説明

流体圧式駆動装置

【課題】バルブの全閉あるいは全開における作動において、必要とする作動トルクを十分に得ることができる流体圧式駆動装置を提供する。
【解決手段】流体圧式駆動装置は、パイプライン等の流体圧力を動力源として、パイプラインのバルブステム9を回動する。回転回動機構は、回動軸12を有して揺動するスコッチヨーク1と、スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する往復動ロッド32と、シリンダ46内に供給される流体圧力で往復動ロッドを直線運動させ、スコッチヨークに揺動運動を与える往復動駆動装置とを有する。スコッチヨークは回動軸から延びて往復ロッドを挟む二股のアーム14,16と、両アームに対向した所定幅の軌条部142、162とを有し、往復動ロッドが二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向に離隔してスコッチヨークの回転半径および揺動角度に対応して軌条部に当接させるように設けられた二つの押付部24,26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブを作動するための流体圧式駆動装置、特に、直線的な往復運動動力による操作を可能にした流体圧式駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブの開閉のための作動をする駆動装置には、手動式、電動式、エアーモータ式等の入力を回転駆動させることができ、それによって得られた回転によって伝達ブロックを移動させ、その移動によりスコッチヨークを揺動させて得られる回動作動させるようにして、バルブの開閉を行うようにしたものがある。
【0003】
従来の駆動装置として、手動式のものには、図8に示すようなウォーム歯車を使用したものがあるが、入力にはウォーム軸5を、出力にはバルブのステム9に取り付けられたウォームホィール6と組合わせた歯車減速機からなるものがある。この駆動装置では、ウォームホィール6の歯数を増減することにより、減速比を変えて、出力トルクを発生させ、バルブのステム9を回動させることによりバルブを開閉することができる。
【0004】
また、一般的なスコッチヨーク式の駆動装置としては、図9に示すように、図8の装置のウォーム軸に替えて、位置を同位置に固定して軸心回りに回動させることができる回転ねじ軸3を設け、ウォームホィールに替えてスコッチヨーク1を設け、回転ねじ軸3と、この回転ねじ軸3をねじ込むことができる雌ねじ穴28を有する伝達ブロック2とが作動連結されていて、回転ねじ軸3の回転によりその軸心方向に移動する伝達ブロック2を組み込むことにより形成されたものがある。このような駆動装置では、回転ねじ軸3の回転により伝達ブロック2を移動させる。それにより、スコッチヨーク1を回動軸12を中心にすることにより揺動させて、スコッチヨーク1をバルブのステム9に連結する回動軸12を回動させてバルブの開閉を行うように揺動させることができる。伝達ブロック2には、回転ねじ軸3がねじ込まれる雌ねじ穴28の軸線とは直角方向に両側面から突出する円筒部24’、26’を設けて、スコッチヨーク1のアームに形成した円筒部スライド溝143、163に嵌合させ、伝達ブロック2を回転ねじ軸3の軸線方向に移動させることによりスコッチヨーク1を揺動させて、バルブのステム9に連結された回動軸12に出力トルクによる回動を生じさせるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような図8に示され、ウォームおよびウォームホィールを用いたウォーム歯車方式の駆動装置では、開閉されるバルブの開位置、閉位置、中間位置の各位置において、それらの位置で得られる出力トルクは同一であり、各操作位置でバルブの開閉に必要とする力が異なる場合、特に、パイプラインが大口径を有し、その内部を流れる流体圧が高圧なものに多く使用されるボールバルブにおいては、図7に示されるように、閉時にはトルクTが高くなり、開放とともに、バルブの中間開放位置までは、必要なトルクが除々に減少し、その後は所定のトルクに達して一定のトルクになる。それ故、バルブの閉時には、少しでも高いトルクが得られることが望ましいが、図8に示されるウォーム歯車方式を使用した駆動装置では、バルブ開閉時の出力トルクが不変であり、駆動装置として回転操作に作動力を要することになる。
【0006】
また、図9に示すような、スコッチヨーク方式を使用した駆動装置では、その出力トルクが、以下に詳述するように、また、図7に示すように、作動の中間位置では、図8に示すウォーム歯車を用いた駆動装置と同じであるが、バルブの開位置、閉位置では、出力トルクTが中間位置の2倍のトルクTaになり、伝達ブロック2を移動させるハンドル4の操作作動力が均一であることが望ましいので、出力トルクTはそれに応じて高くなるような操作を可能にするようにしたほうがよい。
