説明

流体噴射装置におけるクリーニング装置、流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング方法

【課題】部品点数の増大を抑制しつつ、ワイパーを湿らせた状態で流体噴射ヘッドに対してワイピング動作を実行できる流体噴射装置、同流体噴射装置におけるクリーニング装置及びクリーニング方法を提供する。
【解決手段】制御装置27は、吸引ポンプ25に記録ヘッド19に対する吸引動作を実行させる前の状態で、ノズル開口を複数回に亘って横切らせるようにワイパー26をノズル形成面19aに摺接させる第1のワイピング動作を実行させると共に、吸引ポンプ25が記録ヘッド19に対する吸引動作を完了した状態で、前記第1のワイピング動作を実行したワイパー26をノズル形成面19aに摺接させる第2のワイピング動作を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの流体噴射装置におけるクリーニング装置、流体噴射装置、及び流体噴射装置におけるクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に対して流体を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、流体噴射ヘッドに形成されたノズルからインク(流体)を噴射することで、用紙(媒体)に印刷処理を施すようになっている。
【0003】
また、近年では、洗浄液を含ませたワイパーを流体噴射ヘッドのノズル形成面に対して摺接させることにより、流体噴射ヘッドのノズル形成面に付着した異物を除去するウェットワイピング動作を実行可能なプリンターが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−119727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のプリンターでは、ワイパーを湿らせる洗浄液をワイパーに対して供給するための専用の部材を設けている。そのため、こうした専用の部材を設ける分だけ、部品点数が増大してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の増大を抑制しつつ、ワイパーを湿らせた状態で流体噴射ヘッドに対してワイピング動作を実行できる流体噴射装置、同流体噴射装置におけるクリーニング装置、及び同流体噴射装置におけるクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置におけるクリーニング装置は、流体をノズル形成面に形成されたノズル開口から噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置におけるクリーニング装置であって、前記流体噴射ヘッド内から前記ノズル開口を介して前記流体を吸引する吸引動作を実行可能な吸引手段と、前記ノズル形成面を払拭するために当該ノズル形成面に対して摺接するワイピング動作を実行可能なワイパーと、前記吸引手段の前記吸引動作及び前記ワイパーの前記ワイピング動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記吸引手段に前記流体噴射ヘッドに対する吸引動作を実行させる前の状態で、前記ノズル開口を複数回に亘って横切らせるように前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第1のワイピング動作を実行させると共に、前記吸引手段が前記流体噴射ヘッドに対する吸引動作を完了した状態で、前記第1のワイピング動作を実行した前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第2のワイピング動作を実行させる。
【0008】
上記構成によれば、制御手段は、第1のワイピング動作時に、ノズル開口を複数回に亘って横切らせるようにワイパーをノズル形成面に摺接させる。そして、複数回のワイピング動作により、流体噴射ヘッド内から排出させた流体をワイパーに付着させることができる。そのため、ワイパーを湿らせるための専用の部材を設けることなく、ワイパーを湿らせることができる。
【0009】
また、本発明の流体噴射装置におけるクリーニング装置において、前記制御手段は、前記第1のワイピング動作時に、前記ワイパーに対して前記ノズル開口を介して前記流体噴射ヘッド内から排出される前記流体を付着させると共に、前記第2のワイピング動作時に、前記ワイパーにおける前記流体が付着した部位を前記ノズル形成面に摺接させる。
【0010】
上記構成によれば、ワイパーが第1のワイピング動作を実行した後に、吸引手段が流体噴射ヘッドに対して吸引動作を実行し、その後、第2のワイピング動作を実行する。そのため、流体が付着していないワイパーがノズル形成面に対して第1のワイピング動作を実行することにより流体噴射ヘッド内にノズル開口を介して気泡が混入したとしても、このような気泡は吸引動作時に流体噴射ヘッド内から排出される。また、ワイパーは、第2のワイピング動作時に、流体が付着して湿った部位を用いてノズル形成面に対してワイピング動作を実行するため、このワイピング動作によって流体噴射ヘッド内にノズル開口を介して気泡が混入することが抑制される。
【0011】
また、本発明の流体噴射装置におけるクリーニング装置において、前記制御手段は、前記第2のワイピング動作が完了した時点で、前記流体噴射ヘッドに対するクリーニング動作を終了させる。
【0012】
上記構成によれば、第2のワイピング動作により流体噴射ヘッド内にノズル開口を介して気泡が混入することが抑制されているため、その後に気泡を排出するための吸引動作が不要になる。
