説明

流体噴射カートリッジ及び方法

流体噴射カートリッジは、第1間隔の流体流路を有する本体と、より狭い第2間隔の流体流路を有するダイと、第1表面で本体に接合され、第2表面でダイにプラズマ接合されるインターポーザとを含む。このインターポーザは、第1表面と第2表面との間に流体流路を含み、これらの流路は本体及びダイのそれぞれの流路と実質的に整列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、本明細書において「流体ジェット」装置とも称される流体噴射装置、例えばインクジェットカートリッジ等に関する。流体ジェット装置は一般に、カートリッジ本体に接合されたシリコンダイを含む。このダイは半導体基板を含む場合があり、基板はノズルアレイ及びこのノズルを制御するための回路を含む。ノズルは、コントローラシステムから送られるコマンドに応答して、基板上に個別の流体液滴を噴射する。例えばカラー印刷の場合、流体ジェットカートリッジは複数のダイを含み、そのそれぞれが異なる色のインクを噴射する。或いは、単一のダイが複数のノズル列を含み、各ノズル列が異なる色のインクを噴射する。同様に、流体ジェットカートリッジが固定位置にある複数のダイを含み、1回の通過でページ幅全体を網羅する場合もある。
【背景技術】
【0002】
複数のノズル列を有する流体ジェットダイの幅を縮小するために、ノズル列をできるだけ近づけて配置することが望ましい。流体ジェットダイの幅の縮小は一部にはコストの観点から望ましい。高品質のシリコン半導体ウェハはコストがかかる。ダイの幅が狭ければ狭いほど、より多くのダイを単一のシリコンウェハ上に作製することができる。これを目的として、間隔又はピッチがより狭いノズル列を備えた流体ジェットダイが開発されてきた。ダイは、ノズル列と連通した流体流路又はスロットを含む。カートリッジ本体もまた流体流路又はチャネルを含み、これらはダイの流路に連通しており、ダイの流路へと流体を運ぶ。ノズル列が互いに近いとダイ内の流体流路も互いに近くなり、カートリッジ本体内のチャネルも互いに近いことが必要になる。
【0003】
ダイの幅が減少するにつれ、デザイン上の難題も発生する。これらの難題の1つはダイをカートリッジ本体に取り付ける方法に関する。カートリッジ本体はポリマー材料製であることが多いが、カートリッジダイが高品質エレクトロニクスグレードのシリコン製の場合がある。シリコンダイのポリマーカートリッジ本体への取りつけは、典型的には、有機系接着剤を用いて行なわれる。しかしながら、カートリッジ本体内の流体チャネルの間隔が極めて狭いため、流体チャネル内に接着剤がはみ出してしまう場合がある。この接着剤はチャネルを塞ぎ、カートリッジの性能不良又は欠陥を引き起こす場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の様々な特徴及び利点は、添付の図面を共に参照することにより以下の詳細な説明から明らかとなり、図面は全て、例として、本開示の特徴を図示するものである。
【図1A】ダイとカートリッジ本体との間にプラズマ接合シリコンインターポーザを有するカートリッジの一実施形態の断面図である。
【図1B】図1Aの実施形態の分解断面図である。
【図2】細長流体スロットを有するシリコンインターポーザの一実施形態の平面図である。
【図3】図2のシリコンインターポーザの部分断面斜視図である。
【図4】レーザで切削した傾斜チャネルを有するシリコンインターポーザの一実施形態の断面図である。
【図5】鋸で切削した傾斜チャネルを有するシリコンインターポーザの一実施形態の断面図である。
【図6A】扇形流体流路を形成する前のシリコンインターポーザ基板の一実施形態の部分断面図である。
【図6B】最初のレーザ及びウェットエッチング後の図6Aのシリコンインターポーザの部分断面図である。
【図6C】流体流路の最終エッチング後の図6Bのシリコンインターポーザの部分断面図である。
【図7】カートリッジ本体の流体チャネルと整列するように設計されたエッチホールを有するシリコンインターポーザの一実施形態の上面の平面図である。
【図8】図7のシリコンインターポーザの底面の反射平面図であり、流体ジェットダイの流体チャネルと整列し且つ連通するように設計された小さな底開口部を示す。
【図9A】流体ジェットダイ及びカートリッジ本体に取り付けられた、図7及び図8のシリコンインターポーザの断面図である。
【図9B】流体ジェットダイ及びカートリッジ本体に取り付けられた、図7及び図8のシリコンインターポーザの断面図である。
【図10】複数の流体ジェットダイを有するページ幅アレイ流体ジェットカートリッジの別の実施形態の斜視図であり、各ダイは各々独立したシリコンインターポーザに取り付けられている。
【図11】複数の流体ジェットダイを有するページ幅アレイ流体ジェットカートリッジの一実施形態の斜視図であり、全てのダイが共通のシリコンインターポーザに取り付けられている。
【図12】流体ジェットダイとカートリッジ本体との間に取り付けられたシリコンインターポーザを有する走査型流体ジェットカートリッジの実施形態の斜視図である。
【図13】流体ジェットダイが下に取り付けられたシリコンインターポーザの実施形態を下から見た平面図であり、インターポーザは、流体ジェットダイチャネルの端部を超過する流体チャネルを有する。
【図14】図13のシリコンインターポーザ及び流体ジェットダイの断面図であり、超過流体チャネルを示す。
【図15】図13の実施形態におけるインターポーザ流体チャネル容積と流体ジェットダイ流体チャネル容積との幾何学的関係を示す反転斜視図である。
【図16】シリコンインターポーザを有する流体ジェットカートリッジアセンブリ及びダイがプラスチックインターポーザに接着接合された流体ジェットカートリッジアセンブリについての時間に対する温度変化を比較したグラフである。
【図17】シリコンインターポーザを備えた流体ジェットカートリッジを製造するための方法の一実施形態に関わる工程を概説したプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここで、図に描かれた例示的な実施形態について説明し、またこの実施形態を説明するために本明細書において特殊な用語も使用する。それでもなお、図示の実施形態は本開示の範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。図示の特徴の変更及び更なる改変並びに図示の原理の更なる応用は、関連する分野の本開示を手に入れた専門家が着想し得るものであり、本開示の範囲内にあるとみなされる。
