説明

流体噴射装置

【課題】負圧発生手段の負荷の低減を図ると共に、フラッシングによって流体噴射ヘッドから廃流体として流体受容部内に噴射された流体のうちミスト状になった流体の流体受容部外への飛散を抑制できる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンター11は、記録ヘッド18と、フラッシング時に記録ヘッド18のノズル形成面18aに対向する開口部34を有するフラッシングボックス28と、開口部34を閉塞可能なカバー位置とフラッシング時に開口部34を閉塞不能な退避位置との間で移動可能なカバー部材36を有するカバー機構35と、カバー部材36がカバー位置に位置する場合に、フラッシングボックス28を負圧にするべく作動するポンプ部29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射する流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッドからターゲットに対して流体を噴射させる流体噴射装置として、インク(流体)を記録用紙(ターゲット)に対して噴射するインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が知られている。このようなプリンターにおいては、記録ヘッドのノズルからインクが噴射されない状態が連続して長時間に亘ると、ノズル内におけるインクのメニスカスの表面が乾燥してインクの噴射不良が発生するおそれがある。そのため、こうしたプリンターでは、非印刷時に印刷とは無関係の制御信号に基づきノズルからインクを強制的に噴射させる、いわゆるフラッシングを行うようにしている。
【0003】
例えば、印刷時に記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って往復移動しながらインクを噴射するシリアル方式又はラテラル方式のプリンターの場合には、記録ヘッドを記録用紙から外れた非印刷領域に移動させ、該領域に配置されたキャップやフラッシングボックスなどの流体受容部内に向けてフラッシングが行われる。一方、記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って移動することなく記録用紙の搬送経路の途中に記録用紙の搬送方向と直交する方向に用紙幅全体に亘るように配置されたラインヘッド方式のプリンターの場合には、キャップなどの流体受容部を移動自在とし、該流体受容部を記録ヘッドのノズル形成面に近接して対向する位置に移動させてフラッシングが行われる。
【0004】
ところで、フラッシングによって液体受容体内に廃インクとして噴射されたインクの一部は、ミスト状になってキャップなどの流体受容部内を浮遊する。このようにミスト状になったインク(「インクミスト」ともいう。)は、流体受容部においてフラッシング時に記録ヘッドに対向する開口部を介して流体受容部外に飛散することがある。そこで、近年では、インクミストの流体受容部外への飛散を抑制する機構を備えるプリンターとして、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されるプリンターが提案されている。
【0005】
すなわち、上記プリンターは、流体受容部に接続される吸引ポンプなどの負圧発生手段を備え、該負圧発生手段は、フラッシング時に流体受容部内を吸引して負圧にするべく作動する。そのため、フラッシング時には、負圧発生手段によって流体受容部内に負圧が発生することにより、記録ヘッドから廃インクとして噴射されたインクは、開口部を介して流体受容部内に流入する気体と共に負圧発生手段に吸引される。したがって、記録ヘッドから流体受容部に廃インクとして噴射されたインクの一部がインクミストとなっても、インクミストが流体受容部外に飛散することが抑制されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−191557号公報
【特許文献2】特開2002−137415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、流体受容部の開口部は、非フラッシング時も開放されている。そのため、フラッシング時に、負圧発生手段は、流体受容部内に廃インクとして噴射されたインクだけではなく、開口部を介して流体受容部内に流入する気体も吸引する。したがって、上記プリンターでは、開口部を介して流体受容部内に流入する気体の吸引量が多くなる分、負圧発生手段の負荷が増大する問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負圧発生手段の負荷の低減を図ると共に、フラッシングによって流体噴射ヘッドから廃流体として流体受容部内に噴射された流体のうちミスト状になった流体の流体受容部外への飛散を抑制できる流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、ノズル形成面に開口するように形成されるノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、該流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を廃流体として噴射させるフラッシング時に前記流体噴射ヘッドのノズル形成面に対向する開口部を有し、且つ該開口部を介して前記ノズルから廃流体として噴射される流体を受容する流体受容部と、該流体受容部の開口部を閉塞可能なカバー位置と前記フラッシング時に該開口部を閉塞不能な退避位置との二位置間で移動可能なカバー部材を有するカバー機構と、前記カバー部材が前記カバー位置に配置される場合に、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動する負圧発生手段と、前記流体噴射ヘッドと前記流体受容部とを互いに接近及び離間する方向に相対移動させる移動手段と、を備える。
