説明

活性酸素発生装置及び加湿器、空気清浄機

【課題】酸性雰囲気下にポリアニリンを置くことにより、エメラルディンになったポリアニリンをエメラルディン塩に構造を変化させて導電性を回復させるという簡単な手法で、活性酸素の生成量が低下した陰極の活性酸素生成能の回復を図ることができる活性酸素発生装置を提供する。
【解決手段】水槽17内の水中に陽極2とポリアニリンを含む陰極1とを配置し、陽極と陰極に通電することによって活性酸素を発生させる活性酸素発生装置において、水槽内の水を酸性にする手段を備え、陰極が酸性溶液中にある場合は、陰極への通電を停止する期間を設けることで、陰極の導電性つまり活性酸素生成能を回復させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリンのようなレドックスポリマーを用いて活性酸素を発生することにより水中での殺菌や脱臭などを可能とする活性酸素発生装置及びこの活性酸素発生装置を備えた加湿器、空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、活性酸素による殺菌、脱臭が注目されており、活性酸素を発生させる方法として、光触媒を用いる方法、紫外線を用いる方法、レドックスポリマーを用いる方法等が知られている。特に、ポリアニリンのようなレドックスポリマーを使用する方法は、作業上の危険も少なく低コストで活性酸素を生成することができるので注目されている。
【0003】
従来、ポリアニリンを使用した活性酸素発生方法としては、水中でポリアニリン微粒子を分散させる方法と水中でポリアニリンを担持した電極に電圧を印加する方法が知られている。
【0004】
ポリアニリンは、酸性条件下では窒素原子がイオン化しプラスの電荷を帯びて塩の状態になる。特にエメラルディン塩のポリアニリンが導電性を示すことが知られている。
【0005】
ポリアニリンは、酸化型の構造と還元型の構造が可逆的に変化する導電性高分子であり、水中で溶存酸素と接触すると酸素が還元されて活性酸素が生成し、ポリアニリンは酸化される。この酸化されたポリアニリンに還元剤を供給したり、あるいは電流(直流電流)を流すことによって電子を供給すると再び還元型に戻る。そして酸素と接触させることにより連続的に活性酸素を発生させることができる。ところが、ポリアニリンを含む陰極に通電していくと、陰極の活性酸素生成能が低下することが知られており、陰極の活性酸素生成能を回復させる方法として、逆電圧を印加する方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−299326号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の、ポリアニリンを含む陰極に負電圧を印加して活性酸素を発生させる装置では、印加時間とともにポリアニリンの構造が変化し、導電性が悪くなり電流量も下がるために活性酸素の生成量が低下し、また活性酸素発生装置を備えた加湿器では殺菌性能が低下するといった課題があった。また、特許文献1に示されるように、一定時間だけ逆電圧を印加することにより陰極の活性酸素生成能を回復させることができるが、溶液の調整、管理など活性酸素生成能回復のための手法が煩雑になるきらいがある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、酸性雰囲気下にポリアニリンを置くことにより、エメラルディンになったポリアニリンをエメラルディン塩に構造を変化させて導電性を回復させるという簡単な手法で、活性酸素の生成量が低下した陰極の活性酸素生成能の回復を図ることができる活性酸素発生装置を提供することを目的とし、さらにはこの活性酸素発生装置を備えた加湿器および空気清浄機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、陽極とポリアニリンを含む陰極とを水を介して通電し、活性酸素を発生させる活性酸素発生装置において、
前記水が酸性の場合は、通電を停止する期間を設けたことを特徴とする活性酸素発生装置である。
【0010】
また、本発明に係る加湿器は、水を貯留する給水タンクと、前記給水タンクの下部に設けられ、前記給水タンクから滴下する水を受ける水受けトレイと、前記水受けトレイ内に配置された陽極とポリアニリンを含む陰極と、前記陽極と前記陰極に電圧を印加する電圧印加手段とを備えた加湿器において、
