説明

流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法

【課題】交換後のヘッドが出力する色を非交換対象のヘッドの色に近づけること。
【解決手段】ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘ
ッドと、を有する流体噴射装置の調整方法であって、前記非交換対象ヘッドから媒体に流
体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該基準濃度測定用パターンの濃度を測定
することと、前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターン
と、前記交換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基
づいて、濃度と電圧変化との関係を求めることと、前記濃度と前記電圧変化との関係に基
づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定用パターンの濃度に対応する前記電圧変
化を特定することと、を含む流体噴射装置の調整方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のヘッドを千鳥状に配置し、搬送される媒体に液体を噴射して画像を形成するライ
ン型のインクジェットプリンタが考えられている。このようなプリンタは、各ヘッドの一
部同士が媒体の搬送方向について重なるように配置される。
ところでこれらのヘッドは、ヘッド毎に最適な駆動電圧が異なり、これらはヘッド毎に
求める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240127号公報
【特許文献2】特開2006−264069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のようなライン型のインクジェットプリンタでは、ノズル列方向に複数のヘッドが
並ぶことになるが、これらのヘッドは様々な製造誤差から個々に流体の噴射特性が異なる
ことがある。このような場合に、例えば同じ駆動電圧を各ヘッドに印加すると、ヘッド毎
に異なる濃度の画像が形成されてしまう。このため、これらのヘッドは基準濃度を出力で
きるように、対応する駆動電圧が調整されている。
このようなプリンタにおいて、複数のヘッドのうち一つのヘッドを交換する必要が生ず
ることがある。その場合、交換後のヘッドが、非交換対象のヘッドの基準の濃度とほぼ同
じ濃度を出力できるようにしておかないと、交換後のヘッドが担う領域の色が他のヘッド
の担う領域の色と異なることとなる。よって、交換後のヘッドが出力する色を非交換対象
のヘッドが出力する色に近づけることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、交換後のヘッドが出力する色
を非交換対象のヘッドの色に近づけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘッドと、を
有する流体噴射装置の調整方法であって、
前記非交換対象ヘッドから媒体に流体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該
基準濃度測定用パターンの濃度を測定することと、
前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターンと、前記交
換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基づいて、濃
度と電圧変化との関係を求めることと、
前記濃度と前記電圧変化との関係に基づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定
用パターンの濃度に対応する前記電圧変化を特定することと、
を含む流体噴射装置の調整方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】用語の説明図である。
【図2】印刷システム100の構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。
【図4】ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。
【図5】ヘッドの構造を説明する図である。
【図6】駆動信号を説明する図である。
【図7】ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。
【図8】本実施形態における駆動電圧設定方法について説明するためのフローチャートである。
【図9】駆動電圧設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本実施形態における基準濃度測定用パターンを示す図である。
【図11】得られた基準濃度測定用パターンの濃度を示す図である。
【図12】第1テストパターンと第2テストパターンの説明図である。
【図13】第2ヘッド41Bの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表である。
【図14】求められた一次式の係数a,bを示す表である。
【図15】第2ヘッド41Bのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。
【図16】第2ヘッド41Bに設定される適正駆動電圧である。
【図17】複数のサイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。
【図18】経過時間と濃度との関係を示すグラフである。
【図19】プリンタドライバによる処理の説明図である。
【図20】図20Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図であり、図20Bは、濃度むらが発生したときの説明図であり、図20Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。
【図21】補正値取得処理の流れを示す図である。
【図22】補正用パターンCPの説明図である。
【図23】指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。
【図24】図24Aは、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図であり、図24Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図えある。
【図25】メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。
【図26】ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘッドと、を
有する流体噴射装置の調整方法であって、
前記非交換対象ヘッドから媒体に流体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該
基準濃度測定用パターンの濃度を測定することと、
前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターンと、前記交
換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基づいて、濃
度と電圧変化との関係を求めることと、
前記濃度と前記電圧変化との関係に基づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定
用パターンの濃度に対応する前記電圧変化を特定することと、
を含む流体噴射装置の調整方法。
このようにすることで、交換後のヘッドが出力する色を非交換対象のヘッドの色に近づ
けることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置の調整方法であって、前記非交換対象ヘッドは複数のヘッドである
ことが望ましい。また、前記基準濃度測定用パターンは、全ての前記非交換対象ヘッドに
よって形成されることが望ましい。また、前記基準濃度測定用パターンは、前記複数の非
交換対象ヘッドのうち1つの非交換対象ヘッドによって形成されてもよい。また、前記交
換対象ヘッドに隣接する前記非交換対象ヘッドを用いて、前記基準濃度測定用パターンを
測定することとしてもよい。
【0012】
また、前記交換対象ヘッドと前記非交換対象ヘッドは、それぞれ、前記流体を噴射する
ノズルが並ぶノズル列を含み、前記交換対象ヘッドと前記非交換対象ヘッドは、前記ノズ
ルが並ぶ方向に並ぶことが望ましい。また、前記媒体の搬送方向に並ぶ画素からなる画素
列毎の濃度補正を行うための補正用パターンを前記媒体に形成することと、前記補正用パ
ターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求めることと、を
さらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎に
測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められることが望ましい。
このようにすることで、交換後のヘッドが出力する色を非交換対象のヘッドの色に近づ
けることができる。
【0013】
ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘッドと、を
有する流体噴射装置の調整方法であって、
前記非交換対象ヘッドから媒体に流体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該
基準濃度測定用パターンの濃度を測定することと、
前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターンと、前記交
換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基づいて、濃
度と電圧変化との関係を求めることと、
前記濃度と前記電圧変化との関係に基づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定
用パターンの濃度に対応する前記電圧変化を特定することと、
を含む流体噴射装置の製造方法。
このようにすることで、交換後のヘッドが出力する色を非交換対象のヘッドの色に近づ
けることができる。
【0014】
===実施形態===
<用語の説明>
まず、本実施形態を説明する際に用いられる用語の意味を説明する。
図1は、用語の説明図である。
【0015】
「印刷画像」とは、用紙上に印刷された画像である。インクジェットプリンタの印刷画
像は、用紙上に形成された無数のドットから構成されている。
「ドットライン」とは、ヘッドと用紙とが相対移動する方向(移動方向)に並ぶドット
の列である。後述の実施形態のようなラインプリンタの場合、「ドットライン」は、用紙
の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。一方、キャリッジに搭載されたヘッドによって
