説明

流体フィルター

流体を濾過するためのフィルターは、流入端部および排出端部と、ハウジングの長さ方向に沿って延在する膨張可能部材と、当該ハウジングの長さ方向に延在すると共に流入端部において固定された複数の繊維とを具備してなる。上記膨張可能部材が膨張させられたとき、上記繊維は圧迫されて漸変フィルター基体を形成する。付加的フィルター媒体が上記流入端部内に導入され、それは流体のさらなる濾過のために繊維に捕らえられた状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体フィルター、特に、これに限定されるわけではないが、水のような液体から固形物質を除去するための高圧・大量処理フィルターに関する。本発明はさらにフィルターを稼働させる方法にまで拡張される。
【背景技術】
【0002】
媒体中に混入した物質を捕らえるために繊維を利用するフィルターが特許文献1および特許文献2に開示されている。同様の装置は特許文献3にも開示されている。
【0003】
特許文献3の装置の作動原理を図1および図1aに概略的に示す。フィルター100は流入端部102と排出端部103とを備えたフィルターハウジング101を具備してなる。ハウジングの長さ方向に延在しているのは、サポート106によって適所に保持された複数の平行な繊維である。この繊維を取り囲んでいるのは、フレキシブルな耐水膜104である。
【0004】
濾過中、膜104は図1aに107で示すように加圧され、これによって内部ピンチポイント(pinch point)108に向って繊維を締め付ける。濾過される物質は矢印で示す方向にフィルターを通って押しやられる。このフィルターは、膜内の圧力解放および通常の濾過流とは逆向きの逆流洗浄によって水を押し流して掃除することができる。
【0005】
このタイプのフィルターはある用途に関しては有用となり得るが、ますます小さなサイズの粒子を濾過して取り除くことが望まれている。この目的を達する一つの方策は、膜が加圧された際に隣接繊維間の隙間が減少するよう繊維をより細くすることであろう。この選択肢によって濾過レベルを向上させることができるが、その製造には費用がかかり、しかも困難を伴う。
【0006】
さらに、より脆弱な繊維は、フィルター稼動中に容易に損傷を受ける。
【0007】
フィルター媒体として珪藻土のような公知のパウダーを使用することが知られている。だが、このパウダーは非常に細かいものであるので、それは、パウダー粒子がまとまるように、大きな厚みのある濾過ベッド内で使用される。珪藻土は高い濾過性能をもたらすが、それを大規模に使用する場合には、輸送が困難であるという欠点を有し、輸送コストは禁止的に高いものとなる。さらに、濾過される媒体がいったん土類ベッドを通過してしまうと、この土類に捕らえられたままのフィルターケーキおよび土類自身は、フィルターを掃除するために、フィルターから掻き落とさなければならない。これは多くの時間を必要とし、しかもクリーニング処理が実施されている間はフィルターを稼働させることができないので効率が悪い。
【特許文献1】米国特許第5,470,470号明細書(US-A-5470470)
【特許文献2】米国特許第4,617,120号明細書(US-A-4617120)
【特許文献3】欧州特許第0280052号明細書(EP-A-0280052)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、こうしたフィルターの濾過レベルを向上させると同時に従来技術に関連する問題を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば流体を濾過するためのフィルターが提供され、このフィルターは、流入端部と排出端部とを有するフィルターハウジングと、このハウジングの長さ方向(縦方向)に延在する膨張可能部材と、ハウジングの長さ方向に延在すると共に流入端部において固定された複数の繊維と、流入端部内に導入可能な付加的フィルター媒体とを具備してなり、膨張可能部材が膨張させられたとき、流入端部と、押し付けられる繊維とハウジングの内面または膨張可能部材のいずれかとの間に形成されるピンチ領域と、の間に漸変フィルター基体を形成するよう、繊維はハウジングに対してあるいは互いに押し付けられ、かつ、付加的フィルター媒体が流入端部内に導入されたとき、それは流体のさらなる濾過のためにピンチ領域で捕らえられるようになっている。
【0010】
