説明

流体フィルタ

【課題】濾材の変形を抑制しつつ、濾過面積を確保できることにより、濾過効率を向上させることができる流体フィルタを提供する。
【解決手段】本流体フィルタ1は、流出口2Aを有する上側ケース部材2と、流入口3Aを有する下側ケース部材3と、ひだ折り状の濾材4及び濾材の周縁部を保持し且つ上側ケース部材及び下側ケース部材の間に挟持される保持枠5を有するフィルタエレメント6と、濾材のひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられた補強部材7と、を備える流体フィルタであって、補強部材は、その下端が、濾材のひだの高さをh1としたときに、ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体フィルタに関し、更に詳しくは、濾材の変形を抑制しつつ、濾過面積を確保できることにより、濾過効率を向上させることができる流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動変速機等に用いられる流体フィルタとして、例えば、図12(a)及び(b)に示すように、流出口102aを有する上側ケース部材102と、流入口103aを有する下側ケース部材103と、ひだ折り状の濾材104及び濾材104の周縁部を保持し且つ両ケース102、103の間に挟持される保持枠105を有するフィルタエレメント106と、を備えてなるものが一般に知られている。このような流体フィルタでは、例えば、図13(a)及び(b)に示すように、流体が通過するときの圧力により、濾材104が変形してひだ同士が密着してしまい、濾過面積が小さくなってしまう、といった問題があった。
そこで、ひだ同士の密着を防止するために、櫛形状の補強部材やリブ等により濾材の変形を抑制することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、濾材の変形を抑制するための櫛形状の補強部材やリブ等は、濾材と密着又は当接させて設けられるので、濾過面積が減少してしまう、といった問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、濾材の変形を抑制しつつ、濾過面積を確保できることにより、濾過効率を向上させることができる流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、流出口を有する上側ケース部材と、流入口を有する下側ケース部材と、ひだ折り状の濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の間に挟持される保持枠を有するフィルタエレメントと、前記濾材のひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられた補強部材と、を備える流体フィルタであって、前記補強部材は、その下端が、前記ひだの高さをh1としたときに、前記ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記補強部材は、前記濾材と別体に設けられているとともに、前記濾材に上方から差し込まれる櫛形状となっていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記フィルタエレメントには、前記濾材のひだの稜線方向の略中央部に、前記ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられたリブが形成されており、前記補強部材は、前記リブの両側であって、前記リブと前記濾材のひだ折り側の縁部との間の略中間の位置に設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記流体フィルタは、濾過時には、前記上側ケース部材、前記下側ケース部材及び前記フィルタエレメントにより形成される濾過室の内圧が外圧よりも低くなる状態で使用され、前記上側ケース部材には、濾過時の圧力変化により前記上側ケース部材が変形したときに前記リブの上端面に当接する凸状部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項において、前記流体フィルタは自動変速機用オイルフィルタであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体フィルタによると、ひだ折り状の濾材を補強するための補強部材を設けるようにしている。これにより、流体通過時の濾材の変形を抑制することができ、濾材のひだ同士が密着して濾過面積が減少してしまうのを抑制することができる。また、この補強部材は、その下端が、前記ひだの高さをh1としたときに、前記ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられている。このような構成により、補強部材がひだの高さ全体に渡って設けられている場合と比較して、ひだと補強部材との接触面積を小さくできる。その結果、濾材の変形を抑制しつつ濾過面積を確保でき、濾過効率を向上させることができる。
【0012】
また、前記補強部材は、前記濾材と別体に設けられているとともに、前記濾材に上方から差し込まれる櫛形状となっている場合は、簡易な構成で濾材の変形を抑制しつつ、濾過面積を確保できる流体フィルタを実現できる。
