説明

流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤

【課題】 流体軸受に供給される流体の回収を促すことで、流体の使用量を低減させると共に、流体軸受より下方の油溜まりを廃止して、流体軸受周辺を小型・軽量化することのできる流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤を提供する。
【解決手段】 流体軸受32を、砥石軸19を支承する軸受部材48と、砥石軸19と軸受部材48との間に支承用油(第一流体)を供給する第一供給部49と、支承用油を回収する回収部50と、回収部50を挟んで第一供給部49とは反対側に所定圧力のエア(第二流体)を供給する第二供給部51とを具備させ、研削盤の砥石台における砥石車Tが固定される砥石軸19の支承に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤に関するもので、特に、軸受に供給された流体の回収を促すことの可能な流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機械の主軸等の回転軸を回転可能に支承する軸受として、流体軸受が知られている。図4は、従来の流体軸受100を研削盤の砥石台101に用いた例を模式的に示したもので、この流体軸受100は、砥石車Tが固定される回転軸102を回転可能に支承する軸受部材103と、回転軸102と軸受部材103との間に所定の圧力に加圧された流体としての支承用油を供給する流体供給部104と、流体供給部104から供給された支承用油を回収するための回収部105とを備えている。
【0003】
砥石台101には、図示するように、回転軸102の下方に所定の容積を有した油溜まり106が設けられており、この油溜まり106は、流体軸受100から流出する支承用油を集めることで、支承用油が重力などにより自然に流動し易いようにしている。
【0004】
そして、この砥石台101では、回転軸102の上方から流体供給部104に供給された支承用油が、回転軸102の下方から回収部105を介して油溜まり106へと導かれ、更に、油溜まり106より下方で、且つ、砥石台101の外部に配置された図示しないタンクへと回収されるようになっている。つまり、供給された支承用油は、重力によりタンクへ自然回収されるようになっている。なお、タンクに回収された支承用油は、不純物などを濾過した後に、ポンプにより流体供給部104へと供給され、循環再利用されるようになっている。
【0005】
本願出願人は、出願時において、上記の背景技術として以下の文献を知見している。
【特許文献1】特開2001−82473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の流体軸受100では、流体供給部104に供給された支承用油を重力により自然回収するようにしているので、支承用油がタンクに回収されるまでには、相当の時間がかかるものとなっていた。つまり、回収される支承用油の流速が遅いため、多くの支承用油を必要とし、コストのかかるものとなっていた。
【0007】
また、従来の流体軸受100では、軸受部材103の両端部が開放されているので、この両端部から回転軸102と軸受部材103との間に異物が侵入して不具合が発生したり、両端部から支承用油が流出して支承用油の消費量が多くなったりする問題があった。そのため、軸受部材の両端部を水密にシールすることが考えられるが、シール部材と回転軸とが接触することで、回転軸に回転抵抗がかかって回転駆動手段に不要な負荷がかかったり、シール部材が摩耗するためにシール部材の交換等のメンテナンスが必要になったりする問題があった。
【0008】
更に、流体軸受100の下方に油溜まり106を備えているので、流体軸受100全体が大型化していた。特に、工作機械の砥石台101等の移動体に備えた場合、移動体の質量が大きくなり、工作機械全体が大きくなる問題があった。また、移動体の質量が大きくなることで、移動体の固有振動数が低くなり、他の部材と共振し易くなって、騒音の原因となったり、加工精度が低下したりする問題があった。更に、移動体の質量が大きくなることで、移動体の移動(摺動)抵抗が大きくなり、移動体を移動させるために大きな駆動力が必要となり、移動にかかるエネルギーの消費が多くなる問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、流体軸受において、供給される流体の回収を促すことで、流体の使用量を低減させると共に、流体軸受より下方の油溜まりを廃止して、少なくとも流体軸受周辺を小型・軽量化することのできる流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る流体軸受は、「回転軸を回転可能に支承する軸受部材と、前記回転軸と前記軸受部材との間に第一流体を供給する第一供給部と、該第一供給部より供給された第一流体を回収する回収部とを具備する流体軸受において、前記回収部を挟んで前記第一供給部とは反対側に、所定圧力の第二流体を供給する第二供給部を更に具備し、該第二供給部から供給される前記第二流体により前記第一流体が前記回収部から回収される」構成とするものである。
