説明

流体加熱装置

【課題】耐熱性に優れ、高効率、高出力の流体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】並設される多数枚のプレートフィン1と、前記プレートフィン1に設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプ4と、前記伝熱パイプ4内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータ3とを備え、前記伝熱パイプ4と電気ヒータ3との間には空気層となる間隙tを設けたもので、前記間隙tの空気層が熱緩衝作用を発揮し、加熱すべき流体などの負荷が変動しても、伝熱パイプ4およびプレートフィン1の急激なる温度変動を抑制できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気温風機や空気調和機、乾燥機などの空気を暖める機器に適した流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体加熱装置は、シーズヒータなどからなる電気ヒータの熱をプレートフィンに伝導伝達し、送風機などで送られた周囲の空気に対流熱伝達するのが一般的であった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
そして、熱伝導性をよくするため、電気ヒータの外郭およびプレートフィンはアルミニユムで形成するのが通例であった。
【特許文献1】実開昭62−42469号公報
【特許文献2】特開平6−231873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、負荷となる流体、例えば空気の流動量が変動したとき、具体的には、温度調整のため空気流動量を、所謂ON−OFF制御などする場合に、電気ヒータの外郭およびプレートフィンの耐熱性との関係で作動温度を高くできない。
【0005】
すなわち、空気流動量が減少、若しくは流動停止した、所謂負荷小のとき、電気ヒータの外郭およびプレートフィンが異常な高温となり、溶解してしまうものであった。
【0006】
したがって、従来では高温型の電気ヒータの採用ができず、流体加熱装置として低出力に限定され、熱効率も十分なものではなかった。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、耐熱性に優れ、高効率、高出力の流体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流体加熱装置は、並設される多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータとを備え、前記伝熱パイプと電気ヒータとの間には空気層となる間隙を設けたものである。
【0009】
前記間隙の空気層は熱緩衝作用を発揮し、したがって、加熱すべき流体、すなわち負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を抑制できるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体加熱装置によれば、間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮して加熱すべき負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を防止できるものである。
【0011】
したがって、熱伝導性に優れたアルミニウムなどを伝熱パイプおよびプレートフィンに使用でき、その結果として、装置の高出力化、高効率化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の流体加熱装置は、並設される多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータとを備え、前記伝熱パイプと電気ヒータとの間には空気層となる間隙を設けたものである。
【0013】
したがって、前記間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮し、加熱すべき流体などの負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を抑制できるものである。
【0014】
また、並設される多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータとを備え、前記伝熱パイプと電気ヒータとの間には空気層となる間隙を設けるとともに、プレートフィンおよび伝熱パイプの放射率を電気ヒータの外郭材料よりも低く設定した。
【0015】
この構成によれば、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を抑制できるは勿論、プレートフィンおよび伝熱パイプの放射率が低いため、輻射熱として発散される無駄な熱を極力少なくでき、有効に流体に熱伝達できることとなる。
【0016】
電気ヒータとしては、シーズヒータを採用することが考えられる。
【0017】
低放射率とする手段としては、プレートフィンおよび伝熱パイプを輻射熱放射率の低い材料、例えば、アルミニウムまたは銅材料に設定したり、プレートフィンおよび伝熱パイプに輻射熱放射率を低くする表面処理を施すことである。
【0018】
勿論、プレートフィンおよび伝熱パイプを表面研磨処理したアルミニウムまたは銅で形成してもよい。
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態が本発明を限定するものでない。
【0020】
(実施の形態1)
図において、多数枚のプレートフィン1を並設して一つのフィンブロック2を構成し、このフィンブロック2にシーズヒータからなる電気ヒータ3が蛇行状に挿通してある。
【0021】
前記フィンブロック2は、例えば、温風暖房機の通風路に臨ませて配置してあり、この通風路を流れる空気がプレートフィン1の間の隙間を通過する際、対流などの作用で加熱され、温風化されるものである。
【0022】
前記フィンブロック2に対する電気ヒータ3の挿通構成の詳細は図2に示す通りで、実際は、前記電気ヒータ3は空気層となる間隙tをおいて伝熱パイプ4に内設してあり、フィンブロック2の外側において、電気ヒータ3がU字状に連結され、これをもって蛇行状に設定してある。
【0023】
前記電気ヒータ3は、鉄系のヒータパイプ5の中心部に発熱線6を通すとともに、両者間の間隙に熱良導性の電気絶縁材7を充填させた、所謂シーズヒータ構成である。
【0024】
また、伝熱パイプ4とプレートフィン1は、例えばアルミニウムなどの熱良導材で形成されている。