【0010】
上記構成によれば、非フラッシング時において、流体受容部の開口部はカバー部材によって閉塞されると共に、流体受容部内は、負圧発生手段の作動によって負圧になる。すなわち、負圧発生手段の作動時には、開口部を介して気体が流体受容部内に流入することがカバー部材によって規制される。そのため、開口部がカバー部材によって閉塞されない状態で負圧発生手段を作動させる場合に比して、該負圧発生手段にかかる負荷が低減される。
【0011】
また、フラッシング時には、流体噴射ヘッドと流体受容部との互いに接近する方向への相対移動に基づいてカバー部材がカバー位置から退避位置側に移動し、この状態で流体噴射ヘッドは、流体を廃流体として噴射する。すると、こうした流体は、開口部を介して流体受容部内に受容される。このとき、流体受容部内は、カバー部材がカバー位置に位置する間に負圧発生手段によって負圧にされるため、流体受容部外よりも低圧である。しかも、フラッシング終了後に流体噴射ヘッドと流体受容部とを互いに離間する方に相対移動させることにより、流体受容部の開口部がカバー部材によって閉塞される。そのため、流体受容部内が外部よりも低圧である間にフラッシングが行なわれることから、流体噴射ヘッドから廃流体として流体受容部内に噴射された流体のうちミスト状になった流体が開口部を介して流体受容部外に飛散することが抑制される。したがって、負圧発生手段の負荷の低減を図ると共に、フラッシングによって流体噴射ヘッドから廃流体として流体受容部内に噴射された流体のうちミスト状になった流体の流体受容部外への飛散を抑制できる。
【0012】
本発明の流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドは、前記ノズル形成面に開口する前記ノズルを複数有すると共に、前記流体受容部の前記開口部は、前記流体噴射ヘッドの前記各ノズルのうち一部のノズルに対応した形状に形成されており、前記流体噴射ヘッドは、フラッシング時に、前記各ノズルのうち前記開口部に対向するノズルから流体を廃流体として噴射する。
【0013】
上記構成によれば、開口部の大きさが全てのノズルに対応した大きさに設定される場合に比して、開口部の大きさが小さい分、カバー部材が退避位置側に移動した際に開口部を介して流体受容部内に外部から気体が流入しにくい。そのため、カバー部材によって開口部を閉塞した状態で負圧発生手段を作動させて流体受容部内を負圧にした後に、カバー部材を退避位置側に移動させてフラッシングを実行する場合であっても、フラッシング中においては、流体受容部内が外部よりも低圧に維持される。そのため、流体噴射ヘッドから廃流体として流体受容部内に噴射された流体のうちミスト状になった流体が開口部を介して流体受容部外に飛散することが抑制される。
【0014】
本発明の流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドには、少なくとも一つのノズルから構成されるノズル群が複数形成され、前記流体受容部の開口部は、一つのノズル群を構成するノズルに対応した形状に形成されており、フラッシング時において、前記流体噴射ヘッドは、前記各ノズル群のうち前記開口部に対向するノズル群を構成するノズルから流体を廃流体として噴射した後、前記流体噴射ヘッド及び前記流体受容部は、前記移動手段によって前記各ノズル群のうち前記開口部に対向するノズル群が変更されるように相対移動し、その後、前記流体噴射ヘッドは、前記開口部に対向するノズル群から前記流体噴射ヘッドに流体を廃流体として噴射する。
【0015】
上記構成によれば、フラッシング時には、流体噴射ヘッドの各ノズル群のうち開口部に対向するノズル群を順番に変更させる。そして、開口部に対向する位置に移動したノズル群を構成するノズルから流体が廃流体として流体受容部内に噴射される。そのため、一つのノズル群に対応した形状の開口部を有する流体受容部を備える構成であっても、フラッシングが好適に実行される。
【0016】
本発明の流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドは、前記移動手段によって予め設定された走査方向に移動するように構成されており、前記負圧発生手段は、非フラッシング時における前記流体噴射ヘッドの前記走査方向への移動に基づき、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動するポンプ部を有する。
【0017】
上記構成によれば、負圧発生手段は、非フラッシング時における流体噴射ヘッドの走査方向における移動に基づき作動し、開口部がカバー部材によって閉塞される流体受容部内を負圧にする。そのため、負圧発生手段を作動させるための駆動源を移動手段の他に別途も受ける必要がない分、部品点数の増加が抑制される。
【0018】
本発明の流体噴射装置において、前記流体受容部は、前記走査方向における一方側に配置される一方、前記ポンプ部は、前記走査方向における他方側に配置されており、前記ポンプ部は、非フラッシング時において前記走査方向における他方側に移動する前記流体噴射ヘッドに押圧されることにより、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動する。
【0019】
上記構成によれば、走査方向における他方側に移動する流体噴射ヘッドによってポンプ部が押圧されることにより、開口部がカバー部材によって閉塞される流体受容部内が負圧になる。また、フラッシング時において、流体噴射ヘッドは、走査方向においてポンプ部から離間する方向に移動することになる。そのため、カバー部材がカバー位置から退避位置側に移動して流体受容部の開口部が開放された場合に、負圧発生手段が作動することはない。すなわち、開口部を介して外部から流体受容部内に流入する気体を負圧発生手段が吸引することが抑制され、該負圧発生手段にかかる負荷が確実に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略正断面図。
