説明

流量制御弁

【課題】流量調整ねじをロックナットによりロックした場合に、流量調整ねじの雄ねじ部と、流量調整ねじが締結されるカバーの雌ねじ部との間のバックラッシにより、流量調整ねじがずれて、最初に調整した弁開度とずれることのないような流量制御弁を提供する。
【解決手段】調整ねじ部材54の回転により調整弁体26の開度を調整し、調整用雄ねじ部53aの弁体側に対向する弁体側歯面が調整用雌ねじ部45bの歯面に接触した状態のもとでロックナット56により弁体側歯面を調整用雌ねじ部45bの歯面に押圧して調整ねじ部材54を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧などの流体圧を使用して弁体を作動させる流量制御弁に係り、特に弁体の開度位置を調整する調整部材を備えた流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの製造技術分野を始め、液晶基板製造技術分野や多層配線基板製造技術などの分野では、フォトレジスト液、アルカリ性や酸性の処理液などの薬液が使用されている。それぞれの薬液を供給するために、容器とこの中に収容された薬液を供給するポンプとこのポンプの作動により流路を介して案内された薬液を吐出するノズルとを有する薬液供給装置が使用されている。このような薬液供給装置においては、薬液の供給量を高い精度で調整する必要があるため、たとえば特許文献1に開示されているような弁体の開度位置を調整する流量制御弁が用いられている。
【0003】
また、特許文献2には、液体を供給する供給装置において、液体の供給量を高い精度で調整するため弁体の開度位置を調整する流量制御弁が開示されている。
【0004】
上記流量制御弁は、ピストンの閉作動時に弁孔からの流量を調整する流量調整ねじを備えている。流量調整ねじはカバーに貫通及び螺合されて調整摘みの回動操作により軸方向に沿って螺進可能とされている。流量調整ねじと調整摘みとの間には、ロックナットが介在されている。流量調整ねじは下端側がピストンの係合孔に軸方向に沿って変位可能に挿入され、その下端の大径部が弾性付勢手段の付勢力によって係合孔の内壁面上端に掛止されている。
【0005】
そして、弁体の開度位置を調整する場合には、調整摘みによって流量調整ねじを緩み方向に所定量回動操作させて主弁、ピストン、ロッドを弾性付勢手段の付勢力に抗して同伴して上昇させることにより、主弁を弁孔から離反させて所定の弁開度に調整した後に、流量調整ねじをロックナットによってロックするものである。
【特許文献1】特開2003−322275号公報
【特許文献2】実願平2−068710(実開平4−027279号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2に記載の流量調整弁においては、以下のような問題点を有している。すなわち、流量調整ねじは、ロックされない状態においては、弾性付勢手段の付勢力により下降方向に引張られているが、流量調整ねじを回動させて所定の弁開度に調整した後に、流量調整ねじをロックナットによりロックすると、流量調整ねじは逆に上昇方向に引張られる。つまり、流量調整ねじの雄ねじ部と、流量調整ねじが締結されるカバーの雌ねじ部との間のバックラッシにより、流量調整ねじはバックラッシ分上昇する。すると流量調整ねじに同伴して主弁も上昇することになり、最初に調整した弁開度とずれることになる。つまり何度も弁開度の調整をやり直さなければならなくなるという問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、流量調整ねじをロックナットによりロックした場合に、流量調整ねじが上昇方向に引張られることのない流量制御弁を提供することにある。
【0008】
さらに詳述すると、本発明の目的は、流量調整ねじをロックナットによりロックした場合に、流量調整ねじの雄ねじ部と、流量調整ねじが締結されるカバーの雌ねじ部との間のバックラッシにより、流量調整ねじがずれて、最初に調整した弁開度とずれることのないような流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流量制御弁は、流体が流入する流入側流路と流出する流出側流路とこれらの流路を連通させる流量調整用開口部とが形成された流路ブロックと、前記流路ブロックに前記流量調整用開口部に対向して設けられた流量調整用ハウジングと、前記流量調整用開口部の開度を調整する弁体が取り付けられるとともに、前記流量調整用ハウジングのシリンダ室に組み込まれて前記シリンダ室を前記弁体を閉じる方向のばね力を付勢するばね部材