説明

流体制御弁

【課題】弁開度を検出する弁開度検出センサを設けた流体制御弁において、低コストで、組付け時の作業性を向上させることができる流体制御弁を提供する。
【解決手段】薬液弁1は、カバー20の蓋部上に配置される開口から収容し、弁開度検出センサ80を保持させる内部空間70Sが形成されたセンサカバー70を備え、センサカバー70には、カバー20及び当該センサカバー70の厚み方向に延びる係止部が形成され、カバー20には、係止部と係留する溝部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁体を弁座に当接または離間させて流体の流れを制御する流体制御弁に関する。詳しくは、弁体の弁開度を検出する弁開度検出センサを備えた流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造装置や液晶パネル製造装置等には、例えば、特許文献1に記載されているような薬液弁が用いられている。薬液弁は、入力ポートと出力ポートの間にある弁座に対し、弁体が当接または離間することで、入力ポートから出力ポートへの薬液の流れを制御する流体制御弁である。特許文献1に記載された薬液弁の断面図を図19に示す。
特許文献1の薬液弁は、流体制御部、及びこの流体制御部の下流側流路側に流体圧力検出部を併設している。流体制御部は、コイルスプリング等のバネによる付勢力と、この付勢力に抗する向きに、加圧した操作エアによる押圧力とを、ピストンに作用させて、ダイアフラム弁体が弁座に対し、当接または離間するようになっている。
一方、流体圧力検出部は、下流側流路を流れる薬液の圧力を利用して、流体制御部のダイアフラム弁体の弁開閉状態を検出するようになっている。
【0003】
すなわち、流体圧力検出部では、図19に示すように、圧力検出体140と接続したピストン150が、圧力検出体140の上下方向に延びるシャフト160と一体に形成され、シャフト160上部に2面幅を有する被検出部161が、薬液弁のカバー120から外部に突出している。フォトマイクロセンサ180は、このカバー120外部にボルト172締めで固定したブラケット171に保持されている。
特許文献1の薬液弁では、制御する薬液の圧力が、ダイアフラム弁体の弁開量に応じて下流側流路で変化すると、薬液の圧力変動によりシャフト160の被検出部161が上下動するため、フォトマイクロセンサ180が、その光軸183で、シャフト160の被検出部161の動きに基づいて検出する。
作業者は、このフォトマイクロセンサ180の検出結果により、流体制御部においてダイアフラム弁体が開弁状態にあるか、あるいは閉弁状態にあるかを確認することができている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−151260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の薬液弁のように、弁開度を検出する弁開度検出センサを設けた流体制御弁では、以下の2つの問題があった。
(1)コスト高になる問題
(2)弁開度検出センサの組付け時の作業性が悪い問題
これらの問題は、以下の理由で生じていた。
【0006】
(1)コスト高になる問題
特許文献1は、フォトマイクロセンサ180を薬液弁本体に取付けるのに、大きなブラケット171をカバー120外部にボルト172締めで固定させ、このブラケット171にフォトマイクロセンサ180を保持させていた。そのため、単にフォトマイクロセンサ180を薬液弁本体に固定するためだけに、大きなブラケット171を用いたり、そのブラケット171をカバー120に固定するためだけに、複数のボルト171が必要となっていたことで、製品全体で部品点数が増えてしまい、結果的に製品がコストアップとなっていた。
【0007】
(2)弁開度検出センサの組付け時の作業性が悪い問題
また、本願出願人が出願した特許文献1には開示されていないが、特許文献1の薬液弁では、フォトマイクロセンサ180は、細いねじを用いて、複数箇所にねじ止めしてブラケット171に固定されていた。そのため、フォトマイクロセンサ180の固定作業は、作業者にとって困難を伴い、作業性が悪かった。
また、特許文献1のフォトマイクロセンサのような、光学式の弁開度検出センサの光軸上を、被検出側の被検出部が移動することにより、被検出部が光軸を遮光するか否かで、被検出部の状態を検出する方法では、被検出部の範囲と光軸の位置とが、相対的に正確に位置決めした状態で設定されていないと、被検出部の状態を正確に検出できない。
そのため、流体制御弁の製造時に、弁開度検出センサを流体制御弁本体に取付けるときには、作業者は、個々の流体制御弁毎に、光軸と被検出部とを正確に位置決めする必要があり、その作業に困難を伴い、作業性が悪かった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、弁開度を検出する弁開度検出センサを設けた流体制御弁において、低コストで、組付け時の作業性を向上させることができる流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決するために、本発明の流体制御弁は、次の構成を有している。
(1)弁座に当接または離間して流体の流れを制御する弁体と、弁体と連結するピストンと、ピストンと連結するインジケータと、ピストンを収納するシリンダの開口を塞ぐと共に、インジケータが挿通する貫通孔を有するカバーと、インジケータを介して弁体の弁開度を検出する弁開度検出センサとを備える流体制御弁において、カバー上に配置される開口から収容し、弁開度検出センサを保持させる内部空間が形成されたセンサカバーを備え、センサカバーまたはカバーのいずれか一方には、カバー及びセンサカバーの厚み方向に延びる係止部が形成され、その他方には、係止部と係留する溝部が形成されていることを特徴とする。