印刷するシリアルプリンタの場合、「ドットライン」は、キャリッジの移動方向に並ぶド
ットの列を意味する。移動方向と垂直な方向に多数のドットラインが並ぶことによって、
印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるドットラインの
ことを「第nドットライン」と呼ぶ。
【0016】
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、256
階調の画像データや、2階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。また、画
像データは、後述する印刷解像度へ変換前の画像データを指すことも、変換後の画像デー
タを指すこともある。
【0017】
「印刷画像データ」とは、画像を用紙に印刷するときに用いられる画像データである。
プリンタが2階調でドットの形成を制御する場合、2階調の印刷画像データは、各画素に
おけるドットの有無を示すことになる。また、プリンタが4階調でドットの形成(大ドッ
ト・中ドット・小ドット・ドット無し)を制御する場合、4階調の印刷画像データは、印
刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになる。
「読取画像データ」とは、スキャナによって読み取られた画像データである。
【0018】
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されること
によって画像が構成される。
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すよう
に、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。
【0019】
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。後述する実施形態において、
ハーフトーン処理前であれば256階調などの多階調のデータを示す。また、ハーフトー
ン処理後の2階調の印刷画像データの場合、各画素データは、1ビットデータになり、あ
る画素のドットの有無を示すことになる。また、ハーフトーン処理後の4階調の印刷画像
データの場合、各画素データは、2ビットデータになり、ある画素のドット形成状態(大
ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
【0020】
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した用紙上の領域である。例えば、印刷
画像データの解像度が360×360dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/360
インチの正方形状の領域になり、用紙上の画素である。
【0021】
「列領域」とは、画素列に対応した用紙上の領域であり、用紙上の画素列である。例え
ば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、列領域は、1/360イン
チ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した用紙上の
領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味
する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「
列領域」は、ドットラインの形成目標位置でもある。正確に列領域にドットラインが形成
される場合、そのドットラインはラスタラインに相当する。後者の場合の「列領域」は、
読取画像データ上の画素列が読み取られた用紙上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い
換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する用紙上の位置でもある。図に示すよう
に、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nドット
ラインの形成目標位置になる。
【0022】
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す
画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラス
タラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像におい
て、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
【0023】
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの
製造誤差の影響によって第2ドットラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃
度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さく
なった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度むらや濃度むら補正方法を説
明する必要があるため、本実施形態では、「ドットライン」、「画素列」、「列領域」等
の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、
通常の技術常識に沿って適宜解釈して良い。
【0024】
また、以下の説明において、階調値が高いときに濃度が高く、階調値が低いときに濃度
が低いものとして説明を行う。また、説明中、濃度が高い場合は明度が低い場合に対応す
る。
【0025】
<印刷システムについて>
図2は、印刷システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の印刷システ
ム100は、図2に示すように、プリンタ1と、コンピュータ110と、スキャナ120
とを有するシステムである。
【0026】
プリンタ1は、流体としてのインクを媒体に噴射して該媒体に画像を形成(印刷)する
流体噴射装置であり、本実施形態ではカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1
は、用紙、布、フィルムシート等の複数種の媒体に画像を印刷することが可能である。な
おプリンタ1の構成については後述する。
【0027】
コンピュータ110は、インターフェース111と、CPU112と、メモリ113を
有する。インターフェース111は、プリンタ1及びスキャナ120との間でデータの受
け渡しを行う。CPU112は、コンピュータ110の全体的な制御を行うものであり、
当該コンピュータ110にインストールされた各種プログラムを実行する。メモリ113
は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。コンピュータ110にインストールさ
れたプログラムの中には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷
データに変換するためのプリンタドライバや、スキャナ120を制御するためのスキャナ
ドライバがある。そしてコンピュータ110は、プリンタドライバによって生成された印
刷データをプリンタ1に出力する。
【0028】
スキャナ120は、スキャナコントローラ125と、読取キャリッジ121とを有する
。スキャナコントローラ125は、インターフェース122、CPU123、及びメモリ
124を有する。インターフェース122は、コンピュータ110との間で通信を行う。
CPU123は、スキャナ120の全体的な制御を行う。例えば読取キャリッジ121を
制御する。メモリ124は、コンピュータプログラム等を記憶する。読取キャリッジ12
1は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する不図示の3つのセ
ンサ(CCDなど)を有する。
【0029】
以上の構成により、スキャナ120は、不図示の原稿台に置かれた原稿に光を照射し、
その反射光を読取キャリッジ121の各センサにより検出し、前記原稿の画像を読み取っ
て、当該画像の色情報を取得する。そして、インターフェース122を介してコンピュー
タ110のスキャナドライバに向けて画像の色情報を示すデータ(読取データ)を送信す
る。
【0030】
<プリンタの構成>
図3は、プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。ここ
では、図2のブロック図も参照しつつプリンタの構成について説明する。
【0031】
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントロ
ーラ60を有する。コントローラ60は、コンピュータ110と接続するためのインター
フェース61、演算装置であるCPU62、記憶部に相当するメモリ63、及び、各ユニ
ットを制御するためのユニット制御回路64を含む。
【0032】
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントロ
ーラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コ
ントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニット
を制御し、用紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視され
ており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は
、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0033】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向とい
う)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側ローラ22A及び
下流側ローラ22Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流
側ローラ22A及び下流側ローラ22Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙された用
紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される
。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬
送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙
される。なお、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている

