説明

流体圧シリンダのクッション機構

【課題】クッションシールに加わる衝撃が緩和される流体圧シリンダのクッション機構を提供すること。
【解決手段】シリンダチューブ10に対するピストンロッド30のストローク端付近でピストンロッド30を減速させるクッション機構6であって、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに作動流体の流れを絞るクッションシール70と、このクッションシール70を収容する収容溝25とを備え、この収容溝25はピストンロッド30がストローク端付近に来たときにクッションシール70を支持する溝側面27を有し、この溝側面27がピストンロッド30の中心軸Oについて傾斜するテーパ状に形成され、クッションシール70を支持する溝側面27の反力が収容溝25の溝底面側に向かう成分を持つ構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブにおけるピストンロッドのストローク端付近でピストンロッドを減速させる流体圧シリンダのクッション機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベル等に用いられる流体圧シリンダ(油圧シリンダ)にあっては、ピストンロッドのストローク端付近でクッション圧力を発生させてピストンロッドを減速させるクッション機構を備えている。
【0003】
従来、この種のクッション機構として、ピストンロッドがストローク端付近に来たときに、作動流体を通過させるクッション間隙を画成するクッションベアリング(クッションリング)と、このクッションベアリングに対峙するように介装されるクッションシールとを備えるものがある(特許文献1、2参照)。
【0004】
このクッション機構は、ピストンロッドがストローク端付近に来たときに、クッションベアリングがヘッド内周面の内側に入ると、クッション間隙が画成され、このクッション間隙が作動流体の流れに付与する抵抗によってクッション圧力が発生する。続いてピストンロッドがストロークするのに伴って、クッションベアリングがクッションシールの内側に入ると、クッションシールが作動流体の流れに付与する抵抗によってさらに大きなクッション圧力が発生する。
【0005】
このため、クッション間隙が付与する抵抗を小さく設定することが可能となり、クッション間隙を画成するクッションベアリング等の寸法バラツキによってクッション圧力が設定値からズレることを抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−31106号公報
【特許文献2】特開2002−48106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のクッション機構にあっては、ピストンロッドがストローク端付近に来て、クッションベアリングがクッションシールに当たるときに、クッションシールに加わる衝撃が大きいと、衝突音が発生したり、クッションシールの偏摩耗を来たす可能性がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、クッションシールに加わる衝撃が緩和される流体圧シリンダのクッション機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンダチューブに対するピストンロッドのストローク端付近でピストンロッドを減速させる流体圧シリンダのクッション機構であって、ピストンロッドがストローク端付近に来たときに作動流体の流れを絞るクッションシールと、このクッションシールを収容する収容溝とを備え、この収容溝はピストンロッドがストローク端付近に来たときにクッションシールを支持する溝側面を有し、この溝側面がピストンロッドの中心軸について傾斜するテーパ状に形成され、クッションシールを支持する溝側面の反力が収容溝の溝底面側に向かう成分を持つ構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ピストンロッドがストローク端付近に来たときに、溝側面に押し付けられるクッションシールが、傾斜した溝側面の反力によって収容溝の溝底面側へと移動するため、クッションシールに加わる衝撃が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す油圧シリンダの断面図。
【図2】同じく図1の一部を拡大した油圧シリンダの断面図。
【図3】同じくクッションシールの斜視図。
【図4】同じくクッションシールの動作を示す断面図。
【図5】他の実施形態を示す油圧シリンダの断面図。
【図6】同じく図5の一部を拡大した油圧シリンダの断面図。
【図7】同じくクッションシールの動作を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示す油圧シリンダ1は、例えば油圧ショベルのアームシリンダとして用いられる。油圧シリンダ1が伸縮作動することにより、油圧ショベルのアームが回動する。