前記水受けトレイ内の水を酸性にする手段を備え、
前記水受けトレイ内の水が酸性である場合は、前記陰極への通電を停止する期間を設けたものである。
【0011】
なお、本発明において、活性酸素とは、通常の酸素に比べて酸化力の高い酸素のことをいい、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、パーヒドロキシラジカル、過酸化水素などを総称する概念である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水中でポリアニリンを担持した陰極に通電することにより低下してしまう陰極を酸性溶液中に置き、一定時間だけ通電を停止することで、陰極の導電性を回復し、活性酸素の発生量が低下した陰極を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における活性酸素発生装置の概略構成図である。
【図2】本発明におけるポリアニリンの構造の変化を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1において繰り返し電圧を印加した場合の活性酸素の生成量の減少を示したグラフである。
【図4】電圧印加前、電圧印加後、酸浸漬後の陰極の吸光度スペクトル図である。
【図5】電圧印加前と電圧印加後、電圧印加後と酸浸漬後の陰極の吸光度スペクトルの差をとったスペクトル図である。
【図6】酸浸漬による陰極の活性酸素生成能の回復を示したグラフである。
【図7】酸浸漬による陰極の表面抵抗値の回復を示したグラフである。
【図8】実施の形態2における活性酸素発生装置の模式図である。
【図9】実施の形態3における加湿器の外観図である。
【図10】実施の形態3における加湿器の概要構成を示す模式図で、給水タンクの挿入前の状態を示す図である。
【図11】実施の形態3における加湿器の概要構成を示す模式図で、給水タンクの挿入時の状態を示す図ある。
【図12】実施の形態4における加湿器の概要構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における活性酸素発生装置の概要構成を示す模式図で、図2は、この活性酸素発生装置におけるポリアニリンの構造変化を示す図である。
この実施の形態1の活性酸素発生装置は、水槽(または水受けトレイともいう)17内の水4に浸漬された陰極1と陽極2と、両電極1、2間に電圧を印加する電圧印加手段3とから構成されている。なお、水槽17内の水4は、後述するように陰極1の活性酸素生成能を回復させるため酸性溶液となっている。また、陰極1の活性酸素生成能回復期間中は電圧印加手段3をOFFとし、一定時間通電を停止する。尚、本発明は陰極1と陽極2の間に水があってその水を介して通電できれば実施可能であり、水槽17の中の水に陰極1と陽極2が浸かるように配置した構成に限定するものではなく、例えば、内壁の一部が陽極となり、陽極に対面する面が陰極であるような配管形状のものでもよい。
【0016】
陰極1は、金属、カーボンプレート、樹脂にカーボン粉体を練り込んだ導電性材料やPET(ポリエチレンテレフタレート)のような絶縁性材料を基板として、基板にはシンナーにポリアニリンとドープ剤としてポリエチレンスルホン酸を分散させた溶液を塗布し、乾燥、UV照射を行うことによって基板表面にポリエチレンスルホン酸のスルホ基とポリアニリンの窒素原子がイオン結合したエメラルディン塩(ES)状態になっているポリアニリンを担持させている。その他の方法として、導電性基材を用いてポリアニリンを電解重合してもよい。
陽極2は、チタン表面に白金を担持させたものや、カーボンプレート、カーボン粉体を練り込んだ樹脂などを用いる。
電圧印加手段3は、水槽17内の水4に浸かっている陰極1と陽極2に電圧を印加し、またその電圧印加のONとOFFを切り替えることができるものとする。
【0017】
図3は、陰極1と陽極2に繰り返し電圧を印加したときの過酸化水素の濃度の減少を表したグラフである。横軸は測定回数で、縦軸はその測定回数のときの過酸化水素の濃度を表している。すなわち、試験試料は、水道水300mlに陰極1と陽極2を浸し、陽極2は2cm×4cmのチタン板に白金を担持させたものを3枚用い、陰極1は直径4cmの円形のPET樹脂の表面にポリアニリンを担持させたもの2枚を、上記3枚の陽極2の間にそれぞれ対極と平行になるように設置した。そして、この円形の陰極1を30rpmで回転させながら、極間距離0.7mmの陰極1と陽極2の極間に2.4Vの電圧を6時間印加し、生成した過酸化水素の濃度を測定した。
