流体の漏洩検知方法
【課題】下流側で漏洩が発生している可能性が高い場合に、的確に流体の漏洩の可能性を検知できる流体の漏洩検知方法を得る。
【解決手段】管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判別して漏洩の可能性を調べるに、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、第2の圧力変化を圧力変化量を違えて実行し、圧力変化後の各流量が、第1の圧力変化に対する第2の圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【解決手段】管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判別して漏洩の可能性を調べるに、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、第2の圧力変化を圧力変化量を違えて実行し、圧力変化後の各流量が、第1の圧力変化に対する第2の圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御の行われている流体使用機器に向けて、各種の流体が送られる流体輸送用途において、流体の漏洩の検知が必要とされる分野に汎用的に使用できるものである。特に、工業炉、ボイラあるいは家庭用ガス機器等への燃料が輸送される場合の漏洩検知と流量計測に適するものである。さらには、家庭用等に使用される漏洩検知機能付きのガスメーター(いわゆる「マイコンメーター」)の安全機能を更に高める用途への応用が最適である。
【背景技術】
【0002】
家庭用マイコンメーターにおける内管漏洩検知は、深夜のガス需要のないと考えられる時間帯にも、ガスの流量が検知される状態が30日間続いた場合に、ガス漏洩と判断するものである。この漏洩検知ロジックは微小漏洩の検知に用いられる。一方、ガスメーターの定格流量を大幅に上回る過大流量に対しては、ガス管の折損等が想定されるため、即時に遮断するようにロジックが組まれている。微小流量と過大流量の間の通常使用される流量範囲では、直接漏洩を検知できる手段がないため、ガスメーターで検知している流量が漏洩によるものと仮定して、その漏洩により所定の空間が爆発限界に至る流量積算値を超えるとガスの供給を遮断するというロジックを採っている。また、その制限時間内に流量変化があると、機器が操作されたか制御動作が掛ったものとして、一旦計測した時間をリセットして、再度時間積算を始めるようにされている。この制御ロジックは、漏洩の場合には流量が変動しないということを前提にしている。
上記のような手法では、ガスメーターの通常使用流量範囲で、流量変化のない正常使用が続くと、それは漏洩であると判断されてしまうため、ガスが遮断されてしまう不便があった。そのような使用の代表例にはガスストーブがあり、長時間の使用ができない不便が生じていた。
【0003】
一方、特許文献1はガス器具判別装置に関するものであり、この特許文献1に開示の技術では、当該明細書図3、図4に示すように、能動的圧力変動手段45によってガス供給圧力を能動的に変動させ、圧力変動の前後で、圧力検出手段41と流量検出手段42がガス供給圧力とガス流量を検出する。そして、この検出値に基づいて、流量比演算手段46が、全ガス流量のうちガバナ(制御手段の一例)を有するガス器具に流れる流量の割合を求める。この割合と全ガス流量とに基づいて、ガスガバナ装備非装備別流量演算手段47が、ガバナを有するガス器具に流れるガス流量とガバナを有しないガス器具に流れるガス流量を求め、これらのガス流量と個別ガス器具流量演算手段44で求めた個別ガス器具単位の流量を比較することにより、判別手段28が、ガバナ装備の有無を判別する。
【0004】
従って、この装置を使用することにより、ガス器具判別装置より下流側に備えられているガス器具に関して、それらガス器具が、ガバナ装置を備えたものか否かを判別することができる。さらに、〔0003〕にも記載されているように、使用されているガス器具を判別し、ガス器具に応じてガス漏れの有無を判断することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−151580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に開示の技術では、管路を流れる定常流に対して、圧力減少といった一方向で一定の圧力変化を付与し、その付与に伴って発生する流量変化の過渡応答を調べることで、下流側に配設されるガス機器について、それら機器のガバナ装備の有無を判定する。
本願に係る流体の漏洩検知の対象としては、下流側で流体使用機器が運転されている状態で、さらに、漏洩を含む流量の無制御状態が重なって起こっている場合がある。即ち、圧力変化を減殺する制御がかかった制御流量と、このような制御がかからない無制御流量とが混在する状況も発生する。ここで、無制御流量には漏洩が含まれ、従来のコンロ等、制御手段を備えない流体使用機器の使用状態を含む。即ち、制御流量と無制御流量とを精度良く検知することが必要なのであるが、特許文献1の図5に示された結果を見ると、ガバナ使用機器のみの場合(実際値が1)に対して計算値が+18%もの誤差を生じている。この結果は、ガバナ等の機械的な制御装置、P(比例)動作だけでI(積分)動作のない自動制御装置では、オフセットが残って正確な判定ができないからと考えられる。このような誤差を包含する判定手法は、正常使用に漏洩が重畳している場合、漏洩流量が正常使用の約20%以下であれば検出できないことを意味しており、実用的な方法とはいえない。
本発明の目的は、制御流量を発生させる正常使用に、無制御流量を発生させる漏洩が重畳している場合にあっても、その無制御状態を良好に検知し、流体の漏洩の可能性を的確に検知できる流体の漏洩検知方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する、管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、生じる流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判別し、組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法の第1特徴構成は、
第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化を付与し、
前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力することとする。
【0008】
一般に、管路下流側に配置される流体使用機器には、流体の流量を設定・制御するための制御機構(制御手段)が付随している。流量を所定の値に維持するためには必然の機構であり、多くは自動制御となっている。
自動制御機構の高度なものの代表例は、PID(比例、積分、微分)制御であり、圧力変化等の外乱にかかわらず、流量を設定値に維持する働きをする。なおこの場合、PID制御を容易かつ確実に行うため、PID制御弁の上流に整圧弁(上流の圧力が変化しても、弁下流の圧力を設置値に維持するように制御する弁:ガバナ)を設けることが多い。
【0009】
一方、最も簡単なものは、バルブによる手動操作であるが、この場合も手動弁上流に、整圧弁(制御手段の一例)が使用されることが多い。流体の供給圧力が変化しても、流量を(手動)設定値に維持する必要があるからである。
従って、最小限、整圧弁が使用されている機器にあっては、流体の供給圧力(整圧弁上流の流体圧力:一次圧)が変化しても、整圧弁下流の圧力(二次圧)は、整圧弁の制御動作範囲においては、変化前の圧力に戻そうとする制御がかかることになり、その結果、流量は元の値に復元する。もちろん、機械的な構成であるためオフセット(偏差)が残る場合もある。
【0010】
そこで、本発明では、流量がほぼ一定で流れているときに、最初に、流体圧力の変化機器を用いて、流体の供給圧力に変化(第1の圧力変化)を付与する。この供給圧力の変化量は、前記制御機構による流量制御が可能な範囲とする。この場合、付与による圧力変化の方向はプラス側(増圧側)、マイナス側(減圧側)のいずれでもよい。そして、下流に設置された機器の制御動作によって、流量が付与後に付与前の状態に復元しようとするか否かで、流量が機器の運転によってもたらされているものか、漏洩を含む無制御状態によるものかを、所定の基準に従って判断する。漏洩の場合、流量は無制御であるため、与えた圧力変化(付与後の圧力の付与前の圧力の比率)の平方根に比例した割合で変化し、復元動作を示さないことを利用できるためである。
【0011】
この手法は、制御工学におけるいわゆるステップ応答を、制御の有無を判断する原理として応用するものであるため、ステップ応答の遅れを見込んで、流量の時間変化(経時変化)をもトレースすることが望ましい。なお、流量の復元動作に必要な時間が、予めわかっているか、代表的な値で律することのできる場合には、加えた圧力変化の前後の定常状態と見なせる2値だけで、判断することも可能である。なお、過渡応答は、ステップ応答だけではなく、インパルス応答や周波数応答を用いても良く、適宜併用することも可能である。
【0012】
本発明は、基本的に、数秒〜数十秒間流量が安定して一定値を保っているときに、その流量が機器の使用によるものか漏洩によるものかを判別するものである。そのため、流量が変動している場合には本方法による漏洩検知は、不可能もしくは不確実になる。しかしながら流量が変動しているということは、機器の制御が自動、手動にかかわらず行われているということであるから、漏洩検知を行う必要が無いので、本発明の使用範囲がそれによって限縮されるわけではない。このような判断で問題のないことは、現行マイコンメーターロジックの実績で証左されている。
【0013】
さて、第1の圧力変化のみでは、無制御状態と制御状態との識別が困難な場合がある。このような場合とは、流体使用機器に備えられる制御機器の制御構造から、流量にオフセットが残り、その制御に伴うオフセットと無制御状態との識別が明確にできない場合である。そこで、本願では、第1の圧力変化に対して、圧力変化量を変えて第2の圧力変化を付与する。この第2の圧力変化の圧力変化量は、第1の圧力変化量と違わせることとし、第1の圧力変化の変化量だけ元に戻す操作を含まない。また、これまで説明してきた制御機構側による流量制御が可能な範囲内の変化とする。
【0014】
このように圧力変化量を違えて複数回の圧力変化を与えた場合、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所がある場合は、圧力変化後の各流量は、複数回の圧力変化の増減に対応して一定の関係でそれぞれ増減する。即ち、一般に制御に伴って発生するオフセット量は、本願が対象とするような第1、第2の圧力変化量では大きく変化することはなく、制御側の機器によって発生する制御流量はオフセット分も含めてほぼ一定とみなせ、無制御の機器若しくは漏洩が存在することに起因して、第1、第2の圧力変化を付与することによって発生する圧力変化後の流量の増減が、圧力の増減に対応して現れるためである。従って、複数回の圧力変化を付与して、このような流量の増減(流量変化と圧力変化との増減対応関係)が現れた場合、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があることを判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【0015】
上記のように、第1の圧力変化と、前記第2の圧力変化を付与する場合、
第1の圧力変化後の流量及び第2の圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断することができる。この方法が本願第2の特徴構成である。
【0016】
圧力変化を与えるにあたって、変化を1回与える場合(第1の圧力変化)には、先にも説明したように無制御状態に含まれる漏洩と制御状態である機器使用が重畳している場合、無制御状態の判断がつきにくい。機器使用によって、一応、流量は復元動作を示すものの、元の流量との差異が小さくオフセット量に近い場合があるからである。このような場合に、更に異なった圧力変化(第2の圧力変化)を加えれば、以下の式で示すように、無制御状態の判断を容易に行うことができる。以下、図9を参照しながら説明する。
【0017】
一般に、流量に制御が掛っていなければ、圧力変化を与える前後の流量と圧力の関係は以下のようになる。
Q1/Q0=√(P1/P0) ・・・式1
ここで、Q及びPはそれぞれ流量と圧力、添字0及び添字1はそれぞれ1回目の変化を与える前の状態、及び後の状態を表す。ΔP1=P1−P0が与えた圧力の変化量である。さらに、2回目の圧力変化ΔP2=P2−P0を与えると、
Q2/Q0=√(P2/P0) ・・・式2
即ち、
Q2/Q1=√(P2/P1) ・・・式3
となる。
一方、制御がかかっている場合には、圧力変化量に相当する変化を機器の制御機構が、吸収(圧力が増加すれば増加量相当分の圧損を加え、減少すれば圧損を減じて、流量を設定値に維持する働き)するため、漏洩検知機構における圧力P1とP2の値はそのままで、流量は元の値Q0に回復する。
【0018】
無制御状態と制御状態が重畳している場合には流量の回復は部分的となる。1回目の圧力変化後における流量をQ1、2回目の圧力変化後における流量をQ2とすると、各回の圧力変化付与前後の流量及び圧力の関係は次の式4〜式7及び式8〜式11で表される。
【0019】
Q1″/Q0″=√(P1/P0) ………式4
Q0=Q0′+Q0″ ………式5
Q1=Q1′+Q1″ ………式6
Q0′=Q1′ ………式7
【0020】
Q2″/Q1″=√(P2/P1) ………式8
Q1=Q1′+Q1″ ………式9
Q2=Q2′+Q2″ ………式10
Q1′=Q2′ ………式11
【0021】
すなわち、式4〜式7は1回目の圧力変化付与前後の全ガス流量Q0,Q1、制御流量Q0′,Q1′、無制御流量Q0″,Q1″、圧力P0,P1の関係を示し、式8〜式11は2回目の圧力変化付与前後の全ガス流量Q1,Q2、制御流量Q1′,Q2′、無制御流量Q1″,Q2″、圧力P1,P2の関係を示す。
【0022】
ここで、前記(式3)はQ1=Q1″,Q2=Q2″の条件があることにおいて(式8)と同等の式であるから、両式を代表して(式8)を各式に基づき次の如く変形すれば下記の(式12)が得られる。
【0023】
(Q2−Q2′)/(Q1−Q1′)=√(P2/P1)
(Q2−Q1′)/(Q1−Q1′)=√(P2/P1)
(Q2−Q0′)/(Q1−Q0′)=√(P2/P1)
(Q2−Q0+Q0″)/(Q1−Q0+Q0″)=√(P2/P1)……(式12)
【0024】
また、基準圧力を大気圧とし、各段の圧力P1,P2を大気圧との差圧とすれば、大気圧においては無制御流量Q0″(代表的にはガス漏洩による流量)が0となることから、上記(式12)は次式(式12´)となる。
【0025】
(Q2−Q0)/(Q1−Q0)=qn2/qn1=√(P2/P1)………式12´
従って、二つの圧力状態における流量の変化量の比率(qn2/qn1:図9参照)が、与えた圧力の比率の平方根となっているかどうかを調べることで、無制御状態の流量が制御状態の流量に重畳しているかどうかを、判別することができる。
なお、圧力センサーを用いずに本方法を適用する場合には、圧力は予め設定した値を使用するしかないが、圧力センサーが利用できる場合には、P2、P1の値として実測値を使うことができるため、より確実に無制御状態(漏洩)を判別できる。