【0011】
ここで、「第一流体」としては、回転軸を支承可能な流体であれば、液体や気体等、或いは、液体と気体の混合流体等、特に限定するものではないが、潤滑油等の液体が望ましい。なお、第一流体は、所定圧力に加圧されていても良い。また、「第二流体」としては、エア等の気体が望ましい。
【0012】
また、第一供給部、回収部、第二供給部の配置方向は、回転軸の軸方向に配置されていても良いし、回転軸の周方向に配置されていても良い。また、第一供給部、回収部、第二供給部は、回転軸側或いは軸受部材側の何れの側に備えていても良いし、それらを夫々複数備えていても良い。
【0013】
本発明によると、回転軸と軸受部材との間では、第一流体の回収部を挟んで、第一供給部と第二供給部とが夫々備えられており、第二供給部から所定圧の第二流体が供給されると、第二流体の一部が回収部へと流入して回収部を介して排出される流れが形成され、この第二流体の流れに乗ることで、第一供給部から供給された第一流体が回収部から回収される。従って、第一流体の回収が第二流体により促されるので、第一流体が回収される時間を可及的に短くすることが可能となり、第一流体の使用量を可及的に少なくすることができる。
【0014】
また、回転軸と軸受部材との間において、第二供給部から供給される第二流体は、回収部とは反対側にも流出するので、その流出先を軸受部材の軸方向端部とすることで、軸受部材の軸方向端部から異物などが回転軸と軸受部材との間に侵入するのを防止することができる。また、軸方向端部から第一流体が流出するのを阻止することができるので、第一流体の消費量を可及的に低減させることができると共に、軸方向端部をシールする必要がなくなり、部品点数を少なくしたり、回転抵抗を低減させたりすることもできる。
【0015】
更に、第一流体の回収が促されるので、従来のように流体軸受の下方に油溜まりを備える必要がなくなり、流体軸受周りを小型・軽量化することができる。例えば、この流体軸受を工作機械の移動体等に用いることで、移動体を小型・軽量化することができ、移動体の移動にかかるエネルギー消費量を低減させたり、移動体の固有振動数を高くすることで、騒音を抑えたり、加工精度を高めたりすることができる。
【0016】
また、第一流体を液体とし、第二流体を気体とした場合、第一流体と第二流体とが回収部等で混合されても、容易に分離させることができるので、混合した第一流体と第二流体とを分離させることでそれらを再利用することができる。なお、第一流体と第二流体は、互いに反応し難いものとしても良く、例えば、第二流体として不活性ガス等を用いることもできる。また、第二流体としてエアを用いることで、流体そのものにかかるコストを無くしても良い。
【0017】
なお、第二供給部から回収部を介して流れる第二流体の流速を制御することで、回収部付近に負圧を発生させ、その負圧により第一流体を回収するようにしても良い。
【0018】
本発明に係る流体軸受は、上記の構成に加えて、「前記第二供給部は、前記軸受部材の軸方向両端部に配置されている」構成とすることもできる。
【0019】
本発明によると、第二供給部を軸方向両端部に配置しており、詳しくは、両端に配置された第二供給部の間に第一供給部が配置されると共に、その第一供給部と両端の第二供給部との夫々の間に回収部が配置されるので、上記の作用効果に加えて、軸方向両端部から第二流体が流出するようになり、回転軸と軸受部材との間に異物などが侵入するのを確実に防止することができる。
【0020】
本発明に係る流体軸受を用いた研削盤は、「砥石台に砥石車を回転可能に支承する流体軸受を用いた研削盤において、前記流体軸受は、前記砥石車が固定される回転軸を回転可能に支承する軸受部材と、該軸受部材と前記回転軸との間に第一流体を供給する第一供給部と、該第一供給部より前記軸受部材の軸方向外側に配置され、供給された第一流体を回収する回収部と、該回収部より更に軸方向外側に配置され、所定圧力の第二流体を供給する第二供給部とを備えている」構成とするものである。
【0021】
ここで、流体軸受の配置としては、特に限定するものではないが、砥石車の片側又は両側に延出させた回転軸に対して、砥石車の片側又は両側において回転軸を回転可能に支承するように配置することができ、何れの配置を用いても良い。
