説明

流路切換弁

【課題】比較的簡素な構成でありながら、流路抵抗、圧力損失を可及的に低減でき、かつ、シール面の摩耗抑制、耐久性向上等をも図ることのできる流路切換弁を提供する。
【解決手段】弁室6及び該弁室6の左右に開口する第1入出口11と第2入出口12を有する弁本体と、第1及び第2入出口11、12を開閉するためのゴム製シール部材30を有する第1及び第2弁体部21、21がそれぞれ左右の側端部に設けられたリフト弁20と、該リフト弁20を左右方向に開閉駆動するための回動軸15と、を備え、弁室6の底部5bにおける左右方向に、リフト弁20の棒状嵌合部29、29が摺動自在に嵌合せしめられる略直線状の案内溝35が設けられ、リフト弁20を案内溝35に沿って移動させるべく、回動軸15にそれに直交する方向に突出する押動アーム17が設けられるとともに、リフト弁20に押動アーム17に押圧され得る押受部としての軸状突部25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れ方向(流路)を切り換えるための三方弁等の流路切換弁に係り、特に、左右側端部にそれぞれ弁体部が設けられたリフト弁、このリフト弁を開閉駆動(左右方向に押動)するための回動軸(モータ等の駆動装置)を備えた流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流路切換弁として、下記特許文献1には、弁本体の左右に一対の入出口が設けられた三方弁において、左右の入出口にそれぞれ弁軸ガイドを設け、リフト弁の弁軸(中心軸)を前記弁軸ガイドに通すことでリフト弁を左右方向(入出口開閉方向)に移動可能に支持するようにされたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−228022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に所載の流路切換弁では、左右の入出口にそれぞれ弁軸ガイドを設けているが、この弁軸ガイドが流体の流れを阻害するものとなり、流路抵抗、圧力損失が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、比較的簡素な構成でありながら、流路抵抗、圧力損失を可及的に低減でき、かつ、シール面の摩耗抑制、耐久性向上等をも図ることのできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的には、弁室及び該弁室の左右に開口する第1入出口と第2入出口を有する弁本体と、前記第1入出口を開閉するための第1弁体部及び前記第2入出口を開閉するための第2弁体部がそれぞれ左右の側端部に設けられたリフト弁と、該リフト弁を左右方向に開閉駆動するための回動軸と、を備え、前記弁室の底部及び/又は天井部における左右方向に、前記リフト弁の一部が摺動自在に嵌合せしめられる略直線状の案内溝又は案内突条が設けられ、前記リフト弁を前記案内溝又は案内突条に沿って移動させるべく、前記回動軸にそれに直交する方向に突出する押動アームが設けられるとともに、前記リフト弁に前記押動アームに押圧され得る押受部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
より好ましくは、弁室及び該弁室の左右に開口する第1入出口と第2入出口を有する弁本体と、前記第1入出口を開閉するための第1弁体部及び前記第2入出口を開閉するための第2弁体部がそれぞれ左右の側端部に設けられたリフト弁と、該リフト弁を左右方向に開閉駆動するための回動軸と、を備え、前記弁室の底部及び/又は天井部における左右方向に、前記リフト弁の一部が摺動自在に嵌合せしめられる略直線状の案内溝又は案内突条が設けられ、前記リフト弁を前記案内溝又は案内突条に沿って移動させるべく、前記回動軸にそれに直交する方向に突出する押動アームが設けられるとともに、前記リフト弁に前記押動アームに押圧され得る押受部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
好ましい態様では、前記リフト弁に、前記押受部として上下方向に突出する軸状突部が設けられるとともに、前記押動アームの先端部に、前記軸状突部が相当の余裕をもって遊挿される穴、切欠付き穴、C字状部、又はU字状部が設けられる。
【0009】
他の好ましい態様では、前記弁体部は、前記入出口の開口端縁部に押し付けられてそれを閉塞する球冠ないし球帯状のゴム製シール部材で構成される。
【0010】