【図2】ノズル形成面におけるノズル群の配列態様を模式的に示す平面図。
【図3】記録ヘッドがカバー部材を押圧する様子を模式的に示す断面図。
【図4】記録ヘッドがカバー部材を押圧する様子を模式的に示す断面図。
【図5】キャリッジが伸縮部材を押圧する様子を模式的に示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンターを具体化した一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向(副走査方向)、左右方向(主走査方向)、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内において上下方向における中央近傍には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が設けられている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた図示しない紙送りモーターの駆動に基づき、図示しない紙送り機構によりターゲットの一例として記録用紙Pが後方側から給送される。
【0023】
また、フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸14が架設されている。ガイド軸14には、移動手段の一例としてキャリッジ15が該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。すなわち、キャリッジ15は、左右方向に貫通形成された図示しない支持孔にガイド軸14が挿通されることにより、該ガイド軸14の長手方向に沿って往復移動自在に支持されている。
【0024】
また、フレーム12の後壁内面においてガイド軸14の両端部と対応する位置には、駆動プーリー16a及び従動プーリー16bが回転自在に支持されている。駆動プーリー16aにはキャリッジ15を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター17の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー16a,16b間には、キャリッジ15に連結された無端状のタイミングベルト16が掛装されている。したがって、キャリッジ15は、ガイド軸14にガイドされながら、キャリッジモーター17の駆動力により無端状のタイミングベルト16を介して左右方向に移動可能となっている。
【0025】
キャリッジ15の下面側には、流体噴射ヘッドの一例として記録ヘッド18が設けられる一方、キャリッジ15上には記録ヘッド18へ供給する流体の一例として複数種類(本実施形態では5種類)のインクを収容したインクカートリッジ19が着脱可能に搭載されている。例えば、インクカートリッジ19は、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びライトシアンインクを貯留している。図2に示すように、記録ヘッド18には、各色のインクに個別対応する多数のノズル20が設けられており、該各ノズル20は、記録ヘッド18のノズル形成面18aにそれぞれ開口している。記録ヘッド18のノズル形成面18aには、図2において左側から順に、ブラックインクノズル群21K、イエローインクノズル群21Y、マゼンタインクノズル群21M、シアンインクノズル群21C及びライトシアンインクノズル群21LCが形成されている。これら各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCは、前後方向に沿って等間隔に配置される複数(図2では13個)のノズル20の開口からなるノズル列を少なくとも一列有する構成である。そして、インクカートリッジ19内に収容されたインクは、ノズル20毎に設けられた図示しない複数の圧電素子の駆動によって各ノズル20内に供給され、該各ノズル20の開口から下方に向けて噴射される。
【0026】
なお、本実施形態のキャリッジ15には、図1に示すように、該キャリッジ15が右方に移動する際に後述するポンプ部29の伸縮部材40に対して右方への押圧力を付与するための押圧部材22が設けられている。
【0027】
また、フレーム12内の右端部、即ち記録用紙Pが至らない非印刷領域には、記録ヘッド18をメンテナンスする場合にキャリッジ15を位置させるためのホームポジションが設けられている。そして、このホームポジションに配置された状態のキャリッジ15の下方には、記録ヘッド18からの記録用紙Pに対するインク噴射が良好に維持されるように、クリーニングなどの各種メンテナンス動作を行うメンテナンスユニット23が設けられている。
【0028】
このメンテナンスユニット23は、有底四角箱状のキャップ24と、該キャップ24を上下方向に昇降移動させる図示しない昇降機構と、キャップ24内を吸引可能な吸引ポンプ25と、プラテン13の下方に配置される廃インクタンク26とを備えている。キャップ24は、キャリッジ15がホームポジションに移動した場合に、記録ヘッド18のノズル形成面18aに形成される全てのノズル20の開口を包囲するように記録ヘッド18に当接可能に構成されている。昇降機構は、キャリッジ15がホームポジションに接近するに連れてキャップ24を上方に変位させるように構成されている。そして、キャリッジ15がホームポジションに配置され、記録ヘッド18にキャップ24が当接した状態で吸引ポンプが駆動する場合、キャップ24内に発生する負圧によって、記録ヘッド18の各ノズル20からは、インクが廃インク(廃流体)としてキャップ24内に排出される。このようにキャップ24内に排出されたインクは、吸引ポンプ25を介して廃インクタンク26内に排出される。