【0014】
油圧シリンダ(流体圧シリンダ)1は、筒状をしたシリンダチューブ10と、このシリンダチューブ10内にロッド室2とエンド室3を仕切るピストン20と、このピストン20に連結されるピストンロッド30とを備える。ロッド室2とエンド室3は、それぞれ図示しない油圧源(作動流体圧源)に連通し、この油圧源から導かれる作動油圧(作動流体圧)によってピストンロッド30が中心軸O方向に移動して伸縮作動する。図1はピストンロッド30がストローク端付近に来た状態を示している。
【0015】
なお、作動油としてオイルの代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いても良い。
【0016】
円筒状のシリンダチューブ10の端部にはシリンダヘッド40が複数のボルト41を介して締結される。
【0017】
シリンダチューブ10の開口端には、ピストンロッド30を摺動可能に挿通させるシリンダヘッド40が設けられる。
【0018】
シリンダヘッド40は、シリンダ内周面11に嵌合される円筒状のヘッド嵌合部42と、シリンダ開口端16に接するヘッド端面48とを有する。ヘッド嵌合部42とシリンダ内周面11の間にシールリング9が介装され、ロッド室2が密封される。
【0019】
シリンダヘッド40の内周には、軸受55、サブシール56、メインシール57、ダストシール58がそれぞれ介装され、これらがピストンロッド30のロッド外周面31に摺接する。軸受55がロッド外周面31に摺接することにより、ピストンロッド30がシリンダチューブ10の中心軸O方向に平行移動するように支持される。
【0020】
シリンダヘッド40のフランジ面46には給排口43が開口し、この給排口43に油圧源に連通する図示しない油圧配管が接続される。
【0021】
シリンダヘッド40の内周には、ヘッド環状溝45とヘッド内周面44が形成され、これらとピストンロッド30との間に給排通路5が画成される。ヘッド環状溝45に給排口43の一端が開口される。ヘッド内周面44は、中心軸Oを中心とする円筒面状に形成される。
【0022】
図1にてピストンロッド30が下方に移動する油圧シリンダ1の収縮作動時、油圧源から油圧配管を通って供給される加圧作動油が、給排口43と給排通路5を通ってロッド室2に流入する(図中白抜き矢印参照)。
【0023】
一方、図2にてピストンロッド30が上方に移動する油圧シリンダ1の伸張作動時、そのストローク中程では、ロッド室2の作動油が、給排通路5と給排口43と油圧配管を通って油圧源へと流出する(図中白抜き矢印参照)。
【0024】
油圧シリンダ1にはピストンロッド30がストローク端付近に来たときにピストンロッド30を減速させるクッション機構6が設けられる。
【0025】
クッション機構6は、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに画成されるクッション間隙8と、このクッション間隙8に介装されるクッションシール70とを備える。
【0026】
ピストンロッド30には円筒状のクッションベアリング60が取り付けられる。このクッションベアリング60は、ピストンロッド30の端部の外周面に嵌合し、ピストンロッド30の環状段部32とピストン20の上端面22との間に挟持される。
【0027】
なお、これに限らず、クッションベアリングがピストンロッド30に一体形成される構成としてもよい。
【0028】
また、クッションベアリング60はピストンロッド30に間隙を持って嵌合し、クッションベアリング60がピストンロッド30の半径方向について移動可能にフローティング支持される構成してもよい。
【0029】
油圧シリンダ1の伸張作動時に、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに、クッションベアリング60がヘッド内周面44の内側に入ることによって、両者の間にクッション間隙8が画成される。クッションベアリング60がヘッド内周面44の内側に入ると、ロッド室2の作動油が、クッション間隙8と給排通路5と油圧配管を通って油圧源へと流出する。このクッション間隙8がロッド室2から給排通路5を通って流出する作動油の流れに抵抗を付与し、ロッド室2の圧力(以下、クッション圧力という)が上昇することにより、ピストンロッド30を減速する。
【0030】
クッションベアリング60は、その外周面としてベアリング外周面61を有する。このベアリング外周面61は中心軸Oを中心とする円筒面状に形成される。
【0031】
ベアリング外周面61の上端部にはベアリング面取り部62が形成される。ベアリング面取り部62は、その外径が図にて上方向について次第に縮小するテーパ状に形成される。ベアリング面取り部62は、ベアリング外周面61の一部を構成している。
【0032】
ベアリング外周面61の外径は、ロッド外周面31の外径より大きく、かつヘッド内周面44の内径より小さく形成される。ストローク端付近でクッションベアリング60がヘッド内周面44に入ることによって、両者の間にクッション間隙8が画成される。