【0006】
上述したように、製造される流体ジェットカートリッジのノズルアレイ間の間隔はより狭くなりつつあり、これに伴ってノズルアレイのために働く流体ジェットダイ内の流体チャネル及び流路間の間隔又はピッチもより狭くなってきている。本明細書において使用の用語「スロットピッチ」及び「間隔」は、カートリッジ本体又は流体ジェットダイ等の本体内の隣接する流体流路(例えば、細長チャネル)又は流路群(例えば、概して線状に配置され且つ共通の流体供給源と連通する開口部群)間の中心から中心の間隔に言及する際に同じ意味で使用される。流体チャネル間のピッチが狭いと、流体ジェットダイをカートリッジ本体に接着剤で取り付ける際に問題が起こる場合がある。カートリッジ本体内の流体チャネルのピッチが極めて狭いと、ダイをカートリッジ本体に取り付ける際に接着剤が流体チャネル内にはみ出す場合がある。特に、発明者は、接着剤による接合が、約800ミクロン未満のスロットピッチでは上手くいかないことを発見した。狭いスロットピッチでは、接着剤が流体チャネル内にはみ出しやすく、チャネルを塞ぎ、カートリッジの性能不良又は欠陥につながる場合がある。
【0007】
有利には、発明者は、極めて狭い間隔の流体チャネルを有する流体ジェットダイを、はるかに広い流体チャネル間隔を有するカートリッジ本体に取り付けることを可能にする流体ジェットカートリッジ構成を作り上げ、この構成はシリコンダイのポリマーカートリッジ本体への接着接合に関連した望ましくない問題を回避するものである。本明細書において、用語「流体」は、インク、食品、化学薬品、医薬化合物、燃料等の全ての種類の液体を指すことを意図したものである。用語「流体ジェット」は、全てのドロップ・オン・デマンド流体噴射システムを指すことを意図したものである。図1A〜図1Bは、本開示に従って構成された流体ジェットカートリッジの一実施形態の部分断面図である。カートリッジは、図1Aにおいては組み立てられた状態で、図1Bにおいては分解された状態で図示されている。
【0008】
このカートリッジ10は一般に、第1スロットピッチS(中心から中心にかけて測定)の流体流路又はチャネル14を有するカートリッジ本体12と、より狭い第2スロットピッチdの流体流路又はチャネル18を有するダイ16とを備える。シリコンインターポーザ20がダイとカートリッジ本体との間に配置され、シリコンインターポーザは、流体ジェットダイの間隔の狭い流体チャネル18と、カートリッジ本体の間隔がより広いチャネル14とを相互接続する複数の扇形流路22を含む。シリコンインターポーザにより、極めて狭いスロットピッチの流体ジェットダイの使用が可能になり、カートリッジ本体のスロットピッチを同じ狭さにする必要がない。流体ジェットダイ内のスロットピッチdは約400ミクロン〜約1000ミクロンと様々であり、カートリッジ本体内のスロットピッチは通常、約1000ミクロン以上である。
【0009】
流体ジェットダイ16内の流体開口部18のピッチdとカートリッジ本体12内の流体開口部14のピッチSとの差が、インターポーザ20の厚さTとインターポーザ内の流体流路22の角度αとの関数となることがわかる。所定の角度の場合、インターポーザが厚いと、相対的な間隔の変化の幅がより大きくなる。同様に、所定のインターポーザ厚さの場合、角度が急勾配(垂直線から測定)だと、間隔の差がより大きくなる。シリコンインターポーザの厚さは様々である。発明者は、約500ミクロン〜約2000ミクロンの厚さを有するシリコンインターポーザを、本明細書で概説の原理に従って構成できると考えている。しかしながら、この範囲外の厚さのインターポーザを使用することもできる。厚さ約1000ミクロンまでの基板には一般的なシリコン作製ツールを使用することができるが、より厚い基板の場合はその他の適切なツールを使用する。厚さ1000ミクロンを有するシリコンインターポーザを使用し、インターポーザ内の流体流路の最大角度を45°にすることにより、約1000ミクロンから約400ミクロンへのスロットピッチ縮小が可能である。このように、シリコンインターポーザにより、流体ジェットダイにおけるより劇的なスロットピッチ縮小が可能になり、ひいてはより小型のダイを所定のカートリッジ本体サイズと共に使用することが可能になる。より小型の流体ジェットダイによってカートリッジの製造コストを削減することができ、場合によっては、特に単一の印字バー上に幾つかの流体ジェットダイを有するページ幅印刷アレイの場合、このコスト削減はかなり大きなものとなり得る。コスト削減は走査型印字ヘッドの場合も顕著だが、これは製造、販売されるこのような印字ヘッドがより多いからである。
【0010】
カートリッジ本体内のスロット及びインターポーザの隣接面上の対応するスロットのピッチはより広いことから、シリコンインターポーザをカートリッジ本体の一方に接着接合し、接着剤が流体流路内にはみ出す可能性を回避することができる。インターポーザ及び流体ジェットダイは共に同じタイプの材料(シリコン)から形成されることから、これら2つの構造体はプラズマ接合することができ、接着剤又は接合を強力にするためのその他の物質を必要としない。プラズマ接合は効果的であるが、これはシリコンインターポーザ及びシリコン流体ジェットダイが、その表面に天然の酸化ケイ素層を有するからである。
【0011】
プラズマ接合の前に、シリコン表面を研磨することによってその表面粗さを低下させることが望ましい。この研磨は当該分野で周知の化学機械研磨(CMP)プロセスを使用して行なうことができる。2つのシリコン基板のプラズマ接合は、3段階プロセスで行なうことができる。第1に、天然酸化ケイ素表面を窒素プラズマに曝露すると、窒素プラズマが酸化物層を活性化させる。すなわち、酸素元素のノックオフにより酸化ケイ素の表面上の分子に活性Si+結合部位が形成される。次に、活性化させた表面を水プラズマに曝露すると、Si+部位が加水分解されてシラノール(SiOH)が表面上に形成される。第3工程において、この表面を酸素プラズマに曝露することによって清浄化する。これはシリコンウェハのプラズマ処理及び接合に使用可能なプロセスの単なる一例に過ぎないことを理解されたい。その他のプロセスを使用して同様の結果を得ることもできる。例えば、ウェハを窒素ではなくアルゴンプラズマで処理し、次に水和のために水中に物理的に浸漬することができる。その他のバリエーションも使用することができる。