(2)(1)に記載する流体制御弁において、内部空間には、開口に向けて突出する弾性変形可能な押圧部を有し、係止部と溝部とが係留して、弁開度検出センサが、カバーと共に押圧部によって押圧された状態で、保持されていることを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する流体制御弁において、センサカバー及びカバーは、いずれも樹脂からなることを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する流体制御弁において、係止部は、センサカバーに設けられ、センサカバーには、溝部と係留した係止部を、溝部から係留を解除するための係留解除孔が形成されていることを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する流体制御弁において、インジケータは、当該流体制御弁の軸心方向に延びる軸部と、軸部より径外側に突出する突出部を有し、ピストンは、軸心方向に対し、インジケータの突出部と係止する係止部を有すること、突出部を係止部に係止させて、インジケータとピストンとが、連結していることを特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する流体制御弁において、インジケータの上端部は、弁開度検出センサが弁体の弁開度を検出するときの被検出部となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の作用効果について説明する。
本発明の流体制御弁では、
(1)弁座に当接または離間して流体の流れを制御する弁体と、弁体と連結するピストンと、ピストンと連結するインジケータと、ピストンを収納するシリンダの開口を塞ぐと共に、インジケータが挿通する貫通孔を有するカバーと、インジケータを介して弁体の弁開度を検出する弁開度検出センサとを備える流体制御弁であって、カバー上に配置される開口から収容し、弁開度検出センサを保持させる内部空間が形成されたセンサカバーを備え、センサカバーまたはカバーのいずれか一方には、カバー及びセンサカバーの厚み方向に延びる係止部が形成され、その他方には、係止部と係留する溝部が形成されているので、従来必要であった弁開度検出センサを取付ける専用の大きなブラケットや、弁開度検出センサをブラケットに固定させるねじ等を必要せず、係止部と溝部とを係留させるだけで、カバーとセンサカバーに弁開度検出センサを直に取付けて固定させることができる。そのため、当該流体制御弁を構成する部品点数が、従来の流体制御弁よりも少なくでき、コストを低減することができる。
【0011】
ところで、弁開度検出センサが、例えば、フォトマイクロセンサ等、光軸の遮光と受光を利用して被検出対象物を検出する被接触式のセンサである場合には、弁開度検出センサの取付位置が高精度に位置決めされていないと、弁開度検出センサは、弁体の弁開度の状態を正確に検出できない。
これに対し、本発明の流体制御弁では、弁開度検出センサをカバーとセンサカバーで覆い、係止部を溝部に係留させて、弁開度検出センサを保持しているため、弁開度検出センサのカバーへの取り付け位置は、係止部と溝部とが係留する位置で位置決めされる。そのため、弁開度検出センサの取付け作業では、作業者は、弁開度検出センサをカバーに載置し、その弁開度検出センサにセンサカバーを覆って、係止部を溝部に係留させるだけで、弁開度検出センサを、位置決めされた所定の位置に簡単に取付けることができる。
また、弁開度検出センサを流体制御弁本体に細いねじで固定させる従来の作業は、作業者にとって困難を伴い、弁開度検出センサの組立て性が良くなかったが、本発明の流体制御弁では、ねじを使わず、係止部と溝部とを係留するだけで、弁開度検出センサを固定することができ、組立て時の作業性が向上している。
従って、弁開度検出センサを設けた従来の流体制御弁に比して、部品点数が少なくなるため、コストが低減できると共に、弁開度検出センサの取付け作業を簡単にすることができるため、組付け時の作業性を向上させることができる、という優れた効果を奏する。
【0012】
(2)また、本発明の流体制御弁では、内部空間には、開口に向けて突出する弾性変形可能な押圧部を有し、係止部と溝部とが係留して、弁開度検出センサが、カバーと共に押圧部によって押圧された状態で、保持されているので、カバーに対し、弁開度検出センサのぐらつきを防止できている。
また、外部で当該流体制御弁に受ける振動等や、弁体が弁座に当接、離間するときに生じる振動等によって、弁開度検出センサが、カバーと相対的にずれてしまうのを防止することができている。すなわち、このような振動が当該流体制御弁に作用しても、製造時に設定されたインジケータと弁開度検出センサとの位置関係を、長期間、維持することができる。
【0013】
(3)また、本発明の流体制御弁では、センサカバー及びカバーは、いずれも樹脂からなるので、樹脂の中でも、例えば、フッ素系樹脂であれば、機械的強度が比較的大きく、強い酸性液やアルカリ性液にも耐え得る耐薬品性を有している上、射出成形等によって製造し易い利点がある。また、カバーと共にセンサカバーによって、弁開度検出センサをしっかりと安定した状態に固定することができる。
特に、係止部が、センサカバー本体またはカバー本体と一体で成形されている場合、係止部と溝部とを係留させるさせるときに、係止部が弾性変形して溝部に係留されるため、センサカバー及びカバーをいずれも樹脂で形成することで、係止部と溝部とが係留し易くなる。
なお、樹脂の具体的な材質として、例えば、PVDF(ポリビニリデンフルオライド、別名:2フッ化)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、別名:4フッ化)等のフッ素系樹脂のほか、PP(ポリプロピレン)等の樹脂が挙げられる。
【0014】
(4)また、本発明の流体制御弁では、係止部は、センサカバーに設けられ、センサカバーには、溝部と係留した係止部を、溝部から係留を解除するための係留解除孔が形成されているので、当該流体制御弁のメンテナンス時に、係留解除孔に、例えば、工具や治具等を挿通して、溝部との係留が解除される向きに係止部を変形させるだけで、センサカバーをカバーから容易に取り外すことができる。
【0015】
(5)また、本発明の流体制御弁では、インジケータは、当該流体制御弁の軸心方向に延びる軸部と、軸部より径外側に突出する突出部を有し、ピストンは、軸心方向に対し、インジケータの突出部と係止する係止部を有すること、突出部を係止部に係止させて、インジケータとピストンとが、連結しているので、ピストンの軸とインジケータの軸部との間で、軸ずれや傾きが多少生じたとしても、ピストンに追従してインジケータが動くことができる。ひいては、弁体と連結するピストンの動きが、インジケータとの間でロスが少なくインジケータに伝わり、弁体の弁開度として、適切な状態で弁開度検出センサで検出される。