【0013】
更に、前記フィルタエレメントには、前記濾材のひだの稜線方向の略中央部に、前記ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられたリブが形成されており、前記補強部材は、前記リブの両側であって、前記リブと前記濾材のひだ折り側の縁部との間の略中間の位置に設けられている場合は、ひだの稜線方向において、補強部材及びリブが濾材を所定間隔で支持していることにより、ひだの稜線方向における濾材の変形を抑制することができる。
【0014】
また、前記流体フィルタは、濾過時には、前記上側ケース部材、前記下側ケース部材及び前記フィルタエレメントにより形成される濾過室の内圧が外圧よりも低くなる状態で使用され、前記上側ケース部材には、濾過時の圧力変化により前記上側ケース部材が変形したときに前記リブの上端面に当接する凸状部が形成されている場合は、上側ケース部材の過度の変形を抑制することができるので、濾過室の容積を確保することができる。その結果、濾過室内の流体流路を確保することができ、流体通過時の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0015】
更に、前記流体フィルタが自動変速機用オイルフィルタである場合は、好適にオイルを濾過することができる自動変速機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る流体フィルタの斜視図である。
【図2】実施例に係る流体フィルタの部分断面分解斜視図である。
【図3】図1のI−I線断面図である。
【図4】図1のII−II線断面図である。
【図5】実施例に係るフィルタエレメントの斜視図である。
【図6】図5のIII−III線断面図である。
【図7】図5のIV−IV線断面図である。
【図8】実施例に係る上側ケース部材の底面側から見た斜視図である。
【図9】実施例に係る下側ケース部材の斜視図である。
【図10】実施例に係る流体フィルタの作用を説明するための説明図である。
【図11】他の実施形態に係る流体フィルタを説明するための説明図である。
【図12】従来の流体フィルタを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のX−X断面図をそれぞれ示す。
【図13】従来の流体フィルタを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のXX−XX断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0018】
本実施形態に係る流体フィルタは、流出口(2A)を有する上側ケース部材(2)と、流入口(3A)を有する下側ケース部材(3)と、ひだ折り状の濾材(4)及び該濾材の周縁部(4A,4B)を保持し且つ上側ケース部材及び下側ケース部材の間に挟持される保持枠(5)を有するフィルタエレメント(6)と、濾材のひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられた補強部材(8)と、を備える流体フィルタ(1)であって、補強部材は、その下端が、ひだの高さをh1としたときに、ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられていることを特徴とする(例えば、図1〜図4等参照)。この流体フィルタの用途は特に問わないが、例えば、自動変速機用オイルフィルタであることができる。また、この流体フィルタの使用形態は特に問わないが、濾過時には、上側ケース部材、下側ケース部材及びフィルタエレメントにより形成される濾過室(S)の内圧が外圧よりも低くなる状態で使用される形態であることが好ましい。
【0019】
上記「上側ケース部材」の構造、形状、大きさ、材質等は特に問わない。この上側ケース部材は、例えば、下方を開放した箱状に形成されており、天井壁(2B)及びこの天井壁の周縁端から下方に延びる周側壁(2C)を有していることができる(例えば、図8等参照)。また、周側壁の下端面には、例えば、上記保持枠と接合するための、断面凹形状の凹縁部(2D)が形成されていることができる(例えば、図8等参照)。
【0020】
上記「下側ケース部材」の構造、形状、大きさ、材質等は特に問わない。この下側ケース部材は、例えば、上方を開放した箱状に形成されており、底壁(3B)及びこの底壁の周縁端から上方に延びる周側壁(3C)を有していることができる(例えば、図9等参照)。また、周側壁の上端面には、例えば、上記保持枠と接合するための、断面凹形状の凹縁部(3D)が形成されていることができる(例えば、図9等参照)。
【0021】
上記「濾材」の大きさ、平面形状等は特に問わない。この濾材の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。
上記「保持枠」の構造、大きさ、形状等は特に問わない。この保持枠の材質としては、例えば、樹脂、金属等を挙げることができる。また、保持枠は、例えば、濾材の周縁部のうち、濾材のひだ折り側の縁部(4A)を保持する一対の第1壁部(5A)と、これら第1壁部に連なり且つ濾材の非ひだ折り側の縁部(4B)を保持する一対の第2壁部(5B)と、を有していることができる(例えば、図5〜図7等参照)。これら第1壁部及び第2壁部は、通常、濾材のひだ折高さ(h1)より大きな高さ(h2)を有している。また、第1壁部及び第2壁部の上端面及び下端面には、例えば、それぞれ断面凸形状の凸縁部が全周に渡って形成されていることができる(例えば、図5〜図7等参照)。凸縁部は、上側ケース部材及び下側ケース部材の各凹縁部とそれぞれ係合されて接合されていることができる。
