説明

流路切換弁及びそれを用いたヒートポンプ装置

【課題】複数の熱交換器を備えたヒートポンプにおいて、複数の流路切換ができ、構成の簡素化、占有スペースの縮小、エネルギーの低減等を図る流路切換弁を提供する。
【解決手段】弁室21が設けられた弁本体20と、上側弁シート部22A及び下側弁シート部22Bにその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体30と、該弁体30を回転駆動するアクチュエータ15とを備え、前記上側弁シート部22Aに複数個の上側入出ポート11a〜14a及び上側メインポート25aが形成され、前記下側弁シート部22Bに前記複数個の上側入出ポート11a〜14aと対をなす下側入出ポート11b〜14b及び前記上側メインポート25aと対をなす下側メインポート25bが形成され、前記弁体30に前記上下で対をなす各ポート間を連通させ得る連通路31、32が設けられ、前記弁室21は前記弁体30により上室部21Aと下室部21Bに分割されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置(空調装置)等に用いられるロータリ式の流路切換弁及びそれを用いたヒートポンプ装置に係り、特に、例えば、流体の入口及び出口を備えた複数台の機器(例えば熱交換器)を備えたシステムにおいて、前記複数台の機器を、並列及び直列に接続を切り換える場合に必要とされる複数の流路切換手段の役目を担うことのできる流路切換弁及びそれを用いたヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ(空調装置)は、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、気液分離器、膨張弁、及び四方切換弁等を備えており、例えば、下記特許文献1には、複数台の熱交換器を備えたヒートポンプにおいて、熱効率の向上等を図るべく、前記複数台の熱交換器を、冷媒を一方向(正方向)に流すときには直列に接続し、冷媒を他方向(逆方向)に流すときには並列に接続することが提案されている。
【0003】
上記四方切換弁は、冷房の際には当該冷凍サイクルの冷媒通過方向を、圧縮機→室外熱交換器→膨張弁(減圧用毛細管)→室内熱交換器→圧縮機、のように設定し、暖房の際には、圧縮機→室内熱交換器→膨張弁→室外熱交換器→圧縮機、のように設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−14280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に所載のヒートポンプを構成しようとすると、熱交換器の台数が多くなればなるほど冷媒の流路を切り換えたり遮断したりするための流路切換手段を多く必要とし、構成の複雑化、占有スペースの増大、コストアップ、消費エネルギー(電力消費量)の増加等を招く。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、例えば、流体の入口及び出口を備えた複数台の機器(例えば熱交換器)を備えたシステムにおいて、前記複数台の機器を、並列及び直列に接続を切り換える場合に必要とされる複数の流路切換手段の役目を担うことができ、もって、ヒートポンプ装置等の構成の簡素化、占有スペースの縮小、コストダウン、消費エネルギーの低減等を図ることのできる流路切換弁、及びそれを用いたヒートポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個のポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に複数個のポートが形成され、前記弁体に前記上下のポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴としている。
【0008】
また本発明に係る流路切換弁は、上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個の上側入出ポート及び上側メインポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に前記複数個の上側入出ポートと対をなす複数個の下側入出ポート及び下側メインポートが形成され、前記弁体に前記上下で対をなす各ポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る流路切換弁は、上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個の上側入出ポート及び上側メインポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に前記複数個の上側入出ポートと対をなす複数個の下側入出ポート及び前記上側メインポートと対をなす下側メインポートが形成され、前記弁体に前記上下で対をなす各ポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴としている。
【0010】
より具体的な好ましい態様では、前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ4個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記4対の入出ポート間のいずれか二つを連通させるべく前記連通路が2本設けられ、前記弁体は、前記2本の連通路が前記4対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記4対の入出ポート間のうちのいずれか二つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされる。
【0011】
他の好ましい態様では、前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ2個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記2対の入出ポート間のいずれか一つを連通させるべく前記連通路が1本設けられ、前記弁体は、前記1本の連通路が前記2対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記2対の入出ポート間のうちのいずれか一つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされる。
【0012】
また、他の好ましい態様では、前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ[N]個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記[N]対の入出ポート間のいずれか一つ〜[N−1]つを連通させるべく前記連通路が1〜[N−1]本設けられ、前記弁体は、前記1〜[N−1]本の連通路が前記[N]対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記[N]対の入出ポート間のうちのいずれか一つ〜[N−1]つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされる。
【0013】
他の好ましい態様では、前記弁体は、前記第1及び第2の回動位置に加えて、前記メインポート間のみを連通させる第3の回動位置をとり得るようにされる。
【0014】
さらに好ましい態様では、前記連通路の少なくとも一端側に、該連通路から前記弁室内への漏れを防ぐとともに、前記連通路の開口端が前記弁シート部に弾発的に圧接するように、前記連通路の開口端に連通路シール材が装着される。
【0015】
またさらに好ましい態様では、前記連通路の両端の受圧径は、同一又はほぼ同一に設定される。
【0016】
またさらに好ましい態様では、前記弁体は、前記弁室の上室部と下室部とを気密に仕切るための弁室シール材が備えられる。
【0017】
またさらに好ましい態様では、前記アクチュエータは、前記弁本体の上室部側に設けられ、前記弁本体には、前記上室部及びアクチュエータ内部を連通する均圧孔が設けられる。
【0018】
またさらに好ましい態様では、前記均圧孔は、前記弁体が回転しても該弁体の連通路と連通しないポートに開口している。
【0019】
一方、本発明に係るヒートポンプ装置は、 圧縮機、膨張弁、複数の熱交換器、及び上記流路切換弁を備え、この流路切換弁により、前記複数の熱交換器の接続状態が必要に応じて並列接続から直列接続へ、及び、直列接続から並列接続へ切り換えられるようにされていることを特徴としている。
【0020】
より具体的な好ましい態様では、前記流路切換弁のアクチュエータは前記弁本体に形成される上室部側に設けられ、前記圧縮機から吐出される冷媒は前記弁本体に形成される下室部側に導入される。
【0021】
さらに好ましい態様では、前記弁本体には、前記上室部と前記アクチュエータ内部とを連通する均圧孔が設けられる。
【0022】
またさらに好ましい態様では、前記均圧孔は、前記弁体が回転しても該弁体の連通路と連通しないポートに開口している。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る流路切換弁は、例えば、複数台の熱交換器を備えたヒートポンプ装置に用いる場合、これ一つで、複数台の熱交換器を、並列及び直列のいずれにも接続することができる。そのため、従来は熱交換器の台数に応じて多数個必要であった流路切換手段に代えて、本発明の流路切換弁を用いることにより、ヒートポンプ装置の構成の簡素化、占有スペースの縮小、コストダウン、消費エネルギーの低減等を図ることができる。