【0022】
本発明によると、研削盤における砥石台の砥石車が固定される回転軸を支承する流体軸受を上記構成とすることで、流体軸受に供給された第一流体を、第二流体により容易に回収することが可能となり、従来の砥石台のように、流体軸受の下方に油溜まりを設ける必要がなく、砥石台を小型・軽量化することができる。
【0023】
また、砥石台を小型・軽量化することができるので、砥石台の固有振動数が高くなり、共振等による騒音を抑えたり、加工精度を高めたりすることができる。また、移動体としての砥石台を軽量化することができるので、砥石台を移動させるための駆動力を小さくすることができ、移動にかかるエネルギー消費量を低減させることができる。
【0024】
更に、砥石台の特に、砥石車を固定する回転軸周りを小型・軽量化することができるので、例えば、砥石車周辺の回転軸と流体軸受等をユニット化して、砥石台から着脱可能とした場合、そのユニットが小型・軽量化されるので、ユニットの着脱作業を容易にすることができ、砥石車の交換作業を外段取りとして研削盤の可動効率を高めることができる。
【0025】
本発明に係る流体軸受を用いた研削盤は、上記の構成に加えて、「前記砥石台は、前記砥石車を所定方向に大きく追出した位置に配置する形態である」構成とすることもできる。ここで、「追出した位置」とは、砥石台を所定方向に案内する案内装置において、平面視で砥石台側の接触部分から外側に出た位置のことを言い、所謂、「オーバーハング」した位置のことである。
【0026】
本発明によると、砥石車を固定する回転軸周りが小型・軽量化されているので、砥石車をオーバーハングさせても、砥石車等からかかるモーメントを小さくすることができ、砥石台が傾いて加工精度が悪くなるのを抑制することができる。また、砥石車をオーバーハングさせているので、砥石車のワークとの研削加工部と、砥石台の案内装置とを可及的に遠ざけることが可能となり、研削加工の際に用いられる切削液が案内装置にかかるのを容易に防止することが可能となったり、ワーク付近に案内装置が無くなるのでワーク支持装置等の設計自由度を高めたりすることができる。
【0027】
本発明に係る流体軸受を用いた研削盤は、上記の構成に加えて、「前記流体軸受は、前記砥石車の両側に延出された前記回転軸を、前記砥石車の両側で夫々回転可能に支承する」構成とすることもできる。
【0028】
本発明によると、砥石車をその両側で流体軸受により支承しているので、研削加工の際に砥石車にかかる研削抵抗を両側の流体軸受で受けることが可能となり、研削抵抗による砥石車の変位を可及的に小さくすることができ、研削盤の加工精度を向上させることができる。
【0029】
また、砥石車にかかる研削抵抗を両側の流体軸受で受けるようにしており、一つの流体軸受にかかる抵抗が小さくなるので、流体軸受を小型化することが可能となり、砥石台における砥石車を固定する回転軸周りを、更に小型・軽量化することができる。
【0030】
なお、砥石車を固定する回転軸を、その軸方向に分割可能に構成しても良く、それにより、砥石車を交換する際の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述の通り、本発明によると、流体軸受において、供給される流体の回収を促すことで、流体の使用量を低減させると共に、流体軸受より下方の油溜まりを廃止して、少なくとも流体軸受周辺を小型・軽量化することのできる流体軸受及び流体軸受を用いた研削盤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明に係る最良の実施形態である流体軸受を用いた研削盤について図1乃至図3に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である流体軸受を用いた研削盤の要部を拡大して示す側面図であり、図2は、図1に示す研削盤の砥石台における砥石軸ユニットを拡大して示す断面図であり、図3(A)は、図1における流体軸受を拡大して示す断面図であり、(B)は、(A)の流体軸受をその軸方向から示す断面図である。
【0033】
なお、本例では、研削盤として、ワークを支持するワークテーブルと、このワークテーブルに対向する砥石台とを備えた円筒研削盤を例示するが、円筒研削盤を使用する場合、円筒研削盤に臨む使用者から見て、ワークテーブルが手前側に位置し、砥石台が奥側に位置するのが一般的である。よって、以下では、説明の便宜上、研削盤の全体構成に係る位置関係を、研削盤に臨む使用者(図1において左側に立つ)から見た状態として説明する。すなわち、使用者から見て、手前側を「前」、奧側を「後」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。