【0007】
図9に示す駆動装置について、その構造と、出力トルクを発生させる機構を以下において説明する。
伝達ブロック2は、図11に示すように、貫通するその雌ねじ部28に回転ねじ軸3がねじ込み嵌合されて、両円筒部24’、26’が図10に示すようなスコッチヨーク1の両アーム14、16に長手方向の穴として設けた円筒部スライド溝143、163に摺動するように嵌合され、さらに、両円筒部24’、26’がケーシング8および上蓋(図示せず)に設けた伝達ブロックガイド7にも回転ねじ軸3に沿って移動するように同時に係合して設けられている。
【0008】
このような図9に示す駆動装置において、ハンドル4が操作されて回転ねじ軸3を回転して、伝達ブロック2を図9において左右方向に移動させる場合には、ハンドル4が回転操作されて回転ねじ軸3が回転しても、回転ねじ軸3自体は移動しないために、伝達ブロック2がハンドル4の回動方向に従って左右いずれかの方向に移動させることができる。これにより、伝達ブロック2の円筒部24’、26’がスコッチヨーク1のアーム14、16に設けた円筒部スライド溝143、163を摺動しながら押すために、スコッチヨーク1をいずれかの方向に揺動させることなり、スコッチヨーク1の回動軸12の嵌合穴18に嵌合されているバルブのステム9が回動軸12とともに回動されて、バルブの開閉を行うことができる。
【0009】
図10および図11に示されたスコッチヨーク1と伝達ブロック2とを組合わせた図9に示すような駆動装置においては、上記したように伝達ブロック2が回転ねじ軸3に沿った直線運動して、スコッチヨーク1が揺動されることにより、図7では回動角度が90°の範囲で作動する場合を示している。このような回動軸12を所定の角度だけ回動する場合には、図7に示すように、中間位置から45°の回転角度範囲で揺動運動した両端部の位置においては、中間位置よりも出力トルクが2倍になることを図12の作動説明図によって説明すると、以下のようになる。図12に示された各部の寸法は記号で示されている。
【0010】
即ち、ここで、F: ハンドル4の回転により生じた力、
Rt: トルクを生じさせる力、
l: スコッチヨーク1の回動軸12のバルブステム嵌合穴18の中心20と伝達ブロック2の円筒部中心との間の距離、
e: スコッチヨーク1の回動軸12のバルブステム嵌合穴18の中心20と回転ねじ軸3の中心軸線30との間の距離、
η: 作動効率、
とすると、出力トルクは、
T=Rt・l・η
となる。
この場合、Rt=F/cosθ、 l=e/cosθ であるので、
T=(F・e/cos45°)・η
となる。
バルブの開および閉の両端の位置が中間位置に対して対称であり、各々の位置をθ=45°とすると、両端の位置での出力トルクTaは、
Ta=(F・e/cos45°)・η=2・F・e・η
となる。
【0011】
この出力トルク特性を図示すると、図7において点線で示すようなTとなる。即ち、中間位置であるθ=0°のときには、出力トルクTは、T=F・e・ηであるので、Ta=2Tとなり、両端の開および閉では中間位置の2倍の出力トルクになる。
特に、ボールバルブの開閉に要するトルクは、一般に図7に示されるようなTの特性を有しているので、バルブ開閉のための駆動装置にはスコッチヨーク式の減速機が適していることが理解される。
【0012】
また、ボールバルブは、閉から開への時には、最もトルクを必要とするので、閉位置側をθ=50°、開位置側をθ=90°−50°=40°にすると、閉から開への時の出力トルクTbは
Tb=(F・l/cos50°)・η=2.42・F・e・η
となり、出力トルクは21%も増加することになる。
しかしながら、バルブの開から閉への時には、出力トルクTcは
Tc=(F・e/cos40°)・η=1.70・F・e・η
となり、出力トルクが15%も減少することになる。これは、図7に示された太いダッシュ線で示されるような特性となる。
このような駆動装置が採用されると、バルブが設けられるパイプラインがより大口径化、そこを流れる流体が高圧化される今日では、よりコンパクトで高出力トルクを要求されることに対応できなくなっていた。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バルブステムの回転作動に必要とするトルクとしてバルブの閉状態に近い状態では高いトルクが得られるとともに、構成部材を減らして簡単な構造にすることができるようにした流体圧式駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するための流体圧式駆動装置は、パイプライン等の流体圧力、蓄圧Nのガス等得られる油圧、または空気、Nガス等の流体圧力を動力源として、パイプライン等に設けられたバルブのステムを回転回動する回転回動機構を備えた流体圧式駆動装置であって、