【0033】
なお、クッション機構6に要求される減速特性に応じて、ベアリング外周面61を部分的に削除した割円部(切り欠き)等を形成して、クッション間隙8の流路断面積がピストンロッド30がストローク端に近づくのにしたがって漸次減少する構成としてもよい。
【0034】
クッション機構6は、ヘッド内周面44に開口する収容溝25と、この収容溝25に介装されるクッションシール70とを備える。
【0035】
ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに、クッションベアリング60がヘッド内周面44の内側に入ってストロークするのに伴って、クッションベアリング60がクッションシール70の内側に入ると、クッションシール70が作動油の流れ付与する抵抗によってさらに大きなクッション圧力が発生する。
【0036】
ところで、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに、クッションベアリング60がクッションシール70に当たり、クッションシール70に大きな衝撃が加わると、衝突音が発生したり、クッションシール70の偏摩耗を来たす可能性がある。
【0037】
これに対処して、クッション機構6は、クッションベアリング60がクッションシール70に当たるときに、クッションシール70を支持する溝側面27の反力が収容溝25の溝底面26側(溝奥側)に向けられ、クッションシール70を収容溝25の溝底面26側に移動させる構成とする。
【0038】
ヘッド内周面44に開口する収容溝25は、中心軸Oを中心とする環状に延びる。
【0039】
収容溝25は、平面状の溝底面26と、クッションシール70を挟んで対向する平面状の第一、第二の溝側面27、28を有する。給排口43側(反ピストン20側)に位置する第一の溝側面27は、中心軸Oについて傾斜する円錐面状のテーパ面に形成される。給排口43と反対側(ピストン20側)に位置する第二の溝側面28は中心軸Oについて略直交する平面状に形成される。これにより、収容溝25は、略台形の断面形状を持つ。なお、溝底面26は、平面状に限らず、曲面状に形成してもよい。
【0040】
環状のクッションシール70は、ベアリング外周面61に略平行に対峙するシール内周面74と、溝底面26に略平行に対峙するシール外周面75と、第一、第二の溝側面27、28に略平行に対峙する第一、第二のシール側面76、77を有する。反ピストン20側に位置する第一のシール側面76は、中心軸Oについて傾斜する円錐面状のテーパ面に形成される。ピストン20側に位置する第二のシール側面77は、中心軸Oについて略直交する平面状に形成される。これにより、クッションシール70は、略台形の断面形状を持つ。クッションシール70のシール内周面74と第二のシール側面77とが交差する角部にはシール面取り部79が断面円弧状に形成される。
【0041】
換言すると、図2に示すように、第一の溝側面27と第一のシール側面76は、ヘッド内周面44に対する交差角度θが、鋭角になるように形成され、それぞれの内周端から外周端にかけてピストン20から次第に離れる方向(給排口43に次第に近づく方向))に傾斜する。
【0042】
油圧シリンダ1の伸張作動時に、ストローク端付近で、給排口43に向かって移動するクッションベアリング60のベアリング面取り部62がクッションシール70が当たって、クッションシール70が図にて上方向に押される。このときに、クッションシール70の第一のシール側面76が第一の溝側面27に押し付けられ(図4の(b)参照)、第一のシール側面76から受ける反力が中心軸Oについて径方向外側(ピストンロッド30の半径方向外側)に向かう成分を持ち、この反力によってクッションシール70が収容溝25の溝底面26側に移動する。
【0043】
上述したように、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときにベアリング面取り部62によってクッションシール70が第一の溝側面27に押し付けられるが、このときにロッド室2に生じるクッション圧力が第二のシール側面77に作用し、このクッション圧力によってもクッションシール70が第一の溝側面27に押し付けられる。
【0044】
図3に示すように、環状に延びるクッションシール70は、シール合口隙間71を有する。このシール合口隙間71は、一対の合口端部72、73の間に画成される。この合口端部72、73は、互いに対向する平面状の端面を有する。
【0045】
クッションシール70を収容溝25に組み付ける際に、クッションシール70は、シール合口隙間71を狭めて収容溝25に嵌め込まれる。クッションシール70は、収容溝25に嵌め込まれた自由状態において、その内径がベアリング外周面61の外径と同等か、もしくはベアリング外周面61の外径より小さくなるように形成される。
【0046】