【0013】
また、本発明の流体噴射装置におけるクリーニング装置は、前記第1のワイピング動作時に、前記ワイパーに対して前記流体が付着したか否かを検知する検知手段を更に備えた。
【0014】
上記構成によれば、ワイパーに対して流体が付着したか否かを検知手段によって検知することができるため、ワイパーを確実に湿らせた状態で流体噴射ヘッドに対してワイピング動作を実行することができる。
【0015】
また、本発明の流体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口から流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記構成のクリーニング装置とを備えた。
上記構成によれば、上記流体噴射装置におけるクリーニング装置の発明と同様の効果が得られる。
【0016】
また、本発明の流体噴射装置におけるクリーニング方法は、流体をノズル形成面に形成されたノズル開口から噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置におけるクリーニング方法であって、前記ノズル開口を複数回に亘って横切らせるようにワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第1のワイピング段階と、前記第1のワイピング段階の後に、前記流体噴射ヘッド内から前記ノズル開口を介して前記流体を吸引する吸引段階と、前記吸引段階の後に、前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第2のワイピング段階とを備えた。
【0017】
上記構成によれば、上記流体噴射装置におけるクリーニング装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のプリンターの斜視図。
【図2】記録ヘッドを下方から見た平面図。
【図3】キャリッジがホームポジションに位置したクリーニング装置の模式図。
【図4】キャリッジがホームポジションに向けて移動中のクリーニング装置の模式図。
【図5】ワイパーが第1のワイピング動作を実行中のクリーニング装置の模式図。
【図6】記録ヘッドに対する吸引動作を実行中のクリーニング装置の模式図。
【図7】吸引動作後にキャップが記録ヘッドのノズル形成面から離間した状態にあるクリーニング装置の模式図。
【図8】ワイパーが第2のワイピング動作を実行開始直後のクリーニング装置の模式図。
【図9】ワイパーが第2のワイピング動作を実行終了直前のクリーニング装置の模式図。
【図10】従来のプリンターにおいて、ワイパーが記録ヘッドのノズル形成面に対する払拭動作を完了する直前の状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の流体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、流体噴射装置としてのプリンター11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である主走査方向Xに沿って支持台13が延設されている。支持台13上には、フレーム12の背面下部(図1における後面下部)に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、記録用紙Pが主走査方向Xと直交する副走査方向Yに沿って給送されるようになっている。
【0020】
また、フレーム12内における支持台13の上方には、当該支持台13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、キャリッジ16がガイド軸15の軸線方向(主走査方向X)に沿って往復移動可能に支持されている。すなわち、キャリッジ16は、軸線方向に貫通形成された支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、このガイド軸15の軸線方向に沿って往復移動自在に支持されている。
【0021】
また、フレーム12の後壁内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回動自在に支持されている。駆動プーリ17aには、キャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリ17a,17b間には、キャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。したがって、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して主走査方向Xに移動可能となっている。
【0022】
キャリッジ16の下面側には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられると共に、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対して流体としてのインクを供給するための複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ20が着脱可能に搭載されている。図2に示すように、記録ヘッド19の下面側となるノズル形成面19aには、各色のインクを吐出するための吐出口である多数のノズル21により、副走査方向に延びる複数(本実施形態では4つ)のノズル群22B,22C,22M,22Yが形成されている。すなわち、ノズル形成面19aには、各ノズル群22B,22C,22M,22Yにより、副走査方向に沿って延びる複数のノズル列が主走査方向Xに一定の間隔をおいて形成されている。