前記回転回動機構が、バルブのステムを回動するように固定して取付けられ回動軸を有して揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する往復動ロッドと、該往復動ロッドを直線運動させるために前記往復動ロッドの端部をケーシングに取付けられたシリンダ内に収納し、前記往復動ロッドに前記シリンダ内に供給される前記流体圧力を作用させて前記スコッチヨークに揺動運動を与える往復動駆動装置とを有し、
前記スコッチヨークが前記回動軸から延びる前記往復ロッドを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記往復動ロッドが前記二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向に離隔して前記スコッチヨークの必要とする回転半径および揺動角度に対応して前記軌条部に当接させるように取付けられている二つの押付部を有し、
前記往復動ロッドが前記往復動駆動装置の駆動によって前記往復動ロッドの軸線方向に移動されることにより、前記スコッチヨークの軌条部を前記伝達ブロックの押付部に当接して、前記スコッチヨークを揺動させ、前記バルブのステムを回動させることを特徴とする。
【0015】
また、上記流体圧式駆動装置において、前記スコッチヨークは、前記回動軸の中心軸線を通る前記軌条部における長手方向の作動軸線が所定角度範囲で搖動することができ、さらに前記往復動ロッドにおける前記押付部の作動中心が前記往復動ロッドの軸線に一致して位置されるように設けられて、前記軌条部に当接し、前記スコッチヨークの前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられていることを特徴とする。
【0016】
上記流体圧式駆動装置における前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回動軸の軸線を通る長手方向の作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の押付部側に偏って位置するように、前記アームが前記回動軸に取付けられて、前記スコッチヨークの搖動始端側における回転角度を大きくすることにより、前記往復動ロッドによって作用するトルクを増大させることができることを特徴とする。
【0017】
上記流体圧式駆動装置における前記往復動ロッドの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔に位置するように、前記当接位置が前記往復動ロッドの軸線よりも離隔して位置されていることを特徴とする。
【0018】
上記流体圧式駆動装置における前記往復動ロッドが前記スコッチヨークのアームによって挟まれて揺動する部分を平面に形成されていて、前記二つの押付部が前記往復動ロッドにおける前記平面の部分に軸線方向に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記流体圧式駆動装置における前記往復運動駆動装置は、前記往復動ロッドの端部を直線運動させるように、前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられ、前記往復動ロッドを往復動自在に支持していることを特徴とする。
【0020】
上記流体圧式駆動装置における前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドを往復動させるために前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられたシリンダと、該シリンダに配置された前記往復動ロッドの端部を収容して、該端部に前記シリンダ内に供給された流体圧を作用するようにしたラム式駆動装置とを有してなることを特徴とする。
【0021】
上記流体圧式駆動装置における前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドの両端部に取付けたピストンを前記ケーシングに設けられた二つのシリンダに往復動可能に設置して、前記シリンダ内の前記ピストンのいずれかの側に供給される油圧、空気、Nガス等の流体圧によって往復動されるように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による流体圧式駆動装置は、流体圧を動力源として、パイプライン等に設けられたバルブのステムを回転回動する回転回動機構を備え、この回転回動機構が、回動軸に固定して取付けられて揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線往復運動する往復動ロッドと、該往復動ロッドに直線往復運動をさせるための往復運動駆動装置とを有する流体圧式駆動装置であって、前記スコッチヨークが前記回動軸から伸びる前記往復動ロッドを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記往復動ロッドが前記二股のアームに挟まれる両側面の長手方向の両端部に前記スコッチヨークの必要とする回転半径および揺動角度に対応して前記軌条部に当接させるように設けられた二つの押付部を有するので、
