説明

流体噴射装置

【課題】本発明は、流体を受容する吸収部材として線状のものを用い、これにフラッシングをする際にヘッドの移動と吸収部材との移動を迅速に行うことで記録媒体の汚れを防止しつつフラッシング時間の短縮を図ることのできる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明の流体噴射装置は、ノズル列に沿って延在し、ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材と、待機位置とフラッシング位置との間で流体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、吸収部材をフラッシング位置と待機位置との間で移動させる吸収部材移動機構と、を備え、流体噴射ヘッドが待機位置からフラッシング位置へと移動されるのに伴って吸収部材が待機位置からフラッシング位置へ移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を記録用紙(媒体)に対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。このようなプリンターにあっては、記録ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより、ノズルに目詰まりが生じ、印刷不良が引き起こされるという問題があった。そこで、このようなプリンターでは、記録用紙に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に吐出させるフラッシング動作を行うようにしている。
【0003】
一般に走査タイプのプリンターでは、記録ヘッドを記録領域以外のエリアに移動させてフラッシング動作を行わせるようにしているが、記録ヘッドが固定されたラインヘッドを備えるプリンターでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを移動させることができない。
【0004】
そこで、例えば記録用紙を搬送する搬送ベルトの表面に設けられた吸収材(吸収部材)に向けて、インクを吐出する方法が考えられている(特許文献1)。この技術では、搬送ベルトの一部には記録ヘッドのノズル形成面を挿入可能とする開口部が形成されており、この開口部が形成されていないフラッシングベルトのノズル形成面に対向する面がフラッシング時のインク受容部として形成されている。
【0005】
上記技術の場合、記録動作は、記録ヘッドがフラッシングベルトに設けられた開口内にノズル形成面を挿入させた状態で該ノズル形成面に対向する搬送ベルト上の記録用紙に対して行なわれ、フラッシング動作は、記録ヘッド上昇させてノズル形成面を開口内から出した後、フラッシングベルトを回動させて上記開口部が形成されていない部分に対して行われる。
【0006】
しかしながら、平面形状の吸収材に対してフラッシングを行うとインク滴の吐出に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってしまい、記録用紙や搬送ベルト上を汚してしまうおそれもある。
【0007】
そこで、吸収材として線状のものを用い、この線状の吸収部材(吸収材)をラインヘッドと記録用紙(記録媒体)との間に配置し、これに向けてインクを噴射しフラッシングすることにより、インクを吸収部材に受容させることが考えられる。その場合に、この吸収部材については受容できるインク量に限界があるため、ある程度インクを受容させたら吸収部材を移動させ、吸収部材の新たな領域に向けてフラッシングを行い、再度インクの受容を行わせるようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−62339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを動かさないことを基本としていたが、ノズル形成面と記録用紙との間隔は非常に狭いため、上記した特許文献1の技術のように記録ヘッドを上昇させた方が良い。しかしながら、この技術では記録ヘッドを上昇させた後にフラッシングベルトを移動させなければならないためフラッシング動作に時間がかかってしまう。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流体を受容する吸収部材として線状のものを用いて記録媒体(記録用紙)の汚れを防止しつつ、吸収部材にフラッシングをする際にヘッドの移動と吸収部材との移動を迅速に行えることで、フラッシング時間の短縮を図ることが可能な流体噴射装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の流体噴射装置は、上記課題を解決するために、記録媒体の搬送方向に交差する方向に配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、ノズル列に沿って延在し、ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材と、待機位置とフラッシング位置との間で流体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、吸収部材をフラッシング位置と待機位置との間で移動させる吸収部材移動機構と、を備え、流体噴射ヘッドが待機位置からフラッシング位置へと移動されるのに伴って吸収部材が待機位置からフラッシング位置へ移動されることを特徴とする。
【0012】
本発明の流体噴射装置では、流体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、吸収部材を移動させる吸収部材移動機構とにより、流体噴射ヘッドが待機位置からフラッシング位置へと移動されるのに伴って吸収部材が待機位置からフラッシング位置に移動される構成となっている。従来ではヘッドを上昇させた後でないとシート状のフラッシング受けを移動させることができない構成となっていたが、本発明では線状の吸収部材を用いて流体噴射ヘッドの移動と同時に吸収部材を移動させることが可能となり、フラッシングに要する時間を短縮することができる。これにより、メンテナンス効率が高まる。
【0013】
また、フラッシング動作時において流体噴射ヘッドと搬送面との間に記録時のときよりも広い隙間をあけることができるので、この隙間に吸収部材を配置させることで他の部材との接触を避けることが可能となり、流体が付着して汚れてしまうのを防止することができる。
【0014】
また、前記吸収部材移動機構および前記流体噴射ヘッド移動機構が共に同一の駆動モーターを含んで構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、1つの駆動モーターが吸収部材移動機構と流体噴射ヘッド移動機構とにおける両方の動作を担うことにより、装置規模の小型化を促進できる。
【0016】
また、吸収部材移動機構は、吸収部材と記録媒体の搬送面との間隔がフラッシング位置のときよりも退避位置のときの方が大きくなるように、吸収部材を搬送方向に対して斜めに移動させることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、流体噴射ヘッドが記録媒体に対して記録動作を実施している際に、退避位置にある吸収部材と記録媒体との接触を避けるようにしたので、記録媒体が汚れるのを防止することができる。
【0018】
また、前記ヘッド移動機構は、前記流体噴射ヘッドを保持する保持部材と、前記保持部材の一端側を回動可能に支持する回動支持部材と、前記保持部材の他端側を支持するとともに回転することによって前記保持部材を揺動させ、前記流体噴射ヘッドを前記待機位置と前記フラッシング位置との間で往復移動させるカム部と、を備えたことが好ましい。
【0019】