【0023】
そして、インクカートリッジ20内のインクは、記録ヘッド19に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給される。また、記録ヘッド19のノズル形成面19aに形成された複数のノズル21からは、支持台13上に給送された記録用紙Pに対してインクが吐出(噴射)されて印刷が行われるようになっている。
【0024】
なお、フレーム12内の図1における右端部に位置する記録用紙Pと対応しないホームポジション(非印刷領域)HPには、非印刷時に記録ヘッド19のクリーニング動作を行うためのクリーニング装置23が設けられている。
【0025】
図3に示すように、クリーニング装置23は、キャップ24、吸引手段としての吸引ポンプ25、ワイパー26、及び制御手段としての制御装置27等を構成要素として備えている。
【0026】
キャップ24は、有底四角箱状をなすように形成されると共に、その底壁24aからは突部28が下方に向かって突設されている。また、突部28内には、キャップ24内からインクを排出するための排出路29が上下方向に貫通形成されている。この突部28には、可撓性材料からなる排出チューブ30の上流端が接続されると共に、この排出チューブ30の下流端は、直方体状をなす廃液容器31に挿入されている。また、キャップ24と廃液容器31との間における排出チューブ30の中間部には、キャップ24側から廃液容器31側に向かってインクを強制的に排出するためにキャップ24内を吸引する吸引ポンプ25が配設されている。また、キャップ24は、昇降機構32の駆動に基づいて記録ヘッド19のノズル形成面19aに対する当接位置と記録ヘッド19のノズル形成面19aから離間した離間位置との間で変位可能となっている。
【0027】
ワイパー26は、弾性材料(例えば、天然ゴム又は合成ゴム)により短冊状をなすように成形されている。このワイパー26は、キャップ24に対してキャリッジ16の主走査方向Xにおいて近接する位置に配置されると共に、ワイパーホルダー33の上面に対して垂直に立設されている。そして、ワイパー26は、昇降機構34の駆動に基づいてワイパーホルダー33が上下方向に昇降することにより、ワイパーホルダー33と一体となって記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して接離する方向に変位可能となっている。
【0028】
なお、ワイパー26は、キャリッジ16の副走査方向Yの幅寸法が、同方向における記録ヘッド19のノズル形成面19aの幅寸法よりも大きく設計されている。また、ワイパー26は、その先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aよりも上方に位置するように配置されている。また、ワイパー26の先端部26aに対して近接する位置には、ワイパー26の電気的な導通状態を検知するための検知手段としてのセンサー35がワイパー26の先端部26aに対して接離可能に設けられている。そして、センサー35における検出信号は、吸引ポンプ25による記録ヘッド19の吸引動作や、ワイパー26による記録ヘッド19のワイピング動作を制御する制御装置27に対して出力される。
【0029】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、制御装置27が記録ヘッド19に対するクリーニング動作を統括的に制御する際の作用に着目して以下説明する。
【0030】
まず、図4に示すように、制御装置27は、昇降機構34を駆動させてワイパーホルダー33を鉛直下方に下降させることにより、ワイパー26の先端部26aをその高さ位置が記録ヘッド19のノズル形成面19aよりも鉛直下方となるようにする。換言すると、制御装置27は、記録ヘッド19を搭載したキャリッジ16が印刷領域とホームポジションHPとの間を主走査方向Xに移動する際に、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aに摺接することがないように、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19の移動経路内から鉛直下方に退避させる。そして、その時点において印刷領域内に位置しているキャリッジ16を、ホームポジションHPに向けて主走査方向Xに移動させると共に、そのキャリッジ16がホームポジションHPまで至ったときに、そのキャリッジ16の移動を停止させる。
【0031】
すると次に、図5に示すように、第1のワイピング段階として、制御装置27は、再び昇降機構34を駆動させてワイパーホルダー33を鉛直上方に上昇させ、ワイパー26の先端部26aを、その高さ位置が記録ヘッド19のノズル形成面19aよりも鉛直上方となるようにする。換言すると、制御装置27は、記録ヘッド19を搭載したキャリッジ16が印刷領域とホームポジションHPとの間を主走査方向Xに移動する際に、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aに摺接するように、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19の移動経路内に鉛直下方から進出させる。そして、その時点においてホームポジションHPに位置しているキャリッジ16を、印刷領域に向けて主走査方向Xに移動させる。すると、ワイパー26は、その先端部26aが弾性変形を伴いながら記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接することにより、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して、ワイピング動作(第1のワイピング動作)を実行する。
