説明

流体充填装置および流体充填方法

【課題】容器に流体を充填する流体充填装置において、充填停止時、流体の流れを確実に遮断し、充填ノズルからの液だれを防止できる流体充填装置および流体充填方法を提供する。
【解決手段】流体充填装置bは、バルブ本体1内に、流体の流れを開閉制御する弁体2と、この弁体2を案内する案内部材3と、この案内部材3の流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材4と、弁体2を環状のシール部材4に向かって付勢する弾性部材5とを備え、弁体2に環状のシール部材4の内径よりも大きな外径を有する当接部2cを設けることにより、充填時には弁体2を下降させて弁体2の凹部2bを介して流体を流通させ、充填停止持には弾性部材5の弾性力により弁体2の当接部2cを環状のシール部材4に密接させて流体を遮断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を容器に充填する流体充填装置および流体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体充填装置の内部に設けられた弁を用いて流体の流れを開閉制御する手段として、たとえば図4に示したように案内部材30内に弁体20を設け、充填時には弁体20に設けられた凹部20bと案内部材30の内壁30cの間隙を通して流体を流通させ(図4(a)参照)、充填停止時には弁体20を移動部材92により移動させて弁体外周部20aと案内部材30の内壁30cを接触させて流体の流れを遮断し(図4(b)参照)、充填を停止させていた(図4(b)は特許文献1の図5に対応している)。
【0003】
【特許文献1】特願2004−189454号
【0004】
しかしながら、前述の流体充填装置においては、充填停止時、弁体20を移動させて弁体外周部20aと案内部材30の内壁30cを接触させた状態であっても、供給される流体の種類や圧力等によっては案内部材30の内壁30cと弁体外周部20aとの間の僅かな隙間から徐々に流体が漏出して充填ノズルからの液だれを起こすこともあった(図4(b)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、流体充填装置内において、充填停止時、流体の流れを確実に遮断し、充填ノズルからの液だれを防止できる流体充填装置および流体充填方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る手段は、流体の流れを開閉制御する弁体を内蔵したバルブ本体と、このバルブ本体内に設けられ、前記弁体を案内する案内部材と、この案内部材の前記流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材と、前記バルブ本体内に設けられ、前記弁体を前記環状のシール部材に向かって付勢する弾性部材と、前記弁体の前記流体の流れの上流側の部位に当接して前記弾性部材により付勢された前記弁体を移動させる移動部材と、この移動部材を進退させる進退手段と、前記バルブ本体の前記弁体より前記流体の流れの下流側に接続され、前記流体を容器に充填する充填ノズルと、を備え、前記弁体は、前記環状のシール部材に当接し前記環状のシール部材の内径よりも大きな外径を有する当接部と、前記当接部より前記流体の流れの上流側にあって前記案内部材と離間して前記流体の流れを許容する凹部と、を備えている流体充填装置である。
【0007】
請求項2に係る手段は、請求項1に記載の流体充填装置であって、環状のシール部材に当接する弁体の当接部は、流体の流れの下流側に向かって漸次拡径するテーパー形状となっている流体充填装置である。
【0008】
請求項3に係る手段は、流体の流れを開閉制御する弁体を内蔵したバルブ本体と、
このバルブ本体内に設けられ、前記弁体を案内する案内部材と、この案内部材の前記流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材と、前記バルブ本体内に設けられ、前記弁体を前記環状のシール部材に向かって付勢する弾性部材と、前記弁体の前記流体の流れの上流側の部位に当接して前記弾性部材により付勢された前記弁体を移動させる移動部材と、この移動部材を進退させる進退手段と、前記バルブ本体の前記弁体より前記流体の流れの下流側に接続され、前記流体を容器に充填する充填ノズルと、を備え、充填時、前記進退手段により前記移動部材を前進させ、前記弁体を移動し、前記弁体と前記環状のシール部材とを離間させて前記流体を流通させ、前記充填ノズルを介して前