説明

流体混合方法および微細混合反応器

本発明は、膜または薄いプレートの積み重ねで構成された微細混合反応器において少なくとも2つの流体を混合する方法及び装置に関する。本発明によれば、混合室9は、膜平面に対して横切るように延びると共に、混合する流体3a,3b,3c,3dが、混合室の縦軸に対して横切る膜平面上において別々にかつ互いに隣接して導入される。その結果、流体は、流体が混合室に導入される際に、直ちに混合されると共に、結果として生じた混合物の温度は、混合室の周上の少なくとも1区画において温度制御装置により制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜または薄いプレートの積み重ねで構成された微細混合反応器において少なくとも2つの流体を混合する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の混合反応器は、特許文献1において知られ、混合される流体の流体ラメラが、膜平面において形成される。これらの流体ラメラは、膜平面において全流体流に共に誘導されて、流体ジェットとして渦巻き室に供給され、それにより、内向きに流れる流体らせんを形成し、渦巻き室は、膜のスタックに対して横方向に延び、流体らせんの中心からの結果として生じた混合物の引出しは、渦巻き室の端部において行われる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10123092号明細書(DE10123092A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、混合される流体の種類に従って、流体の混合を最適に実施することができるように、上述された種類の方法および装置を形成する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、混合される流体が、混合室の縦軸に対して横切る膜平面上において、別々にかつ互いに隣接して導入されるということにより達成される。その結果、流体の混合が、混合室への入口、即ち開口部分において実質的に行われ、結果として生じた混合物が、温度制御手段によって温度制御される。
発熱反応または吸熱反応が混合される流体間において行われるとき、温度制御手段により、流体を混合しながら、最も正確で実現可能な等温制御を達成することが可能になる。
【0005】
本発明によれば、混合という用語は、広範に理解されるべきであり、また、乳濁および分散の製造をも含む。流体は、非常に多様な気体および自由に流れる媒質であると理解されるべきである。
1つの好ましい例示的な実施形態において、流体混合方法は、少なくとも3つの方法ステップを含む:少なくとも2つの流体を2つ以上の部分流として1つまたは複数の混合/反応室に供給し、部分流は、混合/反応室の中間において好ましくは中央に提供された焼戻し円筒にあたり、少なくとも部分的にこの円筒の回りを流れるように、互いに隣接しておよび/または互いの上に位置する流体部分流の少なくとも2つの側から供給される。混合反応の開始と同時に、第2方法ステップにおいて、等温混合反応が最適に行われるように、混合反応の制御が、混合/反応室の外面上に設けられた上述の温度制御円筒および/または温度制御手段によって実施される。第3方法ステップにおいて、混合物は、混合/反応室の底部またはカバーの環状開口から連続的に引き出される。
【0006】
中央温度制御円筒は、ほぼ同じサイズを有し、かつ可能であれば他の反応物質の対向部分流体流と接触するように温度制御円筒の回りを時計回りおよび反時計回りの方向に移動する2つの部分流体流に単一流体流を分割する。プロセスを実施する代替方式では、部分流体流は、好ましい回転方向で混合/反応室に導入される。中央温度制御円筒との密接な接触は、プロセスの等温的な実施を補助する。
1つの好ましい他の実施形態では、流体の部分流は、異なる流体の2つの隣接部分流が好ましくは瞬時に互いに交差するような方式で混合/反応室に供給される。
【0007】
有利な方式で温度を決定するために、温度センサが、好ましくは混合のための出口開口において、またはその上において、混合/反応室において統合される、または混合/反応室に隣接する。温度測定は、好ましくは熱電対、抵抗温度計、またはサーミスタによって、あるいは放射測定によって実施されることが好ましい。
温度制御は、発熱混合反応の結果生じる熱を取り除く流体によって実施され、または、吸熱混合反応に必要な熱を供給することが有利である。吸熱混合反応に必要な熱は、抵抗ヒータなどの温度制御手段に電気的に供給することもできることが特に有利である。
【0008】
1つの吸熱混合反応では、流体が混合/反応室の全範囲にわたって同じ温度を有する目的で、温度制御手段が、吸熱混合反応において変換される熱のみを供給しなければならないように、流体は、必要な温度において混合/反応室にすでに供給されていることが有利である。これは、流体部分流の供給通路を有する2つの膜間においてそれぞれ提供される加熱手段によって実施されることが有利である。
