説明

流体噴射装置

【課題】吐出環境の低下を防ぐことが可能な流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】流体を噴射するノズルが形成された噴射面を有し、前記噴射面が水平面に対して傾斜状態となるように配置された流体噴射ヘッドと、前記流体を吸収する吸収部材を保持する保持部を有し、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部と、前記流体受部に設けられ、前記吸収部材とは別に前記流体を溜める流体溜め部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドの噴射面に形成されたノズル開口からターゲットに流体を噴射する流体噴射装置として、例えば、インクジェット式印刷装置(以下、単に「印刷装置」という。)が広く知られている。このような印刷装置のうち、ヘッドの噴射面が水平面に対して傾斜した状態(例えば、垂直に立った状態)でターゲットに流体を噴射する構成の印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような、いわゆる縦型ヘッドを有する印刷装置においても、増粘したインクによるノズル開口の目詰まり抑制、及びヘッド内のインク中に混入した気泡や塵埃の排出等を目的として、ヘッド内から増粘等したインクを強制的に吸引して排出する吸引動作が行われる。
【0004】
吸引動作においては、例えばヘッドの噴射面に対向するようにキャップ部材を配置させて行っている。この場合、キャップ部材の開口部(噴射面を密閉する部分)が横向きになるため、インクがこぼれないように、例えばキャップ部材の内部にインク吸収材を配置させた状態で吸引動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−293150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成においては、インク吸収材に吸収されたインクが底部に溜まり、キャップ部材の開口部側へ流れる可能性がある。この場合、例えばキャッピング動作等を行うとヘッドの噴射面にインクが付着する可能性がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、吐出環境の低下を防ぐことが可能な流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射するノズルが形成された噴射面を有し、前記噴射面が水平面に対して傾斜状態となるように配置された流体噴射ヘッドと、前記流体を吸収する吸収部材を保持する保持部を有し、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部と、前記流体受部に設けられ、前記吸収部材とは別に前記流体を溜める流体溜め部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、流体を受ける流体受部において吸収部材とは別に流体を溜める流体溜め部が設けられているので、流体受部に受けられた流体を流体溜め部に溜ることができる。これにより、受けられた流体が流体受部の外部に漏出するのを防ぐことができるため、吐出環境の変化を防ぐことができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記流体溜め部は、前記保持部のうち前記吸収部材に対して重力方向の下流側の部分に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、流体溜め部が保持部のうち吸収部材に対して重力方向の下流側の部分に設けられているため、吸収部材に吸収された流体の一部を流体溜め部に溜めることができる。これにより、流体受部から流体が漏出するのをより確実に防ぐことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記流体溜め部を吸引する吸引部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、流体溜め部を吸引する吸引部を更に備えることとしたので、流体受部内の流体を効率的に吸引することができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部は、前記保持部のうち前記吸収部材に対して重力方向の上流側の部分に設けられ、前記吸収部材および前記流体溜め部を大気に連通可能な大気開放口を有することを特徴とする。
本発明によれば、流体受部が、吸収部材および流体溜め部を大気に連通可能な大気開放口を有することとしたので、吸引による流体受部上の負圧状態を解消することができる。大気開放口が、保持部のうち吸収部材に対して重力方向の上流側の部分に設けられるため、流体が大気開放口に流れるのを防ぐことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部は、底部及び縁部が形成されたキャップ部材を有し、前記保持部は、前記底部及び前記縁部を含み、前記流体溜め部は、前記底部及び前記縁部のうち前記保持部に含まれる部分に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、流体溜め部が底部及び縁部のうち保持部に含まれる部分に設けられているため、吸収部材に吸収された流体を流れ込みやすくすることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記傾斜状態は、前記水平面に対して垂直に配置された第一状態を含むことを特徴とする。
本発明によれば、噴射面が水平面に対して垂直に配置された第一状態で配置され、受けられた流体が流体受部の外部に漏出しやすい場合においても、漏出するのを防ぐことができるため、吐出環境の変化を防ぐことができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記傾斜状態は、前記水平面に対して、所定角度傾けられた第二状態を含むことを特徴とする。
本発明によれば、噴射面が水平面に対して所定角度傾けられた第二状態で配置される場合において、受けられた流体が流体受部の外部に漏出しやすい場合においても、漏出するのを防ぐことができるため、吐出環境の変化を防ぐことができる。
【0016】