【0029】
本実施形態のインクジェット式プリンター11では、フレーム12内の左端部、即ち記録用紙Pが至らない非印刷領域に設けられるフラッシング領域にキャリッジ15を移動させた状態で記録ヘッド18にフラッシングを行なわせる。そのため、インクジェット式プリンター11には、フラッシングユニット27がメンテナンスユニット23とは別に設けられている。こうしたフラッシングユニット27は、フラッシング領域の下方に配置される流体受容部の一例としてフラッシングボックス28と、メンテナンスユニット23の上方に配置され、且つ該フラッシングボックス28内を負圧にすべく作動するポンプ部29とを備えている。
【0030】
フラッシングボックス28は、中空状の直方体であって、廃インクタンク26における左側部分の上に配置されている。フラッシングボックス28内には、略直方体状のインク吸収材30が設けられており、該インク吸収材30は、フラッシング時に廃インクとしてフラッシングボックス28内に噴射されたインクを吸収する。また、フラッシングボックス28の左側壁においてインク吸収材30の上面よりも上方には、連通孔32が形成されており、該連通孔32内には、ポンプ部29に接続される吸引チューブ33が嵌入されている。そして、吸引チューブ33の先端は、フラッシングボックス28内に位置している。
【0031】
さらに、フラッシングボックス28の上側壁においてフラッシング領域に移動した記録ヘッド18のノズル形成面18aと対向する位置には、該記録ヘッド18の各ノズル20から噴射されたインクを通過させる開口部34が設けられている。この開口部34は、図3及び図4に示すように、左右方向に沿って配置される各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうち一つのノズル群に対応するように形成されている。すなわち、開口部34は、その左右方向における幅H1が左右方向において隣り合うノズル群同士の間の間隔H2よりも狭くなるように形成されている。したがって、本実施形態のフラッシング時では、記録ヘッド18の各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうちフラッシングボックス28の開口部34に対向するノズル群を構成する各ノズル20からインクが廃インクとして噴射され、該インクが開口部34を介してフラッシングボックス28内に受容される。一方、開口部34に対向しない他のノズル群を構成する各ノズル20からは、インクが噴射されない。
【0032】
また、フラッシングボックス28の上側には、非フラッシング時にはフラッシングボックス28内を密閉状態にするためのカバー機構35が設けられている。このカバー機構35は、フラッシングボックス28の開口部を閉塞可能なカバー位置と開口部34を閉塞不能であって且つカバー位置よりも左側に位置する退避位置との二位置間で往復移動可能なカバー部材36を備えている。また、カバー機構35には、カバー部材36の前後両側に配置された図示しない一対のカバー案内部が設けられている。このカバー案内部は、カバー部材36の前後方向への移動を規制すると共に、カバー位置側から退避位置又は退避位置側からカバー位置側にカバー部材36を円滑に案内するように構成されている。
【0033】
カバー部材36は、平板状の部材本体37を有し、該部材本体37の右端には、上方に延設され、且つ記録ヘッド18の左端部に当接可能な被伝達部38が形成されている。また、フレーム12の左側面12aとカバー部材36の被伝達部38との間には、フレーム12の左側面12aに支持され、且つ被伝達部38に対して右方への付勢力を付与する付勢手段の一例として第1スプリング39が設けられている。そして、被伝達部38とキャリッジ15とが非当接状態である場合、カバー部材36は、第1スプリング39からの付勢力に基づきカバー位置に配置される。また、カバー部材36は、キャリッジ15が左右方向においてフラッシング領域とは異なる位置に位置する場合に、その被伝達部38に記録ヘッド18が当接しないように形成されている。
【0034】
ポンプ部29は、図5に示すように、いわゆるベローズ式ポンプであって、周壁が蛇腹状をなす有底筒状の合成樹脂で構成される伸縮部材40と、該伸縮部材40の開口端(図5では左端)を封止する蓋部材41とを備えている。この蓋部材41が図示しない支持部材によってフレーム12の右側面12bに固定されることにより、ポンプ部29は、フレーム12に支持されている。また、ポンプ部29は、その左端部がプラテン13上に配置される記録用紙Pの右端よりも右側に位置するように構成されており、記録用紙Pの印刷中にキャリッジ15の押圧部材22がポンプ部29に当接することが規制される。
【0035】
また、伸縮部材40の内部に形成されるポンプ室42内には、伸縮部材40の左端部(即ち、伸縮部材40の底壁)に対して左方への付勢力を付与する第2スプリング43が設けられている。そして、伸縮部材40は、キャリッジ15がホームポジション側に移動する場合には、キャリッジ15に設けられた押圧部材22によって右方に押圧されることにより第2スプリング43からの付勢力に抗して収縮する。また、伸縮部材40は、キャリッジ15がホームポジション側から離間する方向に移動する場合には、第2スプリング43からの付勢力によって左方に伸張する。
【0036】