混合/反応室において呈示される微細構造は、流体の部分流のより迅速な混合を達成し、それにより、渦巻きのために拡散混合が好ましく、ほとんどの場合、記述された3つの方法ステップの単一サイクルで十分である。
【0009】
有利には、結果として生じた混合物は、混合/反応室を直列に接続することによって改善することができる。
混合/反応室において呈示される微細構造、およびこれらの微細構造によって実施される流体部分流のより迅速な混合により、混合/反応室は、好ましくは1mmと20mmとの間の短い長さを有するように設計することができる。有利な方式において、これは、小寸法デバイスにおける、好ましくはDE10335038、DE19917330A1、およびDE20201753U1から知られている微細反応システムにおけるコンパクトな構造形状および方法の統合を支持する。
【0010】
1つの他の実施形態では、流体、好ましくは混合物を安定させる補助物質を含む流体または触媒を搬送する流体が、混合のために、出口とは反対側にある開口を経て混合/反応室に供給され、開口は、装置の軸方向において出口とは反対側にある。それにより、補助物質または触媒は、混合/反応室において特に長い停留時間を有する。代替として、補助物質または触媒は、1つまたは複数の流体とすでに混合しておくこともできる。具体的には、補助物質または触媒は、部分流において個々の流体に追加することもでき、個々の流体は、供給通路を備える個々のプレートまたは膜の各平面上において混合室に供給される。
【0011】
1つの有利な実施形態では、促進流体(たとえば、不活性気体または液体)が、混合/反応室の出口とは反対側にある開口を経て供給され、それにより、混合/反応室の混合媒質の停留時間を大きく短縮することができる。これは、極度に迅速な混合反応において特に有利である。
1つの有利な実施形態では、混合/反応室において、流体部分流を分断、湾曲、および逸脱させる微細構造が存在し、それにより、流体部分流の追加の集中的な渦巻きが得られる。
【0012】
1つの他の有利な実施形態では、混合/反応室の内壁および混合/反応室において呈示される微細構造は触媒で被覆され、あるいは、微細構造および/または膜もしくはプレートは、触媒効果を有する材料で作成することができる。
部分流は、出口開口に隣接してではなく、出口から上にある距離をおいて混合/反応室に供給されるのが好ましく、それにより、最低平面に供給される部分流は、出口まで十分な混合長さを通ってさらに流れなければならない。
【0013】
少なくとも2つの流体を混合する好ましいデバイスでは、流体は、互いに隣接する、または互いの上にある流体部分流において少なくとも2つの側から別々に混合/反応室に供給され、混合/反応室は、混合/反応室の中間において中央に焼戻し円筒を有する。混合物は、混合/反応室の底部またはカバーにおいて連続的に引き出される。
混合反応の温度は、上述の温度円筒によって、および/または混合/反応室の外面上に設けられる温度制御手段によって制御される。
【0014】
1つの他の特に有利な実施形態では、流体部分流は、異なる反応物質の隣接流体部分流が、混合/反応室に入った後、可能な限りすぐに互いに交差するように、混合/反応室に供給される。これは、流体部分流が、混合/反応室内への好ましい流れ方向を与えられるように、供給通路の高さおよび同時に幅が設計されることにより達成されることが好ましい。
また、混合/反応室に流れ込む前に、流体部分流を少なくとも部分的に混合することも可能である。これは、たとえば、2つの供給通路の部分流が互いに接触し、混合室に貫入する直前に共に混合することができるように、供給通路がマウス開口の直前において重なる、または互いの中に開いていることにより実施することができる。
【0015】
混合/反応室において呈示される微細構造は、有利には、供給通路を備える、もしくはこれらの上に成型されたプレートまたは膜と共に製造されることによって、および/または混合/反応室内に可動式に挿入される個々に製造された構成要素として、両方とも剛性に装備することができる。
環状断面を有する混合/反応室は、2mm未満の直径を有し、楕円の断面を有することが好ましい。流体部分流は、引出し開口が底部にある場合、円筒混合室の上方部分において供給されることが有利であり、またその反対である。長さが5mmと20mmとの間であることが好ましい混合/反応室の低い高さまたは長さのために、混合/反応室における圧力損失は、パイプにおける圧力損失と比較して小さいとみなすことができる。混合物が引き出される場所に応じて、底部またはカバーは、環状開口によってほとんど完全に開いた状態で形成されることが有利である。このようにして、引出し開口の回りにおいて流れが輻輳する領域が回避される。
【0016】
有利には、内部温度制御通路と混合/反応室との間、および混合/反応室と外部温度制御通路との間の壁の厚さは、50μmと1mmとの間の厚さであることが好ましく、100μmと500μmとの間の厚さであることが特に好ましい。