【0026】
一方、流量が一定している状態の時は、第1の圧力変化を与え、偏差である流量変化量が予め判明している判定値(オフセット値)を超えて生じる場合には、無制御状態が重畳しているものと判断することもできる。圧力変化後の無制御状態に含まれる漏洩による流量は、変化前の圧力に対する圧力変化後の圧力の比率の平方根に等しく発生し、流量の変化量が制御により残留するオフセット量より大きくなる場合が多いからである。
【0027】
流量が安定していないにかかわらず、敢えて、圧力変化を加えて漏洩を調べることも可能である。変化が大きくない状態、もしくは変化の間隙では、確実性は劣るものの、短時間で判定ができるため、流量が復元しようとする状態を経時変化から読み取ることが可能だからである。常に流量の変動する用途に適用が可能である。
【0028】
本発明を、家庭用都市ガスメーターあるいはLPガスメーターに漏洩検知手段の一部として応用しようとする場合には、家庭に無制御機器が保有されているか否かが問題になる。
最近の湯沸器やファンヒーターは、PID制御もしくはそれに近い制御が成されていて問題はない。問題となりそうな機器は、小型湯沸器、風呂釜、ストーブ、グリルもしくは炊飯器等である。これらの機器は手動操作であるため無制御であるように見られるが、実際には、手動制御機器であっても、制御性を良くするためもしくは安定燃焼を確保するため、整圧弁(ガバナ)が使用されている。よって、機器の使用判別は可能である。
【0029】
最も問題になるのは、ガスコンロ類(一口コンロ、テーブルコンロ、ビルトインコンロ等)である。ガスコンロは極めて安価に販売されてきたため、コストダウンのために整圧弁が設けられないのが通常であったからである。とろ火の安定性確保(絞り過ぎて火炎を消してしまわないように、また、絞った状態で立ち消えないように)のために、ガスコンロの一部に整圧弁を導入するようになったのは、比較的新しい。従って、従来のガスコンロにおいては、本手法で漏洩検知を行うことはできない。しかしながら、ガスコンロは、通常火力を手動で細かく調整しながら使用する機器であり、一定流量で使用する時間は長くない。使用時間が長くなるのは煮込み料理の場合であるが、この場合にはガス流量は絞り込まれて使用される。煮込みに相当するガス流量が万一漏洩によるものであったとしても、換気を考慮すれば、爆発限界に至らないか、至るとしても通常長時間が必要になる。従って、後述する「制限時間」の考え方を併用すれば、現行より不安全になることはあり得ない。
【0030】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する圧力変化の比率を、圧力変化を与える前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とすることにある。
【0031】
本願に係る流体の漏洩検知方法を実施するにおいては、理論的にはどのような圧力変化を与えることも可能ではあるが、実用的には適当な圧力の変化率を設定する必要がある。
上述のように、流体の流量は、無制御の場合、圧力との間に以下に示す関係が成り立つ。
Q/Q0=√(P/P0) ………式13
ここで、Q及びPはそれぞれ流量と圧力、添字0及び添字無しはそれぞれ変化を与える前の状態、及び後の状態を表す。
従って、流量計にて安定的かつ確実に測定できる流量変化率が、例えば10%であるなら、与える圧力の変化率はその自乗である121%にしなければならない。このように、加える圧力変化は流量計の精度に基づき、かつ、器具ガバナ等の器具の圧力制御機構の制御範囲やオフセット等の制御特性を考慮して、決定する必要があり、本発明は、設定すべき圧力変化率の指針を与えるものである。また、これにより昇圧機器もしくは降圧機器の選定と設定を行うことが可能になる。
【0032】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第4特徴構成は、上記第1〜3のいずれかの特徴構成に加えて、前記定常流れの流量に応じて、付与する圧力の変化機器を使い分けることにある。
【0033】
流体に圧力変化を与える変化機器として、例えば、降圧機器として制御弁、昇圧機器としてポンプ(ファン、ブロア、コンプレッサーを含む。)を使用することができる。ただし、例えば、降圧機器の使用を停止すれば、圧力は元に戻る。即ち降圧状態から見れば昇圧することになるため、降圧機器、昇圧機器という区別は、作動前の状態からの変化機器というほどの便宜上のものに過ぎない。
【0034】
本構成で使用する制御弁は、全開状態に加えて、全閉状態ではない両者の中間開度の状態が得られる弁であればどのような形式ものでも使用可能である。アナログ的な動きをする電磁弁や直動電磁弁、ダイヤフラム弁、ステップ的な動きをするパルスモーター駆動弁(ロータリーバルブ)、リニア駆動バルブ等が理想であるが、弁座の開孔面積の異なる二種以上の電磁弁を並列に組合せた複合弁でも構わない。複合弁の場合、開弁する弁の組合せによって圧力の変化率を変えることができる。途中開度を多段に使わない場合にはいわゆるHi−Lo−Off弁も使用可能である。
【0035】
一方、昇圧機器の代表はポンプであるが、流体が気体の場合はファン、ブロアもしくはコンプレッサーと昇圧程度によって呼び分けられる。輸送流体の圧力と同程度から一桁小さい程度の昇圧能力が適当である。アナログ的に圧力を変える場合には、これらを駆動するモーターの回転数を変えればよい。あるいは、前述の制御弁を備えて、昇圧した圧力を減圧方向に調整して所期の圧力に調整することも可能である。
【0036】
上記のような変化機器を使用するとしても、例えば、制御弁で圧力損失を付与する場合、大流量から微少流量までを、1台のもので行うことは困難である。制御範囲は通常1/5程度、最大でも1/10であり、メーターの計測範囲である1/100以下、微少漏洩なら1/1000に比べてその制御範囲が小さい。従って、定常流れの流量に応じて(流量範囲に応じて)大流量用、小流量用、微少流量用と複数の変化機器を用意しておき、流量範囲に応じて使い分けることで、良好に本願に係る流体の漏洩検知方法を実行できる。これは、加圧機器であるポンプの場合も同じである。
【0037】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第5特徴構成は、上記第1〜4特徴構成に加えて、
前記定常流れの流量に応じて、付与する圧力の値を正もしくは負に選択することにある。
【0038】
漏洩検知の対象の流量範囲が小流量若しくは微小流量である場合に、小流量から微少流量を制御弁で制御するためには、精度の高いバルブが必要である。また、絞りすぎて、コンロの立ち消えを招く不都合を考えておく必要もある。従って、流量が小さい場合、圧力変化が負となる減圧機器を用いるのではなく、圧力変化が正となる加圧機器、例えば小さなエアポンプを用いる方が安全で、かつコストも下がる可能性が高い。
このように、本願に係る技術を、ガスメーターに応用する場合には、圧力変化を負とするより正とするほうが安全となる場合があり得る。例えば、先に示したようにコンロを絞りきって使用している場合等では、そこで降圧を行うとコンロの立消えの発生する可能性が生じるからである。従って、降圧機器によって漏洩検知を行う際に、予め最低流量を設定しておき、その流量より小さい流量範囲では、本方法に基づく流量検知は行わないようなロジックの追加が適当である。これにより、通常は、昇圧機器より安価な降圧機器を利用できることになり、低コストで漏洩検知機構付き流量計を提供できる。
【0039】
一方、一般に、漏洩がある場合には、昇圧に伴って漏洩量が増加する危険がある。そこで、このような場合は、圧力変化を負とする(減圧する)のが好ましい。さらに、漏洩に関して、昇圧する場合は、その昇圧幅と検知時間は必要最小限に抑えるべきである。
【0040】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第6特徴構成は、上記第1〜5特徴構成に加えて、
流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計を用いて行うものであり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つことにある。
本発明を適用する場合、流量計は超音波流量計等の瞬時流量型の方が好都合だからである。瞬時流量計の場合、数秒で判定を完結することができ、判定適用中に新たな機器の使用開始による流量変動を受ける可能性を低く抑えることができるからである。
一方で、積算流量計を取引メーターとして使用する場合、流量積算を行う必要があり、実用化には必須要件となる。
【0041】
さて、これまで説明してきた本願第1の特徴構成の漏洩検知方法を使用する漏洩検知装置は、以下のように構成することができる。
即ち、管路を流れる流体の定常流れに、時間を隔てて圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、
前記圧力変化付与手段が働いて前記付与により前記定常流れに生じる流量変化の過渡応答を検出する過渡応答検出手段と、
前記過渡応答検出手段の検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する使用機器判別手段とを備え、
前記使用機器判別手段により、管路下流に、圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性があると出力する漏洩情報出力手段を備え、
前記使用機器判別手段が、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確に行えない場合に、前記圧力変化付与手段が、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化で付与し、
前記使用機器判別手段が、前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力するものとして装置が構成できる。
【0042】
圧力変化付与手段は、圧力変化の付与により定常流れに圧力変化を与える。その結果発生する定常流れの流量変化の過渡応答を過渡応答検出手段が検出する。そして、この検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する。その判別結果に基づいて、漏洩情報出力手段が流体の漏洩の可能性を出力する。結果、管路下流に組み込まれている制御手段の有無に従って、漏洩の可能性を検知することができる。
この際、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所(無制御となっている箇所)があるか否かの判断が明確でない場合に、第2の圧力変化を前記第1の圧力変化の圧力変化量と違えて付与し、両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力することとなる。
【0043】
この装置による検知結果と、各発生流量に対する制限時間との組み合わせにより、さらに有効な漏洩検知を行うことができる。
【0044】
以下、使用機器判別手段における判断に関して、第1の圧力変化を付与した場合の判断手法、さらに第2の圧力変化を付与した場合の判断手法を説明する。
【0045】
第1の圧力変化を付与した場合の判断手法
1 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
圧力変化後の流量の圧力変化前の流量に対する比率が、圧力変化後の圧力と圧力変化前の圧力に対する比率の平方根に等しくなる場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この判別手法は、下流側が完全に無制御(漏洩を含む)となっている状況において発生する流量変化を基礎として判別する手法であり、この状況を的確に判別できる。この場合は、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化をさらに付与する必要はない。
【0046】
2 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、流量変化量が、予め設定されているオフセット量の所定範囲より大きい場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この判別手法は、下流側に制御手段が存在するが、その制御によって発生するオフセットが予め判明している状況において適用可能な手法であり、ある程度の流量の漏洩が発生している場合に、この漏洩を的確に判別できる。この場合も、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化をさらに付与する必要はない。
【0047】
3 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲内にある場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があるとの判断が明確に行えないとする。
この判別手法は、下流側に制御手段が存在するが、その制御によって発生するオフセットが予め判明している状況において適用可能な手法である。この場合は、無制御状態が明確に判断できないため、第2の圧力変化を付与する必要がある。
【0048】
4 圧力変化の付与の後に、圧力変化に伴う流量変化が減殺されたと判断できる安定流量領域が存在する場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。
この判別手法は、下流側が完全に制御された状態となっている状況において発生する流量変化を基礎として判別する判別手法であり、この状況を的確に判別できる。この場合は、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
この場合は、第1の圧力変化の付与と、それと同量の圧力変化の除去とを対として実行し安定流量領域を検出すると、圧力変化の付与後(除去前)の流量と、付与前及び除去後の流量とに基づいて(例えば、両流量の平均値を使用する)、流量変化が実質的にほぼ完全に減殺されていることを確認でき、管路の状況を的確に代表した判別を行える。
例えば、圧力変化の付与後(除去前)の流量と、付与前及び除去後の流量の平均値がほぼ同一となっていることで確認できる。
【0049】
そして、上記の3に示したように判断が明確でない場合には、先に説明した第1の圧力変化に加えて、第2の圧力変化を付与する。即ち、圧力変化を変化量を違えて複数回実行することとする。この場合、第1、第2の圧力変化と見なせる複数の圧力変化を付与すればよく、その数を問うものではない。そして、使用機器判別手段が、複数回実行される圧力変化後の流量について、前記使用機器判別手段が、圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【0050】
この場合の使用機器判別手段における判断手法としては、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断するものとする。これが先に説明した本願第2の特徴構成の漏洩検知方法に対応する。
【0051】
これまで説明してきた漏洩検知装置において、