他の好ましい態様では、前記リフト弁に前記押受部が上下2カ所設けられるとともに、該2つの押受部に対応して、前記回動軸に前記押動アームが上下2カ所設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る流路切換弁では、リフト弁を弁室の底部及び/又は天井部に設けられた案内溝又は案内突条で摺動自在に支持するようにされるので、従来例のように入出口に弁軸ガイドを設ける必要はなく、したがって、比較的簡素な構成でありながら、流路抵抗、圧力損失を可及的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る流路切換弁の一実施形態(第1実施例)を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図。
【図2】(A)は図1(B)のY-Y断面図、(B)は図1(A)のX-X断面図であり、[第1入出口:閉、第2入出口:開]状態を示している。
【図3】図2と同様な断面図であり、[第1入出口及び第2入出口:開(中間開度)]状態を示している。
【図4】図2と同様な断面図であり、[第1入出口:開、第2入出口:閉]状態を示している。
【図5】第1実施例で使用されているリフト弁を示し、(A)は上面図、(B)は側面図。
【図6】第1実施例で使用されているホルダの下面図。
【図7】第1実施例で使用されている回動軸及び押動アームを示し、(A)は側面図、(B)は下面図。
【図8】第1実施例の改善例(第2実施例)を示す、図2と同様な断面図。
【図9】第2実施例で使用されている回動軸及び押動アームを示し、(A)は側面図、(B)は下面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の流路切換弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る流路切換弁の一実施形態(第1実施例)を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図、図2(A)は図1(B)のY-Y断面図、図2(B)は図1(A)のX-X断面図である。
【0015】
図示第1実施例の流路切換弁1は、三方弁の形態をとるもので、上面が開口した有底円筒状の弁本体5とこの弁本体5の上面開口部5aに装着固定された蓋状ホルダ7とを備えている。弁本体5内には、蓋状ホルダ7を天井部とする弁室6が画成され、弁本体5の正面(前面)と左右の側面には、それぞれ前記弁室6に開口する入出口10、11、12が設けられている。ここでは、前面に設けられた入出口が流入口10とされ、左右の側面に設けられた入出口が第1流出口11と第2流出口12となっており、第1流出口11と第2流出口12は平面視で180度の角度間隔をあけて対向配置され、それらに等角度(90度)間隔で流入口10が配置されている。
【0016】
弁室6内には、リフト弁20が左右方向に移動可能に配在されている。リフト弁20は、図2(A)、(B)に加えて図5を参照すればよくわかるように、断面矩形状の基体部23を有し、この基体部23の左右側端部に、第1流出口11及び第2流出口12の開口端縁部(弁座)11a、12aに押し付けられてそれを閉塞する球冠ないし球帯状のゴム製シール部材30を有する第1弁体部21と第2弁体部22が設けられている。より詳細には、第1弁体部21と第2弁体部22は、基体部23の側端部に設けられた、ゴム製シール部材30が過剰に撓曲することを防ぐための受止板部26、載台部27、キノコ状抜止部28を有し、前記ゴム製シール部材30は、載台部27とキノコ状抜止部28により基体部23にしっかりと固定されている。
【0017】
また、リフト弁20の基体部23における下面側の左右端近くには、断面円形の棒状嵌合部29、29が下向きに突設されている。棒状嵌合部29、29の下部は後述する案内溝35に摺動自在に嵌合せしめられている。
【0018】
リフト弁20の基体部23における上面側中央には、円柱状の台状部24が上向きに突設され、該台状部24の上面中央には、後述する押動アーム17により押圧され得る押受部としての、短円柱状の軸状突部25が上向きに突設されている。
【0019】
なお、リフト弁20の基体部23、台状部24、軸状突部25、受止板部26、載台部27、キノコ状抜止部28、及び棒状嵌合部29、29は、摩擦抵抗が小さく摺動性に優れた例えばテフロン(登録商標)系の合成樹脂を素材として一体に成形されている。
【0020】