流体は、供給通路において流体部分流として混合/反応室に供給されることが有利であり、マウス開口の領域の供給通路は、30μmと250μmとの間の幅、および20μmと250μmとの間の高さを有することが好ましい。供給通路は、互いの上に層状になっている好ましくは50μmと500μmとの間の厚さを有するプレートまたは膜において設けられることが有利である。他の流体の部分流が、常に互いに隣接し、および/または互いの上にあり、同時に異なる流体の部分流が、常に、互いに対向して同じ平面上にある混合/反応室に供給されるように、部分流は、互いに隣接して、および/または互いの上に交互に誘導されることが好ましい。
【0017】
微細混合反応器は、流体分配面を有し、それによって、流体は、望ましい量の貫流に対応する1つまたは複数の混合/反応室にわたって変動的に分配される。さらに、微細混合反応器は、供給通路、および供給通路を備えるプレートまたは膜の数によって、貫流量に適合させることができることが有利である。
混合物の温度を測定するために、流体分配面は、混合物の出口通路において、またはその上に取り付けられることが好ましい温度センサを有する。温度測定は、混合/反応室の中、あるいは混合/反応室の出口の中、または混合/反応室の上に統合することができることが特に有利である。
【0018】
デバイスは、適切な構造によって、加熱媒質または冷却媒質を再び後方に誘導する可能性が創出され、それにより、同じ冷却媒質または加熱媒質によって内部および外部の両方から混合/反応室を温度制御することができる平面を有する。
好ましくは、混合/反応室は、個々の膜の上において直列に、あるいは代替実施形態では行および列に構成される。本明細書では、コンパクトな構造の形状は、他のシステムにおいて、好ましくは微細反応システムにおいて、特に好ましくはモジュラ微細反応システムにおいて、デバイスを統合するのに好都合であることが有利である。
【0019】
1つの代替実施形態では、デバイスは、複数の混合/反応室間の接続を有する。これにより、複数の混合/反応室を通る順次循環によって混合を改善するという有利な可能性が創出される。
微細混合反応器が組み立てられる元であるプレートまたは膜は、十分に不活性の材料、好ましくは金属、半導体、合金、特殊鋼、複合材料、ガラス、石英ガラス、セラミック、またはポリマー材料、もしくはこれらの材料の組合わせからなることが好ましい。
【0020】
上述されたプレートまたは膜を耐流体漏れ接合する適切な方法には、たとえば、プレス、リベット留め、接着、はんだ付け、溶接、拡散はんだ付け、拡散溶接、陽極結合、または共融結合がある。
プレートおよび膜の構造化は、たとえば、摩砕、レーザアブレーション、エッチング、LIGA法、直流電位成型、焼結、スタンピング、および変形によって行うことができる。
【0021】
方法および装置は、少なくとも2つの物質を混合するために使用されることが有利であり、両方の物質とも、供給流体に含まれる、または第1物質が第1流体に含まれ、第2物質もしくは他の物質が1つまたは複数の他の供給流体に含まれる。方法および装置は、発熱または吸熱の混合反応について、または代替として、混合物を安定させる補助物質または混合反応を支持する触媒が追加される混合物について使用されることが特に有利である。
【0022】
本発明は、図面を参照して、例示として以下においてより詳細に説明される。本発明は、直列に接続されている少なくとも1つの異なる数の混合/反応室を備える。しかし、明瞭化のために、1つの混合/反応室の構造のみが示されている。これらの構造は、混合/反応室の数に対応して周期的に各平面上において繰り返される。本発明は、2つを超える反応物質を供給して、同時に混合することも可能であるが、明瞭化のために、本発明は、2つの反応物質の例としてのみ説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、一実施形態として、全体にわたって異なる厚さを有することができる異なる構造のプレートまたは膜の積み重ね2を示す。膜のこの積み重ね2は、ケース1に挿入され、積み重ね2は、ケース要素1aの上において支持される。横方向ボア17によって、混合される反応物質AおよびBが供給される。第3側において、供給された反応物質AおよびBの混合物が、1つまたは複数のボア17aを介して引き出される。
図2aは、プレートまたは膜Fの平面図を示し、膜Fには、図2bにおいて表されるように環状混合室を有する複数の微細構造が列に形成される。ディスク形の膜Fの周上に、ケース1において膜を配置するための凹みF1が設けられる。
【0024】
ボア17によって、反応物質AおよびBは、図5aの膜Fの平面0にある対応する貫通ボアに到達し、ここから、流体分配プレート(平面1)に到達する。供給通路18aおよび18bは、たとえばエッチングによって生成される微細構造から形成され、反応物質を分配装置アーム18cおよび18dにもたらす。分配装置アーム18cおよび18dの長さは、混合に使用される混合/反応室9の数を決定する。このようにして、簡単な方式で混合/反応応力を流体の貫流量に適合させる可能性が創出される。