【0018】
図3は上記の測定を繰り返し行ったときの1回あたり6時間経過後の過酸化水素濃度の変化を示したものである。図3にみられるように、陰極1に繰り返し通電すると過酸化水素の生成量が減少していく。1回目では過酸化水素がおよそ10ppm生成するが、20回目では過酸化水素の生成量が1〜2ppmにまで低下してしまう。
【0019】
なお、上記の測定では陰極1にはエメラルディン塩(ES)状態のポリアニリンを用いている。PET表面にES状態のポリアニリンを塗布した後、乾燥、UV照射をして担持させている。
【0020】
図2に示すとおり、ポリアニリンには、エメラルディン塩(ES)、エメラルディン(EB)、ロイコエメラルディン塩(LS)、ロイコエメラルディン(LB)、ペルニグルアニリン塩(PS)、ペルニグルアニリン(PB)の6種類の状態がある。特にESの状態のポリアニリンのみが導電性があり、それ以外のEB、LS、LB、PS、PB状態のポリアニリンには導電性はない。ES状態のポリアニリンは緑色をしており、EB状態は青色、LB状態は黄色〜透明、LB状態は紫色をしている。
【0021】
ポリアニリンの特性として、ESやEBのエメラルディン状態のポリアニリンを還元するとLSやLBのロイコエメラルディン状態になり、逆に酸化するとPSやPBのペルニグルアニリン状態になる。
【0022】
LS、ES、PSといった塩の状態であるポリアニリンをアルカリ条件下に置くとそれぞれLB、ES、PB状態に変化する。また、酸性条件下に置くと逆の変化が生じる。
【0023】
陰極1と陽極2に電圧を印加し通電すると、初期はES状態であるポリアニリンがEB状態とLB状態に変化する。目視によっても電圧印加前は緑色であるのが電圧印加後には薄い青色になることが確認できる。また、酸性溶液中においても陰極に通電すると緑色から青色になり、通電を停止したら元の緑色に戻ることも確認できる。
【0024】
上記の状態変化は、水溶液中の電極に電圧を印加することにより、陰極表面で水に電気分解が起こり、下記の化学式1に示すように、陰極表面で水素が発生してその副生成物として水酸化物イオン(OH-)が生成して陰極1の表面がアルカリ雰囲気になるので、ポリアニリンがES状態からEB状態に変化しているからである。そして酸性溶液中で通電を停止すると青色から緑色に変わるのは、陰極1の表面が酸性雰囲気に戻り、ポリアニリンがEB状態からES状態に変化したからであると考えられる。
【0025】
【化1】

【0026】
また、陰極1に負の電圧が印加されることによって、ポリアニリンに電子が供給されてES状態からLS状態にポリアニリンが還元され、そして上記のように陰極1表面がアルカリ雰囲気になっていることから、LS状態がLB状態に変化していると考えられる。
【0027】
電圧印加前の吸光度スペクトル5と電圧印加後の吸光度スペクトル6を図4に示している。ES状態のポリアニリンは800nm付近と400nm付近、EB状態のポリアニリンは600nm付近、LB状態のポリアニリンは320nm付近に吸収ピークを持つ。電圧印加前の吸光度スペクトル5と電圧印加後の吸光度スペクトル6を比較すると、電圧印加前の吸光度スペクトル5では800nm、400nm付近で大きな吸収を、電圧印加後の吸光度スペクトル6では600nm付近に大きな吸収を確認できる。
【0028】
図5に電圧印加後と電圧印加前の吸光度の差を取った吸光度スペクトル8(図4の「吸光度スペクトル6」−「吸光度スペクトル5」)を示しており、この吸光度スペクトル8からも電圧印加後に800nmと400nm付近にピークがある吸収が減り、600nm付近にピークがある吸収が増えていることがわかる。また、320nm付近の吸収も増えている。
以上の説明から、電圧印加によりES状態がEB状態とLB状態に変化したことが確認できる。
【0029】
図6には、上記の条件で測定を繰り返し、過酸化水素の生成量が1.5ppmに低下した陰極1をpH2のクエン酸溶液に12時間浸漬させた後、純水で陰極1を十分に洗浄してから同様の測定を行った場合の過酸化水素の生成量の変化を示したものであり、続けて6時間印加後測定、酸浸漬、6時間印加後測定を4回繰り返し、酸浸漬の前後の測定での過酸化水素の生成量をグラフにしたものである。陰極1をクエン酸に浸漬させることによって1.5ppmまで低下した過酸化水素の生成量が最大で4.2ppmまで回復したことが確認できる。