上記の流体噴射装置は、前記流体受部は、前記噴射面を覆うように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体受部が噴射面を覆う場合であっても、噴射面に流体が付着するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図5】キャッピング動作の様子を示す図。
【図6】キャッピング動作の様子を示す図。
【図7】キャッピング機構の他の構成を示す図。
【図8】キャッピング機構の他の構成を示す図。
【図9】キャッピング機構の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとして例えばインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0020】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、水平面上の所定の方向をX方向とし、当該水平面上においてX方向に直交する方向をY方向とし、当該水平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0021】
筐体PBは、例えばY方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、例えばプラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、例えば+X方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0022】
搬送機構CVは、例えば搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、例えば筐体PBの+Z側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側、−X側あるいは+Z側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、例えば制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0023】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。ヘッドHは、噴射面Haが水平面(XY平面)に対して傾斜状態となるように配置されている。ここで、傾斜状態とは、例えば水平面に対して垂直に配置された第一状態を含むものである。本願では、垂直とは、水平面に対して85°以上95°以下の範囲で傾いた状態を言う。また、傾斜状態は、水平面に対して例えば40°より大きく85°未満の範囲で傾いた第二状態を含むものである。本実施形態では、噴射面Haが第一状態(水平方向に対して垂直)になっている場合を例に挙げて説明する。
【0024】
噴射面Haは、例えば−X方向に向けられている。噴射面Haは、例えばプラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。本実施形態においては、ヘッドHの噴射面Haが−X方向に向けられた構成、すなわち、噴射面Haが水平面と垂直に配置された構成となっている。なお、噴射面Haが当該水平面と垂直な方向に対して0°〜20°程度の範囲で傾けられた構成としても構わない。
【0025】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4を有している。ヘッドHは、当該キャリッジ4に固定されている。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向(Y方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4の他、例えば不図示のパルスモーター、駆動プーリー、遊転プーリー、タイミングベルトなどを有している。キャリッジ4は、当該タイミングベルトに接続されている。キャリッジ4は、タイミングベルトの回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジ4は、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0026】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPには、例えば複数のインクカートリッジ6が収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジ6がヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、例えばヘッドHとインクカートリッジ6とを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジ6内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。 メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、例えば媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、例えばプラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、例えば印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0027】
メンテナンス機構MNは、例えばヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WPなどを有している。キャッピング機構CPには、例えば吸引ポンプなどの吸引機構SCが接続されている。吸引機構SCにより、キャッピング機構CPは、例えば噴射面Haを覆いつつ当該噴射面Ha上の空間を吸引できるようになっている。キャッピング機構CPは、例えばヘッドHの噴射面Haの方向(+X方向)に向けられている。ヘッドHからメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、例えば廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。
【0028】
図2は、キャッピング機構CPの構成を示す図である。図3は、図2におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。