【0024】
また本発明に係るヒートポンプ装置は、構成の簡素化、占有スペースの縮小、コストダウン、消費エネルギーの低減等を図ることができ、また圧縮機から吐出される高温、高圧の冷媒を、流路切換弁のアクチュエータが配置された側と反対側に導入するようにすれば、該アクチュエータの耐久性を高め、正確な動作を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る流路切換弁の一実施形態(実施例1)を示す縦断面図。
【図2】(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例1のステータを取り除いた流路切換弁の平面図、底面図、及び弁体の側面図。
【図3】実施例1の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房運転時)に供される図。
【図4】実施例1の流路切換弁の構成及び動作説明(暖房運転時)に供される図。
【図5】実施例1の流路切換弁の構成及び動作説明(除霜運転時)に供される図。
【図6】実施例2の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房運転時)に供される図。
【図7】実施例2の流路切換弁の構成及び動作説明(暖房運転時)に供される図。
【図8】実施例2の流路切換弁の構成及び動作説明(除霜運転時)に供される図。
【図9】実施例3の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房運転時)に供される図。
【図10】実施例3の流路切換弁の構成及び動作説明(暖房運転時)に供される図。
【図11】実施例3の流路切換弁の構成及び動作説明(除霜運転時)に供される図。
【図12】実施例4の流路切換弁に用いられる弁体の側面図。
【図13】実施例4の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房運転時)に供される図。
【図14】実施例4の流路切換弁の構成及び動作説明(暖房運転時)に供される図。
【図15】実施例4の流路切換弁の構成及び動作説明(除霜運転時)に供される図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る流路切換弁の一実施形態(実施例1)を示す縦断面図、図2(A)、(B)、(C)は、それぞれ実施例1のステータ17を取り除いた流路切換弁の平面図、底面図、及び弁体の側面図、図3、図4、図5は、それぞれ実施例1の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房、暖房、除霜運転時)に供される図であり、各図において、上側の円形断面図は、図1のX‐X矢視線に従う断面図、下側の円形断面図は、図1のY‐Y矢視線に従う断面図である。また、図1は、図5のように筒状部36の連通路31が導管80と90とを連通している状態を示している。
【0027】
本実施例の流路切換弁10は、4台の熱交換器(例えば室内熱交換器)71、72、73、74を備えたヒートポンプ装置において、前記4台の熱交換器71、72、73、74を、冷媒を正方向に流すときには並列に接続し、冷媒を逆方向に流すときには直列に接続する場合に必要とされる複数の流路切換手段の役目を担うことができるようにしたもので、キャン18の内周側に配在されたロータ16とキャン18の外周に外嵌固定されたステータ17とからなる流路切換用アクチュエータとしてのステッピングモータ15と、該ステッピングモータ15により弁軸35を介して回動せしめられる弁体30と、この弁体30を回動可能に保持する弁本体20と、を備えている。
【0028】
前記ロータ16と弁軸35との間(モータ15内)には遊星歯車式減速機構40が介装されており、ロータ16の回転は上記減速機構40により相当減速されて弁体30に伝達されるようになっている。なお、遊星歯車式減速機構40を介することなく、ロータ16の回転を直接弁体30に伝達するようにしても良い。
【0029】
弁本体20は、上部体20Aと底蓋状体20Bとこれらを連結する円筒状体20Cとからなり、これら上部体20A、底蓋状体20B、及び円筒状体20Cで円筒状の弁室21が画成されている。
【0030】
弁室21は、その天井部(上部体20A下面部)が上側弁シート部22Aとされ、その底面部(底蓋状体20B上面部)が下側弁シート部22Bとされている。前記上部体20Aには、一端(下端)が上側弁シート部22A(弁室21)に開口する4個の断面L形の上側入出ポート11a、12a、13a、14aがほぼ90度間隔で設けられるとともに、上側入出ポート13aと14aとの間には断面L形の上側メインポート25aが形成されている。また、底蓋状体20Bには、上端が下側弁シート部22B(弁室21)に開口する、前記4個の上側入出ポート11a、12a、13a、14aと対をなす(弁体30の回転中心軸Оと平行な方向に位置する)4個の下側入出ポート11b、12b、13b、14bがほぼ90度間隔で設けられるとともに、下側入出ポート13bと14bとの間に、前記上側メインポート25aと対をなす下側メインポート25bが形成されている。