【0025】
次の膜(平面2)は、2つの穴3aおよび3bを有する。これらの穴3aおよび3bを経て、反応物質AおよびBは、それより上にある平面3の分配通路4aおよび4bに到達する。この構造によって、流体流の第1分割が達成され、それにより、平面8aおよび8bの上において、反応物質は、両方とも互いの上にあり、かつ互いに隣接し、互いに対向する混合/反応室9に供給することができる。
反応物質AおよびBは、平面4から7(図5b)にある穴3aおよび3c(たとえば反応物質Aについて)ならびに穴3bおよび3dを介して、平面8aおよび8bに上方に流れ、平面8aおよび8bの上において、実際の混合が行われる。環状混合/反応室9が、膜を平面8aおよび8bと交互に層状にすることによって形成される。平面8aの上において、水平供給通路10aおよび10bが穴3aおよび3bに接続され、反応物質AおよびBを混合/反応室9に誘導する。穴3cおよび3dは、反応物質AおよびBをさらに次の平面8bに導入するようにのみ作用する。供給通路10aおよび10bは、マウス開口14に向かって水平方向に狭くなるように微細構造化される。さらに、マウス開口14を水平方向に狭くするだけでなく、同時に深度を減少させるように提供することができる。それにより、わずかに上方に室9の中に流体部分流の流入を向けることが達成される。
【0026】
平面8b上の穴3cおよび3dは、供給通路10a’および10b’に接続される。平面8bの膜は、反応物質BまたはAがほぼ同じ高さにおいて混合/反応室9内に誘導されるように、有利な方式で、下方に対面する微細構造側と層状にされる。下方に対面する微細構造と膜が層状になっていることにより、供給通路10a’および10b’は、混合/反応室9の中に向かってわずかに下方に向けられているマウス開口14’に反応物質AおよびBを誘導する。それにより、反応物質AおよびBの流体部分流が、混合/反応室9に流れ込んだ実際的に直後に互いに交差し、貫通し、したがって混合することが簡単な方式で達成される。
【0027】
混合/反応能力を貫流量に適合させることは、分配装置プレート(平面1)の上の分配装置アーム1cおよび1dの全長によってだけでなく、それぞれが環状混合/反応室9を有する平面8aおよび8bの膜の反復数によっても行われる。
反応物質AおよびBの50:50以外の他の混合比率が、たとえば、平面8aおよび/または8bの対応する数の膜が供給通路10aから10b’を有さないということにより達成される。異なる混合比率に適合する他の形態が、平面8aおよび8bの異なる数の膜が層状にされる有利な方式で達成される。
【0028】
図2aおよび図2bによる膜Fが、図5cの平面8aに対応し、一方、図3aおよび図3bの対応する表示が、平面8bに対応する。この例示的な実施形態では、環状混合/反応室9は、温度制御する流体が通って流れる楕円断面を有する中央中空円筒7の回りに楕円で設計される。この温度制御円筒7の壁の厚さ7aは、1mmより小さいことが好ましく、たとえば50から100μであり、300μであることが好ましい。外周上において、環状室9は、縦方向戻り通路6aおよび6bによって長い側において囲まれ、通路6aおよび6bを通って、混合/反応室9を温度制御するための流体も流れる。対応して、これらの平坦湾曲通路6a、6bと反応室9との間の壁の厚さは薄く形成され、1mm未満であることが好ましく、たとえば50から100μであり、300μであることが好ましい。
【0029】
図2bおよび図3bにおいて、反応物質AおよびBは、4つの異なる位置14、14’において混合/反応室9に流れ込むことがわかる。本明細書では示されていない1つの代替実施形態では、流体分配プレート(平面1)は、異なる反応物質が、穴3a、3b、3c、および3dのそれぞれを通って流れるように構造化することができる。この場合、分配通路4a、4b(平面3)は必要ではない。そのような実施形態では、最高で4つの反応物質を同時に混合することが可能である。
【0030】
図2および図3bの通路10aおよび10bならびに10a’および10b’に斜線を付けることによって、射影平面に対して傾斜した通路の延長部が示される。
図4aが示すように、環状反応室9は、軸方向において耐流体漏れ性であるように、平面9の膜によって上部において、および平面7の膜によって底部において封止され、開口は、混合物が流出するために依然として存在する。
混合物は、混合/反応室9において下方に流れ、コレクタ通路8aおよび8bにおいて微細構造凹みの形態の出口19を経て平面7(図5b)において流れ出る。出口19は、代替として、単一環状出口の形態で設計することもできる。同時に、平面7の膜は、下向き方向において耐流体漏れ性であるように、混合/反応室9を封止する。コレクタ通路8aおよび8bを介して、混合物は、平面1および0の上の流出開口20に最終的に到達する。