【0016】
(6)また、本発明の流体制御弁では、インジケータの上端部は、弁開度検出センサが弁体の弁開度を検出するときの被検出部となっているので、カバー上に配置した弁開度検出センサが、カバーの貫通孔を挿通したインジケータの上端部の位置状態を検出することで、弁体の弁開度を確認できるようになる。
すなわち、弁体の弁開度を検出する構造が簡単になることから、当該流体制御弁の製造コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る薬液弁を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る薬液弁を上方から見た平面図である。
【図3】実施形態に係る薬液弁のカバーを示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中、A−A矢視断面図である。
【図4】実施形態に係る薬液弁のピストンを上方から見た平面図である。
【図5】実施形態に係る薬液弁のピストンの側面図である。
【図6】図5に示すピストンを90°位相を変えて見たときの側面図である。
【図7】図6中、B−B矢視断面図である。
【図8】実施形態に係る薬液弁のインジケータを上方から見た平面図である。
【図9】実施形態に係る薬液弁のインジケータの側面図である。
【図10】図9に示すインジケータを90°位相を変えて見たときの側面図である。
【図11】図10に示すインジケータを下方から見た平面図である。
【図12】実施形態に係る薬液弁においてピストンとインジケータとが接続した様子を説明する説明図である。
【図13】実施形態に係る薬液弁のセンサカバーを上方から見た平面図である。
【図14】実施形態に係る薬液弁のセンサカバーの側面図である。
【図15】図13中、C−C矢視断面図である。
【図16】図15中、D部の拡大図である。
【図17】実施形態に係る薬液弁のセンサカバーを下方から見た平面図である。
【図18】図17中、E−E矢視断面図である。
【図19】実施形態に係る薬液弁のセンサカバーの取り外し方を説明する説明図である。
【図20】第1変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、F−F矢視断面図である。
【図21】第2変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、G−G矢視断面図である。
【図22】第3変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、H−H矢視断面図である。
【図23】第4変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、I−I矢視断面図である。
【図24】従来の薬液弁を断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明に係る流体制御弁について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態では、流体制御弁は、例えば、半導体製造装置や液晶パネル製造装置等に用いられる薬液弁であり、入力ポートと出力ポートの間にある弁座に対し、弁体が当接または離間することで、入力ポートから出力ポートへの薬液の流れを制御する目的で用いられる。
実施形態に係る薬液弁を、図1及び図2に示す。図1は、本実施形態に係る薬液弁の断面図であり、図2は、実施形態に係る薬液弁を上方から見た平面図である。
薬液弁1は、図1に示すように、主としてアクチュエータ部5、ボディ30、センサカバー70、弁開度検出センサ80及び取付板92等からなる。アクチュエータ部5と、ボディ30と、取付板92とは、これらに挿通する図示しないボルトと、これに螺合するナットとの締結力によって、一体に固定されている。
【0019】
はじめに、ボディ30について、図1を用いて説明する。
ボディ30は、本実施形態では、射出成形によりPFA(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂でブロック状に成形されている。ボディ30には、図1に示すように、弁座31、入力ポート32、出力ポート33等が形成されている。
【0020】
次に、アクチュエータ部5について、図1を用いて説明する。
アクチュエータ部5は、シリンダ10、カバー20、バネ91、ダイアフラム弁体40、ピストン50、インジケータ60等によって構成されている。
アクチュエータ部5は、弁座31にダイアフラム弁体40を当接または離間させて薬液の流れを制御するものであり、ダイアフラム弁体40が、バネ91による付勢力と、この付勢力に抗する向きに、加圧した操作エアARによる押圧力とを作用させて、弁座31に対し上下動するようになっている。
すなわち、本実施形態では、薬液弁1は、操作エアARによる押圧力がピストン50に作用しないときに、バネ91の付勢力によってダイアフラム弁体40が弁座31に当接して閉弁し、操作エアARによる押圧力がピストン50に作用すると、ダイアフラム弁体40が弁座31から離間して開弁するノーマルクローズタイプの弁である。
【0021】
まず、シリンダ10について説明する。
ピストン50を収容するシリンダ10は、本実施形態では、上方から見たときに、操作ポート17を除いた側面の外形形状が略正方形で、射出成形によりPVDF(ポリビニリデンフルオライド、別名:2フッ化)等のフッ素系樹脂でブロック状に成形されている(図2参照)。
シリンダ10は、その一側面に、操作エアARを流入する操作ポート17を有し、操作ポート17は、組付け完了状態にある薬液弁1において、ピストン50の受圧側に形成される操作エア室と連通するようになっている。
【0022】
また、シリンダ10は、図1に示すように、環状の内壁で囲まれた開口11を有している。シリンダ10の上方側には、シリンダ係止部15が、内壁に、この内壁の径内側に突出すると共に、内壁の周方向に円弧状で形成されている。本実施形態では、シリンダ係止部15は、それぞれ同じ形態で4箇所に設けられ、当該シリンダ10の各側面にほぼ沿うような形態で、何れのシリンダ係止部15とも、隣り合うシリンダ係止部15,15と均等な間隔をもって形成されている。
なお、隣り合うシリンダ係止部15,15の周方向の間隔は、次述するカバー20の各カバー突出部25における周方向の長さ(円弧長)よりも大きくなっている。