本発明の第2の態様によればフィルターを稼働させる方法が提供されるが、このフィルターは、第1の端部と第2の端部とを有するフィルターハウジングと、このハウジングの長さ方向に延在する膨張可能部材と、ハウジングの長さ方向に延在すると共に第1の端部において固定された複数の繊維とを有するものであって、繊維がハウジングに対してあるいは互いに押し付けられるよう膨張可能部材を膨張させ、第1の端部と、押し付けられる繊維とハウジング内面または膨張可能部材のいずれかとの間のピンチ領域と、の間に漸変フィルター基体を形成するステップと、付加的フィルター媒体を、それがピンチ領域において捕らえられるようフィルターの第1の端部に流入させるステップと、濾過される流体を第1の端部から第2の端部へと流動させるステップとを具備する。
【0011】
上記付加的フィルター媒体は、たとえ、所与のサイズのフィルターに関して、使用される繊維の直径が従来型におけるそれよりも小さくないものである必要があっても、繊維間の隙間を閉塞し、従来型フィルターよりも優れた濾過性能をもたらす。付加的フィルター媒体は僅かな量しかフィルターに加える必要はないので、付加的フィルター媒体の使用に関するコストは、従来型フィルターの濾過ベッドでそれを使用するのに比べて著しく低減される。ゆえに濾過レベルは、従来型の高い濾過性能のフィルターに関連するコスト的不利益を伴わずに増強される。
【0012】
本発明の好ましい特徴および実施形態は、従属請求項において言及されている。好ましくは、上記付加的フィルター媒体は微細なパウダーであり、しかもより好ましくは、それは珪藻土である。そうした媒体は、極めて微細な粒子を濾過する能力を有するという利点を有し、しかも本発明と共に使用することに関して比較的少量しか必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明はさまざまな様式で実施可能であるが、以下で、いくつかの具体的な実施形態について、図面を参照し、例証として説明する。
【0014】
まず図2を参照すると、本発明の第1実施形態に係るフィルター200が図示されている。このフィルターは円筒形フィルターハウジング200内に収容されており、そのサイズは、特定の流体圧力、流量あるいは必要容積に応じて選択可能である。これに代えて、ハウジングはその遠位端部に向ってその幅が狭まる(先細となる)ような形状とすることができる。たとえば、ある特定の用途では、このハウジングは315mmの外径と、290mmの内径とを有する。フィルターハウジングは、金属または適当なプラスチック素材のような好適な素材から形成できる。ハウジングは流入端部202および排出端部203を有し、それぞれ濾過される媒体をフィルターに流入させ、そしてフィルターから流出させることを可能とする。
【0015】
流入端部は、複数の流入開口部205を有する流入キャップ204によって蓋がされている。開口部205のそれぞれは別個の流入パイプ206から供給を受けるが、これによって、もし必要ならば、さまざまな液体および/またはガスをフィルターに並列供給することが可能となる。適当な連結手段207が、流入パイプを、必要な圧力および流速でフィルターに液体および/またはガスを供給する、さらなる配管システム(図示せず)に対して連結するために設けられる。
【0016】
ハウジング201の流入端部202に隣接して、内部固定リング208が配置(投入)されている。このリングは、その上にヘッド基体209が堅固に搭載されるリップを提供する。ヘッド基材209はメンテナンスおよび/または交換を容易にするために簡単に取り外すことが可能であることが好ましい(ただし必須ではない)。流入キャップ204とヘッド基体209との間のフィルターハウジングの容積が流入チャンバー210を画定し、このチャンバー210内で、入って来る液体および/またはガスが混ざり合うことができる。
【0017】
ハウジングの排出端部203は図2に示すように開放状態のままとしておくことができ、あるいはこれに代えて、出口キャップおよび出口パイプ(図示せず)を設け、流体がフィルターを通過した後、出て行く流体を案内するようにしてもよい。
【0018】
ここで図3を参照すると、ヘッド基体209は取り外し可能なプレート300からなり、これは、繊維の束(その一つを303で示す)を受けるための、周縁に沿って離間した複数の開口部を有する適当な硬質材(たとえば金属またはプラスチック材)から形成される。繊維はヘッド基体に都合のよい手法で、たとえば中実塊が形成されるよう繊維端部の概ね30mmを溶融させて一つにし、続いて開口部301内にクロスストラット(図示せず)を用いて、この塊を固定することによって取り付け可能である。繊維束開口部301間にあってかつそれを取り囲んでいるのは複数の小開口部302であり、これはヘッド基体を経て流体が流入できるようにするためのものである。開口部はいずれの種類のものも、好ましくはヘッド基体の周縁に沿って等距離ポイントにおいて離間させられ、これによって、概ね均一な繊維分布ならびに繊維束間のおよびそれを通る概ね均一な流体の流れがもたらされるようになっている。これに代えて、繊維の溶融前に繊維の周りにカラー710を配置してもよい。図7に示すカラー710は、続いて、繊維端部720が溶融されて一つになる前に、束内で繊維711を保持するためにかしめられる。このカラーは、その後、ヘッド基体の開口部301内に挿入することができる。