【0031】
温度測定は、温度センサ21(図1)によって混合/反応室9のすぐ隣において行うことができる。この場合、供給反応物質AおよびBの温度と混合物の温度の両方を検出することができる。図1による実施形態では、温度センサ21は、通路18aおよび18bの領域、ならびに凹み19によって形成される出口の領域において、ケース要素1aの穴に形成される。
混合反応の温度は、たとえば温度制御流体Kuによって直接制御することができる。温度制御流体Kuは、平面10上の供給通路11を経て、平面9上において上から温度制御円筒7に供給される。温度制御流体は、温度制御円筒7内を下方に流れ、このようにして、円形リングの形状で形成される混合/反応室9の内表面を冷却または加熱する。壁の厚さが50μmと1mmとの間の厚さであるので、混合物への非常に有効な伝熱、または混合物からの熱の除去が得られ、それにより、強い発熱または吸熱混合反応中でも、等温処理条件が維持される。
【0032】
温度制御円筒7は、混合/反応室9において微細構造ブリッジ13によって保持される。これらの微細構造13は、反応物質AおよびBに追加の渦巻きを提供し、したがって、より迅速な混合を可能にする。微細構造13の位置は、平面8bの膜が回転する場合、互いのすぐ上にはないように提供されることが有利である。したがって、反応物質AおよびBが、異なる平面の微細構造13の間を流れることができるということが、簡単な方式で達成される。図4aが示すように、ブリッジ13は、ブリッジが上に形成または成型される該当膜より薄い厚さを有し、それにより、ブリッジ13は、膜の厚さ全体には延びない。図4bにおいて、I−Iは、図4aの断面表示のセクションを示す。
【0033】
代替として、混合/反応室9より前でも反応物質AおよびBを事前に加熱するために、平面8aおよび8bの膜のそれぞれの間に膜を挿入することができる。この膜は、たとえば加熱流体が通って流れる構造通路の形態にある加熱手段を備える。
代替実施形態では、微細構造13および混合/反応室9の壁の両方とも、触媒で被覆される。さらに、平面8aおよび8bのどの膜が触媒材料から完全に作成されるかに応じて、代替形態が提供される。
【0034】
平面5の上において、温度制御流体Kuは、収集パン5に流れ込む。その後、この場合は混合/反応室9に沿って外部に、戻りガイド6aおよび6bを経て上方に押し戻される。したがって、有利な方式において、混合/反応室9の外表面は、この場合も同様に温度制御される。この場合も、戻りガイド6aおよび6bと混合/反応室9との間の壁の厚さは、再び非常に良好な伝熱が達成されるように、50μmと1mmとの間の厚さである。同時に、戻りガイド6aおよび6bは、室9を熱的に絶縁するように作用する。温度制御流体Kuは、平面10の上の引出し通路12を経て最終的に引き出される。
【0035】
代替として、中央温度制御円筒7および/または戻りガイド6aおよび6bにおいて、たとえば、電気絶縁加熱抵抗ワイヤまたは加熱抵抗膜によって最も好都合な形態で、たとえば、電気加熱手段などの加熱手段を装備することができる。
本明細書では示されていない代替実施形態では、混合物は、流出開口20を経て引き出されるのではなく、結果として生じた混合物を改善するために、または反応物質をさらに混合するために、あるいは停留時間を延長するために、第1混合/反応室9と平行または直列に構成される他の混合/反応室9に供給される。混合/反応室9の幾何学的形状の範囲が小さいことにより、この連続供給は、非常に小さい空間において行うことができる。
【0036】
1つの他の有利な実施形態では、触媒または混合物を安定させる補助物質を搬送する流体Kaが、混合/反応室9に供給される。流体Kaは、平面8cの分配装置構造16を介して供給される(図6)。
そこから、流体Kaは、混合/反応室開口19が混合/反応室9より下に位置する限り、穴15および15’を介してたとえば上から混合/反応室9に流れ込む。そうでない場合、供給は下から行われる。このようにして、たとえば、触媒が混合/反応室9において可能な限り最長の停留時間を有し、すべての流体部分流に有効に接触することが達成される。
【0037】
代替として、流体Kaは、穴15および15’を介して供給され、たとえば、適合された量で供給される不活性物質であり、それにより、促進媒質として混合/反応室9から加速的に混合物を押し出し、したがって、混合物についてかなり短縮された停留時間を達成する。このようにして、1マイクロ秒未満の停留時間を達成することができ、これは、極度に迅速な混合反応において特に有利である。それにより、装置の輻輳が防止される。