記流体を前記容器に充填し、充填停止時、前記進退手段により前記移動部材を後退させ、前記弾性部材により付勢した前記弁体を前記環状のシール部材に密接させて前記流体の流れを遮断し、前記充填ノズルからの前記流体の漏出を防止する流体充填方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の流体充填装置とすることで、案内部材の流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材に弾性部材により付勢した弁体の当接部を密接させて流体の流れを確実に遮断でき、従来の流体充填装置に比べて流体の遮断性能が向上し、充填ノズルからの液だれを防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の流体充填装置とすることで、請求項1に記載の当接部をテーパー形状とすることにより、弾性部材によって付勢した弁体が流体の流れの上流側に移動するほど環状のシール部材への密着性が高まるため、流体の遮断性能がいっそう向上し、充填ノズルからの液だれを防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の流体充填方法とすることで、充填停止時、弁体の当接部が弾性部材の弾性力により環状のシール部材に密接して流体の流れを確実に遮断できるため、従来の流体充填方法に比べて流体の遮断性能が向上し、充填ノズルからの液だれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図1乃至図3に基づき説明する。
【0013】
図1においてaは流体充填装置であり、この流体充填装置aは供給された例えば液体などの流体を容器cに充填し、所定量の流体を充填し終わると流体の流れを遮断し充填を停止するものである。
【0014】
この流体充填装置aは、バルブ本体1と、このバルブ本体1の上方に設けられた進退手段bと、バルブ本体1の下方に設けられた充填ノズル8とを有している。
【0015】
前述のバルブ本体1には、充填する流体をこのバルブ本体1内に供給するための流体供給管14が接続され、バルブ本体1内には、流体を流通および遮断するための案内部材3、弁体2、弾性部材5が設けられている。
【0016】
図2にバルブ本体1に内蔵した案内部材3、弁体2および弾性部材5の分解斜視図を示した。
【0017】
案内部材3は、案内部材3の入口部3dから案内部材3の出口部3eに向かって流体を流通するための円筒状の管3aを有しており、この円筒状の管3aの流体の流れの下流方向の内周縁3bに設けられた凹部には環状のシール部材4(例えば、Oリングなど)が周設されている。この環状のシール部材4の材料は流体の種類によって使い分けられるが、例えば耐薬品性や耐熱性に優れた合成ゴムなどが用いられる。
【0018】
前述の弁体2は、案内部材3の円筒状の管3aの内部に進退自在となるように設けられるものであり、全周に渡って案内部材3の内壁3cに当接する弁体外周部2aと、この弁体外周部2aよりも流体の流れの上流側に位置し案内部材3の内壁3cから離間して弁体2の長手方向に沿って設けられた複数の凹部2b、2b、・・と、弁体外周部2aよりも流体の流れの下流側には案内部材3の円筒状の管3aの内径よりも大きな外径を有する環状のシール部材4に当接する当接部2cを備えている。この当接部2cは、図3(a)、(b)に示すように、流体の流れの下流側に向かって漸次拡径するテーパー形状とすることが好ましい。弁体2が流体の流れの上流側に移動するほど環状のシール部材4への密着性が高まるためであり、流体の遮断性能がいっそう向上するからである。さらに、この当接部2cの流体の流れの下流側には後述する弾性部材5を支承するバネ座2dが流体の流れの下流側に突出するように設けられている。なお、弁体2の上端中心部には図2に示したように凹部2eを設けることが好ましい。後述する移動部材9の先端に設けられた押部によって押力を加えた際の弁体2の軸ブレを防止するためである。
【0019】
前述の弾性部材5は、弁体2のバネ座2dに当接して弁体2を流体の流れの上流側に付勢し弁体2の当接部2cを環状のシール部材4に押し当てるものであり、例えば図2に示すようにバネなどが用いられる。
【0020】
さらに、図1に示したように弾性部材5よりも流体の流れの下流側には連結部材6が設けられている。この連結部材6は前述の弾性部材5を支承する凸状のバネ座6bと、充填する流体を流通するための通孔6a、6a、・・を備えており、覆体71によって案内部材3およびバルブ本体1に固定されている。なお、この覆体71にはノズルホルダ82を介して充填ノズル8が接続されている。