【0019】
ここで再度図2を参照すると、ヘッド基体の下方の濾過チャンバー213内では、束301の個々の繊維211が、ハウジング201の周面に沿って、かなり均一な繊維カーテンを形成するよう広がっていることが分かる。繊維は濾過チャンバー213の長さに沿って実質的に軸線方向に延在しており、しかもチャンバーを通過する流れの方向と実質的に平行に配置されている。この実施形態では、繊維の端部は全く固定されておらず、単にだらりと垂れ下がっているだけである。
【0020】
繊維211は、用途に応じて、適当な寸法を有しかつ適当な素材からなるものとすることができる。ある例では、繊維は、0.15mmないし0.5mmの直径を有する、ポリマーすなわちナイロンあるいは炭素繊維あるいは金属からなるものとすることができる。繊維は中実であっても中空であってもよく、しかも円形、矩形あるいはその他の断面を有するものであってもよい。ある用途では、繊維が少なくとも部分的に、繊維長に沿ってあるいはそれを横切る方向に弾力性を有することが有利であろう。そうした繊維に関しては、所望の形状復元特性もまた求められる用途に応じて選択可能である。繊維は滑らかなあるいはざらざらした表面を有していてもよく、しかも必要とあれば被覆することもできる。テフロン(登録商標)および亜鉛のような繊維被覆が適切であろう。それはまた、望むならば帯電させてもよい。繊維の帯電は電離を促進することになるが、これはある用途では重要になるであろう。さらに、流体、繊維、ハウジング内領域あるいはそれらの組み合わせを磁化することも望ましいであろう。
【0021】
図2aに示す代替実施形態では、繊維211は、自由な状態のままとされるのではなく、排出端部203において固定されてもよい。この実施形態では、下側繊維端部215は、繊維束を固定するための開口部(図示せず)ならびに濾液流出用のさらなる開口部(やはり図示せず)を有する排出側基体ヘッド216に固定されている。排出側基体ヘッド216は、何らかの適当な手法で、たとえばフィルターハウジング201の内部に投入されたさらなるリング217によって適所に固定されている。これに代えて、排出側基体ヘッド216は自由な状態のままとすることができる。この構造ではフィルターを逆流洗浄することができる。
【0022】
再度図2を参照すると、濾過チャンバー213の中央には長尺なバルーンすなわち膨張可能部材212が取り付けられていることが分かる。このバルーンはチャンバー内で中央に配置されており、しかもチャンバーに沿って実質的に軸方向に延在しており、フィルターを通る流れの方向と実質的に平行に配置されている。第1のモード(図2に示す)ではバルーンは弛緩しており、したがってフィルターを通る流体の自由な流れに対する障害物とはほとんどあるいは全くなっていない。開口部302を経て流入する流体は、排出口を経て外に出るまで、繊維束間および個々の繊維同士の間の隙間214の間を実質的に邪魔されることなく通過する。このモードでは濾過はなされないが、ファンデルワールス効果が現れるであろう。
【0023】
濾過を開始することが望まれる場合、バルーン212は、導入配管216に沿って供給される制御流体(液圧または空気圧)によって膨張させられる。あるいは、バルーンには、砂などのパウダーまたは粒子のような相当程度動き(急激な動きでもあるいはゆっくりとした動きでも)に抗する物質を充填することもできる。図示するように、管路はヘッド基体209を貫通してもよく、また、パイプは側方もしくは出口端部から差し込むことによってヘッド基体を回避できる(図示せず)。
【0024】
図4の濾過モードでは、膨張させられたバルーンは、その周囲とハウジングの内周面との間の狭い環状範囲すなわち環状領域からなるピンチ(締め付け)ポイント403を形成するが、ここでは利用可能な流動面積は最小である。ピンチポイント403の位置は、このピンチポイントの流入セクション側の上流側セクション406と、排出側の下流側セクション407とを画定する。好ましくは、バルーンの形状は、それが膨張させられた状態にあるときには、チャンバーの中心長さ方向(縦方向)軸線408に関して実質的に対称となるようなものである。用途に応じて、上流側および下流側セクションは互いの鏡像であってもよい。あるいは、上流側セクションは、下流側セクションよりも、より急激に変化する環状領域をフィルターの長さに沿って形成していてもよく、あるいはそれが逆であってもよい(図示せず)。