クッションシール70のピストン20側に位置してクッション圧力を受ける第二のシール側面77には、複数(4つ)のスリット78が形成される。このスリット78は第二のシール側面77に対して溝状に窪み、その一端がシール外周面75に開口し、その他端がシール内周面74に開口される。複数のスリット78は、クッションシール70の周方向について互い略均等な間隔を持つように配置される。
【0047】
図4の(a)〜(d)は、油圧シリンダ1の作動時におけるクッションシール70の動作を示す断面図である。以下、この動作を説明する。
【0048】
図4の(a)は、ピストンロッド30がストローク中程付近にある様子を示す。このとき、クッションシール70は、ピストンロッド30のロッド外周面31に対峙し、弾性変形していない自由状態にあり、そのシール内周面74が収容溝25から突出している。
【0049】
図4の(b)は、ピストンロッド30が図にて上方向に移動する伸張作動時におけるストローク端付近にて、クッションシール70のシール面取り部79がクッションベアリング60のベアリング面取り部62に当たる様子を示す。このとき、クッションベアリング60に押されるクッションシール70は、その第一のシール側面76が収容溝25の第一の溝側面27に押し付けられる。これにより、第一のシール側面76から受ける反力が中心軸Oについて径方向外側に向かう方向に働き、図中矢印で示すように、クッションシール70が収容溝25の溝底面26側に移動する。こうして、クッションシール70のシール面取り部79にクッションベアリング60のベアリング面取り部62が当たる伸張作動時に、クッションシール70が外側に拡がる動作が促されることにより、クッションシール70に加わる衝撃が緩和され、衝突音の発生を抑えられるとともに、クッションシール70の偏摩耗を抑えられる。
【0050】
図4の(c)は、クッションシール70のシール内周面74がクッションベアリング60のベアリング外周面61に摺接して移動する様子を示す。このとき、クッションシール70がベアリング外周面61に摺接する一方、合口端部72、73の間にシール合口隙間71が画成されており、ロッド室2からクッション間隙8を通過して給排通路5へと向かう作動油の多くがシール合口隙間71を通過する。シール合口隙間71は、この作動油の流れに抵抗を付与するオリフィスとして機能し、この抵抗によってロッド室2のクッション圧力が上昇し、ピストンロッド30を減速する。
【0051】
このように、油圧シリンダ1の伸張作動時におけるストローク端付近で、作動油の流れに付与される抵抗が、クッション間隙8とシール合口隙間71によって段階的に高められ、ピストンロッド30を円滑に減速する。
【0052】
このストローク域では、クッション圧力がシール合口隙間71が付与する抵抗によって支配されるため、クッション間隙8が付与する抵抗を小さく設定することが可能となり、クッション間隙8を画成する部材の寸法バラツキ等によってクッション圧力が設定値からズレることを抑えられる。
【0053】
また、図4の(c)に示すクッション機構6の作動時にて、ロッド室2のクッション圧力が所定値以上に上昇すると、クッション圧力に押されるクッションシール70は、その第一のシール側面76が収容溝25の第一の溝側面27に押し付けられ、第一のシール側面76から受ける反力によってさらに収容溝25の溝底面26側へと移動し、シール内周面74がベアリング外周面61から離れる。これに伴って、ロッド室2からクッション間隙8を通過して給排通路5へと向かう作動油が、シール合口隙間71に加えて、クッションシール70とベアリング外周面61間の間隙を通過する。これにより、クッション圧力が異常に上昇することを抑えるリリーフ機能が果たされる。
【0054】
図4の(d)は、ピストンロッド30がストローク端から収縮方向に移動する様子を示す。この状態において、油圧源から給排口43に導かれる加圧作動油は、給排口43→給排通路5→クッション間隙8を通ってロッド室2に流入する。このとき、油圧源から給排口43に導かれる作動油圧が第一のシール側面76に作用し、クッションシール70が収容溝25内にて図にて下方向に移動し、第二のシール側面77が第二の溝側面28に接する。これにより、クッション間隙8を通過する作動油は、図にて矢印で示すように、クッションシール70の背後に回り込み、スリット78を通ってクッション間隙8からロッド室2に流入し、ピストンロッド30が速やかに収縮方向に移動する。こうして、クッションシール70は、ストローク端付近において、伸長作動時にスリット78を閉じる一方、収縮作動時にスリット78を開くチェック機能を果たす。
【0055】
以上のように本実施形態では、シリンダチューブ10に対するピストンロッド30のストローク端付近でピストンロッド30を減速させる流体圧シリンダ1のクッション機構6であって、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに作動流体の流れを絞るクッションシール70と、このクッションシール70を収容する収容溝25とを備え、この収容溝25はピストンロッド30がストローク端付近に来たときにクッションシール70を支持する溝側面27を有し、前記溝側面27がピストンロッド30の中心軸Oについて傾斜するテーパ状に形成され、クッションシール70を支持する溝側面27の反力が収容溝25の溝底面26側に向かう成分を持つ構成とした。
