活性炭が開示されている。このような特許文献1に開示された繊維状活性炭によれば、塩化メチレン、塩化ビニルモノマーなどの活性炭に対する吸着性の低い、低分子量、低沸点化合物の吸着処理に対して効果が発揮され、たとえば排ガス処理装置に適用した場合に、コンパクトで、しかも低コストにでき、化学工場、医薬工場などの工業プロセスから排出される低分子量、低沸点化合物の排出濃度を低減でき、環境浄化、リサイクルに貢献できるものである。
【0004】
またたとえば特開平7−145516号公報(特許文献2)には、25℃、相対湿度37%における平衡水分率が0.05〜1.0%、BET比表面積が300〜3000m2/g、細孔容積が0.25〜2.00cc/gで、かつ水蒸気法で測定した細孔半径が7〜14Åの範囲または9〜20Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径が100Å以下の細孔が占める容積の80%以上である活性炭素繊維が開示されている。このような特許文献2に開示された活性炭素繊維は、水中に溶解するハロゲン化炭化水素などの水に対する溶解度の小さい疎水性有機化合物の吸着に好適に用いられるものである。
【0005】
また、たとえば特開平6−99065号公報(特許文献3)には、比表面積が800m2/g以上であり、水蒸気吸着法で測定した細孔半径9Å以下の細孔の占める累積細孔容積が0.20cc/g以上であり、且つ水蒸気吸着法で測定した細孔半径9Å以下の細孔の占める累積細孔容積が細孔半径100Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%以上である繊維状活性炭からなる浄水器用充填材が開示されている。このような特許文献3に開示された浄水器用充填材(繊維状活性炭)は、水中に含まれるトリハロメタンの除去能が極めて高く、特に水道水中のトリハロメタンの大半を占めるクロロホルムを効率よく除去でき、家庭、工場、店舗、会社等の種々の場所で使用する浄水器用に有効に使用することができる。
【0006】
さらに、特開2005−903号公報(特許文献4)、特開2005−21851号公報(特許文献5)には、25℃、相対湿度37%における平衡吸着水分率が1.0〜15.0%、BET比表面積が300〜2500m2/gまたは500〜2000m2/g、細孔容積が0.25〜2.0cc/gまたは0.25〜1.5cc/gで、かつ水蒸気法で測定した細孔半径6〜16Åの範囲にある細孔の容積が、細孔半径100Å以下の細孔の占める容積の80%以上であって、X線回折強度曲線の(002)面の回折ピークにおける黒鉛的結晶性構造パラメータIp/Ioが0.35以下の繊維状活性炭を用いた、有機塩素系溶剤の回収方法が開示されている。このような特許文献4、5に記載された方法によれば、装置の腐食が少なくして、有機塩素系溶剤または混合溶剤の効率的な回収が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−138038号公報
【特許文献2】特開平7−145516号公報
【特許文献3】特開平6−99065号公報
【特許文献4】特開2005−903号公報
【特許文献5】特開2005−21851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物は、吸着される分子の容積が比較的大きく、小さな細孔には吸着せず、また大きな細孔になると吸着速度が遅くなるという性質を有するため、このような有機化合物を活性炭素繊維で吸着させようとする場合、活性炭素繊維の細孔が有効に活用できないという問題がある。したがって、このような有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、沸点が70〜120℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の活性炭素繊維は、BET比表面積が1000〜1800m2/g、全細孔容積が0.4〜0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93〜94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の活性炭素繊維において、カルボキシル基量が0.04meq/g以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の活性炭素繊維は、沸点が70〜120℃の範囲内の有機化合物を吸着させるために用いられるものであることが、好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、沸点が70〜120℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の活性炭素繊維は、BET比表面積が1000〜1800m2/gの範囲内であることを特徴の1つとする。本発明の活性炭繊維のBET比表面積が1000m2/g未満である場合には、沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、1800m2/gを超える場合には、吸着速度が遅くなるという不具合がある。沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維のBET比表面積は1200〜1700m2/gの範囲内であることが好ましい。なお、BET比表面積とは、液体窒素温度での窒素ガス吸着等温線によるBET法により求められる比表面積を意味し、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。
【0015】
本発明の活性炭素繊維はまた、全細孔容積が0.4〜0.9cc/gの範囲内であることを特徴の1つとする。本発明の活性炭繊維の全細孔容積が0.4cc/g未満である場合には、沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、0.9cc/gを超える場合には、吸着速度が遅くなるという不具合がある。沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維の全細孔容積は0.6〜0.7cc/gの範囲内であることが好ましい。なお、全細孔容積は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。
【0016】