【0012】
プラズマ処理工程に続いて、処理済みの表面を合わせると、これらの表面はファンデルワールス力によって自然に互いに付着する。時間の経過と共に、また温度に応じて、これらの比較的弱いファンデルワールス力は、以下の反応:SiOH+SiOH→SiOSi+H2O(1)がシラノール種間で起こるにつれて強力な共有結合に取って代わられる。この反応を加速させるために、プラズマ処理工程に続いてアニーリング工程を行なうことができ、取り付けられたシリコン基板は炉内である時間に亘って加熱される。当業者なら、正確なアニーリング温度及び時間が様々であり、温度が低いと時間が長くなり、温度が高いと時間が短くなることがわかる。一実施形態において、アニーリングプロセスは、接合済みのダイアセンブリを約120℃にまで2時間に亘って加熱することを伴う。ただしアニーリングに関する正確なプロセス条件は様々であり、実験によって求めることができる。当業者なら、アニーリングを様々な時間と温度の組み合わせでもって達成できることがわかる。このプラズマ処理及びアニーリングプロセスの結果、接着剤を必要とすることなく、極めて強力な結合が分子レベルで形成される。実際、2つのシリコン層間のプラズマ活性化による結合のほうが、シリコンとガラスとの間のプラズマ活性化による結合より強力であると考えられる。プラズマ接合の使用により、スロット間隔が狭い場合に接着剤が流体流路にはみ出す問題が回避される。
【0013】
プラズマ接合ができることに加え、インターポーザへのシリコンの使用にはその他の利点もある。例えば、シリコンは数多くの方法によって簡単に機械加工することができ(例えば、鋸引き、ドライエッチング、レーザーエッチング)、シリコンはガラス材料より特定の流体に対してより良好な耐性を示す。加えて、インターポーザがエレクトロニクスグレードのシリコン製である必要はないため、よりグレードの低いシリコンをインターポーザに使用することができ、シリコンは費用対効果が高い。シリコンによって、ある種の熱的な利点も得られるが、これについては以下でより詳細に説明する。
【0014】
図2は、シリコンインターポーザ30の一実施形態の平面図である。この平面図は、カートリッジ本体(図2では図示せず)内の流体チャネルと整列するように構成された4つの比較的広く離間された細長流体チャネル(34a〜dと標記)を備えたインターポーザの上面32を示す。特に記載がない限り、本明細書で使用の用語「上」は、カートリッジ本体と合わさるインターポーザの表面に言及する際に使用され、用語「底」は、流体ジェットダイと合わさるインターポーザの表面に言及する際に使用される。同様に、インターポーザと合わさるダイの表面は流体ジェットダイの「上」と称され、インターポーザと合わさるカートリッジ本体の表面はカートリッジ本体の「底」と称される。インターポーザの上面は、カートリッジ本体に接着接合することができる。流体チャネルは、図1A〜図1Bに図示の実施形態のように、扇形の構成を有する。図2の平面図において、各チャネルの下方開口部36a〜dは破線で示されており、各チャネルが、この層の底面に向かうに従って、インターポーザの縦方向の中心に向かって傾斜しているのが見て取れる。
【0015】
このインターポーザ30の部分断面図が図3に示される。ここで、縦方向スロット34がインターポーザ基板の上面32から下面38へと延び且つ傾斜構成を有することから、スロットのピッチは下面より上面で大きくなることが見て取れる。図においてスロットは実質的に平坦な側面と角ばった端部を有するものとして描かれているが、この外見は図を単純化するためのものであることを理解されたい。スロットは異なる形状及び外見を有していてもよく、作製方法に左右される。例えば、スロットがより丸みを帯びた端部形状を有したり、より粗く又は若干不規則な内面を有する場合もある。スロットが流体をカートリッジ本体から流体ジェットダイへと本明細書に記載のやり方で輸送可能な限り、スロットの正確な形状、規則性及び表面仕上げは様々であってよい。
【0016】
インターポーザ内の流体スロットの形状、規則性及び表面仕上げは一部、シリコンインターポーザ内のスロットの作製方法に左右される。多くの方法を使用することができる。インターポーザ内に細長扇形スロットを形成するための2つの方法が、図4及び図5に示される。図4はレーザー装置56からの光線54で切削中の傾斜チャネル52を有するシリコンインターポーザ基板50の一実施形態の断面図である。傾斜は、基板を図示のように傾けることによって作り出すことができ、或いはレーザー装置をインターポーザ基板に対して傾けることができる。ウェハをホルダ上で様々な角度で傾ける場合、スロットのレーザーアブレーションが可能である。適切な角度は、スロットの望ましい分離及び基板の厚さに基づいて選択することができる。例えば、675ミクロンの厚さのウェハの場合、ステージを20°、10°、0°−10°及び−20°傾けることによって、4つの末広がりのスロットが約117ミクロンの追加ピッチで得られる。その他の角度の傾き範囲も選択できることを理解されたい。垂直線の両側で最高45°のスロット角度を使用することができると考えられる。図によって示唆されるように、スロットは、全角度範囲に亘って実質的に均等に離間された異なる角度でもって位置決めすることができる。従って、4つのスロットを設置し、外方スロットの最大角度が垂直線から45°の場合、内方スロットはそれぞれ垂直線に対して約28.5°の角度を有し、均等な間隔の上方及び下方スロットと整列する。シリコン基板のレーザーアブレーションは、赤外(IR)又は紫外(UV)レーザーを使用して行なうことができ、スロット形成は、ガス又は水等の補助媒体の使用によって更に増強することができる。
【0017】
インターポーザ内に流体チャネルを形成するための別の比較的単純な方法が、一連の傾斜チャネルの鋸による切削である。図5は、鋸刃64で切削中の傾斜チャネル62を有するシリコンインターポーザ基板60の一実施形態の断面図である。望ましい角度は、図示のように基板を傾けることによって又は鋸を傾けることによって得ることができる。この用途に使用することができる鋸刃は市販されており、たった40ミクロンの薄さの場合があり、適切な狭さのスロットの形成が可能となる。
【0018】