が組み込まれるばね室と前記弁体を開く方向の流体圧を加える流体室とに区画する流量調整用ピストンと、前記流量調整用ハウジングに設けられ、内周に調整用雌ねじ部が形成される一方、前記流量調整用ハウジングから突出する外周に締結用雄ねじ部が形成されたガイド筒体と、前記流量調整用ピストンに係合して前記流量調整用ピストンの前記流量調整用開口部に向かう方向の位置を規制するストッパとを有し、前記調整用雌ねじ部にねじ結合する調整用雄ねじ部が外周に形成される調整ねじ部材と、前記締結用雄ねじ部にねじ結合する締結用雌ねじ部と、前記調整用雄ねじ部に設けられた接触面を前記弁体を閉じる方向に押圧する締結面とが形成されたロックナットとを有し、前記調整ねじ部材の回転により前記弁体の開度を調整し、前記調整用雄ねじ部の前記弁体側に対向する弁体側歯面が前記調整用雌ねじ部の歯面に接触した状態のもとで前記ロックナットにより前記弁体側歯面を前記調整用雌ねじ部の歯面に押圧して前記調整ねじ部材を締結することを特徴とする。
【0010】
本発明の流量制御弁は、前記調整ねじ部材は、前記調整用雄ねじ部が形成されるとともに、内周面に前記調整用雄ねじ部と相違するピッチの差動用雌ねじ部が形成された中空軸と、前記差動用雌ねじ部にねじ結合する差動用雄ねじ部が形成され、前記ストッパを備え前記流量調整用ピストンに対し回転が規制されるとともに相対的に軸方向に移動自在に前記流量調整用ピストンに連結される差動軸とを有することを特徴する。
【0011】
本発明の流量制御弁は、前記流路ブロックに形成されて前記流入側流路と前記流出側流路とを連通させる開閉用開口部に対向して前記流路ブロックに設けられる開閉用ハウジングと、前記開閉用開口部を開閉する弁体が取り付けられるとともに、前記開閉用ハウジングのシリンダ室に組み込まれて前記弁体を前記開閉用開口部に接触する全閉位置と前記開閉用開口部から離れる全開位置とに駆動する開閉用ピストンと、前記開閉用ピストンに対して前記全閉位置と前記全開位置の少なくとも何れか一方に向かう流体圧を供給する流体供給手段と、前記開閉用ハウジングにねじ結合され、前記開閉用ピストンに当接して前記弁体の全開位置を規制する全開用調整ねじ部材とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の流量制御弁は、前記ストッパは前記流量調整用ピストンの前記ばね室側に取り付けられた連結駒に係合し、前記ストッパの前記連結駒に係合する当たり面が球面となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロックナットはガイド筒体に締結し、かつ、ロックナットは調整ねじ部材に締結されずに、ロックナットに形成された接触面が、調整ねじ部材の調整用雄ねじ部に設けられた接触面を、弁体を閉じる方向に押圧する構成となっているため、調整ねじ部材をロックナットによりロックした場合に、調整ねじ部材が上昇方向に引張られることがない。
【0014】
その際、調整用雄ねじ部の弁体側に対向する弁体側歯面が調整用雌ねじ部の歯面に接触した状態のもとで、調整ねじ部材は、ロックナットにより弁体を閉じる方向に押圧され、結果として下降方向に引張られる。
【0015】
すると、調整用雄ねじ部の弁体側に対向する弁体側歯面が、調整用雌ねじ部の歯面に押圧され、調整ねじ部材がバックラッシ分ずれることがなく、最初に調整した弁開度とずれることもない。
【0016】
従って、1回の調整ねじの調整及びロックにより、高い精度で弁開度を調整することができ、液体の供給量を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施例である流量制御弁を備えた流量制御装置を示す断面図である。この流量制御装置は、流路の開度を全開状態と全閉状態とに切り換える開閉制御弁11と、流路の開度を全開状態と全閉状態との間のうち任意の開度に設定する流量制御弁12とを有しており、開閉制御弁11と流量制御弁12は流路ブロック13に取り付けられている。
【0019】
流路ブロック13には、第1のポート14aが形成された第1のジョイント部14と、第2のポート15aが形成された第2のジョイント部15とが一体に設けられ、それぞれのジョイント部14,15にねじ結合されるユニオンナット16により図示しない配管がジョイント部14,15に取り付けられるようになっている。流路ブロック13には第1のポート14aに連通する第1の流路17と、第2のポート15aに連通する第2の流路18とが同軸上に形成され、これらの流路17,18の間に仕切り壁を介して連通流路19が形成されている。流路ブロック13には、さらに連通流路19と第1の流路17とを連通させる開閉用開口部21と、第2の流路18と連通流路19とを連通させる流量調整用開口部22とが形成されている。