【0030】
図7は陰極1の表面抵抗の変化を示したものである。表面抵抗の測定には株式会社三菱ケミカルのLoresta GP MCP−T610を使用した。電圧印加前の未使用の陰極1の表面抵抗値が220Ω/cm2であったが、上記の測定を8回繰り返した時点(48時間使用後)で、表面抵抗値が1000Ω/cm2まで高くなった。これは、電圧印加前はES状態であったポリアニリンが電圧印加後に絶縁体であるEB状態とLB状態のポリアニリンに変化したためと考えられる。表面抵抗値が1000Ω/cm2まで高くなった陰極1をpH4とpH2のクエン酸溶液にそれぞれ10秒浸漬させた後の表面抵抗値はそれぞれ600Ω/cm2と450Ω/cm2になった。
【0031】
これは、通電中に陰極1の表面で発生する水酸化物イオン(OH-)によってES状態からEB状態になったポリアニリンを酸性溶液に浸漬させることにより、EB状態のポリアニリンが再び導電体であるES状態に戻ったからだと考えられる。
【0032】
電圧印加後の吸光度スペクトル6とpH2のクエン酸溶液浸漬後の吸光度スペクトル7を図4に示している。吸光度スペクトル6と吸光度スペクトル7を比較すると、クエン酸浸漬により400nm付近の吸収が大きくなり、600nm付近の吸収が小さくなっている。800nm付近の吸収が電圧印加前ほど回復しないのは、電圧印加前はドープ剤であるポリエチレンスルホン酸の影響が大きかったためであると考えられる。
【0033】
pH2のクエン酸溶液浸漬後の吸光度スペクトル7から電圧印加後の吸光度スペクトル6の吸光度の差を取ったものが図5に示す吸光度スペクトル9である。この吸光度スペクトル9より電圧印加後の陰極1を酸性溶液に浸漬させることにより、330nm付近と600nm付近の吸収が小さくなっていることがわかる。これはLB、EB状態のポリアニリンが酸性条件下でLS、ES状態に変化したためであり、400nm付近と800nm付近の吸収が大きくなっていることからもEB状態から変化してES状態のポリアニリンが増えたからだと考えられる。
【0034】
このことより、通電により表面抵抗値が高くなった陰極1の導電性を酸性溶液に浸漬させることにより導電性をよくし、活性酸素の生成量を回復させることができる。
【0035】
以上のように、酸性溶液中で陰極1に通電している場合、化学式1に示すように水酸化物イオン(OH-)の生成により陰極1の表面はアルカリ雰囲気になっておりES状態のポリアニリンがEB状態に変化してしまう。しかし、通電をOFFにしている間は陰極1の表面は酸性雰囲気であり、EB状態になってしまったポリアニリンを再び導電性のあるES状態に変化させ陰極1に表面抵抗値を下げることができるので、次に通電したときに活性酸素の発生量を回復することができる。
【0036】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2における活性酸素発生装置の概要構成を示す模式図である。実施の形態1の構成に加えて、酸性物質13を収容した酸性物質投入手段11と、陰極1に流れる電流値を検出する電流値検出手段12とを備えたものである。水を酸性にする酸性化手段として酸性物質投入手段11の代わりにイオン交換膜や中空糸膜等を用いて水の電気分解で陽極側に生じる強酸性水を用いてもよい。
【0037】
陰極1や陽極2が浸かっている水溶液に水道水のミネラル成分などで知られるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどが含まれていると、水の蒸発と共にそれらのイオンが濃縮され炭酸塩や水酸化物塩などのいわゆるスケールを形成し、水溶液のpHが高くなってしまう。そこで、pHを常に一定値以下に下げる目的で酸性物質13を投入する酸性物質投入手段11を有している。なお、投入する酸性物質13は固体でも液体でもよい。
【0038】
また、陰極1と陽極2が浸かっている酸性溶液の水4が排出され、酸性溶液の水4よりも相対的にpHの高い新たな水が供給されるような場合においても、酸性物質13を投入することによってpHを下げることができる。
【0039】
酸性物質投入手段11は酸性物質13を陰極1の近傍に投入すること、もしくは酸性物質13が液体の場合は陰極1に向けて滴下または噴霧によって投入し、陰極1近傍のpHを局所的に下げることが望ましい。そうすることによって使用する酸性物質の量を減らすことができる。
【0040】