図2及び図3に示すように、キャッピング機構CPは、キャップ部材40を有している。キャップ部材40は、例えば底部41及び縁部42を有している。キャップ部材40は、+X側から見て例えば矩形に形成されている。底部41は、平坦に形成された底面を有する。当該底面は例えば+X方向に向けられている。縁部42は、底部41の周縁部に設けられており、縁部42は、例えば+X側から見て矩形の領域を囲むように形成されている。縁部42は、例えば底部41の周縁部に壁状に形成されている。縁部42の+X側の端面には、シール部材42aが設けられている。シール部材42aは、例えば樹脂など、弾性変形可能な材料によって形成されている。シール部材42aは、例えばヘッドHの噴射面Haに当接され、当該噴射面Haを密閉可能になっている。
【0029】
底部41上のうち縁部42によって囲まれた部分には、インク吸収材43が配置されている。以下、インク吸収材43が配置される部分を収容部40aと表記する。インク吸収材43は、例えばスポンジなどの多孔質性の材料によって形成されている。インク吸収材43は、例えば収容部40aを埋めるように配置されている。インク吸収材43は、底部41及び縁部42によって保持された状態になっている。このように、底部41及び縁部42は、インク吸収材43を保持する保持部としても機能している。
【0030】
縁部42を構成する4辺の壁部のうち例えば重力方向の下流側(−Z側)の第一壁部42bには、インク溜め部44が設けられている。インク溜め部44は、第一壁部42bに対して−Z側に突出するように形成されている。インク溜め部44は、内部にインクが収容される凹部44aを有している。凹部44aは、例えばインク吸収材43に重なる位置に形成されている。凹部44aは、収容部40aに連通されている。凹部44aには、インク吸収材43に吸収されたインクが染み出して収容されて溜まるようになっている。
【0031】
インク溜め部44には、吸引口45が設けられている。吸引口45は、例えば凹部44aの内外を連通するように形成された貫通孔を有している。吸引口45には、例えば吸引機構SCが接続されている。このため、凹部44aは、吸引機構SCによって吸引されるようになっている。凹部44aが吸引されると、当該凹部44aに連通された収容部40aが吸引されることになる。このように、凹部44aを吸引することにより、当該凹部44a及び収容部40aを吸引することができるようになっている。
【0032】
一方、縁部42を構成する4辺の壁部のうち例えば+Z側の第二壁部42cには、大気開放口46が設けられている。大気開放口46は、例えば収容部40aの内外を連通するように形成された貫通孔を有している。大気開放口46には、例えば不図示の電磁弁などが設けられている。当該電磁弁は、例えば制御装置CONTの制御によって開閉するようになっている。
【0033】
図4は、印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態における印刷装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0034】
制御装置CONTには、インクジェット機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MNなど、印刷装置PRTの各部が接続されている。印刷装置PRTは、ヘッドHに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0035】
駆動信号発生器62には、ヘッドHに入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0036】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mを上記支持面13a上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、ヘッドHに駆動信号を入力する。この動作により、ヘッドHの噴射面Haに形成されたノズルNZからインクが−X方向に噴射され、噴射されたインクによって、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0037】
制御装置CONTは、ヘッドHのメンテナンス動作として、例えばキャッピング動作、キャップ部材40内のインクの排出(クリーニング)動作を行わせる。キャッピング動作を行わせる場合、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに移動させ、ヘッドHとキャップ部材40とを対向させる。
【0038】
この状態で、制御装置CONTは、例えばヘッドHの噴射面Haがキャップ部材40に平行になるようにキャップ部材40の姿勢を微調整する。同時に、制御装置CONTは、図示しないカム部材を回転させることにより、キャップ部材40をヘッドH側へ押圧する。この動作により、図5に示すように、キャップ部材40とヘッドHとの間が密閉状態となる。
【0039】
ヘッドHをキャップ部材40に当接させた後、制御装置CONTは例えば大気開放口46を閉状態として吸引機構SCを作動させる。当該吸引機構SCに連通された凹部44a及び当該凹部44aに連通された収容部40aは、吸引機構SCによって吸引されて負圧となる。この負圧により、ヘッドHの各ノズルNZからインクが−X方向に吸引(排出)され、ノズルNZ内のインクの粘度が適正に保持されることになる。ノズルNZから吸引(排出)されたインクは、キャップ部材40内のインク吸収材43によって吸収される。
【0040】
インクの吸引動作が終了した後、制御装置CONTは、大気開放口46を開状態とする。この動作により、キャップ部材40の収容部40aが大気開放され、負圧状態が解除される。制御装置CONTは、負圧状態を解除した後、シール部材42aとヘッドHの噴射面Haとを密着させたまま、吸引機構SCによって再度の吸引を行わせる。この動作により、インク吸収材43に溜まったインクが凹部44aを介して吸引口45から排出されることになる。インクを排出後、制御装置CONTは、図6に示すように、キャップ部材40をヘッドHから離し、吸引動作を終了させる。
【0041】