【0025】
いずれにしてもフィルターが濾過モードにあるとき、それを通過する流体は、ピンチポイント403までは徐々に減少する環状表面積と接触させられ、その後、徐々に増大する環状表面積と接触させられる。ピンチポイント以前の減少する表面積の漸変(次第に変化してゆく)特性は、膨張時にバルーン212が概ね卵形状をなすよう、このバルーン212を、その端部において硬く、そしてその中央において柔らかくすることによって増強される。
【0026】
バルーンが膨張するとき、それは、取り囲んでいる繊維に半径方向の力を加え始め、繊維を互いに押し付けると共にフィルターハウジングの堅固な壁201に対して押し付ける。これによって、もちろん、繊維間の流路409のサイズは減少する。
【0027】
繊維211が圧縮可能な素材からなる場合、繊維自体も変形し始め、これによって流体が通過できる流路409のサイズが、なお一層小さくなる。
【0028】
いったんバルーンが所要の大きさまで膨張させられると、微細なパウダー415が開口部302を経てフィルター内に加えられる。パウダー415は好ましくは珪藻土であるが、いかなる適当な微細パウダー、たとえば破砕されたイガイの殻であってもよい。珪藻土はピンチポイント403近傍で繊維間に捕らえられ、そしてフィルターのこの領域における繊維間の小さなスペースを塞ぐ。このパウダーは、極々微細な粒子用のさらなるフィルターとして機能する。
【0029】
フィルターのサイズに対して、相対的に極めて少量のパウダー415が、さらなる濾過作用をもたらすために必要なだけである。濾過される流体がその後フィルターを通過させられる。通常、流体は、さまざまなサイズの一つ以上の固形物質が混じった水あるいはその他の液体からなるであろう。だが、流体はガスまたは液体とガスの混合物を含むものであってもよい。水および粒子が上流側セクションを通過するとき、流路サイズが徐々に減少していくので粒子は繊維間に捕らえられるようになる。大き目の粒子410は比較的早期に捕らえられ、一方、微細な粒子411はピンチポイント403により近い地点で捕らえられることになる。極めて微細な粒子412はピンチポイントの直前でパウダー415によって捕らえられることになる。
【0030】
上流側セクション内での繊維の押し付け力がテーパー状であってかつ漸進的に増大することにより、粗いフィルター基体(これは上流側セクションの上側部分によって形成される)内で捕らえられた大きな粒子410が滑り落ちるのが阻止される。大きな粒子410が滑り落ちるのは、もちろん好ましいことではないであろう。なぜなら、ピンチポイントに向って下方に移動するかもしれない大きな粒子および微細なパウダーが、テーパーの漸変特性を、したがって異なるサイズの粒子を体系的に分離して取り出すフィルターの能力を低下させる傾向があるからである。本発明の実施形態では、(ある実施形態では繊維の自然な弾力性と組み合わされた)テーパーの漸変特性およびパウダーの閉塞作用によって、各繊維は、それを取り囲む繊維によって堅固に保持されることが確実なものとなる。上流側セクション内の繊維は、「あちこちにはためくこと(flap around)」すなわち動くことができず、捕らえられた粒子も動くことができない。
【0031】
通常、バルーンは、流体のみがピンチポイントを通過できるよう適当な大きさまで膨張させられることになる。だが、もちろん、ある用途では、極度に微細な粒子がフィルターを通過することは全く許容し得るであろうが、この場合にはバルーンを同程度まで膨張させる必要はないことを理解されたい。管216の液圧あるいは空気圧を変更することによって、所望のサイズよりも小さな粒子のみが通過できるようにフィルターを調整可能である。
【0032】
濾過される流体が液体およびガスの両方を含む場合、流入チャンバー210内の気泡発生器(図示せず)を使用でき、これによって濾過される流体は、確実に、分離して取り出される粒子と共に、液体および気泡がよく混じり合った混合物となる。ある用途では、濾過処理の間に殺菌を行うためにガス状オゾンを導入するのが好都合であろう。ガスがフィルター内に導入される場合、気泡を微細な泡(すなわち特別に小さなサイズの泡から実現可能な最も小さいサイズの泡まで)へと破砕してもよい。これによって、ガスと濾過される流体との接触表面積をかなり増大させることができ、通気処理が著しく改善される。ユニット全体は通気処理を促進するために回転させることもできる。
【0033】