【0023】
次に、カバー20について、図1乃至図3を用いて説明する。図3は、カバーを示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中、A−A矢視断面図である。
カバー20は、図1及び図2に示すように、シリンダ10の開口11を塞ぐ蓋部20Aと、この蓋部20Aから下方に延び、シリンダ10の開口11より径小な環状で、筒状の円環部20Bとからなる。
カバー20は、本実施形態では、図2に示すように、上方から見たときに、排気ポート27を除いた側面の外形形状が略正方形であり、射出成形によりPVDF(ポリビニリデンフルオライド、別名:2フッ化)等のフッ素系樹脂でブロック状に成形されている。蓋部20Aは、組付け完了後の薬液弁1において、1次室の操作エアARを排出する排気ポート27を有し、この排気ポート27を除いた当該蓋部20Aの側面形状がシリンダ10の側面形状と同じ略正方形で形成されている。
【0024】
また、カバー20には、図3に示すように、円環部20Bの軸心に、蓋部20Aと円環部20Bとを貫通する貫通孔20Hが形成され、後述するインジケータ60の上端部61が貫通孔20Hに挿通するようになっている。
また、カバー20の蓋部20Aには、貫通孔20Hを跨ぐ位置に、溝部21が2箇所形成されている。溝部21は、当該カバー20の厚み方向、すなわち当該薬液弁1の軸心AX方向に蓋部20Aに穿設されており、開口の周面を面取りした溝挿入部21Aと、溝挿入部21Aより深い位置に、溝挿入部21Aより径大に形成された溝保持部21Bとを有する。
【0025】
また、円環部20Bには、カバー突出部25が、当該円環部20Bの径外側に突出すると共に、当該円環部20Bの周方向に、シリンダ10のシリンダ係止部15の形状に対応した円弧状で形成されている。カバー突出部25は、それぞれ同じ形態で4箇所に設けられ、蓋部20Aの各側面にほぼ沿うような形態で、何れのカバー突出部25とも、隣り合うカバー突出部25,28と均等な間隔をもって形成されている。
カバー突出部25は、シリンダ10の開口11内に円環部20Bを挿入し、シリンダ10上にカバー20を載置したときに、シリンダ10とカバー20とがちょうど合わさった状態で、シリンダ10のシリンダ係止部15と係留できる位置に配設されている。また、円環部20Bには、カバー20でシリンダ10の開口11を覆い被せ、シリンダ10に対し、カバー20が所定角度で回転した後、それ以上のカバー20の回転を規制する図示しないストッパが設けられている。
また、図示しないが、円環部20Bの径内側で、貫通孔20Hの外周側には、バネ91の一端を支持する平面状の支持面20aを有している。
【0026】
次に、ピストン50について、図4乃至図7を用いて説明する。図4は、ピストンを上方から見た平面図であり、ピストンの側面図を図5及び図6に示す。図7は、図6中、B−B矢視断面図である。
ピストン50は、図5及び図6に示すように、本体部57と、ピストンロッド51と、インジケータ接続部52とからなる。
ピストンロッド51は、本体部57から当該薬液弁1の軸心AX(図1参照)に沿って下方に延びており、当該ピストンロッド51の先端部をダイアフラム弁体40のピストン連結部41Aと連結させて、ピストン50とダイアフラム弁体40とが一体になっている。また、このダイアフラム弁体40は、その周縁に位置する周縁固定部41Bを、シリンダ10とボディ30の間に挟み込んで固定されている。
【0027】
本体部57には、シリンダ10との間をシールするOリングを配設するシール溝58が設けられ、このシール溝58を挟んでバネ力作用部57Aとエア圧作用部57Bとが形成されている。バネ力作用部57Aは、バネ91の他端を支持し、エア圧作用部57Bには、操作エアARによる押圧力が作用する。
インジケータ接続部52は、図4乃至図6に示すように、バネ力作用部57Aから当該薬液弁1の軸心AXに沿って上方に延びており、後述するインジケータ60と連結する部分である。
インジケータ接続部52は、図4及び図7に示すように、インジケータ60の軸部62が挿入される挿入部55と、この挿入部55の径外側の部分を、軸心AXの周方向に対し、一部が切り欠かれた切欠き部53とを有している。インジケータ接続部52では、挿入部55より径大に形成された係止部54が、図5に示すように、挿入部55下方で、挿入部55と切欠き部53とに連通している。係止部54は、後述するインジケータ60の突出部63と、軸心AX方向に係止する部分である。
【0028】
次に、インジケータ60について、図8乃至図11を用いて説明する。図8は、インジケータを上方から見た平面図であり、図11は、インジケータを下方から見た平面図である。図9及び図10はインジケータの側面図である。
インジケータ60は、弁開度検出センサ80がダイアフラム弁体40の弁開度を検出するときの被検出部となる上端部61を、軸心AX方向上端に有している。上端部61は、図8に示すように、互いに向き合う2つの扁平な曲面で形成されている。インジケータ60は、カバー20の貫通孔20Hの内周面との間をシールするOリングを配設するシール溝68を有し、このシール溝68の下方側に連結部64を有している。連結部64は、ピストン50とインジケータ60とが連結状態にあるときには、ピストン50のインジケータ接続部52と対向した位置に配置される部分である。
【0029】
また、インジケータ60は、連結部64から軸心AX方向下端に延びる軸部62と、この軸部62先端で軸部62より径外側に突出する突出部63とを有している。軸部62の径は、ピストン50の挿入部55の内径よりやや径大となっている。すなわち、インジケータ60をピストン50と連結するときに、ピストン50の切欠き部53から軸部62を径内側に挿入し、軸部62を弾性変形させて、軸部62が挿入部55に保持されるようになっている(図12参照)。
【0030】
また、インジケータ60は、インジケータ60とピストン50とが連結した状態にあるときに、軸心AXの周方向に対し、ピストン50と相対的に回転するのを防止する回転規制部65を有している。回転規制部65は、軸部62及び突出部63から径外側に延び、ピストン50の切欠き部53と対応した形状で、この切欠き部53にちょうど収容できる形状に形成されている。
【0031】