前記圧力変化付与手段が、流体の定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する圧力変化の比率を、変化を与える前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とすることが好ましい。
この構成の圧力変化付与手段を備えることで、先に説明した第3の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0052】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、
複数の圧力の変化機器を備え、定常流れの流量に応じて、圧力の変化機器を使い分けることが好ましい。
このように、複数の圧力の変化機器を備え、それらを定常流れの流量に応じて使い分けることで、先に説明した第4の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0053】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、前記圧力変化付与手段が、定常流れの流量に応じて、付与及び除去する圧力の値を正もしくは負に選択することが好ましい。
このような圧力変化付与手段を備えることで、先に説明した第5の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0054】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、前記過渡応答検出手段を構成する流量計が、流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計であり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つことが好ましい。
このように漏洩検知装置を構成することで、先に説明した第6の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
ガスメーターへの適用を念頭に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、正常に燃焼している燃焼機器の燃料流量計測に本発明を利用した場合の系全体のフロー図である。
漏洩検知機構付き流量計1は、図3に詳細構成を示すように、瞬時流量を計測できる流量計2、燃料の流れに圧力変動を付与する調節弁3、漏洩時に燃料を遮断する遮断弁4、圧力を計測する圧力計5、少なくとも流量の積算を行う記憶・演算・制御部1a、流量の出力を行う通信部1b、及び流量の表示を行う表示部1cから構成される。ここで、記憶・演算・制御部1aでは、瞬時流量の積算の他に、本発明による漏洩検知方法を用いた比較演算を行う。その結果は通信部1b及び表示部1cを経由して出力される。また、通信部1bは、外部からの燃料遮断信号や漏洩検知トリガー信号を受信したり、漏洩の可能性を外部機器に出力する場合にも使用される。
【0056】
図2は図1に示した場合において、燃焼機器が停止している状態で、途中の管路に漏洩がある場合を示している。この場合においては、漏洩検知機構付き流量計1は、漏洩流量を検知していることになる。
【0057】
本発明における解決すべき課題は、流量計2の計測している流量が、下流に設置された制御手段を備えた機器の正常使用によるものか、無制御状態に含まれる漏洩によるものかを流量計2の位置において判別することである。
しかしながら、流体使用機器10には多種多様なものがあるため、単に流量を計測しているだけではその判別を行うことはできない。
【0058】
正常使用において流量変動の無いガス機器の主なものは、ガスストーブ、小型湯沸器及びコンロ等の手動制御機器である。これらのものは、使用開始直後には、ガス量調整を行うものの、その後は比較的長時間一定燃焼量で使用を継続する。
一方、流量変動の比較的大きいものは、大型湯沸器やファンヒーター等の自動制御の内蔵された機器である。これらの機器では、水温や気温を設定温度に維持するために、ガス量の調節を常時行っているからである。
【0059】
各種のガス機器(流体使用機器10の一例)の制御構成を図10,11及び12に示す。図10は、最も簡単な構成で、手動調節弁14が設けられているだけのものである。このような構成のガス機器の代表は、従来のコンロ、焼き肉器、お好み焼き器、たこ焼き器等の廉価なものである。この種のガス機器は制御手段を備えていない。
【0060】
図11に表される構成の機器は、手動制御でありながら、その制御精度と安定性を増すために、整圧弁12(器具ガバナ)、器具栓13が設けられた例である。整圧弁12は、上流(一次側)の圧力が変動しても下流(二次側)の圧力を設定値に維持することがその本来的機能である。従って、制御手段を備えている。ガス機器にガバナを設けることで以下のように制御精度が向上する。
1.一次側のガス圧力が変動しても、燃焼量は一定に保たれる。
2.手動調節弁14を操作しても調節弁入り側の圧力が一定に保たれるため、制御の線形性が維持され、流量絞りが容易になる。(ガバナの無い状態では、流量を減少させれば調節弁上流の配管圧損が減少して調節弁入り圧力は上昇し、さらに、開度を絞らなければ流量を減少できない。)
3.小火に絞った状態の火炎、あるいは小さな種火が、圧力変動があっても消えなくなる(立ち消えの防止)。
4.逆流防止器を兼ねることができる。
【0061】
最近のコンロの一部、小型湯沸器、ストーブには、器具ガバナが内蔵されている。
コンロでは、最小絞り流量の安定性確保(立ち消え防止)、小型湯沸器では、パイロットバーナの流量安定(不完全燃焼防止機能の構成の一部をパイロットバーナで兼ねている。)、ストーブ特に赤外線バーナを用いたものでは、予混合燃焼に伴う狭い安定燃焼範囲に流量を維持して安定燃焼を確保するためと逆流防止のためである。
【0062】
図12に示すように、比例弁15によって自動制御(PI制御、PID制御等のフィーバック制御、あるいはフィードバック制御とフィードフォワード制御の組合せ)を行う機器(制御手段を備えた流体使用機器となる)では、制御性向上のために器具ガバナ12が用いられる。なお、器具ガバナ12が用いられなくても、これらの機器は常時流量が比例弁15の動きによって変動することになる。ちなみに同図において16は遮断弁である。このような制御を行うガス機器の代表例は、大型湯沸器、セントラルヒーティングボイラ及びファンヒーターである。
なお、これらの他、暖房機や貯湯式湯沸器には、ON−OFF制御もしくはHigh―Low―Off制御が行われるものもあるが、いずれも器具ガバナが設置されており、また、必然的に大きな流量変動を伴うものであるため、機器使用の判別は容易である。
【0063】
以下、図3を参照して、先に簡単に説明した記憶・演算・制御部1aについて説明する。この記憶・演算・制御部1aには、圧力計5、流量計2からの計測情報が入力される構成が採用されるとともに、遮断弁4、調節弁3へ、この記憶・演算・制御部1aからそれぞれ動作指令が送られるように構成されている。ここで、遮断弁4へは、下流側で漏洩が発生している可能性があると判断された場合に、管路の遮断指令が出力される。調整弁3へは、本願の主なテーマである下流側での漏洩の検知のために、流体の圧力を変化させる変化指令が出力される。
【0064】
記憶・演算・制御部1aは、図示するように、記憶部1aa、流量積算部1ab、制限時間監視部1ac、漏洩監視部1ad、及び入出力部1aeを有して構成されている。
前記記憶部1aaには、先に説明した計測情報が記憶されるとともに、制限時間監視において必要となる各発生流量とその発生流量に応じた制限時間が図13に示すようなデータとして記憶されている。このデータは、横軸にガス漏洩量(m3/h)を、縦軸に制限時間(分)を取ったものであり、漏洩が所定量で継続する場合に、爆発下限界に達するまでの最大限許容できる時間(換言すると、この時間が経過するまでに遮断が必要となる時間)に相当している。このデータは、例えば、所定容積の部屋において、先の漏洩流量に対応する所定速度でガス漏れが発生した状況で、その部屋の空気が2時間に一回入替わる程度の換気が行われた場合(換気回数;0.5回/h)に、その部屋のガス濃度が爆発下限界濃度以下に抑えられる限界時間として求められている。ただし、漏洩に係る流量は1日以内くらいの時間範囲内では変動しないことを前提として、漏洩流量に変動が検出された場合には、流量はコンロ等の無制御機器の使用によるもので、その操作が行われたとして、制限時間をリセットすると共に、万一流量が漏洩であった場合に配慮して、改めてその時点からその流量による制限時間までの時間計測を開始するとの前提で使用されるデータである。つまり、流量変動が有れば機器使用、無ければ漏洩と基本的には判断しているわけであるが、流量に時間変動のない機器も存在するので、一度漏洩と判断しても、遮断するまでの猶予時間として制限時間をおいていることとなる。
さらに、この記憶部1aaには、以下に詳述する漏洩検知において必要となるデータ(各定常流の流量に対する付与すべき圧力変化(単回の変化を付与する場合のみならず複数回の変化を与える場合の圧力変化量を含み、当該流量に従って、流量が所定流量より小さい場合は、必ず正側の圧力変化とされる)、各流量に対するオフセットと判別する流量等)も記憶されている。
【0065】
前記流量積算部1abは、流量計2の計測情報である瞬時流量を順次積算して、所定の期間に渡って流れる流量を求める。そして、この流量積算部1abにより積算された積算流量が、計測時の時刻に関連づけられて記憶部1aaに記憶される。このようにして蓄積された積算流量は、別途、各家庭等の燃料ガス消費に対する課金の用、さらに、各家庭における流体の消費動向を調査する等の用に供される。
【0066】
前記制限時間監視部1acは、下流側で発生する各発生流量(ある流量の流体を消費している状態(流体の消費が全くない状態を含む)から、流量が一定量増加する等の変化があった場合にその流量の増加分で、この増加分に含まれる無制御流量分が、一つの発生流量となる)について、その発生流量が流れる継続時間を監視し、各発生流量の流量に依存して予め決められている制限時間に対して、各々の発生流量の継続時間が当該制限時間を超えるか否かを監視する。ここで、上記の増加分に含まれる無制御流量分を求めるに際しては、流量の増加が見られた段階で、増加後の定常流れに、一定の圧力変化を与え、その圧力変化前後の圧力P0、P1及び流量Q0,Q1とから、無制御流量Q0″を以下の式14で求めるようにしている。
Q0″=(Q1−Q0)/(√(P1/P0)−1)・・・式14
従って、本願に係る制限時間監視では、真の漏洩流量のみを対象として、制限時間管理を行っている。そして、制限時間を超えた場合に、先に説明した遮断弁4に対する遮断情報を生成する。このようにして生成された遮断情報は入出力部1aeに送られ、後述するように漏洩監視部1adからの漏洩可能性情報との総合判断を経て、遮断指令として遮断弁4に送られる。
【0067】
前記漏洩監視部1adについて、以下詳細に説明する。
図からも判明するように、この漏洩監視部1adは、圧力変化付与手段m1、過渡応答検出手段m2、使用機器判別手段m3及び漏洩可能性情報出力手段m4を備えた構成されている。
【0068】
圧力変化付与手段m1は、漏洩検知を実行する予め設定された処理のタイミング或いは、別途外部機器から入力されるトリガー信号に従って、前記記憶部1aaに記憶されている圧力変化データに従って、管路を流れる流体の定常流れに、時間を隔てて圧力変化を付与する圧力変化付与情報を発生する。この圧力変化付与情報は、調整弁3に送られて後述する所定のパターンで、管路を流れる定常流に圧力変化の付与をもたらす。
この圧力変化付与手段m1による圧力変化の形態は、管路を流れる定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する程度を変化させ、付与する圧力変化の比率を、変化を与える前の圧力に比して一定の比率となるように構成されている。さらに詳細には、各流量に応じて圧力変化によって生じる変化後の流量が制御手段の制御範囲内で、所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とされている。
【0069】
この圧力変化付与手段m1による圧力変化の形態は、定常流れの流量に応じて、付与する圧力の値を正もしくは負に選択するように構成されている。即ち、所定の流量(例えば0.05m3/h)より流量が小さい場合は、流量が増加する方向に圧力変化を正とし、所定の流量(例えば0.05m3/h)より、流量が大きい場合は、流量が減少する方向に圧力変化を負としている。
【0070】
さらに、第1の圧力変化の付与で、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否から判断が困難な場合には、圧力変化の付与を、その変化量を違えて複数回行うように構成されている。即ち、図9で示すように、第1の圧力変化後の圧力をP1として、第2の圧力変化後の圧力をP2としている。ここで、P1とP2との関係は、後者が、前者の二倍程度(例えば1.75〜2.25倍)であることが好ましい。
【0071】
前記過渡応答検出手段m2は、圧力変化付与手段m1が働いて圧力変化の付与及び除去に伴って定常流れに生じる流量変化の過渡応答を検出するものであり、図4を例に採って説明すると、一点鎖線で示される圧力の付与及び除去に対して、これら圧力変化に対応する実線で示される流量の変化を、検出するものである。この過渡応答検出手段m2による検出範囲は、流量に変化が起こっている過渡応答領域T1の流量Q1と、過渡応答を経て到達する流量(即ち、流量が圧力変化前の流量に戻る安定流量領域T2の流量Q2)を含み、付与と除去との両変化時を含む。
【0072】
前記使用機器判別手段m3は、過渡応答検出手段m2の検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する。具体的には、以下の判断を夫々行う。
【0073】
先ず、第1の圧力変化の付与に係る使用機器判別は、以下の1〜4のいずれかで行う。
1 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、圧力変化後の流量の圧力変化前の流量に対する比率が、圧力変化後の圧力と圧力変化前の圧力に対する比率の平方根に等しくなる場合(図7参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この場合、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0074】
2 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を完全に減殺する流量変化を含む場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。さらに簡便には、圧力変化の付与を行った後、圧力変化の付与の前後における流量変化がほぼ完全に減殺された(流量が付与前の流量に戻った)と判断できる安定流量領域が現れた場合(図4及び図6参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。この場合、組込まれていない箇所はないと判断できる。従って、制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0075】