図2bには僅かに異なる実施形態を示すが、このものでは、バルーン212は平坦な上側端部292および下側端部294を有する形状となっている。膨張させられた状態にあるバルーンの表面を291で示すが、点線290は濾過モードにあるバルーンの表面を示している。同図はまた、繊維束がヘッド基体209の開口部301を経て延在する様式をも示している。バルーンが膨張し、これらの束を押し付けるとき、繊維は外に向って広がり始め、その間の隙間を塞ぎ、最終的にハウジングとバルーンの周囲との間の環状スペース内に一様なフィルター基体を形成する。
【0034】
図8にはフィルターの代替構造を示すが、ここではハウジング801は矩形である。繊維811はレール820から垂れ下がっており、濾過チャンバー813内に繊維カーテンを形成している。ハウジング801の前面壁および/または後面壁は回動可能に連結でき、さもなければ、繊維を押し付けるために繊維に向って内部に動かすことができる。バルーン812を、カーテンの内側から繊維の加圧を助けるために繊維カーテン内に配置でき、あるいは繊維カーテンの外側から繊維を加圧するために、バルーンをハウジング801の内壁に隣接して配置できる。
【0035】
図6には、フィルターと共に使用されている状態にある微細パウダー415を示しているが、フィルター内には、フィルターハウジングの中心軸線に沿ってではなくハウジングの内壁に隣接して配置された一つ以上のバルーン612が存在する。この場合、バルーン612が図6に示すごとく膨張させられたとき、それは、ハウジングの内壁に対してではなく、バルーン612同士の間の束内で繊維を緊密に圧迫するよう、繊維211は中心軸線に沿って延在している。微細なパウダー615は、図4の実施形態におけるのと同じように、押し付けられた繊維間の小さな隙間を閉塞する。流体がフィルターを通過するとき大きな粒子410は繊維間の隙間に捕らえられることになり、一方、極めて小さな粒子613はパウダー615で捕らえられ、こうして流体から除去される。
【0036】
フィルターが単一のバルーンを備えていても、あるいは複数のバルーンを備えていても、濾過が継続して行われるとき、さまざまなサイズの粒子は上流側セクション406内で捕らえられ、いわゆる「フィルターケーキ」を形成する。
【0037】
ピンチポイント403を越えた下流側領域407においては、繊維は自然に再び広がる。繊維の存在と共に、濾過のために利用可能な領域が徐々に拡大することによって、スムーズでかつ直線的な流れが促進される。この領域が徐々に拡大することによって、より容易にベンチュリ効果が生じ、これによって流動がさらに促進される。
【0038】
図9に示すさらなる実施形態においては、フィルターは、その中心軸線に沿って直列に配置された二つのバルーン912aおよび912bを含む。繊維911は、バルーンが図9に示すように膨張させられた際に、このバルーンがハウジングの内壁に対して繊維を緊密に押し付けるようバルーンを取り囲んでいる。微細なパウダー915は、それがバルーン912aの一つの押し付けられた繊維に捕らえられた状態となるようフィルターに加えられる。このようにして、バルーン912aは微細なパウダー915を用いて小さな粒子を濾過して取り除くために使用でき、そしてバルーン912bは、たとえば粒子サイズとは関係のない特性を有する粒子のような別な種類の粒子を濾過して取り出すのに使用できる。バルーンはさまざまな程度の膨張状態まで膨らますことができる。直列に並んだバルーンの配置形態はまた、図6の実施形態(このものではバルーン612が繊維を取り囲んでいる)にも適用できることは当業者には明白であろう。
【0039】
ある特定の用途では、所要の濾過特性は、バルーンの表面におよび/または円筒壁201の内面に、隆起部および/または窪み(図示せず)を設けることによって実現できる。
【0040】
フィルターをしばらくの間稼働させたとき、かなりの量のフィルターケーキが微細なパウダーによって生じる。これは洗浄(フラッシング)によって除去できる。図5には、この洗浄処理を概略的に示す。
【0041】
フィルターを洗浄するためには、バルーン212内の圧力を解放し、これによって繊維から押し付け(圧迫)力を取り除き、503で示すように繊維がぎっしりと密着していない自由な状態へと復帰することを可能にする。流路504のサイズが増大するので、繊維がフィルターケーキパウダーを捕らえる力は低下し、すすぎ媒体505によってケーキを押し流すことが可能となる。すすぎ媒体505はいかなる適切な洗浄液体またはガスであってもよく、例としては水、蒸気、あるいは(粒子を含む)濾過される媒体さえも挙げられる。すすぎ媒体505は、濾過される媒体が濾過モードで通過させられる方向と同じ方向にフィルターを通過させられ、すなわちフィルターは順方向に洗浄される。