【0034】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット
40は、搬送中の用紙Sに対してインクを吐出することによって、用紙Sにドットを形成
し、画像を用紙Sに印刷する。本実施形態のプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッド
ユニット40は紙幅分のドットを一度に形成することができる。
【0035】
駆動信号生成回路70は、ピエゾ素子PZTに印加するための駆動信号を生成する。本
実施形態では、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fの6つのヘッドが用いられ、各ヘッ
ドにはそれぞれ別の駆動信号が供給される。そして、1つの駆動信号は供給されるヘッド
の全てのノズル列で共通の駆動信号として用いられる。
【0036】
駆動信号生成回路70は、6つの駆動信号COM1〜COM6を生成して出力する。ま
た、各駆動信号の駆動パルスはそれぞれ振幅などのパラメータの設定ができるようになっ
ている。
【0037】
図4は、ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すよ
うに、紙幅方向に沿って、複数のヘッド41が千鳥列状に並んでいる。尚、ここでは、下
面からしか見ることができないノズル列を説明の容易のために上部から観察可能に図示し
ている。
【0038】
各ヘッドには、不図示であるが、ブラックインクノズル列NK、シアンインクノズル列
NC、マゼンタインクノズル列NM、及び、イエローインクノズル列NYが形成されてい
る。各ノズル列は、インクを吐出するノズルを複数個(ここでは、360個)備えている
。各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチ(ここでは、3
60dpi)で並んでいる。また、各ヘッド間におけるノズル同士は、端部の8つのノズ
ル同士が搬送方向について重なるように、言い換えると、紙幅方向を軸とした座標につい
て同じ座標になるように並んでいる。
【0039】
図5は、ヘッドの構造を説明する図である。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第6
ヘッド41Fが設けられている。これらの構造は、全てほぼ共通であるので、ここでは、
第1ヘッド41Aの構造について説明する。図には、ノズルNz、ピエゾ素子PZT、イ
ンク供給路402、ノズル連通路404、及び、弾性板406が示されている。
【0040】
インク供給路402には、不図示のインクタンクからインク滴が供給される。そして、
これらのインク滴等は、ノズル連通路404に供給される。ピエゾ素子PZTには、後述
する駆動信号の駆動パルスが印加される。駆動パルスが印加されると、駆動パルスの信号
に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板406を振動させる。そして、駆動パルスの
振幅に対応する量のインク滴がノズルNzから吐出されるようになっている。
【0041】
図6は、駆動信号を説明する図である。本実施形態では、ヘッドが6個設けられている
ため、駆動信号も第1駆動信号COM1〜第6駆動信号COM6が出力される。尚、後述
する駆動電圧設定処理において、第1駆動信号COM1〜第6駆動信号COM6における
第2駆動パルスPS2の振幅が若干異なることになるものの、形状はほぼ同じであるので
、ここでは第1駆動信号COM1を例に駆動信号の説明を行う。
【0042】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期Tごとに繰り返し生成される。繰り返し周期で
ある期間Tは、用紙Sが1画素領域分搬送される間の期間に対応する。例えば、搬送方向
の印刷解像度が360dpiの場合、期間Tは、用紙Sが1/360インチ搬送されるた
めの期間に相当する。そして、印刷データに含まれる画素データに基づいて、期間Tに含
まれる各区間の駆動パルスPS1又はPS2がピエゾ素子PZTに印加されることによっ
て、1つの画素領域内にドットが形成されたり、ドットが形成されないようにすることが
できる。
【0043】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期における区間T1で生成される第1駆動パルス
PS1と、第2駆動パルスPS2を有する。第1駆動パルスPS1は、微振動パルスであ
り、ノズルのインク面(インクメニスカス)を微振動させるための駆動パルスである。こ
のパルスが印加される場合には、ノズルからインクは噴射されない。一方、第2駆動パル
スPS2は、インク噴射用のパルスであり、ノズルからインクを噴射させるための駆動パ
ルスである。このパルスが印加される場合には、ノズルからインクが噴射される。
【0044】
図には、第2駆動パルスPS2の振幅としてVhが示されている。この振幅を大きくす
ると、大きなサイズのインク滴が噴射されることになり、振幅を小さくすると小さなサイ
ズのインク滴が噴射されることになる。よって、後述する手法により、この振幅を補正し
て設定することにより、所望のサイズのインク滴を噴射することができる。そして、所望
の濃度の印刷を行うことができるようになっている。尚、以下の説明において、このよう
にインクを噴射するための駆動パルスの振幅Vhは「電圧変化量」に相当し、ここでは説
明の容易のために駆動電圧Vhと呼ぶ。
【0045】
プリンタの製品出荷時においては、第1駆動信号COM1から第6駆動信号COM6の
それぞれの第2駆動パルスPS2の駆動電圧は適切に調整されている。すなわち、これら
の駆動信号は、それぞれの適正駆動電圧に設定されている。そして、対応するヘッドから
インクを噴射した場合、印刷物が基準濃度にほぼ一致するようになっている。
【0046】
図7は、ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。ここでは、説明の簡略化のた
め、ヘッドユニット40における2個のヘッド(第1ヘッド41A、第2ヘッド41B)
のみが示されている。また、説明の簡略化のため、各ヘッドにはブラックインクノズル列
NKだけが設けられているものとする。以下の説明において、搬送方向のことを「x方向
」と呼び、紙幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。
【0047】
各ヘッドのブラックインクノズル列は、1/360インチ間隔で紙幅方向(y方向)に
並ぶノズルから構成されている。各ノズルについて、図中の上から順にノズルの番号が付
されている。
【0048】
なお、搬送中の用紙Sに対して各ノズルから断続的にインク滴が吐出されることによっ
て、各ノズルは、用紙に対応するドットラインを形成する。例えば、ノズル♯1は第1ド
ットラインを用紙上に形成する。各ドットラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成さ
れる。
【0049】
第1ヘッド41Aのブラックインクノズル列NKのノズル#353〜#360と、第2
ヘッド41Bのブラックインクノズル列NKのノズル#1〜#8は、搬送方向について一
致するように配置されている。そして、第1ヘッド41Aの#363〜#356は、第3
53ドットライン〜第356ドットラインを形成し、第2ヘッド41Aの#5〜#8は、
第357ドットライン〜第360ドットラインを形成する。このようにして、重複するノ
ズルについてドットラインを形成するノズルが予め決められている。つまり、継ぎ目ノズ
ルにおいて、ドットを形成するノズルとドットを形成しないノズルが予め決められている