本発明によれば、保持部材の一端側が回動支持部材に支持されているとともに他端側がカム部に支持されていることから、カム部の回転に伴って、保持部材の他端側が回動支持部材に支持された一端側を支点として揺動し、流体噴射ヘッドを待機位置からフラッシング位置との間で往復移動させることが可能となる。このように、保持部材を介してカム部の回転量を流体噴射ヘッドへ直接的に伝達させることができるので、装置の小型化も可能となる。
【0020】
また、前記カム部の周側面には、前記流体噴射ヘッドをフラッシング位置に配置させる第1領域と、前記流体噴射ヘッドを前記待機位置に配置させる第2領域と、が設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、保持部材が接触面の第1領域に接触している期間中は流体噴射ヘッドがフラッシング位置に維持され、接触面の第2領域に接触している期間中は流体噴射ヘッドが待機位置に維持されることになるので、カム部の回転量によって流体噴射ヘッドの位置を変化させることができる。
【0022】
また、前記搬送面を介して前記流体噴射ヘッドのノズル形成面と対向する位置に前記ノズル形成面を封止するキャップ部材が配置され、前記カム部の前記周側面には、前記流体噴射ヘッドを前記ノズル形成面が前記キャップ部材によって封止される位置に配置させる第3領域が設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、カム部の第3領域に保持部材が当接している期間中、流体噴射ヘッドのノズル形成面をキャップ部材によって封止することができる。
【0024】
また、ヘッド移動機構には、保持部材をカム部側へと押圧する押圧部材が設けられていることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、カム部に対する保持部材の接触状態を維持することが可能となる。特に、キャップ部材によってノズル形成面を封止している期間においては、キャップ部材による封止状態を確実に維持することが可能となり、キャップ部材による封止を良好に行える。
【0026】
また、搬送面とキャップ部材との間に配置されキャップ部材上を被覆可能な蓋部材を有することが好ましい。
【0027】
本発明によれば、記録動作時やフラッシング動作時にキャップ部材上を蓋部材により被覆しておくことで、搬送中の記録媒体がキャップ部材に接触することが防止される。これにより、記録媒体の搬送に影響を与えることなく良好な搬送が行える。また、キャップ部材上が覆われることで、記録媒体に着弾せずに通過してきた流体によってキャップ部材が汚れるのを防止することができる。例えばノズル形成面に当接するようにして封止する場合にノズル形成面が汚れる心配がない。
【0028】
また、カム部が流体噴射ヘッドの搬送方向に交差する方向における両側にそれぞれ配置され、これら一対のカム部が同一の駆動モーターに連結されていることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、大型の流体噴射ヘッドにも対応できる。例えば、搬送方向に交差する記録媒体の幅方向に長さを有する流体噴射ヘッドであっても、この長さ方向両側に配置されたカム部によって支持することで強度を確保できる。
【0030】
また、保持部材と、回動支持部材と、カム部と、カム部と同軸をなし保持部材の裏面に形成された歯切部に係合するピニオンと、を有するラック・アンド・ピニオン機構を備え、ラック・アンド・ピニオン機構はヘッド移動機構および吸収部材移動機構の機能を兼ね備えることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、構造が簡単で安価な点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係るプリンターの全体構成を示す斜視図。
【図2】ヘッドユニットの概略構成斜視図。
【図3】ヘッドユニットを構成する記録ヘッドの概略構成斜視図。
【図4】メンテナンス装置の概略構成を示す側面図。
【図5】カム部の概略構成を示す側面図。
【図6】フラッシングユニットの概略構成を示す平面図。
【図7】吸収部材の一例を示す模式図であり、(a)断面図、(b)平面図。
【図8】キャップユニットの概略構成斜視図。
【図9】フラッシング動作時の状態を示す図。
【図10】記録動作時の状態を示す図。
【図11】キャッピング動作時の状態を示す図。
【図12】ラック・アンド・ピニオン機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、流体噴射装置として、インクジェットプリンター(以下、単にプリンターと称す)について例示する。
【0034】
[第1実施形態]
図1は、本発明の流体噴射装置の一実施形態である
図1はプリンターの概略構成斜視図である。
【0035】
図1に示すように、プリンター1は、ヘッドユニット2と、記録用紙(記録媒体)を搬送する搬送装置3と、記録用紙を供給する給紙ユニット4と、ヘッドユニット2によって印字された記録用紙を排出する排紙ユニット5と、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うメンテナンス装置10とを備えて構成されている。
【0036】
搬送装置3は、ヘッドユニット2を構成する各記録ヘッド(流体噴射ヘッド)21(21A、21B、21C、21D、21E)のノズル形成面23との間に所定の間隔をあけた状態で、記録用紙を保持するように構成されたものである。この搬送装置3は、駆動ローラー部31と、従動ローラー部32と、これらローラー部31、32との間に架け回された複数のベルトから構成された搬送ベルト部33と、を備えている。また、この搬送装置3における記録用紙の搬送方向下流側(排紙ユニット5側)であって、排紙ユニット5との間に、記録用紙を保持する保持部材34が設けられている。
【0037】
駆動ローラー部31は、回転軸方向の一端側が不図示の駆動モーターに接続されたもので、駆動モーターによって回転駆動されるように構成されたものである。そして、この駆動ローラー部31の回転動力が搬送ベルト部33に伝達され、搬送ベルト部33が回転駆動するようになっている。駆動ローラー部31と駆動モーターとの間には、必要に応じて伝達ギアが設置される。従動ローラー部32は、いわゆるフリーローラーであり、搬送ベルト部33を支持するとともに、搬送ベルト部33(駆動ローラー部31)の回転駆動に従動して回転するようになっている。
排紙ユニット5は、排紙用ローラー51と、この排紙用ローラー51によって搬送された記録用紙を保持する排紙トレー52と、を備えて構成されている。
【0038】
ヘッドユニット2は、複数(本実施形態では5つ)の記録ヘッド21A〜21Eをユニット化することで構成されたもので、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル24(図3参照)からは、複数色のインク(例えば、ブラックB、マゼンタM、イエローY、シアンCの各インク)が吐出されるようになっている。これら記録ヘッド21A〜21E(以下、記録ヘッド21と称す場合もある)は、取付板22に取付けられることでユニット化されている。すなわち、本実施形態に係るヘッドユニット2は、複数の記録ヘッド21が複数組み合わされたことにより、ヘッドユニット2の有効印字幅が記録用紙の横幅(搬送方向と直交する幅)と略同等とされる、ラインヘッドモジュールを構成している。なお、各記録ヘッド21A〜21Eにおけるそれぞれの構造自体は共通とされている。
【0039】
図2は、ヘッドユニットの概略構成斜視図である。
図2に示すようにヘッドユニット2は、取付板22に形成された開口部25内に、各記録ヘッド21A〜21Eを配置したものである。具体的には、各記録ヘッド21A〜21Eが取付板22の裏面22b側に螺子止めされたことで、ノズル形成面23が前記開口部25を通って取付板22の表面22a側から突出した状態に配置されたものである。また、このヘッドユニット2は、前記取付板22が不図示のキャリッジに固定されたことにより、プリンター1に搭載されている。
【0040】
本実施形態におけるヘッドユニット2は、後述するメンテナンス装置10によりメンテナンス処理(吸引処理、ワイピング処理)が実施されるようになっている。