【0042】
適当なバルブ506および配管507を用いることができ、これによって洗浄媒体およびフィルターケーキが濾液を汚染しなくなる。上流側および/または下流側圧力センサー508,509を、フィルターがフィルターケーキによって過度に目詰まりしたかどうか、およびフラッシング処理を実施する必要があるかどうかを判定するのに使用できる。処理は完全に自動で実施可能であり、これによってフィルターを濾過モードで使える時間が最大になり、それゆえ処理量が増大する。
【0043】
洗浄処理の一部として、ケーキを振り動かして、ほぐすのを助けるためにフィルターまたは繊維に超音波を加えることができる。さらに、フィルター内に真空を発生させるかあるいはそれに高温空気を通すような手段によって、放出前にフィルターケーキを乾燥させることが望ましいであろう。
【0044】
図5を参照して先に説明した洗浄処理は常に順方向に実施されるが、図2aの代替実施形態(このものでは繊維は両端で定着される)では、その代わりにあるいはそれに加えて逆流洗浄を利用できる(各場合においてバルーン圧力は解放されることも解放されないこともある)ことも、もちろん明白であろう。
【0045】
本発明のフィルターは、濾過される量および/または用途に応じて自由に所望のとおりにサイズを変更可能である。ある好ましい形態では、フィルターはさまざまな異なるサイズで差し込み式モジュールとして製造することができる。
【0046】
フィルターは、その長さ方向軸線が垂直となった状態で図示しているが、ある用途では当該軸線は水平に置かれることもあることは明らかであろう。フィルターを通過する流体は高圧または低圧で圧送可能であり、あるいはこれに代えて、もっぱら重力の作用によってフィルターを通過できるようにしてもよい。
【0047】
当業者ならば、特定の用途に従って要求されるような、さまざまな異なるパラメーターを自由に調整できることを理解されたい。そうした調整可能なパラメーターとしては、圧力、温度、繊維サイズ、繊維長、繊維被覆、繊維上の荷、ハウジング内領域や繊維や流体の磁界強度、繊維を定着する様式、流動体積(フローボリューム)、フィルターハウジングの素材、供給物の種類、バルーンを膨張させる方法、バルーンのテーパー、洗浄物質の量および圧力、そして混合物へのガスの添加などが挙げられる。
【0048】
本発明によるフィルターの使用から利益を得るであろう、多くの特定の用途が存在する。代表的用途としては次のものが挙げられる。
1.逆浸透のための濾過
2.プレキャストコンクリートのような工業プロセスに続くセメント、砂などの除去
3.凝固製品の分離
4.生物組織の分離
5.凝固血液などの分離
6.植物成分、たとえばオリーブオイル製品からの廃水の分離
7.技術的あるいは法的理由から必要な水の濁り度の大まかな低減
8.液体/水からのシルトの除去
9.バラスト水
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来型フィルターを通る長さ方向断面図である。
【図1a】濾過モードでの図1のフィルターを通る長さ方向断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を通る長さ方向断面図である。
【図2a】本発明の第2実施形態を通る長さ方向断面図である。
【図2b】本発明の第3実施形態を通る長さ方向断面図である。
【図3】各実施形態のヘッド基体の詳細平面図である。
【図4】濾過モードで図2のフィルターを示す長さ方向断面図である。
【図5】洗浄モードでの図2のフィルターの長さ方向断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態を通る長さ方向断面図である。
【図7】本発明の一態様による繊維アンカーの概略図である。
【図8a】代替フィルター構造に係る概略平面図である。
【図8b】図8aのフィルター構造の概略正面図である。
【図8c】図8aのフィルター構造の概略側面図である。
【図9】本発明の第4実施形態を通る長さ方向断面図である。
【符号の説明】
【0050】
200 フィルター
201 フィルターハウジング
202 流入端部
203 排出端部
204 流入キャップ
205 流入開口部
206 流入パイプ
207 連結手段
208 内部固定リング
209 ヘッド基体
210 流入チャンバー
211 繊維
212 バルーン(膨張可能部材)
213 濾過チャンバー
214 隙間
215 下側繊維端部
216 排出側基体ヘッド
217 リング
290,291 バルーンの表面
292 上側端部
294 下側端部
300 取り外し可能なプレート
301 開口部
