説明

流体供給装置

【課題】可動隔壁に関する制約なしに被供給液の供給状態を高精度に検出することが可能な液体供給装置を提供する。
【解決手段】液体供給装置10は、第1連通孔54、56を介して第1流体34の導入及び排出が可能な第1隔室52と、第2連通孔70を介して第2流体62の導入及び排出が可能な第2隔室66とが可動隔壁50により仕切られた流体収容部22と、第1隔室52の内部に設けられ可動隔壁50との接触を検出する第1タッチセンサ76及び第2隔室66の内部に設けられ可動隔壁50との接触を検出する第2タッチセンサ78の少なくとも一方とを備える。第2隔室66内の第2流体62の量が調整されると可動隔壁50が変形又は変位し、これにより、第1隔室52内に第1流体34が導入若しくは吸引され又は第1隔室52から第1流体34が排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動隔壁を用いて一方の流体からの圧力を他方の流体に伝達することで当該他方の流体の供給又は吸引を制御する流体供給装置に関する。より詳細には、本発明は、例えば、電気浸透流ポンプを用いて可動隔壁を変形又は変位させることにより流体を供給又は吸引する流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を供給するための装置として、電気浸透流現象を用いた電気浸透流ポンプ(EOポンプ)が知られている。電気浸透流現象は、微細な流路に液体が満たされているとき、その流路内に電界を加えると液体が電界の方向に移動する現象である。EOポンプは、小型且つ軽量である、高圧力を出力可能である、流れに脈動がない、動作音がしない、制御性がよい等の特性を有する。
【0003】
EOポンプを用いた装置の中には、供給したい液体(被供給液)をEOポンプにより直接移動させるもの(直接駆動方式)(特許文献1)や、被供給液とは異なる液体(駆動液)をEOポンプにより移動させることで圧力(駆動力)を発生させ、この駆動力により被供給液を移動させるもの(間接駆動方式)が存在する(特許文献2、3、4)。
【0004】
特許文献2では、駆動液が有する駆動力を気体を介して被供給液に伝達する(例えば、特許文献2の図2参照)。
【0005】
特許文献3では、駆動液が有する駆動力を膜状の隔壁(212)を介して被供給液に伝達する(例えば、特許文献3の図2A、図2B参照)。また、特許文献3では、被供給液の供給状態をストローク期間や蓄積電荷を用いて制御する(例えば、特許文献3の図3、図5参照)。
【0006】
特許文献4では、駆動液が有する駆動力を可動隔壁(424)を介して被供給液に伝達する(例えば、特許文献4の図5、図6参照)。また、特許文献4では、被供給液の供給状態を、可動隔壁(424)内に設けられた永久磁石(449)と検出部(407a)を備える電磁式センサ(407)により検出する(例えば、特許文献4の図5、図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−236022号公報
【特許文献2】特開2006−022807号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0148308号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0093752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2、3では、被供給液の供給状態を間接的にしか把握することができない。また、一般に、永久磁石は樹脂等に比べて密度が大きいが、特許文献4では、可動隔壁(424)内に永久磁石(449)を設けることが必須となるため、可動隔壁について重量面、設計面等で制約を受けることになる。
【0009】
また、このような制約は、EOポンプを間接駆動方式で用いる場合に限らず、可動隔壁を用いて一方の流体からの圧力を他方の流体に伝達することで当該他方の流体の供給又は吸引を制御する流体供給装置一般に言えることである。
【0010】
本発明は、上記のような課題を考慮してなされたものであり、可動隔壁に関する制約なしに被供給液の供給状態を高精度に検出することが可能な液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液体供給装置は、第1連通孔を介して第1流体の導入及び排出が可能な第1隔室と、第2連通孔を介して第2流体の導入及び排出が可能な第2隔室とが可動隔壁により仕切られた流体収容部と、前記第1隔室の内部に設けられ前記可動隔壁との接触を検出する第1タッチセンサ及び前記第2隔室の内部に設けられ前記可動隔壁との接触を検出する第2タッチセンサの少なくとも一方とを備え、前記第2隔室内の前記第2流体の量が調整されると前記可動隔壁が変形又は変位し、これにより、前記第1隔室内に前記第1流体が導入若しくは吸引され又は前記第1隔室から前記第1流体が排出されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第1隔室の内部に設けられた第1タッチセンサ及び第2隔室の内部に設けられた第2タッチセンサの少なくとも一方により、可動隔壁の接触を検出する。このため、可動隔壁の動作を高精度に検出することが可能となる。
【0013】
前記流体収容部は、前記第2連通孔を介して前記第2隔室と連通する第3隔室と、前記第2隔室と前記第3隔室との間に配置され前記第2連通孔が形成された固定壁と、前記固定壁に設けられ前記第2流体を移動させるポンプとを備えてもよい。
【0014】
前記ポンプは、例えば、電気浸透流ポンプとすることができる。
【0015】
前記第1連通孔は、前記第1流体の充填ポートと前記第1隔室を結ぶ第1流路と、前記第1隔室と前記第1流体の排出ポートを結ぶ第2流路とを備え、前記第1流路には、前記充填ポートから前記第1隔室へと前記第1流体を通過させる第1弁が設けられ、前記第2流路には、前記第1隔室から前記排出ポートへと前記第1流体を通過させる第2弁が設けられてもよい。これにより、充填ポートから第1隔室への第1流体の充填と、第1隔室から排出ポートへの第1流体の排出とを、第1弁及び第2弁を用いて制御することが可能になる。そして、第1弁及び第2弁の開閉を可動隔壁の周期的な変形又は変位と組み合わせて制御すれば、第1隔室に充填される第1流体の量及び第1隔室から排出される第1流体の量を一定にすることが可能となる。従って、液体供給装置の制御性を向上することが可能となる。
【0016】
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサは、検出部と、当該検出部が前記第1流体又は前記第2流体に露出することを防止する保護部材とを備えてもよい。これにより、第1流体又は第2流体への露出により検出部が劣化すること、又は、逆に検出部の劣化により第1流体又は第2流体が汚れることを防止することが可能となる。
【0017】