【0031】
前記弁軸35は、その上端部35aがモータ15内の遊星歯車式減速機構40の出力軸45に一体回転可能に連結され、その中間部35bが、上部体20Aに形成された中央孔28に挿通せしめられ、その下端部に設けられた雄スプライン部35cが前記弁体30の中央部に設けられた雌スプライン部30aに一体回転可能にかつ上下方向に相対移動可能に嵌合せしめられている。なお、弁軸35の中間部35bは、中央孔28に装着された軸受部材38により回転自在に支持されている。
【0032】
均圧孔(連通路)29Bはキャン18内部と中央孔28とを連通し、また均圧孔(連通路)29A(図3)は中央孔28と上側入出ポート12aとを連通する。この均圧孔29Aは上部体20Aに設けられており、図3においては想像線で描かれている。
【0033】
前記弁体30は、図1に加えて図2(C)を参照すればよくわかるように、前記弁室21の直径より若干小さな外径を持つ厚肉円板状の基体部30Aを有し、この基体部30Aの中央部に雌スプライン部30aが設けられ、この雌スプライン部30aの両側には180度間隔をあけて円筒状部36、37が上下方向に(回転中心軸Оと平行な方向に)突出して設けられている。この円筒状部36、37は、上下に亘ってほぼ同一の厚みをもって形成されていて、その下端部には、弾性シール材としてのOリング51と角形リング(パッキン)52とがタンデム配置で装着されている。円筒状部36、37は、前記上側弁シート部22A及び下側弁シート部22Bにその上端面及び前記角形リング52をそれぞれ対接させながら回動せしめられるようになっており、この円筒状部36、37の内部が、後述するように弁体30の回転位置に応じて前記した上下で対をなす入出ポート11a‐11b間、及び13a‐13b間、又は前記メインポート25a‐25b間を連通させ得る連通路31、32となっている。
【0034】
また、前記弁室21を上室部21Aと下室部21Bに分割して気密的に仕切るべく、前記弁体30の外周部には、前記弁室21の内周面に弾発的に圧接するように弁室シール材(ピストンリング)39が装着されている。なお、このように弁体30の外周部に弁室シール材39を配置すれば上室部21Aと下室部21Bとの気密性が確保されるが、この気密性があまり必要とされないとき、あるいは上室部21Aと下室部21Bとの圧力差があまり高くないとき等においては、弁室シール材39を設けず、該弁体30の外周部を直接弁室21の内周面に摺接させるようにしても良い。
【0035】
ここで、前記のように、弁軸35の雄スプライン部35cが弁体30の雌スプライン部30cに一体回転可能にかつ上下方向に相対移動可能に嵌合せしめられるとともに、円筒状部36、37(連通路31、32)の下端に弾性シール材(連通路シール材)としてのOリング51と角形リング52とが装着されることにより、前記連通路31、32の開口端である角形リング52が下側弁シート部22Bに弾発的に圧接するので、連通路31、32から弁室21(下室部21B)内への冷媒の漏れを防ぐことができるとともに、弁室21の高さ寸法と円筒状部36、37の高さ寸法とが多少相違していても、吸収することができる。
【0036】
なお、このOリング51及び角形リング52は、円筒状部36、37の下端に設けられる代わりに、該円筒状部36、37の上端に設けられても良いし、また該円筒状部36、37の上下端にそれぞれ設けられても良い。
【0037】
一方、上側メインポート25aには導管80が接続され、下側メインポート25bには導管90が接続されている。また、上側入出ポート11aと熱交換器71の第1ポート71aとは導管81で接続され、同様に、上側入出ポート12aと熱交換器72の第1ポート72aとは導管82で接続され、上側入出ポート13aと熱交換器73の第1ポート73aとは導管83で接続され、上側入出ポート14aと熱交換器74の第1ポート74aとは導管84で接続されている。
【0038】
また、下側入出ポート11bと熱交換器72の第2ポート72bとは導管91で接続され、同様に、下側入出ポート12bと熱交換器73の第2ポート73bとは導管92で接続され、下側入出ポート13bと熱交換器74の第2ポート74bとは導管93で接続され、下側入出ポート14bと熱交換器71の第2ポート71bとは導管94で接続されている。
【0039】