【0034】
図1に示すように、本例の研削盤10は、コンピュータ数値制御装置(CNC)により全体の駆動が制御されるものであり、研削盤10の基台部分を構成するベッド11の上面には、一対のZ軸レール12を介してベッド11上の後部側に載置されると共にZ軸方向(左右方向)に移動駆動されるZ軸移動体13が設けられている。Z軸移動体13の上面には、一対のX軸レール15が設けられ、このX軸レール15を介してX軸移動体16がZ軸移動体13上に載置されると共にX軸方向(前後方向)に移動駆動される。X軸移動体16上には、砥石車Tを支持すると共に回転駆動する砥石台14が設けられている。また、ワークWを支持すると共に回転駆動する左右一対の主軸台17を有し、ベッド11上の前部側に載置されたワークテーブル18を備えている。
【0035】
ここで、砥石台14は、砥石車Tが交換可能に固定される砥石軸19を具備しており、この砥石軸19を回転させることで、支持した砥石車Tを回転駆動する。また、左右一対の主軸台17は、ワークWの端部を支持する主軸を具備しており、この主軸を回転させることで、支持したワークWを回転駆動する。
【0036】
ところで、この研削盤10では、Z軸移動体13及びX軸移動体16の夫々が、リニアモータにより駆動されるようになっている。詳しくは、一対のZ軸レール12間において、ベッド11の上面にはリニアモータのマグネット20が、Z軸移動体13の下面にはリニアモータのコイル21が、夫々配置されており、これらマグネット20及びコイル21によりリニアモータが構成され、このリニアモータによりZ軸移動体13のZ軸方向への移動が駆動されるようになっている。
【0037】
また、図示は省略するが、一対のX軸レール15間においては、Z軸移動体13の上面にはリニアモータのマグネットが、X軸移動体16の下面にはリニアモータのコイルが、夫々配置されており、これらマグネット及びコイルによりリニアモータが構成されており、このリニアモータによりX軸移動体16のX軸方向への移動が駆動されるようになっている。
【0038】
ワークテーブル18に具備された左右一対の主軸台17は、図示は省略するが、夫々Z軸方向に所定距離離間した位置に対向配置されると共に、モータ等を用いた駆動装置(図示省略)によりZ軸方向に位置調節可能とされている。各主軸台17は、ワークWの端部を支持するためのセンタやチャック等の支持具を有する主軸と、主軸を回転駆動させるモータ等を用いた駆動装置22とを夫々備えており、各主軸によってワークWの両端部分を支持する共に、ワークWの両端部分に回転駆動力を付与することができるものである。
【0039】
X軸移動体16は、Z軸移動体13上に載置された基盤23と、基盤23に固設され、砥石台14の主体部を構成する砥石台本体24と、砥石軸19を有し、砥石台本体24に着脱可能に取り付けられた砥石軸ユニット25とを有した構成とされている。そして、砥石台本体24は、基盤23から前方に迫出された迫出し部26を有しており、この迫出し部26の前面に砥石軸ユニット25が取り付けられている。よって、砥石車Tは、砥石台14の前方に大きく迫出した状態、所謂「オーバーハングした状態」となっている。
【0040】
なお、本例に限らず、基盤23を省略して砥石台本体24を直接、Z軸移動体16上に載置してもよい。また、砥石台本体24に対して着脱可能にユニット化された砥石軸ユニット25に砥石軸19を設けず、砥石台本体24自体に砥石軸19を設けてもよい。
【0041】
砥石台本体24は、砥石軸19を回転駆動させるための回転駆動手段27を備えており、この回転駆動手段27は、回転駆動される回転軸を有したモータ等からなり、その外側ハウジングが砥石台本体24と一体に形成されており、所謂「ビルトインモータ」とされている。そして、回転駆動手段27の回転軸の先端には、駆動プーリ28が固定されており、回転軸と共に回転するようになっている。
【0042】
砥石台本体24には、駆動プーリ28の前方(図1中左側)に、上下方向に移動可能なテンションプーリ29が備えられており、このテンションプーリ29は、その上下方向の移動量を調節することで、駆動プーリ28と後述する砥石軸プーリ30とに巻き掛けられたベルト31の張力を調節可能としている。
【0043】
また、砥石台本体24には、図2にその一部を示すように、後述の流体軸受32に第一流体としての支承用油を供給するための本体側供給路33と、流体軸受32に供給された支承用油を回収するための本体側回収路34とが備えられている。
【0044】
砥石軸ユニット25は、砥石軸本体24の迫出し部26の前面に着脱可能に取り付けられるユニット基台35と、ユニット基台35のさらに前面に設けられた左右一対の流体軸受32と、各流体軸受32に両端部分が支承された回転軸としての砥石軸19と、砥石車Tを被覆する砥石車ガード36とを備えており、この砥石軸19に砥石車Tが固定されている。
