説明

流体カセット中の圧力モニタリング

血液処理システムのための流体カセット(100)がカセット筐体および剛構造(150)を含む。カセットの筐体はカセットの構造を画定し、少なくとも部分的にそれを通じて伸びる流体管路を持つ。流体管路(210)は、流体が筐体中を通過するようにするよう画定されている。剛構造は流体管路と流体接続する空洞(220)を画定する。剛構造はまた、圧力モニタリング装置と相互作用し、ならびに/または圧力モニタリング装置と接続する、インターフェース(240)を持つ。インターフェースは圧力モニタリング装置が流体管路中の圧力を測定できるようにする。空洞は流体管路とインターフェースとの間に配置される空気容量を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月13日出願の「流体カセット中の圧力モニタリング」と題され、発明者としてEdward T. Powers、Matthew J. MurphyおよびMichael Ragusaを指定する、米国特許出願第12/465,327号、代理人整理番号1611/A55からの優先権を主張し、この開示は参照によりそのすべての内容をここに組み入れる。
【0002】
本発明は血液処理装置に関し、そしてより詳細にはカセットに基づく血液処理装置中の圧力モニタリングに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの現在ある血液システムは複数の流体を処理し、複雑な流体管路の配置を持ち、そしてそれらはしばしばラインおよび流体管路を組織するための一つもしくはそれ以上のカセットを用いる。カセットは流体ラインを組織し、より小さい全体のシステムを可能にし、そして、装置への充填およびセットアップを大幅に単純化する。血液処理の例はアフェレーシスである。アフェレーシスは、患者もしくはドナーより全血を採血し、血液を複数の成分に分離し、一つもしくはそれ以上の成分を回収し、そして残余の成分を患者へと返血するプロセスである。
【0004】
血液処理の間、流体ライン中の圧力は、患者の安全性ならびにシステムの性能及び効率性にとって非常に重要である。そのため、血液処理システムは典型的には、流体ライン(特に採血および返血ライン)の部分もしくは全体中の圧力をモニタリングする。例えば、アフェレーシス装置において、全血の採血および血液成分の返血の間に、ドナーの圧力が閾値を超えたり閾値より下になったりすることがないようにドナーの圧力はモニタリングされる。圧力のモニタリングのためのいくつかの解決策が実行されてきたが、それらは重大な欠点を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの従来技術のシステムは、流体ラインへと接続されるモニタリングラインを備える。モニタリングラインは0.2マイクロメータ(ミクロン)のフィルタを含有し、そしてルアーテーパー継ぎ手によって圧力変換器へと手動で接続されていても良い。流体ライン中の圧力が増加すると、流れる流体と変換器の間のモニタリングライン中に捉えられた空気柱を液体が圧迫する。その後、圧力変換器が圧力の変化を検出する。システムは圧力の低下を同様の方法によって検出できる。この手法は効果的であると証明されてきているが、これはいくつかの欠点を持つ。第一にそのような構造はカセット内へと簡単に組み入れる事ができない。さらに、それらの構造はそれぞれの変換器を手動で接続するためのオペレーターを必要とし、それは接触不良を起こしやすくする。もし接続が気密性でないなら、流体は空気を柱から追い出し、そして変換器の保護装置を濡らす。もしその事が起こると、センサ/変換器はもはや機能しなくなる。
【0006】
他の従来技術のシステムは異なる手法をとる。それらのシステムは流体管路中にフレキシブルなメンブレン(例えばシリコーン)を持つ。そのメンブレンは一側面において流体と接しており、他の側面において変換器と接触する。流体ライン中の圧力の増加は、フレキシブルメンブレンを介して変換器上に圧力を作り出す。しかしながら、これらのシステムはメンブレンの変換器側へと付着する金属のディスクの存在なしには負の圧力を検出する事がない。そしてシステムは、負の圧力の間にメンブレンのカップリングを作り出すためのメンブレンに組み込まれるマグネットを用いる。この手法は効果的であると証明されてきているが、コストと複雑さの点において重大な欠点がある。メンブレンと金属のディスクの両方はセットに対してコストを追加し、そして製造プロセスやセットアップのプロセスに対し複雑さを追加する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の実施態様において、血液処理システムのための流体カセットが提供される。カセットはカセット筐体と剛構造(例えば、ドームもしくは管路)を含み得る。カセット筐体はカセットの構造を画定し、少なくとも部分的に筐体中を通って伸長する流体管路を備える。流体管路は流体が筐体を通過できるように刷る。剛構造は流体管路と流体接続する空洞を画定し、圧力モニタリング装置と接続し/相互作用するインターフェイスを備える。圧力モニタリング装置は流体管路中の圧力を測定できる。空洞は、流体管路とインターフェイスとの間に配置される空気容量を備える。