ドライエッチング、ウェットエッチング技法等のその他の作製技法を使用してシリコンインターポーザ内にチャネルを形成することもできる。例えば、ハードマスクを使用して、望ましい角度のズレをもたらすトレンチを形成するための自己整列特性を利用することができる。図6Aは、流体流路を形成する前のシリコンインターポーザ基板70の一実施形態の部分断面図である。基板はハードマスク72をその上面74上に、別のハードマスク76をその底面78上に含む。これらのマスクは、各表面上に流体流路のそれぞれの位置の輪郭を示すことができる。
【0019】
ハードマスク72、76の適用後、次に流体チャネルを、レーザードライ及びウェットエッチング等の様々な方法でエッチングすることができる。図6Bに示されるように、流体チャネルの上部80は、シリコン基板70に途中までの深さのチャネルをレーザーエッチングすることによって形成することができる。同じ流体チャネルの下部82は、ドライエッチング又はレーザーエッチングとそれに続くウェットエッチングにより形成することができる。これらの初期チャネルが一旦形成されたら、ウェットエッチプロセスを行い、それに続く側壁の横方向のエッチングによって、2つの流体チャネルがつながる。自己整列は、ハードマスク層によって確保される。これらの工程が完了した後、完成したチャネル84を図6Cに見て取れる。
【0020】
各種エッチングプロセスの性質により、完成したチャネル84は若干の湾曲及び表面の若干のうねりを有しがちである。しかしながら、この類のささいな幾何学的な不整はある程度許容することができる。流体ジェットダイ内の気泡が流路を塞ぎ、印刷品質に影響する場合があるため、流体ジェットプリンタは、典型的には、流体ジェットダイと流体連通したスタンドパイプ(図示せず)を含む。このスタンドパイプは、流体ジェットダイから気泡を抜き出すように位置決めされる。インターポーザ内の流体チャネルが、インターポーザの裏面からシリコンダイ上のトレンチの裏面へと実質的にはっきりと見通しがきくように作製されるなら(すなわち、チャネル内に極端な湾曲又はうねりがない)、ダイの発射領域で発生した気泡は自然とダイから浮上し、スタンドパイプ内でパージすることができる。従って、インターポーザは、プリンタ内での良好な空気管理を促進するように設計することができる。
【0021】
図6A〜図6Cに示すハードマスク/エッチング技法にはウェットエッチ時間における制約等の若干の制約があるものの、本明細書に記載されるような使用のための適切なシリコンインターポーザを得るのに使用することができる。エッチングの深さ及びシリコンインターポーザの厚さに応じて、流体ジェットダイとカートリッジ本体との間で流体チャネルに大幅なピッチ変化をもたらすシリコンインターポーザを製造することができる。
【0022】
シリコンインターポーザ内の流体流路は、細長スロット又はチャネルではない別の形状又は構成(ホール等)を有してもよい。図7はシリコンインターポーザ100の別の実施形態の平面図であり、シリコンインターポーザ基板の上面106の比較的広く離間された位置にあるエッチホール104の開口部102を示す。対応する流体ジェットダイ108及びその比較的狭く離間された細長流路110の輪郭は破線で示される。図7に示される上面106は、カートリッジ本体(図7では図示せず)に接着接合することができる表面である。上開口部102は、カートリッジ本体内の流体流路と整列するように位置決めされており、また接着剤のホール104内へのはみ出し傾向を軽減するために比較的広く離間されている。
【0023】
図7〜図9の実施形態において、エッチホール104は先細りの構成を有しており、インターポーザ100の上面106から底面112へとサイズ及び位置の両方において先細りしている。インターポーザの底面の反射平面図が図8である。底面は、上開口部102よりもサイズが小さく且つ流体ジェットダイ108(破線で図示)の細長流体流路110と整列する底開口部114を含む。エッチホールの形状により、各内部ホールの底開口部の一部が、図7の上面から見える。
【0024】
図9A及び図9Bは、カートリッジ本体116と流体ジェットダイ108との間をつなぐインターポーザ100の2つの断面図である。カートリッジ本体は、上述したように、比較的広く離間された流体流路118を含む。カートリッジ本体内の流路は、上述したような細長スロット又はチャネルであってもよく、或いはホール等のその他の形状を有し得る。エッチホール104の上開口部102はカートリッジ本体流体流路と整列し、インターポーザの底面112に向かって、流体ジェットダイ108の流体流路110と整列するより小さな底開口部114へと先細りになる。上述したように、流体流路ピッチにおける得られる変化は、インターポーザの厚さ及びその内部の流体流路の角度の関数である。
【0025】
インターポーザ100の上開口部102は、カートリッジ本体116の流体流路118とは異なるサイズ及び形状の場合があり、それでも依然として整列する。例えば、図7〜図9の実施形態において、上開口部はカートリッジ本体の流体開口部より少なくとも1つの寸法においてより大きい。図9A及び図9Bに示されるように、エッチホール104の先細りによって、インターポーザの上面において開口部は比較的広くなる。開口部のこのサイズの大きさが、インターポーザとカートリッジ本体との整列の助けとなり、製造中のインターポーザとカートリッジ本体との若干の整列不良に関する許容範囲が広くなる。加えて、インターポーザ100の上ホール102がカートリッジ本体116の細長スロット118と整列した状態で図示されているが、代案として、カートリッジ本体に、インターポーザの上ホールと実質的に整列する別個のホールを設置してもよい。その逆も可能であり、すなわちカートリッジ本体が、インターポーザの細長スロットと整列する別個のホールを含むこともできる。
【0026】
上開口部102のこの大きなサイズは、一部には、この実施形態の別の特徴によるものである。4つの平行な細長スロット110はダイ108において隣り合って位置決めされているが、インターポーザ100は隣り合った4つのエッチホール104を有しておらず、その代わりに図7に示されるような交互のホール位置を有している。すなわち、2つの隣り合うホール104は、図9Aに示されるように、カートリッジ本体及びダイの両方における第1及び第3流体スロットに接続しており、続く2つの隣り合うホール104は、図9Bに示されるように、カートリッジ本体及びダイの第2及び第4流体スロットに接続している。この交互構成によって、隣接する上開口部102間の横方向の間隔を比較的広くすることができ、これによって接着剤のはみ出し問題が軽減され、またこの交互構成はインターポーザの強度の向上に寄与する。