また、蓋部材41には、ポンプ室42への気体の流入口となる吸気口(図示略)と、ポンプ室42内からの気体の流出口となる排気口(図示略)とが形成されている。蓋部材41の吸気口には、フラッシングボックス28に接続される吸引チューブ33の基端が接続されており、該吸引チューブ33の先端は、フラッシングボックス28内に配置されている。こうした吸引チューブ33の中途位置には、フラッシングボックス28側からポンプ部29側への気体の流通のみを許容する第1の一方向弁44が設けられている。一方、蓋部材41の排気口には、排気チューブ45の基端が接続されており、該排気チューブ45の先端は、伸縮部材40の外部(本実施形態では、フレーム12の外部)に配置されている。そして、排気チューブ45の中途位置には、ポンプ室42側から外部側への気体の流通のみを許容する第2の一方向弁46が設けられている。
【0037】
こうしたポンプ部29では、伸縮部材40が収縮した状態から伸張した場合、フラッシングボックス28内の気体が吸引チューブ33を介してポンプ室42内に吸引される。その後、伸縮部材40が収縮した場合、そのポンプ室42内の気体は、排気チューブ45を介して外部に排気される。したがって、本実施形態では、ポンプ部29、吸引チューブ33、排気チューブ45及び各一方向弁44,46により、カバー部材36がカバー位置に配置される場合に、フラッシングボックス28内に負圧を発生させる負圧発生手段が構成される。なお、図5では、明細書の説明理解の便宜上、タイミングベルト16及び駆動プーリー16aの図示を省略している。
【0038】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンター11の作用のうち、記録用紙Pへの印刷途中にフラッシングを実行する際の作用を中心に説明する。
さて、図示しない紙送り機構により記録用紙Pがプラテン13上に給紙されると、記録ヘッド18は、キャリッジ15と共に左右方向に移動しつつ、その各ノズル20からインクを噴射させる。この際、キャリッジ15が左右方向においてフラッシングボックス28の配置位置とは反対側(即ち、右側)に移動すると、キャリッジ15に設けられる押圧部材22が伸縮部材40を右側への押圧力を付与する。すると、伸縮部材40は収縮し、該伸縮部材40内のポンプ室42からは、気体が排気チューブ45を介して外部に排気される。
【0039】
その後、キャリッジ15が左右方向においてポンプ部29から離間する方向(即ち、左方)に移動すると、伸縮部材40は、第2スプリング43からの付勢力に基づき伸張する。すると、伸縮部材40内のポンプ室42が広がり、該ポンプ室42内には、吸引チューブ33を介して連通するフラッシングボックス28内の気体が吸引チューブ33を介して吸引される。このとき、連通孔32は、インク吸収材30の上面よりも上方に位置しているため、ポンプ室42内には、インク吸収材30に吸収されたインクが吸引チューブ33を介して流入することがほとんどない。その結果、カバー部材36によって開口部34が閉塞される密閉状態のフラッシングボックス28内には、負圧が発生する。このようにキャリッジ15の左右方向におけるポンプ部29側への移動に伴って伸縮部材40が伸縮動作する毎に、フラッシングボックス28内の負圧は蓄圧されて大きくなる。なお、負圧とは、大気圧よりも小さな圧力のことをいう。そして、「負圧が大きくなる」とは、より小さな圧力になることをいう一方、「負圧が小さくなる」とは、圧力が大きくなって大気圧に近づくことをいう。
【0040】
そして、フラッシングを行なうべく記録ヘッド18がキャリッジ15と共にフラッシング領域に移動すると、記録ヘッド18がカバー部材36の被伝達部38に当接する。すると、カバー部材36は、その被伝達部38に対する記録ヘッド18からの左方への押圧力に基づき、第1スプリング39からの付勢力に抗して退避位置側に移動する。すなわち、カバー部材36は、記録ヘッド18のフラッシング領域側への移動に連動し、カバー位置から退避位置側に移動する。その結果、フラッシングボックス28の開口部34が開放状態になり、記録ヘッド18の各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうち最も左側に位置するブラックインクノズル群21Kは、左右方向において開口部34と同一位置に位置することになる(図3参照)。この状態でブラックインクノズル群21Kを構成する各ノズル20からは、インクが廃インクとして噴射される。すると、インクは、開口部34を介して負圧状態のフラッシングボックス28内に受容され、該フラッシングボックス28内のインク吸収材30に吸収される。このとき、フラッシングボックス28内においてインク吸収材30に吸収される前のインクの一部がミスト状になることがある。しかし、フラッシングボックス28内は外部よりも低圧であるため、フラッシングボックス28内におけるミスト状のインク(「インクミスト」ともいう。)の開口部34を介した外部への飛散が抑制される。また、インクミストは、フラッシングボックス28内だけではなく、フラッシングボックス28外でも発生することがある。このようなフラッシングボックス28外のインクミストのうちフラッシング領域近傍に位置するインクミストの一部は、開口部34を介してフラッシングボックス28内に吸引される。
【0041】
なお、フラッシングボックス28内には、カバー部材36によって閉塞されない開口部34を介して気体が外部から流入する。そのため、フラッシングボックス28内に蓄圧された負圧は、徐々に小さくなる。しかし、本実施形態の開口部34は、一つのノズル群に対応した大きさであるため、記録ヘッド18のノズル形成面18aの大きさと略同等の大きさを有する開口部34の場合とは異なり、フラッシングボックス28内には、開口部34を介して気体が流入しにくく、フラッシングボックス28内の負圧は急激に小さくなりにくい。すなわち、本実施形態の開口部34が、フラッシングボックス28内に流入しようとする気体の流路抵抗として機能する。
【0042】