【0021】
次に移動部材9および進退手段bについて説明する。図1に示したように、移動部材9はバルブ本体1の上方に設けられ、後述する進退手段bにより上下方向に移動するものであり、下端は漸次縮径して先端に下向きに凸状の押部を有している。この押部が前述の弁体2の凹部2eに当接して弁体2を弾性部材5の弾性力に抗して下方へ移動させる働きをする。
【0022】
進退手段bはたとえば圧縮空気を利用して移動部材9を上下に進退させるものであり、移動部材9上部のフランジ部9aの下面9bに作用して移動部材9を上昇させたり、フランジ部9aの上面9cに作用して移動部材9を下降させたりする。具体的には、進退手段bはフランジ部9aの下面9bに圧縮空気を作用させるためのガイド筒10を備え、このガイド筒10とバルブ本体1と移動部材9とにより囲まれた空間に空気室10aおよび空気室10bを形成し、移動部材9の上昇時にはバルブ本体1に接続された通気管11を介して供給された圧縮空気を空気室10a、通気孔10c、空気室10bの順路で送気してフランジ部9aの下面9bを押圧して移動部材9を上方に移動させることができる。一方、フランジ部9aの上面側には移動部材9とバルブ本体1に接続した覆体72とに囲まれた空間に空気室10dが設けられ、移動部材9の下降時には覆体72に接続された通気管12を介して供給された圧縮空気を空気室10dに送気し、フランジ部9aの上面9cを押圧して移動部材9を下方に移動させることができる。
【0023】
なお、13は移動部材9の移動を規制するためのストッパーであり、移動部材9が上昇したときにストッパー13の下端部を移動部材9の上部に当接させて移動部材9の上昇を止めるものである。このストッパー13を設けることにより移動部材9の過度な上昇を抑えることができ、上下動のストロークを短くして弁体2の開閉動作を素早くさせることができる。
【0024】
次に、上記構成に係る流体充填装置aの動作について説明する。充填停止時には図示していない送気手段により通気管11を介して圧縮空気が流体充填装置aに供給されており、前述のようにフランジ部9aの下面9bが押圧され、通気管12を介して空気室10d内の空気を排出し移動部材9が上昇している。そのため図3(b)に示したように移動部材9の下端の押部は弁体2の上端から離間しており、弾性部材5により付勢した弁体2の当接部2cが環状のシール部材4に密接し、案内部材3の出口部3eが塞がれて流体の流れが遮断されている。
【0025】
充填停止状態から充填への移行は前述の送気手段を切り替えることによって行われる。すなわち、圧縮空気の送気を通気管12を通して行うと同時に通気管11から空気の排気を行うことによりフランジ部9aの上面9cにかかった圧縮空気の押圧により移動部材9が下降し、図3(a)に示したように移動部材9の下端の押部が弁体2の上端に当接し、弾性部材5により付勢した弁体2を弾性部材5の弾性力に抗して押し下げる。このとき弁体2の当接部2cは環状のシール部材4から離間し、案内部材3の出口部3eが開口するため、弁体2の凹部2bを介して案内部材3の出口部3eから流体が流出し、連結部材6の通孔6aを介して充填ノズル8の吐出孔8aから所定量の流体が吐出して容器cに充填される。
【0026】
充填状態から充填停止への移行は前述の送気手段を切り替えることによって行われる。すなわち、圧縮空気の送気を通気管11を介して行うと同時に通気管12から空気の排気を行うことによりフランジ部9aの下面9bが押圧されて移動部材9が上昇し、図3(b)に示したように移動部材9の下端の押部が弁体2の上端から離間するため、弁体2は弾性部材5の弾性力により上昇して弁体2の当接部2cが環状のシール部材4に密接し、流体の流れが遮断されて充填が完了する。なお、図示していない容器移動手段により順次容器c、c、・・が入れ替えられ、前述の動作が繰り返されて各容器cに所定量の流体が充填される。
【0027】
ここで、前述の流体の流れの遮断について詳述すると、図3(a)に示した流体の流通状態から図3(b)に示した流体の停止状態に至るまでの間には以下に示すような過程を経る。すなわち、図3(a)に示した状態から弁体2が上昇を開始すると、まず弁体2の凹部2bの下端が環状のシール部材4の内側面に接触し、案内部材3の出口部3eが閉じられ流体の流れが停止する。その後、弁体外周部2aと環状のシール部材4および案内部材3の内壁3cとが接触しながら弁体2が上昇するため、弁体2よりも下流側(充填ノズル8側)は負圧となり充填ノズル8内に残留している流体は上流側(弁体2側)に吸引される。そして、更に弁体2が上昇すると当接部2cが環状のシール部材4に密接し、弁体2の上昇は停止する。