往復動駆動装置による往復運動の駆動により往復動ロッドを作動し、往復動ロッドはその軸線方向に移動し、往復動ロッドの軸線方向に離隔して設けられた押付部に当接する軌条部を有する二股のアームを備えたスコッチヨークが往復動ロッドの直接の移動により揺動され、二股のアームに固定されてその回転中心となる回動軸が回転し、そこに嵌合固定されたバルブのステムを回動し、バルブの開閉を行うことができ、その際、往復動駆動装置による往復動が一定しているのにも関わらず、スコッチヨークにより与えられる回動軸に与えられる出力トルクは、スコッチヨークの各々の始動側の揺動角度が大きくなるために、高いトルクとして得られ、往復動ロッドに押付部が一体に設けられ、製作コストを抑えることができ、その構造をシンプルにすることができ、アームと一体の軌条部は高い強度を得ることもでき、必要とする用途に幅広く対応することができる。
【0023】
上記駆動装置において、前記スコッチヨークは、前記回動軸の中心軸線を通る前記軌条部における長手方向の作動軸線が所定角度範囲で搖動することができ、さらに前記往復動ロッドの両端部における前記押付部の作動中心が前記往復動ロッドの軸線に一致して位置されるように設けられて、前記軌条部に当接し、前記スコッチヨークの前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられているので、スコッチヨークの二股アームの伝達ブロックに対向して設けられた軌条部が伝達ブロックを挿むように設けられ、スコッチヨークの軌条部に対応して設けられた往復動ロッドの押付部に確実に当接して伝達ブロックの軌条部を移動させることができ、揺動の各々の始端角度も大きくなるので、出力トルクも大きくなる。
【0024】
また、上記流体圧式駆動装置における前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回軸の軸線を通る長手方向の作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の押付部側に偏って位置するように、前記アームが前記回動軸に取付けられているので、前記スコッチヨークの各々の始端角度、特に押付部側に偏って大きくなった側は、揺動角度がより大きくなるので、前記往復動ロッドの移動によって生じられるスコッチヨークの回動軸に作用するトルクをより増大させることができ、バルブの開閉時において必要するトルクを増大させることができる。
【0025】
上記流体圧式駆動装置における前記往復動ロッドの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔にするように、前記当接位置が前記往復動ロッドの軸線よりも離れて位置されているので、スコッチヨークの軌条部と往復ロッドの押付部への当接位置がスコッチヨークの始端側の角度が同じでも、回転半径をより長くするように位置されて、軌条部の押付部による移動が回動部のトルクをより大きく生じさせて、バルブ開閉時のより強力な回転トルクを必要とする場合にも対処することができる。
【0026】
また、上記流体圧式駆動装置における前記往復動ロッドが前記スコッチヨークのアームによって挟まれて揺動する部分を平面に形成して、前記押付部が前記往復動ロッドにおける前記平面の部分に軸線方向に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されているので、押付部とスコッチヨークの軌条部との接触を確実に行うだけでなく、揺動端部における作動をスムーズに行うことができる。
【0027】
また、上記流体圧式駆動装置における前記往復運動駆動装置は、前記往復動ロッドの端部を直線運動させるように、前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられ、前記往復動ロッドを往復動自在に支持しているので、余分な部材を必要とせずに往復動ロッドがケーシングに確実に軸支することができ、その構造をコンパクトにすることができる。
【0028】
また、上記流体圧式駆動装置における前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドを往復動させるために前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられたシリンダと、該シリンダに配置された前記往復動ロッドの端部を収容して、該端部に前記シリンダ内に供給された流体圧が作用するラム式駆動装置とを有してなるので、前記往復動ロッドの両端部に設けた駆動装置の何れかの側のラムに流体圧を作用させることができ、それによって往復動ロッドの往復動を生じさせて、出力トルクが得られるので、バルブステムを容易に回動させることができる。また、ラム式駆動装置は、動力源として高圧の油圧を使用することができるので、そのような環境にある場合にも適したものとなる。