【0008】
流体カセットはまた、剛構造中に配置される静菌フィルタを備え得る。例えば、フィルタは剛構造の頂部に配置され、インターフェースを貫通してもよい。フィルタは流体管路が滅菌状態に保たれるようにし、空気容量は流体管路中の流体が静菌フィルタと接触するのを防ぐ。フィルタは多孔性のプラスチックプラグであってよく、疎水性であってよい。
【0009】
空洞中の空気容量は、流体管路中の圧力の増加および低下に反応して縮んだり膨らんだりすることによって流体管路中の圧力の変化を圧力モニタリング装置へと伝える。例えば、流体管路中の圧力の増加は空気容量を圧迫し、それによって圧力モニタリングデバイス上の圧力を増加させる。空気容量が完全に圧迫されるときに、流体管路中の流体が静菌フィルタと接触するのを空気容量が防ぐことができるように、空気容量は充分に大きい。
【0010】
関連する実施態様によると、カセットは剛構造の空洞中に配置される垂直のスタンドパイプを備えていてもよい。静菌フィルタはスタンドパイプの底部に配置され得る。スタンドパイプは、内部空気容量に含まれないスタンドパイプ容量を持つ。剛構造が管路である実施態様において、管路は流体接続管路および内部容量管路を含み得る。流体接続管路は、流体管路と内部容量管路との間の流体接続を提供する。インターフェースおよびフィルタは内部容量管路中に配置され得る。
【0011】
本発明のさらなる実施態様において、血液処理システム用の流体カセット中の圧力をモニタリングするための方法は、血液処理システムへと流体カセットを挿入するステップ、血液処理を開始するステップ、およびカセット中の流体管路の圧力を測定するステップを含む。オペレータ/技術者が流体カセットを挿入すると、圧力モニタリング装置は、剛構造上に/剛構造中に配置されるインターフェースへと接続される。剛構造は、流体カセット中に配置される流体管路と流体接続する空洞を画定する。空洞は、流体管路とインターフェースとの間に配置される空気容量を備える。測定される流体管路中の圧力は、空洞中の空気容量の圧迫される量の関数であり得る。
【0012】
流体カセットは、流体管路を滅菌状態に保つ静菌フィルタを含んでも良い。フィルタは剛構造の頂部に配置されてもよく、インターフェースを貫通してもよい。空洞内の空気容量は流体管路中の流体が静菌フィルタと接触するのを防ぐことができる。さらに、空洞内の空気容量は流体管路中の圧力の変化を圧力モニタリング装置へと伝えることができる。例えば、流体管路中の圧力の増加が空気容量を圧迫し、それが転じて圧力モニタリング装置によって測定される圧力を増加させる。空気容量が完全に圧迫されるときに、流体管路中の流体が静菌フィルタと接触するのを空気容量が防ぐ事ができるように、空気容量は充分に大きくてよい。
【0013】
本発明のさらなる実施態様によると、アフェレーシス装置中で用いられる圧力モニタリングシステムは流体カセット、流体カセットと接続するベースユニット、ならびに圧力モニタリング装置を含む。流体カセットは剛構造と、それを貫通し流体がカセットを通過できるようにする流体管路とを備え得る。剛構造は流体管路と流体接続する空洞を備え得る。空洞は、流体管路とインターフェースとの間に配置される空気容量を備え得る。圧力モニタリング装置は剛構造上のインターフェースと接続可能である。圧力モニタリング装置は、例えば、少なくとも部分的に空気容量の圧迫量に基づいて流体管路中の圧力を測定できる。
【0014】
圧力モニタリングシステムはまた、剛構造中に配置されインターフェースを貫通する静菌フィルタを備え得る。静菌フィルタは流体管路が滅菌状態を保つ事を確かにできる。さらに空気容量が完全に圧迫されるときに、流体管路中の流体が静菌フィルタと接触するのを空気容量が防ぐ事ができるように、空気容量は充分に大きくてよい。
【0015】
多の実施態様によると、剛構造は垂直のスタンドパイプを含んでいてよく、静菌フィルタは垂直のスタンドパイプの底部に配置されていてもよい。垂直のスタンドパイプは空気容量に含まれないスタンドパイプ容量を含み得る。剛構造はドームもしくは管路であってよい。管路は流体接続管路および内部容量管路を含み得る。流体接続管路は流体管路と内部容量管路との間の流体接続を提供し、インターフェースが内部容量管路に配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の上述の特徴は、添付の図表への参照とともに以下の詳細な記載を参照する事によってより容易に理解されるであろう。