【0041】
図3は、ヘッドユニットを構成する記録ヘッド(流体噴射ヘッド)の概略構成斜視図である。
図3に示すように、ヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21A〜21E(以下、単に記録ヘッド21と称す場合もある)は、複数のノズル24によって構成されるノズル列Lが複数列形成されたノズル形成面23を有するヘッド本体25Aと、このヘッド本体25Aが取付けられる支持部材28と、を備えて構成されている。
【0042】
各記録ヘッド21A〜21Eは、4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))に対応したノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))を有しており、したがってノズル列Lを4列形成している。各ノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))において、これらノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))を構成するノズル24は、記録用紙の搬送方向と交差する水平方向に配列されている。具体的には、記録用紙の搬送方向と直交する水平方向に配列されている。
【0043】
そして、各記録ヘッド21A〜21Eは、それぞれのノズル列が、これら記録ヘッド21A〜21Eの配置方向において同じ色に対応するノズル列Lが一列になるように、配置されている。なお、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))については、各色毎に2列ずつ、合計8列形成されていてもよい。その場合に、各色毎に設けられた2列のノズル列は、千鳥状に配置されているのが好ましい。
【0044】
支持部材28には、ノズル形成面23の長手方向の両側に張り出し部26、26が形成されており、これら張り出し部26、26には、記録ヘッド21を前記取付板22の裏面22bに螺子止めするための貫通孔27が形成されている。これにより、複数の記録ヘッド21が取付板22に取付けられ、ヘッドユニット2が構成されている(図1参照)。
【0045】
本実施形態のヘッドユニット2は、記録位置、フラッシング位置、キャッピング位置の間で移動可能に構成されている。ここで、記録位置とは、ヘッドユニット2全体が記録用紙に対向するとともに当該記録用紙に対して記録を行う位置であり、フラッシング位置とは、ヘッドユニット2に対してフラッシング処理を行う位置であり、キャッピング位置とは、ヘッドユニット2における各記録ヘッド21のノズル形成面23が封止される位置である。
【0046】
図4は、メンテナンス装置の概略構成を示す側面図である。図5は、カム部の概略構成を示す側面図である。
図4に示すように、本実施形態のメンテナンス装置10は、ヘッドユニット2を移動させるヘッド移動機構71と、フラッシング動作により各ヘッドから吐出されたインクを受けるための吸収部材12を備えるフラッシングユニット11と、吸収部材12をフラッシングユニット11ごと移動させる吸収部材移動機構72と、ヘッドユニット2に対して吸引処理を行うキャップユニット6とを有して構成されている。
本実施形態においては、ヘッド移動機構71および吸収部材移動機構72が共に同一の駆動モーター73を含んで構成されている。
【0047】
ここで、プリンターにおいては、記録用紙(被記録媒体)に対して記録処理を行う際に、記録用紙が記録ヘッド21に対して一定の姿勢(平行)となるようにプラテン8で支持する必要がある。本実施形態ではこのプラテン8の表面を記録用紙の搬送面88とし、図4中において一点鎖線で示す。
【0048】
ヘッド移動機構71は、揺動機構58とカム機構59とを有する。
揺動機構58は、ヘッドユニット2を保持する保持部材74と、保持部材74の一方の端部74Aをそれぞれ回動可能に軸支する支持軸75(回動支持部材)と、保持部材74の他方の端部74Bに設けられた接触部76とを有して構成されている。
【0049】
保持部材74は、上述したヘッドユニット2を保持可能とする平面形状を有するものであって、具体的には複数の記録ヘッド21が取り付けられた取付板22(図2)に対応した大きさで形成されている。ヘッドユニット2は、保持部材74における記録用紙の搬送方向略中央付近に、各記録ヘッド21のノズル形成面23(図2)が保持部材74の裏面74bから搬送面88側に突出するように取り付けられている。
【0050】
なお、保持部材74が取付板22を兼ねた構成とされていてもよく、保持部材74自体に複数の記録ヘッド21が直接固定されていても良い。
【0051】
保持部材74の一方の端部74Aに形成された挿入孔74c内には支持軸75が挿入されており、この支持軸75によって、端部74A側の裏面74bと搬送面88との間に所定の間隔が設けられるように保持部材74の位置決めがなされている。また、この支持軸75は挿入孔74cに対して遊嵌されていることから、端部74A側を支点として他方の端部74B側が揺動可能となるように構成されている。
【0052】
また、保持部材74のヘッドユニット2よりも端部74B側は、搬送面88との間に空間Kを形成するために搬送面88とは反対側に向かって屈曲されている。そして、端部74Bにおいて搬送面88側へ向かって延出する接触部76が、後述するカム部81に接触することで当該カム部81に支持されるようになっており、具体的には、この接触部76の先端に回転自在に取り付けられた回転ローラー76Aがカム部81に接触する。
【0053】
カム機構59は、一対のカム部81と、これらカム部81,81同士を連結するカムシャフト82と、カムシャフト82とシャフト91との間に架け回されたタイミングベルト84と、駆動モーター73とを含んで構成されている。
【0054】
一対のカム部81,81は、側面視において略半円形状を呈してなるもので、プラテン8の幅方向(搬送方向に交差する方向)両側に互いの側面を対向させた状態で対向配置されている。これら一対のカム部81,81は、側面視において互いの形状が重なるように揃えた姿勢で対向配置され、それぞれの軸孔81a(一方のカム部81の孔81aは不図示)内に嵌入されたカムシャフト82の軸部82aを中心にして同時に同一方向へ回転するものである。具体的には、保持部材74の下方であって当該保持部材74の端部74Bと対向する位置に配置され、それらの側周面に保持部材74の回転ローラー76Aが当接される。
【0055】
図5に示すように、各カム部81の側周面81Aは連続する複数のカム領域Aを有してなり、それぞれ軸孔81aからの距離が異なっている。本実施形態においては、例えば、軸部と同心状の円弧をなす第1カム領域A(1)と、第1カム領域A(1)から所定の曲線を描いて軸部側に向かって延びる第2カム領域A(2)と、第2カム領域A(2)から所定の曲線を描いて延びるとともに軸部と同心状の円弧をなす第3カム領域A(3)と、第3カム領域A(3)から所定の曲線を描いてさらに軸部側に向かって延びる第4カム領域A(4)と、第4カム領域A(4)から所定の曲線を描いて延びるとともに軸部と同心状の円弧をなす第5カム領域A(5)と、第5カム領域A(5)から所定の曲線を描いて第1カム領域A(1)へ延びる第6カム領域A(6)の6つである。
なお、カム領域Aの数は上記に限られることはなく、各カム領域Aの軸孔81aからの距離等と同様に適宜設定される。
【0056】
本実施形態におけるカム部81,81は、その孔81a(カムシャフト82の軸部82a)が搬送面88よりも下方側、言い換えれば搬送面88に対してヘッドユニット2側とは反対側に位置するように配置されている。
【0057】
カムシャフト82と当該カムシャフト82と搬送方向に間隔をおいて配置されたシャフト91との間にはベルト84が架け回されている。