そして、ブラックインクノズル群21Kを構成する各ノズル20からのインク噴射が完了すると、記録ヘッド18は、キャリッジ15と共にさらに左方に移動する。すると、左から2番目のイエローインクノズル群21Yがフラッシングボックス28の開口部34に対向するようになり、イエローインクノズル群21Yを構成する各ノズル20からは、インクが廃インクとして噴射される(図4参照)。こうしたインクやインクミストは、開口部34を介してフラッシングボックス28内に受容され、該フラッシングボックス28内のインク吸収材30に吸収される。
【0043】
すなわち、フラッシング時には、記録ヘッド18の左方への移動に伴い、各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうちフラッシングボックス28の開口部34に対向するノズル群が順番に変更される。そして、開口部34に対向するノズル群を構成する各ノズル20からインクが廃インクとして噴射される。換言すると、本実施形態では、ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LC毎にフラッシングが順番に行なわれる。そして、各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうち最も右方に位置するライトシアンインクノズル群21LCを構成する各ノズル20からのフラッシングボックス28内へのインク噴射が完了すると、記録ヘッド18の左方への移動が停止する。なお、この時点であっても、開口部34の大きさに対してフラッシングボックス28内の大きさが十分に大きいため、該フラッシングボックス28の内圧は、外部よりも低い負圧状態で維持される。そのため、フラッシング中においては、開口部34が開放された状態であっても、該フラッシングボックス28内外のインクミストの飛散が抑制される。
【0044】
その後、記録ヘッド18は、記録用紙Pへのインク噴射のため、キャリッジ15と共に右方の印刷可能領域に向けて移動する。このとき、退避位置に位置するカバー部材36は、記録ヘッド18の右方への移動に伴い、第1スプリング39からの付勢力に基づきカバー位置まで移動する。すると、フラッシングボックス28の開口部34がカバー部材36によって閉塞される。そのため、非フラッシング時に、フラッシングボックス28内のインクミストが開口部34を介して外部に飛散することはない。
【0045】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)非フラッシング時において、フラッシングボックス28の開口部34は、カバー部材36によって閉塞されると共に、フラッシングボックス28内は、ポンプ部29の作動によって負圧になる。すなわち、ポンプ部29の作動時には、開口部34を介して気体がフラッシングボックス28内に流入することがカバー部材36によって規制される。そのため、開口部34がカバー部材36によって閉塞されない状態でポンプ部29を作動させる場合に比して、フラッシングボックス28内に負圧を蓄圧しやすくできると共に、ポンプ部29にかかる負荷を低減できる。
【0046】
(2)フラッシング時には、記録ヘッド18のフラッシングボックス28側への移動に基づきカバー部材36がカバー位置から退避位置側に移動し、この状態で記録ヘッド18からはインクが廃インクとして噴射される。すると、こうしたインクは、開口部34を介してフラッシングボックス28内に受容される。このとき、フラッシングボックス28の内圧は、カバー部材36がカバー位置に位置する間におけるポンプ部29の作動によって、外部よりも低い。そのため、フラッシングボックス28内外で発生したインクミストの飛散を抑制できる。したがって、フレーム12の内側面やフレーム12内に給送された記録用紙Pがインクミストによって汚染されることを抑制できる。
【0047】
(3)フラッシングボックス28の開口部34は、記録ヘッド18の各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCのうち一つのノズル群に対応した大きさである。そのため、記録ヘッド18の全てのノズル20に対応した大きさに設定される場合に比して、負圧状態のフラッシングボックス28内には気体が開口部34を介して流入しにくい。そのため、開口部34が開放状態である間にポンプ部29が作動しなくても、フラッシング中におけるフラッシングボックス28の内圧を外部よりも低く維持しやすい。したがって、フラッシングボックス28の開口部34が開放される際にポンプ部29が作動しない構成であっても、フラッシング中にフラッシングボックス28内のインクミストが開口部34を介して外部に飛散することを抑制できる。また、フラッシングボックス28外のインクミストの少なくとも一部を、開口部34を介してフラッシングボックス28内に吸引できる。
【0048】
(4)本実施形態では、左右方向に沿って配置されるノズル群21K,21Y,21M,21C,21LC毎に順番にフラッシングが行なわれる。しかし、開口部34が、該開口部34を介してフラッシングボックス28内に流入しようとする気体の流路抵抗として機能するため、全てのノズル群によるフラッシングが完了するまでフラッシングボックス28の内圧が外部の圧力(即ち、大気圧)よりも低圧である状態を維持できる。
【0049】
(5)ポンプ部29は、非フラッシング時におけるキャリッジ15の移動に基づき作動する。すなわち、キャリッジ15を左右方向に移動させるための駆動源(キャリッジモーター17)が、ポンプ部29の駆動源としても機能する。そのため、ポンプ部29の駆動源を別途設ける必要がない分、インクジェット式プリンター11の部品点数の増加を抑制できる。
【0050】