3 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲(例えば1.3倍)より大きい場合(図5及び図8参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。この場合も、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0076】
4 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲内(例えば0.7倍〜1.3倍の範囲内)の場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があるか否かの判断を行えないとする。この場合が、本願において、判断が困難な場合の一例に相当し、これまで説明した判断手法1〜3において判断を明確に行えない場合も判断が明確でない場合に含む。第2の圧力変化を付与する必要が生じる。従って、本願では、基本的にオフセットとの関係で上記のように、判断が困難な場合が発生した場合に、第2の圧力変化の付与を行う。
そして、このように第1と第2の圧力変化との複数の圧力変化を実行した場合に、圧力変化後の各流量が、複数の圧力変化に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する。
具体的には、圧力変化付与手段m1が、圧力変化の付与を、変化量を違えて複数回(少なくとも第1回及び第2回)行い、複数回実行される圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する。
【0077】
前記漏洩可能性情報出力手段m4は、使用機器判別手段m3により、管路下流に、圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性があるとの漏洩可能性情報を生成する。この漏洩可能性情報が生成されると、この情報は入出力部1aeに送られる。
【0078】
前記入出力部1aeでは、漏洩監視部1adから漏洩可能性情報を受取った情況で、制限時間監視部1acからの各発生流量に対する制限時間の経過を待つ。そして、漏洩可能性情報の受取りを条件として、前記した遮断情報が送られてくると少なくとも一つの発生流量について制限時間の経過が確認された状態で、遮断指令を出力する。
【0079】
以上が、記憶・演算・制御部1aの構成の説明である。
以下、本願に係る流体の漏洩検知方法について図面を参照しながら、説明する。
流量計2を通過する流体の流量が数秒〜数分の時間の間で変化しない場合、その流れが機器の定常使用状態に起因するものなのか漏洩に起因するものかの判別は、流量を見ているだけでは不可能である。そこで、本願に係る流体の漏洩検知方法では、先に説明した記憶・演算・制御部1aからの指令に従って、調節弁3の開度を調節することで、流体の圧力損失(圧損)を軽減して下流の圧力を上昇させ、その後増加して圧力を降下させる。このようにすると、制御された機器とそうでない機器との間で、過渡応答及びその後の定常流量に相違が見られるようになる。
【0080】
即ち、図4で示すように、流体の圧力を増加させると、器具ガバナ等が内蔵されて流量制御された機器が下流で使用されている場合には、この圧力変化を器具ガバナで制御吸収できる範囲としておくと、流量に過渡的に増加する変化が見られた後、減少して元の流量に戻り、その後、流体の圧力を減じると逆の応答が見られることになる。即ち、この様な圧力変化の付与と除去との間に、圧力変化の付与の前後における流量変化がほぼ完全に減殺された(流量が付与前の流量に戻った)と判断できる安定流量領域が現れる。もっとも、ガバナ等の比較的簡単な制御では、図5に示すように、流量が完全には元の状態に戻らずオフセット値(図5にoffsetと記載)が残ることがあるが、引き続いて圧力を除去したときには、オフセットの残った状態から始めて、逆の値のオフセット値の残る状態に至るため、圧力増減のオフセット値が同じ場合には、最終的に元の流量に戻ることになる。この場合オフセット値が異なる場合でも、その違いは大きくないことが一般的である。
【0081】
下流に設置された機器において、PID制御等の高精度の制御の行われている場合には、特にI(積分)動作によってオフセット値は残らず、D(微分)であれば図6に示すようなオーバシュートを伴う過渡特性が得られる。
【0082】
一方、漏洩や下流側の機器に制御手段が備わってない場合には、図7に示すように、過渡的な遅れの後、圧力の変化量の平方根に等しい流量の増減が見られることになる。流量計2より下流側の流れが無制御となっている場合の流量変化を図7では無制御流量qn(この無制御流量の記載形式は図8及び図9で同じ)として記載している。従って、流体の圧力にステップ状の変化を与え、その過渡応答特性(その後の定常流量を含む)を計測すれば、流体の流量が制御されているものか否かを判別することができる。
【0083】
流体使用機器10の運転中に漏洩が起きると、上流で計測している流量は両者の流量の合算されたものとなる。今、機器がガバナで制御されているものと仮定し、それに漏洩が重なっている場合に、流体の圧力を増減させると図8に示すような流量の過渡応答が見られることになる。即ち、機器で使用されている分の流量は、その増減が打ち消されるように制御されるものの、漏洩による増量分が残って、図に示す「無制御流量qn」分の差異が生じる。この差異が小さい場合、図5に示したオフセット値と区別できないと漏洩が検知できないことになり漏洩検知方法としての価値が減少する。従って、このオフセットに関しては、予め判明しているガス機器における一般的なオフセット量との比較で、区別する。
【0084】
さらに、今一つの対策として、図9に示すように、第1の圧力変化、第2の圧力変化を含めて圧力を複数回に変化させて、それぞれの圧力での定常流量値(流れが安定化し定常となっている状態での流量)の元の流量(圧力変化前の定常流れの流量)からの変化量(qn1,qn2)が、圧力P1,P2の比率の平方根に等しくなる(qn2/qn1=√(P2/P1))かどうかを調べる。制御の掛かっている機器では、圧力が複数の値に変化しても、流量はいずれの場合も、元の値に復元するが、漏洩量は、圧力変化量の平方根に比例して増加するからである。
従って、制御されている機器の正常な使用に漏洩あるいは無制御機器の使用が重畳している場合にも、両者を判別することが可能である。
【0085】
現在、家庭用ガス機器では、無制御機器はコンロ等に残っているものの、最近のものには、器具ガバナの内蔵されたものも出始めており、一方で、買換え周期の短い機器であるため、比較的短期に無制御コンロの無くなる状況が実現するものと期待できる。従って、これらの機器が本漏洩検知方法の制限となる状況はいずれ解消するものと考えられる。さらに、このようなコンロに関しては、消し忘れ防止タイマーを設けることが必須となり、コンロが所定時間以上継続的に作動している場合は、強制的に動作を停止する構造とされるため、このような心配も今後は無くなる。
【0086】
一方で、コンロのような無制御機器が混在している現況では、従来のマイコンメーターのロジックを併用することが可能である。
従って、本発明の漏洩検知方法と併用すべきロジックは以下の通りである。
1.メーター定格流量以上の大流量が生じた場合は、配管の折損、接続外れ等の大流量漏洩が考えられるため、即時に漏洩とみなす。
2.メーター定格流量内で流量変動のあったときは、機器の使用とみなす。
3.変動の無い流量が継続した場合には、漏洩の可能性があるため、爆発限界濃度に至るまでの時間で、予め流量に関連して設定された制限時間が経過した段階で、漏洩とみなす。
コンロ等の無制御器が、煮物料理等で長時間一定流量にて使用された場合には、第3のロジックを援用して漏洩とみなすことになる。これにより、従来のマイコンメーターより不安全になることはない。
一方、制御された機器であるストーブ等の長時間使用においては、従来のマイコンメーターでは第3のロジックにて、使用中にもかかわらず漏洩とされる誤動作を無くすことが可能になる。更に、マイコンメーターにおいては、漏洩があっても使用か漏洩かを判別できず、結局第3のロジックにて時間制限されるまで、漏洩が継続することになるが、本漏洩検知方法では、(新築物件等で無制御機器の設置の無い状況が予めわかっている場合には)制御機器の判別は、短時間(数秒〜数十秒)で行うことができるため、漏洩が継続することが無くなり、安全性が向上する。
なお、本発明においてこれまで説明してきた各式は、厳密にはガス供給路におけるガス機器直前箇所でのガス流量とガス圧力とについて成立する式である。したがって、ガス機器との距離が大きくてガス機器までのガス供給路における圧力損失が大きい箇所でのガス流量とガス圧力とについては、前述の各式による演算において誤差が生じるが、一般のガス供給設備では実用上、ガスメータとガス機器との距離が短いため、その誤差は特に問題とならない程度のものであり、これまで説明してきた手法を採用できる。
【0087】
〔別実施形態〕
(1) 上記の実施の形態にあっては、漏洩検知機能付き流量計として、単一の調整弁3を備えて、この調整弁3の開度調整により圧力変化を付与する例を示したが、図14に示すように、流量計より下流側に複数の流体使用機器(コンロ、小型湯沸器、湯沸器)が設備されており、それら流体使用機器の流体消費量が比較的広い流量範囲に渡る場合は、これら流体使用機器の運転時において管路を流れる流体流量が比較的大きな範囲で分布する場合がある。
このような分布がある場合、本願の漏洩検知方法を実行するのに、圧力変化を単一の機器で付与することは、適正でない。即ち、単一の機器では、的確に圧力変化を付与出来ない場合がある。そこで、このような場合には、図14に示すように、異なった流量範囲に対応する複数の調節弁3a,3b,3cを備え、定常流れの流量に応じて、付与及び除去する複数の圧力の変化機器を使い分けることが好ましい。この図において、2は超音波流量計を示している。
(2) 上記の実施の形態にあっては、図4〜図9に示すように、圧力変化として、主に圧力が増加することとなる正側の圧力変化を付与し、その後、圧力が減少する方向にその圧力変化を除去する例を示したが、圧力変化としては、先ず、圧力が減少することとなる負側の圧力変化を付与し、その後、その圧力変化を除去する(圧力が増加する)こととしてもよい。
圧力変化を正側に付与し、その後除去する場合は、火炎の立ち消え等を避ける意味から、流量が所定の流量より少ない場合に好適に適用でき、圧力変化を負側に付与し、その後除去する場合は、過大な漏洩等を避ける意味から、流量が所定の流量より多い場合に好適に適用できる。
以上、都市ガス及びガスメーター(マイコンメーター)を例に述べたが、LPGにおいても、全く同様に適用できるものである。燃料ガス輸送配管、重油、灯油等の貯油タンク等と燃焼機器とを結ぶ送油配管においても適用が可能である。さらに、水等の配管にも応用できるものであり、適用範囲が都市ガスに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
下流側で漏洩が発生している可能性が高い場合に、的確に流体の漏洩の可能性を検知できる流体の漏洩検知方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明を流体使用機器に至る管路に適用した場合の概略フロー図(機器正常燃焼時)
【図2】本発明を流体使用機器に至る管路に適用した場合の概略フロー図(管路途中に漏洩のある場合)
【図3】本発明の漏洩検知機構付き流量計の構成を示す概念図
【図4】簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図(理想状態)
【図5】簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図(オフセットのある場合)
【図6】比例制御弁を用いてPID制御のなされている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図7】漏洩のある場合の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図8】漏洩と簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の使用が重畳している場合の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図9】漏洩と簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の使用が重畳している場合の第1、第2の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図10】無制御機器の構成を表す器機内のフロー図
【図11】整圧弁の組込まれた手動機器の構成を表す器機内のフロー図
【図12】自動制御機器の構成を表す器機内のフロー図
【図13】ガス漏洩量毎の制限時間を示す説明図
【図14】異なった流量に対する複数の調節弁を備えたフロー図
【符号の説明】
【0090】
1 …漏洩検知機構付き流量計
2 …流量計
3 …調節弁(圧力の変化機器)
4 …遮断弁
5 …圧力計
10 …燃焼装置(流体使用機器)
11 …燃焼器
12 …整圧弁(器具ガバナ:制御手段)
13 …器具栓
14 …手動調節弁
15 …制御弁(制御手段)
16 …遮断弁(電磁弁)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御の行われている流体使用機器に向けて、各種の流体が送られる流体輸送用途において、流体の漏洩の検知が必要とされる分野に汎用的に使用できるものである。特に、工業炉、ボイラあるいは家庭用ガス機器等への燃料が輸送される場合の漏洩検知と流量計測に適するものである。さらには、家庭用等に使用される漏洩検知機能付きのガスメーター(いわゆる「マイコンメーター」)の安全機能を更に高める用途への応用が最適である。
【背景技術】
【0002】
家庭用マイコンメーターにおける内管漏洩検知は、深夜のガス需要のないと考えられる時間帯にも、ガスの流量が検知される状態が30日間続いた場合に、ガス漏洩と判断するものである。この漏洩検知ロジックは微小漏洩の検知に用いられる。一方、ガスメーターの定格流量を大幅に上回る過大流量に対しては、ガス管の折損等が想定されるため、即時に遮断するようにロジックが組まれている。微小流量と過大流量の間の通常使用される流量範囲では、直接漏洩を検知できる手段がないため、ガスメーターで検知している流量が漏洩によるものと仮定して、その漏洩により所定の空間が爆発限界に至る流量積算値を超えるとガスの供給を遮断するというロジックを採っている。また、その制限時間内に流量変化があると、機器が操作されたか制御動作が掛ったものとして、一旦計測した時間をリセットして、再度時間積算を始めるようにされている。この制御ロジックは、漏洩の場合には流量が変動しないということを前提にしている。
上記のような手法では、ガスメーターの通常使用流量範囲で、流量変化のない正常使用が続くと、それは漏洩であると判断されてしまうため、ガスが遮断されてしまう不便があった。そのような使用の代表例にはガスストーブがあり、長時間の使用ができない不便が生じていた。
【0003】