このような構成とされた流路切換弁10において、弁体30は、図3に示される如くの、前記2本の連通路31、32が前記4対の入出ポート11a‐11b間、12a‐12b間、13a‐13b間、14a‐14b間のいずれも連通させない第1の回動位置と、図4に示される如くの、前記4対の入出ポート間のうちの入出ポート11a‐11b間及び13a‐13b間を連通させる第2の回動位置(第1の回動位置から約50度反時計回りに回転)と、図5に示される如くに、前記メインポート25a‐25b間を連通させる第3の回動位置(第1の回動位置から約90度時計回りに回転)をとり得るようにされている。弁体30は、上側弁シート部22Aに植立されたストッパ101、102に当接することにより、図3又は図5の位置に規制される。
【0040】
またこの例においては、前記導管80及び導管90は、冷房時には図示されない膨張弁からの吐出冷媒が導管80から当該流路制御弁10内に流入し、導管90から流出する冷媒が図示されない圧縮機の吸入口(図示せず)に至るように、また暖房時には圧縮機から吐出される高圧、高温の冷媒が導管90から当該流路制御弁10内に流入し、導管80から流出される冷媒が膨張弁に至るように、当該ヒートポンプ装置内に配置される。
【0041】
ここで、冷房運転を行なうべく、図3に示される如くに、弁体30に第1の回動位置をとらせるとともに、導管80及び上側メインポート25aを通じて弁室21の上室部21Aに膨張弁から流出した冷媒を導入すると、冷媒は上側入出ポート11a〜14a及び導管81〜84を介して各熱交換器71〜74の第1ポート71a〜74a→熱交換器71〜74の内部→第2ポート71b〜74b→導管91〜94→下室部21B→下側メインポート25b→導管90へと導出され、圧縮機に戻る。
【0042】
したがって、冷媒を上側メインポート25aに導入して下側メインポート25bから導出する正方向流れのとき(冷房運転時)には、熱交換器71、72、73、74が並列接続されることになる。
【0043】
それに対し、暖房運転を行なうべく、図4に示される如くに、弁体30に第2の回動位置をとらせるとともに、導管90及び下側メインポート25bを通じて弁室21の下室部21Bに圧縮機から吐出された冷媒を導入すると、冷媒は下側入出ポート12b→導管92→熱交換器73の第2ポート73b→熱交換器73内部→第1ポート73a→導管83→上側入出ポート13a→連通路31→下側入出ポート13b→導管93→熱交換器74の第2ポート74b→熱交換器74内部→第1ポート74a→導管84→上側入出ポート14a→上室部21A→上側メインポート25a→導管80へと導出され、膨張弁に至る一方、下側入出ポート14b→導管94→熱交換器71の第2ポート71b→熱交換器71内部→第1ポート71a→導管81→上側入出ポート11a→連通路32→下側入出ポート11b→導管91→熱交換器72の第2ポート72b→熱交換器72内部→第1ポート72a→導管82→上側入出ポート12a→上室部21A→上側メインポート25a→導管80へと導出され、やはり膨張弁に至る。
【0044】
したがって、冷媒を下側メインポート25bに導入して上側メインポート25aから導出する逆方向流れのとき(暖房運転時)には、熱交換器73と74とが直列接続されるとともに、熱交換器71と72とが直列接続され、かつ、直列接続された熱交換器73と74のグループと熱交換器71と72のグループが並列接続される。
【0045】
また、図5に示される如くに、弁体30に第3の回動位置をとらせて、上側メインポート25aと下側メインポート25bのみを連通路31で連通させることにより、熱交換器71〜74への冷媒の供給が遮断されるとともに、冷媒が出口側にパイパスされ、除霜運転が行なわれる。
【0046】
上記各動作時においては、上室部21Aに流入した冷媒は、上側入出ポート12aから均圧孔29A、中央孔28及び均圧孔29Bを通過してキャン18内に流入するので、上室部20Aとアクチュエータ15内部との圧力差は減じられ、あるいはキャンセルされて、該アクチュエータ15の良好な動作が確保される。また、均圧孔29Aは上側入出ポート12aと中央孔28とを連通するが、該上側入出ポート12aは2つのストッパ101及び102の間に挟まれ、弁体30が回動しても該弁体30の連通路31又は32により上室部20Aと遮断されることがない。したがって、弁体30の回転位置に関わらず、上記圧力差のキャンセル機能は常に働くことになる。
【0047】
このように本実施例1の流路切換弁10は、これ一つで、4台の熱交換器71〜74を備えたヒートポンプにおいて、熱交換器71〜74を、冷媒を正方向に流すとき(冷房運転時)には並列に接続し、冷媒を逆方向に流すとき(暖房運転時)には直列に接続することができる。そのため、従来は熱交換器の台数に応じて多数個必要であった流路切換手段に代えて、本実施形態の流路切換弁10を用いることにより、ヒートポンプの構成の簡素化、占有スペースの縮小、コストダウン、消費エネルギーの低減等を図ることができる。
【0048】