【0020】
第1のジョイント部14には流入側の配管が接続され、第2のジョイント部15には流出側の配管が接続されるようになっている。したがって、流量制御弁12に対しては、第1の流路17と連通流路19とが流入側流路になり、第2の流路18が流出側流路になっており、薬液は図1において第1のポート14aから第2のポート15aに向けて流れることになる。ただし、第2のポート15a側から第1のポート14a側に向けて薬液を流すようにしても良く、その場合には第2の流路18が流入側流路となる。
【0021】
流路ブロック13には、開閉用開口部21に対向した開閉用ハウジング23と、流量調整用開口部22に対向した流量調整用ハウジング24とが並設されている。開閉用ハウジング23は第1のハウジング部材23aとこれに固定される第2のハウジング部材23bとを有し、流量調整用ハウジング24は第1のハウジング部材24aとこれに固定される第2のハウジング部材24bとを有し、それぞれ図示しないねじ部材により流路ブロック13に組みつけられている。
【0022】
開閉用開口部21を覆うように流路ブロック13にはダイヤフラム式の開閉弁体25が装着されており、流量調整用開口部22を覆うように流路ブロック13にはダイヤフラム式の調整弁体26が装着されている。開閉弁体25および調整弁体26は、それぞれ流路ブロック13とそれぞれのハウジング23,24との間で固定される環状部25a,26aと、環状部の内側に配置される軸部25b,26bと、これらの間に設けられるダイヤフラム部25c,26cとを有し、一体に成形されている。流路ブロック13とそれぞれの弁体25,26は、流路内を流れる液体がフォトレジスト液などのように金属腐食性の液体であるので、耐食性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂により形成されている。ただし、薬液によっては他の樹脂や金属等により流路ブロック13や弁体25,26を形成するようにしても良い。
【0023】
開閉用ハウジング23に形成されたシリンダ室27内には開閉用ピストン28が軸方向に往復動自在に収容されており、開閉用ピストン28は開閉弁体25に連結される軸部28aを有し、開閉用ピストン28によりシリンダ室27は開放用圧力室27aと閉塞用圧力室27bとに仕切られている。開閉用ハウジング23には開放用圧力室27aに連通する給排ポート29aと、閉塞用圧力室27bとに連通する給排ポート29bとが形成されており、給排ポート29aから圧縮空気を供給すると開閉弁体25には開閉用ピストン28により開閉用開口部21を開く方向の推力が加えられ、給排ポート29bから圧縮空気を供給すると開閉弁体25には開閉用ピストン28により開閉用開口部21を閉じる方向の推力が加えられる。開放用圧力室27a内には開閉弁体25に開く方向の推力を加える圧縮コイルばね31が装着されており、開閉弁体25には開く方向に圧縮空気とばね力が加えられるようになっているが、ばね力のみ又は圧縮空気のみにより開く方向の推力を加えるようにしても良い。
【0024】
開閉用ハウジング23には閉塞用圧力室27b内に位置させてガイド筒体32が取り付けられており、このガイド筒体32はこれの突出端部に形成された雄ねじ32aにねじ結合される締結ナット33により開閉用ハウジング23に固定されている。ガイド筒体32内には差動軸34が軸方向に往復動自在に組み込まれ、差動軸34の先端部に径方向に取り付けられた係合ピン35がガイド筒体32に軸方向に延びて形成された係合溝36に係合している。差動軸34の外側には中空軸37が回転自在に嵌合されており、差動軸34と中空軸37とにより全開用調整ねじ部材38が形成されている。中空軸37の外周面に形成された雄ねじ37aはガイド筒体32の内周面に形成された雌ねじ32bにねじ結合されており、中空軸37の端部に固定された調整つまみ39の部分で中空軸37を回転させると、中空軸37が軸方向に移動して開閉弁体25の全開位置が設定される。
【0025】
中空軸37の内周面に形勢された雌ねじ37bには、差動軸34の外周面に形成された雄ねじ34aがねじ結合しており、この雄ねじ34aは中空軸37の雄ねじ37aよりも小さいピッチとなっている。したがって、調整つまみ39の部分で中空軸37を回転させると、両方の雄ねじ37a,34aの差の分だけ中空軸37は軸方向に移動することになり、高い精度で開閉用ピストン28の開度を設定することができる。雄ねじ37aにはロックナット40がねじ結合され、ロックナット40をガイド筒体32の端面に押し付けると、中空軸37は開閉用ハウジング23に固定される。