【0050】
このようなプリンタにおいて、一つ又は複数のヘッドが不調となったり、故障する場合
がある。このような場合には、そのヘッドを新たなヘッドと交換する必要が生ずる。しか
しながら、駆動信号を印加したときのヘッドからの流体の噴射特性には個体差がある。例
えば、同じ駆動信号を印加した場合であっても、あるヘッドではより大きなサイズのイン
ク滴を噴射してしまう場合もあるし、小さなサイズのインク滴を噴射してしまう場合もあ
り得る。そうすると、交換されたヘッドが基準濃度を出力できるように、対応する駆動信
号を調整する必要が生ずる。
【0051】
ここでは、第2ヘッド41Bを交換することとして、交換後の第2ヘッド41Bに印加
する駆動信号の適正駆動電圧を求める方法について説明する。尚、第2ヘッド41Bは交
換対象ヘッドに相当し、第1ヘッド41A及び第3ヘッド41Cは非交換対象ヘッドに相
当する。
【0052】
図8は、本実施形態における駆動電圧設定方法について説明するためのフローチャート
である。まず、駆動電圧設定処理(S102)が行われる。
【0053】
図9は、駆動電圧設定処理を説明するためのフローチャートである。駆動電圧設定処理
において、第2ヘッド41B以外(第1ヘッド41A、及び、第3ヘッド41C〜第6ヘ
ッド41F)にそれぞれ対応する駆動信号が印加され、基準濃度測定用パターンが形成さ
れる(S202)。
【0054】
図10は、本実施形態における基準濃度測定用パターンを示す図である。図には、第1
ヘッド41A〜第6ヘッド41Fが示されている。但し、第2ヘッド41Bは、交換対象
ヘッドであるので破線で示されている。尚、ここでも、ノズル列の位置が分かるように、
本来上部からは視認できないノズル列を視認できるように示している。
【0055】
また、図には、第2ヘッド41B以外の各ヘッドがインク色毎に形成する基準濃度測定
用パターンが示され、また基準濃度測定用パターンにおいて測色される矩形領域として、
K1〜K6(K2は除かれる)、C1〜C6(C2は除かれる)、M1〜M6(M2は除
かれる)、Y1〜Y6(Y2は除かれる)が示されている。符号のアルファベットが矩形
領域のインク色を示すものであり、アルファベットの後に示された数字が、基準濃度測定
用パターンを形成したヘッドの番号を示すものである。例えば、第1ノズル列41Aが形
成したブラックの基準濃度測定用パターンの矩形領域には、K1の符号が付されている。
【0056】
基準濃度測定用パターンは、用紙Sが搬送方向に搬送させられつつ、最初にイエローイ
ンクノズル列NYからインクが噴射されることによりY1〜Y6(Y2を除く)を含む基
準濃度測定用パターンが形成される。次に、マゼンタインクノズル列NMからインクが噴
射されることによりM1〜M6(M2を除く)を含む基準濃度測定用パターンが形成され
る。次に、シアンインクノズル列NCからインクが噴射されることによりC1〜C6(C
2を除く)を含む基準濃度測定用パターンが形成される。次に、ブラックインクノズル列
NKからインクが噴射されることによりK1〜K6(K2を除く)を含む基準濃度測定用
パターンが形成される。
【0057】
基準濃度測定用パターンを形成するときにおいて、媒体における仮想的な画素領域には
必ず1つのドットが形成されるようにされる。つまり、図7に示すように、搬送方向に並
ぶドットにより形成されるドットラインが、紙幅方向にノズルピッチで並ぶように形成さ
れる。
【0058】
尚、前述のように、第2ヘッド41B以外のヘッドは、それぞれ適切な駆動信号が印加
されているため、基準濃度測定用パターンが形成されたとき、色毎にその濃度はほぼ均一
に出力されている。
【0059】
次に、第2ヘッド41B以外のヘッドの基準濃度測定用パターンの濃度が測定される(
S204)。ここではまず、印刷された基準濃度測定用パターンのスキャナによる読み取
りが行われる。そして、各矩形領域について、ヘッド毎及びインク色毎にRGB値が取得
される。
【0060】
次に、インク色毎の平均濃度が求められる。
前述のように、スキャナ120がテストパターンを読み取ることによって、RGB値を
得ることができていた。ここでは、YMCK色空間の濃度を取得する必要があるため、R
GBからYMCKへの色変換処理を行うことになる。変換式は、以下に示すような一般的
な変換式が用いられる。