次に、センサカバー70について、図13乃至図18を用いて説明する。図13は、センサカバーを上方から見た平面図であり、図17は、センサカバーを下方から見た平面図である。図14は、センサカバーの側面図である。図15は、図13中、C−C矢視断面図、図16は、図15中、D部の拡大図、図18は、図17中、E−E矢視断面図である。
【0032】
ここで、センサカバー70を説明する前に、センサカバー70で覆う弁開度検出センサ80について、図1及び図2を用いて簡単に説明する。
本実施形態では、弁開度検出センサ80は、特許文献1に記載されたフォトマイクロセンサ180と同様、光軸上を、被検出側の被検出部が移動することにより、被検出部が光軸を遮光するか否かで、被検出部の状態を検出する光学式の弁開度検出センサである。
具体的には、弁開度検出センサ80は、図1及び図2に示すように、光軸83を発光する検出部82を、板状の本体部81に有し、検出部82と電気的に接続するリード線85が本体部81から延びた形態のセンサである。
薬液弁1では、ダイアフラム弁体40が弁座31に当接または離間して薬液を制御するときに、ダイアフラム弁体40と一体となっているインジケータ60もダイアフラム弁体40の弁開量に応じて上下動するため、弁開度検出センサ80の光軸83がインジケータ60の上端部61の動きを検出する。
作業者は、この弁開度検出センサ80の検出結果により、ダイアフラム弁体40が開弁状態にあるか、あるいは閉弁状態にあるかを確認することができる。
【0033】
次いで、センサカバー70について説明する。
センサカバー70は、カバー20の蓋部20A上に配置される開口71から収容し、弁開度検出センサ80を保持させる内部空間70Sが形成されている部材である。センサカバー70は、本実施形態では、例えば、半透明なPP(ポリプロピレン)等の樹脂を射出成形して形成されている。
ここで、センサカバー70を半透明な樹脂で形成する理由について、簡単に説明する。
すなわち、弁開度検出センサ80の中には、センサの動作状況を、例えば、本体部81に設けられたランプで点灯または点滅して表示するものがある。このようなランプ表示付きの弁開度検出センサ80を薬液弁1が搭載する場合には、センサカバー70を半透明な樹脂で形成することで、薬液弁1の使用時に、作業者が、センサカバー70を通じてランプ表示を確認することで、弁開度検出センサ80の動作状況を把握できるからである。
【0034】
また、センサカバー70には、カバー20及び当該センサカバー70の厚み方向(図1中、上下方向)に延びる係止部72が2つ形成されている。2つの係止部72,72は、カバー20に設けた2つの溝部21,21の位置と対応する位置に配置されている。係止部72は、図17及び図18に示すように、当該係止部72の半周分だけ径外に突出し、弾性変形可能な突起片73を有している。
また、センサカバー70には、溝部21と係留した係止部72を、溝部21から係留を解除するための係留解除孔72Hが、係止部72のある位置に2箇所それぞれ形成されている。
【0035】
センサカバー70の内部空間70Sには、開口71に向けて突出した弾性変形可能な押圧部75が2つ形成されている。
押圧部75は、当該押圧部75の径外側に向けて放射状に突出した弾性変形可能な押圧片76を有している。
【0036】
次に、薬液弁1の組付け方法について説明する。
薬液弁1の組立ては、先にアクチュエータ部5の仮組付けを行った後、全体的な総組付けとして、仮組付けを完了したアクチュエータ部5と、ボディ30と、取付板92とを一体的に重ね合わせて、これ等をボルト及びナットによる締結で固定させる。
【0037】
アクチュエータ部5の仮組付けでは、まずバネ91、ピストン50、インジケータ60等を組付ける。
具体的には、インジケータ60の軸部62、突出部63及び回転規制部65を、ピストン50のインジケータ接続部52の切欠き部53から径内に向けて挿入し、軸部62をピストン50の挿入部55内に、回転規制部65を切欠き部53にそれぞれ嵌め込む。
これにより、突出部63及び回転規制部65を切欠き部53に収容すると共に、突出部63がインジケータ接続部52の係止部54に係止されて、インジケータ60の突出部63の対向面63aとピストンロッド51のインジケータ接続部52の対向面52aとが互いに向き合って、インジケータ60とピストン50とが互いに回転することなくしっかりと連結する。
次いで、バネ91をインジケータ60径外に挿通し、バネ91の他端をピストン50のバネ力作用部57Aに載置する。アクチュエータ部5がこの段階まで組付けた状態の駆動部を、シリンダ10の開口11側から挿入する。
【0038】
次いで、カバー20のシール溝に図示しないシール部材を取付けた後、シリンダ10の側面に対し、カバー20の蓋部20Aの側面を所定の角度にねじった状態で、カバー20をシリンダ10の開口11に挿入する。
具体的には、インジケータ60の上端部61をカバー20の貫通孔20Hに挿通させると共に、バネ91の一端を蓋部20Aの支持面20aに当接させる。当接後、バネ91を、ピストン50の支持面と蓋部20Aの支持面の両支持面で支持した状態で収縮させながら、カバー20の蓋部20Aをシリンダ10に当接するまで、カバー20の円環部20Bをシリンダ10の開口11内に挿入する。なお、円環部20Bの周方向に対し、シリンダ10とカバー20とが相対的にねじれているため、円環部20Bの開口11への挿入時には、カバー20のカバー突出部25とシリンダ10のシリンダ係止部15とが干渉することはない。
図1に示すように、カバー20の蓋部20Aがシリンダ10上に載置されるまで、円環部20Bが開口11内に挿入されると、シール溝に取付けたシール部材がシリンダ10の内壁面に嵌め込まれ、組立て後の薬液弁1に形成されている操作エアARの一次室と二次室とがピストン50を挟み区画されることになる。
【0039】
次いで、シリンダ10に対し、そのシリンダ係止部15にカバー20のストッパが当接した状態になるまで、カバー20を回転させて、蓋部20Aの側面とシリンダ10の側面とがほぼ同一平面上になって双方の側面のねじれを解消し、シリンダ10とカバー20とを位置合わせする。
このとき、開口11内に挿入された円環部20Bも、蓋部20Aの回転に追従して回転し、円環部20Bのカバー突出部25が、シリンダ10の開口11にあるシリンダ係止部15と係止して、シリンダ10とカバー20とが互いに離れることなく一体的に係留される。
次いで、ピストンロッド51の先端部にダイアフラム弁体40のピストン連結部41Aを連結させ、アクチュエータ部5の仮組付けを完了する(図1参照)。