【0032】
この場合、図5に示すように、制御装置27は、記録ヘッド19に形成された複数のノズル群22B,22C,22M,22Yからなる全てのノズル列のノズル開口をワイパー26が複数回に亘って横切るように、キャリッジ16を主走査方向Xに往復移動させる。すなわち、ノズル列の延びる方向と直交する主走査方向Xにおいて一端側(図5では左端側)から他端側(図5では右端側)に向けて、まずノズル群22B、次にノズル群22C、その次にノズル群22M、そして最後にノズル群22Yという順番で、全てのノズル群(ノズル列)のノズル開口を次々に横切るように、キャリッジ16を主走査方向Xに移動させる。
【0033】
ここで、ワイパー26が横切る各ノズル群22B,22C,22M,22Yにインクが充填されていると、ワイパー26の先端部26aは、これらのノズル群22B,22C,22M,22Yのノズル開口を通じて記録ヘッド19内のインクに対して接触するようになる。そして、記録ヘッド19内のインクは、当該インクの表面張力に基づいてワイパー26の先端部26aを伝うように流動することにより、記録ヘッド19内からノズル群22B,22C,22M,22Yを通じて排出される。その結果、図5において同図の一部を拡大して示すように、記録ヘッド19内から排出されたインクは、ワイパー26の先端部26aに対して付着するようになる。
【0034】
なお、記録ヘッド19における各ノズル群22B,22C,22M,22Yのうち気泡や異物が混入して吐出不良となっているノズル群(図5では左端のノズル群22Bと左端から3番目のノズル群22M)のノズル開口からは、ワイパー26の先端部26aを接触させてもインクは排出されないか、排出されたとしても極微量しか排出されない。そのため、こうした吐出不良のノズル群22B,22Mを横切るようにキャリッジ16を主走査方向Xに移動させても、ワイパー26の先端部26aに所望どおりのインクを付着させることは難しい。
【0035】
しかし、本実施形態では、吐出不良のノズル群22B,22M以外の吐出不良ではないノズル群22C,22Yを含む全てのノズル群22B,22C,22M,22Yのノズル開口をワイパー26が横切るように、キャリッジ16を主走査方向Xに移動させている。したがって、吐出不良ではないノズル群22C,22Yのノズル開口との接触を通じて、ワイパー26の先端部26aにはインクが付着するようになる。
【0036】
しかも、本実施形態においては、以上の全てのノズル群22B,22C,22M,22Yのノズル開口をワイパー26が複数回に亘って横切るように、キャリッジ16を主走査方向Xに往復移動させる。具体的には、図5に示す状態から記録ヘッド19がさらに左方へ移動してワイパー26の先端部26aがノズル形成面19aから離間すると、制御装置27は、昇降機構34を駆動させてワイパーホルダー33を鉛直下方に下降させる。そして、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aに摺接することがないように、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19の移動経路内から鉛直下方に退避させた後、キャリッジ16をホームポジションHPに向けて主走査方向Xに移動させ、ホームポジションHPに至ると、その移動を停止させる。
【0037】
そして次に、制御装置27は、再び昇降機構34を駆動させてワイパーホルダー33を鉛直上方に上昇させる。そして、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aに摺接するように、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19の移動経路内に鉛直下方から進出させる。その後、再び図5に示すように、記録ヘッド19の全てのノズル群22B,22C,22M,22Yのノズル開口をワイパー26が横切るようにキャリッジ16を主走査方向Xに移動させる。以上のように、制御装置27は、全てのノズル群22B,22C,22M,22Yのノズル開口をワイパー26が複数回に亘って横切るように、キャリッジ16を主走査方向Xに往復移動させる。
【0038】
そして、図6に示すように、制御装置27は、センサー35がワイパー26の先端部26aに対して接触した状態で、ワイパー26の先端部26aにおける電気的な導通状態を検出した場合に、ワイパー26の先端部26aに導電性を有するインクが付着した旨を判別する。そして、吸引段階として、制御装置27は、記録ヘッド19内からノズル群22B〜22Yを通じてインクと共に気泡を除去するべく、吸引ポンプ25を駆動させることにより記録ヘッド19に対する吸引動作を実行させる。
【0039】
すなわち、吸引段階において、制御装置27は、まずキャリッジ16を主走査方向Xに移動させることにより、キャリッジ16に搭載された記録ヘッド19をキャップ24に対して上下方向で対向する位置まで移動させる。そして、この状態で、制御装置27は、昇降機構32を駆動させてキャップ24を記録ヘッド19に対して接近するように上昇させることにより、キャップ24の開口縁が記録ヘッド19のノズル形成面19aに密着して密封した空間域S1を形成する。
【0040】
続いて、制御装置27は、吸引ポンプ25を駆動させることにより、この空間域S1から空気を排出させることにより当該空間域S1を減圧させる。そして、この空間域S1が減圧されると、記録ヘッド19内からはノズル群22B〜22Yを通じて気泡がインクと共に排出される。