【図1】図1は、本発明の一実施態様によって画定される流体カセットの透視図を模式的に示す。
【図2】図2は、本発明の実施態様による、図1に示される流体カセットの一部分の断面図を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明の実施態様による、血液処理システムに挿入された図1に示される流体カセットの断面図を模式的に示す。
【図4】図4は、本発明の実施態様による流体カセットの代替的な実施態様の断面図を模式的に示す。
【図5】図5AおよびBは、本発明による流体カセットの台酸の実施態様の透視図を模式的に示す。
【図6】図6は、本発明の実施態様による、血液処理システム中の圧力を測定するために、流体カセットの実施態様を用いるプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示的な実施態様において、血液処理システム用の流体カセット100は向上した圧力モニタリング能を有する。上述の通り、アフェレーシスシステムのような血液処理システムは、システムを通る流体の流れを組織し、そして単純化するために流体カセットを用いる。一般的に、アフェレーシスシステムは、ドナーより全血を採血し、全血をその成分へと分離し、特定の成分(例えば、赤血球、血小板、血漿など)を回収/収集し、そして残余の成分をドナーへと返血する。採血プロセスと返血プロセスの両方の間、血液アフェレーシスシステムは、圧力が高すぎたり低すぎたりしないことを確かにするために流体ラインおよびカセット100の中の圧力をモニタリングすべきである。そうすることによってドナーに対する損傷の可能製を避け、システムの効率性及び性能を最適化するのを助ける。流体カセット100の実施態様は、システムの圧力モニタリング能を向上し、単純化するために様々な流体/血液アフェレーシスシステムにおいて使用できる。
【0018】
図1は、本発明の実施態様による血液カセット100を模式的に示す。血液カセット100はカセット100の構造を画定する筐体110を備える。筐体は単一の部品であっても複数の部品であってもよい。例えば、筐体は頂部筐体120と底部筐体130とを備えてもよい。筐体部品は、スナップフィット、超音波溶接およびプラスチック溶接を含むがそれらに限定されない様々な方法によって組み立てる事が出来る。筐体部品の数および組立方法に関わらず、筐体110は、カセット100が血液アフェレーシスシステムと容易に接続するようにできるように適切な大きさおよび形であるべきである。
【0019】
筐体110は、カセット100を貫通する複数の流体管路210を含み得る(図2)。例えば、筐体は採血流体管路および返血流体管路を備え得る。返血流体管路の注入口は、患者/ドナーへと導かれるチューブと接続されていてよい。患者/ドナーから採血された血液は採血流体管路注入口を通じて流体カセット100へと入り、採血流体管路を通って流れ、採血流体管路排出口から流出する。採血流体管路排出口は、遠心機、ポンプ、血液浄化装置または血液をその成分に分離したりもしくは採血された血液を処理したりするのに使用できる他の装置のようなさらなる血管処理機器(表示されない)へと導かれていてもよい。同様に、ドナーおよび/もしくは上述の他の血液処理装置へと送られる血液成分と他の流体とを含有する流体貯蔵バッグへと、返血流体管路が接続されていてもよい。ドナーへと返血される流体は、ドナーへと返血されるとき、返血流体管路とカセット100を通過できる。採血流体管路および返血流体管路に加えて、カセット100はまた、血液アフェレーシスシステムのさまざまな構成要素を接続し、構成要素間を移送される流体がカセット100を通過できるようにする移送流体管路を含むがそれらには限定されないさまざまな他の流体管路を備え得る。
【0020】
上述のように、流体カセット100は、組立の間にベースユニット340と接続する(図3)。ベースユニット340はさまざまな検出及び測定装置を含み得る。例えば、ベースユニット340は流体管路210中の空気泡を検出する空気検出装置を含める。追加として、または代替的に、ベースユニットは、ベースユニット/アフェレーシスシステムが流体管路210中の圧力を測定できるようにする圧力モニタリング装置およびシールを含み得る。
【0021】