【0040】
次いで、薬液弁1の全体的な総組付けとして、仮組付けを完了したアクチュエータ部5と、ボディ30と、取付板92とを一体的に重ね合わせてこれ等をボルトとナットとの締結で固定した後、弁開度検出センサ80とセンサカバー70とを組付ける。
具体的には、ダイアフラム弁体40の周縁固定部41Bを、アクチュエータ部5のシリンダ10とボディ30に挟み込み、アクチュエータ部5、ボディ30及び取付板92を一体的に重ね合わせてこれ等をボルトとナットとで締結する。
【0041】
次いで、弁開度検出センサ80をカバー20の蓋部20A上面に載置し、この弁開度検出センサ80のリード線85を外部に出し、本体部81をセンサカバー70の開口71を通じて内部空間70Sに収容できるよう、センサカバー70を弁開度検出センサ80に覆い被せ、弁開度検出センサ80の係止部72をカバー20の溝部21に嵌め込む。このとき、係止部72の突起片73が溝挿入部21Aを挿通するときに弾性変形しながら溝保持部21Bに入って、係止部72と溝部21とが係留する。
インジケータ60の上端部61と弁開度検出センサ80の検出部82の光軸83とが位置合わせされたところに、係止部72と溝部21とが設けられているため、単に係止部72を溝部21に嵌め込むだけで、弁開度検出センサ80の光軸83が上端部61の位置を検出できる。
【0042】
弁開度検出センサ80の本体部81を、内部空間70Sでカバー20の蓋部20Aと共にセンサカバー70で覆い、係止部72と溝部21とを係留すると、センサカバー70の押圧部75で押圧片76が弾性変形して、本体部81が、カバー20と共に押圧部75によって押圧された状態となる。
すなわち、カバー20、センサカバー70及び本体部81において寸法公差による寸法のバラツキが製品毎に生じていても、押圧部75の押圧片76による弾性変形により、本体部81が、押圧部75によって、ぐらつくことなくしっかりとカバー20及びセンサカバー70に保持されている。
かくして、アクチュエータ部5、ボディ30、センサカバー70、弁開度検出センサ80及び取付板92が一体的に組付けられ、薬液弁1の全体的な総組付けが完了する。
【0043】
次いで、センサカバー70の取り外し方について、図19を用いて説明する。図19は、治具を用いてセンサカバーを取り外す工程の工程図である。
薬液弁1のメンテナンス時に、弁開度検出センサ80等を取り外すときには、例えば、図19に示すような治具94を用いて、センサカバー70を取り外す。
本実施形態では、治具94は、把持部95を一体化した基部96に対し、爪98を2つ有したスライド部材97が把持部95を中心に径方向に移動可能に取付けられた治具である。爪98は、センサカバー70の係留解除孔72Hに挿入できる大きさになっている。
センサカバー70をカバー20から取り外すときには、図19(a)に示すように、まずスライド部材97の各爪98を、センサカバー70の各係留解除孔72Hにそれぞれスライドさせ、爪98により、軸心AX(図19では把持部95)に向けて係止部72を変形させる(図19(b)参照)。これにより、係止部72が、爪98に押圧されて、突起片73が溝保持部21Bから離れ、係止部72と溝部21との係留が解除される。この後、爪98を係留解除孔72Hに挿入したまま、治具94を引き上げて、センサカバー70をカバー20から取り外す。
【0044】
前述した構成を有する本実施形態に係る薬液弁1の作用効果について説明する。
本実施形態に係る薬液弁1では、弁座31に当接または離間して薬液の流れを制御するダイアフラム弁体40と、ダイアフラム弁体40と連結するピストン50と、ピストン50と連結するインジケータ60と、ピストン50を収納するシリンダ10の開口11を塞ぐと共に、インジケータ60の上端部61が挿通する貫通孔20Hを有するカバー20と、インジケータ60を介してダイアフラム弁体40の弁開度を検出する弁開度検出センサ80とを備える薬液弁1であって、カバー20の蓋部20A上に配置される開口71から収容し、弁開度検出センサ80を保持させる内部空間70Sが形成されたセンサカバー70を備え、センサカバー70には、カバー20及び当該センサカバー70の厚み方向に延びる係止部72が形成され、カバー20には、係止部72と係留する溝部21が形成されているので、従来必要であった弁開度検出センサを取付ける専用の大きなブラケットや、弁開度検出センサをブラケットに固定させるねじ等を必要せず、係止部72と溝部21とを係留させるだけで、カバー20とセンサカバー70に弁開度検出センサ80を直に取付けて固定させることができる。
そのため、当該薬液弁1を構成する部品点数が、従来の薬液弁よりも少なくでき、コストを低減することができる。
【0045】
ところで、弁開度検出センサが、例えば、フォトマイクロセンサ等、光軸の遮光と受光を利用して被検出対象物を検出する被接触式のセンサである場合には、弁開度検出センサの取付位置が高精度に位置決めされていないと、弁開度検出センサは、弁体の弁開度の状態を正確に検出できない。
これに対し、本実施形態に係る薬液弁1では、弁開度検出センサ80をカバー20とセンサカバー70で覆い、係止部72を溝部21に係留させて、弁開度検出センサ80を保持しているため、弁開度検出センサ80のカバー20への取り付け位置は、係止部72と溝部21とが係留する位置で位置決めされる。
そのため、弁開度検出センサ80の取付け作業では、作業者は、弁開度検出センサ80をカバー20に載置し、その弁開度検出センサ80にセンサカバー70を覆って、係止部72を溝部21に係留させるだけで、弁開度検出センサ80を、位置決めされた所定の位置に簡単に取付けることができる。
また、従来、弁開度検出センサを流体制御弁本体に細いねじで固定させる作業は、作業者にとって困難を伴い、弁開度検出センサの組立て性が良くなかった。これに対し、本実施形態に係る薬液弁1では、ねじを使わず、センサカバー70の係止部72とカバー20の溝部21とを係留するだけで、弁開度検出センサ80を固定することができ、組立て時の作業性が向上している。
従って、弁開度検出センサを設けた従来の流体制御弁に比して、部品点数が少なくなるため、コストが低減できると共に、弁開度検出センサ80の取付け作業を簡単にすることができるため、組付け時の作業性を向上させることができる、という優れた効果を奏する。
【0046】