【0027】
図7に示される交互ホール構成によって上開口部102を交互ホール構成でない場合よりも大きくすることもでき、この大きなサイズが、たとえ接着剤のはみ出しが起こったとしても、その潜在的な悪影響を軽減するのに貢献する。図9Aを参照するが、接着剤120の小さな塊がインターポーザ100とカートリッジ本体116との間の界面でホール104の1つにはみ出しても、上開口部のサイズは比較的大きいため、接着剤の塊がカートリッジ本体とダイとの間の流体流路を妨害することはない。
【0028】
シリコンインターポーザの使用は、流体ジェットダイの考えられ得る脆性を補うのにも役立つ。流体ジェットダイ及びその他の半導体デバイスの作製コストを削減するのに使用されることもある1つのアプローチが、ウェハの薄化である。ウェハ薄化は、典型的には、半導体ウェハを研磨又は研削してその厚みを低下させる1次的な機械研磨工程及び2次的な化学研磨構成要素を伴う。流体ジェットダイウェハのウェハ薄化によって、例えばレーザーエッチングに必要なエネルギー及び時間が削減され、作製コストを大幅に削減することができ、また、例えば熱損失を低下させることができる。しかしながら、ウェハの厚みの低下によってダイが一層脆弱なものとなり、カートリッジの組み立て中に損傷する恐れもある。シリコン流体ジェットダイを比較的厚いシリコンインターポーザに接合することにより、その機械的強度が大きく上昇し、ダイのひび割れが起こる可能性が大幅に低下する。
【0029】
本開示による、流体ジェットカートリッジをプラズマ接合シリコンインターポーザを用いて作製するための方法の一実施形態におけるプロセス工程を、図17で概説する。このプロセスは、2つの別々のサブプロセスから始まり、一方は流体ジェットダイ(工程600から始まる)に関するものであり、もう一方はインターポーザ(工程608から始まる)に関するものである。まず最初に流体ジェットダイに関係した工程について言及するが、流体ジェットウェハをまずバックグラインドによって薄化し(工程602)、次に、上述したように、インターポーザに接合する側を化学機械研磨(CMP、工程604)することができる。或いは、矢印603によって示されるように、ウェハを薄化することなく、プロセスをただちに化学機械研磨に移行することができる。化学機械研磨工程は、表面の平滑度を高いレベル(例えば、二乗平均平方根(RMS)粗さ約0.4nm)にすることを意図している。次に、流体ジェットウェハを清浄化することができる。この方法には様々な清浄化工程が含まれるが、簡潔にするために、図17の図ではこれらの工程を示していない。当業者なら、流体ジェットダイ又はインターポーザ基板の清浄化の、プロセスにおける望ましい時点を見極めることができる。次に、流体ジェットダイを単体化し(すなわち、一緒に作製された複数のダイを含む1枚のシリコンウェハから鋸で切り出す。工程606)、次にダイレベルで清浄化することによって粒子又は汚染物質を除去する。
【0030】
工程608について言及するが、シリコンインターポーザウェハの正面も化学機械研磨され(工程610)、次にこのウェハをレーザートレンチ(又はエッチング)(工程612)することによって、上述したようなスロット又はホールを備えた複数のインターポーザ構造体のアレイを準備し、次にウェハレベルで清浄化する。
【0031】
次に、流体ジェットダイ及びシリコンインターポーザウェハの、プラズマ接合される側の表面を、高エネルギープラズマで処理する(工程614)(例えば、上述したようなN2/H2O/O2プラズマでの3工程プラズマ処理)。次に、活性化させた表面を慎重に互いに整列させ、ある時間に渡って力を加えながらボンダ内で接触させる(工程616)。例えば、直径8インチのウェハの場合、2000Nの力を5分間に亘って加えた。この工程によって、個々の流体ジェットダイが接合されるところの複数のインターポーザ領域を有する比較的大型のシリコンインターポーザウェハが形成される。次に、この接合済みのダイ/インターポーザアセンブリをアニーリング炉内に配置し、上述したように高温で特定の時間に亘ってアニーリングする(工程618)。
【0032】
長く細いダイの取り扱いには、製造中に破損する潜在的なリスクがある。しかしながら、この問題は、鋸引きして、持ち上げ、配置する作業中に工場内で対応することができる。加えて、本明細書で開示のシリコンインターポーザ構成には幾つかの利点もある。インターポーザとダイとの間のプラズマ接合された界面がシリコンとシリコンとの界面になることにより、両材料は本質的に同じ熱特性を有する。この結果、接着剤の硬化及びそれぞれの熱膨張率の差による潜在的な応力が回避される。
【0033】
アニーリングに続き、次にシリコンインターポーザウェハを単体化し(すなわち、複数の個々のインターポーザ/ダイアセンブリへと鋸で切り出す。工程620)、再度清浄化することによって粒子又はその他の汚染物質を除去することができる。このプロセスの後、個々のインターポーザ/ダイアセンブリは、有機系接着剤等を用いて、カートリッジ本体に取り付ける準備が整う(工程622)。
【0034】
個々のインターポーザ/ダイアセンブリは、様々な構成を有するカートリッジ本体に取り付けることができる。例えば、図10は、それぞれが個別に単一のカートリッジ本体204に取り付けられた複数の流体ジェットダイ/インターポーザアセンブリ202を有するページ幅アレイ流体ジェットカートリッジ200の一実施形態の底部の斜視図である。ページ幅アレイについてのこの実施形態において、各流体ジェットダイ206は、上述したようなやり方で別々のシリコンインターポーザ208にプラズマ接合され、次に、このインターポーザ/ダイアセンブリ202がプラスチック印字バーに接着接合される。シリコンインターポーザの使用によりダイの大幅な縮小が可能になり、これはページ幅アレイ印字バーにとっては有益となり得る。各シリコンインターポーザはマイクロマシン加工された位置合わせマークを正面上に有していてもよく、このマーク上に機能するダイを配置、接合して、実際のページ幅アレイ構造体を形成することができる。
【0035】