【0056】
上記構成に基づき、ピストンロッド30がストローク端付近に来てクッションシール70に対峙する部位(ベアリング面取り部62)がクッションシール70に当たるときに、クッションシール70は、溝側面27に押し付けられ、傾斜した溝側面27の反力によって収容溝25の溝底面26側へと円滑に移動する。こうして、クッションシール70はこれに当たる部位(ベアリング面取り部62)に追従して変位することにより、クッションシール70に加わる衝撃が緩和され、衝突音の発生を抑えられるとともに、クッションシール70の偏摩耗を抑えられる。
【0057】
本実施形態では、クッションシール70は溝側面27に支持されるシール側面76を有し、このシール側面76は溝側面27に略平行に対峙するようにテーパ状に傾斜する構成とした。
【0058】
上記構成に基づき、傾斜したシール側面76は傾斜した溝側面27に摺接して収容溝25の溝底面26側へと円滑に移動する。
【0059】
なお、これに限らず、クッションシール70の溝側面27に押し付けられる部位(シール側面76)から突出する環状の突部を形成し、この環状の突部が傾斜した溝側面27に摺接して収容溝25の溝底面26側へと移動する構成としてもよい。
【0060】
本実施形態では、収容溝25がシリンダチューブ10(シリンダヘッド40)側に設けられ、クッションシール70がピストンロッド30側に対峙する構成とし、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときにクッションシール70を支持する溝側面27の反力がピストンロッド30の半径方向外側に向かう成分を持つ構成とした。
【0061】
上記構成に基づき、ピストンロッド30側の部位(ベアリング面取り部62)がクッションシール70に当たるときに、クッションシール70は、溝側面27から付与される反力によってピストンロッド30の半径方向外側へと円滑に移動する。こうして、クッションシール70はピストンロッド30側の部位(ベアリング面取り部62)に追従して変位することにより、クッションシール70に加わる衝撃が緩和され、衝突音の発生を抑えられるとともに、クッションシール70の偏摩耗を抑えられる。
【0062】
本実施形態では、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときに作動流体を通過させるクッション間隙8が画成され、このクッション間隙8を画成する部位として、ピストンロッド30が挿通するヘッド内周面44と、ピストンロッド30のロッド外周面31より大きな外径を有するベアリング外周面61とを備え、ヘッド内周面44に収容溝25が開口する構成とした。
【0063】
上記構成に基づき、ベアリング外周面61(ベアリング面取り部62)がクッションシール70に当たるときに、ベアリング外周面61によって溝側面27に押し付けられるクッションシール70は、傾斜した溝側面27に摺接して収容溝25の溝底面26側へと円滑に移動する。
【0064】
(第2実施形態)
次に図5〜7に示す他の実施形態を説明する。これは図1〜4の実施形態と基本的に同じ構成を有し、相違する部分のみを説明する。なお、前記実施形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0065】
図5に示すように、クッション機構7は、クッションシール80を収容する収容溝35がピストンロッド30のロッド外周面31に開口するように形成される。収容溝35は、中心軸Oを中心とする環状に延びる。
【0066】
ピストンロッド30には、前記実施形態のようにロッド外周面31から突出するクッションベアリングが設けられない。なお、これに限らず、クッションベアリングを設け、クッションベアリングのベアリング外周面に収容溝35が開口する構成としてもよい。
【0067】
図6に示すように、環状の収容溝35は、略台形の断面形状を持つ。収容溝35は、平面状の溝底面36と、クッションシール80を挟んで対向する第一、第二の溝側面37、38を有する。第一の溝側面37は給排口43と反対側(ピストン20側)に位置し、第二の溝側面38は給排口43側(ピストン20と反対側)に位置する。なお、溝底面36は、平面状に限らず、曲面状に形成してもよい。
【0068】
環状のクッションシール80は、略台形の断面形状を持つ。クッションシール80は、ヘッド内周面44に略平行に対峙するシール外周面84と、溝底面36に略平行に対峙するシール内周面85と、第一、第二の溝側面37、38に略平行に対峙する第一、第二のシール側面86、87を有する。
【0069】