【0026】
図2は図1に示された流量制御弁12の一部を拡大して示す断面図である。また、図3は図2のA−A線に沿う断面図である。
【0027】
流量制御弁12の流量調整用ハウジング24に形成されたシリンダ室41内には流量調整用ピストン42が軸方向に往復動自在に収容されている。流量調整用ピストン42は調整弁体26に連結される軸部42aを有し、流量調整用ピストン42によりシリンダ室41は圧力室41aとばね室41bとに仕切られており、ばね室41b内には流量調整用ピストン42を介して調整弁体26に対して閉じる方向のばね力を加えるための圧縮コイルばね43がばね部材として組み込まれている。流量調整用ハウジング24には圧力室41aに連通する給排ポート44aと、ばね室41bに連通するブリードポート44bとが形成されており、給排ポート44aから圧縮空気を圧力室41a内に供給すると、流量調整用ピストン42にはばね力に抗して調整弁体26を開く方向の推力が加えられ、このときにはばね室41b内の空気はブリードポート44bから外部に排出される。一方、圧力室41a内の空気を排出すると、ばね力により調整弁体26には閉じられる方向の推力が流量調整用ピストン42により加えられる。
【0028】
流量調整用ハウジング24にはばね室41b内に位置させてガイド筒体45が取り付けられており、このガイド筒体45はこれの突出端部に形成された締結用雄ねじ部45aにねじ結合される締結ナット46により流量調整用ハウジング24に固定されている。ただし、ガイド筒体45と締結ナット46とを流量調整用ハウジング24に一体に形成するようにしても良く、図2と図4においては、流量調整用ハウジング24にガイド筒体45と締結ナット46とが一体に形成されて示されている。
【0029】
流量調整用ピストン42のばね室41b側には凹部が形成され、この凹部の内周面に形成された雌ねじにねじ結合する筒部47aとこの端部に一体となった端壁部47bとを有する連結駒47が流量調整用ピストン42に固定されており、この連結駒47は流量調整用ピストン42の一部を構成している。
【0030】
ガイド筒体45内には差動軸48が軸方向に往復動自在に組み込まれ、差動軸48は連結駒47の端壁部47bに形成された貫通孔を貫通しており、差動軸48の端部には筒部47a内に組み込まれるストッパ49が設けられている。ストッパ49が連結駒47の端壁部47bに係合した状態のもとでは、流量調整用ピストン42が流量調整用開口部22に向かう方向の移動を規制する。図2及び図3に示すように、ストッパ49において、連結駒47の端壁部47bに係合する面である当たり面49aは球面となっているため、ストッパ49に係合する連結駒47の位置、すなわち、流量調整用ピストン42の位置が安定する。ストッパ49には、筒部47aに固定された係合ピン51が係合する係合溝52が軸方向に伸びて形成されている。すなわち、図3に示すように、ストッパ49は二股形状をしており、二股の間にはすり割り状の係合溝52が形成されている。すり割り状の係合溝52には筒部47aに固定された係合ピン51が係合しているため、ストッパ49は差動軸48の軸線を中心として回転することが不可能となっている。そして、圧力室41aに圧縮空気を供給して流量調整用ピストン42を流量調整用開口部22から離す方向に駆動すると、流量調整用ピストン42は係合ピン51とともに差動軸48に対して軸方向に移動することになる。ただし、この方向の流量調整用ピストン42の移動限の位置は、ガイド筒体45の端面に連結駒47が当接することによって規制されることになる。
【0031】
差動軸48の外側には中空軸53が回転自在に嵌合されており、差動軸48と中空軸53とにより調整ねじ部材54が形成されている。中空軸53の外周面に形成された調整用雄ねじ部53aはガイド筒体45の内周面に形成された調整用雌ねじ部45bにねじ結合されており、中空軸53の端部に固定された調整つまみ55の部分を手動操作して中空軸53を回転させると、中空軸53が軸方向に移動して調整弁体26の開度が設定される。
【0032】