図10に示されるもののようなページ幅アレイ印字バーは、ワンパス又はマルチパス印刷に使用することができる。単一の印字バーに取り付けられる流体ジェットダイの数は、一つには印字バーの幅及び個々のダイのサイズに応じて様々である。例えば、一部のページ幅アレイは7〜11個のダイを含み、ダイ縁部での印刷アーチファクトを回避するために、実質的にダイとダイとをオーバーラップさせる。
【0036】
別の実施形態において、1つ以上のインターポーザ/ダイアセンブリを、走査型流体ジェットカートリッジのカートリッジ本体に取り付けることができる。例えば、図12は、カートリッジ本体254に取り付けられた(例えば、接着接合)単一のインターポーザ/ダイアセンブリ252を有する走査型流体ジェットカートリッジ250の斜視図である。この実施形態において、流体ジェットダイ256は、上述したやり方でシリコンインターポーザ258にプラズマ接合され、次に、インターポーザの反対側の面が、プラスチックカートリッジ本体に接着接合される。図10のページ幅アレイ実施形態と同様に、この実施形態でもダイを大幅に縮小することができ、熱性能が改善され、ダイの脆性が向上し、製造中、有利となる。
【0037】
複数の別々のインターポーザ/ダイアセンブリを単一のカートリッジ本体に取り付ける以外の構成も可能である。例えば、図11は、全てが共通のシリコンインターポーザ304に取り付けられた複数の流体ジェットダイ302を有するページ幅アレイ流体ジェットカートリッジ300の底部の斜視図である。このケースにおけるインターポーザ/ダイアセンブリは、上で概説されたものと同様のやり方で作製することができるが、インターポーザウェハ内のスロット又はトレンチの位置は、仕上がったカートリッジにおける望ましいダイ配置に対応するように改変され、また個々のインターポーザ/ダイアセンブリは互いに分離されていない。
【0038】
図11の実施形態において、インターポーザ304は印字バー全体を構成することができる。従って、印字バー全体をシリコン(上述したように、エレクトロニクスグレードではない低グレードのシリコン)から形成することができ、複数の流体ジェットダイ302が、このシリコンインターポーザ(印字バーとして働く)に直接、プラズマ接合される。印字バーは、流体送出システム306に接着接合することができ、流体送出システムはプラスチック材料製であってもよい。
【0039】
本明細書で開示のシリコンインターポーザのデザインには更なる特徴がある。比較的厚いシリコンインターポーザだと、ダイの総熱質量が上昇する。これによって熱が発生し散逸する過渡的な時間が長くなるため、カートリッジ内の温度が低くなる。カートリッジ温度は各印刷ジョブの特性に左右され、良好な熱放散が一般に望ましい。シリコンの熱質量の上昇によって、同様の印刷デューティサイクルについてのダイのピーク温度が低下する。
【0040】
熱モデル研究は、流体ジェットダイ及び流体それ自体の平均温度は、シリコンダイをプラスチック基板ではなくシリコンインターポーザに接合した場合のほうが著しく低いことを示している。図16はこれらの研究に基づいたグラフであり、流体ジェットダイ(曲線404)及びシリコンダイがプラスチックインターポーザに接着接合された流体ジェットカートリッジアセンブリ内の流体(曲線406)の温度と比較した、流体ジェットダイ(曲線400)及び流体ジェットダイに接合されたシリコンインターポーザを有する流体ジェットカートリッジアセンブリ内の流体(曲線402)に関する、時間の経過に伴う温度変化を比較している。このグラフが示すように、シリコンダイをシリコンインターポーザに接合した場合の流体ジェットダイ及び流体それ自体の平均温度は、シリコンダイをプラスチックインターポーザに接合した場合と比較すると約5〜7℃低い。加えて、シリコンをシリコンに取り付けることでダイとインターポーザとの間で熱膨張率の差が生じず、熱によって応力が誘発される可能性が回避され、その結果、ダイの劇的な縮小が更に可能になる。
【0041】
図16のグラフは、比較的短い時間での温度変化を示している。当業者なら、印刷ジョブの継続時間及びデューティサイクルが大きく変化し得ることがわかる。図16のグラフから見て取れるように、シリコンインターポーザの熱的な利点は数秒後に減少する。しかしながら、一時的又は短い時間の印刷ジョブの場合、この利点は大きく、また流体ジェット印刷システムはジョブ間に頻繁にタイムブレイクを経ることから、この一時的な状況が頻繁に起こる。加えて、発明者は、たとえ定常状態の走査であっても、シリコンインターポーザに接合された流体ジェットダイの温度のほうが、プラスチックカートリッジ本体に直接接合された同じダイより低くなる傾向にあることを発見した。
【0042】
シリコンインターポーザのデザインを、インクジェット印刷において特に顕著であるがその他の流体ジェット応用例においても問題となり得る明領域のバンディングを軽減する助けとなるように構成することもできる。明領域バンディングは熱に関係した印刷欠陥であり、ダイ内の流体スロットの端部が、これらのスロットの中央部位より冷たくなることよって引き起こされる。これはシリコンスロット内の非対称的な境界条件の結果である場合がある。ダイがスワス印刷するにつれ、ダイは定常状態温度に達する。しかしながら、スロットの端部で熱勾配が確立され、スロット端部が冷たくなる場合がある。スロットの端部が中央領域より冷たくなると、流体液滴噴射挙動が変化し、人の目には薄いと感じられる領域又はバンドがダイ端部で生じる。この欠陥は、2つのスロットをすぐ隣同士で印刷する場合に最も顕著となる。明領域バンディングは、特定の数のノズルのダイのオーバーラップによって隠すことができる。しかしながら、このアプローチだと、コスト並びに製造及び書き込みシステムにおける複雑度がそれぞれ上昇してしまう。明領域バンディングは、ページ幅アレイの場合のワンパス印刷で特に問題となるが、これはカートリッジの複数回の通過による明領域の補償がないからである。
【0043】
発明者は、シリコンインターポーザのデザインが、ダイの長軸に沿ったより均一な熱プロファイルの形成によって、明領域バンディングの軽減に役立ち得ることを発見した。シリコンインターポーザを、ダイのデザインにおける異方性を補償し且つ縁部でのヒートシンク効果を軽減するように設計し、マイクロマシン加工することができる。特に、インターポーザ内の流体スロットを、流体ジェットダイのスロットの端部を大幅に越えて縦方向に延ばすことによって、熱勾配を更に押し広げることができる。図13は、シリコンインターポーザ500と、そのインターポーザの下に取り付けられた流体ジェットダイ502の実施形態を下から見た平面図である。カートリッジ本体504に取り付けられたインターポーザ及びダイの縦方向断面図が図14であり、インターポーザ流体チャネル容積と流体ジェットダイ流体チャネル容積との間の幾何学的な関係を示す反転斜視図が図15である。