Y=(1−B/255−Kf)/(1−Kf)*255
M=(1−G/255−Kf)/(1−Kf)*255
C=(1−R/255−Kf)/(1−Kf)*255
K=Kf*255
但し、Kf=Min(1−R/255,1−G/255,1−B/255)
Minは、括弧内の最小値を返す関数

このようにすることで、各画素領域における256階調の濃度値を得ることができる。
尚、これ以外の変換式が用いられることとしてもよい。
【0061】
このようにすることで、濃度として各画素領域におけるY値、M値、C値、K値が求め
られることになるが、各インク色の矩形領域については対応するインク色の濃度のみが参
照されることになる。例えば、矩形領域K1では上式で求められたブラックKの濃度のみ
が参照され、イエローY、マゼンタM、及び、シアンMの濃度値は無視される。
【0062】
各画素領域における濃度が得られると、インク色毎の平均濃度が求められる。ここで平
均濃度は、図10における破線で囲われた各矩形領域における平均の濃度である。本実施
形態では、測色にスキャナ120を用いているため、画素領域単位での輝度値を得ること
ができているが、ここでは破線の矩形で囲われた矩形領域の平均値を求めることによって
、得られる濃度値の信頼性を高めている。
【0063】
具体的には、例えば、矩形領域K1及びK3〜K6の平均濃度が求められる。平均濃度
は、K1及びK3〜K6内の全ての画素領域のブラックKの濃度の平均を求めることによ
り行われる。
【0064】
このような平均濃度の算出が各インク色について行われる。
図11は、得られた基準濃度測定用パターンの濃度を示す表である。表には、各インク
色に対応する基準濃度測定用パターンの濃度が示されている。以降、これらの濃度に合致
させるように、第2ヘッド41Bが調整されることになる。
【0065】
次に、駆動電圧をVh1及びVh2に設定したときの第2ヘッド41Bのテストパター
ンが印刷される(S206)。
図12は、第1テストパターンと第2テストパターンの説明図である。第1テストパタ
ーンは、駆動電圧をVh1に設定したときにおいて第2ヘッド41Bによって形成された
テストパターンである。第2テストパターンは、駆動電圧をVh2に設定したときにおい
て第2ヘッド41Bによって形成されたテストパターンである。図には、第2ヘッド41
Bによって形成された第1テストパターンが示されている。また、第2テストパターンも
形成されることが示されている。
【0066】
第1テストパターン及び第2テストパターンを形成するときにおいて、媒体における仮
想的な画素領域には必ず1つのドットが形成されるようにされる。つまり、図7に示すよ
うに、搬送方向に並ぶドットにより形成されるドットラインが、紙幅方向にノズルピッチ
で並ぶように形成される。すなわち、ドットの並び方は基準濃度測定用パターンと同じで
ある。
【0067】
次に、第1テストパターンと第2テストパターンのスキャナによる読み取り、及び、濃
度の測定が行われる(S208)。読み取りは、駆動電圧をVh1にしたときのテストパ
ターンと、駆動電圧をVh2にしたときのテストパターンの2枚について行われる。そし
て、前述と同様の各矩形領域について、インク色毎にRGB値が取得される。そして、こ
れらRGB値は、前述と同様の手法によりYMCK値に変換される。
【0068】
スキャナによる読み取りがされた後、第1テストパターンと第2テストパターンのそれ
ぞれについて、インク色毎の平均濃度が求められる。インク色毎の平均濃度の求め方は、
前述のステップS204における平均濃度の求め方と同様である。
【0069】
図13は、第2ヘッド41Bの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表で
ある。図には、駆動電圧Vh1、Vh2に対するインク色毎の平均濃度が示されている。
【0070】
次に、第2ヘッド41Bの適正駆動電圧が設定される(S210)。そのために、まず
、第2ヘッド41Bに設定するための適正駆動電圧が求められる。適正駆動電圧は、前述
の図11に示した、基準濃度測定用パターンの濃度となるような駆動電圧を求めることに
よって求めることができるが、ここでは、既に得られた2つの駆動電圧Vh1とVh2に
おける濃度を線形補間し、この線形補間した濃度値から適正駆動電圧を求める。
【0071】
線形補間した線分の式は、一次式(y=ax+b)によって得られる。一次式の係数a
、及び、bは、各駆動電圧Vh1、Vh2をxとしたときの各濃度をyとして代入したと
きの2つの1次方程式を連立させることにより求めることができる。
【0072】
図14は、求められた一次式の係数a、bを示す表である。表には、各インク色の各ヘ
ッドの係数a及びbが示されている。この表によると、例えば、インク色がブラックKに
ついての一次式は、y=3.37x+1.18ということになる。
【0073】
次に、求められた一次式から、第2ヘッド41Bのインク色毎の適正駆動電圧が求めら
れる。適正駆動電圧は、一次式のyに基準濃度測定用パターンの濃度を代入してx値を求
めることで得ることができる。たとえば、前述のように、インク色がブラックKのときの
一次式は、y=3.37x+1.18であったので、yにブラックKの基準濃度測定用パ
ターンの濃度80.39を代入してx値を求めると、適正駆動電圧23.49が得られる
。同様にして、各インク色の適正駆動電圧を求めることができる。
次に、適正駆動電圧の平均値をヘッドの駆動電圧に設定する。
【0074】
図15は、第2ヘッド41Bのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。図16は、
第2ヘッド41Bに設定される適正駆動電圧である。図15に示される4色の適正駆動電
圧の平均値は、図16に示されるように、23.40となる。このように求められた適正
駆動電圧が、第2ヘッド41Bに対応する第2駆動信号COM2の駆動電圧に設定される
。このようにすることによって、交換された後における第2ヘッド41Bの基準濃度を他
のヘッドの基準濃度に一致させることができる。
【0075】
また、このようにすることで、顧客先で用意されている印刷媒体を用いて基準濃度測定
用パターンの濃度を測定し、測定された濃度を出力するように交換対象ヘッドの駆動電圧
を調整することができる。
【0076】
ここでは、交換対象ヘッドを第2ヘッド41Bとしたが、他のヘッドを交換対象ヘッド
としてもよい。また、基準濃度測定用パターンを印刷する際、非交換対象ヘッド全てによ
り印刷されたが、複数の非交換対象ヘッドのうちの1つによって印刷されることとしても
よい。また、交換対象ヘッドは1つでなくてもよい。
【0077】
また、基準濃度測定用パターンは、交換対象ヘッドに隣接する非交換ヘッドを用いて形
成することが望ましい。これは、隣接するヘッド同士の色の差が最も目立ちやすいからで
あり、この場合、隣接する非交換ヘッドの基準濃度測定用パターンの濃度に合わせるよう
に交換対象ヘッドが出力する濃度を合わせるのが合理的だからである。
【0078】
図17は、複数のサイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。
ここでも、第1駆動信号COM1’〜第6駆動信号COM6’が出力され、各駆動信号は
対応するヘッドに供給されるものとする。前述と同様に、駆動パルスの振幅は駆動信号間
で若干異なるものの、各駆動信号の形状はほぼ同様であるので、第1駆動信号COM1’
について説明を行う。
【0079】
第1駆動信号COM1’は、中ドットを形成するための第1駆動パルスPS1’と、イ
ンクメニスカスを微振動させるための第2駆動信号PS2’と、大ドットを形成するため
の第3駆動パルスPS3’と、小ドットを形成するための第4駆動パルスPS4’を含ん
でいる。そして、ノズルからインクを噴射させないときには、第2駆動パルスPS2’の
みがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから小ドットを形成するためのインク
を噴射するときには、第4駆動パルスPS4’のみがピエゾ素子PZTに印加される。ま
た、ノズルから中ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第1駆動パルスP
S1’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから大ドットを形成するため
のインクを噴射するときには、第3駆動パルスPS3’がピエゾ素子PZTに印加される