中空軸53の内周面に形成された雌ねじ部53bには、差動軸48の外周面に形成された雄ねじ部48aがねじ結合しており、この雄ねじ部48aのピッチと中空軸53の調整用雄ねじ部53aのピッチは僅かに相違している。例えば、中空軸53の調整用雄ねじ部53aのピッチは0.5mmとなっており、差動軸48の調整用雄ねじ部48aのピッチは0.45mmとなっており、何れも右ねじである。従って、調整つまみ55により中空軸53を1回転させると、係合ピン51により回転が規制されている差動軸48は両方のピッチの差分である0.05mmだけ軸方向に移動することになる。このように調整ねじ部材54を差動軸48と中空軸53とを有する差動機構とすることにより調整ねじ部材54の1回転当たりの軸方向の移動量を少ない量として調整ねじ部材54の軸方向移動量つまり調整弁体26の開度を高精度に設定することができる。ただし、調整ねじ部材54を1つのねじ部材により形成するようにしても良く、その場合には調整用雄ねじ部53aを有する1本のねじ部材の端部にストッパ49を設けることになる。
【0033】
調整ねじ部材54を流量調整用ハウジング24に締結状態として固定するために、調整ねじ部材54にはロックナット56が回転自在に装着されている。このロックナット56は円筒部57とこれの端部に一体となった端壁部58とを有し、円筒部57にはガイド筒体45の締結用雄ねじ部45aにねじ結合する締結用雌ねじ部56aが形成され、端壁部58の内面は中空軸53に設けられた段部により形成される接触面59に接触して中空軸53に対して調整弁体26を閉じる方向に押圧する締結面58aとなっている。
【0034】
図4は図2の一部を拡大して示す断面図である。流量調整用開口部22の開度は調整弁体26の軸方向位置により設定されることになり、開度を設定する際には調整つまみ55を作業者が操作して中空軸53を回転させる。このときには、流量調整用ピストン42には調整弁体26を閉じる方向にばね力が加えられているので、図4に示すように、差動軸48の雄ねじ部48aの弁体側歯面つまり調整弁体26に対向する側の歯面は、中空軸53の雌ねじ部53bのうち調整弁体26に対して反対側の歯面つまり外側歯面に接触した状態となり、雄ねじ部48aの外側歯面と雌ねじ部35bの弁体側歯面との間には図4において誇張して示すようにバックラッシュに対応した隙間が形成される。同様に、中空軸53の調整用雄ねじ部53aの弁体側歯面は、ガイド筒体45の調整用雌ねじ部45bの外側歯面に接触した状態となる。
【0035】
したがって、ロックナット56を回転させて調整ねじ部材54の中空軸53を流量調整用ハウジング24に締結する際には、ロックナット56を回転させてロックナット56の締結面58aを接触面59に押圧させると、中空軸53の調整用雄ねじ部53aの弁体側歯面がガイド筒体45の調整用雄ねじ部45bの外側歯面に接触した状態のもとで、調整用雄ねじ部53aの弁体側歯面をガイド筒体45の調整用雌ねじ部45bの外側歯面に引き続いて押し付けられるようにロックナット56により中空軸53は締結されることになる。これにより、調整用雄ねじ部53aと調整用雌ねじ部45bとの間のバックラッシュの影響を受けることなく、中空軸53を回転させることにより設定された調整弁体26の開度を保持しつつその位置で調整弁体26は締結固定されることになる。締結固定が完了したときには、ロックナット56の締結用雌ねじ部56aはガイド筒体45の締結用雄ねじ部45aの弁体側歯面に密着した状態となる。
【0036】
図5は比較例としての流量制御弁の一部を示す断面図であり、図5には本発明の一実施の形態である流量制御弁12を示す図2に対応する部分が示されている。図6は図5の一部を拡大して示す断面図である。図5および図6においては、図2に示す部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0037】
比較例として示すように、調整ねじ部材54の中空軸53の雄ねじ部53aに直接ロックナット60を締結するようにし、ロックナット60が流量調整用ハウジング24の端面に押し付けられることにより中空軸53の締結固定が行われるようにすると、締結固定時における中空軸53の雄ねじ部53aの歯面とロックナット60の雌ねじ部60aの歯面との接触状態は図6に示すようになる。つまり、調整つまみ55を回転させて調整弁体26の開度を調整したときには、中空軸63は圧縮コイルばね43のばね力により調整弁体26に向かって押し付けられている状態となっており、この状態のもとでロックナット60を回転させて中空軸53を締結すると、ロックナット60の雌ねじ部60aの外側歯面が中空軸53の雄ねじ部53aの弁体側歯面に密着した状態で締結固定されるので、中空軸53は雌ねじ部60aと雄ねじ部53aとの間のバックラッシュの隙間分だけ調整弁体26から離れる方向にずれ移動することになる。このため、最初に調整した弁開度とずれることになり、何度も弁開度の調整をやり直さなければならなくなってしまうのである。
【0038】