一方、特許文献1はガス器具判別装置に関するものであり、この特許文献1に開示の技術では、当該明細書図3、図4に示すように、能動的圧力変動手段45によってガス供給圧力を能動的に変動させ、圧力変動の前後で、圧力検出手段41と流量検出手段42がガス供給圧力とガス流量を検出する。そして、この検出値に基づいて、流量比演算手段46が、全ガス流量のうちガバナ(制御手段の一例)を有するガス器具に流れる流量の割合を求める。この割合と全ガス流量とに基づいて、ガスガバナ装備非装備別流量演算手段47が、ガバナを有するガス器具に流れるガス流量とガバナを有しないガス器具に流れるガス流量を求め、これらのガス流量と個別ガス器具流量演算手段44で求めた個別ガス器具単位の流量を比較することにより、判別手段28が、ガバナ装備の有無を判別する。
【0004】
従って、この装置を使用することにより、ガス器具判別装置より下流側に備えられているガス器具に関して、それらガス器具が、ガバナ装置を備えたものか否かを判別することができる。さらに、〔0003〕にも記載されているように、使用されているガス器具を判別し、ガス器具に応じてガス漏れの有無を判断することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−151580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に開示の技術では、管路を流れる定常流に対して、圧力減少といった一方向で一定の圧力変化を付与し、その付与に伴って発生する流量変化の過渡応答を調べることで、下流側に配設されるガス機器について、それら機器のガバナ装備の有無を判定する。
本願に係る流体の漏洩検知の対象としては、下流側で流体使用機器が運転されている状態で、さらに、漏洩を含む流量の無制御状態が重なって起こっている場合がある。即ち、圧力変化を減殺する制御がかかった制御流量と、このような制御がかからない無制御流量とが混在する状況も発生する。ここで、無制御流量には漏洩が含まれ、従来のコンロ等、制御手段を備えない流体使用機器の使用状態を含む。即ち、制御流量と無制御流量とを精度良く検知することが必要なのであるが、特許文献1の図5に示された結果を見ると、ガバナ使用機器のみの場合(実際値が1)に対して計算値が+18%もの誤差を生じている。この結果は、ガバナ等の機械的な制御装置、P(比例)動作だけでI(積分)動作のない自動制御装置では、オフセットが残って正確な判定ができないからと考えられる。このような誤差を包含する判定手法は、正常使用に漏洩が重畳している場合、漏洩流量が正常使用の約20%以下であれば検出できないことを意味しており、実用的な方法とはいえない。
本発明の目的は、制御流量を発生させる正常使用に、無制御流量を発生させる漏洩が重畳している場合にあっても、その無制御状態を良好に検知し、流体の漏洩の可能性を的確に検知できる流体の漏洩検知方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する、管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、生じる流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判別し、組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法の第1特徴構成は、
第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化を付与し、
前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力することとする。
【0008】
一般に、管路下流側に配置される流体使用機器には、流体の流量を設定・制御するための制御機構(制御手段)が付随している。流量を所定の値に維持するためには必然の機構であり、多くは自動制御となっている。
自動制御機構の高度なものの代表例は、PID(比例、積分、微分)制御であり、圧力変化等の外乱にかかわらず、流量を設定値に維持する働きをする。なおこの場合、PID制御を容易かつ確実に行うため、PID制御弁の上流に整圧弁(上流の圧力が変化しても、弁下流の圧力を設置値に維持するように制御する弁:ガバナ)を設けることが多い。
【0009】
一方、最も簡単なものは、バルブによる手動操作であるが、この場合も手動弁上流に、整圧弁(制御手段の一例)が使用されることが多い。流体の供給圧力が変化しても、流量を(手動)設定値に維持する必要があるからである。
従って、最小限、整圧弁が使用されている機器にあっては、流体の供給圧力(整圧弁上流の流体圧力:一次圧)が変化しても、整圧弁下流の圧力(二次圧)は、整圧弁の制御動作範囲においては、変化前の圧力に戻そうとする制御がかかることになり、その結果、流量は元の値に復元する。もちろん、機械的な構成であるためオフセット(偏差)が残る場合もある。
【0010】
そこで、本発明では、流量がほぼ一定で流れているときに、最初に、流体圧力の変化機器を用いて、流体の供給圧力に変化(第1の圧力変化)を付与する。この供給圧力の変化量は、前記制御機構による流量制御が可能な範囲とする。この場合、付与による圧力変化の方向はプラス側(増圧側)、マイナス側(減圧側)のいずれでもよい。そして、下流に設置された機器の制御動作によって、流量が付与後に付与前の状態に復元しようとするか否かで、流量が機器の運転によってもたらされているものか、漏洩を含む無制御状態によるものかを、所定の基準に従って判断する。漏洩の場合、流量は無制御であるため、与えた圧力変化(付与後の圧力の付与前の圧力の比率)の平方根に比例した割合で変化し、復元動作を示さないことを利用できるためである。
【0011】
この手法は、制御工学におけるいわゆるステップ応答を、制御の有無を判断する原理として応用するものであるため、ステップ応答の遅れを見込んで、流量の時間変化(経時変化)をもトレースすることが望ましい。なお、流量の復元動作に必要な時間が、予めわかっているか、代表的な値で律することのできる場合には、加えた圧力変化の前後の定常状態と見なせる2値だけで、判断することも可能である。なお、過渡応答は、ステップ応答だけではなく、インパルス応答や周波数応答を用いても良く、適宜併用することも可能である。
【0012】
本発明は、基本的に、数秒〜数十秒間流量が安定して一定値を保っているときに、その流量が機器の使用によるものか漏洩によるものかを判別するものである。そのため、流量が変動している場合には本方法による漏洩検知は、不可能もしくは不確実になる。しかしながら流量が変動しているということは、機器の制御が自動、手動にかかわらず行われているということであるから、漏洩検知を行う必要が無いので、本発明の使用範囲がそれによって限縮されるわけではない。このような判断で問題のないことは、現行マイコンメーターロジックの実績で証左されている。
【0013】
さて、第1の圧力変化のみでは、無制御状態と制御状態との識別が困難な場合がある。このような場合とは、流体使用機器に備えられる制御機器の制御構造から、流量にオフセットが残り、その制御に伴うオフセットと無制御状態との識別が明確にできない場合である。そこで、本願では、第1の圧力変化に対して、圧力変化量を変えて第2の圧力変化を付与する。この第2の圧力変化の圧力変化量は、第1の圧力変化量と違わせることとし、第1の圧力変化の変化量だけ元に戻す操作を含まない。また、これまで説明してきた制御機構側による流量制御が可能な範囲内の変化とする。
【0014】
このように圧力変化量を違えて複数回の圧力変化を与えた場合、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所がある場合は、圧力変化後の各流量は、複数回の圧力変化の増減に対応して一定の関係でそれぞれ増減する。即ち、一般に制御に伴って発生するオフセット量は、本願が対象とするような第1、第2の圧力変化量では大きく変化することはなく、制御側の機器によって発生する制御流量はオフセット分も含めてほぼ一定とみなせ、無制御の機器若しくは漏洩が存在することに起因して、第1、第2の圧力変化を付与することによって発生する圧力変化後の流量の増減が、圧力の増減に対応して現れるためである。従って、複数回の圧力変化を付与して、このような流量の増減(流量変化と圧力変化との増減対応関係)が現れた場合、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があることを判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【0015】
上記のように、第1の圧力変化と、前記第2の圧力変化を付与する場合、
第1の圧力変化後の流量及び第2の圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断することができる。この方法が本願第2の特徴構成である。
【0016】
圧力変化を与えるにあたって、変化を1回与える場合(第1の圧力変化)には、先にも説明したように無制御状態に含まれる漏洩と制御状態である機器使用が重畳している場合、無制御状態の判断がつきにくい。機器使用によって、一応、流量は復元動作を示すものの、元の流量との差異が小さくオフセット量に近い場合があるからである。このような場合に、更に異なった圧力変化(第2の圧力変化)を加えれば、以下の式で示すように、無制御状態の判断を容易に行うことができる。以下、図9を参照しながら説明する。
【0017】
一般に、流量に制御が掛っていなければ、圧力変化を与える前後の流量と圧力の関係は以下のようになる。
Q1/Q0=√(P1/P0) ・・・式1
ここで、Q及びPはそれぞれ流量と圧力、添字0及び添字1はそれぞれ1回目の変化を与える前の状態、及び後の状態を表す。ΔP1=P1−P0が与えた圧力の変化量である。さらに、2回目の圧力変化ΔP2=P2−P0を与えると、
Q2/Q0=√(P2/P0) ・・・式2
即ち、
Q2/Q1=√(P2/P1) ・・・式3
となる。
一方、制御がかかっている場合には、圧力変化量に相当する変化を機器の制御機構が、吸収(圧力が増加すれば増加量相当分の圧損を加え、減少すれば圧損を減じて、流量を設定値に維持する働き)するため、漏洩検知機構における圧力P1とP2の値はそのままで、流量は元の値Q0に回復する。
【0018】
無制御状態と制御状態が重畳している場合には流量の回復は部分的となる。1回目の圧力変化後における流量をQ1、2回目の圧力変化後における流量をQ2とすると、各回の圧力変化付与前後の流量及び圧力の関係は次の式4〜式7及び式8〜式11で表される。
【0019】
Q1″/Q0″=√(P1/P0) ………式4
Q0=Q0′+Q0″ ………式5
Q1=Q1′+Q1″ ………式6
Q0′=Q1′ ………式7
【0020】
Q2″/Q1″=√(P2/P1) ………式8
Q1=Q1′+Q1″ ………式9
Q2=Q2′+Q2″ ………式10
Q1′=Q2′ ………式11
【0021】
すなわち、式4〜式7は1回目の圧力変化付与前後の全ガス流量Q0,Q1、制御流量Q0′,Q1′、無制御流量Q0″,Q1″、圧力P0,P1の関係を示し、式8〜式11は2回目の圧力変化付与前後の全ガス流量Q1,Q2、制御流量Q1′,Q2′、無制御流量Q1″,Q2″、圧力P1,P2の関係を示す。
【0022】
ここで、前記(式3)はQ1=Q1″,Q2=Q2″の条件があることにおいて(式8)と同等の式であるから、両式を代表して(式8)を各式に基づき次の如く変形すれば下記の(式12)が得られる。
【0023】
(Q2−Q2′)/(Q1−Q1′)=√(P2/P1)
(Q2−Q1′)/(Q1−Q1′)=√(P2/P1)
(Q2−Q0′)/(Q1−Q0′)=√(P2/P1)
(Q2−Q0+Q0″)/(Q1−Q0+Q0″)=√(P2/P1)……(式12)
【0024】
また、基準圧力を大気圧とし、各段の圧力P1,P2を大気圧との差圧とすれば、大気圧においては無制御流量Q0″(代表的にはガス漏洩による流量)が0となることから、上記(式12)は次式(式12´)となる。
【0025】
(Q2−Q0)/(Q1−Q0)=qn2/qn1=√(P2/P1)………式12´
従って、二つの圧力状態における流量の変化量の比率(qn2/qn1:図9参照)が、与えた圧力の比率の平方根となっているかどうかを調べることで、無制御状態の流量が制御状態の流量に重畳しているかどうかを、判別することができる。
なお、圧力センサーを用いずに本方法を適用する場合には、圧力は予め設定した値を使用するしかないが、圧力センサーが利用できる場合には、P2、P1の値として実測値を使うことができるため、より確実に無制御状態(漏洩)を判別できる。
【0026】
一方、流量が一定している状態の時は、第1の圧力変化を与え、偏差である流量変化量が予め判明している判定値(オフセット値)を超えて生じる場合には、無制御状態が重畳しているものと判断することもできる。圧力変化後の無制御状態に含まれる漏洩による流量は、変化前の圧力に対する圧力変化後の圧力の比率の平方根に等しく発生し、流量の変化量が制御により残留するオフセット量より大きくなる場合が多いからである。
【0027】
流量が安定していないにかかわらず、敢えて、圧力変化を加えて漏洩を調べることも可能である。変化が大きくない状態、もしくは変化の間隙では、確実性は劣るものの、短時間で判定ができるため、流量が復元しようとする状態を経時変化から読み取ることが可能だからである。常に流量の変動する用途に適用が可能である。
【0028】
本発明を、家庭用都市ガスメーターあるいはLPガスメーターに漏洩検知手段の一部として応用しようとする場合には、家庭に無制御機器が保有されているか否かが問題になる。
最近の湯沸器やファンヒーターは、PID制御もしくはそれに近い制御が成されていて問題はない。問題となりそうな機器は、小型湯沸器、風呂釜、ストーブ、グリルもしくは炊飯器等である。これらの機器は手動操作であるため無制御であるように見られるが、実際には、手動制御機器であっても、制御性を良くするためもしくは安定燃焼を確保するため、整圧弁(ガバナ)が使用されている。よって、機器の使用判別は可能である。
【0029】
最も問題になるのは、ガスコンロ類(一口コンロ、テーブルコンロ、ビルトインコンロ等)である。ガスコンロは極めて安価に販売されてきたため、コストダウンのために整圧弁が設けられないのが通常であったからである。とろ火の安定性確保(絞り過ぎて火炎を消してしまわないように、また、絞った状態で立ち消えないように)のために、ガスコンロの一部に整圧弁を導入するようになったのは、比較的新しい。従って、従来のガスコンロにおいては、本手法で漏洩検知を行うことはできない。しかしながら、ガスコンロは、通常火力を手動で細かく調整しながら使用する機器であり、一定流量で使用する時間は長くない。使用時間が長くなるのは煮込み料理の場合であるが、この場合にはガス流量は絞り込まれて使用される。煮込みに相当するガス流量が万一漏洩によるものであったとしても、換気を考慮すれば、爆発限界に至らないか、至るとしても通常長時間が必要になる。従って、後述する「制限時間」の考え方を併用すれば、現行より不安全になることはあり得ない。
【0030】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する圧力変化の比率を、圧力変化を与える前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とすることにある。
【0031】
本願に係る流体の漏洩検知方法を実施するにおいては、理論的にはどのような圧力変化を与えることも可能ではあるが、実用的には適当な圧力の変化率を設定する必要がある。
上述のように、流体の流量は、無制御の場合、圧力との間に以下に示す関係が成り立つ。
Q/Q0=√(P/P0) ………式13
ここで、Q及びPはそれぞれ流量と圧力、添字0及び添字無しはそれぞれ変化を与える前の状態、及び後の状態を表す。