流体管路210中の圧力のモニタリングを促進するために、流体カセット100は、筐体110上に配置される一つもしくはそれ以上の剛構造を備え得る。例えば、図1および2に示されるように、筐体110は様々な圧力ドーム150を含み得る。図2に示されるように、圧力ドーム150の内部が、圧力ドーム150中の内部空気容量を作り出す空洞220であるように、圧力ドーム150は中空であってもよい。圧力ドーム150、空洞220、および内部空気容量は、流体接続チャネル230を介して流体管路210と流体接続していてもよい。より詳細に下に記載されるように、流体接続チャネル230と空洞/内部空気容量220とは、流体管路210中の圧力および圧力の変化を圧力モニタリング装置310(図3)へと伝えるために協調する。
【0022】
空洞220と内部空気容量に加えて、圧力ドーム150は、圧力モニタリング装置310が圧力ドーム150と接続するインターフェース240をまた備え得る。流体管路210を滅菌状態に保ち、すべてのバクテリアもしくは他のデブリが空洞220もしくは流体管路210へと侵入するのを防ぐために、フィルタ250を圧力ドーム150の頂部152(例えばインターフェース240に)に組み入れる事ができる。フィルタ250は静菌フィルタであってよく、疎水性であってよい。例えば、フィルタ250は、フィルタ250が0.2マイクロメータ(ミクロン)フィルタに相当する滅菌バリアを提供するように、充分に入り組んだ経路を持つ多孔性のプラスチックプラグであってよい。代替的にフィルタ250は、従来型の静菌フィルタメディアであってよく、所定の位置に溶接されているか、または他の好適な手段によって機械的に保持されていてもよい。フィルタ250の型もしくは構造に関わらずフィルタ250は、正確な圧力検出を確かにするのに十分なフィルタ250を通る空気の流れを可能にする。
【0023】
操作において、流体が流体管路210を通過するとき、流体管路210中の圧力は圧力モニタリング装置310へと流体接続チャネル230および空洞220中の内部空気容量を介して伝えられる。詳細には、流体管路210中の流体および/もしくは圧力は空洞220中の内部空気容量を圧迫し、そして圧力モニタリング装置310は内部空気容量の圧迫量に基づいて流体管路210中の圧力を測定する。もし流体管路210中の圧力が増加すると、流体/圧力は内部空気容量を圧迫し、圧力モニタリング装置310は圧力の増加を、検出し測定する。逆に、流体管路210中の圧力が低下すると、内部空気容量がふくらみ(例えば、それはより圧迫されないようになる)、そして圧力モニタリング装置310は低下した圧力を検出し測定する。
【0024】
内部空気容量が完全に圧迫されるときに流体管路210中の流体がフィルタ250と接触するのを防ぐのに十分な空気容量が空洞220中に残されているようになるために、内部空気容量が充分に大きくあるべきということは注目すべきである。換言すると、空気が最大に圧迫された時でさえ内部空気容量は流体とフィルタ250との間の緩衝として作用すべきである。従って、内部空気容量の的確な量は、流体管路210中の最大限の予想される圧力、圧力モニタリング装置31内のシール320と圧力変換器との間にある圧力モニタリング装置310中のすべての空気容量、ならびに最大限の予想される周囲大気圧の関数であってよい。装置内の空気容量と空洞内の空気容量の合計は、圧力検出システムの全ての閉じ込められた空気容量(例えば、流体管路210中の流体によって圧迫される空気容量)を画定する。
【0025】
さらに、内部空気容量が流体管路210中の流体の圧力によって圧迫されるとき、理想気体の法則(例えばPV=nRT)は、圧力と容量とが反比例し、そして二つの間の相関が線形である(例えばP=P)ことを示していることは注目に値する。換言すると、もしシステムを2438メートル(8000フィート)もの高さの高度において実行ことが必要とされるとき、それは75kPa(565mmHg)の周囲大気圧にさらされるであろう。それゆえ、カセット100がアフェレーシスシステムに装填されるとき、空洞220の内部空気容量はVと定義され、そして圧力Pは周囲大気圧である。流体管路210が加圧されるとき、その圧力(例えばP)は、周囲とは異なる圧力である。それゆえ、流体管路210中の最大限の流体圧力は、66.7kPa(500mmHg)であり、空洞220中の内部空気容量および圧力モニタリング装置310における実際の圧力は142kPa(1065mmHg)となるであろう。Vがわかるので、Vは計算できるであろう。この例では、VはVより47%小さくなるであろう。
【0026】
上述の通り、フィルタ250が流体と接触するのを避けるために、内部空気容量は空洞220中に十分な空気を持つべきである。上に提供される例において、全体量はおおよそ半分になる。それゆえ、空洞200中の容量対装置中の容量の比が1:1であるとき、空洞220が完全に加圧されるときに充たされる。こうであるとき、フィルタ250は流体と接触する。従って、空洞220中の内部空気容量は増大されるべきである。空洞220中の空気容量対装置中の容量の比が2:1であるとき、空洞220が完全に加圧されるとき75%しか充たされない。選択される正確な比は、必要とされる安全係数に依存する。さらに、全体の空気容量は圧力変化の検出における遅れを避けるために最小限であるべきである。