しかしながら、本発明の流量制御弁12においては、ロックナット56は直接には調整ねじ部材54の中空軸53にはねじ結合されずに、ガイド筒体45に締結され、ロックナット56に形成された締結面58aが、調整ねじ部材54に設けられた接触面59を調整弁体26を閉じる方向に押圧する構成となっている。したがって、調整ねじ部材54をロックナット56によりロックした場合に、調整ねじ部材54が弁体から離れる方向にずれ移動することがない。上述のように、調整ねじ部材54を構成する中空軸53の弁体側に対向する弁体側歯面が調整用雌ねじ部45bの歯面に接触した状態のもとで、調整ねじ部材54がロックナット56により弁体を閉じる方向に押圧されるので、接触した状態の歯面同士がより密着する方向に押圧されることになる。したがって、1回の調整ねじの調整及びロックにより、高い精度で弁開度を調整することができ、図1〜図4に示す本実施の形態の流量制御弁12は、流量調整用開口部22の開度、すなわち流量開口量を調整して薬液などの流体の通過流量を高い精度で調整することができる。
【0039】
次に、図1に示す流量制御装置により液体の流量を調整する手段について説明すると、流路ブロック13に形成された流路は、開放用圧力室27aに圧縮空気を供給すると開閉制御弁11の開閉弁体25は弁座から開閉用開口部21が全開状態となる。一方、流量制御装置が使用されないとき等には閉塞用圧力室27b内に圧縮空気を供給することにより開閉弁体25は全開状態となる。
【0040】
流路ブロック13内を流れる液体の流量を設定するには、ロックナット56を緩めた状態のもとで調整つまみ55を回転させて調整弁体26の開度を設定する。この状態のもとでロックナット56を締結しても、上述のように、調整弁体26は設定された開度を保持することができる。
【0041】
給排ポート44aから圧力室41aに圧縮空気を供給すると、流量調整用ピストン42は圧縮コイルばね43のばね力に抗してガイド筒体45に接触する後退限の位置まで移動し、調整弁体26は後退限位置となる。この状態では、流量調整用開口部22は全開状態となってその開度は最大の設定で開いた状態となる。
【0042】
本実施例では、調整ねじ部材54を中空軸53と差動軸48とにより形成したが、中空軸53と差動軸48とを一体とした調整ねじ部材としてもよい。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、図示する薬液供給装置は、半導体ウエハWを被塗布物としてこれにレジスト液を塗布するために使用されているが、薬液としてはレジスト液に限られず、また被塗布物もウエハWに限られず、それぞれ種々のものを対象とすることができる。また前記実施の形態においては、流量制御弁12と開閉制御弁11を流路ブロック13に取り付けるようにしたが、個別に独立して構成してもよい。また調整ねじ部材54を構成する中空軸53と差動軸48のそれぞれの雄ねじ部のピッチは0.5mm,0.45mmに限られない。さらに中空軸53と差動軸48のそれぞれの外周の雌ねじ部は、ともに右ねじとしたが、ともに左ねじとしてもよい。また流量制御弁12と開閉制御弁11の一方に差動式の調整ねじ部材を取り付け、他方に非差動式の1つの調整ねじ部材を取り付けてもよい。なお、前記実施の形態においては、流量制御弁12と開閉制御弁11を差動制御する流体圧を圧縮空気による空気圧としたが、空気圧に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例である流量制御弁を備えた流量制御装置を示す断面図である。
【図2】図1に示された流量制御弁の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】比較例としての流量制御弁の一部を示す断面図である。
【図6】図5の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
11 開閉制御弁
12 流量制御弁
13 流路ブロック
14 第1のジョイント部
14a 第1のポート
15 第2のジョイント部
15a 第2のポート
16 ユニオンナット
17 第1の流路
18 第2の流路
19 連通流路
21 開閉用開口部
22 流量調整用開口部
23 開閉用ハウジング
24 流量調整用ハウジング
23a、24a 第1のハウジング部材
23b、24b 第2のハウジング部材
25 開閉弁体
26 調整弁体
25a、26a 環状部
25b、26b 軸部
25c、26c ダイヤフラム部
27 シリンダ室
27a 開放用圧力室
27b 閉塞用圧力室
28 開閉用ピストン
28a 軸部
29a、29b 給排ポート
31 圧縮コイルばね
32 ガイド筒体
32a 雄ねじ
32b 雌ねじ