【0041】
この場合、キャップ24と記録ヘッド19のノズル形成面19aとの間の空間域S1には、記録ヘッド19内からノズル群22B〜22Yを通じて排出されたインクが貯留される。なお、この場合に、空間域S1内に貯留されるインクの液面高さは記録ヘッド19のノズル形成面19aに付着する程ではない(図6参照)。その後、図7に示すように、制御装置27は、昇降機構32を駆動させることにより、キャップ24を下方に移動させて記録ヘッド19のノズル形成面19aから離間させる。このとき、キャップ24内に残留しているインクは空吸引される。
【0042】
そして次に、図8に示すように、制御装置27は、昇降機構34を駆動させてワイパーホルダー33を鉛直上方に上昇させることにより、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して鉛直上方への突出量を増大させるように配置させる。換言すると、制御装置27は、ワイパー26における記録ヘッド19の移動経路内への進出量を増大させる。そして、この状態で、第2のワイピング段階として、制御装置27は、ワイパー26を主走査方向Xに横切らせるように移動させると、ワイパー26の先端部26aが弾性変形を伴いながら記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接することにより、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してワイピング動作(第2のワイピング動作)を実行する。
【0043】
すなわち、本実施形態では、図9に示すように、ワイパー26は、インクが付着した先端部26aを記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接させつつ、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してワイピング動作(第2のワイピング動作)を実行する。そのため、ワイパー26は、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対するワイピング動作時には、先端部26aに付着したインクの液面と記録ヘッド19内のインクの液面とが融合することにより、ワイパー26の先端部26aと記録ヘッド19のノズル群22B〜22Yのノズル開口との間においてインクが連続した形態をなすようになる。そのため、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19内にノズル群22B〜22Yを通じて空気を押し込み難くなる。
【0044】
なお、ワイパー26の先端部26aに対してインクを付着させた状態では、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接させる際の摺接抵抗が低減される。そのため、上記のように、ワイパー26の先端部26aが記録ヘッド19のノズル形成面19aを強固に払拭したとしても、記録ヘッド19のノズル形成面19aを損傷することが回避される。
【0045】
また、第2のワイピング動作の場合、ワイパー26は、当該ワイパー26の先端部26aを上記の第1のワイピング動作で湿らせる(濡らす)場合と比較して、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接する際のワイパー26の弾性変形量が増大している。そのため、ワイパー26の先端部26aは、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して強固に密着するため、記録ヘッド19のノズル形成面19aに付着したインクを確実に払拭するようになっている。
【0046】
逆に第1のワイピング動作では、第2のワイピング動作時と比較して、ワイパー26の弾性変形量は少ない。第1のワイピング動作では、ワイパー26をインクで濡らすのが目的のため、ワイパー26をノズル形成面19aに対して強固に密着させず、ワイパー26およびノズル形成面19aの損傷の抑制や、払拭時にキャリッジ16を動かす負荷を低減させることが可能となる。
【0047】
ここで、記録ヘッド19からのインクの吸引排出を実行する前の状態、すなわち、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してインクが付着していない状態で、ワイパー26が記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してワイピング動作を1回実行した場合と比較する。この場合、ワイピング動作1回では、ワイパー26にインクが付着することがない。逆に、こうした状態でのワイピング動作を複数回行うことで、ノズル21内のインクのメニスカスが破壊されてしまう。しかし、本願においては第1のワイピング動作の後に吸引動作を行っているので、インクのメニスカスが破壊されていても強制的にインクを吸引でき、メニスカスは回復される。
【0048】
ここで、図10に示すように、ワイパー26の先端部26aにインクを付着させていない状態で、ワイパー26の先端部26aを記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接させたとする。すると、ワイパー26の先端部26aと記録ヘッド19のノズル群22B〜22Yのノズル開口との間に空気を介在させた状態で、ワイパー26の先端部26aがノズル群22B〜22Yを通じて記録ヘッド19内に空気を押し込むこととなる。その結果、記録ヘッド19内にはノズル群22B〜22Yを通じて気泡が混入してしまう虞があった。ノズル群22B〜22Yに気泡が混入すると、そのノズルは吐出不良となる。そのため、その吐出不良を解消するために、再度吸引動作を実行する必要がある。これにより、クリーニング動作の時間が長くなり、インクの消費量も増えてしまう。