一方、前記蓋状ホルダ7の中央に設けられた嵌挿穴7aには、前記リフト弁20を左右方向に開閉駆動するための(流入口11、12の開口端縁部(弁座)11a、12aに接離する方向に移動させるための)回動軸15が回動自在に支持されている。回動軸15は図示されていないステッピングモータ等の回転駆動源により正逆両方向に任意に回転せしめられるようになっている。
【0021】
また、前記弁室6の底部5bにおける左右方向に、前記リフト弁20の棒状嵌合部29、29の下部が摺動自在に嵌合せしめられる略直線状の案内溝35が設けられている。案内溝35は、例えば底面が平らな断面矩形とされ、開口端縁部(弁座)11a、12a近くに位置する平面視半円形の両端部付近を除く中間部分は幅が広くされている。
【0022】
そして、本実施例では、前記リフト弁20を前記案内溝35に沿って移動させるべく、前記回動軸15の下端部にそれに直交する方向(真横)に突出する押動アーム17が一体に設けられ、該押動アーム17の先端部には、前記リフト弁20に設けられた軸状突部25が相当の余裕をもって遊挿される丸穴18が形成されている(図2に加えて図7を参照)。
【0023】
なお、蓋状ホルダ7の下面部には、図6に示される如くの、前記押動アーム17が所要角度範囲内で回動可能に収容される角丸付き三角形状の凹所7bが設けられている。この凹所7bの左右側端面が押動アーム17が過剰に回動すること(ゴム製シール部材30が開口端縁部11a、12aに過剰に押し付けられること)を制限するストッパ面となっている。
【0024】
このような構成とされた本実施例の流路切換弁1においては、回動軸15が例えば平面視で時計回りに、図2に示される如くの回転位置まで回転せしめられた際には、押動アーム17によりリフト弁20の軸状突部25が左方に押圧され、それによって、リフト弁20が案内溝35に案内されながら第1流出口11側に押動され、第1弁体部21のゴム製シール部材30が第1流出口11の開口端縁部11aに押し付けられてそれを閉塞する。この際には、第2弁体部22は第2流出口12から離れる方向に移動するので、第2流出口12が全開する。これにより、流入口10からの流体は第2流出口12の方へ流れる。
【0025】
続いて、回動軸15が図2に示される回転位置から反時計回りに、図3に示される如くの回転位置まで回転せしめられると、押動アーム17によりリフト弁20の軸状突部25が右方に押圧され、それによって、リフト弁20が案内溝35に案内されながら第2流出口12側に押動され、第1弁体部21のゴム製シール部材30が第1流出口11の開口端縁部11aから離れて第1流出口11が開く(中間開度)とともに、第2弁体部22が第2流出口12に接近するが、第2流出口12を閉じるまでには至らない。これにより、流入口10からの流体は第1流出口11と第2流出口12の両方へ流れる。
【0026】
さらに、回動軸15が図3に示される回転位置から反時計回りに、図4に示される如くの回転位置まで回転せしめられると、押動アーム17によりリフト弁20の軸状突部25が右方に押圧され、それによって、リフト弁20が案内溝35に案内されながら第2流出口12側に押動され、第2弁体部22のゴム製シール部材30が第2流出口12の開口端縁部12aに押し付けられてそれを閉塞する。この際には、第1弁体部21は第1流出口11から離れる方向に移動するので、第1流出口11が全開する。これにより、流入口10からの流体は第1流出口11の方へ流れる。
【0027】
このような構成の本実施例の流路切換弁1では、リフト弁20を弁室6の底部5bに設けられた案内溝35で摺動自在に支持するようにされるので、従来例のように入出口に弁軸ガイドを設ける必要はなく、したがって、比較的簡素な構成でありながら、流路抵抗、圧力損失を可及的に低減できる。
【0028】
また、リフト弁20の二つの弁体部21、22に備えられるゴム製シール部材30のみでシールする構成なので、パッキン等の他のシール部品は不要となり、部品点数を削減できる。
【0029】
流出口11、12の開口端縁部(弁座)11a、12aに球冠ないし球帯状のゴム製シール部材30を押し付ける構造であるため、シール面が摺動して摩耗する懸念はなく、耐久性の向上が見込まれる。
【0030】
シール面(ゴム製シール部材30)が球面なので、多少の傾きが生じても所要のシール性を確保できる。
【0031】
なお、上記実施例では、押動アーム17に押圧される軸状突部25がリフト弁20の最上部に位置しているので、リフト弁20に不所望なモーメントが生じるおそれがある。
【0032】