シャフト91は、軸方向一端側に設けられたタイミングベルト84を介して駆動モーター73に接続され、駆動モーター73によって所定の回転速度で回転駆動されるように構成されたものである。そして、このシャフト91の回転動力がタイミングベルト84に伝達され、タイミングベルト84が回転駆動するようになっている。このタイミングベルト84は、駆動モーター73の作用によって時計周り(正転)および反時計回り(反転)に回転する。
【0058】
上述したカムシャフト82はいわゆる従動ローラーであってタイミングベルト84を支持するとともに、ベルト84(シャフト91)の回転駆動に従動して回転するようになっている。シャフト91と駆動モーター73との間には、必要に応じて伝達ギアが設置されていてもよい。
【0059】
そして、カム部81,81の回転(正転・反転)に応じてそれぞれの側周面81Aに当接している保持部材74の回転ローラー76Aが、周方向に並ぶ複数のカム領域Aに連続して接触していく過程で保持部材74が揺動し、これに伴い、搬送面88に対するヘッドユニット2の位置が上下に変動することになる。
【0060】
本実施形態のヘッド移動機構71には、保持部材74をカム部81側へと押圧する押圧部材87が設けられている。押圧部材87はコイル状のバネ部材であって、一端側が保持部材74の端部74Bに取り付けられており、他端側がプリンターの他の部材(固定された部材)との間に取り付けられている。
【0061】
吸収部材移動機構72は、記録用紙の搬送面88(プラテン8)と保持部材74およびヘッドユニット2との間に配置されるフラッシングユニット11(吸収部材12)を、記録用紙の搬送方向に沿ってフラッシング位置と待機位置との間で移動させるものであって、上記したタイミングベルト84と、該タイミングベルト84とフラッシングユニット11とを接続する接続部29と、上記駆動モーター73とを含んでなる。
【0062】
ここで、フラッシング位置とはヘッドユニット2とフラッシングユニット11とが対向する位置である。つまり、ヘッドユニット2の下方において吸収部材12が対応する記録ヘッド21のノズル列(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)に対向した(平面視して重なる)状態であって、フラッシング動作時にノズル列Lから吐出されたインク滴を受容して吸収できる位置、すなわちインクの飛行経路上の位置である。
【0063】
一方、退避位置とは、ヘッドユニット2よりも上流側においてヘッドユニット2とは対向しない(平面視して重ならない)状態であって、記録動作時に各ノズル24(図2)から吐出された記録用のインク滴が吸収部材12に吸収されることのない位置である。具体的には、保持部材74と搬送面88(カム部81)との間に形成される空間K内に配置された状態である。
【0064】
フラッシングユニット11(吸収部材12)は、駆動モーター73に連結されたタイミングベルト84の回転(正転および反転)に伴って搬送方向に沿って往復移動が可能とされている。フラッシングユニット11(吸収部材12)の移動速度や停止位置の制御は駆動モーター73の回転角によって任意に調整することができる。このため、搬送方向に複数のノズル列Lがある記録ヘッド21を備える場合であっても、各ノズル列Lに対向する位置に吸収部材12の停止位置を設定することが可能であり、走査速度も適宜設定を行うことが可能である。
【0065】
フラッシングユニット11は、複数の吸収部材12と、これら複数の吸収部材12を支持する支持機構9(図4参照)とを有して構成されている。なお、図4中においては簡略化のために吸収部材12のみが図示してある。また、1本のみが図示してあるが、実際には各色ごとに複数本(本実施形態においては4本)の吸収部材12が備えられている。
【0066】
図6はフラッシングユニット11の一例を示す平面図である。
図6に示すように、フラッシングユニット11は、複数の吸収部材12と、これら複数の吸収部材12を支持する支持機構9とを有して構成されている。
支持機構9は、吸収部材12を一方向に走行させる走行部13と、吸収部材12を所定量移動させる移動部14とを備えて構成されたもので、本実施形態ではヘッドユニット2の複数の記録ヘッド21の配列方向における一方向に設けられている。
なお、図6では、ヘッドユニット2の一部を省略し、記録ヘッド21を2つのみ示している。また、このヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21については、ノズル列Lが(Y)、(M)、(C)、(Bk)の各色ごとに2列ずつ、合計8列が形成されているものを示している。
【0067】
走行部13は、ヘッドユニット2の両側に配設された支持基板15A,15Bと、支持基板15B上に設けられた反転ローラー89,89と、を備えて構成されたもので、吸収部材12を記録ヘッド21のノズル列Lに沿ってその一方側から他方側に向かって走行させた後、反転ローラー89を周回させて再度一方向側に向かうように走行させる。
【0068】
支持基板15A上には、送出リール16、送出モーター16A、調整レバー18、引っ張りバネ19、第1センサ36、第2センサ37、検査用回転体20、検知部41、ローラー42、巻取リール17、巻取モーター17A、安全レバー44、引っ張りバネ45、安全センサ部47、ローラー43が設けられている。
【0069】
ローラー42とローラー43とは、これらを周回する吸収部材12の位置、すなわち吸収部材12の延在方向Pと直交する方向Rでの箇所が、記録ヘッド21に形成された複数(本実施形態では8列)のノズル列Lのうちの、隣り合うノズル列L、L間のピッチと同じ間隔になるように配置されている。吸収部材12は、これらローラー42,43によりヘッドユニット2に対向する位置が決められている。
【0070】
このような構成の走行部13は、送出リール16から巻き出した(送り出された)吸収部材12を、ローラー42を周回させた後、ヘッドユニット2に対向する側を通過させ、一方の反転ローラー89に到達させることで、この往路での吸収部材12をノズル列Lに沿って延在させている。また、一方の反転ローラー89を周回させた後に他方の反転ローラー89を経由して再度ヘッドユニット2に対向する側を通過させ、ローラー43に到達させることで、復路での吸収部材12もノズル列Lに沿って延在させている。
また、ローラー43を周回した吸収部材12は、複数のローラーを経由して巻取リール17に巻き取られる。
【0071】
移動部14は、支持基板15A、15Bに設けられた一対の移動機構部14A、14Bによって構成されたもので、これら移動機構部14A、14Bが同期して動作することにより、支持基板15A、15Bを方向Rにおける同方向に、同時にかつ同一長さ、移動させるようになっている。移動機構部14A、14Bは、モーター55が回転することでボールネジ54が回転し、このボールネジ54に螺合する固定ブロック56がボールネジ54の長さ方向、すなわち図6中のR方向に移動するようになっている。これにより、移動機構部14A、14Bに固定された支持基板15A、15Bが、前述したように方向Rにおける同方向に、同時にかつ同一長さ、移動するようになっている。そして、これら支持基板15A、15Bの移動に伴い、吸収部材12も同様に移動するようになっている。なお、モーター55は正逆方向に回転可能になっており、したがって固定ブロック56や支持基板15A、15B、吸収部材12も、R方向における両方の側に移動可能になっている。
【0072】
そして、モーター55は図示しない制御部によって制御されるようになっており、これによって移動部14は、ヘッドユニット2(ノズル列L)に対する各吸収部材12の位置を予め設定された通りに変化させるよう、移動させるようになっている。具体的には、吸収部材12を、ヘッドユニット2の対応するノズル列Lの延在方向Pと直交する方向R、すなわち記録用紙の搬送方向に沿って、予め設定された距離移動させるようになっている。
【0073】
なお、本実施形態において示した吸収部材12を支持する支持機構9は一例であってこれに限ったものではない。
【0074】