【0029】
また、上記流体圧式駆動装置における前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドの両端部に取付けたピストンを前記ケーシングに設けられた二つのシリンダに往復動可能に配置して、前記シリンダ内の前記ピストンの何れかの側に動力源として供給される油圧、または空気、Nガス等の気体によって前記往復動ロッドを移動されるように設けられているので、電動あるいは手動の油圧ポンプによって得られる油圧、あるいは空気、Nガス等の気体圧によって往復動ロッドを移動されるように設けられているので、従来のウォームホイール式の手動ハンドルによる回転操作に対応できない規模のバルブにも対応することができる。
【0030】
本発明の新規な特徴および構成、効果に関しては、以下の説明に関連する添付図面からさらに理解することができる。なお、図面において、同じ符号は同じ構成部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態による流体圧式(ラム式)駆動装置を示し、(A)は部分破断平面図、(B)はその部分破段側面図である。
【図2】図1に示す本発明によるラム式駆動装置に用いられる往復動ロッドを示し、(A)はその側面図であり、(B)はその平面図である。
【図3】図1に示される本発明の一実施の形態による流体圧式駆動装置に用いられるスコッチヨークの斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態による流体圧式(ピストン式)駆動装置を示し、(A)は部分破断平面図、(B)はその部分破断側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態による流体圧式駆動装置の作動説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による流体圧式駆動装置の作動説明図である。
【図7】ボールバルブの開閉とボールバルブ自体および流体圧式駆動装置に生じるトルクの関係を示す線図である。
【図8】従来のウォーム歯車を使用した駆動装置を示す断面図である。
【図9】従来のスコッチヨークを使用した駆動装置の断面図である。
【図10】図9に示す駆動装置に用いられるスコッチヨークの斜視図である。
【図11】図10に示す流体圧式駆動装置のスコッチヨークに組合わせて使用される伝達ブロックの斜視図である。
【図12】図9に示す駆動装置におけるスコッチヨークと伝達ブロックの作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1から図3を参照すると、本発明を実施するための形態による流体圧式駆動装置100は、バルブステム9を嵌合してキー止め固定される嵌合穴18を有するスコッチヨーク1、このスコッチヨーク1の二股のアーム14、16によって挟まれた往復動ロッド32、この往復動ロッド32の両方の端部を収納した往復動駆動装置、スコッチヨーク1、往復動ロッド32等を収納するケーシング8等を備えている。
【0033】
このような流体圧式駆動装置100は、パイプライン等の流体圧力、蓄圧Nのガス圧力等を使用して得られる油圧、または空気、Nガス等の流体圧力を動力源として、パイプライン等に設けられたボールバルブを作動するために回転回動機構を有して設けられている。このようなバルブには、回転回動機構としてそのためのバルブステム9に取付けられるスコッチヨーク1を備えているが、このスコッチヨーク1は、図3に示されるように、バルブステム9を嵌合してキー止めする嵌合穴18を有した回動軸12、この回動軸12に往復動ロッド32を挟むように軸線方向に間隔をおいて取付けられた二股のアーム14、16を有し、これらのアーム14、16の内側には対向してアーム14、16よりも狭い幅Wを有する軌条部142、162が自由端部を有しながら十分な強度を有するようにアーム14、16と一体に形成されて設けられている。
【0034】
このようなスコッチヨーク1と組み合わされる往復動ロッド32は、図2(A)の側面図および図2(B)の平面図に示されるように、両端部が円筒状に形成されていて、中央部がスコッチヨーク1の二股のアーム14、16の内側に対向して設けられた軌条部142、162に挟まれて、スコッチヨーク1の揺動がスムーズに行われるような厚みを有した平面部34として形成されている。このアーム14、16に挟まれた部分は、二つの側面が平面状に形成され、さらに、それらの両側面には、一対の押付部24、26が往復動ロッド32の軸線に沿って離隔されて形成されている。これらの押付部24、26は、スコッチヨーク1の軌条部142、162に当接するために、スコッチヨーク1の揺動角度に応じて離隔されて設けられ、往復動ロッド32の一方の側面に離隔して設けられた押付部24、24には、往復動ロッド32の他方の側面にも同様に押付部26、26が長手方向に離隔して設けられている。上記のような押付部24、26は、往復動ロッド32における平面部34に軸線方向に離隔して設けられた押付部24、26の少なくとも軌条部142、162と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されて、押付部24、26とスコッチヨーク1の軌条部142、162との接触を確実に行うだけでなく、揺動端部においても作動をスムーズに行うことができる。