前記可動隔壁と前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサとの接触部位に対応して前記可動隔壁又は前記第1タッチセンサ若しくは前記第2タッチセンサに突起が設けられてもよい。これにより、可動隔壁から第1タッチセンサ又は第2タッチセンサに加わる力を突起に集中させ第1タッチセンサ又は第2タッチセンサにかかる圧力を増大させることにより、第1タッチセンサ又は第2タッチセンサの検出感度を向上させることが可能となる。
【0018】
前記可動隔壁は、弾性部材により構成され、前記可動隔壁と前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサの検出部との間に前記可動隔壁よりも硬く前記可動隔壁との接触によっても変形しないプレートを設け、前記可動隔壁は、前記プレートを介して前記検出部と接触してもよい。これにより、可動隔壁は、当該プレートを介して検出部に接触する。前記プレートは可動隔壁よりも硬く可動隔壁との接触によっても変形しないため、可動隔壁からの圧力が検出部に伝達し易くなり、検出部の接触感度を向上することが可能となる。
【0019】
前記可動隔壁に前記プレートが接着されている又は前記可動隔壁と前記プレートが一体成形されていてもよい。
【0020】
前記可動隔壁と前記プレートの接触部位に対応して前記プレートに突起が設けられてもよい。これにより、可動隔壁からタッチセンサに加わる力を集中させタッチセンサにかかる圧力を増大させることにより、タッチセンサの検出感度を向上させることが可能となる。
【0021】
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサには電気接点を設けてもよい。
【0022】
前記第3隔室は、少なくともその一部が第2可動隔壁により形成され、前記第2隔室と前記第3隔室により密封空間が形成され、前記ポンプにより前記第2隔室と前記第3隔室それぞれにおける前記第2流体の量を調整することにより、前記可動隔壁を変形又は変位させてもよい。これにより、第2隔室と第3隔室により構成される密封空間における第2流体の総量は一定となるため、第2流体の総量が一定であることを前提に第2隔室における第2流体の量やポンプを制御することが可能となる。従って、これらの制御が容易となる。
【0023】
前記第2可動隔壁のうち前記第2流体側の面である内面との接触を検出する第3タッチセンサ及び前記内面とは反対側の面である外面との接触を検出する第4タッチセンサの少なくとも一方を備えてもよい。これにより、第3タッチセンサ及び第4タッチセンサの少なくとも一方により、第2可動隔壁の接触を検出する。このため、第2可動隔壁の動作を高精度に検出することが可能となる。また、第2可動隔壁の動作を検出することで、間接的に、可動隔壁の状態を検出することも可能となる。従って、第1タッチセンサ又は第2タッチセンサによる可動隔壁の状態検出と合わせて流体収容部内の状態をより確実に知ることが可能となる(換言すると、フェールセーフの点で優れる)。
【0024】
前記第3タッチセンサを備える場合、前記第3隔室内の前記第2流体の量が最小となるとき前記第2可動隔壁の内面と前記第3タッチセンサとが接し、前記第4タッチセンサを備える場合、前記第3隔室内の前記第2流体の量が最大となるとき前記第2可動隔壁の外面と前記第4タッチセンサとが接してもよい。これにより、第2可動隔壁の変形又は変位の終端を検出することが可能となり、その結果、間接的に、可動隔壁の変形又は変位の終端を検出することも可能となる。従って、第1タッチセンサ又は第2タッチセンサによる可動隔壁の変形又は変位の検出と併せて可動隔壁の変位検出をより確実に行うことが可能となる(換言すると、フェールセーフの点で優れる)。
【0025】
前記第3タッチセンサ又は前記第4タッチセンサは、第2検出部と、当該第2検出部が前記第2流体に露出することを防止する第2保護部材とを備えてもよい。これにより、第2流体への露出により第2検出部が劣化すること、又は、逆に第2検出部の劣化により第1流体又は第2流体が汚れることを防止することが可能となる。
【0026】
前記第2可動隔壁は、弾性部材により構成され、前記第2可動隔壁と前記第2検出部との間に前記第2可動隔壁よりも硬い第2プレートを設け、前記第2可動隔壁は、前記第2プレートを介して前記第2検出部と接触してもよい。これにより、第2可動隔壁は、当該第2プレートを介して第2検出部に接触する。前記第2プレートは第2可動隔壁よりも硬く変形し難いため、第2可動隔壁からの圧力が第2検出部に伝達し易くなり、第2検出部の接触感度を向上することが可能となる。
【0027】
前記第2プレートと前記第3タッチセンサ又は前記第4タッチセンサの接触部位に対応して前記第2プレートに突起が設けられてもよい。これにより、第2可動隔壁から第3タッチセンサ又は第4タッチセンサに加わる力を集中させ第3タッチセンサ又は第4タッチセンサにかかる圧力を増大させることにより、第3タッチセンサ又は第4タッチセンサの検出感度を向上させることが可能となる。
【0028】
前記第3タッチセンサ又は第4タッチセンサには電気接点を設けてもよい。
【0029】
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサは、前記可動隔壁が前記第1連通孔又は前記第2連通孔を塞いだ状態で前記可動隔壁と接する位置に配置されてもよい。これにより、可動隔壁が第1連通孔を塞いだ状態で可動隔壁と接する位置に第1タッチセンサを配置した場合、第1タッチセンサが可動隔壁との接触を検出すれば、第1隔室からの第1流体の排出はそれ以上起こらないこととなり、結果として、第1隔室内の第1流体の量が最小となったことを検出可能である。また、可動隔壁が第2連通孔を塞いだ状態で可動隔壁と接する位置に第2タッチセンサを配置した場合、第2タッチセンサが可動隔壁との接触を検出すれば、第2隔壁からの第2流体の排出はそれ以上起こらないこととなり、結果として第2隔室内の第2流体の量が最小となったことを検出可能である。いずれの場合も、第1流体又は第2流体の制御性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、第1隔室の内部に設けられた第1タッチセンサ及び第2隔室の内部に設けられた第2タッチセンサの少なくとも一方により、可動隔壁の接触を検出する。このため、可動隔壁の動作を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体供給装置の概略構成図である。
【図2】図1のII−II線に沿った送液ユニットの部分断面図である。
【図3】前記液体供給装置の電力系の回路図である。
【図4】前記送液ユニットにおいて、被供給液としての試料の排出及び充填を行う際の第1の状態を示す図である。
【図5】前記送液ユニットにおいて、被供給液としての試料の排出及び充填を行う際の第2の状態を示す図である。
【図6】前記送液ユニットにおいて、被供給液としての試料の排出及び充填を行う際の第3の状態を示す図である。
【図7】前記送液ユニットにおいて、被供給液としての試料の排出及び充填を行う際の第4の状態を示す図である。
【図8】前記実施形態の制御装置における制御の一例を示すフローチャートである。