吸収部材12は、各ノズル24から吐出されたインク滴を吸収する線状のもので、本実施形態では1つのヘッドユニット2に対して2本設けられている。各吸収部材12は、それぞれ、対応するノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))に沿って延在した状態に配置され、かつ、各ノズル形成面23と記録用紙の搬送領域との間に配置されている。
【0075】
この吸収部材12は、例えば糸材などによって形成されたもので、インクを効率よく吸収、保持(受容)できるものが好適に用いられる。具体的には、SUS304、ナイロン、親水性コートを施したナイロン、アラミド、絹、綿、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、ザイロン(商品名)等の繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から吸収部材12を形成することができる。
【0076】
より詳細には、前記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、撚り合わされるあるいは束ねられることによって吸収部材12が形成可能である。
【0077】
図7は、吸収部材12の一例を示す模式図であり、(a)が断面図、(b)が平面図である。これらの図に示すように、吸収部材12は、例えば、繊維から形成される繊維束12aが2本撚り合わされることによって形成される。
【0078】
また、他の例としては、SUS304からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、親水性コートが施されたナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、アラミドからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、絹からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、綿からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ベリーマ(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ソアリオン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロン03T(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ダイニーマハミロンDB−8(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ベクトランハミロンVB−30からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−5コアケブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−212コアカブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンSZ−10コアザイロンスリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンVB−3ベクトラン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材が、吸収部材12として好適に用いられる。
【0079】
ナイロンの繊維を用いた吸収部材12は、汎用水糸として広く用いられるナイロンによって形成されているため、安価なものとなる。
SUS材の金属繊維を用いた吸収部材12は、耐腐食性に優れるため多様なインクを吸収可能となると共に、樹脂と比較して磨耗性が高いため繰り返しの使用が可能となる。
【0080】
超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度及び耐薬品性が高く、有機溶剤や酸、アルカリに強いものとなる。このように、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度が高いため、強いテンションで引っ張ることが可能となり、撓みを抑止することができる。このため、例えば、吸収部材12の径を太くして吸収容量を増加させたり、また吸収部材12の径を太くしない場合にはヘッド21A〜21Eから記録用紙の搬送領域までの距離を狭くし印刷精度を向上させることができる。また、ザイロンやアラミドの繊維を用いた吸収部材12も、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12と同様の効果を期待できる。
綿の繊維を用いた吸収部材12は、インク吸収性に優れたものとなる。
【0081】
このような吸収部材12では、滴下されたインクが表面張力によって繊維間及び繊維束12a間に形成される谷部12b(図7参照)に保持されるため、インクが吸収・受容される。
また、吸収部材12の表面に滴下したインクは、一部が直接吸収部材12の内部に浸透し、残りが繊維束12a間に形成される谷部12bを伝う。そして、吸収部材12の内部に浸透したインクは、吸収部材12の内部において一部が徐々に吸収部材12の延在方向に移動し、吸収部材12の延在方向に分散して保持される。吸収部材12の谷部12bを伝うインクは、谷部12bを伝いながら、徐々にその一部が吸収部材12の内部に浸透し、残りが谷部12bに残存し、これによって吸収部材12の延在方向に分散して保持される。つまり、吸収部材12の表面に滴下したインクは、長期的には全てが滴下された箇所に留まるわけではなく、滴下された箇所の周囲に分散して吸収される。
【0082】
なお、実際にプリンター1に設置する吸収部材12の形成材料については、吸インク性、保持インク性、引張強度、耐インク性、成形性(けばやほつれの発生量)、ねじれ性、コスト等を考慮して適宜に選択される。
また、吸収部材12のインク吸収量は、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量と谷部12bに保持できるインク量の合計である。このため、このインク吸収量が、吸収部材12の交換頻度等を考慮して、フラッシングによって吐出されるインク量よりも十分に大きくなるように、吸収部材12の形成材料が選択される。
【0083】
なお、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量及び谷部12bに保持できるインク量は、インクと繊維との接触角、インクの表面張力に依存する繊維隙間における毛細管力によって規定することができる。つまり、細い繊維を用いて形成することで繊維間の隙間を多くし、全体として繊維の表面積を増加することにより、吸収部材12の断面積が同一であっても、吸収部材12はより多量のインクを吸収することができるようになる。したがって、繊維間の隙間をより多くするため、繊維束12aを形成する繊維として、マイクロファイバー(極細繊維)を用いるようにしてもよい。
【0084】
ただし、吸収部材12のインク保持力は、繊維間の隙間が大きくなって毛細管力が低下することで低減する。このため、繊維間の隙間については、吸収部材12におけるインク保持力が吸収部材12の移動によってインクが垂れない程度となるように、設定する必要がある。
【0085】
また、吸収部材12の太さについては、例えば前記ノズル24の径(ノズル径)に対して、5〜75倍程度の太さ(径)とされる。一般的なプリンターでは、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル形成面23と記録用紙との間のギャップが1mm〜2mm程度、ノズル径が約0.02mmとなっている。したがって、吸収部材12は、直径が0.5mm以下であれば、各ノズル形成面23や記録用紙に接触することなくこれらの間に配置させることができ、かつ0.2mm以上であれば、部品の誤差を考慮しても、吐出されたインク滴を確実に捕捉することができるようになる。そのため、吸収部材12は太さ(径)が0.2mm〜0.5mm程度、すなわちノズル径に対して10〜25倍程度であるのが好ましい。なお、吸収部材12の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形等であってもよい。ここで、吸収部材は完全な円形に作るのは難しいので、円形とは略円形も含む。