【0035】
上記スコッチヨーク1と往復動ロッド32は、強度十分な鋼材からなり、図1および2に示されるように、位置決め組み合わされるが、ケーシング8内に組み込まれたスコッチヨーク1に対して、往復動ロッド32の押付部24、26の間の平面状の側面部をスコッチヨーク1の二股のアーム14、16の間に挿入させることにより設置されるので、ケーシング8内への組み込みも容易に行うことができる。
【0036】
このように設置される往復ロッド3に対して、スコッチヨーク1は、アーム14、16の軌条部142、162が往復動ロッド32の両側面の押付部24、26の間に位置するように位置決めされて、鋳物や溶接構造からなるケーシング8内に設置され、ケーシング8に対しては回動軸12がベアリングにより回動可能に支持されて設けられている。
【0037】
スコッチヨーク1と往復動ロッド32を組込むケーシング8は、底蓋および上蓋によって閉じられるが、底蓋には二つのセットボルト11、11が内部に調節可能に進入するように設けられ、スコッチヨーク1の揺動角度範囲を規定することができる。この実施の形態では、揺動角度が90度となるように設定されているが、セットボルト11のケーシング8内への進退によって用途に応じた揺動角度の調節をすることができる。
【0038】
スコッチヨーク1を作動させるための往復動ロッド32の両端部は、往復動を行うことができるように、ケーシング8の対向した部分に設けられたシリンダ46を有し、このシリンダ46内に往復動ロッド32の端部が挿入されて、この端部に油圧を作用させることができるようにして構成されて、ラム式駆動装置をなしている。
【0039】
上記のようなスコッチヨーク1と往復動ロッド32との作動は、図12のような位置関係の寸法に対応した図5に示される作動説明図において以下に説明される。
スコッチヨーク1の両アーム14、16の内側に対向して形成された軌条部142、162の幅を、図3および図5に示すようにWとすると、出力トルクは、図5に基づいた計算によると以下のようになる。軌条部142、162の揺動中心をなす回動軸12の中心20を通る作動軸線142’、162’は、W/2の位置にあり、揺動角θ°を図12に示された従来例と同様にとると、軌条部142、162に当接した場合の往復動ロッド32の押付部24、26の作動中心と回動軸12の中心20を通る線との間の角度θは、θ>θとなり、その際の出力トルクTは、以下のとおりである。
=(F・e/cosθ)・η
【0040】
ここで、W/2を角度として5°に相当するとした場合、
=(F・e/cosθ)・η=2.42・F・e・η
となる。即ち、このことは、往復動ロッド32の押付部24、26の作動中心位置は、スコッチヨーク1のアーム14、16の作動中心位置が揺動中心の位置から従来の揺動角度の45°ではなくて、50°に相当することになる。また、これに対して、スコッチヨーク1の揺動始端とは反対側の揺動終端位置においては、出力トルクTが上記の場合の出力トルクTと同様になり、従来例では、揺動角度θは40°であり、TX=1.7・F・e・ηとなる。しかしながら、スコッチヨーク1の作動両端位置での出力トルクT、Tの比は、T/T=2.42/1.7=1.42となり、図5に示された状態では、従来に比して出力トルクが42%の増加をすることになる。これを線図で示すと、図7に太い点線または太いダッシュ線で示されるような出力トルクが得られる。このことは、バルブの閉時の場合のように、バルブを開く時よりも高い出力トルクを要する時には、有効である。
【0041】
また、図6に示すように、往復動ロッド32の押付部24、26に対するスコッチヨーク1の軌条部142、162の当接点をさらに遠隔にして、スコッチヨーク1の始動側の揺動角度は同じでも、揺動回転半径よりも長くするために、押付部24、26の作動中心位置は、往復動ロッド32の中心軸線30のスコッチヨーク1の揺動中心20からの距離eを不変にして、さらに距離fだけ離れて位置されるように往復動ロッド32に押付部24、26を設ければ、より高い出力トルクが得られる。
【0042】