【0080】
図には、第1駆動パルスPS1’の駆動電圧Vhmと、第3駆動パルスPS3’の駆動
電圧Vhlと、第4駆動パルスPS4’の駆動電圧Vhsとが示されているが、これらの
大小関係は、Vhl>Vhm>Vhsとなっている。つまり、駆動電圧が大きいほど大き
なドットを形成可能となっている。
【0081】
このようにして、小ドット、中ドット、及び、大ドットを形成可能な場合、図11に示
されるような基準濃度測定用パターンの濃度が、小ドット用、中ドット用、大ドット用の
3つについて用意される。そして、上述と同様の方法が各基準濃度測定用パターンの濃度
について適用される。つまり、小ドット用の基準濃度測定用パターンの濃度になるように
Vhsが調整され、中ドット用の基準濃度測定用パターンの濃度になるようにVhmが調
整され、大ドット用の基準濃度測定用パターンの濃度になるようにVhlが調整される。
【0082】
このようにすることで、複数のサイズのドットを形成可能なプリンタにおいて、交換後
のヘッドが出力する色を非交換対象のヘッドの色に近づけることができる。
【0083】
図18は、経過時間と濃度との関係を示すグラフである。本来、濃度を測色する際には
インクを十分に乾燥させた後に測色を行う必要がある。しかしながら、図に示すように、
使用されるインクによっては、媒体にドットが形成されてから時間の経過と共に濃度が上
昇する場合がある。インクを十分に乾燥させてから濃度の測色を行うこととしてもよいが
、このようにすると、測色までに待ち時間を要することになる。
【0084】
よって、このような場合には、図に示されるような経過時間と濃度との関係を予め取得
しておくこととしてもよい。そして、基準濃度測定用パターン、第1テストパターン、及
び、第2テストパターンが印刷されてから濃度が計測されるまでの時間と、計測された濃
度と、に基づいて、本来計測されるべき濃度を取得することとしてもよい。
【0085】
このようにすることで、ヘッド交換後におけるヘッド間の濃度差を減らすことができる
が、上述のように全インク色の適正駆動電圧の平均値をそのヘッドの適正電圧として設定
しているため、極めて少ない量ではあるが、濃度差が生じる場合が起こりうる。このよう
な濃度差はヘッド単位で生ずることから、搬送方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位で
の濃度補正が行われれば、さらにヘッド間の濃度差を減らすことができる。以下に、搬送
方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位で濃度補正を行う方法について説明する。
【0086】
<プリンタドライバによる処理>
図19は、プリンタドライバによる処理の説明図である。以下、プリンタドライバによ
る処理について、図を参照しながら説明する。
【0087】
印刷画像データは、図に示すように、プリンタドライバによって解像度変換処理(S3
02)、色変換処理(S304)、ハーフトーン処理(S306)、及び、ラスタライズ
処理(S308)が実行されることにより生成される。
【0088】
先ず、解像度変換処理では、アプリケーションプログラムの実行により得られたRGB
画像データの解像度が、指定された画質に対応する印刷解像度に変換される。次に、色変
換処理では、解像度が変換されたRGB画像データがCMYK画像データに変換される。
ここで、CMYK画像データとは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及
び、ブラック(K)の色別の画像データを意味する。そして、CMYK画像データを構成
する複数の画素データは、それぞれ256段階の階調値で表される。この階調値は、RG
B画像データに基づいて定められるものであり、以下、指令階調値ともいう。
【0089】
次に、ハーフトーン処理では、画像データを構成する画素データが示す多段階の階調値
が、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値に変換される。ここでは、画素データ
が示す256段階の階調値が、2段階のドット階調値に変換される。具体的には、ドット
階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応するドットありの2
段階に変換される。
【0090】
尚、複数のサイズのドットを形成可能な場合には、例えば、ドット階調値[00]に対
応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[1
0]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成
の4段階に変換されることとしてもよい。
【0091】
その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法等を利用
して、プリンタ1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
【0092】
次に、ラスタライズ処理では、ハーフトーン処理で得られた画像データに関し、各ドッ
トのデータが、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更される。そして、ラスタライズ処
理されたデータは、印刷データの一部として送信される。
【0093】
<濃度むらについて>
図20Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドット
が形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が用紙S上に
広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形
成されると、ドットライン(搬送方向にドットが並んだドット列)が列領域に正確に形成
される。
【0094】
図20Bは、濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたド
ットラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列
領域側に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域
は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よ
りも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目
の列領域は淡くなる。
【0095】
このように濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、搬送方向に沿
う縞状の濃度むらが視認される。この濃度むらは、印刷画像の画質を低下させる原因とな
る。
【0096】
以上のような濃度むらを抑制するための方策としては、画像データの階調値(指令階調
値)を補正することが考えられる。つまり、濃く(淡く)視認され易い列領域に対しては
、淡く(濃く)形成されるように、その列領域を構成する単位領域に対応する画素の階調
値を補正すればよい。このため、ラスタライン毎に画像データの階調値を補正する濃度補
正値Hを算出することになる。この濃度補正値Hは、プリンタ1の濃度むら特性を反映し
た値である。
【0097】
図20Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。ラスタライン毎の濃度
補正値Hが算出されていれば、ハーフトーン処理の実行に際してプリンタドライバによっ
て、その濃度補正値Hに基づいてラスタライン毎に画素データの階調値を補正する処理が
行われる。この補正処理により補正された階調値で各ドットラインが形成されると、対応
するラスタラインの濃度が補正される結果、図20Cに示すように、印刷画像における濃
度むらの発生が抑制されることになる。
【0098】
例えば、図20C中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドット生成率が高
くなり、濃く視認される3番目の列領域のドット生成率が低くなるように、各列領域に対
応する画素の画素データの階調値が補正される。このように、各列領域のラスタラインの
ドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むら
が抑制される。
【0099】
<濃度補正値Hの算出について>
次に、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する処理(以下、補正値取得処理ともいう
)について概説する。補正値取得処理は、例えば、プリンタ1の製造工場の検査ラインに
おいて、補正値算出システムの下で行われる。補正値算出システムとは、プリンタ1の濃
度むら特性に応じた濃度補正値Hを算出するためのシステムであり、上記の印刷システム
100と同様の構成である。つまり、補正値算出システムは、プリンタ1、コンピュータ
110、及び、スキャナ120(便宜上、印刷システム100の場合と同一の符号にて表
記する)を有する。
【0100】
プリンタ1は、補正値取得処理の対象機器であり、該プリンタ1を用いて濃度むらがな
い画像を印刷するためには、前記補正値取得処理において該プリンタ1用の濃度補正値H
を算出することになる。検査ラインに置かれたコンピュータ110には、該コンピュータ
110が補正値取得処理を実行するための補正値算出プログラムがインストールされてい
る。
【0101】
<補正値取得処理について(S104)>
図21は、補正値取得処理の流れを示す図である。多色印刷が可能なプリンタ1を対象
とする場合、各インク色についての補正値取得処理は同様の手順により実施される。以下
の説明では、一のインク色(例えば、ブラック)についての補正値取得処理について説明
する。
【0102】
先ず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、既述の印刷動作と同様
の手順により、プリンタ1が補正用パターンCPを用紙Sに形成する(S402)。
【0103】
図22は補正用パターンCPの説明図である。この補正用パターンCPは、図22に示
すように、5種類の濃度のサブパターンCSPで形成される。
【0104】
各サブパターンCSPは、帯状パターンであり、搬送方向に沿うラスタラインが紙幅方
向に複数並ぶことにより構成される。また、各サブパターンCSPは、それぞれ一定の階
調値(指令階調値)の画像データから生成されたものであり、図22に示すように、左の
サブパターンCSPから順に濃度が濃くなっている。具体的には、左から15%、30%
、45%、60%。85%の濃度のサブパターンとなっている。以下、濃度15%のサブ
パターンCSPの指令階調値をSa、濃度30%のサブパターンCSPの指令階調値をS
b、濃度45%のサブパターンCSPの指令階調値をSc、濃度60のサブパターンCS
Pの指令階調値をSd、そして、濃度85%のサブパターンCSPの指令階調値をSeと
表記する。そして、例えば、指令階調値Saにて形成されたサブパターンCSPを、図2
2に示すように、CSP(1)と表記する。同様に、指令階調値Sb、Sc、Sd、Se
にて形成されたサブパターンCSPを、それぞれCSP(2)、CSP(3)、CSP(
4)、CSP(5)と表記する。
【0105】
次に、検査者は補正用パターンCPが形成された用紙Sをスキャナ120にセットする
。そして、コンピュータ110は、スキャナ120に補正用パターンCPを読み取らせ、
その結果を取得する(S404)。スキャナ120は、前述したようにR(レッド)、G
(グリーン)、B(ブルー)に対応する3つのセンサを有しており、補正用パターンCP
に光を照射し、その反射光を各センサによって検出する。なお、コンピュータ110は、
補正用パターンを読み取った画像データ上において、搬送方向に相当する方向に画素が並
んだ画素列数と、補正用パターンを構成するラスタライン数(列領域数)が、同数になる
ように調整する。つまり、スキャナ120にて読み取った画素列と列領域を一対一で対応
させる。そして、ある列領域と対応する画素列の各画素が示す読取階調値の平均値を、そ
の列領域の読取階調値とする。
【0106】
次に、コンピュータ110は、スキャナ120によって取得された読取階調値に基づい
て、各サブパターンCSPのラスタライン毎(換言すると列領域毎)の濃度を算出する(
S406)。以下、読取階調値に基づいて算出された濃度のことを算出濃度ともいう。
【0107】
図23は、指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン
毎の算出濃度を示すグラフである。図23の横軸は、ラスタラインの位置を示し、縦軸は
、算出濃度の大きさを示している。図23に示すように、各サブパターンCSPは、それ
ぞれ同一の指令階調値で形成されたにも関わらずラスタライン毎に濃淡が生じている。こ
のラスタラインの濃淡差が、印刷画像の濃度むらの原因である。
【0108】
次に、コンピュータ110は、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する(S408)
。なお、濃度補正値Hは、指令階調毎に算出される。以下、指令階調Sa、Sb、Sc、
Sd、Seについて算出された濃度補正値HのことをそれぞれHa、Hb、Hc、Hd、
Heとする。濃度補正値Hの算出手順を説明するために、指令階調値Sbのサブパターン
CSP(2)のラスタライン毎の算出濃度が一定になるように指令階調値Sbを補正する
ための濃度補正値Hbを算出する手順を例に挙げて説明する。当該手順では、例えば、指
令階調値SbのサブパターンCSP(2)における全ラスタラインの算出濃度の平均値D
btを、指令階調値Sbの目標濃度として定める。図23において、この目標濃度Dbt
よりも算出濃度が淡い第iラスタラインでは、指令階調値Sbを濃くする方へ補正すれば
良い。一方、目標濃度Dbtよりも算出濃度が濃い第jラスタラインでは、指令階調値S
bを淡くする方へ補正すればよい。
【0109】
図24Aは第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hb
を算出する手順についての説明図である。また図24Bは、第jラスタラインについて指
令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。
図24A及び図24Bの横軸は指令階調値の大きさを示し、縦軸は算出濃度を示している