【0044】
流体ジェットダイ502は、細長チャネル506を含む。ダイのデザインにおける異方性を補正し且つダイチャネル506の端部でのヒートシンク効果を軽減するために、インターポーザは、流体ジェットダイチャネルの端部を超過する流体チャネル508を含む。すなわち、インターポーザ流体チャネル508はその端部に超過領域510を含み、この超過領域が、ダイ502の末端部位上に流体がくることを可能にする。シリコンインターポーザ内のこの延長流体スロットは、ダイの発射ノズル512に沿って温度をより均一に分布させる助けとなり、この均一な温度分布が、明領域バンディングの強度を弱めるのに役立つ。インク及びその他の流体はシリコンより熱伝導性が低くなり得ることから、より多くの熱が機能しているシリコンスロット端部内の流体によって保たれるが、これはより多くの流体がダイの背面と接触しているからである。この結果、ダイ端部での液滴重量はダイの中央での液滴重量に近くなり、明領域バンディング効果が軽減される。望ましい熱機能を得るのに必要とされる超過領域の長さL(図14に図示)は様々であり、実験及び/又は熱モデリングによって求めるこことができる。
【0045】
この構成により、スワスの高さに沿った温度分布がより均一となり、明領域バンディング強度が低下する。明領域バンディングの軽減は、ページ幅アレイを形成するための、ダイの長辺上に接合パッドを備えたインライン型のダイのデザインに役立つ。加えて、(図16に関連して上述したような)シリコンダイ全体の温度の低さもまた、明領域バンディングに大きな影響を与えるが、これは全体の温度が低下する場合、流体スロットに沿った温度勾配も極端なものにならないからである。
【0046】
上記の説明はシリコンダイに接合したシリコンインターポーザに関してのものであるが、上述したように、その他の材料もダイ及びインターポーザに使用し、プラズマ接合し得ることを理解されたい。例えば、流体ジェットダイ基板はシリコン、ガラス又はその他の材料製であってもよい。同様に、インターポーザはガラス又はシリコン製であってもよく、ガラス又はシリコンダイに効果的にプラズマ接合することができる。本明細書で開示のプラズマ接合技法を使用したシリコンのガラスへの接着は、シリコンとシリコンとの接合より弱くなりがちだが、このアプローチは依然として適切である。加えて、インターポーザはシリコン又はガラス以外の別の材料から形成することができる。例えば、インターポーザをセラミック材料から作製することができ、シリコン又は酸化ケイ素の層がその表面上に堆積される。次に、この表面を、上述したようにシリコン又はガラスのダイにプラズマ接合することができる。
【0047】
上記の説明では印刷について言及しているが、印刷は本明細書で開示の流体噴射システムの一応用例にすぎないことも理解すべきである。上述したように、印刷の場合のように目に見える証印を押す場合又はその他の印刷以外の用途に関わらず、多種多様な流体(インク、食品、化学薬品、医薬化合物、燃料等)を、本明細書で開示するような流体噴射システムを使用して様々なタイプの基板に適用することができる。
【0048】
従って、本開示は、長くて細い流体ジェットカートリッジダイを提供するものであり、このダイはカートリッジ本体に取り付けられ、カートリッジ本体(例えば、ポリマー又はその他の材料製)とカートリッジダイ(例えば、シリコン製)との間にはシリコンインターポーザが配置される。このシリコンインターポーザはシリコンダイにプラズマ接合され、また極めて狭いチャネル間隔のダイを間隔がより広いカートリッジ本体に取り付けることを可能にする扇形のチャネルを含む。プラズマ接合により、チャネルピッチが小さい流体チャネル内への接着剤のはみ出しの可能性が回避される。インターポーザ内のチャネルの形状を工夫することによって、流体ジェットダイにおける熱勾配の軽減を助けることもできる。シリコンインターポーザを流体ジェットダイにプラズマ接合するアプローチは、ダイの縮小を可能にし、ダイの脆性問題を軽減し、熱性能を改善し、明領域バンディングを軽減するのに役立ち、また流体ジェットカートリッジ、特には単一の印刷本体上に複数のダイを含むページ幅アレイの製造コストの大幅な削減を可能にする。
【0049】
上で言及した配置は本明細書で開示の原理の応用を説明するためのものであると理解されたい。請求項に記載されるような本開示の原理及び概念から逸脱することなく、多数の改変を加え得ることは当業者に明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体噴射カートリッジであって、
第1間隔の流体流路を有する本体と、
より狭い第2間隔の流体流路を有するダイと、
第1表面で前記本体に接合され、第2表面で前記ダイにプラズマ接合される、前記第1表面と前記第2表面との間に流体流路を有し、前記流路が前記本体及び前記ダイのそれぞれの流路と実質的に整列するインターポーザとを備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記第1間隔が約1000ミクロン以上であり、前記第2間隔が約400ミクロンから約1000ミクロンの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記インターポーザが約500ミクロンから約2000ミクロンの範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記インターポーザが前記カートリッジ本体に接着接合されることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記インターポーザの前記流体流路が、細長チャネル及びホールから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記インターポーザの前記流体流路が、前記第1間隔と前記第2間隔との間に延びる、傾斜を有する細長チャネルを含むことを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記インターポーザの前記流体流路が、端部を有する細長チャネルを含み、