図5bは、平面7における混合物の流出通路20の構造を示し、環状室9に対して横方向にほぼ接して延びる2つの通路8aおよび8bの上に、穴または凹み19が平坦通路6aと6bとの間に形成される。この穴または凹みは、この実施形態では平面8aにおいて上にある反応室9と連絡する。図5bが示すように、反応室9において生成された混合物Mは、平面7において凹み19を経て下方に貫入し、出口開口20に到達する。膜または平面7は、平面8の環状反応室9を耐流体漏れ性にするために、軸方向下方に環状反応室9を封止するが、同時に、凹み19によって流出開口を形成する。1つの修正された実施形態では、そのような流出開口19は、装置の動作のタイプに従って、反応室9の上部を覆う膜または平面の上に提供することもできる。
【0038】
少なくとも2つの流体を混合するための記述された微細構造は、非常に小さい寸法を有することができる。プレートまたは膜Fの厚さは、50と500μとの間とすることができる。平坦通路6a、6bと反応室9との間の壁の厚さ、および温度制御円筒7の壁の厚さ7aは、好ましくは50と500μとの間、特に100と300μとの間とすることができる。温度制御円筒7は、少なくとも水平方向において1mm未満の直径を有することができる。対応して、環状反応室9の直径は、少なくとも水平方向において2mm未満とすることができる。一方、反応室9の高さは、要件に応じて設計することができ、たとえば1mmと20mmとの間の寸法を有することができる。
【0039】
図7は、流体流の透視図を示し、流れの進路を明瞭にするために、回りの膜構造は省略されている。混合室9からある距離に構成されるブロック3aから3dは、この実施形態では中空円筒であり、個々の膜層に形成された穴を表し、そこから、ほぼ個々の膜平面において、供給通路10aから10dが、中空円筒混合室9の中に径方向に至る。垂直通路3aおよび3bから水平に分岐する供給通路10aおよび10bは、混合室9の中空円筒と交差する2つの平行な面にほぼあり、一方、垂直通路3cおよび3dから水平方向に分岐する供給通路10cおよび10dは、供給通路10aおよび10bに対して傾斜して延び、それにより、隣接供給通路10a、10dおよび10c、10bを経て流入する流体は、混合室9に入る際に互いに交差して混合する。供給通路10cおよび10dは、互いに平行であるが、供給通路10aおよび10bの垂直面と交差する垂直平面にもある。
【0040】
図7からわかるように、供給通路10cおよび10dは、供給通路のマウス開口から混合室の中に貫通する流体流を互いに向けて配向させるために、水平に延びる供給通路10aおよび10bに対して軸方向に傾斜し、それにより、流体流は、水平面においてだけでなく、混合室9の軸に沿った垂直方向においても互いに交差する。
図8は、混合室9において管状温度制御円筒7を有する混合領域の基本的な構造の透視図を概略的に示し、混合室9の中に、互いに向かって傾斜して延びる供給通路10a、10bおよび10a’、10b’が、個々の膜平面の上において開いており、供給通路10aから10b’の間において依然として自由である混合室9の周囲の領域には、構造の軸方向の外周上において混合室9の回りを流れる冷却媒質または加熱媒質のために、通路6a、6bが形成される。混合室9の断面が楕円に設計され、供給通路10aから10b’が、より大きな湾曲を有する反対の狭い側の領域において開いているので、より小さい湾曲を有する縦方向の側では、円形断面の形状の混合室9と比較して、より大きな領域が、外部通路6a、6bを経て流れる媒質によって熱を供給または除去するために依然として存在する。
【0041】
さらに、混合室9のより大きな湾曲の領域では、供給通路10aおよび10bまたは10a’および10b’は、流体流がまさに混合室に入る際に互いに交差して共に混合されるように、互いに向けてより強く向けることができる。
図9は、互いに隣接する膜において形成され、かつ互いにある角度で延びる2つの供給通路10bおよび10b’のマウス領域における環状混合室9の平面図を示す。混合室の軸方向において、各場合の2つの通路の混合領域は重なっているので、個々の膜層において、流入する流体が2つの部分流の混合を妨害せず、かつ混合室9の軸方向における無制御の流れが防止されるように、図7が示すように、分割要素30によって互いから個々の混合領域を分割することが好都合であることがある。図9の平面図が示すように、分割要素30は、2つの供給通路10a、10a’および10b、10b’のマウス領域においてのみ、混合室9の周方向においてプレートの形状で延びることが好ましい。図10は、図9の線I−Iに沿った概略的断面図で重複分割要素30を示し、各場合において、分割要素30は、供給通路がその内部に形成されている2つの膜層に割り当てられる。
【0042】
図9aが透視図において示すように、分割要素30は、膜Fのすぐ上に形成または成型することができる。