【図9】順方向(第2駆動液室から第1駆動液室に向かう方向)への駆動液の駆動を開始する時の電力系の状態を示す図である。
【図10】順方向への駆動液の駆動中の電力系の状態を示す図である。
【図11】順方向への駆動液の駆動を終了する時の電力系の状態を示す図である。
【図12】逆方向(第1駆動液室から第2駆動液室に向かう方向)への駆動液の駆動を開始する前の電力系の初期状態を示す図である。
【図13】逆方向への駆動液の駆動を開始する時の電力系の状態を示す図である。
【図14】逆方向への駆動液の駆動中の電力系の状態を示す図である。
【図15】逆方向への駆動液の駆動を終了する時の電力系の状態を示す図である。
【図16】順方向に対する駆動液の流量と、第1タッチセンサの出力と、逆方向に対する駆動液の流量と、第2タッチセンサの出力とのタイミングチャートである。
【図17】前記送液ユニットの変形例の部分断面図である。
【図18】第1弾性膜と第1タッチセンサの変形例とを簡略的に示した図である。
【図19】図18の第1弾性膜と第1タッチセンサの変形例とが接触した状態を簡略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る液体供給装置について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る液体供給装置10(流体供給装置)の概略構成図である。液体供給装置10は、送液ユニット12と、試料供給源14と、制御装置16(流体制御部)と、電源ユニット18とを有する。
【0034】
送液ユニット12は、充填ポート20と、容器本体22(流体収容部)と、排出ポート24とを有する。また、容器本体22は、その筐体を構成する部材として、筒部材26、底部材28及び蓋部材30を有する。筒部材26、底部材28及び蓋部材30は、例えば、後述する試料34や駆動液62に対して耐液性を有するプラスチック材料、セラミックス、ガラス又は金属材料(表面が電気絶縁処理されたもの)からなる。
【0035】
送液ユニット12では、配管32を介して試料供給源14から供給される被供給液としての試料34(第1流体)(図2)を充填ポート20を介して容器本体22に充填した後、排出ポート24を介して外部に供給する。送液ユニット12を介することにより、試料34を所定量ずつ供給することが可能となる。制御装置16は、通信線36、38、40を介して送液ユニット12、試料供給源14及び電源ユニット18を制御する。また、電源ユニット18は、制御装置16からの指令に応じて、電力線42を介して送液ユニット12に電力を供給する。
【0036】
図2は、図1のII−II線に沿った送液ユニット12の部分断面図である。送液ユニット12は、試料流路系と、試料制御系とを備える。
【0037】
試料流路系は、試料34の流路を構成する系であり、上述した充填ポート20及び排出ポート24に加え、第1弾性膜50(可動隔壁)及び底部材28から構成される試料室52(第1隔室)と、充填ポート20及び試料室52を結ぶ第1試料流路54(第1流路)と、排出ポート24及び試料室52を結ぶ第2試料流路56(第2流路)と、第1試料流路54に設けられた第1弁58と、第2試料流路56に設けられた第2弁60とを有する。本実施形態において、第1試料流路54と第2試料流路56とにより、試料34を導入及び排出する流路(第1連通孔)を形成する。
【0038】
第1弾性膜50は、略円形状であり、筒部材26と底部材28との間で固定されている。後述するように、第1弾性膜50は、前記試料制御系にも含まれ、駆動液62(例えば、水)(第2流体)からの圧力により弾性変形可能である。第1弾性膜50が変形することにより、試料室52の容積は変化する。第1弾性膜50の素材としては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム又はイソプレンゴムを用いることができる。なお、図2に示すように、筒部材26のうち第1弾性膜50に面する内面は、円錐台状に形成されているため、第1弾性膜50は、筒部材26の内側に密着し易い。
【0039】
第1弁58及び第2弁60は、流体からの圧力に応じて開閉する逆止弁であり、第1弁58は、試料供給源14から試料室52への方向のみ試料34を通過させ、第2弁60は、試料室52から排出ポート24への方向のみ試料34を通過させる。第1弁58及び第2弁60は、制御装置16からの指令に応じて開閉する弁(例えば、電磁弁)であってもよい。
【0040】
前記試料制御系は、駆動液62の移動を制御することにより試料34の移動を制御する系であり、上述した第1弾性膜50に加え、第1弾性膜50及び筒部材26から構成される第1駆動液室66(第2隔室)と、第2弾性膜64(第2可動隔壁)及び筒部材26とから構成される第2駆動液室68(第3隔室)と、第1駆動液室66及び第2駆動液室68の間に配置され両者を結ぶ駆動液流路70(第2連通孔)が形成された固定壁72と、駆動液流路70内に設けられたポンプ74と、第1タッチセンサ76と、第2タッチセンサ78とを有する。
【0041】
第2弾性膜64は、略円形状であり、筒部材26に固定されている。第2弾性膜64は、駆動液62からの圧力により弾性変形可能であり、第2弾性膜64が変形することにより、第2駆動液室68の容積は変化する。第1弾性膜50と同様、第2弾性膜64の素材としては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム又はイソプレンゴムを用いることができる。
【0042】
本実施形態におけるポンプ74は、電気浸透流ポンプであり、多孔質の電気浸透材80と、メッシュ状の第1電極82及び第2電極84とを有する。制御装置16の制御下に、第1電極82及び第2電極84には、電力線42(図1)を介して電源ユニット18から電圧が付与され、これにより、電気浸透材80に電気浸透流を発生させる。従って、ポンプ74を介して第1駆動液室66と第2駆動液室68との間で駆動液62が移動する。
【0043】
第1タッチセンサ76は、底部材28の内面に設けられ、その内部には第2試料流路56が貫通している。第1タッチセンサ76は、第2試料流路56の近傍に設けられた第1スイッチ90(検出部)と、第1円板部材92(プレート)とを有する。本実施形態の第1スイッチ90は、圧力検出式の電気スイッチであり、第1円板部材92を介して第1弾性膜50との接触を検出すると通信線36(図1)を介して制御装置16に当該接触を通知する。第1円板部材92は、耐薬品性(特に、試料34への耐性)に優れ、第1弾性膜50よりも硬く、ポンプ74による第1弾性膜50の変形に伴って第1弾性膜50と接触した場合でも変形しない素材(例えば、繊維強化プラスチック)から構成される。また、第1円板部材92は、第1スイッチ90と接する円形状の第1基部94と、第1基部94よりも小径の円形状であり試料室52側に突出した第1突起96とを有する。
【0044】