また、熱交換器71〜74が室内熱交換器である場合には、暖房時に圧縮機より吐出される高温、高圧の冷媒が、弁本体20の、ステッピングモータ15が配置された側と反対側…即ち底蓋状体20Bから弁本体20の下室部21Aに流入するので、高温、高圧の冷媒が上室部21Aに流入する場合に比較して、ステッピングモータ15に対する影響、例えばロータマグネットの減磁や劣化などが少なく、当該流路切換弁の耐久性向上を図り、正確な動作を継続することができる。
【0049】
また、弁体30の円筒状部36の上端の受圧径(圧力を受ける相当径、即ち、円筒状部36の端部が弁シート部と当接する部分のほぼ中央の径)φa及び下端の受圧径φbは、それぞれ同一又はほぼ同一とされているので、弁体30が第3の回動位置(図1、図5)をとり、連通路31により上側メインポート25aと下側メインポート25bとが連通されているときは、該連通路31内部と上室部21A及び下室部21Bとの間に差圧がある場合でも、その差圧は円筒状部36の上端及び下端でバランスし、該弁体30をその後回動させるのに要する力を軽減し、スムーズな回動が確保される。
【0050】
また、円筒状部37の上端の受圧径及び下端の受圧径も同一又はほぼ同一に構成されているので、例えば弁体30を図3の状態から図4又は図5の状態に回動させる場合に、円筒状部36及び37の内部に充満した冷媒の圧力と前記上室部21A及び下室部21B内の圧力との差が該円筒状部36及び37の上端及び下端でバランスし、該弁体30をその後回動するのに要する力を軽減し、スムーズな回動を確保することができる。
【0051】
さて、上記実施例1では、上側弁シート部22A及び下側弁シート部22Bに、それぞれ4個ずつ入出ポート11a〜14a、11b〜14bが設けられるとともに、弁体30に2本の連通路31、32が設けられ、弁体30は、前記2本の連通路31、32が前記4対の入出ポート11a‐11b間、12a‐12b間、13a‐13b間、14a‐14b間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記4対の入出ポート間のうちの入出ポート11a‐11b間及び13a‐13b間を連通させる第2の回動位置と、メインポート25a‐25b間を連通させる第3の回動位置をとり得るようにされているが、本発明は、かかる構成に限られるわけではない。
【0052】
すなわち、例えば冷媒を正方向に流すときには熱交換器を並列に接続し、冷媒を逆方向に流すときには熱交換器を直列に接続するための流路切換機能を持たせるには、上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ[N]個ずつ入出ポートを設けるとともに、弁体に、前記[N]対の入出ポート間のいずれか一つ〜[N−1]つを連通させるように前記連通路を1〜[N−1]本設け、前記弁体に、前記1〜[N−1]本の連通路が前記[N]対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記[N]対の入出ポート間のうちのいずれか一つ〜[N−1]つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとらせる構成とすればよい。
【0053】
具体的には、図6〜図8に示される実施例2のように、入出ポートが上下に四個ずつ設けられている場合、連通路を1本(31)にすると、正方向流れのとき(冷房運転時)には熱交換器71〜74は並列接続となるが、前記逆方向流れのとき(暖房運転時)、熱交換器73と74とが直列接続となり、この直列接続グループと残りの熱交換器71と72とが並列接続となる(図7)。
【0054】
また、図9〜図11に示される実施例3のように、連通路を3本(31、32、33)にすると、正方向流れのとき(冷房運転時)には熱交換器71〜74は並列接続となるが、前記逆方向流れのとき(暖房運転時)、熱交換器71〜74の全てが一つのグループとして直列接続される(図10)。
【0055】
上記図6〜図11では、実施例1で説明した一対のストッパ101、102が図示されていないが、実施例1と同様に弁体の位置を規制する位置にストッパが設けられる。
【0056】
図12は実施例4の流路切換弁に用いられる弁体の側面図、図13〜15はそれぞれ実施例4の流路切換弁の構成及び動作説明(冷房、暖房、除霜運転時)に供される図であり、図3〜5、図6〜8、図9〜11と同様の図である。図12〜15において、図1〜11と同一の符号はそれぞれ同一又は同等部分を示している。
【0057】
この実施例4は、熱交換器を2つ(符号71及び73)接続するためのものであり、流路切換弁には入出ポートが上下に二個ずつ設けられている。また弁体130は、実施例2と同様に、図2(C)に示されている弁体30から円筒状部37を取り除いたものであり、厚肉円板状の基体部30Aには一つの円筒状部36のみが設けられている。