【0086】
また、吸収部材12の長さについては、ヘッドユニット2の有効印字幅に対して十分な長さを有しているのが好ましい。本実施形態のプリンター1では、後述するように吸収部材12の使用済み(インク吸収済み)の領域が順次巻き取られ、吸収部材12のほぼ全領域においてインクが吸収された際に、吸収部材12全体が取り替えられる構成が採用されている。そのため、吸収部材12の取替え期間を実用に耐え得る時間とするべく、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の数百倍程度であるのが好ましい。このような構成からなる吸収部材12は、図6に示すように支持機構9によって支持されている。
【0087】
図5に示すようにキャップユニット6は、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うもので、搬送面よりも下方の領域に配置されている。
【0088】
図8は、キャップユニットの概略構成斜視図である。
図8に示すように、キャップユニット6は、各記録ヘッド21A〜21Eに対応する複数(本実施形態では5つ)のキャップ部61A〜61Eがユニット化されたことにより、構成されたものである。このキャップユニット6は、ヘッドユニット2の記録エリアから外れた場所に配置されている。
【0089】
各キャップ部61A〜61E(以下、単にキャップ部61と称す場合もある)は、記録ヘッド21A〜21Eの各々にそれぞれ対応して設けられたもので、各記録ヘッド21A〜21Eのノズル形成面23に当接可能に構成されたものである。このような構成のもとにキャップ部61A〜61Eは、記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル形成面23にそれぞれ密着することにより、各ノズル形成面23のノズル24からインク(流体)を排出させる吸引動作を、良好に行うことができるようになっている。
【0090】
また、これら各キャップ部61A〜61Eは、キャップ本体67と、キャップ本体67の上面に枠状に設けられ、記録ヘッド21に当接されるシール部材62と、記録ヘッド21のノズル形成面23を払拭するワイピング処理時に用いられるワイプ部材63と、これらキャップ本体67及びワイプ部材63を一体的に保持する筐体部64と、を備えている。
【0091】
筐体部64の底部には、筐体部64をベース部材69に保持するための保持部65が2つ(1つは不図示)形成されている。これら保持部65は平面視において筐体部64における対角をなす位置に配置されている。保持部65の各々には、筐体部64をベース部材69に螺子止め固定するための螺子が挿入される貫通孔65bが形成されている。
【0092】
このような構成におけるフラッシングユニット11は、接続部29を介してタイミングベルト84に接続されており、当該タイミングベルト84の移動に伴って搬送方向に往復移動する。タイミングベルト84は、互いに径の異なるシャフト82、91に架け回されているため、シャフト91側からこれよりも直径の大きいカムシャフト82側にかけてその一部分が斜めに延在することとなる。このため、例えば、フラッシングユニット11(吸収部材12)がフラッシング位置に配置されていた場合、タイミングベルト84が反時計周りの方向へ回動されると、フラッシングユニット11は搬送面88に対して斜め上方へ移動して待機位置へと配置される。フラッシングユニット11、つまり吸収部材12と搬送面88との距離がフラッシング位置のときよりも待機位置のときの方が大きくなるため、記録中、待機位置に配置される吸収部材12と記録用紙との接触を避けることができる。
【0093】
本実施形態では、図5に示すように、キャップユニット6上を被覆可能とするシャッター部材92(蓋部材)が設けられている。シャッター部材92は平板状を呈し、プラテン8の下方においてその下面に倣うようにしてスライド可能に設けられたもので、プラテン8に設けられたヘッド挿入孔8aを開閉させるように動作する。このシャッター部材92は平板状を呈し、その平面視における大きさがヘッド挿入孔8aよりも大きいことが好ましい。なお、キャップユニット6における複数のキャップ部61上を一度に被覆可能な大きさであることは勿論のことである。そして、不図示の移動機構により記録用紙の搬送方向に沿って往復移動させられる。ここでは、ヘッド挿入孔8aよりも記録用紙の搬送方向上流側(カム部81側)に移動する構成となっているが、これとは反対側の下流側に向かって移動する構成とされていてもよい。
また、プラテン8の構成については、1つの板部材から構成されていてもいいし、一対の板部材を搬送方向に所定の間隔をあけて配置して相互間にヘッドユニット2を挿入可能とする構成としても良い。
【0094】
次に、プリンターの動作について、フラッシングユニットの動作を中心に説明する。
図9はフラッシング動作時の状態を示す図、図10は記録動作時の状態を示す図、図11はキャッピング動作時の状態を示す図である。
【0095】
図9に示すように、フラッシング動作時の状態においては、保持部材74の回転ローラー76Aがカム部81の第1カム領域A(1)に当接し、ヘッドユニット2およびフラッシングユニット11がフラッシング位置へと配置されている。フラッシングユニット11に設けられた各吸収部材12は、ヘッドユニット2の各記録ヘッド21のノズル列Lに対向する位置に配置され、各記録ヘッド21から吐出されたインクを受容する。
【0096】
フラッシング動作中、カム部81は駆動モーター73の作用によって所定の速度(一定の速度)で反時計回りに回転する。保持部材74の回転ローラー76Aが第1カム領域A(1)に当接しながら回転している間、ヘッドユニット2はフラッシング位置に配置されたままでその状態が維持される。
【0097】
保持部材74は端部74A側の支持軸75を支点として端部74B側が揺動する構成であり、ヘッドユニット2はこのような保持部材74に固定されている。このため、回転ローラー76Aがカム部81の第1カム領域A(1)に当接することで端部74B側が端部74A側よりも上昇した状態(吸収部材12がフラッシング位置に配置された状態)においては、ヘッドユニット2における各記録ヘッド21のノズル形成面23(図2)が搬送面88に対して斜めになっている。
なお、この姿勢はフラッシング処理に影響のない姿勢であって、各ノズル列Lから突出されたインク滴はその直下に対向して配置される吸収部材12によって確実に受容され、ノズル形成面23上にインクが濡れ広がるような不具合は生じない。
【0098】
また、フラッシング動作時においてはシャッター部材92によってプラテン8のヘッド挿入孔8aが封鎖されている。キャップユニット6上をシャッター部材92で覆っておくことで、キャップ部61Aやその周辺にフラッシング処理によって噴射されたインク滴が付着して汚れてしまうのを防止できる。
【0099】
押圧部材87は、保持部材74の端部74B側が最も上昇したフラッシング位置において最も収縮された状態とされるが、この押圧部材87によって保持部材74の先端側がカム部81側に付勢されていることに変わりはなく、回転ローラー76Aの側周面81A(カム領域)への当接状態が良好に維持されるようになっている。
【0100】
また、フラッシン動作中、すなわちカム部81の第1カム領域A(1)に当接している期間中、タイミングベルト84を所定の回転速度で回転させながら各ノズル列Lに対するフラッシング処理を順次実施してもよいが、対象のノズル列Lに吸収部材12が対向する位置においてタイミングベルト84の回動を一旦停止させてフラッシング処理を行っても良い。
【0101】