【0045】
また、図2に示すように、砥石軸ユニット25には、流体軸受32に支承用油を供給するためのユニット側供給路37と、流体軸受32に供給された支承用油を回収するためのユニット側回収路38と、流体軸受32に第二流体としてのエアを供給するためのエア供給路39とが備えられている。なお、図2では砥石車ガード36を省略して示してある。
【0046】
この砥石台14には、着脱可能とされた砥石台本体24と砥石軸ユニット25との着脱部に、本体側供給路33とユニット側供給路37とを、及び、本体側回収路34とユニット側回収路38とを夫々接続する接続手段40が備えられており、この接続手段40は、ワンタッチで水密に接続可能な公知の継手とされている。なお、砥石台本体24にもエア供給路を備えて、支承用油と同様に、接続手段40により、砥石台本体24を介して砥石軸ユニット25にエアを供給するようにしても良い。
【0047】
砥石軸19は、その軸方向がZ軸方向に向けられており、図2に示すように、一端部に砥石車Tを固定するフランジ部41を有した第一軸部42と、第一軸部42の一端部と連結可能な第二軸部43と、第一軸部42と第二軸部43とを連結・分離させるための連結手段44とから構成されている。
【0048】
第一軸部42は、フランジ部41の近傍において流体軸受32により回転可能に支承されると共に、他端部がスラスト軸受45により支持されており、流体軸受32とスラスト軸受45との間において砥石軸プーリ30が固定されている。この砥石軸プーリ30と砥石台本体24の駆動プーリ28とにベルト31を巻き掛けることで回転駆動手段27からの回転力が砥石軸19に伝達され、砥石軸19が回転するようになっている。
【0049】
第二軸部43は、第一軸部42と連結する側とは反対側に、流体軸受32により回転可能に支持されている。なお、図中符号47は、砥石車Tの振れを自動で修正することのできるオートバランサ、及び音や振動を検出するAEセンサであり、これらの電気信号を受信するレシーバが、軸方向に移動可能に移動手段46に備えられている。
【0050】
この第一軸部42と第二軸部43とは、連結手段44により互いに連結されており、砥石車Tを交換する際には、連結手段44による第一軸部42と第二軸部43との連結を解除し、第二軸部43を第一軸部42から遠ざかる方向に移動させることで、第一軸部42と第二軸部43との間に所定量の隙間を形成し、その隙間を介して砥石車Tを第一軸部42のフランジ部41にボルトを介して着脱できるようになっている。なお、第二軸部43を第一軸部42から遠ざけるに先立ち、レシーバを移動手段46により第二軸部43から遠ざかる方向に移動させることにより、第二軸部43の移動量を確保している。
【0051】
流体軸受32は、図3(A)に詳しく示すように、砥石軸19を回転可能に支承する軸受部材48と、軸受部材48と砥石軸19との間に支承用油を供給するための第一供給部49と、第一供給部49より軸方向両外側に配置され支承用油を回収するための回収部50と、回収部50より更に軸方向外側に配置され所定圧力に加圧されたエアを供給するための第二供給部51とを有した構成とされている。
【0052】
この流体軸受32は、軸受部材48の軸方向両側に、端部部材52が更に備えられており、この端部部材52と軸受部材48の軸方向端部との間に、所定量の隙間が形成されるようになっており、その隙間が第二供給部51とされている。
【0053】
軸受部材48は、その内径が、砥石軸19の外径よりも若干大きい径とされており、その内周面53に第一供給部49と回収部50とが夫々形成されている。この軸受部材48は、第一供給部49と回収部50との間の内周面53aと、砥石軸19との間の隙間t1が、回収部50と第二供給部51との間の内周面53bと、砥石軸19との間の隙間t2よりも、若干狭くなるように形成されている。
【0054】
また、端部部材52の内周面54は、軸受部材48における回収部50と第二供給部51との間の内周面53bと、略同一の面となるように構成されている。なお、これら内周面と砥石軸19との隙間を適宜設定することで、流体軸受32の支承精度等を調整することができる。
【0055】
図3(B)に示すように、この流体軸受32は、第一供給部49における砥石軸19の上方にユニット側供給路37が、回収部50における砥石軸19の下方にユニット側回収路38が夫々接続されている。これらユニット側供給路37とユニット側回収路38とは、接続手段41により砥石台本体24の本体側供給路33と本体側回収路34とに夫々接続され、更に、本体側供給路33と本体側回収路34は、図示しない支承用油供給装置のポンプとタンクとに夫々接続されている。