また、陰極1に流れる電流値を検出する電流値検出手段12を備え、陰極1に流れる電流値によって酸性物質13を投入する時を決めてもよい。電流値検出手段12で陰極1に流れる電流値を検出し所定値以下の電流値になれば、電圧印加手段3が一定時間電圧印加を停止して陰極1への通電を停止する。その後、電圧印加手段3が通電を再開したときに、電流値検出手段12が陰極1に流れる電流値を検出する。検出した電流値が所定値よりも大きい場合は、そのまま電圧印加手段3は電圧印加を継続する。検出した電流値が所定値よりも小さい場合は、酸性物質投入手段11が酸性物質13を投入した後、電圧印加手段3が一定時間電圧印加を停止する。その後、陰極1のEB状態のポリアニリンがES状態に戻るのを待ってから再び通電を開始すればよい。
【0041】
以下では、上述したように構成された本発明に係る活性酸素発生装置を備えた加湿器の実施形態について説明する。
【0042】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3における活性酸素発生装置を備えた加湿器10の外観図、図10はこの加湿器10の概要構成を示す模式図で、併せて給水タンクの挿入前の状態を吹き出しの拡大図で示してある。図11は同じく加湿器10の給水タンクの挿入時の状態を吹き出しの拡大図で示す図である。
この実施の形態3の加湿器10は、図9に示すように、給水タンク16と、水槽の例として水受けトレイ17とを備えている。給水タンク16は、加湿器10の本体の上部に設置され、本体下部に設置される水受けトレイ17に対して着脱可能に構成されている。19は給水弁、20は回収弁である。なお、水受けトレイ17も本体に対して着脱可能に構成されている。
【0043】
図10および図11に示すように、水受けトレイ17には、水4が貯留され、上述したように構成された陰極1と陽極2が水4に一部浸かるように配置され、両電極1、2間に電圧を印加する電圧印加手段3が設けられている。電圧印加手段3は電圧印加のONとOFFを切り替えることができるようになっている。また、陰極1および陽極2の構成は実施の形態1で述べたとおりであり、また陰極1のポリアニリンの状態変化についても図2について述べたとおりである。
【0044】
酸性物質投入手段11は、給水タンク16の下面に設置されている。酸性物質13は、本例の場合固形となっている。そして、酸性物質13の排出口14が酸性物質13の収容部に設けられており、その下方に設けられた酸性物質投入手段11によって排出口14より酸性物質13を一定量ずつ(固形剤の場合、1つ又は複数個ずつ)分離して水受けトレイ17内に投入するようになっている。酸性物質投入手段11は、略V字状に屈曲形成されて中間部を軸24で回転自在に枢着され、先端部に排出口14を開閉する蓋25が設けられた分離板23と、分離板23を軸24を中心に回動して常に開放する方向に付勢するバネ26とを備えている。
また、水受けトレイ17には、給水タンク16の挿入時、分離板23の蓋25を押し上げて排出口14を塞ぐようにする突起18が設けられている。
【0045】
このように構成された酸性物質投入手段11によれば、給水タンク16を水受けトレイ17から抜き取ったときには、バネ26により分離板23が軸24を中心に図10において時計方向に回動するので、蓋25が排出口14を開き酸性物質13を排出口14より分離板23上に一定量落下させ受け入れる。ついで、給水タンク16を水受けトレイ17に差し込んだときには、水受けトレイ17の突起18によって分離板23の蓋25を押し上げるので、分離板23が軸24を中心に上記と逆の反時計方向に回動して蓋25が排出口14を塞ぎ、既に分離板23上に受け入れている一定量の酸性物質13をバネ26の力に抗して開いている隙間から水受けトレイ17内に投入することができる。
したがって、酸性物質投入手段11は、給水タンク16を水受けトレイ17に差し込むたび毎に、酸性物質13を一定量ずつ水受けトレイ17に投入することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態の加湿器10は、図9、図11に示すように給水タンク16を水受けトレイ17に差し込むことによって、給水タンク16から水受けトレイ17に加湿するための水を滴下しながら供給する機構を持つものである(給水タンク16の水圧と給水弁19による)。陰極1と陽極2は水受けトレイ17の中の水に浸かるように設置されており、電圧印加手段3は加湿器10の本体または水受けトレイ17に設置されている。酸性物質13の収容部と酸性物質投入手段11は給水タンク16に設置されており、使用者が給水タンク16を加湿器10または水受けトレイ17に差し込むと酸性物質13が一定量投入される。投入する酸性物質13は人体に影響の少ないクエン酸などの弱酸性物質であることが望ましく、固形剤(錠剤またはカプセル形状をした錠剤)となっている。