このとき、上述したフラッシングユニット11の移動部14によりヘッドユニット2(ノズル列L)に対する各吸収部材12の位置を調整した後に、フラッシング処理を実施しても良い。このように、タイミングベルト84の回動とフラッシングユニット11の移動部14の作用とにより、対象のノズル列Lの直下に確実に吸収部材12を配置させ、記録ヘッド21の各色に対応するノズル列Lの全てに対してフラッシング処理を実施する。
【0102】
なお、タイミングベルト84の回動だけで処理対象とされたノズル列Lの直下に確実に吸収部材12を配置させることが可能であるならば、上記した移動部14を省略することも可能である。
【0103】
フラッシングユニット11は、図10に示すように、回転ローラー76Aが第2カム領域A(2)に当接している間に、タイミングベルト84の回動によって記録用紙の搬送方向上流側(カム部81側)に移動されて第1待機位置に配置される。この第1待機位置は保持部材74と搬送面88との間に形成される空間K内に設定され、回転ローラー76Aが第2カム領域A(2)に当接することで揺動下降する保持部材74にフラッシングユニット11が当接することのない位置である。
【0104】
フラッシング動作が終了した後、記録動作へと移行する。
図10に示すように、カム部81の回転に伴い、第1カム領域A(1)に当接していた保持部材74の回転ローラー76Aが第2カム領域A(2)を経て第3カム領域A(3)に当接すると、ヘッドユニット2が記録位置に配置される。記録位置に配置されたヘッドユニット2は、搬送面88(プラテン8)上を搬送されてきた記録用紙に対してインクを吐出し、記録を行う。このとき、プラテン8のヘッド挿入孔8aは裏面側に配置されたシャッター部材92によって封鎖されたままである。シャッター部材92を閉じておくことで、記録中にキャップユニット6におけるキャップ部61A〜61Eの凹部が記録用紙Qの搬送に影響が出ないようにしてある。
記録位置に配置されたヘッドユニット2は、各ノズル形成面23が搬送面88に平行となる姿勢となっている。
【0105】
記録動作が終了し、次の記録動作まで期間がある場合にはキャッピング動作へと移行する。
図11に示すように、カム部81のさらなる回転に伴い、第3カム領域A(3)に当接していた保持部材74の回転ローラー76Aが第4カム領域A(4)を経て第5カム領域A(5)に当接すると、ヘッドユニット2がキャッピング位置に配置される。
回転ローラー76Aが第4カム領域A(4)に当接している期間中、タイミングベルト84が回動することで、フラッシングユニット11が第1待機位置よりもさらに上流側の第2待機位置へと移動される。第2待機位置は、保持部材74とカム部81の第6カム領域A(6)との間に設定された位置であって、この第2待機位置では、吸収部材12と搬送面88との距離が第1待機位置のときよりも大きくなる。
【0106】
また、フラッシングユニット11が移動されるのに同期して、不図示の移動機構によりシャッター部材92が搬送方向上流側へと移動される。これにより、回転ローラー76Aが第5カム領域A(5)に当接する際に、ヘッドユニット2の一部がヘッド挿入孔8a内に挿入されるようにしておく。
【0107】
キャッピング位置に配置されたヘッドユニット2は、各記録ヘッド21のノズル形成面23が搬送面88よりも下方へ突出された状態でキャップユニット6に押し付けられる。このキャッピング状態は回転ローラー76Aが第5カム領域A(5)に当接している期間中、保持される。
【0108】
このように、カム部81の回転に伴って保持部材74が揺動してヘッドユニット2がキャップユニット6側へと移動することで、記録ヘッド21をキャップ部61と密着させるときには、既に、フラッシングユニット11(吸収部材12)が待機位置に配置されている。このため、記録ヘッド21全体がプラテン8側に移動して、記録用紙Qの搬送ラインを遮っていたとしても、何ら問題は生じない。記録位置においてノズル形成面23が水平状態とされていたヘッドユニット2は、キャップユニット6側へと移動したことで、そのノズル形成面23が搬送面88に対してフラッシング時のときとは逆向きに傾斜された状態となる。このようなヘッドユニット2の姿勢に合わせて、各キャップ部61が傾斜された状態でキャップユニット6が固定されている。
なお、キャップユニット6は搬送面88よりも下方に配置され、ヘッド挿入孔8aから搬送面88よりも上方(保持部材74側)に突出することのない位置に配置される。
【0109】
そして、キャッピング動作が終了すると、駆動モーター73の作用によりカム部81(タイミングベルト84)が反転されて記録動作あるいはフラッシング動作へ移行する。このため、保持部材74の回転ローラー76Aが第6カム領域A(6)に当接することはない。
【0110】
本実施形態では、吸収部材移動機構72およびヘッド移動機構71がともに同一の駆動モーター73を含んで構成されており、この駆動モーター73の作用によって吸収部材移動機構72がヘッド移動機構71の動作に同期するようになっている。つまり、ヘッドユニット2の上下動(保持部材74の揺動)と、吸収部材12の往復走査移動(フラッシングユニット11の往復移動)とが同期する構成とされているため、フラッシング処理に要する時間を短縮することができる。これにより、メンテナンスに要する時間が短縮されて、フラッシング処理後、すばやく記録動作あるいはキャッピング動作へと移行することが可能となる。
【0111】
また、互いに径の異なるカムシャフト82とシャフト91との間に架け回されたタイミングベルト84によって、フラッシングユニット11(吸収部材12)が搬送面88に対して斜めに上昇しながら搬送方向上流側へと移動されることで、ヘッドユニット2から遠ざけつつ、搬送面88からの距離を稼ぐことができるので、吸収部材12と搬送面88との接触を避けることが可能となる。
【0112】
さらに、フラッシング処理時における吸収部材12とノズル24との間隔を、各記録ヘッド21から吐出したインク滴が漏れることなく確実に吸収部材12に受容される間隔に設定することが可能となる。
【0113】
また、吸収部材12自体は搬送方向に沿って直線的に往復移動するため吸収部材12の振幅を最小限に抑えることができ、移動後、すばやくフラッシング処理に取り掛かれる。
【0114】
記録動作中は記録用紙Qとノズル形成面23との距離がわずかしかないため、吸収部材12が双方に接触する懸念はあるが、第1待機位置ではノズル形成面23および搬送面88から離れた位置で吸収部材12を待機させることが可能であるため、吸収部材12とノズル形成面23および搬送面88との接触を避けることができる。本実施形態では、フラッシングユニット11を第1待機位置に配置させることで吸収部材12とノズル形成面23との距離を確保する構成としたが、これらノズル形成面23と吸収部材12との距離についても任意の距離に設定できるため、吸収部材12の直径の制約がなくなり、任意の太さの吸収部材12を採用できる。これによって、インクの受容範囲が広がり、吸収部材12の停止位置も精度良く行わずに済むことから、制御容易性および低コスト化に有利となる。また、吸収部材12の直径を太くすることで停止時の振幅を抑えることが可能となる。
【0115】
また、本実施形態ではカム部81の回転に伴ってヘッドユニット2を上下に移動させているため、搬送面88に対するヘッドユニット2の位置決め精度が向上するとともに、ヘッドユニット2の上下動作時の加重を低減させることができるので耐久性の面でも有利となる。
【0116】
さらに、本実施形態の構成によれば、ヘッドユニット2の上下移動とフラッシングユニット11(吸収部材12)の水平移動とを1系統の駆動源で動作させることができるため、制御が簡単でかつ動作の同期が変化することもなく、双方の移動を精度良く行える。また、上記した双方の移動を比較的簡単な構成によって実現することができるため、製作コストも安価になる。
【0117】
また、フラッシングユニット11の構成については上記構成に限られるものではなく、例えば、搬送方向に交差する方向におけるヘッドユニット2の両側に送出リール16と巻取リール17とを配置して、それぞれの回転を同期させることにより、ノズル列Lの一方側から他方側に向かって吸収部材12を走査させる構成であっても良い。