(6)ポンプ部29を左右方向においてフラッシングボックス28とほぼ同一位置に配置したとすると、記録ヘッド18がカバー部材36の被伝達部38に当接する場合にポンプ部29の作動を停止させる構成が必要になり、ポンプ部29の構成が複雑になるおそれがある。また、ポンプ部29を非フラッシング時に作動させる必要があるため、伸縮部材40の伸縮方向における長さを、本実施形態の場合に比して長くする必要がある。すると、フラッシング時においては、キャリッジ15及び記録ヘッド18は、カバー部材36だけではなくポンプ部29の伸縮部材40も押圧する必要があり、キャリッジ15にかかる負荷が大きくなる。この点、本実施形態では、ポンプ部29は、フレーム12内においてフラッシングボックス28の反対側に設けられているため、ポンプ部29の構成の簡略化に貢献できると共に、ポンプ部29の大型化を抑制できる。さらに、フラッシング時におけるキャリッジ15にかかる負荷の増大を抑制できる。
【0051】
(7)カバー部材36の被伝達部38には、第1スプリング39によって右方への付勢力が付与されている。そのため、記録ヘッド18がキャリッジ15と共にフラッシング領域から右方に移動した場合には、第1スプリング39からの付勢力によって、カバー部材36をカバー位置まで速やかに移動させることができる。したがって、フラッシング完了後にフラッシングボックス28の開口部34をカバー部材36によって速やかに閉塞でき、フラッシングボックス28内からの開口部34を介したインクミストの飛散を抑制できる。
【0052】
(8)また、フラッシングボックス28において連通孔32は、上下方向においてインク吸収材30よりも上方に位置している。そのため、連通孔32が上下方向においてインク吸収材30よりも下方に位置する場合とは異なり、インク吸収材30で吸収されたインクが吸引チューブ33を介してフラッシングボックス28外から排出されることを抑制できる。また、連通孔32が上下方向においてインク吸収材30よりも下方に位置する場合に比して、フラッシングボックス28内を効率的に減圧できる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、カバー部材36の被伝達部38は、フラッシング時にキャリッジ15の左端に当接可能な構成でもよい。このように構成しても、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0054】
・実施形態において、カバー機構は、キャリッジ15及び記録ヘッド18の少なくとも一方に設けられる第1磁石と、カバー部材36に設けられ、且つフラッシング領域まで移動した第1磁石に当接可能に配置される第2磁石と、カバー部材36がカバー位置よりも右方に移動することを規制する規制部とを備えた構成でもよい。この場合、第2磁石は、第1磁石に吸着可能に着磁された構成であることが望ましい。このように構成すると、記録ヘッド18がフラッシング領域に移動する場合には、カバー部材36をカバー位置から退避位置側に移動させることができる。一方、記録ヘッド18がフラッシング領域から右方に移動する場合には、退避位置に位置するカバー部材36を、第1磁石と第2磁石との間で発生する磁力と、第1スプリング39からの付勢力とによってカバー位置まで移動させることができる。
【0055】
また、第1磁石と第2磁石との間に十分に大きな磁力が発生する場合には、第1スプリング39を省略してもよい。この場合、第2磁石は、電磁石であることが望ましい。
・実施形態において、カバー機構は、カバー部材36をカバー位置と退避位置との間で移動させるべく駆動する駆動源を備えた構成でもよい。この場合、駆動源を、フラッシング時にキャリッジ15のフラッシング領域への移動に応じて駆動させることが望ましい。
【0056】
・実施形態において、ポンプ部29を、記録ヘッド18が記録用紙Pの右端に向けてインクを噴射する際に伸縮部材40が収縮するように構成してもよい。ただし、ポンプ部29を、記録ヘッド18をホームポジションまで移動させることができるように配置することが望ましい。
【0057】
・実施形態において、ポンプ部は、ポンプ部専用の駆動源の駆動に基づきフラッシングボックス28内に負圧を発生させるポンプでもよい。このように構成すると、カバー部材36によって開口部34が閉塞される間に、フラッシングボックス28内を確実に負圧にすることができる。
【0058】
・実施形態において、フラッシングボックス28の開口部34の大きさを、左右方向において互いに隣り合う2つのノズル群に対応する大きさでもよい。この場合、フラッシング時には、2つのノズル群を構成する各ノズル20からインクを廃インクとして噴射できることができる。
【0059】
・実施形態において、各ノズル群21K,21Y,21M,21C,21LCは、左右方向に沿って配置される1つ以外の任意数(例えば2つ)のノズル列からそれぞれ構成されたものでもよい。この場合、フラッシングボックス28の開口部34の大きさは、一つのノズル列に対応した大きさでもよい。このように構成すると、ノズル列毎にフラッシングが実行されることになる。
【0060】
・実施形態において、吸引チューブ33においてフラッシングボックス28内に位置する開口端には、気体の通過を許容する一方、液体の通過を規制する気体通過性フィルムを設けてもよい。このように構成すると、フラッシングボックス28内の液体(インクを含む。)が吸引チューブ33を介してポンプ室42内に流入することを規制できると共に、吸引チューブ33内がインクによって汚染されることを抑制できる。したがって、吸引チューブ33内が固化したインクによって詰まることがなく、ポンプ部29によるフラッシングボックス28内からの気体の吸引効率の低下を抑制できる。
【0061】