第2タッチセンサ78は、筒部材26において駆動液流路70の近傍に設けられており、第2スイッチ100(検出部)と、第2円板部材102(プレート)とを有する。本実施形態の第2スイッチ100は、圧力検出式の電気スイッチであり、第2円板部材102を介して第1弾性膜50との接触を検出すると、通信線36(図1)を介して当該接触を制御装置16に通知する。第2円板部材102は、耐薬品性(特に、駆動液62への耐性)に優れ、第1弾性膜50よりも硬く、ポンプ74による第1弾性膜50の変形に伴って第1弾性膜50と接触した場合でも変形しない素材(例えば、繊維強化プラスチック)から構成される。また、第2円板部材102は、第2スイッチ100と接する円形状の第2基部104と、第2基部104よりも小径の円形状であり第1駆動液室66側に突出した第2突起106とを有する。
【0045】
図3には、本実施形態においてポンプ74に電力を供給する電力系200の回路図が示されている。電力系200は、電源202と、オンオフスイッチである第3スイッチ204及び第4スイッチ206と、3段階の切替えが可能な第5スイッチ208及び第6スイッチ210とを有する。本実施形態において、電源202及び第3スイッチ204〜第6スイッチ210は、電源ユニット18に含まれる。但し、電源202及び第3スイッチ204〜第6スイッチ210の少なくとも1つは、容器本体22に設けることもできる。また、第3スイッチ204〜第6スイッチ210は、制御装置16からの指令に応じて制御される。
【0046】
次に、本実施形態における液体供給装置10の動作について説明する。
【0047】
図4〜図7には、送液ユニット12において、被供給液としての試料34の排出及び充填を行う際の状態が段階的且つ簡潔に示されている。図4〜図7においてバツ印が付された第1弁58又は第2弁60は、当該弁が閉状態であることを示す。
【0048】
ここでは、初期状態において、試料室52に試料34が充填され、第1弾性膜50は、第2タッチセンサ78と接触しているものとする。また、第1弁58及び第2弁60は閉じている。
【0049】
上記初期状態において試料室52から試料34の排出を開始する際、図4に示すように、制御装置16は、ポンプ74を作動させて第1弾性膜50を第2タッチセンサ78から遠ざけ、第2弾性膜64をポンプ74に近づける。すなわち、第1弾性膜50及び第2弾性膜64を図4中、下方向に移動させる。これにより、試料室52内の試料34の圧力が高まり、第2弁60が開く(第1弁58は閉じたままである。)。これにより、試料室52に充填されている試料34が、第2試料流路56及び排出ポート24を介して送液ユニット12の外部に排出される。そして、図5に示すように、第1弾性膜50が第1タッチセンサ76に接触するまで試料34を排出する。
【0050】
第1弾性膜50と底部材28の内面や第1タッチセンサ76との接触に伴い、順方向(ポンプ74から遠ざかる方向)への第1弾性膜50の移動速度が低下し、試料室52内に残留する試料34の圧力が減少すると、第2弁60が閉じる。なお、第1弾性膜50が第1タッチセンサ76に完全に接触したとき、第1弾性膜50は、第2試料流路56を塞ぐこととなる。
【0051】
また、第1タッチセンサ76から第1弾性膜50との接触を知らせる信号を受信すると、制御装置16は、ポンプ74の動作を停止させる。その後、図6に示すように、ポンプ74を再作動させて第1弾性膜50を第1タッチセンサ76から遠ざけ、第2弾性膜64をポンプ74から遠ざける。すなわち、第1弾性膜50及び第2弾性膜64を図6中、上方向に移動させる。これにより、試料室52内の圧力を低下させて(負圧を発生させて)第1弁58を開かせることにより、試料供給源14からの試料34を試料室52に充填させる。
【0052】
そして、図7に示すように、第1弾性膜50が第2タッチセンサ78に接触するまで試料34を充填する。第1弾性膜50と筒部材26の内面や第2タッチセンサ78との接触に伴い、逆方向(ポンプ74に近づく方向)への第1弾性膜50の移動速度が低下し、試料室52内に残留する試料34の圧力の減少が緩まると、第1弁58が閉じる。なお、第1弾性膜50が第2タッチセンサ78に完全に接触したとき、第1弾性膜50は、駆動液流路70を塞ぐこととなる。
【0053】
そして、第2タッチセンサ78から第1弾性膜50との接触を知らせる信号を受信すると、制御装置16は、ポンプ74の動作を停止させる。その結果、試料室52には、所定量の試料34が充填される。
【0054】
上記処理を繰り返すことにより、所定量の試料34を間欠的に排出することが可能となる。
【0055】
図8は、本実施形態の制御装置16における制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、試料室52に試料34が充填され、第1弁58及び第2弁60をいずれも閉にした状態を初期状態とする。また、図9〜図15は、図3と併せて、図8のフローチャートを実行している際の電力系200の状態を示す。より具体的には、図3及び図9〜図11は、駆動液62を順方向(第2駆動液室68から第1駆動液室66に向かう方向)に駆動させるときの電力系200の状態であり、図12〜図15は、駆動液62を逆方向(第1駆動液室66から第2駆動液室68に向かう方向)に駆動させるときの電力系200の状態である。
【0056】
ステップS1において、制御装置16は、図示しない入力装置(例えば、キーボードやマウス)により、今回の処理における各種設定の入力を受ける。ここでの設定は、例えば、サイクル周期Pc(試料34の排出及び充填を1回行う周期)[sec]の基準値Pr[sec]、試料34の必要排出回数Ndr[回]等がある。なお、本実施形態の送液ユニット12では、試料34の1回の排出量は一定であるため、必要排出回数Ndrにより試料34の総排出量Qdt[l]を管理することができる。同様に、試料34の1回の排出量は一定であるため、サイクル周期Pcにより試料34の排出速度Vd[l/sec]を管理することができる。
【0057】
ステップS2において、制御装置16は、図示しないタイマを用いて今回のサイクルにかかる時間(サイクル周期Pc)のカウントを開始する。ここでのカウント値は後述するステップS7で用いる。また、ステップS11からステップS2に戻ってきた場合、カウント値をリセットした上でカウントを再開する。
【0058】
ステップS3において、制御装置16は、試料室52に充填された試料34の排出を行う。すなわち、ポンプ74を作動させて駆動液62を順方向(第2駆動液室68から第1駆動液室66に向かう方向)に移動させる。これにより、第1弾性膜50及び第2弾性膜64が、図2中、下方向に変形し、第1弾性膜50が試料34を押圧することにより、第2弁60を開とし、第2試料流路56及び排出ポート24を介して試料34を外部に排出する(第1弁58は閉のままである。)。
【0059】
この際、電力系200は次のように動作する。すなわち、図3の状態(初期状態)では、第3スイッチ204を閉とし、第4スイッチ206を開とする。また、第5スイッチ208は、第3スイッチ204、第4スイッチ206及びポンプ74のいずれにも接続されない位置(ニュートラル位置N)にある。なお、図3において、第4スイッチ206は閉であってもよい。
【0060】