【0056】
そして、支承用油供給装置のタンクに蓄えられた支承用油は、ポンプにより所定圧力で本体側供給路33及びユニット側供給路37を介して第一供給部49に供給され、回収部50から回収された支承用油は、ユニット側回収路38及び本体側回収路34を介してタンクへと回収されるようになっている。
【0057】
また、第二供給部51には、エア供給路39が接続されており、図示しないエア供給装置から供給される所定圧力のエアがエア供給路39を介して第二供給部51に供給されるようになっている。
【0058】
なお、この砥石軸ユニット25には、固定される砥石車Tの直径が100〜200mmとされ、通常より小径の砥石車Tを用いている。また、図示は省略するが、砥石軸ユニット25と砥石台本体24とは、ボルト等の締結や、所定のロック機構等により互いに固定されるようになっている。
【0059】
次に、本実施形態の研削盤10に用いられた流体軸受32の作用について、詳細に説明する。本例の流体軸受32は、図示しない支承用油供給装置のタンクに蓄えられた支承用油が、ポンプによって本体側供給路33及びユニット側供給路37を介して所定圧力で第一供給部49に供給されると、その圧力により砥石軸19が軸受部材48の内周面53と非接触状態で支承される。
【0060】
そして、その状態で砥石軸19に、砥石台本体24の回転駆動手段27からの回転力が駆動プーリ28、ベルト31、砥石軸プーリ30を介して回転力が伝達されることで、砥石軸19が滑らかに回転する。
【0061】
この第一供給部49に供給された支承用油は、第一供給部49と回収部50との間の内周面53aと、砥石軸19との隙間t1を通って、回収部50側へと流出する。
【0062】
ところで、第二供給部51では、エア供給装置から所定圧力のエアが、エア供給路39を介して供給されており、第二供給部51に供給されたエアは、第二供給部51から、回収部50側と回収部50に対して反対側の軸方向端部側とに分岐して夫々に流出する。
【0063】
そして、第二供給部51から回収部50側に流出したエアは、回収部50に接続されたユニット側回収路38へと流れ、このエアの流れにより、第一供給部49から回収部50へと流出した支承用油が、ユニット側回収路38に向かうのを促され、エアと共に支承用油がユニット側回収路38及び本体側回収路34を介してタンクへと回収される。
【0064】
一方、第二供給部49から回収部50とは反対側の軸方向端部側に流出したエアは、端部部材52の端部から流体軸受32の外部へと流出する。つまり、エアパージされる。
【0065】
このように、本例によると、流体軸受32では、第一供給部49に供給された支承用油の回収が、第二供給部51に供給されたエアにより促されるので、その回収時間を可及的に短くすることが可能となり、支承用油の使用量を可及的に少なくすることができる。
【0066】
また、第二供給部51に供給されたエアが、流体軸受32の両端部において流出するので、そのエアの流れにより、軸受部材48と砥石軸19との間に異物などが侵入するのを防止することができる。
【0067】
また、第二供給部51に供給されたエアにより、第一供給部49に供給された支承用油が、軸受部材48の軸方向両端部から流出するのを阻止することができるので、支承用油の消費量を可及的に低減させることができると共に、従来のように軸方向端部をシールする必要がなくなり、流体軸受32の構成を簡単なものとすることができる。
【0068】
更に、第一供給部49に供給された支承用油の回収が促されるので、従来のように流体軸受100の下方に油溜まり106を備える必要がなくなり、砥石台14を小型・軽量化することができる。
【0069】
また、砥石台14を小型・軽量化することができるので、砥石台14の固有振動数が高くなり、共振等による騒音を抑えたり、加工精度を高めたりすることができる。また、砥石台14を軽量化することができるので、砥石台14を移動させるための駆動力を小さくすることができ、移動にかかるエネルギー消費量を低減させることができる。
【0070】
更に、砥石台14の特に、砥石軸ユニット25を小型・軽量化することができるので、砥石軸ユニット25の着脱作業を容易にすることができ、砥石車Tの交換作業を外段取りとして研削盤10の可動効率を高めることができる。
【0071】
また、砥石軸ユニット25を軽量化することができるので、砥石軸ユニット25をオーバーハングさせても、砥石台本体24にかかるモーメントを小さくでき、砥石台14が傾いて加工精度が悪くなるのを抑制することができる。また、砥石軸ユニット25をオーバーハングさせているので、砥石車TのワークWとの研削加工部と、Z軸移動体13のX軸レール15(案内装置)とを可及的に遠ざけることが可能となり、研削加工の際に用いられる切削液が案内装置にかかるのを容易に防止可能としり、ワークW付近に案内装置が無くなるのでワーク支持装置等の設計自由度を高めたりすることができる。