クッションシール80のシール外周面84と第一のシール側面86とが交差する角部にはシール面取り部89が断面円弧状に形成される。
【0070】
反ピストン20側に位置する第二の溝側面38と第二のシール側面87は、それぞれ中心軸Oについて略直交する平面状に形成され、互いに略平行に対峙する。
【0071】
ピストン20側に位置する第一の溝側面37と第一のシール側面86は、それぞれ中心軸Oについて傾斜する円錐面状のテーパ面に形成され、互いに略平行に対峙する。
【0072】
第一の溝側面37と第一のシール側面86は、それぞれの内周端から外周端にかけてピストン20から次第に離れる方向(給排口43に次第に近づく方向))に傾斜する。
【0073】
換言すると、図6に示すように、第一の溝側面37と第一のシール側面86は、ベアリング外周面31に対する交差角度θが、鋭角になるように傾斜する。
【0074】
これにより、油圧シリンダ1の伸張作動時に、ストローク端付近で、クッションシール80がシリンダヘッド40の角部に形成されたヘッド面取り部49に当たって押されるときに、クッションシール80の第一のシール側面86が第一の溝側面37に押し付けられ(図7の(b)参照)、第一のシール側面86から受ける反力が中心軸Oについて径方向内側(ピストンロッド30の半径方向内側)に向かう成分を持ち、この反力によってクッションシール80が収容溝35の溝底面36側に移動する構成とする。
【0075】
上述したように、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときにベアリング面取り部62によってクッションシール80が第一の溝側面37に押し付けられるが、このときにロッド室2に生じるクッション圧力が第一のシール側面86に作用し、このクッション圧力が高まることによって第二のシール側面87が第二の溝側面38に押し付けられる。
【0076】
環状に延びるクッションシール80は、シール合口隙間(図示せず)を有する。クッションシール80を収容溝35に組み付ける際に、クッションシール80は、シール合口隙間71を拡げて収容溝35に嵌め込まれる。クッションシール80は、収容溝35に嵌め込まれた自由状態において、その外径がヘッド内周面44の外径と同等か、もしくはヘッド内周面44の外径より大きくなるように形成される。
【0077】
クッションシール80のピストン20側に位置してクッション圧力を受ける第一のシール側面86には、複数のスリット88が形成される。このスリット88は第二のシール側面87に対して溝状に窪み、その一端がシール内周面85に開口し、その他端がシール外周面84に開口される。
【0078】
図7の(a)〜(d)は、油圧シリンダ1の作動時におけるクッションシール80の動作を示す断面図である。以下、この動作を説明する。
【0079】
図7の(a)は、ピストンロッド30がストローク中程付近にある様子を示す。このとき、クッションシール80は、シリンダチューブ10の内周面11に対峙してロッド室2を移動しているため、弾性変形していない自由状態にあり、そのシール外周面84が収容溝35から突出している。
【0080】
図7の(b)は、クッションベアリング60が図にて上方向に移動してクッションシール80のシール面取り部89がシリンダヘッド40のヘッド面取り部49に当たる様子を示す。このとき、シリンダヘッド40に押されるクッションシール80は、その第一のシール側面86が収容溝35の第一の溝側面37に押し付けられる。これにより、第一のシール側面86から受ける反力が中心軸Oについて径方向内側に向かう方向に働き、図中矢印で示すように、クッションシール80が収容溝35の溝底面36側に移動する。こうして、クッションシール80のシール面取り部89にシリンダヘッド40のヘッド面取り部49が当たる伸張作動時に、クッションシール80が内側に縮まる動作が促されることにより、クッションシール80に加わる衝撃が緩和され、衝突音の発生を抑えられるとともに、クッションシール80の偏摩耗を抑えられる。
【0081】
図7の(c)は、クッションシール80のシール外周面84がシリンダヘッド40のヘッド内周面44に摺接して移動する様子を示す。このときに、クッション圧力によって第二のシール側面87が第二の溝側面38に押し付けられる一方、クッションシール80のシール合口隙間(図示せず)が画成されており、ロッド室2から給排通路5を通過して給排口43へと向かう作動油の多くがシール合口隙間を通過する。シール合口隙間は、この作動油の流れに大きな抵抗を付与するオリフィスとして機能し、この抵抗によってロッド室2のクッション圧力が上昇し、ピストンロッド30を減速する。
【0082】