【0028】
したがって、再び移動部材9が下降して弁体2を押し下げない限り弁体2の当接部2cと環状のシール部材4の密接状態は弾性部材5の弾性力によって維持されるため、充填ノズル8内の流体は上流側(弁体2側)に吸引した状態が保たれ、流体が充填ノズル8の吐出孔8aから流出して液だれを起こすことはない。
【0029】
なお、送気手段からの圧縮空気の送気が停止して進退手段bの動作が解除された場合であっても弾性部材5の弾性力により弁体2の当接部2cと環状のシール部材4の密接状態が維持されるため、流体充填装置aに供給される流体の圧力によっても弁体2が押し下げられることはなく、流体が吐出孔8aから流出して液だれを生ずることはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示す充填時の流体充填装置の垂直断面図である。
【図2】図1の流体充填装置に内蔵した案内部材、弁体、弾性部材の分解斜視図である。
【図3】図1の流体充填装置の弁体の開閉状態を示す図であり、図3(a)は充填時の一部断面図、図3(b)は充填停止時の一部断面図である。
【図4】従来の流体充填装置を説明するための図であり、図4(a)は充填時の一部断面図、図4(b)は充填停止時の一部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 バルブ本体
2 弁体
2c 当接部
3 案内部材
4 環状のシール部材
5 弾性部材
6 連結部材
8 充填ノズル
9 移動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを開閉制御する弁体を内蔵したバルブ本体と、
このバルブ本体内に設けられ、前記弁体を案内する案内部材と、
この案内部材の前記流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材と、
前記バルブ本体内に設けられ、前記弁体を前記環状のシール部材に向かって付勢する弾性部材と、
前記弁体の前記流体の流れの上流側の部位に当接して前記弾性部材により付勢された前記弁体を移動させる移動部材と、
この移動部材を進退させる進退手段と、
前記バルブ本体の前記弁体より前記流体の流れの下流側に接続され、前記流体を容器に充填する充填ノズルと、
を備え、
前記弁体は、
前記環状のシール部材に当接し前記環状のシール部材の内径よりも大きな外径を有する当接部と、
前記当接部より前記流体の流れの上流側にあって前記案内部材と離間して前記流体の流れを許容する凹部と、
を備えていることを特徴とする流体充填装置。
【請求項2】
環状のシール部材に当接する弁体の当接部は、流体の流れの下流側に向かって漸次拡径するテーパー形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の流体充填装置。
【請求項3】
流体の流れを開閉制御する弁体を内蔵したバルブ本体と、
このバルブ本体内に設けられ、前記弁体を案内する案内部材と、
この案内部材の前記流体の流れの下流側に設けられた環状のシール部材と、
前記バルブ本体内に設けられ、前記弁体を前記環状のシール部材に向かって付勢する弾性部材と、
前記弁体の前記流体の流れの上流側の部位に当接して前記弾性部材により付勢された前記弁体を移動させる移動部材と、
この移動部材を進退させる進退手段と、
前記バルブ本体の前記弁体より前記流体の流れの下流側に接続され、前記流体を容器に充填する充填ノズルと、
を備え、
充填時、前記進退手段により前記移動部材を前進させ、前記弁体を移動し、前記弁体と前記環状のシール部材とを離間させて前記流体を流通させ、前記充填ノズルを介して前記流体を前記容器に充填し、
充填停止時、前記進退手段により前記移動部材を後退させ、前記弾性部材により付勢した前記弁体を前記環状のシール部材に密接させて前記流体の流れを遮断し、前記充填ノズルからの前記流体の漏出を防止することを特徴とする流体充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−145336(P2007−145336A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338173(P2005−338173)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(399044953)
【Fターム(参考)】