【0047】
そして、上述のように酸性物質投入手段11により、給水タンク16が加湿器10に差し込まれる毎に一定量の酸性物質13が水受けトレイ17に投入されるため、水受けトレイ17の中の水を一定のpH以下にすることが可能となる。
【0048】
酸性溶液中で陰極1に通電している場合、化学式1に示すように、水酸化物イオン(OH-)の生成により陰極1の表面はアルカリ雰囲気になっておりES状態のポリアニリンがEB状態に変化してしまう。しかし、通電をOFFにしている間は陰極1の表面は酸性雰囲気であり、EB状態になってしまったポリアニリンを再び導電性のあるES状態に変化させ陰極1に表面抵抗値を下げることができるので、次に通電したときに活性酸素の発生量を回復することができる。
【0049】
以上のように、給水タンク16が加湿器10に設置され、酸性物質13が水受けトレイ17に投入された後、陰極1への通電を電圧印加手段3が一定時間停止することによって、EB状態になった陰極1のポリアニリンをES状態に戻すことができ、これにより活性酸素の発生量を回復し、安定した殺菌性能を得ることが可能となる。
【0050】
なお、本実施の形態の加湿器10は、水が給水タンク16から給水弁19を通って水受けトレイ17に滴下しながら注ぎ込まれる。水受けトレイ17の水は徐々に加湿されて減少するので、スケールが濃縮されていく。このスケールが濃縮された水は回収弁20を介して給水タンク16に回収されるようになっている。よって、水受けトレイ17に残っている水は給水タンク16を差し込むとある程度回収されてしまうので、本実施の形態で投入する酸性物質13の錠剤はゆっくりと水に溶けるようなものやカプセル式で投入されてからある程度時間が経過した後溶け出すようなものであることが好ましい。
【0051】
実施の形態4.
図12は、本発明実施の形態4における活性酸素発生装置を備えた加湿器10の概要構成を示す模式図である。
本実施の形態の加湿器10は、上記の固形剤からなる酸性物質13とこの酸性物質13を一定量ずつ投入する酸性物質投入手段11に代えて、酸性溶液投入手段21によって酸性溶液22を一定量ずつ水受けトレイ17に供給(噴霧)するように構成したものである。酸性溶液投入手段21は液体の酸性溶液22を内含したプッシュポンプ式の容器であって上から押すことによって一定量の酸性溶液22を噴霧することを特徴とし、酸性溶液投入手段21は水受けトレイ17に備え付けられている。
【0052】
給水タンク16を水受けトレイ17に差し込むときに給水タンク16の一部が酸性投入手段21のプッシュ部分を押し込むことによって、液体の酸性溶液22がノズルの先から霧状に噴き出す。霧状に噴き出す酸性溶液22は陰極1のポリアニリンに直接噴霧されることが望ましい。水受けトレイ17に残っている水は回収弁20を介して回収されてしまうので、酸性溶液22を陰極1に直接噴霧することによって酸性溶液が薄まり回収されてしまう前に陰極1を再生することができる。また使用する酸性溶液の量も減らすことが可能となる。投入する酸性溶液22は人体に影響の少ないクエン酸などの弱酸性物質であることが望ましい。
【0053】
以上のように、給水タンク16が加湿器10に設置され、酸性溶液22が陰極1のポリアニリンに直接噴霧されることによって、EB状態になった陰極1のポリアニリンをES状態に戻すことができ、これにより活性酸素の発生量を回復し、安定した殺菌性能を得ることが可能となる。また、陰極1のポリアニリンに直接噴霧されるため、酸性溶液が薄まり回収されてしまう前に陰極1を再生することができ、使用する酸性溶液の量も減らすことが可能となる。
【0054】
なお、上記の実施の形態3と実施の形態4において説明した加湿器は、あくまでも一例であり、気化式、スチームファン式などに限定されない。また、酸性物質投入手段についても一定量の酸化物質を定期的もしくは断続的に投入できるものであれば何でもよい。
【0055】