【0058】
この実施例4では、正方向流れのとき(冷房運転時)には図13に示されるように、熱交換器71及び73は並列に接続されるが、逆方向流れのとき(暖房運転時)には図14に示されるように、熱交換器71及び73は直列接続となる。
【0059】
なお図13〜図15では、実施例1で説明した一対のストッパ101、102が図示されていないが、実施例1〜3と同様に弁体の位置を規制する位置にストッパが設けられることができる。
【0060】
さて、入出ポートの個数、連通路の本数等は、上記実施例のものに限られるわけではなく、熱交換器の台数や要求される接続態様等に応じて適宜変更することができる。
【0061】
また、当該流路切換弁に対する流体の導入も、上側メインポート25a及び下側メインポート25bのいずれから行われても良い。
【0062】
また、図5、8、11、15に示される除霜の態様は、当該流路切換弁が用いられるヒートポンプ装置に必要とされない場合には不要であり、そのときは、上側メインポート25a及び下側メインポート25bの配置は、上側入出ポート11a〜14a及び下側入出ポート11b〜14bの関係のような、上下で対になる関係としなくても良い。
【0063】
さらにまた、弁体に設けられた連通路により連通されない上側入出ポート及び下側入出ポート(例えば実施例1においては符号12a、12b及び/あるいは14a、14b)も、上下で対の関係としなくても良い。
【0064】
さらにまた、本発明の流路切換弁は、室内熱交換器を冷房時に直列とし、暖房時に並列とするようなシステムに適用することも可能であり、また複数の室外熱交換を直列及び並列に切り換えることも可能である。
【0065】
さらにまた、前述の説明においては、流路切換弁は、流体(冷媒)の通過方向に応じて並列又は直列に切り換えるものとしたが、冷媒の通過方向が切り替わらない場合においても、必要に応じて、例えば熱交換器の負荷の状況に応じて並列から直列へ、あるいは直列から並列へ切り換え可能であることは言うまでもない。
【0066】
さらにまた、本発明の流路切換弁は、ヒートポンプ以外の複数機器…すなわち流体の入口及び出口を備えた複数の機器…の流路を直列及び並列に切り換えたり、あるいは該複数の機器に対する流路を遮断して流路をバイパスさせるいかなるシステムにも適用可能であることも言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10 流路切換弁
11a、12a、13a、14a 上側入出ポート
11b、12b、13b、14b 下側入出ポート
15 モータ(アクチュエータ)
16 ロータ
17 ステータ
20 弁本体
21 弁室
22A 上側弁シート部
22B 下側弁シート部
25a 上側メインポート
25b 下側メインポート
30、130 弁体
31、32 連通路
35 弁軸
39 シール部材
40 遊星歯車式減速機構
51 Oリング
52 角形リング
71、72、73、74 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個のポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に複数個のポートが形成され、前記弁体に前記上下のポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個の上側入出ポート及び上側メインポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に前記複数個の上側入出ポートと対をなす複数個の下側入出ポート及び下側メインポートが形成され、前記弁体に前記上下で対をなす各ポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項3】
上側弁シート部及び下側弁シート部を有する弁室が設けられた弁本体と、前記上側弁シート部及び下側弁シート部にその上下端面をそれぞれ対接させながら回動せしめられる弁体と、該弁体を回転駆動するアクチュエータとを備え、前記上側弁シート部に複数個の上側入出ポート及び上側メインポートが形成されるとともに、前記下側弁シート部に前記複数個の上側入出ポートと対をなす複数個の下側入出ポート及び前記上側メインポートと対をなす下側メインポートが形成され、前記弁体に前記上下で対をなす各ポート間を連通させ得る少なくとも1本の連通路が設けられるとともに、前記弁室は前記弁体により上室部と下室部に分割されていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項4】