【0027】
上述のように、圧力モニタリング装置310および対応するシール320はアフェレーシス装置の部分をなしてよい。詳細には図3に示されるように、圧力モニタリング装置310とシール320は可動式ドア330上に配置されてもよい。可動式ドア330は、カセット100をベースユニット340に挿入したりカセット100をベースユニットと接続したりするために、開ける事ができる。カセット100が所定の位置にあると、可動式ドア330は閉じられてよい。シール320と圧力モニタリング装置310とはドア330上に配置され、ドア330が閉じられるとき、シール320と圧力モニタリング装置310が一直線になりインターフェース240に対してシールする。シールはOリングを含むがそれらには限定されない任意の数の構造であってよい。
【0028】
他の実施態様によると、図4に示されるように、カセット100は圧力ドーム150の空洞220中に配置されるスタンドパイプ410を含んでもよい。そのような態様において、フィルタ250およびインターフェース240はスタンドパイプ410の底部、そしてそれゆえカセット100の底部に配置されてもよい。フィルタ250およびインターフェース240をカセット100の底部に移動させる事によって、圧力モニタリング装置310とシール320とはカセット100の下に配置され得る。換言すると、圧力モニタリング装置とシール320とは移動式ドア330から離れ、カセット100の下のベースユニット340中に配置される。それゆえ、カセット100がベースユニット340と接続するので、圧力モニタリング装置310とインターフェース240との間の接続/シールはカセット100の挿入により形成される(例えば、接続/シールを形成するためにドア330が閉じられる必要はない)。
【0029】
スタンドパイプ410を持つ実施態様において流体がフィルタ250と接触するのを防ぐために、流体がスタンドパイプ410の壁415を超えて流れる事がないように、空洞220中の内部空気容量は充分に大きくあるべきであることは注目すべきである。従って、好ましい実施態様において、スタンドパイプ中の容量420(例えばスタンドパイプ容量)は、必要とされる空洞220中の内部空気容量の計算には含まれない。それゆえ、スタンドパイプ410を持つ実施態様は、幾分大きい空洞220中の内部空気容量を必要とする。
【0030】
スタンドパイプ410の存在はまた、カセット100がベースユニット340中の水平で内位置に設置されるのを可能にする。詳細には、スタンドパイプ410は流体がフィルタ250に到達するのに追加の障害を提供するので、カセット100を水平でなく設置できる。しかしながらカセット100を水平でなく設置するためには、空洞220が完全に加圧されるときに、および/または内部空気容量が完全に圧迫されるときに、スタンドパイプ410の末端430は空気中にあるべき(例えば流体管路210からの流体が末端430の周りにまったくない)である。
【0031】
内部空気容量は圧力ドーム150中に含有されると上述されるが、他の構造を空洞および内部空気容量を画定するのに使用できる。詳細には図5Aおよび図5Bに示されるように、カセット100は管路510である剛構造を備え得る。管路510は内部容量管路520および流体接続管路530を備え得る。圧力ドーム150と同様に、内部容量管路520は内部空洞を生じる空洞522を備える。流体接続管路530は、内部容量管路520を流体管路210へと流体接続する。
【0032】
操作中、管路510の大部分は上述の圧力ドーム150と同じように機能する。詳細には、流体管路210中の圧力は内部容量管路520中の内部空気容量を圧迫する(例えば流体接続管路530を介して)。インターフェース240においてカセット100と相互作用する圧力モニタリング装置310は、圧迫とそれゆえの圧力を検出し、そして測定できる。上述の実施態様と同様に、管路510は内部容量管路520中のインターフェース240に配置されるフィルター250を含み得る。
【0033】
管路510は上述の圧力ドーム150のような隆起した構造である必要がないことは注目すべきである。むしろ、図5Aに示されるように、管路510は単純に流体管路210から離れて伸展する追加の管路であってよい。換言すると、管路510は流体管路210と実質的に同一平面であって良い。管路510を備える実施態様は、垂直のカセットの方向を必要とするアフェレーシスシステムにおいて特に有用である。