ここで、電源202において試料34の排出を開始する際、第5スイッチ208及び第6スイッチ210は、制御装置16からの指令により、図9の状態となる。すなわち、第5スイッチ208は、第3スイッチ204とポンプ74を接続する位置(第1接続位置P11)に切り替わる。また、第6スイッチ210は、電源202の負極とポンプ74を接続する位置(第1接続位置P21)に切り替わる。これにより、図9中、ポンプ74の上側は、電源202の正極に接続され、ポンプ74の下側は、電源202の負極に接続される。その結果、ポンプ74は、駆動液62を順方向(第2駆動液室68から第1駆動液室66に向かう方向)に移動させ始める。なお、図9において、第4スイッチ206は閉であってもよい。
【0061】
次いで、駆動液62を順方向に移動させている間、図10に示すように、第4スイッチ206を閉にする(図3及び図9において第4スイッチ206が閉である場合、図9の状態のままである。)。
【0062】
図8に戻り、ステップS4において、制御装置16は、第1タッチセンサ76が第1弾性膜50と接触したか否かを判定する。当該判定は、第1タッチセンサ76からの出力により行う。本実施形態の第1タッチセンサ76の出力は、第1弾性膜50との接触がないときにオン(High)となり、第1弾性膜50との接触があったときオフ(Low)となる(図16参照)。第1タッチセンサ76が第1弾性膜50と接触していない場合(S4:NO)、ステップS3に戻る。第1タッチセンサ76が第1弾性膜50と接触した場合(S4:YES)、ステップS5に進む。
【0063】
ステップS5において、制御装置16は、一旦、ポンプ74を所定時間停止させた後、ポンプ74を再作動させて、試料供給源14から試料室52への試料34の充填を行う。すなわち、ポンプ74を作動させて駆動液62を逆方向(第1駆動液室66から第2駆動液室68に向かう方向)に移動させる。これにより、第1弾性膜50及び第2弾性膜64が、図2中、上方向に変形し、第1弾性膜50の変形により試料室52の容積が大きくなることにより、試料室52内に負圧が発生し、第1弁58が開く。従って、充填ポート20及び第1試料流路54を介して試料34が試料室52に充填される(第2弁60を閉のままである。)。
【0064】
また、第1タッチセンサ76が第1弾性膜50との接触を検出すると、図11に示すように、制御装置16は、第3スイッチ204を開に切り替えることで、順方向への駆動液62の駆動を停止させる。次いで、図12に示すように、制御装置16は、第5スイッチ208及び第6スイッチ210をニュートラル位置Nに切り替える。なお、図12において、第3スイッチ204は閉であってもよい。
【0065】
前記所定時間が経過し、試料34の充填を開始する際、第5スイッチ208及び第6スイッチ210は、制御装置16からの指令により、図13の状態となる。すなわち、第5スイッチ208は、第4スイッチ206とポンプ74を接続する位置(第2接続位置P12)に切り替わる。また、第6スイッチ210は、電源202の正極とポンプ74を接続する位置(第2接続位置P22)に切り替わる。これにより、図13中、ポンプ74の上側は、電源202の負極に接続され、ポンプ74の下側は、電源202の正極に接続される。その結果、ポンプ74は、駆動液62を逆方向(第1駆動液室66から第2駆動液室68に向かう方向)に移動させ始める。なお、図13において、第3スイッチ204は閉であってもよい。
【0066】
次いで、駆動液62を逆方向に移動させている間、制御装置16は、図14に示すように、第3スイッチ204を閉にする(図12及び図13において第3スイッチ204が閉である場合、図13の状態のままである。)。
【0067】
図8に戻り、ステップS6において、制御装置16は、第2タッチセンサ78が第1弾性膜50と接触したか否かを判定する。当該判定は、第2タッチセンサ78からの出力により行う。本実施形態の第2タッチセンサ78の出力は、第1弾性膜50との接触がないときにオン(High)となり、第1弾性膜50との接触があったときオフ(Low)となる(図16参照)。第2タッチセンサ78が第1弾性膜50と接触していない場合(S6:NO)、ステップS5に戻る。第2タッチセンサ78が第1弾性膜50と接触した場合(S6:YES)、ステップS7に進む。
【0068】
ステップS7において、制御装置16は、試料34の充填を終了した上でステップS2で開始したカウントを停止し、今回のサイクル周期Pc(試料34の排出及び充填にかかった時間)を特定する。なお、試料34の充填を終了する際(すなわち、第2タッチセンサ78が第1弾性膜50との接触を検出した際)、図15に示すように、制御装置16は、第4スイッチ206を開に切り替える。次いで、前記所定時間後に、制御装置16は、第5スイッチ208及び第6スイッチ210をニュートラル位置Nに切り替える。これにより、図3の状態に戻る。
【0069】
図8のステップS8において、制御装置16は、今回のサイクル周期Pcが正常であるか否かを判定する。当該判定は、ステップS1で設定されたサイクル周期Pcの基準値Pr[sec]と今回のサイクル周期Pcとが等しいか否かにより判定する。なお、上記基準値Prは、単一の値ではなく、2つの値(すなわち、上限値と下限値)として構成してもよい。
【0070】
今回のサイクル周期Pcが正常である場合(S8:YES)、ステップS10に進む。今回のサイクル周期Pcが正常でない場合(S8:NO)、ステップS9において、制御装置16は、ポンプ74への印加電圧Vp[V]を調整する。具体的には、今回のサイクル周期Pcが基準値Prよりも長い場合、第1弾性膜50を変形させる時間に遅れが生じていることから、印加電圧Vpを大きくする。一方、今回のサイクル周期Pcが基準値Prよりも短い場合、第1弾性膜50を変形させる時間が速すぎることから、印加電圧Vpを小さくする。
【0071】
ステップS10において、制御装置16は、前回までの試料34の排出回数Nd[回]に1を足す。なお、排出回数Ndの初期値はゼロである。
【0072】
ステップS11において、制御装置16は、ステップS10で求めた排出回数Ndが、ステップS2での設定排出回数Ndr以上になったか否かを判定する。排出回数Ndが設定排出回数Ndr以上でない場合(S11:NO)、ステップS2に戻る。排出回数Ndが設定排出回数Ndr以上である(S11:YES)、今回の処理を終了する。
【0073】
図16には、順方向(第2駆動液室68から第1駆動液室66に向かう方向)に対する駆動液62の流量Rf1[l/sec]と、第1タッチセンサ76の出力(出力電圧Vt1[V])と、逆方向(第1駆動液室66から第2駆動液室68に向かう方向)に対する駆動液62の流量Rf2[l/sec]と、第2タッチセンサ78の出力(出力電圧Vt2[V])とのタイミングチャートが示されている。
【0074】
上述の通り、本実施形態における第1タッチセンサ76の出力(出力電圧Vt1)及び第2タッチセンサ78の出力(出力電圧Vt2)は、第1弾性膜50との接触がないときにオン(High)となり、第1弾性膜50との接触があったときオフ(Low)となる。
【0075】