このような動作を繰り返し行う過程で、例えばインク吸収材43にインクが吸収された状態のまま長時間経過する場合がある。この場合のインクは、インク吸収材43の−Z側に徐々に溜まっていくことになる。ノズルNZから吸引されるインクには、例えば複数の色が含まれているため、溜まっていくインクは混色された状態となる。この場合、キャップ部材40の+X方向に面する開口部側に当該インクが流れると、例えばヘッドHの噴射面Haに付着する可能性がある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、キャップ部材40に設けられた縁部42の第一壁部42bにインク溜め部44が設けられているので、当該インク溜め部44にインクを溜めることができる。このため、キャップ部材40の開口部側にインクが流れるのを防ぐことができる。これにより、インクがヘッドHの噴射面Haに付着するのを防ぐことができ、所期の吐出環境を維持することができる。
【0043】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ヘッドHの噴射面Haが水平方向に対して垂直になるように配置された第一状態となっている構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図7に示すように、水平面に対して、噴射面Haが例えば40°より大きく85°未満の範囲で傾いた第二状態になっている構成であっても、上記説明が可能である。
【0044】
また、噴射面Haの傾きを第二状態とする場合、キャッピング機構CPの構成を変更することができる。例えば図7では、底部41にインク溜め部44が形成された構成が示されている。この場合、インク吸収材43に吸収されたインクは、時間と共に縁部42の傾斜方向に沿って重力方向の下流側(−Z側:図中下側)に移動することになる。このため、インク溜め部44にインクが移動し、当該インク溜め部44の凹部44aにインクが溜められることになる。なお、噴射面Haの傾きが第一状態である場合においてインク溜め部44を底部41に形成しても構わない。
【0045】
また、上記実施形態では、インク溜め部44が縁部42の第一壁部42bに対して−Z側に突出して形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば図8に示すように、第一壁部42bが−Z方向に突出することなく、当該第一壁部42bの一部に凹部44aが形成された構成であっても構わない。この場合であっても、凹部44a内にインクを溜めることができる。
【0046】
また、上記説明においては、縁部42や底部41にインク溜め部44を形成する構成としたが、これに限られることは無い。例えば図9に示すように、−Z側のシール部42dの構成を、例えば+X側に突出させた構成としても構わない。この構成では、シール部42dにインク溜め部44が形成されることになる。この場合、+Z側に突出させた分の段差を利用してインクを溜めることができる。
【0047】
また、上述の実施形態では、本発明の流体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、上述流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0048】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては、上述実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0049】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0050】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
PRT…印刷装置 PB…筐体 SP…インク供給機構 CV…搬送機構 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 IJ…インクジェット機構 H…ヘッド Ha…噴射面 CP…キャッピング機構 SC…吸引機構 M…記録媒体 NZ…ノズル 40…キャップ部材 40a…収容部 41…底部 42…縁部 42a…シール部材 42b…第一壁部 42c…第二壁部 43…インク吸収材 44a…凹部 45…吸引口 46…大気開放口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズルが形成された噴射面を有し、前記噴射面が水平面に対して傾斜状態となるように配置された流体噴射ヘッドと、
前記流体を吸収する吸収部材を保持する保持部を有し、前記流体噴射ヘッドから排出される前記流体を受ける流体受部と、
前記流体受部に設けられ、前記吸収部材とは別に前記流体を溜める流体溜め部と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体溜め部は、前記保持部のうち前記吸収部材に対して重力方向の下流側の部分に設けられている
請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体溜め部を吸引する吸引部を更に備える
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体受部は、前記保持部のうち前記吸収部材に対して重力方向の上流側の部分に設けられ、前記吸収部材および前記流体溜め部を大気に連通可能な大気開放口を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体受部は、底部及び縁部が形成されたキャップ部材を有し、
前記保持部は、前記底部及び前記縁部を含み、
前記流体溜め部は、前記底部及び前記縁部のうち前記保持部に含まれる部分に設けられている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記傾斜状態は、前記水平面に対して垂直に配置された第一状態を含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記傾斜状態は、前記水平面に対して、所定角度傾けられた第二状態を含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記流体受部は、前記噴射面を覆うように形成されている
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−224879(P2011−224879A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97292(P2010−97292)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】