また、本発明の活性酸素発生装置は加湿器のみならず空気清浄機にも適用することができるものである。空気清浄機に実施の形態1又は2に記載した活性酸素発生装置を搭載し、活性酸素発生装置から発生する活性酸素によって、空気清浄機に取り込まれた空気に含まれる菌を抑制したり、活性酸素を含む水をミストにして外部に放出することで室内浮遊菌を抑制したりすることもできる。
【0056】
また、空気清浄機が取り込んだ室内空気に含まれる花粉やダニ等のアレルギー物質を不活性化することやその他臭いの元となる分子を活性酸素で分解することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 陰極、2 陽極、3 電圧印加手段、4 水、5 電圧印加前の陰極1の吸光度スペクトル、6 電圧印加後の陰極1の吸光度スペクトル、7 酸浸漬後の陰極1の吸光度スペクトル、8 吸光度スペクトル6から吸光度スペクトル5の差をとった吸光度スペクトル、9 吸光度スペクトル7から吸光度スペクトル6の差をとった吸光度スペクトル、10 加湿器、11 酸性物質投入手段、12 電流値測定手段、13 酸性物質、14 排出口、16 給水タンク、17 水槽(または水受けトレイ)、18 水受けトレイの突起、19 給水弁、20 回収弁、21 酸性溶液投入手段、22 酸性溶液、23 分離板、24 軸、25 蓋、26 バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極とポリアニリンを含む陰極とを水を介して通電し、活性酸素を発生させる活性酸素発生装置において、
前記水が酸性の場合は、通電を停止する期間を設けたことを特徴とする活性酸素発生装置。
【請求項2】
前記水を酸性にする酸性化手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の活性酸素発生装置。
【請求項3】
前記陽極と前記陰極とは水槽内の水中に配置され、
前記酸性化手段は前記水槽内の水に酸性物質を投入する酸性物質投入手段であることを特徴とする請求項2に記載の活性酸素発生装置。
【請求項4】
前記陽極と前記陰極とは水槽内の水中に配置され、
前記酸性化手段は液体からなる酸性物質を前記陰極に向けて噴霧または滴下する酸性物質投入手段であることを特徴とする請求項2に記載の活性酸素発生装置。
【請求項5】
前記陰極に流れる電流値を検出する電流値検出手段を備え、前記電流値検出手段により検出された電流値が所定値以下になったときに、前記酸性化手段が前記水を酸性にし、通電を停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の活性酸素発生装置。
【請求項6】
水を貯留する給水タンクと、前記給水タンクの下部に設けられ、前記給水タンクから滴下する水を受ける水受けトレイと、前記水受けトレイ内に配置された陽極とポリアニリンを含む陰極と、前記陽極と前記陰極に電圧を印加する電圧印加手段とを備えた加湿器において、
前記水受けトレイ内の水を酸性にする手段を備え、
前記水受けトレイ内の水が酸性である場合は、前記陰極への通電を停止する期間を設けたことを特徴とする加湿器。
【請求項7】
前記水受けトレイ内の水を酸性にする手段が、前記水受けトレイ内の水に酸性物質を投入する酸性物質投入手段であることを特徴とする請求項6記載の加湿器。
【請求項8】
前記酸性物質投入手段は、前記給水タンクを前記水受けトレイに差し込む毎に、前記酸性物質が一定量投入される構成となっていることを特徴とする請求項7記載の加湿器。
【請求項9】
前記酸性物質は、錠剤またはカプセル形状をした錠剤であることを特徴とする請求項7または8記載の加湿器。
【請求項10】
前記水受けトレイ内の水を酸性にする手段が、液体からなる酸性物質を前記陰極に向けて噴霧または滴下する酸性物質投入手段であることを特徴とする請求項6記載の加湿器。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれかに記載の活性酸素発生装置を備えたことを特徴とする空気清浄機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−265502(P2010−265502A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116368(P2009−116368)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】