【0072】
更に、砥石車Tをその両側で流体軸受32により支承しているので、研削加工の際に砥石車Tにかかる研削抵抗を両側の流体軸受32で受けることが可能となり、研削抵抗による砥石車Tの変位を可及的に小さくでき、加工精度を向上させることができる。
【0073】
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0074】
すなわち、本実施形態では、流体軸受32における第一供給部49、回収部50、第二供給部51を、夫々軸受部材48側に設けたものを示したが、これに限定するものではなく、それらを砥石軸19(回転軸)側に設けても良いし、或いは、軸受部材48側と回転軸側とに適宜組合せて設けるようにしても良く、それにより、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
また、本実施形態では、流体軸受32を砥石車Tの両側に配置したものを示したが、これに限定するものではなく、砥石車Tの一方の側のみに流体軸受32を配置したものとしても良く、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0076】
更に、本実施形態では、本発明の流体軸受32を研削盤10に用いたものを示したが、これに限定するものではなく、旋盤、フライス盤、など種々の形態の工作機械に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態である流体軸受を用いた研削盤の要部を拡大して示す側面図である。
【図2】図1に示す研削盤の砥石台における砥石軸ユニットを拡大して示す断面図である。
【図3】(A)は図1における流体軸受を拡大して示す断面図であり、(B)は(A)の流体軸受をその軸方向から示す断面図である。
【図4】(A)は従来の流体軸受を用いた研削盤の砥石台を模式的に断面で示す側面図であり、(B)は(A)の砥石台の正面図であり、(C)は従来の流体軸受を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
T 砥石車
10 研削盤
14 砥石台
19 砥石軸(回転軸)
26 追出し部
32 流体軸受
48 軸受部材
49 第一供給部
50 回収部
51 第二供給部
52 端部部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転可能に支承する軸受部材と、前記回転軸と前記軸受部材との間に第一流体を供給する第一供給部と、該第一供給部より供給された第一流体を回収する回収部とを具備する流体軸受において、
前記回収部を挟んで前記第一供給部とは反対側に、所定圧力の第二流体を供給する第二供給部を更に具備し、該第二供給部から供給される前記第二流体により前記第一流体が前記回収部から回収されることを特徴とする流体軸受。
【請求項2】
前記第二供給部は、前記軸受部材の軸方向両端部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の流体軸受。
【請求項3】
砥石台に砥石車を回転可能に支承する流体軸受を用いた研削盤において、
前記流体軸受は、
前記砥石車が固定される回転軸を回転可能に支承する軸受部材と、
該軸受部材と前記回転軸との間に第一流体を供給する第一供給部と、
該第一供給部より前記軸受部材の軸方向外側に配置され、供給された第一流体を回収する回収部と、
該回収部より更に軸方向外側に配置され、所定圧力の第二流体を供給する第二供給部と
を備えていることを特徴とする流体軸受を用いた研削盤。
【請求項4】
前記砥石台は、前記砥石車を所定方向に大きく追出した位置に配置する形態であることを特徴とする請求項3に記載の流体軸受を用いた研削盤。
【請求項5】
前記流体軸受は、
前記砥石車の両側に延出された前記回転軸を、前記砥石車の両側で夫々回転可能に支承することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の流体軸受を用いた研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−77798(P2006−77798A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259350(P2004−259350)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】