各チャネルが前記ダイ内の細長ノズル列と実質的に位置的に対応し、
各チャネルが更に前記それぞれのノズル列の端部を越えて延びる超過領域を各端部に備えることによって、前記チャネル内の流体が前記ノズル列の端部を越えて前記ダイの末端部位の上にくるように位置決めされることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記インターポーザの前記流体流路が、前記第1間隔と前記第2間隔との間に延びる傾斜ホールを含むことを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記傾斜ホールが、前記第1表面の大きな第1開口部と、前記第2表面の小さな第2開口部と、前記第1開口部及び前記第2開口部の間で概して先細る横断面サイズとを有することを特徴とする請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記ダイがシリコン及びガラスから成る群から選択される材料で形成され、
前記インターポーザが、シリコン、ガラス及びシリコン被覆セラミックから成る群から選択される材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項11】
流体噴射カートリッジの作製方法であって、
第1表面に第1間隔を有し、第2表面により狭い第2間隔を有する流体流路を、インターポーザの前記第1表面と前記第2表面との間に作製する工程と、
前記インターポーザの前記第2表面を、実質的により狭い前記第2間隔の流体流路を有するダイの上面にプラズマ接合する工程と、
前記インターポーザの前記第1表面をカートリッジ本体に取り付ける工程とを含むことを特徴とする作製方法。
【請求項12】
前記インターポーザを前記ダイにプラズマ接合する工程は、
前記インターポーザの前記第2表面と前記ダイの前記上面とをプラズマに曝露することによって前記表面上の結合部位を活性化させ、
前記インターポーザの前記第2表面と前記ダイの上面とを押し付け合い、
前記取り付け済みのダイとインターポーザとをアニーリングすることによってその間の結合を強化することをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インターポーザ及び前記ダイがシリコン材料で形成され、
前記インターポーザの前記第2表面と前記ダイの前記上面とをプラズマに曝露する前記工程が、
前記第2表面と前記上面とを窒素プラズマに曝露することによって前記シリコン表面上のSi+結合部位を活性化させ、
前記第2表面と前記上面とを水プラズマに曝露することによって前記シリコン表面上にSiOH種を生成し、
前記第2表面と前記上面とを酸素プラズマに曝露することによって前記シリコン表面を清浄化することをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記取り付け済みのダイ及びインターポーザをアニーリングする前記工程が、前記取り付け済みのダイ及びインターポーザを約120℃に約2時間に亘って加熱することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記流体流路を作製する前記工程が、端部を有する細長チャネルを切削することを含み 、各チャネルが前記ダイ内の細長ノズル列と実質的に位置的に対応し、
各チャネルが更に前記それぞれのノズル列の端部を越えて延びる超過領域を各端部に備えることによって、前記チャネル内の流体が前記ノズル列の端部を越えて前記ダイの末端部位の上にくるように位置決めされることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
流体を噴射するための方法であって、
前記流体を第1間隔のカートリッジ流路を通してインターポーザの実質的に整列された開口部内へと方向付けする工程と、
前記流体をインターポーザ流路を通して前記インターポーザの第2表面のより狭い第2間隔の流出口に方向付けし、前記第2表面は実質的により狭い前記第2間隔の開口部を有する流体噴射ダイの上面にプラズマ接合される工程と、
前記流体を前記流体噴射ダイから噴射する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記流体をカートリッジ流路を通して方向付けする前記工程が、前記流体を約1000ミクロン以上の第1間隔のカートリッジ流路を通して方向付けすることを含み、
前記流体をインターポーザ流路を通して方向付けする前記工程が、前記流体をインターポーザ流路を通して約400ミクロン〜約1000ミクロンの範囲内のより狭い第2間隔の流出口に方向付けすることを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記流体をインターポーザ流路を通して方向付けする前記工程が、前記流体を前記第1間隔と前記第2間隔との間に傾斜して延びる細長チャネルを通して方向付けすることを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記流体をインターポーザ流路を通して方向付けする前記工程が、前記流体を、前記第1間隔と前記第2間隔との間に延びる傾斜ホールを通して方向付けすることを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記流体をインターポーザ流路を通して方向付けする前記工程が、前記流体を、対向する端部に超過領域を有する細長チャネルへと方向付けすることを含み、前記超過領域が前記ダイのノズル列の端部を越えて前記ダイの末端部位の上にくることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−509203(P2011−509203A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542212(P2010−542212)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/050608
【国際公開番号】WO2009/088510
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】