前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ4個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記4対の入出ポート間のいずれか二つを連通させるべく前記連通路が2本設けられ、前記弁体は、前記2本の連通路が前記4対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記4対の入出ポート間のうちのいずれか二つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされていることを特徴とする請求項3に記載の流路切換弁。
【請求項5】
前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ2個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記2対の入出ポート間のいずれか一つを連通させるべく前記連通路が1本設けられ、前記弁体は、前記1本の連通路が前記2対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記2対の入出ポート間のうちのいずれか一つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされていることを特徴とする請求項3に記載の流路切換弁。
【請求項6】
前記上側弁シート部及び下側弁シート部に、それぞれ[N]個ずつ入出ポートが設けられるとともに、前記弁体に、前記[N]対の入出ポート間のいずれか一つ〜[N−1]つを連通させるべく前記連通路が1〜[N−1]本設けられ、前記弁体は、前記1〜[N−1]本の連通路が前記[N]対の入出ポート間のいずれも連通させない第1の回動位置と、前記[N]対の入出ポート間のうちのいずれか一つ〜[N−1]つのポート間を連通させる第2の回動位置と、をとり得るようにされていることを特徴とする請求項3に記載の流路切換弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記第1及び第2の回動位置に加えて、前記メインポート間のみを連通させる第3の回動位置をとり得るようにされていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項8】
前記連通路の少なくとも一端側に、該連通路から前記弁室内への漏れを防ぐとともに、前記連通路の開口端が前記弁シート部に弾発的に圧接するように、前記連通路の開口端に連通路シール材が装着されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項9】
前記連通路の両端の受圧径は、同一又はほぼ同一に設定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項10】
前記弁体は、前記弁室の上室部と下室部とを気密に仕切るための弁室シール材を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記弁本体の上室部側に設けられ、前記弁本体には、前記上室部と前記アクチュエータ内部とを連通する均圧孔が設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項12】
前記均圧孔は、前記弁体が回転しても該弁体の連通路と連通しないポートに開口していることを特徴とする請求項11に記載の流路切換弁。
【請求項13】
圧縮機、膨張弁、複数の熱交換器、及び請求項1から10のいずれかに記載の流路切換弁を備え、
前記流路切換弁により、前記複数の熱交換器の接続状態が必要に応じて並列接続から直列接続へ、及び、直列接続から並列接続へ切り換えられるようにされていることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項14】
前記流路切換弁のアクチュエータは、前記弁本体に形成される上室部側に設けられ、
前記圧縮機から吐出される冷媒は、前記弁本体に形成される下室部側に導入されることを特徴とする請求項13に記載のヒートポンプ装置。
【請求項15】
前記弁本体には、前記上室部及びアクチュエータ内部を連通する均圧孔が設けられていることを特徴とする請求項13又は14に記載のヒートポンプ装置。
【請求項16】
前記均圧孔は、前記弁体が回転しても該弁体の連通路と連通しないポートに開口していることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載のヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−196400(P2011−196400A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60983(P2010−60983)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】