また、本実施形態に係る薬液弁1では、内部空間70Sには、開口71に向けて突出する弾性変形可能な押圧部75を有し、係止部72と溝部21とが係留して、弁開度検出センサ80が、カバー20と共に押圧部75の押圧片76によって押圧された状態で、保持されているので、カバー20に対し、弁開度検出センサ80のぐらつきを防止できている。
また、外部で当該薬液弁1に受ける振動等や、ダイアフラム弁体40が弁座31に当接、離間するときに生じる振動等によって、弁開度検出センサ80が、カバー20と相対的にずれてしまうのを防止することができている。すなわち、このような振動が当該薬液弁1に作用しても、製造時に設定されたインジケータ60と弁開度検出センサ80との位置関係を、長期間、維持することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る薬液弁1では、カバー20は、フッ素系樹脂であるPVDF(ポリビニリデンフルオライド、別名:2フッ化)からなるので、PVDFは、樹脂の中でも、機械的強度が比較的大きく、強い酸性液やアルカリ性液にも耐え得る耐薬品性を有している上、射出成形等によって製造し易い利点がある。一方、センサカバー70は、PP(ポリプロピレン)からなるので、半透明で透視性を有する上、PVDFには劣るものの、機械的強度が比較的大きく、耐薬品性をも有しているため、カバー20と共にセンサカバー70によって、弁開度検出センサ80をしっかりと安定した状態に固定することができる。また、センサカバー70を通じて弁開度検出センサ80の様子を作業者が確認できる。
特に、係止部72が、センサカバー70本体と一体で成形されているので、係止部72と溝部21とを係留させるときに、係止部72が弾性変形して溝部21に係留されるため、センサカバー70及びカバー20をいずれも樹脂で形成することで、係止部72と溝部21とが係留し易くなる。
【0048】
また、本実施形態に係る薬液弁1では、係止部72は、センサカバー70に設けられ、センサカバー70には、溝部21と係留した係止部72を、溝部21から係留を解除するための係留解除孔72Hが形成されているので、当該薬液弁1のメンテナンス時に、係留解除孔72Hに、治具94に例示した工具や治具を挿通して、溝部21との係留が解除される向きに係止部72を変形させるだけで、センサカバー70をカバー20から容易に取り外すことができる。
【0049】
また、本実施形態に係る薬液弁1では、インジケータ60は、当該薬液弁1の軸心AX方向に延びる軸部62と、軸部62より径外側に突出する突出部63を有し、ピストン50は、軸心AX方向に対し、インジケータ60の突出部63と係止する係止部54を有すること、突出部63を係止部54に係止させて、インジケータ60とピストン50とが、連結しているので、ピストン50の軸とインジケータ60の軸部62との間で、軸ずれや傾きが多少生じたとしても、ピストン50に追従してインジケータ60が動くことができる。
ひいては、ダイアフラム弁体40と連結するピストン50の動きが、インジケータ60との間でロスが少なくインジケータ60に伝わり、ダイアフラム弁体40の弁開度として、適切な状態で弁開度検出センサ80で検出される。
【0050】
また、本実施形態に係る薬液弁1では、インジケータ60の上端部61は、弁開度検出センサ80がダイアフラム弁体40の弁開度を検出するときの被検出部となっているので、カバー20上に配置した弁開度検出センサ80が、カバー20の貫通孔20Hを挿通したインジケータ60の上端部61の位置状態を検出することで、ダイアフラム弁体40の弁開度を確認できるようになる。
すなわち、ダイアフラム弁体40の弁開度を検出する構造が簡単になることから、当該薬液弁1の製造コストが安価になる。
【0051】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、本実施形態では、シリンダ10、カバー20及び取付板92の何れも、その材質をPVDF(ポリビニリデンフルオライド、別名:2フッ化)とし、ボディ30の材質をPFA(ポリテトラフルオロエチレン)とし、センサカバー70をPP(ポリプロピレン)で、それぞれ射出成形で成形した。
しかしながら、シリンダ、カバー、ボディ及びセンサカバーの材質を、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、別名:4フッ化)等、他のフッ素系樹脂したり、シリンダ、カバー、ボディ、センサカバーのそれぞれの材質を異なるフッ素系樹脂にしても良い。また、シリンダ、カバー、ボディ、センサカバーを切削で形成しても良い。
【0052】
(2)また、本実施形態では、図13乃至図18に示す形状の係止部72及び押圧部75を有するセンサカバー70を用いた。
しかしながら、センサカバー70に代えて、次述するような、第1乃至第4変形例に係るセンサカバーを用いても良い。
【0053】
はじめに、第1変形例に係るセンサカバーについて、図20を用いて簡単に説明する。図20は、第1変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、F−F矢視断面図である。
第1変形例に係るセンサカバー70Aでは、係止部72Aは、本実施形態に係る係止部72と、突起片73A及び係留解除孔72Hを有している点で共通するが、係止部72と異なり、図20に示すように、間隙を挟んで周方向に2つ割り等、複数に分割された形態で形成されている。
【0054】
次に、第2変形例に係るセンサカバーについて、図21を用いて簡単に説明する。図21は、第2変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、G−G矢視断面図である。
第2変形例に係るセンサカバー70Bでは、係止部72Bは、本実施形態に係る係止部72と、突起片73及び係留解除孔72Hを有している点で共通する。また、第1変形例に係る係止部72Aとも、突起片73A及び係留解除孔72HAを有している点で共通する。しかしながら、センサカバー70Bでは、係止部72Bが、図21に示すように、係止部72Aにおいて周方向に2分割された一方側の部位だけで形成されている。
【0055】
次に、第3変形例に係るセンサカバーについて、図22を用いて簡単に説明する。図22は、第3変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、H−H矢視断面図である。