時点t1において、駆動液62の順方向への駆動を開始する。時点t2において第1タッチセンサ76が第1弾性膜50との接触を検出すると、ポンプ74の駆動が停止される。その後、時点t3において、ポンプ74は、駆動液62を逆方向へ移動させるよう駆動を開始する。例えば、時点t2から時点t3までの時間が、上述したポンプ74を停止させる時間である。時点t4において、第2タッチセンサ78が第1弾性膜50との接触を検出すると、ポンプ74の駆動が停止される。その後、時点t5において、ポンプ74は、駆動液62の順方向への駆動を開始する。その後も同様の制御となる。
【0076】
以上のように、本実施形態では、試料室52内に設けられた第1タッチセンサ76及び第1駆動液室66内に設けられた第2タッチセンサ78により、第1弾性膜50の接触を検出する。このため、第1弾性膜50の動作を高精度に検出することが可能となる。
【0077】
本実施形態において、第1タッチセンサ76は、第1スイッチ90が試料34に露出することを防止する第1円板部材92を備える。これにより、試料34への露出により第1スイッチ90が劣化すること、及び第1スイッチ90の劣化により試料34が汚れることを防止することが可能となる。同様に、第2タッチセンサ78は、第2スイッチ100が駆動液62に露出することを防止する第2円板部材102を備える。これにより、駆動液62への露出により第2スイッチ100が劣化すること、及び第2スイッチ100の劣化により駆動液62が汚れることを防止することが可能となる。
【0078】
本実施形態において、第1試料流路54には、充填ポート20から試料室52へと試料34を通過させる第1弁58が設けられ、第2試料流路56には、試料室52から排出ポート24へと試料34を通過させる第2弁60が設けられる。これにより、充填ポート20から試料室52への試料34の充填と、試料室52から排出ポート24への試料34の排出とを、第1弁58及び第2弁60を用いて制御することが可能になる。そして、第1弁58及び第2弁60の開閉を第1弾性膜50の周期的な変形と組み合わせて制御することにより、試料室52に充填される試料34の量及び試料室52から排出される試料34の量を一定にすることが可能となる。従って、液体供給装置10の制御性を向上することが可能となる。
【0079】
本実施形態において、第1弾性膜50と第1タッチセンサ76の接触部位に対応して第1突起96が設けられている。これにより、第1弾性膜50から第1スイッチ90に加わる力を集中させ第1スイッチ90にかかる圧力を増大させることにより、第1スイッチ90の検出感度を向上させることが可能となる。同様に、第1弾性膜50と第2タッチセンサ78の接触部位に対応して第2突起106が設けられている。これにより、第1弾性膜50から第2スイッチ100に加わる力を集中させ第2スイッチ100にかかる圧力を増大させることにより、第2スイッチ100の検出感度を向上させることが可能となる。
【0080】
本実施形態では、第1弾性膜50は、第1弾性膜50よりも硬く、ポンプ74による第1弾性膜50の変形に伴って第1弾性膜50と接触した場合でも変形しない第1円板部材92を介して第1スイッチ90と接触する。このため、第1弾性膜50からの圧力が第1スイッチ90に伝達し易くなり、第1タッチセンサ76の接触感度を向上することが可能となる。同様に、第1弾性膜50は、第1弾性膜50よりも硬く、ポンプ74による第1弾性膜50の変形に伴って第1弾性膜50と接触した場合でも変形しない第2円板部材102を介して第2スイッチ100と接触する。このため、第1弾性膜50からの圧力が第2スイッチ100に伝達し易くなり、第2タッチセンサ78の接触感度を向上することが可能となる。
【0081】
本実施形態では、第1駆動液室66と第2駆動液室68により密閉空間が形成され、ポンプ74により第1駆動液室66と第2駆動液室68それぞれにおける駆動液62の量を調整することにより、第1弾性膜50を変形又は変位させる。これにより、第1駆動液室66と第2駆動液室68により構成される密封空間における駆動液62の総量は一定となるため、駆動液62の総量が一定であることを前提に第1駆動液室66における駆動液62の量やポンプ74を制御することが可能となる。従って、これらの制御が容易となる。
【0082】
本実施形態において、第1タッチセンサ76は、第1弾性膜50が第2試料流路56を塞いだ状態で第1弾性膜50と接する位置に配置される。これにより、第1タッチセンサ76が第1弾性膜50との接触を検出すれば、試料室52からの試料34の排出はそれ以上起こらないこととなり、結果として、試料室52内の試料34の量が最小となったことを検出可能である。同様に、第2タッチセンサ78は、第1弾性膜50が駆動液流路70を塞いだ状態で第1弾性膜50と接する位置に配置される。これにより、第2タッチセンサ78が第1弾性膜50との接触を検出すれば、第1駆動液室66からの駆動液62の移動はそれ以上起こらないこととなり、結果として、第1駆動液室66内の駆動液62の量が最小となったことを検出可能である。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0084】
上記実施形態では、第1弾性膜50を用いて試料室52と第1駆動液室66を区切ったが、第1駆動液室66内の駆動液62の量の調整に伴う変形又は変位により、試料室52内に試料34を導入させる又は試料室52から試料34を排出させるものであれば、これに限らない。例えば、特許文献3、4のように、変形なしに変位するものを代わりに用いてもよい。この場合、第1突起96や第2突起106に相当する部位を可動隔壁に設けることもできる。或いは、テフロン(登録商標)等からなる蛇腹構造の部材を代わりに用いることもできる。第2弾性膜64についても同様である。
【0085】
上記実施形態では、第1駆動液室66を第2弾性膜64により密封したが、第1駆動液室66に駆動液62を供給可能であれば、これに限らない。例えば、ポンプ74を外においた構成で、直接外部から第1駆動液室66に駆動液62を導入することも可能である。
【0086】
上記実施形態では、試料34の排出を複数回行う構成であったが、これに限らず、例えば、特許文献3のように1回のみの使用を前提とした用途にも適用可能である。この場合、第1試料流路54と第2試料流路56を1つにまとめてもよい。また、上記実施形態では、試料34及び駆動液62はいずれも液体であったが、いずれか一方又は両方を気体とする構成にも適用可能である。
【0087】
上記実施形態では、第1タッチセンサ76及び第2タッチセンサ78を設けたが、いずれか一方のみを設けてもよい。また、第1タッチセンサ76及び第2タッチセンサ78の位置は図2に示す位置に限られず、別の位置であってもよい。さらに、別のタッチセンサを設けることもできる。例えば、第2タッチセンサ78の代わりに又は第2タッチセンサ78に加えて、蓋部材30の内側に別のタッチセンサを設け、当該タッチセンサと第2弾性膜64の接触を検出することにより、第2駆動液室68内に導入される駆動液62の量が最大又は最小になったことを判定してもよい。
【0088】