本発明の活性炭素繊維は、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93〜94%以上であることを特徴の1つとする。細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93%未満である場合には、細孔が大きくなりすぎて、沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、94%を超える場合には、細孔が小さくなりすぎて、沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合がある。沸点が70〜120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維の細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積は、全マイクロポア細孔容積の93.3〜93.8%の範囲内であることが好ましい。なお、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積の割合は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。
【0017】
また本発明の活性炭素繊維は、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下であることも特徴の1つとする。温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%を超える場合には、細孔周辺に先に水分子が吸着されるため、その細孔には有機化合物の吸着量が吸着されず、その分低下してしまうという不具合がある。水分子の吸着の影響を受けにくくするためには、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率は5%以下であることが好ましい。温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率は、たとえば恒温恒湿器SH−661(エスペック社製)を用いて測定することができる。
【0018】
本発明の活性炭素繊維は、上述したBET比表面積、全細孔容積、マイクロポア細孔容積の割合および水分吸着率がそれぞれ上述した範囲内であることで、沸点が70〜120℃の範囲内(より好適には100〜120℃の範囲内)の有機化合物に対し特に高い吸着性能を示す。これは、沸点が70〜120℃の範囲内の有機化合物を吸着するのに好適な細孔があり、それが上述したBET比表面積、全細孔容積、マイクロポア細孔容積の割合および水分吸着率の活性炭素繊維であるという理由のためであると考えられる。
【0019】
ここで、本発明の活性炭素繊維による吸着させる対象として好適な有機化合物としては、たとえばトルエン(沸点:110.6℃)、ベンゼン(沸点:80.1℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82.2℃)、ブタノール(沸点:117.7℃)、シクロヘキサン(沸点:80.7℃)、トリエチルアミン(沸点:89.6℃)、アセトニトリル(沸点:81.6℃)、ジクロロエタン(沸点:83.5℃)などが挙げられる。中でも、水に不溶な点から、本発明の活性炭素繊維による吸着対象としてトルエンが特に好適である。
【0020】
本発明の活性炭素繊維は、水分が吸着しにくくなるという理由からは、カルボキシル基量が0.04meq/g以下であることが好ましく、0.02meq/g以下であることがより好ましい。活性炭素繊維のカルボキシル基量は、塩基との中和滴定によって測定することができる。
【0021】
なお、本発明の活性炭素繊維におけるフェノール性水酸基量、全酸性基量、全塩基性基量については特に制限されるものではないが、フェノール性水酸基量については通常0.05〜0.15meq/g、全酸性基量については通常0.05〜0.25meq/g、全塩基性基量については通常0.30〜0.60meq/gである。なお、活性炭素繊維のフェノール性水酸基量、全酸性基量は塩基との中和滴定によって測定することができ、全塩基性基量は酸との中和滴定によって測定することができる。
【0022】
本発明の活性炭素繊維は、その原料(前駆体)としては特に制限されるものではなく、たとえばフェノール、セルロース、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、アラミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリビニルアルコール、ポリスルホンエーテル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどの当分野において原料として通常用いられる繊維を用いることができる。これらの中で、セルロース系は原料中の酸素含有率が高く、活性炭の中でも比較的表面酸性基量が多い。フェノール系はセルロース系に比べて酸素含有量が少なく、灰分に由来する極性部分が少なく、セルロース系よりは極性度が小さく水分吸着の影響を受けにくい。中でも、疎水性が高く、加工性と実用的強度を併せ持つことから、フェノール繊維を原料として用いることが、好ましい。
【0023】
本発明の活性炭素繊維を製造するに際しては、まず、フェノール繊維を原料とする場合には、窒素流動下で管状炉中を移動させながら800〜950℃程度の温度にまで昇温し、2.0〜3.5時間保持させた状態で、純水を供給し続けるという賦活処理を施す。ここで、上述した保持時間(賦活時間)を調整することで、得られる活性炭素繊維におけるBET比表面積、全細孔容積、マイクロポア細孔容積の割合および水分吸着率を制御することができる。
【0024】
賦活処理後、酸素濃度を0.5%以下(好適には0.1%以下)とした状態で冷却する。この冷却の際の酸素濃度を0.5%以下とすることで、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が15%以下と従来より低い本発明の活性炭素繊維が得られる。これは、冷却工程において、活性炭素繊維の表面官能基の生成が抑制されるためであると考えられる。このように酸素濃度を0.5%以下とするためには、具体的には、冷却工程での窒素の流量を増やし、出入口の炉内圧が2Pa以上を維持できるような操作を施せばよい。この点、従来は冷却工程の際の酸素濃度には着目がなく、特に上述したような操作を施さずに冷却を行っており、通常、酸素濃度は1%程度である。
【0025】
本発明の活性炭素繊維は、沸点が70〜120℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を示すものであるため、このような有機化合物を主な吸着対象とするフィルタに好適に適用することができる。本発明の活性炭素繊維を適用したフィルタは、吸着と水蒸気による脱着を交互に切り替え可能であり、化学工場、医薬工場などの工業プロセスから排出される有機化合物を除去、回収するための排ガス処理装置に好適に用いられる。
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