【0110】
第iラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図24Aに示す指令階
調値SbのサブパターンCSP(2)における第iラスタラインの算出濃度Db、及び、
指令階調値ScのサブパターンCSP(3)における第iラスタラインの算出濃度Dc、
に基づいて算出される。より具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)で
は、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも小さくなっている。換言す
ると、第iラスタラインの濃度は平均濃度よりも淡くなっている。仮に、第iラスタライン
の算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第iラスタラインを形成したいの
であれば、該第iラスタラインに対応する画素データの階調値、すなわち、指令階調値S
bを、図24Aに示すように、第iラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応
関係(Sb,Db)、(Sc,Dc)から直線近似を用いて、下記式(1)により算出さ
れる目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。

Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Dbt−Db)/(Dc−Db)} (1)

そして、指令階調値Sbと目標指令階調値Sbtから、下記式(2)により、第iラス
タラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hが求められる。

Hb=ΔS/Sb=(Sbt−Sb)/Sb (2)
【0111】
一方、第jラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図24Bに示す
指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第jラスタラインの算出濃度Db、
及び、指令階調値SaのサブパターンCSP(1)における第jラスタラインの算出濃度
Da、に基づいて算出される。具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)
では、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも大きくなっている。仮に
、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第jラスタラ
インを形成したいのであれば、該第jラスタラインの指令階調値Sbを、図24Bに示す
ように、第jラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sa,Da)、
(Sb,Db)から直線近似を用いて、下記式(3)により算出される目標指令階調値S
btまで補正すればよい。

Sbt=Sb+(Sb−Sa)×{(Dbt−Db)/(Db−Da)} (3)

そして、上記式(2)により、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するた
めの濃度補正値Hbが求められる。
【0112】
以上のようにして、コンピュータ110は、ラスタライン毎に、指令階調値Sbに対す
る濃度補正値Hbを算出する。同様に、指令階調値Sa、Sc、Sd、Seに対する濃度
補正値Ha、Hc、Hd、Heを、それぞれラスタライン毎に算出する。また、他のイン
ク色についても、ラスタライン毎に、指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値H
a〜Heを算出する。
【0113】
その後、コンピュータ110は、濃度補正値Hのデータをプリンタ1に送信し、プリン
タ1のメモリ63に記憶させる(S410)。
【0114】
図25は、メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。この結果、プリン
タ1のメモリ63には、図25に図示された、ラスタライン毎に5つの指令階調値Sa〜
Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heをまとめた補正値テーブルが作成される。
【0115】
また、図25に示すように、補正値テーブルはインク色別に作成される。この結果、C
MYK4色分の補正値テーブルが形成される。この補正値テーブルは、プリンタ1を用い
て画像を印刷する際に、当該画像の画像データを構成する各ラスタラインの階調値を補正
するためにプリンタドライバによって参照される。
【0116】
本実施形態では、用紙上の画素列に対応するラスタラインごとに濃度を測定し、測定し
た濃度に基づいて階調値を補正するための補正値を求めている。このようにすることで、
ラスタライン毎に濃度補正を行うことができる。そして、用紙上の色むらの発生を抑制す
ることができる。
【0117】
<印刷処理>
図26は、ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。プリンタ1
を購入したユーザは、プリンタ1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタド
ライバ(若しくは、プリンタ製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタドラ
イバ)を、コンピュータにインストールする。このプリンタドライバには、図中の各処理
をコンピュータに実行させるためのコードを備えている。また、ユーザは、コンピュータ
にプリンタ1を接続する。
【0118】
まず、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリに記憶されている補正値テーブル(図
25参照)を、プリンタ1から取得する(S502)。
【0119】
ユーザがアプリケーションプログラム上から印刷を指示したとき、プリンタドライバが
呼び出され、印刷対象となる画像データ(印刷画像データ)をアプリケーションプログラ
ムから受け取り、その印刷画像データに対して解像度変換処理を行う(S504)。解像
度変換処理とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に印刷す
る際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。ここでは、印刷解像度は360×3
60dpiであり、解像度変換処理後の各画素データは、RGB色空間により表される2
56階調のデータである。
【0120】
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S506)。色変換処理とは、プリン
タ1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB
色空間の画像データ(256階調)が、CMYK色空間の画像データ(256階調)に変
換される。
【0121】
これにより、256階調のCMYK色空間の画像データが得られる。なお、以下の説明
では、説明の簡略化のため、CMYK色空間の画像データのうちの、ブラック平面の画像
データについて説明する。
【0122】
次に、プリンタドライバは、濃度むら補正処理を行う(S508)。濃度むら補正処理
は、用紙上の画素列(ラスタラインに対応)ごとの補正値に基づいて、各画素列に属する
画素データの階調値をそれぞれ補正する処理である。
【0123】
例えば、ユーザのコンピュータ110のプリンタドライバは、各画素データの階調値(
以下、補正前の階調値をSinとする)を、その画素データが対応するラスタラインの濃
度補正値Hに基づいて補正する(以下、補正後の階調値をSoutとする)。
【0124】
具体的には、あるラスタラインの階調値Sinが指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、
Seの何れかと同じであれば、コンピュータ110のメモリに記憶されている濃度補正値
Hをそのまま用いることができる。例えば画素データの階調値Sin=Sbであれば、補
正後の階調値Soutは次式によって求められる。