図17には、送液ユニット12の変形例としての送液ユニット12aの部分断面図(図2に対応するもの)が示されている。図17では、筒部材26のうち第2弾性膜64に面する内面に第3タッチセンサ110を設けると共に、蓋部材30aの内側に第4タッチセンサ120を設ける。第2弾性膜64との接触を第3タッチセンサ110が検出することにより、第2駆動液室68内に導入される駆動液62の量が最小になったことを判定し、第2弾性膜64との接触を第4タッチセンサ120が検出することにより、第2駆動液室68内に導入される駆動液62の量が最大になったことを判定する。
【0089】
このように、第3タッチセンサ110及び第4タッチセンサ120を用いることで第2弾性膜64の状態を検出することが可能となり、その結果、間接的に、第1弾性膜50の状態を検出することも可能となる。従って、第1タッチセンサ76及び第2タッチセンサ78による第1弾性膜50の状態検出と合わせて容器本体22内の状態をより確実に知ることが可能となる(換言すると、フェールセーフの点で優れる)。
【0090】
特に、第3タッチセンサ110は、第2駆動液室68内の駆動液62の量が最小となるとき第2弾性膜64の内面と接し、第4タッチセンサ120は、第2駆動液室68内の駆動液62の量が最大となるとき第2弾性膜64の外面と第4タッチセンサ120と接する。これにより、第2弾性膜64の変形の終端を検出することが可能となり、その結果、間接的に、第1弾性膜50の変形の終端を検出することも可能となる。従って、第1タッチセンサ76及び第2タッチセンサ78により第1弾性膜50の変形の終端を検出することと併せて第1弾性膜50の終端の検出をより確実に行うことが可能となる(換言すると、フェールセーフの点で優れる)。
【0091】
また、第3タッチセンサ110は、第3スイッチ112(第2検出部)と、第3円板部材114(第2プレート)とを有する。第3スイッチ112は、圧力検出式の電気スイッチであり、第3円板部材114を介して第2弾性膜64との接触を検出すると通信線36を介して制御装置16に当該接触を通知する。第3円板部材114は、第1円板部材92や第2円板部材102と同様の素材から構成され、第3スイッチ112と接する円形状の第3基部116と、第3基部116よりも小径の円形状であり第2弾性膜64側に突出した第3突起118とを有する。これにより、第1タッチセンサ76や第2タッチセンサ78と同様、第3スイッチ112の保護や検出感度の向上を図ることができる。
【0092】
同様に、第4タッチセンサ120は、第4スイッチ122(第2検出部)と、第4円板部材124(第2プレート)とを有する。第4スイッチ122は、圧力検出式の電気スイッチであり、第4円板部材124を介して第2弾性膜64との接触を検出すると通信線36を介して制御装置16に当該接触を通知する。第4円板部材124は、第1円板部材92や第2円板部材102と同様の素材から構成され、第4スイッチ122と接する円形状の第4基部126と、第4基部126よりも小径の円形状であり第2弾性膜64側に突出した第4突起128とを有する。これにより、第1タッチセンサ76や第2タッチセンサ78と同様、第4スイッチ122の保護や検出感度の向上を図ることができる。
【0093】
上記実施形態では、第1弾性膜50と第1タッチセンサ76又は第2タッチセンサ78とを接触させる構成して、図2に示すような構成を用いたが、これに限らない。例えば、図18に示すような構成を用いることができる。
【0094】
図18は、第1弾性膜50と、第1タッチセンサ76の変形例としての第1タッチセンサ76aとを簡略的に示した図である。図18において、第1弾性膜50には、平面視円形状のプレート150が接着されている。このプレート150は、第1円板部材92や第2円板部材102と同様、耐薬品性(特に、駆動液62への耐性)に優れ、第1弾性膜50よりも硬く、ポンプ74による第1弾性膜50の変形に伴って第1タッチセンサ76aと接触した場合でも変形しない素材(例えば、繊維強化プラスチック)から構成される。
【0095】
また、第1タッチセンサ76aは、第1スイッチ90aと、カバー膜152とを有する。第1スイッチ90aは、ボタン154と、弾性変形可能な1組の導電部材156a、156bとを備える。ボタン154は、平面視円形状の弾性部材から構成され、導電部材156a、156bに面する側には非導電性のピン158が形成されている。また、導電部材156a、156bは、平面視長方形状であり、通常状態では、互いに接触している。
【0096】
カバー膜152は、平面視円形状であり、第1スイッチ90aが試料34に露出することを防止する。
【0097】
使用に際し、ポンプ74が駆動液62を順方向(第2駆動液室68から第1駆動液室66に向かう方向)に移動させ、第1弾性膜50が第1タッチセンサ76aと接触すると、導電部材156a、156bが離間することにより、第1タッチセンサ76aは、第1弾性膜50との接触を検出することができる。
【0098】
すなわち、図19に示すように、第1弾性膜50が、第1タッチセンサ76aと接触すると、第1弾性膜50及びプレート150から押圧力によりボタン154が図19中、下方に変形する。このボタン154の変形に伴ってピン158が図19中、下方に移動し、導電部材156a、156bを下方に付勢する。導電部材156a、156bの下方には、空間160が配置されており、導電部材156a、156bが離間する。
【0099】
なお、図18及び図19では、プレート150を第1駆動液室66側に配置したが、試料室52側に配置してもよい。また、第1弾性膜50とプレート150は一体的に形成してもよい(例えば、プレート150を第1弾性膜50内に配置してもよい)。
【0100】
上記実施形態では、試料室52に試料34が充填されている状態を初期状態とした処理を用いたが、試料室52に試料34が充填されていない状態を初期状態とすることもできる。この場合、例えば、図8のステップS3、S4とステップS5、S6の順番を逆にすればよい。
【符号の説明】
【0101】
10…流体供給装置 16…制御装置(流体制御部)
20…充填ポート 22…容器本体(流体収容部)
24…排出ポート 34…試料(第1流体)
50…第1弾性膜(可動隔壁) 52…試料室(第1隔室)
54…第1試料流路(第1流路) 56…第2試料流路(第2流路)
58…第1弁 60…第2弁
62…駆動液(第2流体) 66…第1駆動液室(第2隔室)
68…第2駆動液室(第3隔室) 70…駆動液流路(第2連通孔)
72…固定壁 74…ポンプ
76…第1タッチセンサ 78…第2タッチセンサ
90…第1スイッチ(検出部、電気接点)
92…第1円板部材(保護部材、プレート)
94…第1基部 96…第1突起
100…第2スイッチ(検出部、電気接点)
102…第2円板部材(保護部材、プレート)
104…第2基部 106…第2突起
110…第3タッチセンサ
112…第3スイッチ(第2検出部、電気接点)
114…第3円板部材(第2保護部材、第2プレート)
116…第3基部 118…第3突起
120…第4タッチセンサ
122…第4スイッチ(第2検出部、電気接点)
124…第4円板部材(第2保護部材、第2プレート)