従って、流量計にて安定的かつ確実に測定できる流量変化率が、例えば10%であるなら、与える圧力の変化率はその自乗である121%にしなければならない。このように、加える圧力変化は流量計の精度に基づき、かつ、器具ガバナ等の器具の圧力制御機構の制御範囲やオフセット等の制御特性を考慮して、決定する必要があり、本発明は、設定すべき圧力変化率の指針を与えるものである。また、これにより昇圧機器もしくは降圧機器の選定と設定を行うことが可能になる。
【0032】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第4特徴構成は、上記第1〜3のいずれかの特徴構成に加えて、前記定常流れの流量に応じて、付与する圧力の変化機器を使い分けることにある。
【0033】
流体に圧力変化を与える変化機器として、例えば、降圧機器として制御弁、昇圧機器としてポンプ(ファン、ブロア、コンプレッサーを含む。)を使用することができる。ただし、例えば、降圧機器の使用を停止すれば、圧力は元に戻る。即ち降圧状態から見れば昇圧することになるため、降圧機器、昇圧機器という区別は、作動前の状態からの変化機器というほどの便宜上のものに過ぎない。
【0034】
本構成で使用する制御弁は、全開状態に加えて、全閉状態ではない両者の中間開度の状態が得られる弁であればどのような形式ものでも使用可能である。アナログ的な動きをする電磁弁や直動電磁弁、ダイヤフラム弁、ステップ的な動きをするパルスモーター駆動弁(ロータリーバルブ)、リニア駆動バルブ等が理想であるが、弁座の開孔面積の異なる二種以上の電磁弁を並列に組合せた複合弁でも構わない。複合弁の場合、開弁する弁の組合せによって圧力の変化率を変えることができる。途中開度を多段に使わない場合にはいわゆるHi−Lo−Off弁も使用可能である。
【0035】
一方、昇圧機器の代表はポンプであるが、流体が気体の場合はファン、ブロアもしくはコンプレッサーと昇圧程度によって呼び分けられる。輸送流体の圧力と同程度から一桁小さい程度の昇圧能力が適当である。アナログ的に圧力を変える場合には、これらを駆動するモーターの回転数を変えればよい。あるいは、前述の制御弁を備えて、昇圧した圧力を減圧方向に調整して所期の圧力に調整することも可能である。
【0036】
上記のような変化機器を使用するとしても、例えば、制御弁で圧力損失を付与する場合、大流量から微少流量までを、1台のもので行うことは困難である。制御範囲は通常1/5程度、最大でも1/10であり、メーターの計測範囲である1/100以下、微少漏洩なら1/1000に比べてその制御範囲が小さい。従って、定常流れの流量に応じて(流量範囲に応じて)大流量用、小流量用、微少流量用と複数の変化機器を用意しておき、流量範囲に応じて使い分けることで、良好に本願に係る流体の漏洩検知方法を実行できる。これは、加圧機器であるポンプの場合も同じである。
【0037】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第5特徴構成は、上記第1〜4特徴構成に加えて、
前記定常流れの流量に応じて、付与する圧力の値を正もしくは負に選択することにある。
【0038】
漏洩検知の対象の流量範囲が小流量若しくは微小流量である場合に、小流量から微少流量を制御弁で制御するためには、精度の高いバルブが必要である。また、絞りすぎて、コンロの立ち消えを招く不都合を考えておく必要もある。従って、流量が小さい場合、圧力変化が負となる減圧機器を用いるのではなく、圧力変化が正となる加圧機器、例えば小さなエアポンプを用いる方が安全で、かつコストも下がる可能性が高い。
このように、本願に係る技術を、ガスメーターに応用する場合には、圧力変化を負とするより正とするほうが安全となる場合があり得る。例えば、先に示したようにコンロを絞りきって使用している場合等では、そこで降圧を行うとコンロの立消えの発生する可能性が生じるからである。従って、降圧機器によって漏洩検知を行う際に、予め最低流量を設定しておき、その流量より小さい流量範囲では、本方法に基づく流量検知は行わないようなロジックの追加が適当である。これにより、通常は、昇圧機器より安価な降圧機器を利用できることになり、低コストで漏洩検知機構付き流量計を提供できる。
【0039】
一方、一般に、漏洩がある場合には、昇圧に伴って漏洩量が増加する危険がある。そこで、このような場合は、圧力変化を負とする(減圧する)のが好ましい。さらに、漏洩に関して、昇圧する場合は、その昇圧幅と検知時間は必要最小限に抑えるべきである。
【0040】
本発明に係る流体の漏洩検知方法の第6特徴構成は、上記第1〜5特徴構成に加えて、
流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計を用いて行うものであり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つことにある。
本発明を適用する場合、流量計は超音波流量計等の瞬時流量型の方が好都合だからである。瞬時流量計の場合、数秒で判定を完結することができ、判定適用中に新たな機器の使用開始による流量変動を受ける可能性を低く抑えることができるからである。
一方で、積算流量計を取引メーターとして使用する場合、流量積算を行う必要があり、実用化には必須要件となる。
【0041】
さて、これまで説明してきた本願第1の特徴構成の漏洩検知方法を使用する漏洩検知装置は、以下のように構成することができる。
即ち、管路を流れる流体の定常流れに、時間を隔てて圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、
前記圧力変化付与手段が働いて前記付与により前記定常流れに生じる流量変化の過渡応答を検出する過渡応答検出手段と、
前記過渡応答検出手段の検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する使用機器判別手段とを備え、
前記使用機器判別手段により、管路下流に、圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性があると出力する漏洩情報出力手段を備え、
前記使用機器判別手段が、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確に行えない場合に、前記圧力変化付与手段が、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化で付与し、
前記使用機器判別手段が、前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力するものとして装置が構成できる。
【0042】
圧力変化付与手段は、圧力変化の付与により定常流れに圧力変化を与える。その結果発生する定常流れの流量変化の過渡応答を過渡応答検出手段が検出する。そして、この検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する。その判別結果に基づいて、漏洩情報出力手段が流体の漏洩の可能性を出力する。結果、管路下流に組み込まれている制御手段の有無に従って、漏洩の可能性を検知することができる。
この際、第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所(無制御となっている箇所)があるか否かの判断が明確でない場合に、第2の圧力変化を前記第1の圧力変化の圧力変化量と違えて付与し、両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力することとなる。
【0043】
この装置による検知結果と、各発生流量に対する制限時間との組み合わせにより、さらに有効な漏洩検知を行うことができる。
【0044】
以下、使用機器判別手段における判断に関して、第1の圧力変化を付与した場合の判断手法、さらに第2の圧力変化を付与した場合の判断手法を説明する。
【0045】
第1の圧力変化を付与した場合の判断手法
1 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
圧力変化後の流量の圧力変化前の流量に対する比率が、圧力変化後の圧力と圧力変化前の圧力に対する比率の平方根に等しくなる場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この判別手法は、下流側が完全に無制御(漏洩を含む)となっている状況において発生する流量変化を基礎として判別する手法であり、この状況を的確に判別できる。この場合は、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化をさらに付与する必要はない。
【0046】
2 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、流量変化量が、予め設定されているオフセット量の所定範囲より大きい場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この判別手法は、下流側に制御手段が存在するが、その制御によって発生するオフセットが予め判明している状況において適用可能な手法であり、ある程度の流量の漏洩が発生している場合に、この漏洩を的確に判別できる。この場合も、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化をさらに付与する必要はない。
【0047】
3 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、
流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲内にある場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があるとの判断が明確に行えないとする。
この判別手法は、下流側に制御手段が存在するが、その制御によって発生するオフセットが予め判明している状況において適用可能な手法である。この場合は、無制御状態が明確に判断できないため、第2の圧力変化を付与する必要がある。
【0048】
4 圧力変化の付与の後に、圧力変化に伴う流量変化が減殺されたと判断できる安定流量領域が存在する場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。
この判別手法は、下流側が完全に制御された状態となっている状況において発生する流量変化を基礎として判別する判別手法であり、この状況を的確に判別できる。この場合は、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
この場合は、第1の圧力変化の付与と、それと同量の圧力変化の除去とを対として実行し安定流量領域を検出すると、圧力変化の付与後(除去前)の流量と、付与前及び除去後の流量とに基づいて(例えば、両流量の平均値を使用する)、流量変化が実質的にほぼ完全に減殺されていることを確認でき、管路の状況を的確に代表した判別を行える。
例えば、圧力変化の付与後(除去前)の流量と、付与前及び除去後の流量の平均値がほぼ同一となっていることで確認できる。
【0049】
そして、上記の3に示したように判断が明確でない場合には、先に説明した第1の圧力変化に加えて、第2の圧力変化を付与する。即ち、圧力変化を変化量を違えて複数回実行することとする。この場合、第1、第2の圧力変化と見なせる複数の圧力変化を付与すればよく、その数を問うものではない。そして、使用機器判別手段が、複数回実行される圧力変化後の流量について、前記使用機器判別手段が、圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する。
【0050】
この場合の使用機器判別手段における判断手法としては、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断するものとする。これが先に説明した本願第2の特徴構成の漏洩検知方法に対応する。
【0051】
これまで説明してきた漏洩検知装置において、
前記圧力変化付与手段が、流体の定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する圧力変化の比率を、変化を与える前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とすることが好ましい。
この構成の圧力変化付与手段を備えることで、先に説明した第3の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0052】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、
複数の圧力の変化機器を備え、定常流れの流量に応じて、圧力の変化機器を使い分けることが好ましい。
このように、複数の圧力の変化機器を備え、それらを定常流れの流量に応じて使い分けることで、先に説明した第4の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0053】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、前記圧力変化付与手段が、定常流れの流量に応じて、付与及び除去する圧力の値を正もしくは負に選択することが好ましい。
このような圧力変化付与手段を備えることで、先に説明した第5の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる漏洩検知装置を実現できる。
【0054】
さらに、これまで説明してきた漏洩検知装置において、前記過渡応答検出手段を構成する流量計が、流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計であり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つことが好ましい。
このように漏洩検知装置を構成することで、先に説明した第6の特徴構成の漏洩検知方法を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
ガスメーターへの適用を念頭に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、正常に燃焼している燃焼機器の燃料流量計測に本発明を利用した場合の系全体のフロー図である。
漏洩検知機構付き流量計1は、図3に詳細構成を示すように、瞬時流量を計測できる流量計2、燃料の流れに圧力変動を付与する調節弁3、漏洩時に燃料を遮断する遮断弁4、圧力を計測する圧力計5、少なくとも流量の積算を行う記憶・演算・制御部1a、流量の出力を行う通信部1b、及び流量の表示を行う表示部1cから構成される。ここで、記憶・演算・制御部1aでは、瞬時流量の積算の他に、本発明による漏洩検知方法を用いた比較演算を行う。その結果は通信部1b及び表示部1cを経由して出力される。また、通信部1bは、外部からの燃料遮断信号や漏洩検知トリガー信号を受信したり、漏洩の可能性を外部機器に出力する場合にも使用される。
【0056】
図2は図1に示した場合において、燃焼機器が停止している状態で、途中の管路に漏洩がある場合を示している。この場合においては、漏洩検知機構付き流量計1は、漏洩流量を検知していることになる。
【0057】
本発明における解決すべき課題は、流量計2の計測している流量が、下流に設置された制御手段を備えた機器の正常使用によるものか、無制御状態に含まれる漏洩によるものかを流量計2の位置において判別することである。