・実施形態において、流体噴射装置を、記録用紙Pの搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッド18が記録用紙Pの幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプのプリンターに具体化してもよい。この場合、フラッシング時には、流体受容部を、その開口部をカバー部材で閉塞した状態で記録ヘッド18に近づけるように移動させてもよい。そして、流体受容部を記録ヘッド18に近接した位置に配置されてからカバー部材を退避位置に移動させ、フラッシングを実行させてもよい。フラッシング終了後には、カバー部材をカバー位置に移動させて開口部を閉塞してから、流体受容部を記録ヘッド18から離間するように移動させてもよい。
【0062】
・実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を噴射する粉粒体噴射装置(例えばトナージェット式記録装置におけるトナー噴射装置)であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。
【0063】
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記カバー機構は、前記カバー部材に前記退避位置側から前記カバー位置側への付勢力を付与する付勢手段と、前記カバー部材に設けられ、前記流体噴射ヘッドと前記流体受容部との互いに接近する方向への相対移動に基づく動力が伝達される被伝達部と、をさらに有することを特徴とする。
【符号の説明】
【0064】
11…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、15…移動手段としてのキャリッジ、18…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、18a…ノズル形成面、20…ノズル、21K,21Y,21M,21C,21LC…ノズル群、28…流体受容部としてのフラッシングボックス、29…負圧発生手段を構成するポンプ部、33,45…負圧発生手段を構成するチューブ、34…開口部、35…カバー機構、36…カバー部材、38…被伝達部、39…付勢手段としての第1スプリング、44,46…負圧発生手段を構成する一方向弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に開口するように形成されるノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
該流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を廃流体として噴射させるフラッシング時に前記流体噴射ヘッドのノズル形成面に対向する開口部を有し、且つ該開口部を介して前記ノズルから廃流体として噴射される流体を受容する流体受容部と、
該流体受容部の開口部を閉塞可能なカバー位置と前記フラッシング時に該開口部を閉塞不能な退避位置との二位置間で移動可能なカバー部材を有するカバー機構と、
前記カバー部材が前記カバー位置に配置される場合に、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動する負圧発生手段と、
前記流体噴射ヘッドと前記流体受容部とを互いに接近及び離間する方向に相対移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体噴射ヘッドは、前記ノズル形成面に開口する前記ノズルを複数有すると共に、前記流体受容部の前記開口部は、前記流体噴射ヘッドの前記各ノズルのうち一部のノズルに対応した形状に形成されており、
前記流体噴射ヘッドは、フラッシング時に、前記各ノズルのうち前記開口部に対向するノズルから流体を廃流体として噴射することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体噴射ヘッドには、少なくとも一つのノズルから構成されるノズル群が複数形成され、前記流体受容部の開口部は、一つのノズル群を構成するノズルに対応した形状に形成されており、
フラッシング時において、前記流体噴射ヘッドは、前記各ノズル群のうち前記開口部に対向するノズル群を構成するノズルから流体を廃流体として噴射した後、前記流体噴射ヘッド及び前記流体受容部は、前記移動手段によって前記各ノズル群のうち前記開口部に対向するノズル群が変更されるように相対移動し、その後、前記流体噴射ヘッドは、前記開口部に対向するノズル群から前記流体噴射ヘッドに流体を廃流体として噴射することを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体噴射ヘッドは、前記移動手段によって予め設定された走査方向に移動するように構成されており、
前記負圧発生手段は、非フラッシング時における前記流体噴射ヘッドの前記走査方向への移動に基づき、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動するポンプ部を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体受容部は、前記走査方向における一方側に配置される一方、前記ポンプ部は、前記走査方向における他方側に配置されており、
前記ポンプ部は、非フラッシング時において前記走査方向における他方側に移動する前記流体噴射ヘッドに押圧されることにより、前記流体受容部内に負圧を発生させるべく作動することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−260309(P2010−260309A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114701(P2009−114701)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】