上記「フィルタエレメント」の構成、形状、大きさ等は特に問わない。このフィルタエレメントは、例えば、インサート成形により、上記濾材の周縁部に樹脂製の上記保持枠が形成されている形態であることができる(例えば、図5〜図7等参照)。
【0022】
上記上側ケース部材と保持枠、及び下側ケース部材と保持枠は、それぞれ接合されていることができる。これらの部材の接合形態は特に問わないが、例えば、レーザ溶着、振動溶着、接着等により接合されていることができる。特に、レーザ溶着により接合されている場合、上側ケース部材及び下側ケース部材の材質はレーザ透過性樹脂であり、保持枠の材質はレーザ吸収性樹脂であることができる。また、レーザ溶着の場合、溶着時に補強部材と濾材との間で摩擦が起きないので好ましい。
【0023】
上記「補強部材」の構造、形状、大きさ、個数等は特に問わない。この補強部材の形態としては、例えば、濾材と別体に設けられたものを上方から差し込む形態(例えば、図2〜図4等参照)、インサート成形等により、予め濾材と一体に設けられている形態等を挙げることができる。補強部材が濾材と別体に設けられている場合の形態としては、例えば、(i)上側ケース部材と一体に設けられている形態(例えば、図8等参照)、(ii)単体で設けられた補強部材が、保持枠又は上側ケース部材に取着されている形態等を挙げることができる。また、補強部材の下端位置のひだの上端からの距離は、濾材のひだの高さをh1としたときに、好ましくは、(0.6〜0.1)h1、更に好ましくは、(0.5〜0.3)h1である。
【0024】
ここで、上記フィルタエレメントには、例えば、濾材のひだの稜線方向の略中央部に、ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられたリブ(7)が形成されていることができる(例えば、図5〜図7等参照)。このリブは、例えば、上記インサート成形により、上記保持枠と一体に形成されていることができる。また、リブは、通常、保持枠の上端の高さから下方へ延びるように設けられている。リブの高さ(h3)は、例えば、濾材のひだ折高さ(h1)より大きく且つ保持枠の高さ(h2)よりも小さく設定されていることができる(例えば、図6、図7等参照)。また、リブは、例えば、その下端が、上記補強部材の下端の位置と同様に位置にあるように設けられていてもよい。この場合、上記リブは上記補強部材であるといえる。
【0025】
上記リブが形成されている場合、本実施形態に係る流体フィルタは、例えば、上記補強部材が、上記リブの両側であって、リブと濾材のひだ折り側の縁部との間の略中間の位置に設けられていることができる(例えば、図4等参照)。
また、上記リブが形成されている場合、本実施形態に係る流体フィルタは、例えば、上記上側ケース部材及び上記下側ケース部材の少なくとも一方に、リブの上端面又は下端面に当接する凸状部(2E,3E)が形成されていることができる(例えば、図3、図4、図8、図9等参照)。これにより、濾過室の内圧が外圧よりも低くなる状態で使用された場合に、凸状部がリブと当接し、ケース部材の変形を抑制することができる。
【実施例】
【0026】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「流体フィルタ」として自動変速機に用いられるオイルフィルタを例示する。
【0027】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1〜図4に示すように、流出口2Aを有する上側ケース部材2と、流入口3Aを有する下側ケース部材3と、濾材4及び濾材4の周縁部を保持し且つ上側ケース部材2及び下側ケース部材3の間に挟持される保持枠5を有するフィルタエレメント6と、を備えている。本実施例において、上側ケース部材2及び下側ケース部材3のそれぞれはレーザ透過性樹脂からなるとともに、保持枠5はレーザ吸収性樹脂からなり、これらはレーザ溶着により接合されている。
【0028】
本実施例に係るフィルタエレメント6は、図5〜図7に示すように、濾材4及び保持枠5をインサート成形により一体成形して形成されている。濾材4は、平面略矩形状で且つひだ折り状に形成されている。また、この保持枠5は、濾材4の周縁部のうち、ひだ折り側の縁部4Aを保持する一対の第1壁部5Aと、これら第1壁部5Aに連なり且つ濾材4の非ひだ折り側の縁部4Bを保持する一対の第2壁部5Bと、を有している。これら第1壁部5A及び第2壁部5Bは、濾材4のひだ折高さh1より大きな高さh2を有している。また、第1壁部5A及び第2壁部5Bの上端面及び下端面には、それぞれ断面凸形状の凸縁部5C、5Dが全周に渡って形成されている。凸縁部5C、5Dは、後述する上側ケース部材2及び下側ケース部材3の各凹縁部とそれぞれ係合されて溶着されている。そして、この保持枠5、上側ケース部材2及び下側ケース部材3によって、オイルフィルタ1の濾過室Sが形成される。
【0029】