【0049】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)制御装置27は、第1のワイピング動作時に、ノズル群22Mのノズル開口を複数回に亘って横切らせるようにワイパー26をノズル形成面19aに摺接させる。そして、複数回のワイピング動作により、記録ヘッド19内から排出させたインクをワイパー26に付着させることができる。そのため、ワイパー26を湿らせるための専用の部材を設けることなく、ワイパー26を湿らせることができる。
【0050】
(2)ワイパー26が第1のワイピング動作を実行した後に、吸引ポンプ25が記録ヘッド19に対して吸引動作を実行し、その後、第2のワイピング動作を実行する。そのため、インクが付着していないワイパー26がノズル形成面19aに対してワイピング動作を実行することにより記録ヘッド19内にノズル群22B〜22Yを介して気泡が混入したとしても、このような気泡は吸引動作時に記録ヘッド19内から排出される。また、ワイパー26は、第2のワイピング動作時においてインクが付着して湿った部位を用いてノズル形成面19aに対してワイピング動作を実行するため、このワイピング動作によって記録ヘッド19内にノズル群22B〜22Yを介して気泡が混入することが抑制される。
【0051】
(3)制御装置27は、第2のワイピング動作が完了した時点で、記録ヘッド19に対するクリーニング動作を終了させる。そして、第2のワイピング動作により記録ヘッド19内にノズル群22B〜22Yを介して気泡が混入することが抑制されているため、その後に気泡を排出するための吸引動作が不要になる。
【0052】
(4)ワイパー26に対してインクが付着したか否かをセンサー35によって検知することができるため、ワイパー26を確実に湿らせた状態で記録ヘッド19に対して第1のワイピング動作を実行することができる。また、ワイパー26にインクが付着するための第1のワイピング動作の回数を最小限に抑えることができ、ワイパー26や記録ヘッドの損傷を抑制できる。
【0053】
(5)ワイパー26は、第1のワイピング動作時において、記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接する際の弾性変形量が記録ヘッド19のノズル形成面19aに対する損傷を抑制可能な程度となるように設定されている。その一方で、ワイパー26の先端部26aは、このノズル群のノズル開口を通じて記録ヘッド19内のインクに対して接触することにより、記録ヘッド19内のインクを当該インクの表面張力に基づいてワイパー26の先端部26aを伝うように流動させる。そのため、ワイパー26が記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して強固に密着しない場合であっても、記録ヘッド19内からノズル群22B〜22Yを通じて排出させることができる。
【0054】
・上記実施形態において、制御装置27が記録ヘッド19のノズル21内におけるインクのドット抜け(吐出不良のノズル)の度合いを検出するように構成されると共に、これらのノズル21内におけるインクのドット抜けの検出結果に応じて、第1のワイピング動作時におけるワイパー26の往復移動の回数を変更するようにしてもよい。すなわち、記録ヘッド19のノズル21内におけるインクのドット抜けの度合いが大きい場合には、記録ヘッド19のノズル21内におけるインクのドット抜けの度合いが小さい場合と比較して、第1のワイピング動作時におけるワイパー26の往復移動の回数を増大させるようにしてもよい。
【0055】
・上記実施形態において、ワイパー26の先端部26aの画像解析を行うセンサーを検知手段として設けると共に、このセンサーによる画像の解析結果に応じてワイパー26の先端部26aにインクが付着したか否かを検知するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態において、制御装置27は、第2のワイピング動作を実行した後に、記録ヘッド19に対するクリーニング動作として更なる動作を実行するようにしてもよい。
・上記実施形態において、制御装置27は、第1のワイピング動作として、記録ヘッド19に設けられた複数のノズル群22B〜22Yの全てのノズル開口を横切らせずに、一部のノズル群のノズル開口を横切らせるようにワイパー26を記録ヘッド19のノズル形成面19aに対して摺接させるようにしてもよい。この場合、ドット抜けのあるノズル群からはインクが排出されない場合があるので、ドット抜けの検出結果に応じて、ドット抜けをしていないノズル群とするのがよい。
【0057】
特に、記録ヘッド19に形成された複数のノズル群22B〜22Yのうち、最もキャップ24に対して近接して配置された単一のノズル群をワイパー26に対して複数回に亘って横切らせるようにキャリッジ16を主走査方向Xに往復移動させたとすると、ワイパー26は、互いに異なる色のインクを収容した複数のノズル群を横切ることがない。したがって、ノズル群から排出させたインクをワイパー26の先端部26aに対して付着させる際に、各ノズル群に収容されたインクが互いに混じり合うことを回避できる。
【0058】