302 小開口部
303 繊維の束
403 ピンチポイント
406 上流側セクション
407 下流側セクション
409 流路
410 大き目の粒子
411 微細な粒子
412 極めて微細な粒子
415 パウダー
504 流路
505 すすぎ媒体
506 バルブ
507 配管
508 上流側圧力センサー
509 下流側圧力センサー
612 バルーン
613 極めて小さな粒子
615 パウダー
710 カラー
711 繊維
720 繊維の端部
801 ハウジング
811 繊維
812 バルーン
813 濾過チャンバー
820 レール
911 繊維
912a,912b バルーン
915 パウダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を濾過するためのフィルターであって、
流入端部と排出端部とを有するフィルターハウジングと、
このハウジングの長さ方向に延在する膨張可能部材と、
前記ハウジングの長さ方向に延在すると共に前記流入端部において固定された複数の繊維と、
前記流入端部内に導入可能な付加的フィルター媒体と、を具備してなり、
前記膨張可能部材が膨張させられたとき、前記流入端部と、押し付けられた繊維と前記ハウジングの内面または前記膨張可能部材のいずれかとの間に形成されるピンチ領域と、の間に漸変フィルター基体が形成されるよう、前記繊維は前記ハウジングに対してあるいは互いに押し付けられ、かつ、前記付加的フィルター媒体が前記流入端部内に導入されたとき、それは流体のさらなる濾過のために前記ピンチ領域で捕らえられるようになっていることを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記付加的フィルター媒体は微細パウダーであることを特徴とする請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記パウダーは珪藻土であることを特徴とする請求項2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記膨張可能部材は、相対的にフレキシブルな中央セクションと、相対的に硬質な遠位端部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項5】
前記フィルターハウジングの幅は、前記ハウジングの前記遠位端部に向って先細となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項6】
前記膨張可能部材の表面または前記ハウジングの内面には、窪みまたは隆起部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項7】
前記膨張可能部材は、前記繊維がこの膨張可能部材を取り囲んだ状態で、前記フィルターハウジングの中心軸線に沿って延在していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項8】
前記フィルターハウジングの中心軸線に沿って直列に配置された、少なくとも二つの膨張可能部材を具備してなることを特徴とする請求項7に記載のフィルター。
【請求項9】
前記繊維は、前記膨張可能部材が前記ハウジングの前記内壁に沿って延在した状態で、前記フィルターハウジングの中心軸線に沿って延在していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項10】
膨張させられたとき、その間で前記繊維を押し付けるよう配置された少なくとも二つの膨張可能部材を具備してなることを特徴とする請求項9に記載のフィルター。
【請求項11】
少なくとも二つの膨張可能部材が、前記ハウジングの前記内壁に沿って一列に延在するよう配置されていることを特徴とする請求項9または請求項10のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項12】
前記繊維は、ヘッド基体(300)によって、前記流入端部(202)において固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項13】
前記ヘッド基体は、濾過される流体を流入させるための開口部(302)を有するプレートを具備してなることを特徴とする請求項11に記載のフィルター。
【請求項14】
前記ヘッド基体は、前記繊維(211)がその内部に固定される開口部(301)をそれ自体に有するプレートを具備してなることを特徴とする請求項12に記載のフィルター。
【請求項15】
繊維の別個の束(303)は各開口部(301)を用いて固定されていることを特徴とする請求項14に記載のフィルター。