本実施例において、フィルタエレメント6にはリブ7が設けられている。このリブ7は、濾材4のひだの稜線方向の略中央部に、ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられている。リブ7は、保持枠5と一体に形成されており、その両端は保持枠5の一対の第2壁部5Bに連結されている。また、リブ7は、保持枠5の上端の高さから下方へ延びるように、高さh3で設けられている。このリブの高さh3は、濾材4のひだ折高さh1より大きく且つ保持枠5の高さh2よりも小さく設定されている。
【0030】
図8に示すように、上側ケース部材2は、下方を開放した箱状に形成されており、天井壁2B及びこの天井壁2Bの周縁端から下方に延びる周側壁2Cを有している。上側ケース部材2には、天井壁2Bを貫通するように、流出口2Aが設けられている。周側壁2Cの下端面には、断面凹形状の凹縁部2Dが全周に渡って形成されている。凹縁部2Dは、フィルタエレメント6の凸縁部5Cと係合されて溶着されている。
【0031】
また、天井壁2Bには、本発明に係る補強部材として、櫛形状のセパレータ8が2つ設けられている。セパレータ8は、濾材4の上方から差し込まれるように、天井壁2Bから下方に突出して設けられている。2つのセパレータ8は、リブ7の両側にそれぞれ位置するように設けられており、濾材4のひだ折り側の縁部4Aを保持する第1壁部5Aと、リブ7と、の間の略中間の位置にそれぞれ差し込まれている。また、セパレータ8は、その下端が、ひだ折り高さをh1としたときに、ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられている。
【0032】
図9に示すように、下側ケース部材3は、上方を開放した箱状に形成されており、底壁3B及びこの底壁3Bの周縁端から上方に延びる周側壁3Cを有している。下側ケース部材3には、底壁3Bを貫通するように、流入口3Aが設けられている。周側壁3Cの上端面には、断面凹形状の凹縁部3Dが全周に渡って形成されている。凹縁部3Dは、フィルタエレメント6の凸縁部5Dと係合されて溶着されている。
【0033】
更に、本実施例では、上側ケース部材2及び下側ケース部材3には、凸状部2E、3Eがそれぞれ設けられている。凸状部2E、3Eは、濾過時の圧力変化により上側ケース部材2及び下側ケース部材3が変形したときにリブ7の上端面及び下端面に当接するように形成されている。これにより、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の過度の変形を抑制して濾過室Sの容積を確保できるようになっている。
【0034】
(2)オイルフィルタの作用
次に、上記構成のオイルフィルタ1の作用について説明する。オイルフィルタ1は、オイルパン(図示せず)内でオイルに浸漬された状態で使用される。オイルパン内には、自動変速機側で使用されたオイルが貯留されており、流入口3Aは、このオイルパン内のオイルを流入可能にオイルパン内に開口している。また、流出口2Aには、自動変速機へオイルを供給するためのオイルポンプ(図示せず)が接続されている。オイルパン内のオイルは、このオイルポンプが作動することにより、流入口3Aから濾過室S内に流入して濾材4により濾過される。
【0035】
このとき、図10に示すように、オイルが濾材4を通過するときの圧力により濾材4が変形するが、セパレータ8が差し込まれているので、ひだ同士の密着が抑制されている。また、2つのセパレータ8とリブ7を設けたことによりそれらがひだの稜線方向において濾材4を支持するので、セパレータやリブを設けない場合と比較して、ひだの稜線方向における濾材4の変形が抑制されている。更に、オイルポンプの吸込圧力による上側ケース部材2及び下側ケース部材3の変形も、凸状部2E、3Eがリブ7と当接することにより抑制される。
このようにして濾材4を通過して濾過されたオイルは、流出口2Aを介して再び自動変速機へ供給される。
【0036】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のオイルフィルタ1によると、ひだ折り状の濾材4を補強するためのセパレータ8を設けるようにしている。これにより、オイル通過時の濾材4の変形を抑制することができ、濾材4のひだ同士が密着して濾過面積が減少してしまうのを抑制することができる。また、このセパレータ8は、その下端が、ひだの高さをh1としたときに、ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられているので、セパレータ8がひだの高さ全体に渡って設けられている場合と比較して、ひだとセパレータ8との接触面積を小さくできる。その結果、濾材4の変形を抑制しつつ濾過面積を確保でき、濾過効率を向上させることができる。
【0037】
また、本実施例では、セパレータ8は、濾材4と別体に設けられているとともに、濾材4に上方から差し込まれる櫛形状となっているので、簡易な構成で濾材4の変形を抑制しつつ、濾過面積を確保できるオイルフィルタ1を実現している。
【0038】
また、本実施例では、フィルタエレメント6には、濾材4のひだの稜線方向の略中央部に、ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられたリブ7が形成されており、セパレータ8は、リブ7の両側であって、リブ7と濾材4の縁部4Aとの間の略中間の位置に設けられているので、ひだの稜線方向における濾材4の変形を抑制することができる。