33 締結ナット
34 差動軸
34a 雄ねじ
35 係合ピン
36 係合溝
37 中空軸
37a 雄ねじ
37b 雌ねじ
38 全開用調整ねじ部材
39 調整つまみ
40 ロックナット
41 シリンダ室
41a 圧力室
41b ばね室
42 流量調整用ピストン
42a 軸部
43 圧縮コイルばね
44a 給排ポート
44b ブリードポート
45 ガイド筒体
45a 締結用雄ねじ部
45b 調整用雌ねじ部
46 締結ナット
47 連結駒
47a 筒部
47b 端壁部
48 差動軸
48a 調整用雄ねじ部
49 ストッパ
49a 当たり面
51 係合ピン
52 係合溝
53 中空軸
53a 調整用雄ねじ部
53b 雌ねじ部
54 調整ねじ部材
55 調整つまみ
56 ロックナット
56a 締結用雌ねじ部
57 円筒部
58 端壁部
58a 締結面
59 接触面
60 ロックナット
60a 雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入側流路と流出する流出側流路とこれらの流路を連通させる流量調整用開口部とが形成された流路ブロックと、
前記流路ブロックに前記流量調整用開口部に対向して設けられた流量調整用ハウジングと、
前記流量調整用開口部の開度を調整する弁体が取り付けられるとともに、前記流量調整用ハウジングのシリンダ室に組み込まれて前記シリンダ室を前記弁体を閉じる方向のばね力を付勢するばね部材が組み込まれるばね室と前記弁体を開く方向の流体圧を加える流体室とに区画する流量調整用ピストンと、
前記流量調整用ハウジングに設けられ、内周に調整用雌ねじ部が形成される一方、前記流量調整用ハウジングから突出する外周に締結用雄ねじ部が形成されたガイド筒体と、
前記流量調整用ピストンに係合して前記流量調整用ピストンの前記流量調整用開口部に向かう方向の位置を規制するストッパを有し、前記調整用雌ねじ部にねじ結合する調整用雄ねじ部が外周に形成される調整ねじ部材と、
前記締結用雄ねじ部にねじ結合する締結用雌ねじ部と、前記調整用雄ねじ部に設けられた接触面を前記弁体を閉じる方向に押圧する締結面とが形成されたロックナットとを有し、
前記調整ねじ部材の回転により前記弁体の開度を調整し、前記調整用雄ねじ部の前記弁体側に対向する弁体側歯面が前記調整用雌ねじ部の歯面に接触した状態のもとで前記ロックナットにより前記弁体側歯面を前記調整用雌ねじ部の歯面に押圧して前記調整ねじ部材を締結することを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁において、前記調整ねじ部材は、前記調整用雄ねじ部が形成されるとともに、内周面に前記調整用雄ねじ部と相違するピッチの差動用雌ねじ部が形成された中空軸と、前記差動用雌ねじ部にねじ結合する差動用雄ねじ部が形成され、前記ストッパを備え前記流量調整用ピストンに対し回転が規制されるとともに相対的に軸方向に移動自在に前記流量調整用ピストンに連結される差動軸とを有することを特徴する流量制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流量制御弁において、
前記流路ブロックに形成されて前記流入側流路と前記流出側流路とを連通させる開閉用開口部に対向して前記流路ブロックに設けられる開閉用ハウジングと、
前記開閉用開口部を開閉する弁体が取り付けられるとともに、前記開閉用ハウジングのシリンダ室に組み込まれて前記弁体を前記開閉用開口部に接触する全閉位置と前記開閉用開口部から離れる全開位置とに駆動する開閉用ピストンと、
前記開閉用ピストンに対して前記全閉位置と前記全開位置の少なくとも何れか一方に向かう流体圧を供給する流体供給手段と、
前記開閉用ハウジングにねじ結合され、前記開閉用ピストンに当接して前記弁体の全開位置を規制する全開用調整ねじ部材とを有することを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流量制御弁において、
前記ストッパは前記流量調整用ピストンの前記ばね室側に取り付けられた連結駒に係合し、前記ストッパの前記連結駒に係合する当たり面が球面となっていることを特徴とする流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−256148(P2008−256148A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100773(P2007−100773)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】