さらに、往復動ロッド32における押付部24、26の作動中心の位置をスコッチヨーク1の揺動中心20からの距離eをさらにfだけ離れて位置させるとともに、スコッチヨーク1の揺動の両始端位置、バルブの開閉で言うならば、軌条部142、162における作動軸線142’が開側に0.6W、閉側に0.4Wになるように、押付部24、26に対して軌条部142、162が当接するようにすると、図12に示す従来例の場合だけでなく、本発明による図5に示される実施の形態に対しても、揺動半径lが長くなり、さらに高い出力トルクを得ることができる。
【0043】
その実際の出力トルクは上記数式を用いて表すと、以下のようになる。
ここで、スコッチヨーク1の作動中心線142’は、図6に示す実施の形態では、揺動中間位置からの角度θが45°に相当するが、押付部24、26に軌条部142、162が当接する状態での作動中心の揺動中間位置からの角度θは、53°、52°になるように軌条部142、162の作動軸線142’が設定されると、
閉側の出力トルクTT1は、(全閉→開方向)
T1=(F・e/cos53°)・η=2.76・F・e・ηとなり、
開側の出力トルクTX1は、(全開→閉方向)
X1=(F・e/cos52°)・η=2.64・F・e・ηとなる。
これらを図7において、出力トルクTをバルブの閉側を0°とした揺動角度θに対して線図で示すと、太い一点鎖線によって示され、また、開側は丸点鎖線で示されるようになる。これは、アーム14、16の中心を中間位置に対して各々45°の場合でも、従来方式のスコッチヨーク10に対し全閉→開においては、2.76倍、全開→閉においては2.64倍の出力トルクが得られることになる。
このように、図6に示された実施の形態による流体圧式駆動装置100において、往復動ロッド3に作用する油圧、空気圧、Nガス圧等の流体圧の作用による往復動ロッド32によって生じられる出力トルクTは、従来例だけでなく図5に示される本発明による実施の形態において得られる出力トルクよりも高い出力トルクが得られる。
【0044】
以上のように、スコッチヨーク1におけるアーム14、16の内側に設けた軌条部142、162は、その作動軸線142’が軌条部142、162の作動軸線142’を幅Wの方向のいずれかの側に、バルブで言えば開あるいは閉側に片寄らせて位置させることにより、設計要求にしたがって揺動方向に変位させて、軌条部142、162と押付部24、26との当接位置をスコッチヨーク1の回動軸12の中心20からより長くさせることができる。それにより、必要に応じて出力トルクTの調節が可能になる。また、従来の流体圧式駆動装置と比較して、規模として変わらずに、高出力トルクを得ることができるので、設置されるバルブが大きくなっても、装置のコンパクト化が可能になる。
【0045】
さらに、流体圧式駆動装置100は、図4に示すように、往復動駆動装置が往復動ロッド32の両端部にピストン42を取付けて、ケーシング8に対向して設けられたシリンダ44内に往復動するように設置して構成されるシリンダ式駆動装置として設けてもよい。このシリンダ式駆動装置は、シリンダ44内のピストン42のいずれかの側に油圧、空気、Nガス等の流体圧を必要に応じて供給することにより往復動ロッド32を移動させて、往復動ロッド32の押付部24、26に押し付けられるスコッチヨーク1のアーム14、16の軌条部142、162を介してスコッチヨーク1を揺動させ、回動軸12を介してバルブステム9を回動させ、バルブの開閉を行うことができる。このようなシリンダ式駆動装置によって、比較的得やすい油圧、空気、Nガス等の流体圧によってスコッチヨーク1を作動させて、バルブステムへの高い出力トルクを得ることができる。
【0046】
以上述べたように、本発明による流体圧式駆動装置は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術範囲において実施し得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 スコッチヨーク
2 伝達ブロック
3 回転ねじ軸
4 ハンドル
5 ウォーム
6 ウォームホイール
7 伝達ブロックガイド
8 ケーシング
9 バルブステム
10 ガイドバー
11 セットボルト
12 回動軸
14 アーム
16 アーム
18 バルブステム嵌合穴
20 回動軸中心軸線
22 伝達ブロック本体
24 押付部
24’ 円筒部
26 押付部
26’ 円筒部
28 雌ねじ嵌合穴
29 ガイド穴
30 回転ねじ軸軸線
32 往復動ロッド
34 平面部
42 ピストン
44 シリンダ
46 シリンダ
100 流体圧式駆動装置
142 軌条部
142’ 軌条部作動軸線
143 円筒部スライド溝
162 軌条部
163 円筒部スライド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプライン等の流体圧力、蓄圧Nのガス等得られる油圧、または空気、Nガス等の流体圧力を動力源として、パイプライン等に設けられたバルブのステムを回転回動する回転回動機構を備えた流体圧式駆動装置であって、