しかしながら、流体使用機器10には多種多様なものがあるため、単に流量を計測しているだけではその判別を行うことはできない。
【0058】
正常使用において流量変動の無いガス機器の主なものは、ガスストーブ、小型湯沸器及びコンロ等の手動制御機器である。これらのものは、使用開始直後には、ガス量調整を行うものの、その後は比較的長時間一定燃焼量で使用を継続する。
一方、流量変動の比較的大きいものは、大型湯沸器やファンヒーター等の自動制御の内蔵された機器である。これらの機器では、水温や気温を設定温度に維持するために、ガス量の調節を常時行っているからである。
【0059】
各種のガス機器(流体使用機器10の一例)の制御構成を図10,11及び12に示す。図10は、最も簡単な構成で、手動調節弁14が設けられているだけのものである。このような構成のガス機器の代表は、従来のコンロ、焼き肉器、お好み焼き器、たこ焼き器等の廉価なものである。この種のガス機器は制御手段を備えていない。
【0060】
図11に表される構成の機器は、手動制御でありながら、その制御精度と安定性を増すために、整圧弁12(器具ガバナ)、器具栓13が設けられた例である。整圧弁12は、上流(一次側)の圧力が変動しても下流(二次側)の圧力を設定値に維持することがその本来的機能である。従って、制御手段を備えている。ガス機器にガバナを設けることで以下のように制御精度が向上する。
1.一次側のガス圧力が変動しても、燃焼量は一定に保たれる。
2.手動調節弁14を操作しても調節弁入り側の圧力が一定に保たれるため、制御の線形性が維持され、流量絞りが容易になる。(ガバナの無い状態では、流量を減少させれば調節弁上流の配管圧損が減少して調節弁入り圧力は上昇し、さらに、開度を絞らなければ流量を減少できない。)
3.小火に絞った状態の火炎、あるいは小さな種火が、圧力変動があっても消えなくなる(立ち消えの防止)。
4.逆流防止器を兼ねることができる。
【0061】
最近のコンロの一部、小型湯沸器、ストーブには、器具ガバナが内蔵されている。
コンロでは、最小絞り流量の安定性確保(立ち消え防止)、小型湯沸器では、パイロットバーナの流量安定(不完全燃焼防止機能の構成の一部をパイロットバーナで兼ねている。)、ストーブ特に赤外線バーナを用いたものでは、予混合燃焼に伴う狭い安定燃焼範囲に流量を維持して安定燃焼を確保するためと逆流防止のためである。
【0062】
図12に示すように、比例弁15によって自動制御(PI制御、PID制御等のフィーバック制御、あるいはフィードバック制御とフィードフォワード制御の組合せ)を行う機器(制御手段を備えた流体使用機器となる)では、制御性向上のために器具ガバナ12が用いられる。なお、器具ガバナ12が用いられなくても、これらの機器は常時流量が比例弁15の動きによって変動することになる。ちなみに同図において16は遮断弁である。このような制御を行うガス機器の代表例は、大型湯沸器、セントラルヒーティングボイラ及びファンヒーターである。
なお、これらの他、暖房機や貯湯式湯沸器には、ON−OFF制御もしくはHigh―Low―Off制御が行われるものもあるが、いずれも器具ガバナが設置されており、また、必然的に大きな流量変動を伴うものであるため、機器使用の判別は容易である。
【0063】
以下、図3を参照して、先に簡単に説明した記憶・演算・制御部1aについて説明する。この記憶・演算・制御部1aには、圧力計5、流量計2からの計測情報が入力される構成が採用されるとともに、遮断弁4、調節弁3へ、この記憶・演算・制御部1aからそれぞれ動作指令が送られるように構成されている。ここで、遮断弁4へは、下流側で漏洩が発生している可能性があると判断された場合に、管路の遮断指令が出力される。調整弁3へは、本願の主なテーマである下流側での漏洩の検知のために、流体の圧力を変化させる変化指令が出力される。
【0064】
記憶・演算・制御部1aは、図示するように、記憶部1aa、流量積算部1ab、制限時間監視部1ac、漏洩監視部1ad、及び入出力部1aeを有して構成されている。
前記記憶部1aaには、先に説明した計測情報が記憶されるとともに、制限時間監視において必要となる各発生流量とその発生流量に応じた制限時間が図13に示すようなデータとして記憶されている。このデータは、横軸にガス漏洩量(m3/h)を、縦軸に制限時間(分)を取ったものであり、漏洩が所定量で継続する場合に、爆発下限界に達するまでの最大限許容できる時間(換言すると、この時間が経過するまでに遮断が必要となる時間)に相当している。このデータは、例えば、所定容積の部屋において、先の漏洩流量に対応する所定速度でガス漏れが発生した状況で、その部屋の空気が2時間に一回入替わる程度の換気が行われた場合(換気回数;0.5回/h)に、その部屋のガス濃度が爆発下限界濃度以下に抑えられる限界時間として求められている。ただし、漏洩に係る流量は1日以内くらいの時間範囲内では変動しないことを前提として、漏洩流量に変動が検出された場合には、流量はコンロ等の無制御機器の使用によるもので、その操作が行われたとして、制限時間をリセットすると共に、万一流量が漏洩であった場合に配慮して、改めてその時点からその流量による制限時間までの時間計測を開始するとの前提で使用されるデータである。つまり、流量変動が有れば機器使用、無ければ漏洩と基本的には判断しているわけであるが、流量に時間変動のない機器も存在するので、一度漏洩と判断しても、遮断するまでの猶予時間として制限時間をおいていることとなる。
さらに、この記憶部1aaには、以下に詳述する漏洩検知において必要となるデータ(各定常流の流量に対する付与すべき圧力変化(単回の変化を付与する場合のみならず複数回の変化を与える場合の圧力変化量を含み、当該流量に従って、流量が所定流量より小さい場合は、必ず正側の圧力変化とされる)、各流量に対するオフセットと判別する流量等)も記憶されている。
【0065】
前記流量積算部1abは、流量計2の計測情報である瞬時流量を順次積算して、所定の期間に渡って流れる流量を求める。そして、この流量積算部1abにより積算された積算流量が、計測時の時刻に関連づけられて記憶部1aaに記憶される。このようにして蓄積された積算流量は、別途、各家庭等の燃料ガス消費に対する課金の用、さらに、各家庭における流体の消費動向を調査する等の用に供される。
【0066】
前記制限時間監視部1acは、下流側で発生する各発生流量(ある流量の流体を消費している状態(流体の消費が全くない状態を含む)から、流量が一定量増加する等の変化があった場合にその流量の増加分で、この増加分に含まれる無制御流量分が、一つの発生流量となる)について、その発生流量が流れる継続時間を監視し、各発生流量の流量に依存して予め決められている制限時間に対して、各々の発生流量の継続時間が当該制限時間を超えるか否かを監視する。ここで、上記の増加分に含まれる無制御流量分を求めるに際しては、流量の増加が見られた段階で、増加後の定常流れに、一定の圧力変化を与え、その圧力変化前後の圧力P0、P1及び流量Q0,Q1とから、無制御流量Q0″を以下の式14で求めるようにしている。
Q0″=(Q1−Q0)/(√(P1/P0)−1)・・・式14
従って、本願に係る制限時間監視では、真の漏洩流量のみを対象として、制限時間管理を行っている。そして、制限時間を超えた場合に、先に説明した遮断弁4に対する遮断情報を生成する。このようにして生成された遮断情報は入出力部1aeに送られ、後述するように漏洩監視部1adからの漏洩可能性情報との総合判断を経て、遮断指令として遮断弁4に送られる。
【0067】
前記漏洩監視部1adについて、以下詳細に説明する。
図からも判明するように、この漏洩監視部1adは、圧力変化付与手段m1、過渡応答検出手段m2、使用機器判別手段m3及び漏洩可能性情報出力手段m4を備えた構成されている。
【0068】
圧力変化付与手段m1は、漏洩検知を実行する予め設定された処理のタイミング或いは、別途外部機器から入力されるトリガー信号に従って、前記記憶部1aaに記憶されている圧力変化データに従って、管路を流れる流体の定常流れに、時間を隔てて圧力変化を付与する圧力変化付与情報を発生する。この圧力変化付与情報は、調整弁3に送られて後述する所定のパターンで、管路を流れる定常流に圧力変化の付与をもたらす。
この圧力変化付与手段m1による圧力変化の形態は、管路を流れる定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する程度を変化させ、付与する圧力変化の比率を、変化を与える前の圧力に比して一定の比率となるように構成されている。さらに詳細には、各流量に応じて圧力変化によって生じる変化後の流量が制御手段の制御範囲内で、所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とされている。
【0069】
この圧力変化付与手段m1による圧力変化の形態は、定常流れの流量に応じて、付与する圧力の値を正もしくは負に選択するように構成されている。即ち、所定の流量(例えば0.05m3/h)より流量が小さい場合は、流量が増加する方向に圧力変化を正とし、所定の流量(例えば0.05m3/h)より、流量が大きい場合は、流量が減少する方向に圧力変化を負としている。
【0070】
さらに、第1の圧力変化の付与で、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否から判断が困難な場合には、圧力変化の付与を、その変化量を違えて複数回行うように構成されている。即ち、図9で示すように、第1の圧力変化後の圧力をP1として、第2の圧力変化後の圧力をP2としている。ここで、P1とP2との関係は、後者が、前者の二倍程度(例えば1.75〜2.25倍)であることが好ましい。
【0071】
前記過渡応答検出手段m2は、圧力変化付与手段m1が働いて圧力変化の付与及び除去に伴って定常流れに生じる流量変化の過渡応答を検出するものであり、図4を例に採って説明すると、一点鎖線で示される圧力の付与及び除去に対して、これら圧力変化に対応する実線で示される流量の変化を、検出するものである。この過渡応答検出手段m2による検出範囲は、流量に変化が起こっている過渡応答領域T1の流量Q1と、過渡応答を経て到達する流量(即ち、流量が圧力変化前の流量に戻る安定流量領域T2の流量Q2)を含み、付与と除去との両変化時を含む。
【0072】
前記使用機器判別手段m3は、過渡応答検出手段m2の検出結果より、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれているか否かを判別する。具体的には、以下の判断を夫々行う。
【0073】
先ず、第1の圧力変化の付与に係る使用機器判別は、以下の1〜4のいずれかで行う。
1 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、圧力変化後の流量の圧力変化前の流量に対する比率が、圧力変化後の圧力と圧力変化前の圧力に対する比率の平方根に等しくなる場合(図7参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。
この場合、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0074】
2 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を完全に減殺する流量変化を含む場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。さらに簡便には、圧力変化の付与を行った後、圧力変化の付与の前後における流量変化がほぼ完全に減殺された(流量が付与前の流量に戻った)と判断できる安定流量領域が現れた場合(図4及び図6参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていると判断する。この場合、組込まれていない箇所はないと判断できる。従って、制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0075】
3 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲(例えば1.3倍)より大きい場合(図5及び図8参照)に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断する。この場合も、無制御状態が明確に判断できるため、第2の圧力変化を付与する必要はない。
【0076】
4 圧力変化の付与に伴って定常流れに生じる流量変化に関して、流量変化が付与された圧力変化を減殺する流量変化を含み、且つ、前記流量変化量が、予め前記圧力変化の量に対して設定されているオフセット量の所定範囲内(例えば0.7倍〜1.3倍の範囲内)の場合に、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器10に圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があるか否かの判断を行えないとする。この場合が、本願において、判断が困難な場合の一例に相当し、これまで説明した判断手法1〜3において判断を明確に行えない場合も判断が明確でない場合に含む。第2の圧力変化を付与する必要が生じる。従って、本願では、基本的にオフセットとの関係で上記のように、判断が困難な場合が発生した場合に、第2の圧力変化の付与を行う。
そして、このように第1と第2の圧力変化との複数の圧力変化を実行した場合に、圧力変化後の各流量が、複数の圧力変化に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する。
具体的には、圧力変化付与手段m1が、圧力変化の付与を、変化量を違えて複数回(少なくとも第1回及び第2回)行い、複数回実行される圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する。
【0077】
前記漏洩可能性情報出力手段m4は、使用機器判別手段m3により、管路下流に、圧力変化を減殺する制御手段が組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性があるとの漏洩可能性情報を生成する。この漏洩可能性情報が生成されると、この情報は入出力部1aeに送られる。
【0078】
前記入出力部1aeでは、漏洩監視部1adから漏洩可能性情報を受取った情況で、制限時間監視部1acからの各発生流量に対する制限時間の経過を待つ。そして、漏洩可能性情報の受取りを条件として、前記した遮断情報が送られてくると少なくとも一つの発生流量について制限時間の経過が確認された状態で、遮断指令を出力する。
【0079】
以上が、記憶・演算・制御部1aの構成の説明である。
以下、本願に係る流体の漏洩検知方法について図面を参照しながら、説明する。
流量計2を通過する流体の流量が数秒〜数分の時間の間で変化しない場合、その流れが機器の定常使用状態に起因するものなのか漏洩に起因するものかの判別は、流量を見ているだけでは不可能である。そこで、本願に係る流体の漏洩検知方法では、先に説明した記憶・演算・制御部1aからの指令に従って、調節弁3の開度を調節することで、流体の圧力損失(圧損)を軽減して下流の圧力を上昇させ、その後増加して圧力を降下させる。このようにすると、制御された機器とそうでない機器との間で、過渡応答及びその後の定常流量に相違が見られるようになる。
【0080】