【0039】
また、本実施例では、オイルフィルタ1は、濾過時には、上側ケース部材2、下側ケース部材3及びフィルタエレメント6により形成される濾過室Sの内圧が外圧よりも低くなる状態で使用され、上側ケース部材2には、濾過時の圧力変化により上側ケース部材2が変形したときにリブ7の上端面に当接する凸状部2Eが形成されており、下側ケース部材3には、濾過時の圧力変化により下側ケース部材3が変形したときにリブ7の下端面に当接する凸状部3Eが形成されているので、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の過度の変形を抑制することができ、濾過室Sの容積を確保することができる。その結果、濾過室S内の流体流路を確保することができ、流体通過時の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0040】
なお、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、補強部材として、その下端が、ひだの高さをh1としたときに、ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられた櫛形状のセパレータ8を例示したが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、上記実施例のセパレータ8の下端から更に下方に延びる棒状部8Aが設けられた補強部材81としてもよい。このような棒状部8Aを設けることにより、濾材4の変形を更に抑制することができるとともに、濾過面積も確保することができる。
【0041】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0042】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
流体を濾過する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両の自動変速機用流体フィルタとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0044】
1;オイルフィルタ(流体フィルタ)、2;上側ケース部材、2A;流出口、2B;天井壁、2C;周側壁、2D;凹縁部、2E;凸状部、3;下側ケース部材、3A;流入口、3B;底壁、3C;周側壁、3D;凹縁部、3E;凸状部、4;濾材、4A;濾材のひだ折り側の縁部、4B;濾材の非ひだ折り側の縁部、5;保持枠、5A;第1壁部、5B;第2壁部、5C,5D;凸縁部、6;フィルタエレメント、7;リブ、8,81;セパレータ(補強部材)、8A;棒状部、S;濾過室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口を有する上側ケース部材と、
流入口を有する下側ケース部材と、
ひだ折り状の濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の間に挟持される保持枠を有するフィルタエレメントと、
前記濾材のひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられた補強部材と、を備える流体フィルタであって、
前記補強部材は、その下端が、前記ひだの高さをh1としたときに、前記ひだの上端から0.6h1の位置よりも上方に位置するように設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項2】
前記補強部材は、前記濾材と別体に設けられているとともに、前記濾材に上方から差し込まれる櫛形状となっている請求項1記載の流体フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタエレメントには、前記濾材のひだの稜線方向の略中央部に、前記ひだの稜線方向と交差する方向に延びるように設けられたリブが形成されており、
前記補強部材は、前記リブの両側であって、前記リブと前記濾材のひだ折り側の縁部との間の略中間の位置に設けられている請求項2記載の流体フィルタ。
【請求項4】
前記流体フィルタは、濾過時には、前記上側ケース部材、前記下側ケース部材及び前記フィルタエレメントにより形成される濾過室の内圧が外圧よりも低くなる状態で使用され、
前記上側ケース部材には、濾過時の圧力変化により前記上側ケース部材が変形したときに前記リブの上端面に当接する凸状部が形成されている請求項3記載の流体フィルタ。
【請求項5】
前記流体フィルタは自動変速機用オイルフィルタである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の流体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−13858(P2013−13858A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148635(P2011−148635)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】