混合室9の直径および互いに反対の対角方向において供給された流体の流れ粘性に従って、分割要素30によって軸方向において2つの供給通路の混合領域を次の混合領域から分割するだけでなく、混合室9の周方向において混合領域を流れから遮断することも好都合であることがあり、それにより、たとえば、ある角度において開いている供給通路10a、10a’の高い供給粘性のために、混合流体の強い流れが混合室の周方向において生じる場合、供給通路から出現した直後の交差流体流の混合プロセスは、混合室9の周方向の流れ全体によって悪影響を受けない。混合室の周囲領域において混合領域を遮断するために、図9および図10による実施形態では、水平分割要素30の上に、軸方向に延びる遮断スクリーン31が形成され、それにより、混合領域は、図9では矢印Xによって示される周方向の流れから遮断される。図9による実施形態においてある角度に開いている供給通路10b’は、混合室9の反時計回り方向の流れを支持する。
【0043】
図9aおよび図10が示すように、遮断スクリーン31は、隣接分割要素30間において延びることができ、それにより、連続する遮断スクリーン31によって、分割壁が、混合室9の軸方向に生じる。しかし、重なる分割要素30間の部分領域の距離にわたってのみ遮断スクリーンを形成することも可能である。
図9、図9aおよび図10に示される実施形態では、遮断スクリーンは、分割要素30の上に成型され、それにより、全体としてL形の断面の構造が得られる。しかし、混合室9の内周と外周との間において、分割要素30の前のある距離に遮断スクリーン31を構成することも可能であり、それにより、分割要素30と遮断スクリーン31との間において、自由空間が混合室9の軸方向に依然として存在する。
【0044】
図11は、長い断面を有する混合室90を形成するための膜Fにおける穴の簡略化された実施形態の平面図を示し、断面の2つの側に、媒質を冷却または加熱するための長い通路60aおよび60bが形成される。長い混合室90の狭い側において、供給通路10a、10dは、互いに向かって傾斜して開いている。この実施形態でも、供給通路10aおよび10dからの2つの部分流の混合は、まさに混合室90に入る際に行われ、混合プロセスの対応する温度制御は、温度制御通路60aおよび60bによって行うことができる。
【0045】
混合室90は、様々な膜平面上において供給される単一部分流の全容積について十分な空間が存在するように、長い形状を有する。混合室内への流入量の種類に応じて、これは、図示されるものとは異なる断面を有することもできる。たとえば、混合室90は、図11において、湾曲した形状とすることができる。
図11による一実施形態では、全混合物が膜スタックの底部において引き出されるとき、軸方向において上部から下部に広くなる混合室90を設計することも可能であり、この実施形態でも、マウス開口は、最も下の混合室90の断面形状にほぼ対応する。すなわち、そのような実施形態では、最も上の混合室90は、最も下の混合室より短い長さを有することができ、それにより、層から層または平面から平面にさらに供給される流体の流れの量に対応して、上部から底部まで、拡大する断面が得られる。
【0046】
図11と図8とを比較することからわかるように、図11による構造についてより、混合室9のほぼ円筒または環状の実施形態について、全体的によりコンパクトで有効な構造を達成することができ、部分流を温度制御円筒7の焼戻し手段の壁に当てることによって、一方では共に混合することが支持され、他方では温度制御が改善される。
図11による構造では、2つの温度制御通路60aおよび60bは、混合領域とは反対側の混合室90の端部において互いに接合することもでき、それにより、その端部分において混合室90を囲む。
【0047】
修正された実施形態によれば、供給通路10aおよび10bは、2つの供給通路の流体部分流が、混合室に入る直前に互いにすでに接触して共に混合することができるように、混合室内へのマウス開口の直前において、互いに重なり交差することができ、混合プロセスは、混合室に入る際にも続行される。すなわち、そのような実施形態では、開口領域の直前における隣接供給通路間において、分割壁が省略される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ケースにおける微細反応混合器の断面図である。
【図2a】平面8aの混合膜を示す図である。
【図2b】平面8aを表す混合膜の詳細図である。
【図3a】平面8bの混合膜を示す図である。
【図3b】平面8bを表す混合膜の詳細図である。
【図4a】平面6から平面9にわたる断面における膜のスタック構造を示す図である。
【図4b】図4aにおいて混合室を有する平面の平面図である。
【図5a】平面0から平面3を有する層の構造の概略的な分解図である。
【図5b】平面4から平面7を有する層の構造の概略的な分解図である。
【図5c】平面8aから平面9を有する層の構造の概略的な分解図である。
【図5d】平面10から平面12を有する層の構造の概略的な分解図である。
【図6】触媒、または混合物を安定させる補助物質を搬送する流体を供給する代替実施形態について、微細構造を平面8cとして示す図である。
【図7】流体流を明示するために膜構造が省略されている、供給通路を有する混合室の透視図である。
【図8】混合領域の構造の概略図である。
【図9】分割要素の平面図である。