即ち、図4で示すように、流体の圧力を増加させると、器具ガバナ等が内蔵されて流量制御された機器が下流で使用されている場合には、この圧力変化を器具ガバナで制御吸収できる範囲としておくと、流量に過渡的に増加する変化が見られた後、減少して元の流量に戻り、その後、流体の圧力を減じると逆の応答が見られることになる。即ち、この様な圧力変化の付与と除去との間に、圧力変化の付与の前後における流量変化がほぼ完全に減殺された(流量が付与前の流量に戻った)と判断できる安定流量領域が現れる。もっとも、ガバナ等の比較的簡単な制御では、図5に示すように、流量が完全には元の状態に戻らずオフセット値(図5にoffsetと記載)が残ることがあるが、引き続いて圧力を除去したときには、オフセットの残った状態から始めて、逆の値のオフセット値の残る状態に至るため、圧力増減のオフセット値が同じ場合には、最終的に元の流量に戻ることになる。この場合オフセット値が異なる場合でも、その違いは大きくないことが一般的である。
【0081】
下流に設置された機器において、PID制御等の高精度の制御の行われている場合には、特にI(積分)動作によってオフセット値は残らず、D(微分)であれば図6に示すようなオーバシュートを伴う過渡特性が得られる。
【0082】
一方、漏洩や下流側の機器に制御手段が備わってない場合には、図7に示すように、過渡的な遅れの後、圧力の変化量の平方根に等しい流量の増減が見られることになる。流量計2より下流側の流れが無制御となっている場合の流量変化を図7では無制御流量qn(この無制御流量の記載形式は図8及び図9で同じ)として記載している。従って、流体の圧力にステップ状の変化を与え、その過渡応答特性(その後の定常流量を含む)を計測すれば、流体の流量が制御されているものか否かを判別することができる。
【0083】
流体使用機器10の運転中に漏洩が起きると、上流で計測している流量は両者の流量の合算されたものとなる。今、機器がガバナで制御されているものと仮定し、それに漏洩が重なっている場合に、流体の圧力を増減させると図8に示すような流量の過渡応答が見られることになる。即ち、機器で使用されている分の流量は、その増減が打ち消されるように制御されるものの、漏洩による増量分が残って、図に示す「無制御流量qn」分の差異が生じる。この差異が小さい場合、図5に示したオフセット値と区別できないと漏洩が検知できないことになり漏洩検知方法としての価値が減少する。従って、このオフセットに関しては、予め判明しているガス機器における一般的なオフセット量との比較で、区別する。
【0084】
さらに、今一つの対策として、図9に示すように、第1の圧力変化、第2の圧力変化を含めて圧力を複数回に変化させて、それぞれの圧力での定常流量値(流れが安定化し定常となっている状態での流量)の元の流量(圧力変化前の定常流れの流量)からの変化量(qn1,qn2)が、圧力P1,P2の比率の平方根に等しくなる(qn2/qn1=√(P2/P1))かどうかを調べる。制御の掛かっている機器では、圧力が複数の値に変化しても、流量はいずれの場合も、元の値に復元するが、漏洩量は、圧力変化量の平方根に比例して増加するからである。
従って、制御されている機器の正常な使用に漏洩あるいは無制御機器の使用が重畳している場合にも、両者を判別することが可能である。
【0085】
現在、家庭用ガス機器では、無制御機器はコンロ等に残っているものの、最近のものには、器具ガバナの内蔵されたものも出始めており、一方で、買換え周期の短い機器であるため、比較的短期に無制御コンロの無くなる状況が実現するものと期待できる。従って、これらの機器が本漏洩検知方法の制限となる状況はいずれ解消するものと考えられる。さらに、このようなコンロに関しては、消し忘れ防止タイマーを設けることが必須となり、コンロが所定時間以上継続的に作動している場合は、強制的に動作を停止する構造とされるため、このような心配も今後は無くなる。
【0086】
一方で、コンロのような無制御機器が混在している現況では、従来のマイコンメーターのロジックを併用することが可能である。
従って、本発明の漏洩検知方法と併用すべきロジックは以下の通りである。
1.メーター定格流量以上の大流量が生じた場合は、配管の折損、接続外れ等の大流量漏洩が考えられるため、即時に漏洩とみなす。
2.メーター定格流量内で流量変動のあったときは、機器の使用とみなす。
3.変動の無い流量が継続した場合には、漏洩の可能性があるため、爆発限界濃度に至るまでの時間で、予め流量に関連して設定された制限時間が経過した段階で、漏洩とみなす。
コンロ等の無制御器が、煮物料理等で長時間一定流量にて使用された場合には、第3のロジックを援用して漏洩とみなすことになる。これにより、従来のマイコンメーターより不安全になることはない。
一方、制御された機器であるストーブ等の長時間使用においては、従来のマイコンメーターでは第3のロジックにて、使用中にもかかわらず漏洩とされる誤動作を無くすことが可能になる。更に、マイコンメーターにおいては、漏洩があっても使用か漏洩かを判別できず、結局第3のロジックにて時間制限されるまで、漏洩が継続することになるが、本漏洩検知方法では、(新築物件等で無制御機器の設置の無い状況が予めわかっている場合には)制御機器の判別は、短時間(数秒〜数十秒)で行うことができるため、漏洩が継続することが無くなり、安全性が向上する。
なお、本発明においてこれまで説明してきた各式は、厳密にはガス供給路におけるガス機器直前箇所でのガス流量とガス圧力とについて成立する式である。したがって、ガス機器との距離が大きくてガス機器までのガス供給路における圧力損失が大きい箇所でのガス流量とガス圧力とについては、前述の各式による演算において誤差が生じるが、一般のガス供給設備では実用上、ガスメータとガス機器との距離が短いため、その誤差は特に問題とならない程度のものであり、これまで説明してきた手法を採用できる。
【0087】
〔別実施形態〕
(1) 上記の実施の形態にあっては、漏洩検知機能付き流量計として、単一の調整弁3を備えて、この調整弁3の開度調整により圧力変化を付与する例を示したが、図14に示すように、流量計より下流側に複数の流体使用機器(コンロ、小型湯沸器、湯沸器)が設備されており、それら流体使用機器の流体消費量が比較的広い流量範囲に渡る場合は、これら流体使用機器の運転時において管路を流れる流体流量が比較的大きな範囲で分布する場合がある。
このような分布がある場合、本願の漏洩検知方法を実行するのに、圧力変化を単一の機器で付与することは、適正でない。即ち、単一の機器では、的確に圧力変化を付与出来ない場合がある。そこで、このような場合には、図14に示すように、異なった流量範囲に対応する複数の調節弁3a,3b,3cを備え、定常流れの流量に応じて、付与及び除去する複数の圧力の変化機器を使い分けることが好ましい。この図において、2は超音波流量計を示している。
(2) 上記の実施の形態にあっては、図4〜図9に示すように、圧力変化として、主に圧力が増加することとなる正側の圧力変化を付与し、その後、圧力が減少する方向にその圧力変化を除去する例を示したが、圧力変化としては、先ず、圧力が減少することとなる負側の圧力変化を付与し、その後、その圧力変化を除去する(圧力が増加する)こととしてもよい。
圧力変化を正側に付与し、その後除去する場合は、火炎の立ち消え等を避ける意味から、流量が所定の流量より少ない場合に好適に適用でき、圧力変化を負側に付与し、その後除去する場合は、過大な漏洩等を避ける意味から、流量が所定の流量より多い場合に好適に適用できる。
以上、都市ガス及びガスメーター(マイコンメーター)を例に述べたが、LPGにおいても、全く同様に適用できるものである。燃料ガス輸送配管、重油、灯油等の貯油タンク等と燃焼機器とを結ぶ送油配管においても適用が可能である。さらに、水等の配管にも応用できるものであり、適用範囲が都市ガスに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
下流側で漏洩が発生している可能性が高い場合に、的確に流体の漏洩の可能性を検知できる流体の漏洩検知方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明を流体使用機器に至る管路に適用した場合の概略フロー図(機器正常燃焼時)
【図2】本発明を流体使用機器に至る管路に適用した場合の概略フロー図(管路途中に漏洩のある場合)
【図3】本発明の漏洩検知機構付き流量計の構成を示す概念図
【図4】簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図(理想状態)
【図5】簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図(オフセットのある場合)
【図6】比例制御弁を用いてPID制御のなされている機器の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図7】漏洩のある場合の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図8】漏洩と簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の使用が重畳している場合の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図9】漏洩と簡単な制御機器(ガバナ)が使用されている機器の使用が重畳している場合の第1、第2の圧力変化時の流量過渡応答を示す図
【図10】無制御機器の構成を表す器機内のフロー図
【図11】整圧弁の組込まれた手動機器の構成を表す器機内のフロー図
【図12】自動制御機器の構成を表す器機内のフロー図
【図13】ガス漏洩量毎の制限時間を示す説明図
【図14】異なった流量に対する複数の調節弁を備えたフロー図
【符号の説明】
【0090】
1 …漏洩検知機構付き流量計
2 …流量計
3 …調節弁(圧力の変化機器)
4 …遮断弁
5 …圧力計
10 …燃焼装置(流体使用機器)
11 …燃焼器
12 …整圧弁(器具ガバナ:制御手段)
13 …器具栓
14 …手動調節弁
15 …制御弁(制御手段)
16 …遮断弁(電磁弁)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、生じる流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判断し、組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法であって、
第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化を付与し、
前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法。
【請求項2】
前記第1の圧力変化と、前記第2の圧力変化を付与した場合に、
第1の圧力変化後の流量及び第2の圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する請求項1記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項3】
前記定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する比率を、圧力変化付与前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とする請求項1又は2記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項4】
前記定常流れの流量に応じて、圧力を変化させる変化機器を使い分ける請求項1〜3のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項5】
前記定常流れの流量に応じて、圧力変化の値を正もしくは負に選択する請求項1〜4のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項6】
流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計を用いて行うものであり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つ請求項1〜5のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項1】
管路を流れる流体の定常流れに圧力変化を付与し、生じる流量変化の過渡応答を調べることにより、管路下流に設置された単数もしくは複数の流体使用機器に圧力変化を減殺する制御が組込まれているか否かを判断し、組込まれていない箇所があると判断した場合に、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法であって、
第1の圧力変化の付与では、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があるか否かの判断が明確でない場合に、前記定常流れの圧力からの圧力変化量について、前記第1の圧力変化の圧力変化量とは異なる圧力変化量で第2の圧力変化を付与し、
前記両圧力変化後の各流量が各圧力変化の増減に対応して増減する場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断し、流体の漏洩の可能性を出力する流体の漏洩検知方法。
【請求項2】
前記第1の圧力変化と、前記第2の圧力変化を付与した場合に、
第1の圧力変化後の流量及び第2の圧力変化後の流量について、前記定常流れの流量からの変化量の比率が、圧力変化後の各圧力の平方根の比率に等しくなる場合に、管路下流に圧力変化を減殺する制御が組込まれていない箇所があると判断する請求項1記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項3】
前記定常流れの流量に応じて圧力変化を付与する比率を、圧力変化付与前の圧力に比して一定の比率で、且つ圧力変化によって生じる変化後の流量が所定の精度で測定可能な流量内に収まる比率とする請求項1又は2記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項4】
前記定常流れの流量に応じて、圧力を変化させる変化機器を使い分ける請求項1〜3のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項5】
前記定常流れの流量に応じて、圧力変化の値を正もしくは負に選択する請求項1〜4のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【請求項6】
流体の流量測定が原理として瞬時流量を計測する流量計を用いて行うものであり、瞬時流量を積算して積算流量を出力する手段を付帯機能として併せ持つ請求項1〜5のいずれか一項記載の流体の漏洩検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−128067(P2009−128067A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300766(P2007−300766)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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