第3変形例に係るセンサカバー70Cでは、押圧部75Cは、本実施形態に係る押圧部75と、内部空間70Sに2つ形成されている点で共通するが、押圧部75Cの形状が押圧部75と異なる。
押圧部75Cは、図22に示すように、厚みが一定で、開口71に向けて山状に突出して形成され、山頂部分にある押圧突出部76を弾性変形させるようになっている。
【0056】
次に、第4変形例に係るセンサカバーについて、図23を用いて簡単に説明する。図23は、第4変形例に係るセンサカバーを示す図であり、(a)は下方から見た平面図、(b)は(a)中、I−I矢視断面図である。
第4変形例に係るセンサカバー70Dでは、押圧部75Dは、本実施形態及び第3変形例に係る押圧部75,75Cと、内部空間70Sに2つ形成されている点で共通するが、押圧部75Dの形状が押圧部75Cと異なる。
押圧部75Dは、図23に示すように、開口71に向けて円柱状に突出して形成され、当該押圧部75Dの軸方向に沿って弾性変形させるようになっている。
【0057】
(3)また、本実施形態では、シリンダ係止部15を、それぞれ同じ形態で4箇所に設け、当該シリンダ10の各側面にほぼ沿うような形態で、何れのシリンダ係止部15とも、隣り合うシリンダ係止部15,15と均等な間隔をもって形成した。
しかしながら、シリンダに設ける係止部の数、及び係止部を配設する位置は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
また、カバー突出部25も、それぞれ同じ形態で4箇所に設け、蓋部20Aの各側面にほぼ沿うような形態で、何れのカバー突出部25とも、隣り合うカバー突出部25,25と均等な間隔をもって形成した。係止部と同様に、カバーに設ける突出部の数、及び突出部を配設する位置は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0058】
(4)また、本実施形態では、流体制御弁として、バネ91の一端をカバー20の蓋部20Aの支持面に、他端をピストン50のバネ力作用部57Aの支持面に支持させ、操作エアARによる押圧力が作用しないときに、バネ91の付勢力によってダイアフラム弁体40が弁座31に当接して閉弁するノーマルクローズタイプの薬液弁1とした。
しかしながら、流体制御弁は、本実施形態のピストン50の受圧側(図5及び図6では、エア圧作用部57B側)に相当するピストンの一方側と、シリンダの底部側との間に付勢部材を配設し、操作エアによる押圧力が作用しないときに、付勢部材の付勢力によって弁体が弁座から離間して開弁し、操作エアによる押圧力が作用すると、弁体が弁座に当接して閉弁するノーマルオープンタイプの弁としても良い。
なお、ノーマルオープンタイプの流体制御弁では、操作ポートが、ノーマルクローズタイプである本実施形態の薬液弁1の排気ポート27の位置に配設され、排気ポートが、操作ポート17の位置に配設される。
【符号の説明】
【0059】
1 薬液弁(流体制御弁)
5 アクチュエータ部
10 シリンダ
11 開口
20 カバー
20H 貫通孔
21 溝部
31 弁座
40 ダイアフラム弁体(弁体)
50 ピストン
54 係止部
60 インジケータ
61 上端部
62 軸部
63 突出部
70 センサカバー
70S 内部空間
71 開口
72 係止部
72H 係留解除孔
75 押圧部
80 弁開度検出センサ
AX 薬液弁(流体制御弁)の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に当接または離間して流体の流れを制御する弁体と、前記弁体と連結するピストンと、前記ピストンと連結するインジケータと、前記ピストンを収納するシリンダの開口を塞ぐと共に、前記インジケータが挿通する貫通孔を有するカバーと、前記インジケータを介して前記弁体の弁開度を検出する弁開度検出センサとを備える流体制御弁において、
前記カバー上に配置される開口から収容し、前記弁開度検出センサを保持させる内部空間が形成されたセンサカバーを備え、
前記センサカバーまたは前記カバーのいずれか一方には、前記カバー及び前記センサカバーの厚み方向に延びる係止部が形成され、その他方には、前記係止部と係留する溝部が形成されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載する流体制御弁において、
前記内部空間には、前記開口に向けて突出する弾性変形可能な押圧部を有し、
前記係止部と前記溝部とが係留して、前記弁開度検出センサが、前記カバーと共に前記押圧部によって押圧された状態で、保持されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する流体制御弁において、
前記センサカバー及び前記カバーは、いずれも樹脂からなることを特徴とする流体制御弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載する流体制御弁において、
前記係止部は、前記センサカバーに設けられ、
前記センサカバーには、前記溝部と係留した前記係止部を、前記溝部から係留を解除するための係留解除孔が形成されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する流体制御弁において、
前記インジケータは、当該流体制御弁の軸心方向に延びる軸部と、前記軸部より径外側に突出する突出部を有し、
前記ピストンは、前記軸心方向に対し、前記インジケータの前記突出部と係止する係止部を有すること、
前記突出部を前記係止部に係止させて、前記インジケータと前記ピストンとが、連結していることを特徴とする流体制御弁。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載する流体制御弁において、
前記インジケータの上端部は、前記弁開度検出センサが前記弁体の弁開度を検出するときの被検出部となっていることを特徴とする流体制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−220359(P2011−220359A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86500(P2010−86500)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】