【請求項16】
前記繊維は束(303)の中で固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項17】
前記流入端部(202)から前記排出端部(204)に至る方向にフィルターを洗浄するための洗浄手段を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項18】
洗浄が必要であるかどうかを判定するための検出手段(508,509)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項19】
洗浄流体を濾液から分離するためのバルブ(506)を具備してなることを特徴とする請求項18に記載のフィルター。
【請求項20】
前記繊維は弾力性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項21】
前記繊維はその長さ方向と直交する方向に圧縮可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項22】
前記繊維は帯電させられていることを特徴とする請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項23】
前記繊維は磁化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項22のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項24】
前記ハウジングの領域は磁化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項23のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項25】
第1の端部と第2の端部とを有するフィルターハウジングと、
このハウジングの長さ方向に延在する膨張可能部材と、
前記ハウジングの長さ方向に延在すると共に前記第1の端部において固定された複数の繊維と、を有するフィルターを稼働させるための方法であって、
前記繊維が前記ハウジングに対してあるいは互いに押し付けられるよう前記膨張可能部材を膨張させて、前記第1の端部と、前記押し付けられた繊維と前記ハウジングの内面または前記膨張可能部材のいずれかとの間のピンチ領域と、の間に、漸変フィルター基体を形成するステップと、
付加的フィルター媒体を、それが前記ピンチ領域において捕らえられるように、前記フィルターの前記第1の端部に流入させるステップと、
濾過される流体を前記第1の端部から前記第2の端部へと流動させるステップと、を具備することを特徴とする方法。
【請求項26】
前記付加的フィルター媒体はパウダーを具備してなることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記パウダーは珪藻土であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記膨張可能部材の圧力を解放すると共に、前記第1の端部から前記第2の端部へと洗浄流体を通過させることによって、前記フィルターを洗浄するステップを含むことを特徴とする請求項25ないし請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記洗浄流体は、濾過された種類の流体からなるかあるいはこの流体を含むものであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1ないし請求項24のいずれか1項に記載のフィルターを稼働させるための方法。
【請求項31】
実質的に図面を用いて説明されかつ図面に示されたようなフィルター。
【請求項32】
実質的に図面を用いて説明されかつ図面に示されたような方法。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−537853(P2007−537853A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517429(P2007−517429)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002001
【国際公開番号】WO2005/113110
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506385162)ウォーター・メイドゥン・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】