【0034】
図6は、流体管路中の圧力を測定するために上述のカセット100および血液処理システムを用いる方法を解説するプロセスを示す。第一に、技術者もしくはシステムオペレータは流体カセット100を血液処理システムへと挿入できる(ステップ610)。上述のように、カセット100の構造は、カセット100がベースユニット340に挿入されると(例えば挿入時に、またはドア330が下げられる/閉じられる後に)圧力モニタリング装置310がカセット100とインターフェース240において接続し、そしてシール320が圧力モニタリング装置310とインターフェース240との間のシールを作り出すようになっている。
【0035】
オペレータ/技術者がカセット100を挿入し、ドア330を下げる/閉じる(もし必要なら)と、技術者/オペレータは血液処理を開始できる(ステップ620)。上述のように、さまざまな血液処理の手段および装置(例えば血液アフェレーシス)が本発明の実施態様を利用できる。処理が開始されると、全血、血液成分もしくは他の流体(例えば抗凝固剤)はカセット100中の流体管路210を通って流れる。
【0036】
流体が流体管路210を通ると、圧力モニタリング装置310は流体管路210中の圧量kを測定できる(ステップ630)。上述のように、圧力モニタリング装置310は、少なくとも一部分は、流体が空洞220もしくは内部容量管路520中の内部空気容量を圧迫する量に基づいて流体管路210中の圧力を測定できる。流体管路210の圧力が上昇すると、流体は内部空気容量をさらに圧迫し、そして圧力モニタリング装置310がより高い圧力を測定する結果となる。逆に流体管路210中の圧力が低下すると、内部空気容量がふくらみ、圧力モニタリング装置310がより低い流体管路圧力を測定する結果になる。システムが(例えばマイクロプロセッサもしくは他のコントローラによって)より装備が整っているならば、血液処理システムは、圧力モニタリングデバイス310によって測定される圧力に基づいて流体管路210中の流速を増加したり減じたりまたは維持したりできる。
【0037】
さまざまな実施態様が血液アフェレーシスシステムと接続して使用されると上述されたが、本発明の他の実施態様は、他の血液処理システムおよび方法と接続して使用できる。例えば、採血流路の注入口は、(例えば、患者もしくはドナーよりも)血液貯蔵コンテナへと導かれるチューブへと接続できる。同様に、返血流路はさらなる血液処理装置および/もしくは流体貯蔵コンテナへと導かれるチューブへと接続できる。この場合、本発明のいくつかの実施態様は、患者/ドナーと独立している、血液処理の間のカセット中の圧力をモニタリングするのに使用される。
【0038】
上述のように、本発明の実施態様は、流体管路圧力モニタリングが流体カセットに組み込まれることを可能にし、これは従来技術システムの多くにおいて必要とされる手動の装填操作を除外する。さらに、本発明の実施態様において使用されるシール320は、より信頼できるシールを提供し、そしてルアーテーパー継ぎ手を用いる従来技術のシステムよりも漏出の可能性がはるかに少ない。本発明の実施態様はまた、システムを単純化する事によって製造コストを下げ、そして、追加の部品の数と接着操作を最小にする。さらに、本発明の実施態様はカセットの装着に伴う圧力変換器インターフェースの自動的な装着を可能にし、そしてオペレータ/技術者が適切でない使い捨てのセットを装着する可能性を減らす。
【0039】
上述の本発明の実施態様は例示のみを意図し、あまたの変形および変更は当業者には明らかであろう。すべてのそのような変形および変更は、添付の請求項によって規定されるような本発明の範囲内に入ることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理システムのための流体カセットであって:
少なくとも部分的に筐体中を通って伸長する流体管路を備え、カセットの構造を画定するカセット筐体であって、流体が前記筐体内を通過するように前記流体管路が画定されているカセット筐体、ならびに
流体管路と流体接続する空洞を画定する剛構造であって、前記剛構造が圧力モニタリング装置と相互作用するインターフェースを備え、圧力モニタリング装置が流体管路中の圧力を測定できるようにし、そして前記空洞が流体管路とインターフェースとの間に配置される空気容量を備える、剛構造
を含有する、流体カセット。
【請求項2】
前記剛構造中に配置される静菌フィルタであって、前記静菌フィルタが流体管路を滅菌状態に保つのを確かにしている静菌フィルタをさらに含有する、請求項1に記載の流体カセット。
【請求項3】