【0025】
以上の構成において、通電により、先ず、発熱線6が発熱し、その熱は電気絶縁材7を介してヒータパイプ5に伝わり、輻射エネルギーとして放射され、間隙tを通して伝熱パイプ4に至る。
【0026】
これによって、伝熱パイプ4は吸収した輻射エネルギーにて加熱され、次いで伝導によりプレートフィン1に伝達される。
【0027】
したがって、先にも述べたように、フィンブロック2が温風暖房機の通風路に臨ませて配置してあれば、この通風路を流れる空気がプレートフィン1の間の隙間を通過する際、対流などの作用で加熱され、温風化されるものである。
【0028】
ここで、前記電気ヒータ3を空気層となる間隙tをおいて伝熱パイプ4に内設した意義について説明する。
【0029】
例えば、温風暖房機において、その通風路に常に一定量の空気が流動することはない。つまり、電気ヒータ3にかかる負荷は刻々と変化するものである。すなわち、暖房の設定温度などに関連して負荷はリニアーに、或いは断続的ON−OFF的に変動し、それに伴って、電気ヒータ3の出力も制御する必要がある。
【0030】
しかしながら、空気量の変動と電気ヒータ3の出力制御を完全に同期させることは理論的に困難で、特に、負荷が急激に小方向に変動したときには電気ヒータ3の温度が異常値に近い値まで上昇してしまう。
【0031】
一般的にプレートフィンは熱良導材であるアルミニウムなどが使用されているところから、その耐熱性を考慮すると、電気ヒータ3として高出力のもを使用できないことが理解できるであろう。
【0032】
しかるに、本実施の形態のように、電気ヒータ3の外側に間隙tをおいて伝熱パイプ4を設けておくと、その間隙tの空気層が熱緩衝作用を発揮し、電気ヒータ3の温度変化を吸収することとなる。
【0033】
その結果、伝熱パイプ4およびプレートフィン1にアルミニウムなどの熱良導材を使用しても、それらが異常高温に達することがなく、耐熱性の障害とならないものである。
【0034】
以上から、流体加熱装置としての効率が向上し、加えて高出力化が図れるものであり、高い耐久性がえられることとなる。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態2において、構成的には実施の形態1と基本的に同じである。
【0036】
相違するところは、プレートフィン1および伝熱パイプ4の放射率を小さくしたものである。つまり、輻射熱の発生を可及的に抑制したものである。
【0037】
例えば、温風暖房機にあって、負荷である空気の加熱はプレートフィン1の熱に起因する対流が殆んどで、輻射熱は空気加熱に寄与しないものである。
【0038】
表1は金属材料別の放射率を示している。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から材料としてはアルミニウム、銅、銀などが適しているが、コスト面を考慮すれば、アルミニウム、銅の採用が適切であろう。
【0041】
加えて、同じ材料でも表面を研磨すればするほど放射率が低下するため、アルミニウム、銅の表面を研磨する表面処理を施した方が有利である。
【0042】
表面処理で放射率が低いアルミニウムまたは銅を採用することにより、放射率が0.1程度となるので電気ヒータ3が発生する熱エネルギーQの多くが対流伝熱エネルギーQcとなり、電気ヒータ3の熱エネルギーを効率よく周囲の空気を暖めるために利用することができる。
【0043】
ここで熱エネルギーQを簡易的な理論式で表すと、輻射エネルギーQr=A×ε×(Tw4−To4)と対流伝熱エネルギーQc=A×h×(Tw−To)との和Q=Qr+Qcとなる。
【0044】
ここでAは熱源の表面積、εは放射率、Twは電気ヒータ表面温度、Toは周囲温度、hは空気の熱伝達率である。この式からわかるように放射率εが大きくなると温度の4乗で計算される輻射エネルギーの影響が大きくなる。
【0045】
なお、前記の実施の形態では負荷として空気の場合を述べたが、流体としては液体でも同じことがいえる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる流体加熱装置は、間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮して加熱すべき負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を防止でき、熱伝導性に優れたアルミニウムなどを伝熱パイプおよびプレートフィンに使用でき、その結果として、装置の高出力化、高効率化が可能となるもので、温風を熱源とする暖房機や乾燥機などへの利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1における流体加熱装置の概略斜視図
【図2】同部分断面図
【図3】同要部拡大断面図
【符号の説明】
【0048】
1 プレートフィン
3 電気ヒータ
4 伝熱パイプ
t 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設される多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータとを備え、前記伝熱パイプと電気ヒータとの間には空気層となる間隙を設けた流体加熱装置。
【請求項2】
並設される多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入された丸棒形状をした電気ヒータとを備え、前記伝熱パイプと電気ヒータとの間には空気層となる間隙を設けるとともに、プレートフィンおよび伝熱パイプの放射率を電気ヒータの外郭材料よりも低く設定した流体加熱装置。
【請求項3】
電気ヒータをシーズヒータとした請求項1または2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
プレートフィンおよび伝熱パイプを放射率の低い材料で構成した請求項2記載の流体加熱装置。
【請求項5】
プレートフィンおよび伝熱パイプをアルミニウムまたは銅で形成した請求項4記載の流体加熱装置。
【請求項6】
プレートフィンおよび伝熱パイプに放射率を低くする表面処理を施した請求項2記載の流体加熱装置。
【請求項7】
プレートフィンおよび伝熱パイプを表面研磨処理したアルミニウムまたは銅で形成した請求項5記載の流体加熱装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−174822(P2009−174822A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16129(P2008−16129)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】