内径70mm、有効長30cmの管状炉を用いて、繊維径24μmのフェノール繊維を、5L/minでの窒素流動下で昇温速度5℃/minで900℃まで昇温し、2.5時間(賦活時間)保持させた状態で純水を0.6mL/minで供給し続けて、賦活処理を行った。その後、出入口の炉内圧を2Pa以上に維持し、常温になるまで冷却した。出入口の炉内圧を2Pa以上に維持するために、炉内の温度が下がるにつれて窒素の流量を徐々に増やしていき、最終的には30L/minの窒素を流すことで、冷却時の酸素濃度が0.05%(東レエンジニアリング社のジルコニア酸素濃度計LC−750Lで測定)となるようにした。このようにして実施例1の活性炭素繊維を得た。
【0028】
<実施例2>
賦活時間を3時間としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の活性炭素繊維を得た。
【0029】
<比較例1>
酸素濃度の制御をせずに冷却工程を行った(酸素濃度:1.0%)こと以外は実施例1と同様にして、比較例1の活性炭素繊維を得た。
【0030】
<比較例2>
賦活時間を3時間としたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の活性炭素繊維を得た。
【0031】
得られた実施例1、2、比較例1、2の活性炭素繊維について、以下の評価試験を行った。
【0032】
(1)BET比表面積(m2/g)
試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.02〜0.15の範囲での結果をもとに、BET法により重量あたりのBET比表面積(単位:m2/g)を求めた。
【0033】
(2)全細孔容積(cc/g)
試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.95での結果より全細孔容積(単位:cc/g)を算出した。
【0034】
(3)全マイクロポア細孔容積(A)(cc/g)
試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この結果をMP法によって解析範囲0〜20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)(単位:cc/g)を算出した。
【0035】
(4)細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積(B)(cc/g)
試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02〜0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この結果をMP法によって解析範囲0〜2nm、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)から細孔直径1.003nm以上のマイクロポア細孔容積を引いて、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積B(単位:cc/g)を算出した。
【0036】
(5)温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率(%)
試料を約0.2mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、恒温恒湿器SH−661(エスペック社製)を使用し、温度25℃、相対湿度52%で2時間置いたときの重量変化から水分吸着率(%)を求めた。
【0037】
(6)全酸性基量(meq/g)
試料を水洗、乾燥後、約1gを採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、1/10MのNaOH水溶液50ml中に浸漬し、25℃で2時間振盪した。この液をガラス濾過器で濾過し、濾液20mlを正確に分取して1/10MのHCl水溶液により逆滴定した。滴定の際は0.1w/v%のメチルオレンジ溶液(和研薬社製)を指示薬として用いた。空試験も同様に行い、空試験での滴定量を差し引いた値から全酸性基量(単位:meq/g)を求めた。
【0038】
(7)カルボキシル基量(meq/g)
試料を水洗、乾燥後、約1gを採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、1/20MのNa2CO3水溶液50ml中に浸漬し、25℃で2時間振盪した。この液をガラス濾過器で濾過し、濾液20mlを正確に分取して1/10MのHCl水溶液により逆滴定した。滴定の際は0.1w/v%のメチルオレンジ溶液(和研薬社製)を指示薬として用いた。空試験も同様に行い、空試験での滴定量を差し引いた値からカルボキシル基量(単位:meq/g)を求めた。
【0039】
(8)フェノール性水酸基量(meq/g)
全酸性基量からカルボキシル基量を引いて、フェノール性水酸基量(単位:meq/l)を求めた。
【0040】
(9)全塩基性基量(meq/g)
試料を水洗、乾燥後、約1gを採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、1/10MのHCl水溶液50ml中に浸漬し、25℃で2時間振盪した。この液をガラス濾過器で濾過し、濾液20mlを正確に分取して1/10MのNaOH水溶液により逆滴定した。滴定の際は0.1w/v%のメチルオレンジ溶液(和研薬社製)を指示薬として用いた。空試験も同様に行い、空試験での滴定量を差し引いた値から全塩基性基量(単位:meq/g)を求めた。
【0041】
(10)トルエンに対する吸着性能評価
試料を約3kg充填した吸着槽を2槽併設した吸着装置に、濃度1000ppm、温度30℃、湿度50%、風量10m3/minのトルエンのガスを流し、一定時間吸着し、吸着終了時に吸着槽に水蒸気を噴出させて脱着するサイクルを10回繰り返して、平均の吸着破過時間(分)を求めた。
【0042】
実施例1、2、比較例1、2の活性炭素繊維について得られた結果を表1、2にそれぞれ示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が1000〜1800m2/g、全細孔容積が0.4〜0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93〜94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である、活性炭素繊維。
【請求項2】
カルボキシル基量が0.04meq/g以下である、請求項1に記載の活性炭素繊維。
【請求項3】
沸点が70〜120℃の有機化合物を吸着させるために用いられる、請求項1または2に記載の活性炭素繊維。

【公開番号】特開2011−106052(P2011−106052A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261973(P2009−261973)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】