前記静菌フィルタが剛構造の頂部に配置され、かつ前記インターフェースを貫通し、前記流体管路中の流体が前記静菌フィルタと接触するのを前記空気容量が防いでいる、請求項2に記載の流体カセット。
【請求項4】
前記静菌フィルタが多孔性のプラスチックプラグである、請求項2に記載の流体カセット。
【請求項5】
前記静菌フィルタが疎水性である、請求項2に記載の流体カセット。
【請求項6】
前記空洞中の前記空気容量が、前記流体管路中の圧力の変化を前記流体管路中の圧力の増加および低下に反応して圧縮および膨張することによって前記圧力モニタリング装置へと伝える、請求項1に記載の流体カセット。
【請求項7】
前記流体管路中の圧力の増加が前記空気容量を圧迫し、それによって前記圧力モニタリング装置上の圧力を増加させる、請求項6に記載の流体カセット。
【請求項8】
前記空気容量が完全に圧迫されているときに前記流体管路中の流体が前記剛構造中の前記流体管路と前記圧力モニタリング装置との間に配置される静菌フィルタと接触することを前記空気容量が防ぐように前記空気容量が充分に大きい、請求項7に記載の流体カセット。
【請求項9】
前記剛構造の前記空洞中に配置される垂直のスタンドパイプをさらに含有する、請求項1に記載の流体カセット。
【請求項10】
前記垂直のスタンドパイプ中に配置される静菌フィルタをさらに含有する、請求項9に記載の流体カセット。
【請求項11】
前記静菌フィルタが前記垂直のスタンドパイプの底部に配置される、請求項10に記載の流体カセット。
【請求項12】
前記垂直のスタンドパイプがスタンドパイプ容量を備え、前記空気容量が前記スタンドパイプ容量を含んでいない、請求項10に記載の流体カセット。
【請求項13】
前記剛構造がドームである、請求項1に記載の流体カセット。
【請求項14】
前記剛構造が管路である、請求項1に記載の流体カセット。
【請求項15】
前記管路が流体接続管路および内部容量管路を含み、前記流体接続管路が流体管路と内部容量管路との間の流体接続を提供する、請求項14に記載の流体カセット。
【請求項16】
前記インターフェースが前記内部容量管路中に配置される、請求項15に記載の流体カセット。
【請求項17】
内部容量管路中に配置される静菌フィルタをさらに含有する、請求項15に記載の流体カセット。
【請求項18】
血液処理システムのための流体カセット中で圧力をモニタリングするための方法であって、
前記血液処理システムに前記流体カセットを挿入するステップであって、ここで前記流体カセットの挿入が圧力モニタリング装置をインターフェースへと接続し、ここで前記インターフェースが、流体カセット中に配置される流体管路と流体接続する空洞を画定する剛構造上に配置され、ここで前記空洞が前記流体管路と前記インターフェースとの間に配置される空気容量を備える、ステップと、
血液処理を開始するステップ;ならびに
前記流体管路中の圧力を前記圧力モニタリング装置を用いて測定するステップであって、ここで前記流体管路中の圧力が前記空洞中の前記空気容量の圧迫量の関数である、ステップ
を含有する、方法。
【請求項19】
前記流体カセットが剛構造中に配置される静菌フィルタを含み、前記静菌フィルタが流体管路を滅菌状態に保つのを確かにしている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記静菌フィルタが剛構造の頂部に配置され、かつインターフェースを貫通し、前記流体管路中の流体が前記静菌フィルタと接触するのを前記空気容量が防いでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記空洞中の前記空気容量が、前記流体管路中の圧力の変化を前記圧力モニタリング装置へと伝える、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記流体管路中の圧力の増加が前記空気容量を圧迫し、それによって前記圧力モニタリング装置によって測定される圧力を増加させる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記空気容量が完全に圧迫されているときに前記流体管路中の流体が前記剛構造中の前記流体管路と前記圧力モニタリング装置との間に配置される静菌フィルタと接触することを前記空気容量が防ぐように前記空気容量が充分に大きい、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記剛構造が前記空洞中に配置される垂直のスタンドパイプを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記剛構造が、前記垂直のスタンドパイプ中に配置される静菌フィルタを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