Sout=Sb×(1+Hb)
【0125】
一方、画素データの階調値が指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seと異なる場合、
その周囲の指令階調値の濃度補正値を用いた補間に基づいて補正値を算出する。例えば指
令階調値Sinが指令階調値Sbと指令階調値Scとの間の場合、指令階調値Sbの濃度
補正値Hb、及び指令階調値Scの濃度補正値Hcを用いた線形補間により求めた補正値
をH´とすると、指令階調値Sinの補正後の階調値Soutは次式によって求められる


Sout=Sin×(1+H´)

このようにして、濃度補正処理が行なわれる。
【0126】
濃度むら補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン
処理とは、高階調数のデータを、低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、2
56階調の印刷画像データが、プリンタ1の表現可能な2階調の印刷画像データに変換さ
れる。ハーフトーン処理方法としてディザ法などが知られており、本実施形態もこのよう
なハーフトーン処理を行う。
【0127】
本実施形態において、プリンタドライバは、濃度むら補正処理された画素データに対し
て、ハーフトーン処理を行うことになる。この結果、濃く視認されやすい部分の画素デー
タの階調値は低くなるように補正されているので、その部分のドット生成率は低くなる。
逆に、淡く視認されやすい部分ではドット生成率が高くなる。
【0128】
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S512)。ラスタライズ処理
は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更
する処理である。その後、プリンタドライバは、プリンタ1を制御するための制御データ
を画素データに付加することによって印刷データを生成し(S514)、その印刷データ
をプリンタ1に送信する(S516)。
【0129】
プリンタ1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的には、プリンタ
1のコントローラ60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20な
どを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御して各ノズルか
らインクを吐出する。このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタ1が印刷
処理を行えば、各ラスタラインのドット生成率が変更され、用紙上の列領域の画像片の濃
度が補正されて、印刷画像の濃度むらが抑制される。
【0130】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、流体噴射装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限ら
れるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状
体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具現化すること
もできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置
、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造
装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット
技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、こ
れらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0131】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解
釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得
ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0132】
<ヘッドについて>
前述の実施形態のようにインクを噴射させる方法としては、圧電素子を用いてインクを
噴射することとすることができる。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるもの
ではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよ
い。
【符号の説明】
【0133】
1 プリンタ、
20 搬送ユニット、22A 上流側ローラ、22B 下流側ローラ、24 ベルト、
40ヘッドユニット、
41A 第1ヘッド、41B 第2ヘッド、41C 第3ヘッド、
41D 第4ヘッド、41E 第5ヘッド、41F 第6ヘッド、
50 検出器群、60 コントローラ、61 インターフェース、
62 CPU、63 メモリ、64 ユニット制御回路、
70 駆動信号生成回路、
110 コンピュータ、111 インターフェース、
112 CPU、113 メモリ、
120 スキャナ、121 読取キャリッジ、122 インターフェース、
123 CPU、124 メモリ、125 スキャナコントローラ、
CP 補正用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘッドと、を
有する流体噴射装置の調整方法であって、
前記非交換対象ヘッドから媒体に流体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該
基準濃度測定用パターンの濃度を測定することと、
前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターンと、前記交
換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基づいて、濃
度と電圧変化との関係を求めることと、
前記濃度と前記電圧変化との関係に基づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定
用パターンの濃度に対応する前記電圧変化を特定することと、
を含む流体噴射装置の調整方法。
【請求項2】
前記非交換対象ヘッドは複数のヘッドである、請求項1に記載の流体噴射装置の調整方
法。
【請求項3】
前記基準濃度測定用パターンは、全ての前記非交換対象ヘッドによって形成される、請
求項2に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項4】
前記基準濃度測定用パターンは、前記複数の非交換対象ヘッドのうち1つの非交換対象
ヘッドによって形成される、請求項2に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項5】
前記交換対象ヘッドに隣接する前記非交換対象ヘッドを用いて、前記基準濃度測定用パ
ターンを測定する、請求項4に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項6】
前記交換対象ヘッドと前記非交換対象ヘッドは、それぞれ、前記流体を噴射するノズル
が並ぶノズル列を含み、前記交換対象ヘッドと前記非交換対象ヘッドは、前記ノズルが並
ぶ方向に並ぶ、請求項1〜5のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項7】
前記媒体の搬送方向に並ぶ画素からなる画素列毎の濃度補正を行うための補正用パター
ンを前記媒体に形成することと、
前記補正用パターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求め
ることと、
をさらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎
に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められる、請求項1〜6のいず
れかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項8】
ヘッドが交換される交換対象ヘッドと、ヘッドが交換されない非交換対象ヘッドと、を
有する流体噴射装置の調整方法であって、
前記非交換対象ヘッドから媒体に流体を噴射して基準濃度測定用パターンを形成し、該
基準濃度測定用パターンの濃度を測定することと、
前記交換対象ヘッドに第1の電圧変化を印加したときの第1テストパターンと、前記交
換対象ヘッドに第2の電圧変化を印加したときの第2テストパターンと、に基づいて、濃
度と電圧変化との関係を求めることと、
前記濃度と前記電圧変化との関係に基づいて、前記交換対象ヘッドの前記基準濃度測定
用パターンの濃度に対応する前記電圧変化を特定することと、
を含む流体噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図10】
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【図12】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−245666(P2011−245666A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119038(P2010−119038)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】