図7の(d)は、ピストンロッド30がストローク端から収縮方向に移動する様子を示す。この状態において、油圧源から給排口43に導かれる加圧作動油は、給排口43→給排通路5を通ってロッド室2に流入する。このとき、油圧源から給排口43に導かれる作動油圧が第二のシール側面87に作用し、クッションシール80が収容溝35内にて図にて下方向に移動し、第一のシール側面86が第一の溝側面37に接する。これにより、給排通路5を通過する作動油は、図にて矢印で示すように、クッションシール80の背後に回り込み、スリット88を通って給排通路5からロッド室2に流入し、ピストンロッド30が速やかに収縮方向に移動する。こうして、クッションシール80は、ストローク端付近において、伸長作動時にスリット88を閉じる一方、収縮作動時にスリット88を開くチェック機能を果たす。
【0083】
以上のように本実施形態では、収容溝35が前記ピストンロッド30側に設けられ、クッションシール80がシリンダチューブ10(ヘッド内周面44)側に対峙する構成とし、ピストンロッド30がストローク端付近に来たときにクッションシール80を支持する溝側面37の反力がピストンロッド30の半径方向内側に向かう成分を持つ構成とした。
【0084】
上記構成に基づき、ピストンロッド30がストローク端付近に来てシリンダチューブ10側の部位(シリンダヘッド40のヘッド面取り部49)がクッションシール80に当たるときに、これによって溝側面37に押し付けられるクッションシール80は、溝側面37から付与されるピストンロッド30の半径方向内側に向かう反力によって傾斜した溝側面37に摺接して収容溝35の溝底面36側へと円滑に移動する。こうして、クッションシール80はシリンダチューブ10側の部位(シリンダヘッド40のヘッド面取り部49)に追従して変位することにより、クッションシール80に加わる衝撃が緩和され、衝突音の発生を抑えられるとともに、クッションシール80の偏摩耗を抑えられる。
【0085】
なお、本発明は、流体圧シリンダの収縮作動時におけるピストンロッドのストローク端付近でピストンロッドを減速させるクッション機構(図示せず)に適用することもできる。
【0086】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0087】
1 油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
5 給排通路
6、7 クッション機構
8 クッション間隙
10 シリンダチューブ
11 シリンダ内周面
20 ピストン
22 上端面
25、35 収容溝
26、36 溝底面
27、37 溝側面
30 ピストンロッド
31 ロッド外周面
40 シリンダヘッド
43 給排口
44 ヘッド内周面
60 クッションベアリング
61 ベアリング外周面
62 ベアリング面取り部
70、80 クッションシール
76、86 シール側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブに対するピストンロッドのストローク端付近で前記ピストンロッドを減速させる流体圧シリンダのクッション機構であって、
前記ピストンロッドがストローク端付近に来たときに作動流体の流れを絞るクッションシールと、
前記クッションシールを収容する収容溝とを備え、
前記収容溝は前記ピストンロッドがストローク端付近に来たときに前記クッションシールを支持する溝側面を有し、
前記溝側面が前記ピストンロッドの中心軸について傾斜するテーパ状に形成され、
前記クッションシールを支持する前記溝側面の反力が前記収容溝の溝底面側に向かう成分を持つ構成としたことを特徴とする流体圧シリンダのクッション機構。
【請求項2】
前記クッションシールは前記溝側面に支持されるシール側面を有し、
前記シール側面は前記溝側面に略平行に対峙するようにテーパ状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダのクッション機構。
【請求項3】
前記収容溝が前記シリンダチューブ側に設けられ、
前記クッションシールが前記ピストンロッド側に対峙する構成とし、
前記ピストンロッドがストローク端付近に来たときに前記クッションシールを支持する前記溝側面の反力が前記ピストンロッドの半径方向外側に向かう成分を持つ構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧シリンダのクッション機構。
【請求項4】
前記収容溝が前記ピストンロッド側に設けられ、
前記クッションシールが前記シリンダチューブ側に対峙する構成とし、
前記ピストンロッドがストローク端付近に来たときに前記クッションシールを支持する前記溝側面の反力が前記ピストンロッドの半径方向内側に向かう成分を持つ構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧シリンダのクッション機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193752(P2012−193752A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56067(P2011−56067)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】