【0118】
また、上記した移動部14、調整レバー18、引っ張りバネ19、検査用回転体20、各センサ36,37、検知部41、安全センサ部47などは必ずしも必要ではなく、吸収部材12を撓ませることなく走査可能な構成であればよい。さらに、送出リール16から送出された吸収部材12は複数のローラーを経由して巻取リール17に巻き取られるが、この経由するローラーの数も上記した数に限らず、適宜設定してもかまわない。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0120】
また、本発明における吸収部材移動機構72およびヘッド移動機構71は上記実施形態の構成に限定されることなく、他の構成も採用することができる。
例えば、先の実施形態では、プラテン8の幅方向両側(搬送方向に交差する方向)に一対のカム部81を配置した構成としたが、どちらか片側に一つだけ配置した構成であっても良い。この場合、この一つのカム部81の回転によって保持部材74が揺動してヘッドユニット2が上下移動する構成となっている。
【0121】
また、上記した吸収部材移動機構72に代えてラック・アンド・ピニオンを用いた構成等を採用することもできる(例えば、図12)。
図12に示すようなラック・アンド・ピニオン機構101は、フラッシングユニット11に接続されたラック102と、ラック102に噛合するとともに駆動モーターによって回転されるピニオンギア103とを有する。ピニオンギア103はカムシャフト82と一体に設けられ、カム部81に同期して回転することによりラック102が移動して、吸収部材12を第1待機位置、第2待機位置、およびフラッシング位置との間で移動させる。このような構成であっても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
以上、図面を参照して本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0123】
また、前記実施形態においては、吸収部材12がノズル列に平行に沿う構成について説明したが、本発明では、必ずしも吸収部材12の延在方向とノズル列の延在方向とが完全に平行になるようにする必要はない。つまり、本発明において、ノズル列に沿って延在するとは、ノズル列と完全に平行となる状態のみに限定されるものではなく、フラッシング時に吸収部材12がインク滴(流体)を受けられる範囲内であればよい。
【0124】
また、前記実施形態においては、本発明をラインヘッド方式のプリンターに適用した構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、シリアル方式のプリンターに適用することもできる。
また、前記実施形態においては、吸収部材12が常にヘッドと記録紙(媒体)との間を移動する構成について説明したが、本発明では、吸収部材12を退避させる際に、ヘッドの直下から外れた領域(例えば、ヘッドの側方)に移動させる構成を採用してもよい。
【0125】
また、前記実施形態では、本発明の流体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、前記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0126】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては、前記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0127】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0128】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 プリンター(流体噴射装置)、2 ヘッドユニット、6 キャップユニット、8 プラテン、8a ヘッド挿入孔、9 支持機構、A カム領域、L ノズル列、10 メンテナンス装置、11 フラッシングユニット、12 吸収部材、16 送出リール、16A 送出モーター、17 巻取リール、21 記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、23 ノズル形成面、24 ノズル、58 揺動機構、59 カム機構、71 ヘッド移動機構、72 吸収部材移動機構、73 駆動モーター、74 保持部材、74A 端部、74B 端部、74b 裏面、74c 挿入孔、75 支持軸(回動支持部材)、76 接触部、76A 回転ローラー、81 カム部、81A 側周面、82 カムシャフト、84 タイミングベルト、87 押圧部材、88 搬送面、92 シャッター部材(蓋部材)、101 ラック・アンド・ピニオン機構、102 ラック、103 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面上を搬送される記録媒体の搬送方向に交差する方向に配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記ノズル列に沿って延在し、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材と、
待機位置とフラッシング位置との間で前記流体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、
前記吸収部材をフラッシング位置と待機位置との間で移動させる吸収部材移動機構と、を備え、
前記流体噴射ヘッドが前記待機位置から前記フラッシング位置へと移動されるのに伴って前記吸収部材が前記待機位置から前記フラッシング位置へ移動されることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記吸収部材移動機構および前記流体噴射ヘッド移動機構が共に同一の駆動モーターを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記吸収部材移動機構は、前記吸収部材と前記搬送面との間隔が前記フラッシング位置のときよりも前記退避位置のときの方が大きくなるように、前記吸収部材を前記搬送方向に対して斜めに移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記ヘッド移動機構は、
前記流体噴射ヘッドを保持する保持部材と、
前記保持部材の一端側を回動可能に支持する回動支持部材と、
前記保持部材の他端側を支持するとともに回転することによって前記保持部材を揺動させ、前記流体噴射ヘッドを前記待機位置と前記フラッシング位置との間で往復移動させるカム部と、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記カム部の側周面には、
前記流体噴射ヘッドをフラッシング位置に配置させる第1領域と、
前記流体噴射ヘッドを前記待機位置に配置させる第2領域と、が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記搬送面を介して前記流体噴射ヘッドのノズル形成面と対向する位置に前記ノズル形成面を封止するキャップ部材が配置され、
前記カム部の前記側周面には、前記流体噴射ヘッドを前記ノズル形成面が前記キャップ部材によって封止される位置に配置させる第3領域が設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記ヘッド移動機構には、前記保持部材を前記カム部側へと押圧する押圧部材が設けられていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−240579(P2011−240579A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114170(P2010−114170)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】