【図10】図9の線I−Iに沿った断面図である。
【図11】混合室の他の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜または薄いプレートの積み重ねで構成された微細混合反応器において少なくとも2つの流体を混合する方法であって、
混合室が、膜平面に対して横切るように延びると共に、混合する前記流体が、前記混合室の縦軸に対して横切る前記膜平面上において別々にかつ互いに隣接して導入され、その結果、前記流体の混合が、前記流体が前記混合室に導入される際に、実質的に行われ、
結果として生じた混合物が、温度制御手段によって、前記混合室の周上の少なくとも1区画において温度制御されることを特徴とする流体混合方法。
【請求項2】
前記混合物を支持する触媒または補助物質が、前記膜平面の上に供給された前記流体に部分量で追加され、および/または前記流体が、供給通路および/または前記混合室の内壁の上に提供された触媒の上に誘導されることを特徴とする請求項1記載の流体混合方法。
【請求項3】
膜または薄いプレートの積み重ねで構成された少なくとも2つの流体を混合するための微細混合反応器であって、
混合室(9,90)が、膜平面に対して垂直に延び、
混合される前記流体の供給通路(10)が、前記膜(F)の平面において形成され、前記供給通路(10)のマウス開口が、互いに隣接して、即ち重なって前記混合室において設けられ、
前記混合室(9)が、その周の少なくとも一部の上に温度制御手段(6,60)を有することを特徴とする微細混合反応器。
【請求項4】
前記混合室(90)が、長い断面形状を有し、前記供給通路(10)が、前記混合室の狭い側の領域においてこの中に開いていることを特徴とする請求項3記載の微細混合反応器。
【請求項5】
前記混合室(90)の少なくとも1つの広い側に、前記混合室と平行に延びる温度制御通路(60)が形成されることを特徴とする請求項4記載の微細混合反応器。
【請求項6】
混合される前記流体の前記供給通路(10)が、互いにある角度において開口領域に向かって構成されると共に、前記マウス開口に向かって細くなるように形成されることを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。
【請求項7】
混合される前記流体の前記供給通路(10)が、前記混合室(9,90)の軸方向において互いにある角度で形成されることを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。
【請求項8】
前記混合室(9)が、ほぼ環状の断面で形成されると共に、内周上において温度制御手段(7)から境界を画定され、
前記混合室のほぼ対角に反対側において、混合される前記流体の供給通路(10)が開いていることを特徴とする請求項3乃至7のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。
【請求項9】
前記供給通路(10)間の前記混合室(9)の前記外周上に、前記混合室と平行に延びる温度制御通路(6)が形成されることを特徴とする請求項8記載の微細混合反応器。
【請求項10】
重なる混合領域間における前記混合室の前記軸方向において、前記膜平面と平行に前記マウス領域において延びる分割要素(30)が設けられることを特徴とする請求項3乃至9のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。
【請求項11】
個々の混合領域より前に前記混合室(9)の周方向において、前記混合室(9)の軸にほぼ平行に延びる遮断スクリーン(31)が設けられることを特徴とする請求項8乃至10のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。
【請求項12】
環状温度制御円筒(7)が、互いに層状にされた前記個々のプレートまたは膜(F)の穴および壁区画によって前記混合室(9)において形成され、前記環状温度制御円筒の前記壁区画が、成型されたブリッジ(13)によって保持されることを特徴とする請求項8乃至11のうちいずれか一項に記載の微細混合反応器。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−534465(P2007−534465A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548253(P2006−548253)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000212
【国際公開番号】WO2005/068064
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506238019)ズィンティックス ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】SYNTICS GMBH
【Fターム(参考)】