記静菌フィルタが前記垂直のスタンドパイプの底部に配置される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記垂直のスタンドパイプがスタンドパイプ容量を備え、前記空気容量が前記スタンドパイプ容量を含んでいない、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記剛構造がドームである、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記剛構造が流体接続管路および内部容量管路を備える管路であり、前記流体接続管路が流体管路と内部容量管路との間の流体接続を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記インターフェースが前記内部容量管路中に配置される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
血液処理装置用の圧力モニタリングシステムであって、前記システムが
流体カセットであって、その中を貫通する流体管路を備え、ここで流体が前記カセット内を通過するように前記流体管路が画定されて、ここで前記流体カセットが剛構造をも備え、ここで前記剛構造がインターフェースと、前記流体管路と流体接続している空洞とを備え、ここで前記空洞が前記流体管路と前記インターフェースとの間に配置される空気容量を備える、流体カセット;
前記流体カセットと接続するよう画定されているベースユニット;ならびに
前記インターフェースと接続可能な圧力モニタリング装置であって、前記圧力モニタリング装置が前記流体管路中の圧力を測定する、圧力モニタリング装置
を含有する、圧力モニタリングシステム。
【請求項32】
前記圧力モニタリング装置が、前記流体管路中の圧力を、少なくとも部分的に前記空気容量の圧迫量に基づいて測定する、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項33】
前記剛構造中に配置され、かつ前記インターフェースを貫通する静菌フィルタであって、前記静菌フィルタが流体管路を滅菌状態に保つのを確かにしている静菌フィルタをさらに含有する、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項34】
前記空気容量が完全に圧迫されているときに前記流体管路中の流体が前記剛構造中の前記流体管路と前記圧力モニタリング装置との間に配置される静菌フィルタと接触することを前記空気容量が防ぐように前記空気容量が充分に大きい、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項35】
前記剛構造が垂直のスタンドパイプを備え、前記垂直のスタンドパイプが前記垂直のスタンドパイプの底部に配置される静菌フィルタを備える、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項36】
前記垂直のスタンドパイプがスタンドパイプ容量を備え、前記空気容量が前記スタンドパイプ容量を含んでいない、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項37】
前記剛構造がドームである、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。
【請求項38】
前記剛構造が流体接続管路および内部容量管路を含む管路であり、前記流体接続管路が流体管路と内部容量管路との間の流体接続を提供し、前記インターフェースが前記内部容量管路中に配置される、請求項31に記載の圧力モニタリングシステム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−526627(P2012−526627A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510931(P2012−510931)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034374
【国際公開番号】WO2010/132438
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(594202615)ヘモネティクス・コーポレーション (22)
【氏名又は名称原語表記】Haemonetics Corporation
【住所又は居所原語表記】400 Wood Road,Braintree,Massachusetts 02184,United Statesof America
【Fターム(参考)】