126…第4基部 128…第4突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連通孔を介して第1流体の導入及び排出が可能な第1隔室と、第2連通孔を介して第2流体の導入及び排出が可能な第2隔室とが可動隔壁により仕切られた流体収容部と、
前記第1隔室の内部に設けられ前記可動隔壁との接触を検出する第1タッチセンサ及び前記第2隔室の内部に設けられ前記可動隔壁との接触を検出する第2タッチセンサの少なくとも一方と
を備え、
前記第2隔室内の前記第2流体の量が調整されると前記可動隔壁が変形又は変位し、これにより、前記第1隔室内に前記第1流体が導入若しくは吸引され又は前記第1隔室から前記第1流体が排出される
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体供給装置において、
前記流体収容部は、
前記第2連通孔を介して前記第2隔室と連通する第3隔室と、
前記第2隔室と前記第3隔室との間に配置され前記第2連通孔が形成された固定壁と、
前記固定壁に設けられ前記第2流体を移動させるポンプと
を備えることを特徴とする流体供給装置。
【請求項3】
請求項2記載の流体供給装置において、
前記ポンプは、電気浸透流ポンプである
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第1連通孔は、前記第1流体の充填ポートと前記第1隔室を結ぶ第1流路と、前記第1隔室と前記第1流体の排出ポートを結ぶ第2流路とを備え、
前記第1流路には、前記充填ポートから前記第1隔室へと前記第1流体を通過させる第1弁が設けられ、前記第2流路には、前記第1隔室から前記排出ポートへと前記第1流体を通過させる第2弁が設けられる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサは、検出部と、当該検出部が前記第1流体又は前記第2流体に露出することを防止する保護部材とを備える
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記可動隔壁と前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサの接触部位に対応して前記可動隔壁又は前記第1タッチセンサ若しくは前記第2タッチセンサに突起が設けられている
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記可動隔壁は、弾性部材により構成され、
前記可動隔壁と前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサの検出部との間に前記可動隔壁よりも硬く前記可動隔壁との接触によっても変形しないプレートを設け、
前記可動隔壁は、前記プレートを介して前記検出部と接触する
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項8】
請求項7記載の流体供給装置において、
前記可動隔壁に前記プレートが接着されている又は前記可動隔壁と前記プレートが一体成形されている
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の流体供給装置において、
前記可動隔壁と前記プレートの接触部位に対応して前記プレートに突起が設けられる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサには電気接点が設けられる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項11】
請求項2又は請求項2に従属する請求項3〜10のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第3隔室は、少なくともその一部が第2可動隔壁により形成され、
前記第2隔室と前記第3隔室により密封空間が形成され、
前記ポンプにより前記第2隔室と前記第3隔室それぞれにおける前記第2流体の量を調整することにより、前記可動隔壁を変形又は変位させる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項12】
請求項11記載の流体供給装置において、
前記第2可動隔壁のうち前記第2流体側の面である内面との接触を検出する第3タッチセンサ及び前記内面とは反対側の面である外面との接触を検出する第4タッチセンサの少なくとも一方を備える
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項13】
請求項12記載の流体供給装置において、
前記第3タッチセンサを備える場合、前記第3隔室内の前記第2流体の量が最小となるとき前記第2可動隔壁の内面と前記第3タッチセンサとが接し、
前記第4タッチセンサを備える場合、前記第3隔室内の前記第2流体の量が最大となるとき前記第2可動隔壁の外面と前記第4タッチセンサとが接する
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項14】
請求項13記載の流体供給装置において、
前記第3タッチセンサ又は前記第4タッチセンサは、第2検出部と、当該第2検出部が前記第2流体に露出することを防止する第2保護部材とを備える
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項15】
請求項14記載の流体供給装置において、
前記第2可動隔壁は、弾性部材により構成され、
前記第2可動隔壁と前記第2検出部との間に前記第2可動隔壁よりも硬い第2プレートを設け、
前記第2可動隔壁は、前記第2プレートを介して前記第2検出部と接触する
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項16】
請求項15記載の流体供給装置において、
前記第2プレートと前記第3タッチセンサ又は前記第4タッチセンサの接触部位に対応して前記第2プレートに突起が設けられる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第3タッチセンサ又は第4タッチセンサには電気接点が設けられる
ことを特徴とする流体供給装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の流体供給装置において、
前記第1タッチセンサ又は前記第2タッチセンサは、前記可動隔壁が前記第1連通孔又は前記第2連通孔を塞いだ状態で前記可動隔壁と接する位置に配置される
ことを特徴とする流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−163296(P2011−163296A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29492(P2010−29492)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(511091564)
【Fターム(参考)】