前記回転回動機構が、バルブのステムを回動するように固定して取付けられ回動軸を有して揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する往復動ロッドと、該往復動ロッドを直線運動させるために前記往復動ロッドの端部をケーシングに取付けられたシリンダ内に収納し、前記往復動ロッドに前記シリンダ内に供給される前記流体圧力を作用させて前記スコッチヨークに揺動運動を与える往復動駆動装置とを有し、
前記スコッチヨークが前記回動軸から延びる前記往復ロッドを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記往復動ロッドが前記二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向に離隔して前記スコッチヨークの必要とする回転半径および揺動角度に対応して前記軌条部に当接させるように設けられている二つの押付部を有し、
前記往復動ロッドが前記往復動駆動装置の駆動によって前記往復動ロッドの軸線方向に移動されることにより、前記スコッチヨークの軌条部を前記伝達ブロックの押付部に当接して、前記スコッチヨークを揺動させ、前記バルブのステムを回動させることを特徴とする流体圧式駆動装置。
【請求項2】
前記スコッチヨークは、前記回動軸の中心軸線を通る前記軌条部における長手方向の作動軸線が所定角度範囲で搖動することができ、さらに前記往復動ロッドにおける前記押付部の作動中心が前記往復動ロッドの軸線に一致して位置されるように設けられて、前記軌条部に当接し、前記スコッチヨークの前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられていることを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項3】
前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回動軸の軸線を通る長手方向の作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の押付部側に偏って位置するように、前記アームが前記回動軸に取付けられて、前記スコッチヨークの搖動始端側における回転角度を大きくすることにより、前記伝達ブロックによって作用するトルクを増大させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項4】
前記往復動ロッドの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔に位置するように、前記当接位置が前記往復駆動軸の軸線よりも離隔して位置されていることを特徴とする請求項3に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項5】
前記往復動ロッドが前記スコッチヨークのアームによって挟まれて揺動する部分を平面に形成されていて、前記二つの押付部が前記往復動ロッドにおける前記平面の部分に軸線方向に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項6】
前記往復運動駆動装置は、前記往復動ロッドの端部を直線運動させるように、前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられ、前記往復動ロッドを往復動自在に支持していることを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項7】
前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドを往復動させるために前記流体圧式駆動装置のケーシングに設けられたシリンダと、該シリンダに配置された前記往復動ロッドの端部を収容して、該端部に前記シリンダ内に供給された流体圧を作用させるラム式駆動装置とを有してなることを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。
【請求項8】
前記往復動駆動装置は、前記往復動ロッドの両端部に取付けたピストンを前記ケーシングに設けられた二つのシリンダに往復動可能に設置して、前記シリンダ内の前記ピストンのいずれかの側に供給される油圧、空気、Nガス圧等の流体圧によって前記往復動ロッドを移動させることを特徴とする請求項1に記載された流体圧式駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−82875(P2012−82875A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228020(P2010−228020)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(510248567)株式会社ティクスIKS (4)
【Fターム(参考)】