・上記実施形態において、記録ヘッド19と支持台13との間の上下方向の距離を変更するように記録ヘッド19を上下方向に昇降させるようにしてもよい。この構成によれば、ワイパー26が記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してワイピング動作を実行する際のワイパー26の弾性変形量を調整することができる。
【0059】
・上記実施形態において、記録ヘッド19に対するワイピング動作時に、ワイパーホルダー33をキャリッジ16の主走査方向Xに移動させて、ワイパー26を記録ヘッド19のノズル形成面19aに対してキャリッジ16の主走査方向Xに相対変位させるようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態において、流体噴射装置として、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。微小量の流滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体消費装置に流用可能である。なお、流滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体消費装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインク等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。流体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
11…流体噴射装置としてのプリンター、23…クリーニング装置、25…吸引手段としての吸引ポンプ、26…ワイパー、27…制御手段としての制御装置、35…検知手段としてのセンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体をノズル形成面に形成されたノズル開口から噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置におけるクリーニング装置であって、
前記流体噴射ヘッド内から前記ノズル開口を介して前記流体を吸引する吸引動作を実行可能な吸引手段と、
前記ノズル形成面を払拭するために当該ノズル形成面に対して摺接するワイピング動作を実行可能なワイパーと、
前記吸引手段の前記吸引動作及び前記ワイパーの前記ワイピング動作を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記吸引手段に前記流体噴射ヘッドに対する吸引動作を実行させる前の状態で、前記ノズル開口を複数回に亘って横切らせるように前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第1のワイピング動作を実行させると共に、前記吸引手段が前記流体噴射ヘッドに対する吸引動作を完了した状態で、前記第1のワイピング動作を実行した前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第2のワイピング動作を実行させることを特徴とする流体噴射装置におけるクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置において、
前記制御手段は、前記第1のワイピング動作時に、前記ワイパーに対して前記ノズル開口を介して前記流体噴射ヘッド内から排出される前記流体を付着させると共に、前記第2のワイピング動作時に、前記ワイパーにおける前記流体が付着した部位を前記ノズル形成面に摺接させることを特徴とする流体噴射装置におけるクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置において、
前記制御手段は、前記第2のワイピング動作が完了した時点で、前記流体噴射ヘッドに対するクリーニング動作を終了させることを特徴とする流体噴射装置におけるクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置において、
前記第1のワイピング動作時に、前記ワイパーに対して前記流体が付着したか否かを検知する検知手段を更に備えたことを特徴とする流体噴射装置におけるクリーニング装置。
【請求項5】
ノズル形成面に形成されたノズル開口から流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のクリーニング装置と
を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
流体をノズル形成面に形成されたノズル開口から噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置におけるクリーニング方法であって、
前記ノズル開口を複数回に亘って横切らせるようにワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第1のワイピング段階と、
前記第1のワイピング段階の後に、前記流体噴射ヘッド内から前記ノズル開口を介して前記流体を吸引する吸引段階と、
前記吸引段階の後に、前記ワイパーを前記ノズル形成面に摺接させる第2のワイピング段階と
を備えたことを特徴とする流体噴射装置におけるクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61635(P2012−61635A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205922(P2010−205922)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】