そこで、図8に示されているように、リフト弁20の基体部23の下面側中央にも、下向きに円柱状の台状部24’を突設し、該台状部24の下面中央に押受部としての短円柱状の軸状突部25’を下向きに突設する一方、図9に示される如くに、回動軸15を下方に延長して長くし、前記上下の軸状突部25、25’を押圧できるように、上下2段の押動アーム17、17’を設け、押動アーム17、17’によりリフト弁20の上部だけでなく下部も押圧するようになすことが改善例(第2実施例)として挙げられる。
【0033】
なお、この第2実施例では、軸状凹部25、25’を挿入するために丸穴18’が切欠18a付きとされ、また、下側の押動アーム17’にはリフト弁20との干渉をさけるためその一部が削除されている(削除部19)。
【0034】
なお、上記実施例では、弁室6の底部に案内溝35を設けているが、弁室6の天井部(蓋状ホルダ7の下面部)にも案内溝を設けるとともに、リフト弁に天井案内溝に摺動自在に嵌合せしめられる棒状嵌合部を設けるようにしてもよく、さらに、案内溝の代わりに案内突条を設け、リフト弁に該案内突条に摺動自在に嵌合する溝を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、三方弁に本発明を適用した場合を例示したが、本発明は二方弁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 流路切換弁
5 弁本体
6 弁室
7 蓋状ホルダ
10 流入口
11 第1流出口
12 第2流出口
15 回動軸
17 押動アーム
18 丸穴
20 リフト弁
21 第1弁体部
22 第2弁体部
23 基体部
25 軸状突部
29 棒状嵌合部
30 ゴム製シール部材
35 案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び該弁室の開口する複数個の入出口を有する弁本体と、前記入出口を開閉するための少なくとも一つの弁体部が設けられたリフト弁と、該リフト弁を開閉駆動するための回動軸と、を備えた流路切換弁であって、
前記弁室の底部及び/又は天井部に、前記リフト弁の一部が摺動自在に嵌合せしめられる案内溝又は案内突条が設けられ、前記リフト弁を前記案内溝又は案内突条に沿って移動させるべく、前記回動軸にそれに直交する方向に突出する押動アームが設けられるとともに、前記リフト弁に前記押動アームに押圧され得る押受部が設けられていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
弁室及び該弁室の左右に開口する第1入出口と第2入出口を有する弁本体と、前記第1入出口を開閉するための第1弁体部及び前記第2入出口を開閉するための第2弁体部がそれぞれ左右の側端部に設けられたリフト弁と、該リフト弁を左右方向に開閉駆動するための回動軸と、を備えた流路切換弁であって、
前記弁室の底部及び/又は天井部における左右方向に、前記リフト弁の一部が摺動自在に嵌合せしめられる略直線状の案内溝又は案内突条が設けられ、前記リフト弁を前記案内溝又は案内突条に沿って移動させるべく、前記回動軸にそれに直交する方向に突出する押動アームが設けられるとともに、前記リフト弁に前記押動アームに押圧され得る押受部が設けられていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項3】
前記リフト弁に、前記押受部として上下方向に突出する軸状突部が設けられるとともに、前記押動アームの先端部に、前記軸状突部が相当の余裕をもって遊挿される穴、切欠付き穴、C字状部、又はU字状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路切換弁。
【請求項4】
前記弁体部は、前記入出口の開口端縁部に押し付けられてそれを閉塞する球冠ないし球帯状のゴム製シール部材で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の流路切換弁。
【請求項5】
前記リフト弁に前記押受部が上下2カ所設けられるとともに、該2つの押受部に対応して、前記回動軸に前記押動アームが上下2カ所設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流路切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−44411(P2013−44411A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183728(P2011−183728)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】